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【発明の名称】 卵黄からリン含有物質の製造方法
【発明者】 【氏名】山口 信哉

【氏名】内沢 秀光

【要約】 【課題】卵黄から健康上安全な方法で、しかも簡易に、安価な方法でリン脂質の含有量の高い物質を製造する。

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵黄に25%〜35%(v/v)のエタノールを加えて十分混合撹拌し、沈澱を除去した後、エタノールの終濃度が65%〜75%(v/v)になるようにエタノールを添加し、混合後、エタノール不溶物質を生じさせ、これを除去した後、エタノールを溜去することにより、リン脂質高含有物質を製造する方法、およびこの物質。
【請求項2】
または請求項1の方法により卵黄からコレステロールやトリグリセリドを除去する方法、およびその方法で得られた低コレステロール、低トリグリセリド物質のリン脂質含有物質。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、卵からリン脂質を高純度に含有する物質を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リン脂質は生体膜系を構成する主要な脂質であるが、リン脂質の一つであるレシチンは、脳細胞にとって非常に重要な物質であり、体の新陳代謝、脂肪代謝や基礎代謝に関与していると言われている。特に妊娠時においては羊水中に一定の濃度が必要であり、生命を維持するのに必須な成分である。このことから、レシチンは食品ばかりでなく、医薬品や化粧品の材料としても利用されている。一方卵にはレシチンをはじめとするリン脂質が多く含まれていることから、卵からリン脂質を製造することは、伝統的に行われてきた。
【0003】
従来、卵からリン脂質を製造するためには、卵黄を焙焼する方法や卵黄から有機溶媒を用いて抽出する方法があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上に述べた従来のリン脂質の製造法に関して、焙焼法はリン脂質の含有量が数%と低く、脂質全体が製造過程において熱酸化されるため、その品質は高いとは言えない。また、製造するにあたって、労力と手間がかかる方法である。
【0005】
一方、有機溶媒にて製造する方法は、エタノール以外の有機溶媒、メタノール、アセトン、エーテル、クロロホルム、ヘキサンなどは健康上の理由から、食品として口に入れる用途では使用できないため、利用に制限があった。更に、これらの有機溶媒を使用すると、卵黄に含まれているトリグリセリドやコレステロールもリン脂質と共に抽出製造されるため、リン脂質の含有率が高まらない。また、一般的な有機化学的、生化学的な方法であるクロマト処理などによって、共存するトリグリセリドやコレステロールを除去する方法もあるが、労力と時間とコストがかかり、産業上の利用には欠点であった。
【0006】
本発明はこのような従来の卵からのリン脂質の製造法の問題を解決しようとするものであり、品質の優れたリン脂質を多く含む物質の製造法及び、健康上問題がなく、コスト的にも安く簡易である製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は上記目的を達成するために、卵黄を25%〜35%(v/v)のエタノールにて十分混合撹拌し、沈澱を除去し、エタノール溶液にそのエタノール濃度が65%〜75%(v/v)になるように高濃度のエタノールを添加し、混合後、再びエタノール不溶物質を除去し、エタノールを溜去することによりリン脂質含量の高い物質を製造できることを見出したものである。
【0008】
上記方法の解決手段による作用は、第一に最初に25%〜35%(v/v)エタノールを使用することにより、卵黄に存在しているコレステロールやトリグリセリドの抽出を抑制できたことである。第二にその上清に65%〜75%(v/v)になるように高濃度のエタノールを添加することにより、リン脂質と共存するコレステロールを除去することが可能になり、相対的にリン脂質の含有比率が高くなったことである。
【発明の効果】
【0009】
上述したように本発明は、使用する溶媒はエタノールのみであるので、品質が良く、健康上害のない方法でリン脂質を高純度に製造可能であるとともに、また製造工程において加熱する必要もないので脂質の酸化が抑制され、高品質のリン脂質を提供することができる。さらに、製造工程が簡易であるため、労力やコストがかからない安価な方法を提供することができる。
【課題を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明についてその好ましい様態をあげ、より具体的に述べる。
【0011】
卵白と分離した卵黄に、卵黄の数倍量の重量の25%〜35%(v/v)のエタノールを加え、機械式攪拌機などを用いて、十分、混合する。これを遠心分離などによって沈殿部分を除き、製造効率をあげるために、再びその沈殿部分に25%〜35%(v/v)のエタノールを加え機械式攪拌機などを用いて、十分混合する。また、これを遠心分離などによって沈殿部分を除く。必要があれば、数回この操作を繰り返す。この数回の操作で得られた上清部分を集め、次にこの上清のエタノールの終濃度が65%〜75%(v/v)になるように高濃度のエタノールを添加し、十分混合する。再び、遠心分離やろ過などにより沈殿部分を除去した後、上清のエタノールを減圧式蒸溜装置などを用いて溜去すると高純度のリン脂質が得られ、完成である。
【0012】
更に、純度を高めたいときは、常法により、この得られたリン脂質を含有する物質を乾固後、高純度(おおよそ95%(v/v)以上)のエタノールを添加し、リン脂質を含有する物質をエタノールに溶解させ、不溶部分を除去し、エタノール可溶部分のみを回収、このエタノールを再び、減圧式蒸溜装置などを用いて溜去してもよい。
【0013】
また、上記エタノールに再溶解させるときに、アセトン以外のメタノール、エーテル、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサンなどの有機溶媒を添加し、リン脂質を含有する物質を溶解させ、不溶部分を除去し、有機溶媒の溶解部分のみを回収し、この有機溶媒を再び減圧式蒸溜装置などを用いて溜去することでさらに高純度のリン脂質を製造できるが、この場合は、健康上の問題があるので、食用に供することはできない。
【0014】
また、上述したエタノールに再溶解させるときに、アセトンを使用したときは、逆にアセトンの溶解部分を除去し、不溶部分を回集することにより高純度のリン脂質を製造することも可能であるが、この場合も健康上問題があるので、食用に供することはできない。
【0015】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これは単に例示の目的で述べるものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものでない。
【実施例】
【0016】
鶏卵2個の卵白を分離した卵黄36.4g(新鮮重)に30%(v/v)エタノールを145.6ml加え、ジューサーで2分間攪拌する。この溶液を3,000回転で遠心分離し、上清と沈殿に分離する。この沈殿に再び、30%(v/v)エタノールを145.6ml加え、ジューサーで2分間攪拌する。この溶液を3,000回転で遠心分離し、上清と沈殿に分離する。さらにこの沈殿に30%(v/v)エタノールを145.6ml加え、ジューサーで2分間攪拌する。この溶液を3,000回転で遠心分離し、上清と沈殿に分離する。この3回分の上清を集め、容量を測定したところ、415mlであった。この上清に終濃度70%になるように99.5%(v/v)エタノールを553ml添加し混合した。このとき不溶部分が生じたので、この溶液をまた、3,000回転で遠心分離し、沈殿を除去する。この上清をエバポレーターを用いてエタノールを溜去し、蒸発乾固した。
【0017】
この重量を測定したところ、2.3gであった。この得られたものを硫酸にて湿式分解した後、過酸化水素で分解し、Fiske−Subbarow法により分析し、リン酸二水素カリウムを検量線としてリン重量の25倍した値をもってリン脂質の重量を測定したところ、リン脂質の含量は82.4%であった。
【0018】
さらにこの物質のトリグリセリドの量をアセチルアセトン法を用いた和光純薬社製のトリグリセライドテストワコー(商品名)で測定したところ、トリオレイン換算量で0.11gであった。コレステロール量はAbell−Kendall法により測定したところ、0.11gであった。
【出願人】 【識別番号】591005453
【氏名又は名称】青森県
【出願日】 平成16年3月3日(2004.3.3)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−245418(P2005−245418A)
【公開日】 平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願番号】 特願2004−101305(P2004−101305)