| 【発明の名称】 |
マグロの普通筋の褪色抑制方法および飼料 |
| 【発明者】 |
【氏名】塩谷 格 【住所又は居所】東京都八王子市北野町559−6 日本水産株式会社中央研究所内
【氏名】竹内 美奈子 【住所又は居所】東京都八王子市北野町559−6 日本水産株式会社中央研究所内
【氏名】湯口 和幸 【住所又は居所】東京都八王子市北野町559−6 日本水産株式会社中央研究所内
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| 【要約】 |
【課題】加工後の普通筋の色調変化が鮮度の変化と同調するマグロの魚肉の提供。
【解決手段】トウガラシおよび/またはトウガラシ成分を配合したマグロ用飼料。配合したトウガラシおよび/またはトウガラシ成分が、その飼料を摂餌したマグロの加工後の普通筋の色調変化を、その成分を配合していない飼料を摂餌した養殖あるいは蓄養マグロの加工後の普通筋の色調変化よりも遅らせる作用をもつ。トウガラシおよび/またはトウガラシ成分がカプサイシン類を含むものである。上記飼料を用いてマグロを養殖する方法、または養殖したマグロからマグロの魚肉を調整するマグロの普通筋の褪色を抑制する方法。上記方法により養殖されたマグロ属(Thunnus)の魚。上記方法により調整されたマグロ属(Thunnus)の魚の魚肉。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 トウガラシおよび/またはトウガラシ成分を配合したマグロ用飼料。 【請求項2】 配合したトウガラシおよび/またはトウガラシ成分が、その飼料を摂餌したマグロの加工後の普通筋の色調変化を、その成分を配合していない飼料を摂餌した養殖あるいは蓄養マグロの加工後の普通筋の色調変化よりも遅らせる作用をもつことを特徴とする請求項1のマグロ用飼料。 【請求項3】 トウガラシおよび/またはトウガラシ成分がカプサイシン類を含むものである請求項1または2のマグロ用飼料。 【請求項4】 トウガラシおよび/またはトウガラシ成分を含有する飼料を用いてマグロを養殖する方法。 【請求項5】 上記の飼料をマグロに給餌し、その中に配合されたトウガラシおよび/またはトウガラシ成分により、加工後の普通筋の色調変化を、その成分を配合していない飼料を摂餌した養殖あるいは蓄養マグロの加工後の普通筋の色調変化よりも遅らせているマグロに改質する請求項4のマグロを養殖する方法。 【請求項6】 トウガラシおよび/またはトウガラシ成分がカプサイシン類を含むものである請求項4または5のマグロを養殖する方法。 【請求項7】 トウガラシおよび/またはトウガラシ成分を含有する飼料を用いて養殖したマグロからマグロの魚肉を調整することを特徴とするマグロの普通筋の褪色を抑制する方法。 【請求項8】 上記のマグロの魚肉が、トウガラシおよび/またはトウガラシ成分を配合していない飼料を摂餌した養殖あるいは蓄養マグロの加工後の普通筋の色調変化よりもその色調変化が緩慢になり鮮度の変化と同調するようにされたマグロの魚肉である請求項7のマグロの普通筋の褪色を抑制する方法。 【請求項9】 トウガラシおよび/またはトウガラシ成分がカプサイシン類を含むものである請求項7または8のマグロの普通筋の褪色を抑制する方法。 【請求項10】 請求項4、5または6の方法により養殖されたマグロ属(Thunnus)の魚。 【請求項11】 請求項7,8または9の方法により調整されたマグロ属(Thunnus)の魚の魚肉。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明はマグロの可食部として経済的価値の高い普通筋の色調を長時間保持し、色調変化を遅らせるマグロ用飼料およびその飼料を与えられたマグロの魚肉に関する。 【背景技術】 【0002】 マグロ属の魚類は生食としての消費量が多いが、その価値は一般的な可食部である普通筋の色と脂肪交雑の程度(脂ののり具合)に左右される。脂肪交雑の程度は生時も死後も変化しないが、普通筋の色は刺身、寿司ネタ、ネギトロ等に加工した後、徐々に赤みが失われて行く。したがって、たとえ普通筋の鮮度は良かったとしても、赤色が褪色した場合には経済的価値が著しく低下する。 【0003】 マグロの色調保持方法としては例えば、一酸化炭素による肉の赤色保持方法が知られている。この方法は、マグロ肉を一酸化炭素(CO)に接触させることで、筋肉色素であるミオグロビン(Mb)と一酸化炭素(CO)を結合させてカルボニルミオグロビン(MbCO)に変化させ、色調変化に関係するミオグロビンのメト化を抑制するものである。メト化が停止したマグロ肉は色調が変化しないために、鮮度が変化しても肉の色は変わらず、外観と鮮度が一致しないことから消費者を惑わすものとして禁止されている。 【0004】 ところで近年、マグロ幼魚あるいは産卵後のマグロなどを捕獲し、生簀で太らせるマグロの蓄養が盛んに行われ、蓄養マグロあるいは養殖マグロと呼ばれ生産量を急速に伸ばしている。現在、蓄養されているのは、ホンマグロ、ミナミマグロ、メバチマグロ、キハダマグロなどである。また、最近ホンマグロにおいてはライフサイクルを全て人為的に制御できる完全養殖の技術が確立されつつある。一般に蓄養マグロは天然マグロと比べて、加工後の普通筋の色調変化が速いと言われている。普通筋の色はマグロの経済的価値を左右する重要な因子である。蓄養マグロの普通筋はその色調変化の速さから、たとえ生食可能な高鮮度品であっても、褪色による色の悪さのために経済的価値が損なわれる事態がたびたび懸念されている。 【0005】 ところで、主要な養殖魚種であるアジ科のブリは、血合筋の色調変化が速やかに進行するため、加工後の色調保持が重要視されていた。この課題について塩谷らは、トウガラシあるいはトウガラシ成分を含有する飼料をブリに給餌することにより、血合筋の色調変化を抑制できることを見出している(特許文献1参照)。しかしながら、血合筋と普通筋では、機能形態的にも生理的にも生化学的にも多くの相違があることが知られている。例えば、血合筋は普通筋よりもミトコンドリアが多く、クレブス回路の酵素の比活性が高く、平常の遊泳に活用される。一方、普通筋は爆発的遊泳時に活用され、解糖系酵素の比活性が高い(非特許文献1参照)。したがって、蓄養マグロの普通筋の色調変化が鮮度変化と同調する、すなわち見た目の鮮度と生化学的鮮度を一致させ、経済的価値の持続時間を長くさせる方法が望まれていた。 【0006】 【特許文献1】特開平11‐2666792号公報 【非特許文献1】低酸素適応の生化学. P.W.ホチャチカ 著, 橋本周九,阿部宏喜,渡部終五 訳. 恒星社厚生閣( 1984), p.98-112. 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は、養殖あるいは蓄養マグロの普通筋の色調変化を緩慢にするために当該魚の潜在能力を最大に引き出し、加工後の肉色の褪色を遅らせる方法及びそれを可能にするマグロ用飼料を提供することを目的とする。 また、本発明は、一酸化炭素を用いて色調を保持する方法の様に人為的に筋肉色素を変化させるのではなく、また、加工後に抗酸化剤等をしようするのでもなく、マグロの体質を改善させる天然食品素材を配合するマグロ用飼料を提供することを目的とする。 また、本発明は、加工後の普通筋の色調変化が通常の養殖あるいは蓄養マグロと比べて緩慢になり、鮮度の変化と同調するようにされた、養殖あるいは蓄養マグロの魚肉を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者らは上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、トウガラシあるいはトウガラシ成分を配合した飼料が魚類血合筋だけでなくマグロの普通筋の色調変化を緩慢にすることを見いだし本研究を完成するに至った。 【0009】 本発明は、下記(1)ないし(3)のマグロ用飼料を要旨とする。 (1)トウガラシおよび/またはトウガラシ成分を配合したマグロ用飼料。 (2)配合したトウガラシおよび/またはトウガラシ成分が、その飼料を摂餌したマグロの加工後の普通筋の色調変化を、その成分を配合していない飼料を摂餌した養殖あるいは蓄養マグロの加工後の普通筋の色調変化よりも遅らせる作用をもつことを特徴とする上記(1)のマグロ用飼料。 (3)トウガラシおよび/またはトウガラシ成分がカプサイシン類を含むものである上記(1)または(2)のマグロ用飼料。 【0010】 本発明は、下記(4)〜(6)のマグロの養殖方法を要旨とする。 (4)トウガラシおよび/またはトウガラシ成分を含有する飼料を用いてマグロを養殖する方法。 (5)上記の飼料をマグロに給餌し、その中に配合されたトウガラシおよび/またはトウガラシ成分により、加工後の普通筋の色調変化を、その成分を配合していない飼料を摂餌した養殖あるいは蓄養マグロの加工後の普通筋の色調変化よりも遅らせているマグロに改質する上記(4)のマグロを養殖する方法。 (6)トウガラシおよび/またはトウガラシ成分がカプサイシン類を含むものである上記の(4)または(5)のマグロを養殖する方法。 【0011】 本発明は、下記(7)〜(9)のマグロの普通筋の褪色を抑制する方法を要旨とする。 (7)トウガラシおよび/またはトウガラシ成分を含有する飼料を用いて養殖したマグロからマグロの魚肉を調整することを特徴とするマグロの普通筋の褪色を抑制する方法。 (8)上記のマグロの魚肉が、トウガラシおよび/またはトウガラシ成分を配合していない飼料を摂餌した養殖あるいは蓄養マグロの加工後の普通筋の色調変化よりもその色調変化が緩慢になり鮮度の変化と同調するようにされたマグロの魚肉である上記(7)のマグロの普通筋の褪色を抑制する方法。 (9)トウガラシおよび/またはトウガラシ成分がカプサイシン類を含むものである上記(7)または(8)のマグロの普通筋の褪色を抑制する方法。 【0012】 本発明は、下記(10)のマグロ、および(11)のマグロの魚肉を要旨とする。 (10)上記(4)、(5)または(6)の方法により養殖されたマグロ属(Thunnus)の魚。 (11)上記(7)、(8)または(9)の方法により調整されたマグロ属(Thunnus)の魚の魚肉。 【発明を実施するための最良の形態】 【0013】 以下に本発明を具体的に記載する。 本発明においてマグロとは、サバ科マグロ属(Thunnus)の魚類である。すなわち、本発明が対象とするマグロは、サバ科マグロ属の魚類であるホンマグロ、ミナミマグロ、メバチマグロ、キハダマグロなどが例示される。 【0014】 本発明においてトウガラシとは、ナス科トウガラシ属の植物である。トウガラシ属の植物にはトウガラシ、パプリカ、ピーマン等がふくまれる。辛味種と呼ばれるトウガラシでは、その最も大きな特徴である辛味成分(カプサイシン、ジヒドロカプサイシンなど)を含んでいる〔食材図典. 小学館(1995). p.228-229.〕。また、トウガラシ果実はビタミンCに富み(120mg/100g)、果実の乾燥品はリン(260mg/100g)やカリウム(2800mg/100g)が豊富で、カロテン(17000μg/100g)やビタミンE(30.7mg/100g)にも富み、ビタミンB群やパントテン酸等も含んでいる〔香川芳子 監修. 五訂食品成分表. 女子栄養大学出版部(2001). p.82-83.〕。 【0015】 本発明においてトウガラシは、トウガラシそのもの、トウガラシ粉末、あるいは成分の混合物でもよく、トウガラシ成分とは、トウガラシの抽出物、あるいはカプサイシン類として精製されたものでもよい。カプサイシンは油性であるから、抽出物は油性抽出物である。なお、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン等は、合成品、天然物、精製品、混合物を問わない。 本発明は、普通筋の色調変化遅延効果を有する天然素材として、ナス科トウガラシ属の植物由来の素材あるいは抽出物を含有することを特徴とするマグロ用飼料である。飼料へ配合するトウガラシは乾燥粉末が使用しやすいが、乾燥果実、生果実等を用いることもでき使用形態的な限定はない。 【0016】 本発明の飼料はトウガラシを配合できる飼料であれば、粉状、ペレット状、練り餌状等何でも良い。モイストペレット、EP(Extruded pellet)、マッシュなどが例示される。飼料の組成は、魚粉、糟糠類、ビタミン類、ミネラル類、油脂その他の通常使用されるものでよく、マグロ属の魚類の生育に適する配合であれば良い。マグロでは生餌も使用されるので鮮魚、凍結魚にトウガラシを注入、含浸させるなどしたものでもよい。本発明のトウガラシまたはトウガラシ成分の効果はエクストルーダ処理(高温高圧処理)した飼料でも維持される。 【0017】 本発明のトウガラシおよび/またはトウガラシ成分はマグロの飼料に配合して給餌する。養殖期間中継続して摂取させてよいが、特に、出荷前の少なくとも1〜3ヶ月間餌に混合して給餌するのが好ましい。トウガラシの添加量は、カプサイシン量として1〜1000ppm(飼料の乾燥重量当たり)程度、好ましくは、5〜300ppm程度が適当である。トウガラシ中のカプサイシン量はトウガラシの種類によって異なる。例えば、トウガラシの乾燥重量当たりのカプサイシン類の含量が0.35%程度のトウガラシの場合、トウガラシの添加量は0.03〜10%(飼料の乾燥重量当たり)程度、好ましくは0.1〜5%、特に好ましくは0.2〜1.0%の添加量である。トウガラシの種類によって適宜増減する。 本発明のトウガラシおよび/またはトウガラシ成分を添加して養殖したマグロは通常と同様の保存、流通、加工をしてよい。通常の処理をしても、トウガラシおよび/またはトウガラシ成分を添加しないマグロ肉に比較して、褪色が抑制される。 【作用】 【0018】 マグロの体質を改善させる天然食品素材(トウガラシおよび/またはトウガラシ成分)を飼料に配合することにより、該飼料を摂餌した養殖あるいは蓄養マグロは、潜在能力が最大に引き出され、普通筋の色調変化が緩慢になり、一酸化炭素を用いて色調を保持する方法の様に人為的に筋肉色素を変化させるのではなく、また、加工後に抗酸化剤等をしようするのでもなく、加工後の肉色変化が緩慢になり、鮮度の変化と同調するようになった魚肉を市場に提供することができる。 【0019】 以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。 【実施例1】 【0020】 <材料と方法> 試験前年の夏期から秋期にかけて、長崎県沖で捕獲されたマグロ幼魚を鹿児島県奄美大島まで曳航し、試験魚とした。35m×50mの楕円形で深さ38mの生簀を2面用い、生簀1面を1試験区として生餌区およびEP区を設定した。収容尾数を各々約1500尾とした。 【0021】 生餌区では捕獲後から試験開始まで近海物の冷凍サバ、アジおよびコオナゴのみを給餌し、試験開始後も生餌を引き続き給餌した。EP区ではトウガラシを配合していないEPをEPへの馴致用飼料として試験開始まで6ヶ月間給餌した。その際、生餌とEPを1日毎に交互に給餌してマグロをEPへ餌付かせた。試験開始と同時に原料粉体中にトウガラシ(カプサイシン類含量0.35%)を0.4%配合したEPへ切り替えた。 【0022】 EPの成分分析値を表1に示した。水分含量が6.3%、粗タンパク含量が38.6%、総脂質が29.4%であった。 【0023】 【表1】
【0024】 給餌期間を6週間とした。生餌区は毎日約900kgの生餌を給餌した。EP区は3日連続でEPを約300kgづつ給餌し、4日目には生餌を1200kg給餌することを繰り返した。給餌期間中に台風の影響などによる休餌日が11日間あった。各試験区の6週間の総給餌量は、生餌区では生餌を約30,380kg、EP区ではEPが約5,110kg、生餌が約11,750kgであった。給餌量を乾物重量に換算すると生餌区が約9,110kg、EP区が約8,330kgであった。EP区の乾物総給餌量に占めるEPの割合は約58%であった。 【0025】 品質比較を試験開始時、給餌6週間後に実施した。試験開始時および給餌6週間後に、生餌区およびEP区からそれぞれ3尾づつ生簀から釣り上げた。いずれの場合も船上に水揚げされたマグロの胸鰭下部を直ちに鋭利な刃物で刺して出血させてから、延髄を潰して脊髄に針金を通し即殺した。その後直ちに鰓と内臓を抜き取り、氷を入れた海水で冷却した。 【0026】 試験開始時の試験魚の平均体重は生餌区が8.1±0.5kg、EP区が4.3±1.9kgであった。給餌6週間後の試験魚の平均体重は生餌区が11.2±0.9kg、EP区が7.1±3.3kgであった。生餌区とEP区の体重差は、EPへの馴致期間中に生じた体重差である。 【0027】 試験開始時および給餌6週間後の試験魚はいずれも水揚げ翌日に氷蔵のまま東京まで空輸し、東京着翌日に解体した。各試験魚の背側筋部分を活〆56時間後に厚さ約1cmの短冊状に5枚づつ切りだし、遮光保湿箱中(4℃)に静置した。 【0028】 刺身の色については、経時的に色彩色差計(ミノルタ製CR-300)を用いてL*a*b*を測定し数値化した。試験開始時および給餌6週間後のサンプルは、いずれも試験サンプル切りだし直後(活〆56時間後)の色を基準とし、冷蔵で活〆72時間後、96時間後の色変化を色差ΔE*a*b*で算出した。色彩色差計による色差の程度の標語を表2に示した。 【0029】 L*a*b*表色系は物体の色を表すのに、現在あらゆる分野で最もポピュラーに使用されている表色系で、色を空間座標で示す。明度をL*、a*とb*は色の方向を示しており、a*は赤方向、‐a*は緑方向、b*は黄方向、‐b*は青方向を示す。ΔE*ab(色差)は色の違いを座標間の距離で数量的に表す。基準色とした活〆56時間後のマグロ肉のデータを(L*t、a*t、b*t)、測定データ(活〆72時間後あるいは96時間後)を(L*、a*、b*)とすると、以下の計算式でそれぞれの差が得られる。 ΔL*=L*−L*t、Δa*=a*−a*t、Δb*=b*−b*t L*a*b*空間における2つのデータ間の色差ΔE*abは以下の式で得られる。 ΔE*ab=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2 参考:色彩色差計CR-300シリーズ取扱説明書、MINOLTA〔本機種はCIE(国際照明委員会)の勧告およびJISを採用〕、色をはかる、平井敏夫、日本規格協会、1993 【0030】 【表2】
【0031】 活〆72時間後(刺身加工16時間後)のサンプルについてATP関連化合物を抽出し、K値を算出した。具体的には、試料約1gからATP関連化合物を過塩素酸で抽出した後、水酸化カリウムで中和した。抽出操作はすべて氷冷下で行なった。中和液中のATP関連化合物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した。分析条件を以下に示した。 HPLC:SHIMADZU SPD-10A UVdetector カラム:YMC-Pack ODS-A 150×6.0mm(YMC社製)、カラム温度:40℃ 展開溶媒:A) 0.2M TEAA(pH6.60) B)TEAA(pH6.60)/acetonitrile(95/5,v/v) 4%B(0‐5min), 4‐100%B(5‐30min, linear) 流速:1.0ml/min、検出波長:260nm、サンプル注入量:20μl また、K値を以下の式で算出した。 K値=((イノシン+ヒポキサンチン)/(ATP+ADP+AMP+IMP+イノシン+ヒポキサンチン))×100 【0032】 <結果> 各サンプリング毎のL*a*b*の経時変化(3尾平均)を表3と表4に示した。 【0033】 【表3】
【0034】 【表4】
【0035】 試験開始時では生餌区、EP区ともにほぼ同様の普通筋の色調変化を示した。すなわち、活〆56時間後の色を基準としたときに活〆72時間後のΔE*abは生餌区が3.0、EP区が3.1であり、同様に活〆96時間後では生餌区が3.9、EP区が4.8であった(図1)。一方、給餌6週間後では生餌区とEP区の普通筋の色調変化に違いが認められた。すなわち、活〆56時間後の普通筋の色調を基準としたときに活〆72時間後のΔE*abは生餌区が2.8、EP区が1.9であり、同様に活〆96時間後では生餌区が4.8、EP区が2.9であり、生餌区と比べてEP区の普通筋の色調変化が少ないこと、つまり色調変化が遅延されていることが示された(図2)。また、トウガラシを配合していない飼料を給餌していた試験開始時の肉の色変化と比べて、トウガラシ配合飼料を6週間給餌した場合は顕著に普通筋の色調変化が遅く、トウガラシ配合飼料によって普通筋の色調変化が遅延されることが示された。 【0036】 EP区の各測定時の普通筋の色調を基準として、対応する測定時の生餌区の色差を図3に示した。試験開始時では保存期間を通じてEP区と生餌区の色差ΔE*abは0.6〜1.8で、EP区と生餌区の魚の普通筋の色調はほぼ同じであり、かつ経時的な色調変化も近似していたこと示された。一方、給餌6週間後のEP区と生餌区の色差ΔE*abは、保存時間の経過とともに値が大きくなり、EP区と生餌区の普通筋の色調の違いが時間の経過と共に大きくなっていくことを示していた。すなわち活〆56時間後では2.0、活〆72時間後では4.0、活〆96時間後では4.5であり、EP区は生餌区と比べて普通筋の色調変化が遅いことが示された。 【0037】 活〆72時間後の各試験区のK値は、生餌区が12、EP区が11であり、鮮度変化に関しては両者に相違は認められず、いずれも高鮮度を維持していた(図4)。 一般にK値が低ければ鮮度が良いということができ、K値が20%以下であれば刺身として極めて良好な鮮度といえる(魚の科学、鴻巣章二監修、阿部宏喜・福家眞也編、朝倉書店、1994)。 図2と図3で示したように活〆72時間後ではEP区と生餌区で普通筋の色調の違いが認められている。したがって、生餌区はK値を指標した場合には高鮮度品であるにもかかわらず、普通筋の色調が褪色し経済的価値が損なわれていたといえる。一方、EP区ではK値を指標した場合に高鮮度品であり、かつ普通筋の色調も良好な赤さを保っており、鮮度と色変化が同調していた。 【0038】 以上の結果より、トウガラシ配合EPをマグロに6週間給餌することで、生餌を給餌したマグロと比べて普通筋の色調変化を遅らせ、鮮度に同調した良好な色調を保持することが示された。 【実施例2】 【0039】 <材料と方法> 実施例1の試験終了後、いずれの試験区も1ヶ月間生餌を給餌した後、再度同様の給餌試験を行った。トウガラシ配合飼料も実施例1と同じEPを使用した。 給餌期間を2ヶ月間とした。生餌区は毎日約1,200kgの生餌を給餌した。EP区はEPと生餌を毎日交互に給餌し、EPは毎回約200kg、生餌は毎回1,200kg給餌することを繰り返した。各試験区の2ヶ月間総給餌量は、生餌区では生餌を約72,000kg、EP区ではEPが6,000kg、生餌が36,000kgであった。給餌量を乾物重量に換算すると生餌区が約21,600kg、EP区が約16,440kgであった。EP区の乾物総給餌量に占めるEPの割合は約34%であった。実施例1と同様に水揚げし、試験魚の平均体重は生餌区が14.9±3.1kg、EP区が9.8±3.6kgであった。色変化測定を活〆56、72、120時間後に行い、K値測定を活〆72時間後に行った。色変化およびK値の測定方法は実施例1と同一条件で行った。 各試験区のL*a*b*の経時変化(3尾平均)を表5に示した。 【0040】 【表5】
【0041】 <結果> 活〆56時間後の普通筋の色調を基準としたときに活〆72時間後のΔE*abは生餌区が2.9、EP区が2.7であった。同様に活〆120時間後では生餌区が10.5、EP区が3.7であり、EP区は生餌区と比べて普通筋の色調変化が少ないことが示された(図5)。 【0042】 EP区の各測定時の普通筋の色調を基準として、対応する測定時の生餌区の色差を図6に示した。EP区と生餌区の色差ΔE*abは、保存時間の経過とともに値が大きくなった。すなわち活〆56時間後では1.5、活〆72時間後では2.4、活〆120時間後では7.0であり、EP区は生餌区と比べて普通筋の色調変化が遅く、良好な色調を保持していたことが示された。 【0043】 活〆72時間後の各試験区のK値は、生餌区が13、EP区が10であり、鮮度変化に関しては両者に相違は認められず、いずれも高鮮度を維持していた(図7)。図5と図6で示したように活〆72時間後ではEP区と生餌区で肉色の違いが認められている。したがって、生餌区はK値を指標した場合には高鮮度品であるにもかかわらず、普通筋の色調が褪色し経済的価値が損なわれていたといえる。一方、EP区ではK値を指標した場合に高鮮度品であり、かつ普通筋の色調も赤さを保っており、鮮度と色変化が同調していた。 【0044】 以上の結果より、マグロに乾物総給餌量中の1/3程度のトウガラシ配合EPを2ヶ月間給餌することで、生餌のみを給餌したマグロと比べて普通筋の色調変化を遅らせ、かつ鮮度に同調した良好な普通筋の色調を保持することができた。 【産業上の利用可能性】 【0045】 本発明により、養殖あるいは蓄養マグロの普通筋の色調変化を緩慢にするために、当該魚の潜在能力を最大に引き出し、加工後の肉色の褪色を遅らせることが可能なマグロ用飼料を提供することができる。 本発明により、一酸化炭素を用いて色調を保持する方法の様に人為的に筋肉色素を変化させるのではなく、また、加工後に抗酸化剤等をしようするのでもなく、マグロの体質を改善させる天然食品素材を配合するマグロ用飼料を提供することができる。 加工後の普通筋の色調変化が通常の養殖あるいは蓄養マグロと比べて緩慢になり、鮮度の変化と同調するようになる、本発明の飼料を摂餌した養殖あるいは蓄養マグロの魚肉を提供することができる。 【図面の簡単な説明】 【0046】 【図1】実施例1における、試験開始時の各試験区の刺身の冷蔵中の色差変化を示すグラフである。 【図2】実施例1における、給餌6週間後の各試験区の刺身の冷蔵中の色差変化を示すグラフである。 【図3】実施例1における、冷蔵中の刺身の試験区間の色差変化を示したグラフである。 【図4】実施例1における、給餌6週間後の各試験区のマグロの活〆72時間後のK値を示すグラフである。 【図5】実施例2における、給餌2ヶ月後の各試験区の刺身の冷蔵中の色差変化を示すグラフである。 【図6】実施例2における、冷蔵中の刺身の試験区間の色差変化を示したグラフである。 【図7】実施例2における、給餌2ヶ月後の各試験区のマグロの活〆72時間後のK値を示すグラフである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000004189 【氏名又は名称】日本水産株式会社 【住所又は居所】東京都千代田区大手町2丁目6番2号
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| 【出願日】 |
平成16年6月14日(2004.6.14) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100102314 【弁理士】 【氏名又は名称】須藤 阿佐子
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| 【公開番号】 |
特開2005−27664(P2005−27664A) |
| 【公開日】 |
平成17年2月3日(2005.2.3) |
| 【出願番号】 |
特願2004−175209(P2004−175209) |
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