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【発明の名称】 成鶏飼育用配合飼料及びその給与方法
【発明者】 【氏名】牧野 幸弘
【住所又は居所】茨城県鹿島郡神栖町大字東深芝2−6 協同飼料株式会社研究所内

【氏名】古郡 哲也
【住所又は居所】茨城県鹿島郡神栖町大字東深芝2−6 協同飼料株式会社研究所内

【氏名】佐藤 洋
【住所又は居所】茨城県鹿島郡神栖町大字東深芝2−6 協同飼料株式会社研究所内

【氏名】魚住 紀雄
【住所又は居所】茨城県鹿島郡神栖町大字東深芝2−6 協同飼料株式会社研究所内

【氏名】植木 三佐夫
【住所又は居所】茨城県鹿島郡神栖町大字東深芝2−6 協同飼料株式会社研究所内

【要約】 【課題】斃死鶏の発生を抑制すると共に、産卵再開後の卵殻質の劣化を防止し、サルモネラ菌などの食中毒原因菌感染率を低減させ、さらに、産卵ピークをコンスタントにもたらし、換羽完了後の廃棄卵を減少することができる成鶏飼育用配合飼料とその適切な給与方法を提供する。

【解決手段】糟糠類を主原料とし、嵩比重が0.40〜0.56kg/Lで、かつ、粒度分布において1mm以上の部位が40%以上である換羽誘導に用いるための成鶏飼育用配合飼料。代謝エネルギーを1900〜2400kcal/kgに調整してあること、飼料1kgにつきビタミンAを5000IU以上、ビタミンDを1000IU以上、ビタミンEを5IU以上、マンガンを30mg以上、亜鉛を40mg以上、ヨウ素を0.3mg以上それぞれ含有させてあること、飼料1kgにつき赤色系キサントフィルを1.0mg以上含有させてあること、オリゴ糖又は有機酸を添加してあること。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糟糠類を主原料とし、嵩比重が0.40〜0.56kg/Lで、かつ、粒度分布において1mm以上の部位が40%以上である換羽誘導に用いるための成鶏飼育用配合飼料。
【請求項2】
代謝エネルギーを1900〜2400kcal/kgに調整してある請求項1に記載の成鶏飼育用配合飼料。
【請求項3】
飼料1kgにつき、ビタミンAを5000IU以上、ビタミンDを1000IU以上、ビタミンEを5IU以上、マンガンを30mg以上、亜鉛を40mg以上、ヨウ素を0.3mg以上、それぞれ含有させてある請求項1又は2に記載の成鶏飼育用配合飼料。
【請求項4】
飼料1kgにつき、赤色系キサントフィルを1.0mg以上含有させてある請求項1から3のいずれかに記載の成鶏飼育用配合飼料。
【請求項5】
オリゴ糖又は有機酸を添加してある請求項1から4のいずれかに記載の成鶏飼育用配合飼料。
【請求項6】
マッシュ状又はクランブル状である請求項1から5のいずれかに記載の成鶏飼育用配合飼料。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の成鶏飼育用配合飼料を産卵鶏に不断給餌し、飽食状態を維持しながら換羽誘導をおこなう方法。



























【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、成鶏飼育用配合飼料とその給与方法に関する。詳しくは、換羽誘導のための成鶏飼育用配合飼料とその適切な給与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
雌鶏は、秋から冬にかけて、ホルモンの関係で2〜4月間ほど産卵を休止する。この期間に雌鶏の古い羽毛が抜け落ちて新しい羽毛に換わり、いわゆる「自然換羽」がおこる。また、人為的に換羽を誘起する「換羽誘導」が、飼養管理の手法としておこなわれている(社団法人中央畜産会ホームページ)。
【0003】
換羽誘導の実質的効果は産卵停止の有無で判断される。すなわち、換羽誘導により産卵鶏の生殖器官(卵管と卵巣)が十分に萎縮すると産卵は停止する。産卵停止はまた、産卵再開のシグナルとなる。
換羽誘導は、必ずしも全ての産卵鶏に対し実施されるものではない。しかし、一般に、産卵鶏は、日齢の経過と共に産卵率の低下と卵殻質の劣化から80〜85週齢で淘汰されるが、換羽を実施すれば100〜105週齢に産卵期間を延長できると言われている。
【0004】
しかし、従来の一般的な換羽誘導(強制換羽と称されることもある。)は、産卵鶏が65〜70週齢に達した頃、絶水はしないものの、絶食(断餌)と鶏舎の点灯時間の短縮という厳しい条件下でおこなわれる。その結果、産卵鶏の性ホルモンの分泌が抑制され、体重は開始時に比べ25〜30%減少し、この時点で産卵鶏の羽が抜け落ち、産卵を停止する。このように従来の換羽誘導はきわめて過酷な条件下でおこなわれていた。
【0005】
換羽誘導は、産卵鶏の産卵期間を伸ばしてヒナの導入回数を低減すると共に卵殻質の劣化を防止することを目的としておこなわれるが、従来の方法では、産卵鶏を飢餓状態に追い込んで大きなストレスを与えるため、様々な問題が発生している。例えば、斃死鶏が増加すると共に、絶食のために糞便性状を悪化させる。環境規制が強化される中で、下痢便状の鶏糞処理はきわめて劣悪な作業となる。また、産卵回復後も、産卵ピークが現れないケースが見られる。さらに、換羽誘導をおこなうと産卵鶏の免疫機能に影響が出ることも知られている。すなわち、換羽誘導によって、B細胞が関与するIgMやIgGなどの血中抗体産生に係る液性免疫には影響を及ぼさないものの、T細胞が関与する細胞性免疫に強い影響を与え、産卵鶏の健康維持能力を低下させ、さらには、腸内細菌叢にも乱れが生じ、結果としてサルモネラエンテリティディス感染の確率が高まり、感染持続期間を延長させることが知られている。併せて最近の研究報告によれば、絶食に伴うストレスがサルモネラ菌の腸管内や生殖器官への定着を増加させ、卵の汚染率を高めるリスクが指摘されている。
【0006】
そのため、換羽誘導期の産卵鶏に与える過酷な条件を緩和して斃死鶏の減少などを企図し、継続した絶食(断餌)日数を減らすべく、スキップ(隔日給与)による給与技術や、トウモロコシ・ふすま・コーングルテンフィード・大豆皮のような単味飼料を給与して産卵鶏の空腹感のみをなくす技術、また、高繊維及び低代謝エネルギー飼料の給与やナトリウム含量を減少させた飼料の給与、或いは、亜鉛を高濃度に含む飼料などを給与することで飼料摂取量を自然に低減させる技術などが知られている。しかし、これらの給与技術は、必ずしも換羽誘導に期待される効果を十分に上げるには至らず、そのため、換羽誘導期に給与するのに相応しい成鶏飼育用配合飼料及びその適切な給与方法が確立されているとは言いがたい状況にある。
【0007】
【特許文献1】特開平11−113502号公報
【非特許文献1】「鶏鳴新聞」(株式会社鶏鳴新聞社)2003年4月25日発行 の「ファインラクト換羽用を新発売 カルピス」の記事
【非特許文献2】社団法人日本養鶏協会のホームページ「サルモネラ対策とトリイ ンフルエンザ問題」の概要−J・R・Cテクニカルシンポジウム 21を聴講して−(最終更新日:2004−01−20)
【0008】
従来の換羽誘導技術について公知文献を調べたところ、特許文献1(特開平11−113502号公報)には、産卵鶏の餌切り時などにおけるサルモネラ属細菌を主とする腸内有害細菌を減少させることが可能であり、バチルス属の生菌体と単糖類とを含有する鳥類用飲水添加用混合飼料(その他の混合飼料。いわゆるサプリメント)及びこの飼料を換羽誘導中の少なくとも1日に産卵鶏に対し飲水に混和して給与する方法について開示されている。また、非特許文献1(2003年4月25日発行の鶏鳴新聞)には、換羽誘導中でも有用菌を腸内に存在させて健康な腸管を維持し、より安全に換羽を迎える目的で開発された、健康な腸内菌叢の速やかな形成に効果的に働くラクトバチルス(乳酸菌)2菌種と換羽誘導中の有用菌の維持・増殖のためオリゴ糖を配合してなる「乳酸菌混合飼料」(その他の混合飼料。いわゆるサプリメント)について紹介されている。また、その給与方法は、換羽中に毎日(連続7〜10時間)給水の中に溶かして与える旨が記載されている。
【0009】
このように、特許文献1や非特許文献1に記載の飼料は、どちらも、換羽誘導期の産卵鶏に給与する飼料であるにしても、飲水に添加して給与するものであり、産卵鶏の空腹を抑え、ストレスを軽減させるには十分ではない。また、換羽誘導期の成鶏飼育用配合飼料について、その他の文献には見るべきものがない。
【0010】
このような状況に鑑み、本発明者らは、産卵鶏のストレスを抑え、上記諸問題を解消するには、換羽誘導期であっても産卵鶏には配合飼料を給与することが必要であると考え、換羽誘導期の産卵鶏に給与するのに適切な成鶏飼育用配合飼料を独自に開発すべく研究を続け、本発明を完成するに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、産卵鶏の換羽誘導に当たり、産卵鶏が受けるストレスを軽減させ、換羽誘導によって生じる様々な弊害を低減できる成鶏飼育用配合飼料とその適切な給与方法を提供することを課題とする。すなわち、本発明は、換羽誘導期の産卵鶏に給与することによって、まず、斃死鶏の発生を抑制すると共に、産卵再開後の卵殻質の劣化を防止し、かつ、サルモネラ菌などの食中毒原因菌感染率を低減させ、さらに、産卵ピークをコンスタントにもたらし、換羽完了後の廃棄卵を減少することができる成鶏飼育用配合飼料とその適切な給与方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決する本発明のうち、特許請求の範囲・請求項1に記載する発明は、糟糠類を主原料とし、嵩比重が0.40〜0.56kg/Lで、かつ、粒度分布において1mm以上の部位が40%以上である換羽誘導に用いるための成鶏飼育用配合飼料である。
【0013】
また、同じく請求項2に記載する発明は、代謝エネルギーを1900〜2400kcal/kgに調整してある請求項1に記載の成鶏飼育用配合飼料である。
【0014】
また、同じく請求項3に記載する発明は、飼料1kgにつきビタミンAを5000IU以上、ビタミンDを1000IU以上、ビタミンEを5IU以上、マンガンを30mg以上、亜鉛を40mg以上、ヨウ素を0.3mg以上、それぞれ含有させてある請求項1又は2に記載の成鶏飼育用配合飼料である。
【0015】
同じく請求項4に記載する発明は、飼料1kgにつき赤色系キサントフィルを1.0mg以上含有させてある請求項1から3のいずれかに記載の成鶏飼育用配合飼料である。
【0016】
同じく請求項5に記載する発明は、オリゴ糖又は有機酸を添加してある請求項1から4のいずれかに記載の成鶏飼育用配合飼料である。
【0017】
また、同じく請求項6に記載する発明は、マッシュ状又はクランブル状である請求項1から5のいずれかに記載の成鶏飼育用配合飼料である。
【0018】
さらに、同じく請求項7に記載する発明は、請求項1から6のいずれかに記載の成鶏飼育用配合飼料を産卵鶏に不断給餌し、飽食状態を維持しながら換羽誘導をおこなう方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る成鶏飼育用配合飼料は、上記の構成であり、ふすま、米ぬか、コーングルテンフィードなどの糟糠類を主原料とし、これを嵩の張る、粒度が大きい状態に加工し、かつ、産卵鶏が産卵及び母体の維持に必要とする代謝エネルギーを可及的に低く設計した低カロリー飼料であるから、これを換羽誘導中に産卵鶏(レイヤー)に給与すると、産卵鶏は飢餓によるストレスを感じることがなく、従来よりも斃死率をきわめて低く抑えることができる。また、それでいて、本発明に係る成鶏飼育用配合飼料は、産卵鶏を断食させたのと同様の産卵停止効果を生じさせることができる。また、本発明に係る成鶏飼育用配合飼料には、好ましくは、鳥の生育に必須であるが一般の飼料原料には不足しがちな各種ビタミン(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンEなど)や各種ミネラル(マンガン、亜鉛、ヨウ素など)を添加してミネラルバランスを適正化してあるので、産卵鶏の健康状態や代謝状態をより通常の状態に近づけることができると共に、大腿骨を健全に維持することができ、産卵再開後の卵殻質の回復が早くなる。その上、好ましくは、赤色キサントフィールを1.0mg/kg以上配合してあるので、卵黄の減色を防止できると共に産卵開始時に発生する廃棄卵を減少させ、卵の商品化率の低下を抑えることができる。さらに、好ましくは、サルモネラ抗菌力を有することで知られているオリゴ糖か又は殺菌力を有する有機酸を配合してあるので、サルモネラ菌などの有害細菌の排除を促進し、腸内細菌叢の乱れを抑制し、鶏卵汚染を防止できる。その上、本発明に係る成鶏飼育用配合飼料は、換羽誘導中に生じやすい下痢便を抑止し、従来に比べて糞便の性状を改善できる。
【0020】
また、本発明に係る成鶏飼育用配合飼料の給与方法は、嵩の張る、粒度分布が大きい糟糠類を不断給餌して産卵鶏の飽食状態を維持しながら換羽をおこなうので、換羽誘導中の鶏は常時飽食状態となり、飢餓によるストレスを生じさせない。その結果、換羽誘導中の斃死率をきわめて低く抑えることができると共に、腸内細菌叢の乱れを抑制できる。さらに、代謝エネルギーを産卵鶏の生体維持要求量ぎりぎりに抑えるので、本発明の給与方法を換羽誘導期間中継続すると、産卵鶏を断食させたのと同様の産卵停止効果を生じさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明においては、特定の嵩比重及び特定の粒度分布を有する糟糠類を主原料として使用する。本発明において、糟糠類とは、食用穀類を精白ないし製粉する際に生ずる副産物の総称であり、小麦粉製粉時の副生品であるふすまや米の精白時の副生品である米ぬか及び脱脂米ぬかは、飼料原料としての利用価値が高い。実際の飼料工場では、飼料安全法により飼料原料の表示方法が定められており、米ぬか、脱脂米ぬか、ふすま、特殊ふすま、麦ぬか、ホミニーフィード、コーングルテンフィード、大豆皮、ビール粕などが糟糠類に該当する。
【0022】
本発明に係る成鶏飼育用配合飼料は、糟糠類を主原料とし、嵩比重が0.40〜0.56kg/Lで、かつ、粒度分布において1mm以上の部位が40%以上のものである。すなわち、本発明に係る飼料は、糟糠類を挽き割りにしたマッシュ状の飼料か又は一旦ペレットに成形したものを砕いたクランブル状の飼料であることが好ましい。また、嵩比重が上記の上限を越えたものであると、産卵鶏の飼料摂取量を抑えることができないので、換羽誘導期間(2〜3週間)中に産卵の完全停止に至らないか又は産卵停止までの所要期間が長くなってしまう。その上、従来から換羽の指標とされている体重減少も起こり難くなる。さらに、飼料の嵩比重が上記の下限よりも低く、粒度の分布において1mm以上の部位の割合が40%未満であると、貯蔵タンク内でブリッジを起こしやすく、搬送が停滞しがちとなるので現場では受け入れ難いものとなる。
【0023】
なお、本発明において、嵩比重の測定は、飼料業界で慣用されている方法、すなわち、1L容のメスシリンダーに飼料を満杯に充填し、その飼料重量を計測する方法で測定すればよい。また、飼料中、粒度分布において1mm以上の部位の割合を測定するには、例えば、100gの飼料を網径1mmの篩にかけて篩上に残留する飼料の重量を計測すればよい。
【0024】
また、本発明に係る成鶏飼育用配合飼料は、上記に加えて、代謝エネルギーを1900〜2400kcal/kgの範囲に調整したものであることが望ましい。代謝エネルギーがこの下限を下回る飼料を給与すると、産卵鶏の斃死率を抑え難くなる。また、代謝エネルギーがこの上限を越えた飼料を給与すると、産卵停止に至る期間が長くなると共に、鶏の体重減少速度を遅らせることになる。
【0025】
また、本発明に係る成鶏飼育用配合飼料は、産卵鶏の健康状態や代謝状態を通常の状態に近づけるべく、鳥の生育に必須であり、かつ、一般の原料には不足しがちな脂溶性のビタミンや各種ミネラルを添加したものであることが望ましい。具体的には、飼料1kgにつき、ビタミンAを5000IU以上、ビタミンDを1000IU以上、ビタミンEを5IU以上、さらに、産卵鶏の骨の維持と産卵開始後の卵殻質の改善のためにマンガンを30mg以上と亜鉛を40mg以上、甲状腺維持のためにヨウ素を0.3mg以上、それぞれ含有させてあることが好ましい。このように、本発明に係る成鶏飼育用配合飼料は、飼料中のミネラルバランスを整えることで、換羽後の卵殻質のすみやかな回復を図ることができる。
【0026】
さらに、本発明に係る成鶏飼育用配合飼料は、赤色系キサントフィルを1.0mg以上含有させてあることが望ましい。赤色系キサントフィルとしては、卵黄着色剤として知られているパプリカ抽出処理物(パプリカからキサントフィルを抽出し、その抽出液からヘキサンを除去してケン化したもの)などを使用すればよい。赤色系キサントフィルを1.0mg以上添加した飼料を給与すると、換羽誘導中であっても卵黄の減色が少なくなるので、産んだ卵を液卵用に使用できる。すなわち、赤色系キサントフィルを1.0mg以上添加した飼料を換羽誘導中に使用し続けると、卵黄色の低下を抑えることができるので、産卵開始時に発生する廃棄卵を減少させ、卵の商品価値の低下を抑制できる。
【0027】
さらに、本発明に係る成鶏飼育用配合飼料は、サルモネラ抗菌力を有することで知られているオリゴ糖か又は殺菌力を有する有機酸を添加することが好ましい。オリゴ糖、有機酸のいずれかを配合すると、盲腸便中のサルモネラ菌を排除することができると共にサルモネラ菌を卵巣に定着させる危険性がきわめて少なくなる。なお、オリゴ糖としては、マンナンオリゴ糖やフラクトオリゴ糖などを用いるのが好ましく、また、有機酸としては、蟻酸、プロピオン酸、乳酸などの使用が好ましい。
【0028】
以上を要約すると、本発明に係る採卵鶏用飼料は、以下の要件に基づいて構成することが望ましい。
(1)嵩の張る、粒径の大きい糟糠類を主原料とし、産卵鶏が産卵及び母体の維持に必要とする代謝エネルギーを可及的に低くするように設計した低カロリー飼料であること、
(2)鶏の健康状態や代謝状態をより通常の状態に近づけるべく、好ましくは、鳥の生育に必須であるが、一般の原料には不足しがちなビタミン(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE)やミネラル(マンガン、亜鉛、ヨウ素)を添加してあること、
(3)特に、大腿骨を健全に維持することで、産卵再開後、長期にわたって卵殻質を改善できるように、ミネラルバランスを適正化してあること、
(4)産卵開始時に発生する廃棄卵を減少させ、卵の商品化率を高めるために、赤色系キサントフィルを一定量以上配合してあること、
(5)鶏卵汚染を防止するために、サルモネラ菌などの有害細菌の排除を促進するオリゴ糖か又は殺菌力を有する有機酸を配合してあること
【0029】
また、本発明に係る採卵鶏用飼料の給与方法は、以下の要件に基づいて構成することが好ましい。
(1)換羽誘導に要する期間は概ね2〜3週間であるが、この期間中は不断給餌を基本とし、全ての個体が均一に飼料を摂取できる環境を提供すること、
(2)嵩の張る、粒径の大きいマッシュ状又はクランブル状飼料を不断給餌することによって、産卵鶏を常時飽食状態とし、ストレスを抑え、腸内細菌叢の乱れを抑制し、その結果、サルモネラ菌などの有害細菌の定着を阻止すること、
(3)嚥下障害の危険性もあるため、給水は必ずおこなうこと、
(4)点灯刺激によるホルモンの分泌とそれに伴う産卵を抑制するために、従来の絶食を伴う換羽誘導法と同様に、体重減少中は点灯時間を10時間内外まで落とすこと、
以下、本発明を試験例及び実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
なお、本発明の説明において、「%」の表示は、特に断らない限り、重量割合を示す。
【試験例1】
【0030】
<飼料の給与試験>
(1)試験方法
69週齢の白色レグホーン(ハイライン・ローラ)300羽を各区50羽ずつに分け、表1に示す飼料1〜飼料6(表2の大雛用飼料にふすまを配合したもの)をそれぞれ3週間給与した。給与に当たっては、鶏が常に飼料を摂取でき、飽食状態を維持するように不断給餌とし、水は常に与えた。試験結果は、表3に示すとおりである。
【0031】
【表1】


【0032】
【表2】


【0033】
(3)試験結果
【表3】


【0034】
(3)所見
飼料1(嵩比重0.59)では、飼料の期間摂取量(99g/日)が多すぎ、体重減少率が不十分であり、産卵停止(換羽終了を意味する。)に至らず、飼料2(同0.56)ではじめて産卵を停止した。したがって、換羽誘導用飼料の物理的要件が飼料の嵩比重にあるものと考えられる。すなわち、本発明に係る飼料は、嵩比重0.56以下に調整する必要がある。併せて、本試験例においては全ての供試飼料について期間斃死率がきわめて低いことから、飽食状態で換羽誘導を実施すれば、期間中の斃死問題も解決できることが確認された。
【試験例2】
【0035】
<生殖器官重量比較試験>
(1)試験方法
試験例1で供試した鶏の「開始後21日目」の生殖器官(卵管と卵巣)の重量を測定して、その平均値を算出した。
(2)試験結果
試験結果は、表4に示すとおりである。
(3)所見
飼料1(嵩比重0.59)と飼料2(同0.56)の間に分岐点があり、同じ時期の生殖器官の重量が22g近辺に達したとき、はじめて産卵が停止し、換羽誘導が完了することが理解できる。
【0036】
【表4】


【試験例3】
【0037】
<飼料の流動性と嵩比重の関係確認試験>
(1)試験方法
現在のシステム化された大規模養鶏現場で受け入れられるか否かを評価するため、試験例1で用いた6種類の飼料をコマーシャルベースの農場に持ち込み、飼料の搬送系に当てはめてみた。その結果を表5に示す。
(2)試験結果
試験結果は、表5に示すとおりである。
【表5】


(3)所見
飼料5(嵩比重0.39で 1mm以上の部位が39.9% )と飼料6(嵩比重0.34で 1mm以上の部位が35.2% )は、換羽誘導そのものには問題なく対応できるが、飼料貯蔵タンク内でブリッジが発生し、それ以降の鶏舎への搬送が停滞しがちになるので、養鶏現場で用いる飼料としては物性上受け入れ難いことが判明した。すなわち、飼料の嵩比重が0.39以下で粒度1mm以上の割合が39.9%以下では、微細な部位が多すぎてブリッジを起こしやすく、市場のニーズに合致しないものと認められる。一方、飼料3(嵩比重0.42で 1mm以上の部位が41.7% )は全くブリッジが起きていない。よって、換羽誘導のための成鶏飼育用配合飼料として物理的に適切な範囲は、嵩比重0.40kg/L以上(で0.56kg/L以下)、かつ、粒度分布において1mm以上の部位の割合が40%以上であると認められる。
【試験例4】
【0038】
<飼料の代謝エネルギーと産卵停止日の関係確認試験>
(1)試験方法
飼料の代謝エネルギーが産卵停止と体重減少に与える影響を確認するため、表6・表7に示すように、1800から2500kcal/kgまで100kcalごとの8段階に調整した飼料を用いて換羽誘導をおこなった。供試鶏は、69週齢の白色レグホーン(ジュリア)を各区200羽ずつ用い、いずれの区も3週間不断給餌した。なお、表6・表7中の「2200区」などの表示は、2200kcal区、すなわち、代謝エネルギーを2200kcalに調整した飼料区などの意味である。
【0039】
(2)試験結果
試験結果は、表8に示すとおりである。
(3)所見
表8から、飼料中の代謝エネルギーレベルが1800kcalでは斃死率が低下しないこと、2500kcalでは完全な産卵停止が起こらないことが確認された。すなわち、2500kcal以上の代謝エネルギー飼料は体重の減少スピードを遅らせ、卵管・卵巣といった生殖器官の萎縮に結果として影響を与えることが確認された。そのため、本発明では、飼料の代謝エネルギーは1900〜2400kcalに調整することが好ましい。
【0040】
【表6】


【0041】
【表7】


【0042】
【表8】


【試験例5】
【0043】
<飼料中の代謝エネルギーとピーク産卵率の関係確認試験>
(1)試験方法
試験例4で供試した鶏を、換羽誘導期間(3週間)経過後、全ての試験区について表9に示す配合割合の飼料(嵩比重0.67kg/L、粒度1mm以上の部位73%)に切り替えて給与し、その後の産卵成績への影響を確認した。
【表9】


【0044】
(2)試験結果
試験結果は、表10に示すとおりである。
(3)所見
表10から、飼料中の代謝エネルギーが高いと、ピーク産卵率(最大産卵率)が低く、産卵の持続性にもマイナスの影響が確認された。この現象は、換羽誘導中の産卵停止や体重減少、また生殖器官の萎縮と関連しているものと考えられる。よって、本発明飼料の代謝エネルギーレベルは、2400kcal以下に抑制すべきであることが理解できる。
【0045】
【表10】


【試験例6】
【0046】
<赤色系キサントフィルの添加効果確認試験>
(1)試験方法
65週齢の白色レグホーン(ハイライン・マリア)を各区300羽ずつに分け、表11に示す配合割合の飼料(嵩比重0.45kg/L、粒度1mm以上の部位42%)をそれぞれ3週間給与して、産卵鶏群を換羽に誘導した。飼料の給与に当たっては、産卵鶏が常に飼料を摂取できるように不断給餌とし、水は常に与えた。換羽完了後、両試験区とも換羽誘導の前に給与していた配合飼料(試験例5で供試した表9の配合割合の資料)に切り替え、産卵の回復を図った。この方法において、換羽誘導開始1週目、2週目と、換羽誘導完了後(飼料切り替え後)1週目、2週目に産んだ鶏卵の卵黄色を測定した。卵黄色の測定は、各区・各期に集卵したものの中から30個づつ任意に抽出して測定し、表11・表12にはその平均値で示している。ただし、換羽誘導の2週目(表12)は、産卵数が減って、無添加区から15個しか集卵できなかったので、両区とも、15個で代表させ、その平均値で示している。指標として、卵黄色の測定指標として一般に用いられているロッシュ社製のカラーファンナンバー(1〜15)を用いて評価した。その試験結果は表12と表13に示すとおりである。
【0047】
【表11】


【0048】
(2)試験結果
試験結果は、表12と表13に示すとおりである。
【表12】


【0049】
【表13】


【0050】
(3)所見
換羽誘導開始前は、両区とも換羽終了後に切り替えた飼料と同じものを給与しており、ロッシュのカラーファンナンバーで「11」程度の卵黄色を有していた。無添加区は、換羽誘導開始後、飼料中にトウモロコシ由来の黄色系カロチノイドしか有していないため、卵黄色の急激な低下が確認された。一方、卵黄着色剤(パプリカ抽出処理物)由来の赤色系キサントフィル添加区では、1.0mg/kg以上の赤色系キサントフィルを添加することにより、卵黄色の低下をかなり抑制できることが確認された。換羽誘導中の卵は卵殻質がやや弱いため、パックに詰めてテーブルエッグとして販売することは危惧されるが、液卵としての利用性は、換羽誘導中の卵も十分な価値を有するものと考えられる。本試験を実施した養鶏場では他の生産ロットの卵黄色が「11」前後であるため、無添加区の卵の卵黄色が「6〜7」では大きなギャップがあり、自主的に廃棄処分していたが、添加区の卵は通常卵に比べて大きな差がないため、液卵向けのB級卵として出荷することができた。
【0051】
3週間の換羽誘導の後、両区とも換羽誘導の前に給与していた配合飼料にすみやかに切り替えた。切り替え直前においても、すでに産卵が回復してきている個体も確認でき、この時点ですでに両区の卵黄色の間に明確な差が確認できた。また、卵黄色は、両区とも、その後徐々に上昇してきたが、添加区の卵黄色は、換羽誘導期間(2週間)中、常に無添加区を上回り、1週目の時点で換羽誘導前の卵黄色(他の換羽未実施ロットと同様の色)に到達した。また、添加区では、飼料切り替え後の卵殻質がしっかりしており、他のロットの卵と同様にすぐパック詰めして出荷が可能であった。一方、無添加区では、卵黄の色が薄いため、切り替え後2週間は自主的に液卵向けのB級卵として出荷された。以上の知見から、本発明飼料に赤色系キサントフィルを1.0mg/kg以上含有させることは、商品化率向上を伴う生産者の収益改善で明確な効果が得られることが確認された。
【試験例7】
【0052】
<オリゴ糖・有機酸の添加効果確認試験>
(1)試験方法
67週齢の白色レグホーン(ハイライン・ローラ)20羽を5羽ずつ4つの区に分け、それぞれ以下の方法により換羽誘導をおこなった。
1区:2週間の絶食継続により換羽を誘導する従来の方法
2区:表14の飼料1(無添加配合試料)を2週間、不断給餌しながら換羽誘導する方法3区:同飼料2(酵母細胞壁配合飼料)を2週間、不断給餌しながら換羽誘導する方法
4区:同飼料3(有機酸製剤配合飼料)を2週間、不断給餌しながら換羽誘導する方法
また、各区試験開始翌日にサルモネラエンテリティディス野外株を2.6×10個/mLを含む菌液を1mLずつ強制経口投与し、投与後3日目、7日目、14日目の朝、それぞれ個体ごとに排泄された盲腸便を採取し、サルモネラ菌の陽性反応を検査すると共に、14日目には全ての個体を屠殺・解剖して、卵巣におけるサルモネラ菌の定着の有無について確認した。
【0053】
【表14】


【0054】
(2)試験結果
試験結果は、表15と表16に示すとおりである。
(3)所見
表15から、1区(絶食により換羽を誘導する従来の方法)に比べ、本発明の飼料を給与して換羽を誘導する2区・3区・4区の方法の方が、いずれも、盲腸便中のサルモネラ菌数を低減する効果が大きいことが認められた。また、この低減効果は、2区よりも3区・4区の方が大きいことが認められ、本発明飼料にさらに酵母細胞壁(マンナンオリゴ糖が含まれている。)や有機酸製剤を配合することによりサルモネラ菌低減効果が一層高まることが確認された。
また、表16から、1区(絶食により換羽を誘導する従来の方法)に比べ、本発明の飼料を給与して換羽を誘導する2区・3区・4区の方法の方が、いずれも、サルモネラ菌の陽性数の明確な低減が認められた。すなわち、卵巣にサルモネラ菌が定着することは、インエッグ汚染の危険性を高めるが、本発明飼料を給与することにより、この問題は解消できることが確認された。
【0055】
【表15】


【0056】
【表16】


【実施例1】
【0057】
<本発明飼料の配合割合と製法例>
【表17】


【0058】
67週齢の白色レグホーン(ジュリア)を各区200羽に分け、試験区1には、以下の飼料1を、試験区2には同飼料2を、それぞれ3週間給与した。また、対照区は、従来法のとおり、期間中絶食継続とした。その結果は表17に示すとおりである。
飼料1:表17の各原料を正確に秤量し、均一に混合したマッシュ状の飼料(嵩比重0. 52kg/L、粒度分布において1mm以上の部位が57%の飼料)
飼料2:表17の各原料を正確に秤量・混合したものをビューラー社製のペレットマシン とクランブラーを用いて製したクランブル状の飼料(嵩比重0.50kg/L、 粒度分布において1mm以上の部位が53%の飼料)
【0059】
【表18】


【産業上の利用可能性】
【0060】
以上、詳細に説明したとおり、本発明に係る成鶏飼育用配合飼料及びその給与方法は、従来の換羽誘導に伴う諸問題を全て解決するものであるから、今後の産卵鶏の換羽誘導に用いるのにきわめて有用・適切である。よって、本発明は、産卵鶏の飼養管理に大いに活用できる。
【出願人】 【識別番号】000162397
【氏名又は名称】協同飼料株式会社
【住所又は居所】神奈川県横浜市西区高島2丁目5番12号
【出願日】 平成16年3月1日(2004.3.1)
【代理人】 【識別番号】100090941
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 清也

【識別番号】100113837
【弁理士】
【氏名又は名称】吉見 京子

【識別番号】100127421
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 さなえ

【識別番号】100076244
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 清規

【公開番号】 特開2005−245205(P2005−245205A)
【公開日】 平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願番号】 特願2004−55714(P2004−55714)