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【発明の名称】 魚餌
【発明者】 【氏名】松田 哲
【住所又は居所】宮崎県東臼杵郡門川町大字加草2725番地 安井株式会社内

【氏名】萩原 武明
【住所又は居所】宮崎県東臼杵郡門川町大字加草2725番地 安井株式会社内

【要約】 【課題】水産廃棄物を主原料とし、可食性副原料のみを使用し、環境、健康的に優れ、保管の容易な魚餌を廉価に提供する。

【解決手段】魚餌を、水産廃棄物を含む水産物を主原料とし、副原料として、多糖類、貝殻、可食性可塑剤、油脂のうち少なくとも1種を破砕混合し、滅菌条件が100℃以上の炭酸ガス超臨界または亜臨界条件で滅菌後、水分率が30重量%未満で、吸水後の比重が1.00から1.15となるように乾燥脱水し、固形状に押し出し成形する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水後の比重が1.00から1.15で、水産物を主原料とし、水分率が30重量%未満であることを特徴とする滅菌固形状魚餌。
【請求項2】
水産物が水産廃棄物を含む請求項1記載の魚餌。
【請求項3】
副原料が多糖類、貝殻、可食性可塑剤、油脂の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載又は請求項2記載の魚餌。
【請求項4】
滅菌条件が100℃以上の炭酸ガス超臨界または亜臨界条件であることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3のいずれかに記載の魚餌。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、魚などの水産廃棄物を主原料とする魚餌に関する。
【背景技術】
【0002】
漁獲される魚の中には魚種により食用に供されず廃棄されるものもあり、魚の加工段階で廃棄される内臓、頭、尾鰭などが水産廃棄物となる。また、鮮度が低下し、食用に不適当になり、水産廃棄物となることもある。
【0003】
特許文献1に水産廃棄物などを寄せ魚餌に加工する方法が提案されている。この提案は原料中の残存水分を固定化し、さらに水中での再分散性を改善する目的で吸水性の物質、例えば澱粉、吸水性パルプ、ポリビニルアルコールなどを混練時に混入し、型に充填し、加熱成形固形化する方法である。しかし、この提案では製品魚餌中の水分が大きく、腐敗、黴発生が起こりやすい欠点がある。また、型に充填した後、加熱するため、生産効率が低く経済的に不利である。
【0004】
特許文献2に発電所や堤防などで多量に発生し、通常廃棄物として処理されるムラサキイガイの有効利用を目的とした魚餌が記載されている。この提案では魚 粉や大豆粕、フィードオイルなどに、ムラサキイガイを可食部として5%以上(乾物換算)含む養魚 用配合飼料および該飼料を使用してなる魚 類の養殖方法であり、飼料中にムラサキイガイを添加することにより、ひらめを始めとする魚 類の摂餌 が刺激され、摂餌 量が増大し、その結果成長が向上するとされている。廃棄物の有効利用であり、魚種に適応した魚餌が養殖に効率的であることを提案している。しかし、原料が特定され汎用性に欠け、また魚粉など高価な原料を使用し、経済的に不利である。
【0005】
特許文献3に植物搾汁滓を利用した魚餌が記載されている。この提案は植物搾汁滓の微生物醗酵物又はその粉砕物を含むマトリックス材料中に炭素原子数が2〜3個である低級アミノ酸Aと炭素原子数が4個以上である高級アミノ酸Bとを、モル比がA/B=1〜40となるように含有させてなる魚介類用餌料である。しかし、この提案では文献2で提案されるような魚介類の自然な餌の観点から栄養成分が偏り乖離している欠点がある。また、高価なアミノ酸を配合することも経済的に不利である。
【0006】
【特許文献1】特開平11−103789号公報
【特許文献2】特開平11−28061号公報
【特許文献3】特願平8−214300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は水産廃棄物を主原料とし、可食性副原料のみを使用し、環境、健康的に優れ、保管の容易な魚餌を廉価に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の魚餌は吸水後の比重が1.00から1.15で、水産廃棄物を含む水産物を主原料とし、副原料が多糖類、貝殻、可食性可塑剤の少なくとも1種で水分率が30重量%未満である100℃以上の炭酸ガス超臨界または亜臨界条件で滅菌後、固形状に成形された魚餌である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の魚餌の比重は1.00から1.15で、用途により比重を調節することが可能であり、魚餌水中沈降速度を適宜選択することができ、摂取効率に優れ経済的である。また、沈降魚餌残渣による養殖環境の劣化を招かない。
【0010】
完全滅菌条件で加工されるため、部分的に腐敗した水産廃棄物も原料として利用することができ経済的である。また、水産廃棄物を適宜選択することにより、魚種に適応した自然餌に近い魚餌を提供することができる。
【0011】
押し出し成形による製造方法であるため、魚餌のサイズは自由に変化させることができ、魚の成長度合いにより調節することが可能である。また、酸化防止に配慮すれば水分率が低いため軽包装で長期保管することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の魚餌は吸水後の比重が1.00から1.15で、水産物を主原料とし、水分率が30重量%未満である滅菌固形状魚餌に関する。また、主原料水産物が水産廃棄物を含み、副原料が多糖類、貝殻、可食性可塑剤の少なくとも1種である魚餌に関する。さらには、滅菌条件が100℃以上の炭酸ガス超臨界または亜臨界条件である魚餌に関する。
【0013】
水産物には魚介類、海藻類などがあり、加工商品化の途上でこれらから除外された部分、例えば魚類の頭、尾鰭、中骨、内臓、貝類の内臓、貝殻、甲殻類の殻、海藻類の根がなどがあり、水産廃棄物として処理されている。
【0014】
本発明の主原料としてこれらの水産廃棄物を利用することができる。また、保管状態が悪く、部分的に腐敗が認められ食用に不適当になった水産物も同様に主原料として使用することができる。水産物の腐敗臭は主にアンモニア、トリメチルアミンおよび硫化水素に起因するが、本発明の製造工程でこれら腐敗臭は反応し別の化合物の形に戻されるため、腐敗臭はしなくなる。
【0015】
本発明の魚餌の製造工程は強力な破砕混合工程、100℃以上の炭酸ガス超臨界または亜臨界条件の滅菌工程、乾燥脱水工程、押し出し成形工程からなる一貫連続工程が好ましい。ちなみに炭酸ガスの超臨界条件は31℃、7MPa以上である。
【0016】
栄養分がそのままで魚の骨が食べられるように加工された缶詰を想起すると本発明工程で処理された骨、貝殻および甲殻類の殻も魚餌として、またその成形に問題ないことが分かる。また貝殻は魚餌の比重調節剤として使用される。成魚の肥育栽培には脂肪の多い魚餌を給餌するが、脂肪が多くなると魚餌の比重は小さくなる。本発明では必要に応じ比重調節剤として、例えばほたて貝の貝殻粉末の真比重は2.7であり、0から15重量%配合される。
【0017】
腐敗は細菌により蛋白質、炭水化物、脂肪などが分解された状態を意味し、細菌そのものに毒性がなく、食用に適する場合は醗酵と称される。魚の干物であるクサヤや魚醤はその典型的なものである。腐敗したものを摂取すると繁殖している細菌が人体に毒素を出し、悪影響を及ぼすため、中毒が発生する。従って、腐敗しているものであっても完全滅菌すれば細菌は死滅するため摂取しても人体に害はなく、どうように魚にも害はない。
【0018】
水産廃棄物には水分が多く含まれているが乾燥脱水工程および押し出し成形工程で30重量%以下に調整する。押し出し時圧力を高圧にすると発泡状態に成形することもできる。魚餌に独立気泡を含ませると見かけ比重を小さくすることができ、沈降速度を遅くすることができる。連続気泡は吸水、膨潤速度を大きくすることができる。
【0019】
魚種およびその成長度により摂取する餌は自然界でも異なるため、魚餌の栄養組成、形状、水中沈降速度、水中崩壊速度、臭いなどを自然界の状態に近い状態にすることが望ましい。本発明の方法ではその実現が容易である。魚餌は最終的には生息環境から除外される必要があるため、沈降させる必要がある。淡水と海水により異なるが、これらの比重より大きいことが必要である。水の比重は温度により異なるが1から0.995、海水の比重は場所と温度により異なるが1.028から1.020である。魚餌比重が1.00未満では淡水においても長期に水面に浮遊し、腐敗が起こり、魚の生息環境を汚染する。魚餌比重が1.15を越えると海水中であっても沈降速度が大き過ぎ、魚餌の摂取効率が低下する。また、底に沈降した魚餌が腐敗し、生息環境を汚染する。
【0020】
生カタクチイワシの成分は水分72重量%、蛋白質21重量%、脂肪5重量%、灰分2重量%で食品廃棄率は35%である。比重は1.106である。脂肪の多いサバの成分は水分66重量%、蛋白質21重量%、脂肪12重量%、灰分1%で食品廃棄率は40%である。比重は1.066である。カタクチイワシもサバも海水中で静止しすると浮かばず沈むことになる。食性に応じ魚餌の比重も適宜選択する必要がある。
【0021】
水産廃棄物のみでは崩壊速度が大き過ぎることがある。水産廃棄物の繋ぎ材料として多糖類を使用することにより、本発明の魚餌の強度を向上し、膨潤速度および崩壊速度を低下することができる。多糖類としては澱粉、セルロース、ヘミセルロースなどを使用する。多糖類が多く含まれるイモ類、穀類などをそのまま使用することもできる。多糖類の配合量は魚種により異なる。また、澱粉、セルロースなどは比重が1.5と大きいので、脂肪分が多い材料の場合は比重を大きくするための増量剤としても使用することができる。
【0022】
水は可塑剤として作用する。押し出し成形をより容易にするためにさらに可塑剤を使用することもある。添加する可塑剤には可食性のグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールなどがある。経済的な点で可食性可塑剤の重量配合量は10重量%未満、好ましくは5重量%未満である。
【0023】
本発明の魚餌にビタミン、ミネラル、色素、脂肪などの許可された添加剤を必要に応じ、混合または配合し、使用することもできる。また、他の魚餌を併用することもできる。また本発明の魚餌は押し出し機によるペレット状成形物を粉砕することにより、稚魚や小魚用に粉末状成形することもできる。
【0024】
魚餌の比重の測定は魚餌小片を不織布製ティーバッグに入れ純水に1時間浸漬後、遠心脱水機で付着水を除去し、ティーバッグごと秤量瓶に移し計量し、ティーバッグ重量を差し引いた重量X1を求め、次に、標線まで純水Wを加え計量しX2を求めた。予め秤量瓶の質量X0と標線までの純水の質量W0、ティーバッグの容量TVを求め、計算式SG=X1/(W0+X1−X2−TV)から吸水後の魚餌比重SGを求めた。
【実施例1】
【0025】
生カタクチイワシ100重量部、コーンスターチ10重量部、ソルビトール3重量部、炭酸水素ナトリウム粉末1重量部を投入し、破砕混合工程で粉砕混合したスラリーをせん断力下、180℃、3MPaで滅菌処理を行った。連続して減圧脱水乾燥し、スラリー水分を35重量%に調整し、直径3mmのノズルからダイス圧力0.93MPaで押し出し、ホットカッターでカットし、47個/100grのペレットに成形された本発明の魚餌を製造した。ペレットに生カタクチイワシの生臭い臭いは消失していた。缶詰の水煮のような臭いがし、焼き魚の焦げた臭いはしなかった。
【0026】
ペレットの水分を80℃、1時間熱風乾燥機による乾燥前後の質量を計量し、測定した結果、27重量%であった。ポリエチレン内装25kg用紙袋にヒートシールし、30日間倉庫に保管した後、開封し外観、異臭の発生を確認したが、黴の発生、腐敗は認められず、臭いも変わらなかった。
【0027】
吸水後のペレットは外観上大きさに明確な変化は認められなかったが、その比重は1.033であった。計算上は体積で約20%膨潤していることになる。吸水前後のペレット強度も十分で、移送等での粉砕はほとんど認められなかった。
【0028】
本発明魚餌の成分は粗蛋白39重量%、脂肪9重量%、灰分3重量%であった。また、常温海水中沈降速度を測定した結果、約1.8m/分であった。沈降するまでに魚が摂取するに十分な時間があることが確認できた。
【0029】
1歳ブリ、平均体重840grの飼育試験1日1回飽食給餌を本発明魚餌で行った、比較区画では冷凍カタクチイワシを解凍し、そのまま使用した。夏季120日飼育後、平均体重は2,020grまで増加した。生存率は57%であった。比較平均体重は2,040gr、生存率は54%であり、体重増加率、生存率ともに有意差は認められなかった。
【実施例2】
【0030】
実施例1と同様にして主原料を生カタクチイワシ50重量部、養殖鯉の内臓45重量部に変更し、さらに帆立貝の貝殻粉末5重量部を比重調節剤として加え、本発明の魚餌を製造した。本発明魚餌の成分は粗蛋白21重量%、脂肪22重量%、灰分8重量%、比重1.008であった。120日養殖後の平均体重は2,490grまで増加した。製品ペレットを搬送、梱包する際に若干粉の発生が認められたが、実用上問題のない程度であった。
【実施例3】
【0031】
実施例1と同様にして副原料にコーンオイル20重量部、帆立貝の貝殻粉末7重量部を比重調節剤として加え、本発明の魚餌を製造した。本発明魚餌の成分は粗蛋白24重量%、脂肪23重量%、灰分8重量%、比重1.008であった。120日養殖後の平均体重は2,530grまで増加した。
【実施例4】
【0032】
実施例1と同様にして副原料を加えずに本発明の魚餌を製造した。本発明魚餌の成分は粗蛋白53重量%、脂肪13重量%、灰分5重量%、比重1.135であった。120日養殖後の平均体重は2,120grまで増加した。
【出願人】 【識別番号】595026520
【氏名又は名称】安井株式会社
【住所又は居所】宮崎県東臼杵郡門川町大字加草2725番地
【出願日】 平成15年10月31日(2003.10.31)
【代理人】 【識別番号】240000039
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所

【公開番号】 特開2005−130823(P2005−130823A)
【公開日】 平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願番号】 特願2003−373214(P2003−373214)