| 【発明の名称】 |
サケの肉色改善方法および肉色改善剤性組成物 |
| 【発明者】 |
【氏名】塩谷 格 【住所又は居所】東京都八王子市北野町559−6 日本水産株式会社中央研究所内
【氏名】竹村 秀平 【住所又は居所】東京都八王子市北野町559−6 日本水産株式会社中央研究所内
【氏名】吉富 文司 【住所又は居所】東京都八王子市北野町559−6 日本水産株式会社中央研究所内
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| 【要約】 |
【課題】養殖サケの普通筋の色を天然サケと同様な赤橙色とすると共に褪色しにくくすること。
【解決手段】トウガラシおよび/またはトウガラシ成分、必要に応じさらにアスタキサンチン、を摂取させてサケの肉色を改善するサケの肉色改善方法。トウガラシおよび/またはトウガラシ成分、必要に応じさらにアスタキサンチン、を有効成分として含有するサケの肉色改善性組成物、具体的にはサケ用肉色改善剤またはサケ用飼料。上記成分は、摂餌したサケの普通筋の赤橙色色素であるアスタキサンチンの蓄積を増強し、より赤橙色を強くするのに有効な成分として含有する。上記トウガラシおよび/またはトウガラシ成分は、カプサイシン類を含むものである。上記の肉色改善方法により飼育されたサケおよびサケの魚肉。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 トウガラシおよび/またはトウガラシ成分を摂取させてサケの肉色を改善することを特徴とするサケの肉色改善方法。 【請求項2】 トウガラシおよび/またはトウガラシ成分がカプサイシン類を含むものである請求項1のサケの肉色改善方法。 【請求項3】 アスタキサンチンを更に摂取させる請求項1または2のサケの肉色改善方法。 【請求項4】 トウガラシおよび/またはトウガラシ成分を有効成分として含有することを特徴とするサケの肉色改善性組成物。 【請求項5】 摂餌したサケの普通筋の赤橙色色素であるアスタキサンチンの蓄積を増強し、より赤橙色を強くするのに有効な成分として含有する請求項4のサケの肉色改善性組成物。 【請求項6】 トウガラシおよび/またはトウガラシ成分がカプサイシン類を含むものである請求項4または5のサケの肉色改善性組成物。 【請求項7】 アスタキサンチンを更に含有する請求項4、5または6のサケの肉色改善性組成物。 【請求項8】 サケ用肉色改善剤である請求項4ないし7のいずれかのサケの肉食改善性組成物。 【請求項9】 サケ用飼料である請求項4ないし7のいずれかのサケの肉食改善性組成物。 【請求項10】 請求項1、2または3の肉色改善方法により飼育されたサケ。 【請求項11】 請求項1、2または3の肉色改善方法により飼育されたサケの魚肉。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、サケの肉色改善方法、サケ肉色改善性組成物(剤および飼料)、および該肉色改善方法で飼育されたサケおよびその魚肉に関する。より詳細には、天然のサケに近い、鮮明できれいな赤い肉色を長く保持するサケを生産することのできるサケの肉色改善方法、サケ肉色改善剤およびサケの飼育用飼料、並びに前記飼育方法によって生産されたサケおよびその魚肉に関する。 【背景技術】 【0002】 天然のサケの魚肉は天然の餌に含まれるアスタキサンチンを蓄積して独特の赤橙色を呈している。養殖のサケでは、その肉色を天然のサケと同様の赤橙色にするために、飼料にアスタキサンチンを添加して給餌している。アスタキサンチンは高価であったり、色褪せしやすいことから各種の工夫がされている(特許文献1等参照)が、未だ十分ではなく、一層の改善が求められている。 【0003】 主要な養殖魚種であるアジ科のブリは、血合筋の色調変化が速やかに進行するため、加工後の色調保持が重要視されていた。この課題について塩谷らは、トウガラシあるいはトウガラシ成分を含有する飼料をブリに給餌することにより、血合筋の色調変化を抑制できることを見出している(特許文献2参照)。 【特許文献1】米国特許4,871,551号明細書 【特許文献2】特開平11‐2666792号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 太平洋サケ属および大西洋サケ属の魚類であるサケは、筋肉内にカロテノイド色素を蓄積することで普通筋が鮮やかな赤橙色を呈するのを特徴とする。サケの価値は一般的な可食部である普通筋の色に左右される。普通筋の色はフィレー、スキンレスフィレー、刺身、寿司ネタ、切り身等に加工した後、徐々に赤みが失われて行く。赤みが褪色した魚肉は経済的価値が著しく低下する。 本発明は、養殖サケの普通筋の色を天然サケと同様な赤橙色とすると共に褪色しにくくする方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0005】 上記特許文献2には、トウガラシ成分が血合筋の色調保持に有効であることが開示されているが、本発明者らは、ミオグロビンの赤色が関与する血合筋とは異なり、赤色色素のアスタキサンチンの蓄積による赤橙色を呈するサケの普通筋において、トウガラシ成分によりアスタキサンチンの蓄積が増強されること、さらに、切り身等にした後の肉色の褪色が抑制されることを見出し、本発明を完成させた。 【0006】 本発明は、下記の(1)〜(3)のサケの肉色改善方法である。 (1)トウガラシおよび/またはトウガラシ成分を摂取させてサケの肉色を改善することを特徴とするサケの肉色改善方法。 (2)トウガラシおよび/またはトウガラシ成分がカプサイシン類を含むものである上記(1)のサケの肉色改善方法。 (3)アスタキサンチンを更に摂取させる上記(1)または(2)のサケの肉色改善方法。 【0007】 また、本発明は、下記の(4)〜(9)のサケの肉色改善性組成物である。 (4)トウガラシおよび/またはトウガラシ成分を有効成分として含有することを特徴とするサケの肉色改善性組成物。 (5)摂餌したサケの普通筋の赤橙色色素であるアスタキサンチンの蓄積を増強し、より赤橙色を強くするのに有効な成分として含有する上記(4)のサケの肉色改善性組成物。 (6)トウガラシおよび/またはトウガラシ成分がカプサイシン類を含むものである上記(4)または(5)のサケの肉色改善性組成物。 (7)アスタキサンチンを更に含有する上記(4)、(5)または(6)のサケの肉色改善性組成物。 (8)サケ用肉色改善剤である上記(4)ないし(7)のいずれかのサケの肉食改善性組成物。 (9)サケ用飼料である上記(4)ないし(7)のいずれかのサケの肉食改善性組成物。 【0008】 さらに、本発明は、下記(10)のサケおよび(11)のサケの魚肉である。 (10)上記(1)、(2)または(3)の肉色改善方法により飼育されたサケ。 (11)上記(1)、(2)または(3)の肉色改善方法により飼育されたサケの魚肉。 【発明の効果】 【0009】 養殖サケの普通筋の色を天然サケと同様な赤橙色とすると共に褪色しにくくする方法を提供することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0010】 以下に本発明を具体的に記載する。 本発明において、サケとはサケがサケ科太平洋サケ属(Oncorhynchus)あるいはサケ科大西洋サケ属(Salmo)に属する魚類である。すなわち、本発明が対象とするサケとしては、サケ科太平洋サケ属、あるいは、サケ科大西洋サケ属の魚類であるギンザケ、トラウト、ベニザケおよびアトランティックサーモンなどが例示される。 【0011】 本発明において、トウガラシおよび/またはトウガラシ成分とは、トウガラシそのもの、トウガラシ粉末、あるいは、トウガラシ抽出物でもよい。トウガラシの辛味成分であるカプサイシン類(カプサイシン、ジヒドロカプサイシン等合成品、天然物、精製品、混合物を問わない。)を含有するものがよい。 トウガラシはナス科トウガラシ属の植物で、その原産地は中南米と考えられている。トウガラシ属の植物にはトウガラシ、パプリカ、ピーマン等がふくまれる。辛味種と呼ばれるトウガラシでは、その最も大きな特徴である辛味成分(カプサイシン、ジヒドロカプサイシンなど)を含んでいる。また、トウガラシ果実はビタミンCに富み(120mg/100g)、果実の乾燥品はリン(260mg/100g)やカリウム(2800mg/100g)が豊富で、カロテン(17000μg/100g)やビタミンE(30.7mg/100g)にも富み、ビタミンB群やパントテン酸等も含んでいる。 【0012】 飼料へ配合する場合は、トウガラシの乾燥粉末が使用しやすいが、乾燥果実、生果実等を用いることもでき使用形態的な限定はない。 本発明の飼料はトウガラシおよび/またはトウガラシ成分を配合できる飼料であれば、粉状、ペレット状、練り餌状等何でも良い。モイストペレット、EP(Extruded Pellet)、マッシュなどが例示される。飼料の原料は、魚粉、糟糠類、ビタミン類、ミネラル類などからなる、通常用いられている、サケ科の魚類の生育に適する配合であれば良く、本発明のトウガラシまたはトウガラシ成分の効果はエクストルーダ処理(高温高圧処理)しても維持される。 【0013】 本発明のトウガラシおよび/またはトウガラシ成分はアスタキサンチンの蓄積を増加させる効果を有するので、サケの飼料にアスタキサンチンを一緒に配合するのが好ましい。養殖期間中継続して摂取させてよいが、特に、アスタキサンチンを飼料に添加する時期にアスタキサンチンと共に餌に混合して給餌するのが好ましい。少なくとも、出荷前の1〜3ヶ月間以上アスタキサンチンと共に餌に混合して給餌するのが好ましい。アスタキサンチンの配合量は通常サケ飼料に配合される量である40〜100ppm(飼料の乾燥重量当たり)程度、トウガラシの添加量は、カプサイシン量として1〜1000ppm(飼料の乾燥重量当たり)程度、好ましくは、5〜300ppm程度が適当である。トウガラシ中のカプサイシン量はトウガラシの種類によって異なる。例えば、トウガラシの乾燥重量当たりのカプサイシン類の含量が0.35%程度のトウガラシの場合、トウガラシの添加量は0.03〜10%(飼料の乾燥重量当たり)程度、好ましくは0.1〜5%、特に好ましくは0.2〜1.0%の添加量である。トウガラシの種類によって適宜増減する。 【0014】 [作用] トウガラシおよび/またはトウガラシ成分を飼料に配合することにより、該飼料を摂餌した養殖サケは、赤橙色色素であるアスタキサンチンの蓄積が増強し、より赤橙色が強くなる。あるいは、飼料に添加するアスタキサンチンの配合量を減少させても同程度の赤橙色のサケを得ることができる。また、切り身等への加工後の褪色が遅く、長い時間、赤橙色を維持することができる。 【0015】 以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。 【実施例1】 【0016】 <材料と方法> ・試験区 (A)コントロール区;マダイEP5(日本水産株式会社製)(30ppmカロテノイド含有;一般成分:水分6.8%、タンパク質50.8%、総脂質14.3%、粗灰分11.6%、粗繊維16.5%)を飽食給餌した。 (B)カプサイシン区;マダイEP5にカプサイシンを300ppm添加したものを飽食給餌した。 ・供試魚;各試験区ニジマス15尾ずつ ・試験期間;16日間 17日目に供試魚を延髄切断により即殺し、ドライアイス+アセトンにより凍結後、-20℃で38日間保存した。 ・カロテノイド分析 上記試験区について、それぞれ4尾を用いカロテノイドの分析を行った。クロロホルム・メタノール(=2:1)により供試魚の背側普通筋からカロテノイドを抽出し、抽出したカロテノイドをクロロホルムに溶解して一定容積とし、吸光光度計によりλ=478nmの吸光度を測定して総カロテノイド量を求めた(吸光係数=2200)。クロロホルムで定容したサンプルを用いて、TLCによりカロテノイドの分析を行った(展開相;アセトン:ヘキサン=1:1、固定相;シリカゲル)。 【0017】 <結果> 表1に示すように、カプサイシン区ではコントロール区に比べ総カロテノイド量が約58%多かった。魚肉の総脂質量は試験区間で大きな差はなかった(コントロール区;2.84%、カプサイシン区;2.54%)。抽出したカロテノイドを薄層クロマトグラフィにより展開したが、両試験区においてアスタキサンチン以外の主要な色素は存在していないことが確認された。 以上より、飼料へカプサイシンを添加することにより、サケ普通筋でアスタキサンチン蓄積率が向上することが示された。 【0018】 【表1】
【実施例2】 【0019】 <材料と方法> 宮城県女川町の養殖業者が養殖しているトラウトを供試魚とした。養殖業者の生簀は、一辺が6.5mの八角形生簀で、通常EPを給餌した生簀を通常飼料区、トウガラシ(カプサイシン類含量0.35%)を0.4%配合したトウガラシ配合飼料を給餌した生簀をトウガラシ区とした。 【0020】 飼料の成分分析値を表2に示した。水分含量が14.0%、粗タンパク含量が35.7%、総脂質が23.4%であった。 【0021】 【表2】
【0022】 それぞれの飼料を3ヶ月間給餌後に、各試験区5尾づつ、通常行われている活〆方法(活〆具を用いた延髄刺殺)で水揚げした。各試験区の平均魚体重は、通常飼料区が1.5±0.2kg、トウガラシ区が1.9±0.5kgであった。 活〆40時間後に、普通筋を厚さ6mmの刺身に切り分け、色彩色差計(ミノルタ製CR-300)を用いて色調測定を行い、a*とb*からa/b値を算出した。L*a*b*表色系ではa*は赤方向、b*は黄方向を示しており、a/b値が大きければ赤味が強いことを示している。活〆84時間後には厚さ2cmの切り身を調製し、フィッシュロースターで加熱後に官能評価を実施した。具体的には、切り身を10%食塩水に1分間浸漬し、水切りを30分間行った後、フィッシュロースターで15分間加熱し、焼き魚とした。色調について通常飼料区を基準としたときのトウガラシ区の相対評価を±3点で数値化した。パネルを13名とした。 【0023】 <結果> 活〆40時間後の刺身の色調を表3に示した。通常飼料区ではa*が13.61±1.99、b*が20.26±2.31、トウガラシ区ではa*が15.90±1.65、b*が22.10±1.94であった。また、a/b値は、通常飼料区では0.67±0.04、トウガラシ区では0.72±0.05であった。活〆40時間後において、トウガラシ区の普通筋では通常飼料区と比べて赤橙色、黄色とも保持され、赤橙色と黄色の比率においても、外観上、良好な色調を保持していた。 【0024】 【表3】
【0025】 活〆84時間後の焼き魚の官能評価結果を表4に示した。通常飼料区の色調を基準としたときのトウガラシ区の相対評価点は1.77±0.73であった。活〆84時間後において、トウガラシ区では通常飼料区と比べて普通筋の色調が保持され、焼き魚にした場合でも良好な色調を保持していた。 【0026】 【表4】
+側は官能的に色が濃いことを示し、−側は官能的に色が薄いことを示し、−3〜+3点の範囲で評価した。 【実施例3】 【0027】 <材料と方法> 平均体重366.8gの海水馴致ニジマスを15尾ずつ3基の1t水槽へ収容した。試験区を通常飼料区、トウガラシ区、カプサイシン区とした。通常飼料区では通常EP、トウガラシ区では通常EPにトウガラシ(カプサイシン類含量0.35%)を0.25%配合したEP、カプサイシン区では通常EPにカプサイシンを0.03%配合したEPを用いた。給餌期間を16日間とし、各試験区とも飽食となるまで給餌した。 試験開始から17日後に各試験区とも供試魚の延髄を切断して即殺し、直ちにフィレー加工後に4℃にて保存した。フィレー加工直後と19時間後に、背側普通筋について色彩色差計(ミノルタ製CR-300)を用いて色調を測定した。 【0028】 <結果> 赤さを示すa*値について、フィレー加工直後の値を基準としたときの加工後19時間冷蔵保存後のa*値の保持率について表5に示した。通常飼料区ではa*値保持率が94.2%に低下し、赤さが弱まった。一方、トウガラシ区とカプサイシン区ではa*値保持率がそれぞれ105.3%と100.9%であり、19時間の冷蔵中に赤さが強まったかほとんど変化しなかった。 【0029】 【表5】
【産業上の利用可能性】 【0030】 本発明により、同量のアスタキサンチンを添加した飼料を用いても、養殖サケの普通筋の赤橙色がより濃くなり、またその褪色が遅延されるので、より商品価値の高いサケを提供することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000004189 【氏名又は名称】日本水産株式会社 【住所又は居所】東京都千代田区大手町2丁目6番2号
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| 【出願日】 |
平成16年6月10日(2004.6.10) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100102314 【弁理士】 【氏名又は名称】須藤 阿佐子
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| 【公開番号】 |
特開2005−27662(P2005−27662A) |
| 【公開日】 |
平成17年2月3日(2005.2.3) |
| 【出願番号】 |
特願2004−172198(P2004−172198) |
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