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【発明の名称】 梅調味液を利用した飼料添加物
【発明者】 【氏名】東 善彦

【氏名】堂柿 敏章

【氏名】平 知明

【要約】 【課題】味梅干しの製造工程から排出され処理が困難な梅調味液を有効利用することにより、非常に低コストな飼料添加物を提供すること。

【解決手段】梅干しを調味液に漬け込んで味梅干しを製造する際に副生する梅調味液を、塩分濃度10重量%以下まで脱塩し、乳酸菌を加え、発酵させて得られる発酵産物を含む飼料添加物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
梅干しを調味液に漬け込んで味梅干しを製造する際に副生する梅調味液を含むことを特徴とする飼料添加物。
【請求項2】
請求項1記載の飼料添加物において、梅調味液は、塩分濃度を10重量%以下まで脱塩したものであることを特徴とする飼料添加物。
【請求項3】
梅干しを調味液に漬け込んで味梅干しを製造する際に副生する梅調味液に、乳酸菌を加え、発酵させて得られる発酵産物を含むことを特徴とする飼料添加物。
【請求項4】
請求項3記載の飼料添加物において、乳酸菌が、糖から乳酸を産生するホモ型乳酸菌であることを特徴とする飼料添加物。
【請求項5】
請求項3又は4記載の飼料添加物において、梅調味液は、予め塩分濃度を10重量%以下まで低下させることを特徴とする飼料添加物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の飼料添加物に、食塩を加えて乾燥させ、塊状に成形したことを特徴とする飼料添加物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、牛、豚、鶏等の家畜用の飼料添加物に関する。特に、牛に対して好適に用いられる飼料添加物に関する。なお、ここで飼料添加物とは、飼料の一成分として添加される物質のみならず、それ単独で飼料となるもの、あるいは一般的な飼料とは別に家畜に摂取させる物質をも含む。
【背景技術】
【0002】
近年、梅の果実は、その優れた性質から食用の他にも様々な利用法が提案されており、生産量も増加傾向にある。その中でも、家畜の飼料としての用途が考えられている。梅の果実には、クエン酸、リンゴ酸等の有機酸など多量の有効成分が含まれ、これによって、家畜の排泄物の悪臭が解消されたり疾病率が低下することが知られている。
【0003】
例えば、(特許文献1)には、重量比にして主成分として梅の実50〜80パーセント、砂糖18〜45パーセント等を混合して所定期間漬け込んでなる第1の飼料添加物と、重量比にして主成分として梅の実65〜85パーセント、塩15〜35パーセントを混合して所定期間漬け込んでなる第2の飼料添加物とを、略1対1で混合して重量比にして0.3〜0.7パーセントを飼料に添加させることを特徴とする家畜等の飼料添加物が記載されている。
また、(特許文献2)には、梅の実に適宜量の砂糖を加え、さらに焼酎とビタミン剤等その他の添加物を少量加え漬け込んでなる家畜等の飼料添加物が記載されている。
さらに、(特許文献3)には、飼料に加える添加物が、梅の実を使用した製品の製造によって生じた梅の実で形成されている飼料添加物が開示されている。
これらの従来技術は、ある程度の効果は得られるが改善の余地があった。すなわち、梅を利用してより低コストに製造でき、かつ家畜の食欲を増進させ、肉質を改善し、抗病性を増進することができる新規な飼料添加物の開発が望まれていた。
【0004】
ところで、梅果実の全国における収穫量は約12万トンであり、和歌山県の紀南地域では、その内の7万トンが生産され、その5万トンが梅干しに加工されている。梅干しは、大きく分けて、収穫した生梅を、一般に生梅に対して15〜20重量%の塩を用いて塩漬けし、1ヶ月〜数ヶ月後取り出し、土用干しすることによって生産される古来からの梅干し(白干し)と、これを糖・アミノ酸等を含む調味液に漬け直し、低塩で旨みをのせた味梅干しの2種類が製造されている。後者の場合、梅調味液と呼ばれる副産物が多量に生成する。例えば、紀南地域においては、約250の梅干し会社から年間3万〜4万トンの梅調味廃液が排出されている。
【0005】
この梅調味液は、一部が浅漬けに利用されたり、イオン交換膜電気透析法で塩分を除去し、調味液として再利用されているが、その量はわずかであり、大部分は廃棄物業者に引き取られて処理されている。廃棄物業者が収集した梅調味廃液は、陸上での処理ではなく、主に海洋投棄処理がなされている。1972年のロンドン条約、及び96年議定書に基づき、わが国では陸上処分を原則とし、海洋投棄処分量の減量化を一層進めることを基本とした体制の整備が図られつつある。そのような状況の中、一部の会社では活性汚泥方式で処理しているが、BODが数十万ppmの液体であるために、しばしばバルキングを生じ、処理の困難さがある。したがって、梅干しの産地では、この産業廃棄物となる余剰分の梅調味液をいかに有効利用するかが大きな課題となっている。さらに、梅調味液中には、食塩の他、有機酸、糖質、アミノ酸、ミネラル等の有効成分が含有されており、このような観点からも梅調味液の有効利用が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特開2002−34467号公報(請求項1)
【特許文献2】特開平5−49408号公報(請求項1)
【特許文献3】特開2003−235467号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記従来の状況に鑑み、味梅干しの製造工程から排出され処理が困難な梅調味液を有効利用することにより、非常に低コストな飼料添加物を提供することを目的とする。
また、家畜の食欲を増進させ、肉質を改善し、抗病性を増進させ、排泄物の消臭を図ることのできる飼料添加物を提供することを目的とする。
【0008】
さらに本発明は、特に牛用として好適な飼料添加物であって、上記肉質改善効果等に加えて、牛の嗜好性が高く、生理的に摂取が欠かせない塩を代替することができる、新規な飼料添加物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の飼料添加物は、請求項1として、梅干しを調味液に漬け込んで味梅干しを製造する際に副生する梅調味液を含むことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、産業廃棄物である梅調味液が有効利用され、梅調味液に含まれるクエン酸等の有機酸、ミネラル等により家畜の肉質改善等が図られる。
また、牛に用いられる場合には、上記有効成分と同時に牛に不可欠な塩が与えられる。
なお、ここで梅調味液とは、梅干しを調味液に漬けて味梅干しを製造する際に残る廃液であり、1〜20重量%の糖分、1〜20重量%の塩分、クエン酸等の有機酸、アミノ酸、ミネラル等を含むものである。
【0011】
また、請求項2は、請求項1記載の飼料添加物において、梅調味液は、塩分濃度を10重量%以下まで脱塩したものであることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、塩分濃度が小さいため、家畜に対して高濃度の投与が可能となり、さらなる食欲増進等が図られる。
【0013】
また、請求項3は、梅干しを調味液に漬け込んで味梅干しを製造する際に副生する梅調味液に、乳酸菌を加え、発酵させて得られる発酵産物を含むことを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、梅調味液中の糖が乳酸発酵によって乳酸に変換され、家畜の嗜好性を高める。
【0015】
また、請求項4は、請求項3記載の飼料添加物において、乳酸菌が、糖から乳酸を産生するホモ型乳酸菌であることを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、乳酸菌の中でも、特にエネルギー源となる乳酸のみを効率的に産生する菌が選択される。
【0017】
また、請求項5は、請求項3又は4記載の飼料添加物において、梅調味液は、予め塩分濃度を10重量%以下まで低下させることを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、乳酸菌が増殖し易くなり、乳酸発酵が効率的に進む。
【0019】
さらに、請求項6は、請求項1〜5のいずれか記載の飼料添加物に、食塩を加えて乾燥させ、塊状に成形したことを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、特に牛用として好適に用いられ、クエン酸等の有効成分とともに生理的に不可欠な塩を摂取可能なブロック状の飼料添加物が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来産業廃棄物として処理が困難であった梅調味液を有効利用することができ、環境保護にも資するものである。
また、梅調味液に含まれる、クエン酸等の有機酸、ミネラル等により、家畜の食欲増進、肉質改善、抗病性増進、排泄物の消臭効果を図ることができる。
さらに、梅調味液にもともと含まれる糖を利用して乳酸発酵させることにより、家畜の肥満を予防し、飼料に対する嗜好性を高めることができる。
【0022】
特に、生理的に塩が不可欠な牛に対して与えられる場合には、上記肉質改善と同時に塩の摂取を果たすことができる。
なお、クエン酸等は殺菌作用を有するので、従来配合飼料に添加されていた抗菌剤が不必要となるか、あるいは減量することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の飼料添加物は、梅干しを調味液に漬け込んで味梅干しを製造する際に廃液として副生する梅調味液を含むことを特徴としている。
梅調味液には、調味液の成分や、それに漬け込む梅干し(白干し)の塩分量によって異なるが、一般には、グルコース、フラクトース、ショ糖等の糖分を1〜20重量%、食塩等の塩分を1〜20重量%、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、酢酸等の有機酸、セリン、アラニン、アスパラギン酸等のアミノ酸、ミネラル等を含んでいる。また、それらの成分に加えて、赤シソ、赤キャベツ、赤ダイコン、紫サツマイモ等から抽出した色素を含有したり、必要に応じてカツオ味、昆布味等を付加する場合もある。この梅調味液は、従来産業廃棄物として大量に廃棄されており、本発明によってこの有効利用を図ることができる。
【0024】
梅調味液を飼料添加物として家畜に与えることにより、主としてクエン酸が家畜のクエン酸回路の働きを活発にし、またミネラルが含まれるため、結果として家畜の新陳代謝が促進されて肉質が改善し、抗病性が増進し、排泄物の悪臭が解消されるという効果を得ることができる。
また、クエン酸等の有機酸は殺菌作用を有するので、従来飼料に添加されていた抗菌剤が不必要になるか、あるいは減量することが可能となる。
【0025】
さらに、家畜の中でも、牛は生理的にアルカリ源として食塩を必要とすることが知られており、例えば成牛では1日に80〜100gの食塩を摂取する必要があり、そのため、現状ではブロック状の岩塩等を舐めさせる等している。本発明における梅調味液には、数〜数十%の塩分が含まれるため、これを飼料添加物とすることによって牛に必要な塩をクエン酸等の成分とともに同時に摂取させることができる。
【0026】
梅調味液を飼料添加物として実際に配合する際には適宜方法により行うことができる。例えば、一般的な配合飼料に対して、梅調味液をそのままの状態で所定量混合したり、梅調味液を乾燥させ水分を除去してから混合することもできる。
飼料の種類としては、一般的な飼料が適用可能であり、例えば、とうもろこし、小麦粉、えん麦、ライ麦、魚粉、動物性油脂、大豆油かす、なたね油かす、あまに油かす、アルファルファ、糖蜜等を挙げることができる。
【0027】
また、必要に応じて、他の飼料添加物と併用することができる。具体例としては、エトキシキン、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等の抗酸化剤、プロピオン酸、プロピオン酸カルシウム、プロピオン酸ナトリウム等の防カビ剤、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤、ギ酸等の調整剤、抗菌剤、抗生物質、香料、酵素、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、色素等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
なお、梅調味液は、予め脱塩して用いることができる。具体的には、イオン交換膜電気透析法等の公知の方法を用い、10重量%以下まで脱塩することが好ましい。これにより、牛以外の、豚、鶏等の家畜に対しても好適な飼料添加物となる。また、牛に対しても、塩分濃度を小さくすることによって、梅調味液におけるクエン酸等の有効成分をより高濃度に与えることができるため有利である。
【0029】
さらに、本発明の飼料添加物は、上記の梅調味液中の糖質を利用して、これに乳酸菌を加え、発酵させて得られる発酵産物を含むことを特徴とする。乳酸は、牛の好物であると同時に、代謝生理系で、乳酸は牛の第一胃から吸収されて肝臓に入ってピルビン酸に変換され、直接TCAサイクルに入り、エネルギー源となるATP生成に寄与する。そのため、脂肪生成系には入らず、牛の肥満を抑制することができる。また、乳酸は牛等の家畜のアッピタイザーとしても寄与する。
したがって、梅調味液を乳酸発酵させることで、家畜の食欲を増進させ、それによってクエン酸等の成分を効率的に摂取させることができる。
乳酸菌の種類、及び乳酸発酵の条件は、梅調味液の成分等に応じて適宜設定することができるが、乳酸菌としては、糖質から乳酸のみを産生するホモ型乳酸菌が好ましい。
【0030】
梅調味液を乳酸発酵させる際には、梅調味液の塩分濃度を予め10重量%以下まで低下させることが好ましい。乳酸菌は本来ある程度の耐塩性を有するが、10重量%以下、好ましくは6重量%以下まで低下させることにより、乳酸菌が増殖し易くなり、発酵を効率的に行うことができる。塩分濃度は、上述のイオン交換膜電気透析法等の方法で脱塩したり、水で希釈する等の方法により低下させることができる。
【0031】
また、乳酸発酵を行う際には、種々の栄養源を添加することができる。例として、ペプトン、酵母エキス等の有機態窒素が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0032】
さらに本発明では、上記の梅調味液、あるいはその発酵液から、ブロック状の飼料添加物を作製することができる。具体的には、梅調味液又は発酵液に、食塩を飽和量以上加え、乾燥させた後、塊状に成形することによって作製することができる。成形する方法は、乾燥したものを型に充填して圧力を加えたり、あるいは、後述するように炭酸カルシウム、リン酸水等を加え撹拌・放置して化学的に固形化させる方法等を適宜採用することができる。
これにより、牛等に舐めさせる食塩塊の形態であって、クエン酸等の梅由来の有効成分が含まれた固形の飼料添加物を得ることができる。
【実施例】
【0033】
次に、実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、これに限定されるものではない。
(実施例1)
梅調味液中の糖を乳酸菌で乳酸に変換し、食塩を加えて濃縮・乾固させ、塊状に成形して牛用の飼料添加物を製造し、乳牛に対する生理的効果をテストした。なお、以下において%の数値は全て重量%を意味する。
【0034】
<実験材料>
(1)発酵に用いた乳酸菌
乳酸菌としては、畜産業で用いられているサイレージ用でLb.plantarumとPediococcus pentosaceusの混合物であるBiomax(兼松食品)、及び梅調味廃液を培地として選抜したLb.plantrum NRIC 1067、Lb.delbrucckii NRIC 1683を用いた。
(2)発酵に用いた培地
株式会社東農園の味梅干し(五代梅)の製造過程で副生する梅調味液を培地として用いた。これには、糖として三温糖、還元水飴、イソマルトオリゴ糖、蜂蜜が総量で16.8%、食塩が12%、調味料としてのアミノ酸、核酸、調味液に漬けることによって白干しから浸出した梅エキス(クエン酸を主とした有機酸、ミネラル等)が含まれている。
塩分濃度を下げるために水で3倍に希釈し、乳酸菌の栄養素として有機態窒素であるペプトン(ミクニペプトン)1%、酵母エキスCMT(Deutsche Hefewerke GmbH & Co oHG)1%、ミーストS(酵母エキス:アサヒフードアンドヘルス)1%、またはコーンスティープリカー(シグマ)1%、必要に応じミネラルとしてKH2PO4 0.2%、MgSO4 0.01%、MnSO4 0.05%を添加した。また、ビタミンのテストでは、乳酸菌が要求するビタミン類として、アスコルビン酸1g/L、ビオチン5μg/L、パントテン酸カルシウム1mg/L、ニコチン酸1mg/L、リボフラビン1mg/Lの混合液を加えた。培地は、28%のアンモニア水でオートクレイブ前にpH6.5に調整した。
【0035】
<実験方法>
(1)乳酸菌の培養
培養容器には、500mlの板口フラスコと2Lのジャーファーメンターを使用した。坂口フラスコの培養においては、28%のアンモニア水でpH6.5に調整した200mlの培地を入れて綿栓を被せ、オートクレイブで121℃、30分間減菌した。一方、種菌を寒天培地で穿孔培養し、金属移植耳を用いて植菌した。乳酸菌は、生成した乳酸で培地のpHが低下することによって活性を失い易いので、大理石の欠片を数個入れて生成された乳酸を中和した。培養は40℃に水温を設定した恒温水槽で行った。
ジャーファーメンター(FM−2000、東京理化)の培養においては、調整した培地1Lを2Lのジャーに充填し、上記の条件でオートクレイブを用いて減菌した。ジャーへの植菌は、200mlの三角コルベンにMRS broth(Becton, Dickinson and Company)培地を用意し、これで乳酸菌を48時間培養して種菌とし、植菌量は培地の5%とした。培養期間中の培地の中和は6N NaOHで常にpH6.0以上に保つように設定した。また、培養温度は40℃、培地の撹拌は125rpmに設定した。
(2)乳酸菌の増殖測定
乳酸菌の生育は、発酵液を経時的に採取し、分光光度計(UV−1200、島津製作所)を用い、660nmで測定し、OD(濁度)で表した。
(3)乳酸、糖、ミネラルの定量
発酵液、及び塊状の飼料添加物に含まれる乳酸はHPLC(日本分光)、糖もHPLC(ダイオネックス)、ミネラルは原子吸光分光光度計(Spectra、A−50、バリアン・テクノロジーズ・ジャパン)を用いて定量した。分析試料は、10,000Gで遠心して乳酸菌を除き、上清を用いた。
(4)水分含量の測定
濃縮・乾固した塊状の飼料添加物の水分測定は、加熱乾燥式水分計(MX−50、エイ・アンド・デイ)を用いて行った。
(5)発酵産物の濃縮と固形化
発酵液に種々の割合で食塩を添加し、減圧濃縮装置(N−11、東京理化機器)で濃縮・乾固させた。濃縮は気圧30hPa、液温60℃の条件で行い、濃縮・乾固後、乾燥機で乾燥させた。得られた食塩の結晶を1cm2当たり300kgの圧力で圧縮、あるいは炭酸カルシウムとリン酸水を加える方法でブロックに成形し、目的の飼料添加物である重量5kgの立方体の食塩塊を作成した。
(6)飼料添加物の乳牛によるテスト
乳牛による摂取試験は、得られた飼料添加物をフィードロットの食塩のテーブルに置き、乳牛に自由に舐めさせた。
【0036】
<実験結果>
(1)梅調味液の希釈倍率と乳酸菌の生育
坂口フラスコを用いて培養実験を行った。梅調味液を水で4倍、6倍、8倍に希釈し、ペプトン1%とミネラルの混合液を加えて72時間の培養を試みた。対照区には、乳酸菌培養に使用されているMRS broth培地を用いた。72時間後の乳酸菌の生育は、対照区のOD値が7.3、梅調味液の4倍希釈区では6.2、6倍希釈区では5.5、8倍希釈区では4.4であった。
4倍希釈区の梅調味液で比較的良好な育成がみられたので、添加物の濃度は前回と同様にして、2倍希釈と3倍希釈の梅調味液で48時間の培養を行った結果、対照区(MRS培地)におけるOD値が8.6であったのに対して、2倍希釈区では9.8、3倍希釈区では10.3となったので、希釈倍率は3倍に決定した。
また、乳業用の乳酸菌であるLb.asidophirusとLb.caseiをそれぞれ3倍希釈の梅調味液の培地(ペプトン1%とミネラルを添加)に植菌し、72時間培養した。対照区にはMRS培地を用いた。Lb.asidophirusでは、72時間でOD値が4.4、Lb.caseiでは4.6であった。
【0037】
(2)乳酸菌Biomaxの生成に対するビタミンの効果
乳酸菌のなかにはビタミンを要求するものがあり、Lb.plantarumとPc.pentosaceusはアスコルビン酸、ビオチン、パントテン酸、ニコチン酸、リボフラビンを要求すると報告されている。
本実験で使用しているBiomaxは両者の混合物であるから、上記のビタミン混合液を与えて、乳酸菌の生育を調査した。
3倍に希釈した梅調味液にペプトン1%、ミネラル混合液を添加し、これを対照区としてビタミンを加えた区を処理区とした。培養を96時間行った結果、対照区のOD値が5.9なのに対して、ビタミン添加区では6.5となり、著しくはないが、乳酸菌の生育に対するビタミンの効果がみられた。
【0038】
(3)乳酸菌Biomaxにおける食塩濃度と生育
梅調味液には12%もの食塩が含まれているため、Biomaxの耐塩性を試験した。このテストにはMRS broth培地を用いた。MRS培地に食塩を2%から12%まで2%刻みで添加し、96時間培養した。対照区は食塩を添加していないMRS培地であり、96時間後のOD値は7.9であった。これに対し、2%添加区では7.7、4%添加区では6.9、6%添加区では4.9、8%添加区では2.4、10%添加区と12%添加区では共に0.2と食塩濃度が増すに伴ってOD値が低下した。これらの結果から、4%までの食塩濃度であれば、Biomaxの生育に支障がなく、10%以下が好ましいことがわかった。梅調味液の食塩濃度が12%であり、3倍に希釈すると4%になるので、本実施例における梅調味廃液の希釈倍率は3倍程度が妥当であると判断した。
【0039】
(4)乳酸菌Biomaxにおける糖濃度と生育
梅調味廃液には総量として16.8%の糖が含まれている。培地中の糖濃度が増加すると、培地の浸透圧が高くなることが予想され、浸透圧が高いと乳酸菌の生育が抑制されると考えられる。
そこで、MRS培地を用いて培地中の糖濃度が乳酸菌Biomaxの生育にどのように影響するかを調べた。MRS培地に2%刻みで10%までグルコースを添加して72時間培養し、乳酸菌の生育を測定した。MRS培地には2%のグルコースが含まれており、これを対照区とした。対照区では、24時間目でOD値が8.0と最高になり、72時間目には低下して7.5となった。これに対しグルコースを添加すると、72時間でもOD値は低下せず、対照区より高くなる傾向を示し、2%添加区(最終濃度4%)の48時間目と72時間目のOD値はそれぞれ8.4と8.5、4%添加区(最終濃度6%)では8.6と8.9、6%添加区(最終濃度8%)では9.0と9.5、8%添加区(最終濃度10%)では9.5と13.1、10%添加区(最終濃度12%)では13.3と18.2と右肩上がりになった。
グルコースの添加による培地の浸透圧の上昇は乳酸菌の代謝活性には影響を与えず、糖濃度が高いと炭素源が豊富に存在するためか、増殖が活発になることを示した。特に、グルコースを10%添加すると最終濃度は12%にもなるが、増殖は阻害されず、OD値をグラフに描くと、72時間まではほぼ直線的になった。この結果から、梅調味廃液中の糖濃度が高いと乳酸菌の生育は活性化され、持続することが明らかになった。
【0040】
(5)乳酸菌Biomaxにおける栄養素としての有機態窒素
これまでの実験では、梅調味液を3倍に希釈し、有機態窒素としてペプトンを添加した培地で培養を行ったが、ペプトン以外の有機態窒素が増殖を促進するかどうかを調べた。有機態窒素であるペプトン、2種の酵母エキス(CMT、ミーストS)、あるいはコーンスティープリカーの添加が乳酸菌の生育に及ぼす効果を比較した。この実験にはBiomaxを用い、ミネラルを添加した培地で120時間培養を行った。
ペプトン1%添加区では、24時間でOD値が2.1、48時間で2倍の4.2、それ以後徐々に増加して96時間で5.0となったが、120時間では4.9に減少した。
酵母エキスCMTを1%添加した区では、24時間でOD値が4.0、48時間で6.0と急速に増殖し、それ以後96時間までは穏やかに増殖して6.1となり、120時間では減少して5.9になった。
酵母エキス・ミーストSを1%添加した区では、24時間でOD値が3.5、48時間で5.6となったが、96時間までOD値はほとんど増加せず、120時間では5.4に低下した。
コーンスティープリカーを1%添加した区では、24時間でOD値が6.6と急激に上昇したが、48時間目から低下して5.6、更に低下して72時間では5.4、120時間では5.2となった。
以上の実験から、有機態窒素の中では、コーンスティープリカーと酵母エキスCMTの効果が高く、同じ酵母エキスでもミーストSは若干劣った。4種類の中では、ペプトンの効果が最も低かった。酵母エキスCMTは高価であり、コーンスティープリカーは価格が安いので。これを添加した培地で乳酸発酵を行うことが望ましいことがわかった。
【0041】
(6)梅調味液を培地とした乳酸菌の選抜
梅調味廃液により適した菌の選抜を行った。選抜された乳酸菌が具備している最小の条件は、より高い耐塩性と安価な有機態窒素で増殖する性質である。
梅調味液を3倍に希釈し、ペプトンを1%加え、1N NaOHでpH6.8に調整した培地に可能性をもつと思われる乳酸菌を植菌して生育を調べた。
上記の培地で72時間培養した後のOD値は、同定株の中ではNRIC 1067とNRIC 1683がいずれも4.9と他の株よりも高かったので、この2つの株を梅調味液に適した乳酸菌として選抜した。
【0042】
(7)乳酸菌NRIC 1067とNRIC 1683の生育
・ Lb.plantarum NRIC 1067
3倍に希釈した梅調味液(食塩濃度4%、糖濃度5.6%)にペプトン1%とミネラル混合物を加え、ジャーファーメンターで216時間培養した。23時間で3.3と急速に増殖したが、その後の増殖は穏やかとなった。しかし、増殖カーブは右肩上がりで、216時間で3.6であった。
コーンスティープリカーを添加した培地で96時間培養したが、24時間でOD値が5.4となり、48時間ではさらに増加して6.7となった。これ以降、OD値は減少し、96時間後は6.4となった。
・ Lb.delbrueckii NRIC 1683
3倍希釈の梅調味液にペプトンを添加した培地で168時間培養した結果、24時間後にOD値が2.8、48時間で4.4となり、それ以降は低下し、168時間では3.8となった。
コーンスティープリカー添加培地で120時間培養した。24時間でOD値は5.6、72時間で7.0にまで上昇し、これ以降は低下して120時間では6.8となった。
これら2種類の有機態窒素を比較すると、梅調味液を基本培地としたとき、両乳酸菌は共通した傾向を示した。すなわち、ペプトン添加培地では、216時間、あるいは168時間の培養期間の途中まで、OD値は右肩上がりの増殖を示したが、最終値は低くなった。一方、コーンスティープリカー添加培地でも、48時間、あるいは72時間で最大値を示し、それ以降は若干低い値となった。また、ODの最大値は、両菌株ともコーンスティープリカー添加培地でみられた。
【0043】
(8)乳酸菌の乳酸生成量に及ぼす有機態窒素の効果
梅調味液を加工して飼料添加物を製造するには、それに含まれる糖を乳酸に変換し、最終的に食塩と乳酸、及び健康機能成分として梅果実から浸出した梅エキス成分(クエン酸を主とした有機酸、及びミネラル類)が含まれていることを条件としている。したがって、梅調味液に含まれる糖は完全に乳酸に変換されることが望ましい。乳酸菌は主に単糖を資化して乳酸に変換するが、ショ糖は資化しない乳酸菌も存在すると言われているので、乳酸発酵液の糖の定量を行い、生産物の値と比較した。実験に用いた梅調味液に含まれる糖を詳細に分析した結果、単糖であるグルコースと果糖がそれぞれ6.4%と4.9%、二糖類のショ糖が5.3%、オリゴ糖と糖アルコール(ソルビトールなど)が総量で0.2%含まれていた。
また、予備実験の結果では、乳酸菌の生育に有機態窒素の種類が関係していたので、有機態窒素の種類を基準にして乳酸生成量をみてみた。有機態窒素の種類としては、実験室レベルで最も一般的に使用されている酵母エキスCMT、ミーストS(ビール酵母の自己消化による酵母エキス)、比較的安価で微生物の培養に用いられているペプトン(ミルクカゼインの酸加水分解物)、工業的な乳酸発酵の栄養資材として使用され、安価なコーンスティープリカー(トウモロコシからデンプンを採った後の残渣の加水分解物)を使用して乳酸の生成量を調べた。
乳酸菌は、耐塩性を確認したBiomax及び調味廃液を培地として選抜したLb.plantarum NRIC 1067とLb.delbrueckii NRIC 1683を用いた。
【0044】
(a)サイレージ用乳酸菌Biomax
Biomaxは、梅調味液を培地として選抜した乳酸菌ではなく、サイレージ生産に有効な乳酸菌として市販されている乳酸菌であるが、これは2種の乳酸菌Lb.plantarumとPc.pentosaceusの混合菌である。3倍希釈の梅調味液にペプトン、酵母エキスCMT、ミーストS(酵母エキス)或いはコーンスティープリカーをそれぞれ1%添加した培地に植菌し、120時間培養して乳酸の生成量を調べた。
酵母エキスCMT添加培地では乳酸生成量が5.9%、ミーストS添加培地では5.4%、ペプトン培地では4.9%、コーンスティープリカー添加培地では8.0%となった。
【0045】
(b)Lb.plantarum NRIC 1067
この乳酸菌においては、ペプトン添加培地で168時間、コーンスティープリカー添加培地で120時間培養した。
ペプトン添加培地では、24時間で2.6%、72時間で4.2%、120時間で4.3%、168時間で4.6%の乳酸を生成した。72時間までの乳酸生成量は順調であるが、それ以降の生成量は鈍化した。
コーンスティープリカー添加培地では、24時間で3.8%、48時間で5.8%、72時間で7.9%、96時間でも7.9%であった。
【0046】
(c)Lb.delbrueckii NRIC 1683
ペプトン添加培地で168時間培養した。乳酸生成量は、24時間で2.8%、72時間で4.9%、120時間で5.4%まで上昇し、その後の増加は穏やかになって168時間では5.7%であった。
コーンスティープリカー添加培地で120時間培養した。乳酸の生成量は24時間で1.7%、72時間で3.9%、120時間で4.7%となり、乳酸生成量はペプトン添加培地より劣っていた。
【0047】
3倍に希釈した梅調味液中には、単糖とショ糖が総量として5.5%含まれているので、これらの糖が完全に乳酸に変換されると、5.5%の乳酸が生成されるはずである。したがって、乳酸生成量が5.5%であれば、梅調味液中の糖が完全に乳酸に変換されたとみなすことができる。そこで、乳酸量5.5%を基準にして菌株と培地の関係をみてみると、Biomaxでは酵母エキスCMT添加培地で5.9%、ミーストS添加培地で5.4%であり、予想値と同等の生成量になっていた。しかし、ペプトン添加培地では生成量は若干低く、乳酸に変換されない糖が残留していたことになるが、発酵液の糖を分析した結果では、単糖類とショ糖は完全にゼロになっていた。NRIC 1067では、ペプトン添加培地で4.6%と低かったが、コーンスティープリカー添加培地で7.9%を示した。NRIC 1683では、ペプトン添加培地で5.7%、コーンスティープリカー添加培地で4.7%であり、BiomaxやNRIC 1067とは逆の結果になった。以上のように実験結果は、各菌株がそれぞれ固有の異なった性質をもっており、使用する菌株によって有機態窒素の種類を選択することが重要であることを示唆した。
この実験で用いた乳酸菌がホモ型であり、理論的には資化した糖の総量と同量の乳酸を生成するはずであるが、コーンスティープリカー添加培地におけるBiomaxやNRIC 1067では、8.0%の乳酸を生成した。このことは、コーンスティープリカーに含まれている少量の糖が乳酸に変換されていること、また、単糖やショ糖を資化して乳酸を生成するだけではなく、糖アルコールや有機酸を資化していた可能性がある。梅調味液と発酵液の糖分析の結果では、梅調味液中に糖アルコール(マニトールかソルビトール)が検出され、発酵液ではその値が減少していた。さらに、分子の大きいオリゴ糖のピークは分子が小さい方へ変化していた。また、有機酸分析の結果では、発酵前のクエン酸量が発酵後には減少していたことから、単糖やショ糖以外の炭素源が資化され、乳酸の生成に寄与したと考えられる。
【0048】
(9)発酵液の濃縮と乾燥
予定した乳酸量が生成された発酵液に異なる比率で食塩(並塩)を加えて目的の飼料添加物を作製した。まず、発酵液1kgに食塩を加え、飽和溶液を作成したが、溶解した食塩量は0.3kgであり、これをNO.1とした。二番目(NO.2)は発酵液1kgに食塩0.5kgを添加したもの、三番目(NO.3)は発酵液1kgに食塩1kgを添加したもの、四番目(NO.4)は発酵液1kgに食塩1.5kgを添加したもの、五番目(NO.5)は発酵液1kgに食塩2kgを添加したものとした。
食塩を加えた発酵液を減圧濃縮装置の10Lのガラス製フラスコに充填し、真空度30hPa、液温60℃で濃縮した。本実施例では、発酵液の量を5kgと一定にしたので、濃縮・乾固時間はほぼ同一であり、要した時間は約4時間であった。濃縮・乾固後の水分含量は、NO.1では2.8%、NO.2では4.0%、NO.3では6.9%、NO.4では3.2%、NO.5では6.3%であった。
次に、すべての固化物を乾燥機の設定温度50℃で6日間乾燥させた。その結果、乾燥物の水分含量は、NO.1では1.0%、NO.2では1.9%、NO.3では0.6%、NO.4では0.4%、NO.5では0.2%となった。
【0049】
(10)乾燥試料の固形化
乾燥した小さな結晶状の食塩は、実体顕微鏡で観察したところ、一片が0.5mm程の立方形の食塩塊の外周に発酵液の有機物が付着し、それが粘着剤となって数個の食塩塊を集積させた塊を形成していた。
このような食塩塊を固形化するために、2通りの方法を用いた。一つは、水分含量1.0%前後に乾燥させた結晶状の食塩を縦・横がそれぞれ162mm、高さ95mmの鉄製の鋳型を作成し、これに乾燥した結晶を充填し、1cm2当たり300kgの圧力で圧搾し、立方体に成形した。この方法では、一挙に5kgの結晶を圧縮機に充填すると、堅さが均一にはならず、少量ずつ充填することによって比較的堅さが均一なブロックに成形できた。
もう一つの方法は、水分含量4.3%の乾燥物4kgに炭酸カルシウム1kgを加えて撹拌・混合し、これに85%リン酸水1kgを徐々に加えて十分に撹拌し、スラッリー状にした。このスラッリーを立方体のプラスチック容器に流し込み、室温で放置したところ、4時間で固形化した。両方法ともに十分な硬度をもつ食塩塊となった。
【0050】
(11)乳牛を用いた飼料添加物のテスト
5kgの立方体に固形化した塊状の飼料添加物5種類を乳牛を用いて試験したところ、飼料添加物を飼育場に持ち込んで準備しているときから、牛は飼料添加物に含まれている乳酸の匂いを嗅ぎつけ、突進してきた。フィードロットの食塩のテーブルに飼料添加物を乗せると、先を争って舐め始めた。5種類の飼料添加物は、それぞれ乳酸と食塩の量比が異なるが、牛が真っ先に口にしたのは乳酸量の最も多いNO.1の飼料添加物であった。
これにより、牛に対する食欲増進効果が認められた。
【出願人】 【識別番号】591112142
【氏名又は名称】株式会社東農園
【出願日】 平成16年2月2日(2004.2.2)
【代理人】 【識別番号】100081271
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 芳春

【公開番号】 特開2005−211036(P2005−211036A)
【公開日】 平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願番号】 特願2004−25469(P2004−25469)