| 【発明の名称】 |
渋味・収斂味を呈しにくい加工食品 |
| 【発明者】 |
【氏名】杵川 洋一
【氏名】北畠 直文
【氏名】佐野 弘明
【氏名】江頭 俊彦
|
| 【要約】 |
【課題】酸性域で渋味や収斂味を呈するタンパク質及び/又はポリフェノール類を高濃度で含有させても、これら物質に由来する渋味や収斂味を呈しにくい加工食品を提供する。
【解決手段】酸性域で渋味又は収斂味を呈する食品素材タンパク質及びポリフェノール類から選ばれる少なくとも一種の物質をキシログルカンと併用する。前記食品素材タンパク質には、牛乳タンパク質、大豆タンパク質または卵白タンパク質などが含まれ、ポリフェノール類には、タンニン、タンニン酸、エピガロカテキンガレート(EGCG)などのカテキン類、没食子酸、コーヒー酸やクロロゲン酸などの一般的に渋味・収斂味を呈するものが含まれる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 酸性域で渋味又は収斂味を呈する食品素材タンパク質及びポリフェノール類から選ばれる少なくとも一種の物質とキシログルカンを併含することを特徴とする、渋味・収斂味を呈しにくい加工食品。 【請求項2】 前記食品素材タンパク質が牛乳タンパク質、大豆タンパク質または卵白タンパク質である請求項1の加工食品。 【請求項3】 渋味物質としてポリフェノール類を含む食品にキシログルカンを添加してなるものである請求項1の加工食品。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、酸性域で渋味又は収斂味を呈するタンパク質やフェノール類を含むにもかかわらず、酸性域で渋味又は収斂味を呈しにくい加工食品に関する。 【背景技術】 【0002】 苦味や渋味を呈する食品としては、例えばビールや渋茶がある。これらの食品が呈する苦味や渋味は、食品自身の特長となっており、消費者には問題なく受け入れられている。しかし、一般的には、苦味や渋味は強度が高いと不快感を感じるものである。 【0003】 キニーネなどに代表される苦味は、舌上皮細胞上に存在するレセプターを介した反応であることが知られている。一方、例えば渋茶を口に含んだ場合に感じる渋味は、茶中のタンニンなどのポリフェノール類が唾液中のタンパク質(プロリン・リッチ・プロテイン)と凝集体を形成し、これらが舌上皮や口腔内の上皮に存在する脂質二重層膜に沈殿することによる味刺激であることが報告されており(非特許文献1参照)、苦味と渋味は全く異なる食味であることが知られている。 【0004】 酸性域(低pH)の食品としては、飲料,ワイン,ゼリーデザート,たれ・ソース・ドレッシング,乳製品,菓子,漬け物,スープ,ジャム,果物,発酵食品などがあるが、これらはいずれも高い嗜好性を持ち、一般的に液状からゾル状のものが多い。 【0005】 一方、健康補助食品,医療食品,高齢者対応機能性食品,介護食品,病者用食品、スポーツ栄養補強食品などは機能性素材、特にタンパク質を高濃度含有するものが多いが、これらは一般的に栄養やその他の機能が食味に優先されるケースが多いため、概して不味なものが多い。そこで、タンパク質高含有の前記食品群に、酸性域食品のさわやかな酸味を付与すれば嗜好性に優れた、いわゆる機能性食品類を調製することができると考えられる。しかし、酸性域で栄養価の高いタンパク質、例えば乳清タンパク質やカゼインなどの牛乳タンパク質、大豆タンパク質や鶏卵白タンパク質などを高濃度含有させた加工食品を調製することは食味の点で困難である。なぜならば、これらのタンパク質は酸性域で極めて強い渋味・収斂味を呈するからである。 【0006】 そこで、タンパク質素材を高濃度含有しても、酸性域において不快な渋味や収斂味を呈しにくい加工食品の製造技術が得られれば、前記の健康補助食品や介護食品などを、よりおいしく、食べやすくすることができる。 【0007】 また、カテキンなどのポリフェノール類は痩身効果などの機能性に優れていることが報告されているが、多量に摂食する場合は、やはり食味の点で問題がある。そこで、これらのポリフェノール類の渋味・収斂味を低減させることができれば、いわゆる健康食品や医療食品をより食べやすくすることができる。 【0008】 飲料などの渋味・収斂味の改善方法としては、一般的には甘味を有する糖類や核酸などを添加する方法が知られている。これらは、渋味そのものを消去するのではなく、渋味刺激を強い甘味やうま味でカバーするものである。甘味糖以外では、スクラロース(特許文献1参照)やアスパルテーム(特許文献2参照)などを用いた方法が知られている。また、キトサン類(特許文献3参照)、モノまたはジグリセリド・ポリカルボン酸エステルの金属塩またはアミノ酸塩(特許文献4参照)などの、マスキング剤を添加する方法も知られている。あるいは、野菜汁、果汁や茶抽出物中に存在するアルカロイド類やポリフェノール類による苦味、渋味、収斂味の改善にアルギン酸塩、ペクチンやカルボキシメチルセルロースなどのカルボキシル基を有する水溶性多糖類と糖アルコールが有効である(特許文献5参照)ことも報告されている。 しかし、酸性域(低pH域)における乳タンパク質、大豆タンパク質や鶏卵白タンパク質などが呈する渋味・収斂味の低減化技術などは発明されていない。 【特許文献1】特開平10−262601号公報 【特許文献2】特開平10−248501号公報 【特許文献3】特開2000−229862号公報 【特許文献4】特開平8−332051号公報 【特許文献5】特開2003−116496号公報 【非特許文献1】Haslam&Lilley,Critical Reviews in Food Science and Nutrition, 1988 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明は、酸性域で渋味や収斂味を呈するタンパク質及び/又はポリフェノール類を高濃度で含有させても、これら物質に由来する渋味や収斂味を呈しにくい加工食品を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明で定義する収斂味とは、強度の渋味刺激、長時間持続する渋味刺激である。 本発明では酸性域で渋味又は収斂味を呈する食品素材タンパク質及びポリフェノール類から選ばれる少なくとも一種の物質をキシログルカンと併用することにより、前記課題を解決した。 【0011】 すなわち、牛乳タンパク質、大豆タンパク質や卵白タンパク質などと、キシログルカンを併用することにより、酸性域(低pH)で渋味・収斂味を呈しにくいタンパク質高含有固形状、ゼリー状、ゾル状または液状の加工食品を製造すること、および、渋味物質としてタンニン酸などのポリフェノール類を含有する食品にキシログルカンを添加することにより渋味・収斂味を低減させることを可能とした。 【0012】 牛乳タンパク質としては、例えばチーズやバター・カゼイン製造工程の副産物として得られた乳清中のタンパク質画分を、例えば限外濾過法やクロマトグラフィなどにより濃縮・精製したものを用いる。また、WPC(Whey Protein Concentrate)、WPI(Whey Protein Isolate)、TMP(Total Milk Protein)、MPC(Milk Protein Concentrate)あるいはコプレシピテイト(Co precipitate)などの牛乳乳清タンパク質や牛乳カゼインを用いることができる。牛乳カゼインは、ナトリウム、カルシウム、カリウムまたはマグネシウム塩も利用できる。 【0013】 大豆タンパク質としては、脱脂大豆中のタンパク質画分を濃縮・精製したもので、濃縮大豆タンパク質、抽出大豆タンパク質および大豆タンパク質分離物が利用できる。 卵白タンパク質は鶏卵白中のタンパク質画分を濃縮・精製したものを利用することができ る。 いずれのタンパク質も精製度合いとしては特に限定されないが、イオン強度25mM以下が望ましい。 【0014】 ポリフェノール類としては、タンニン、タンニン酸、エピガロカテキンガレート(EGCG)などのカテキン類、没食子酸、コーヒー酸やクロロゲン酸などの一般的に渋味・収斂味を呈するものである。 【0015】 キシログルカンは、植物の細胞壁(一次壁)に普遍的に存在する構成糖鎖であり、1,4−β―グルカン主鎖のグルコース残基にα−1−6結合したキシロースから構成されているカルボキシル基を有しない多糖類である(林,キシログルカン,生化学,69,1997)。本発明で使用するキシログルカンは、特に限定されないが、アガリクスやヤマブシタケなどの茸類由来やタマリンドなどの種子類由来のものを利用することができる。 【0016】 加工食品の終pHとしては弱〜酸性域間で特に限定されないが、一般的に5〜2.5が利用される。ポリフェノール類を含有する食品のpHは特に限定されない。 【0017】 加工食品におけるタンパク質濃度は特に限定されないが、0.5〜20重量%が望ましい。また、ポリフェノール類の濃度と渋味・収斂味の強度も、特に限定されないが、タンニン酸が0.001〜3mMで示す渋味・収斂味と同等の範囲であるのが望ましい。 【0018】 なお、キシログルカンの添加量としては、特に限定されないが、タンパク質1に対して重量比で、0.0025以上添加するのが望ましく、通常0.0025〜4程度、特に0.05〜2程度添加するのが望ましい。また、ポリフェノール類1に対しては、重量比で0.5以上添加するのが望ましく、所望に応じて、60,000程度まで添加してもよい。溶液におけるキシログルカンの添加量は、0.05〜2重量%程度であるのが望ましい。 【0019】 本発明の加工食品の性状は特に限定されないが、液状、ゾル状、ゼリー状が望ましい。液状食品としては、例えば嗜好性飲料、スポーツ飲料、健康補助食品、医療食品、高齢者対応機能性食品、介護食品や病者用食品などである。ゼリー状食品、ゾル状食品としては、例えばデザート類、健康補助食品、医療食品、高齢者対応機能性食品、介護食品、病者用食品やスポーツ栄養補強食品などである。また、菓子類、食肉・水産加工品などの固形状食品にも利用することができる。 【0020】 酸性域において食品タンパク質が渋味・収斂味を呈するであろうと言うことは、これまでに漠然と知られていた。しかし、牛乳乳清タンパク質の酸性域における渋味・収斂味については詳細な研究はなかった。発明者らは、渋味の定量系を確立することにより酸性領域において牛乳乳清タンパク質、牛乳カゼインや大豆タンパク質が未変性/変性に関わらず、渋味・収斂味を呈することを見いだした(江頭、佐野、杵川、北畠,日本食品科学工学会2003年度大会)。 【発明の効果】 【0021】 本発明では、乳清タンパク質、カゼイン、大豆タンパク質および卵白タンパク質が酸性域で呈する強い渋味・収斂味をキシログルカンを共存させることで低減することにより、これらのタンパク質を酸性域の加工食品用素材として利用することが可能となる。また、ポリフェノール類が呈する渋味・収斂味をキシログルカンを共存させることで低減させることができる。本発明により得られた渋味・収斂味低減方法は、呈味性に優れた健康補助食品、医療食品、高齢者対応機能性食品、介護食品、病者用食品やスポーツ栄養補強食品などの高タンパク質含有食品やポリフェノールリッチ食品に利用することが可能である。また、一般的に渋味や収斂味を呈することが多い医薬品などにも応用できる可能性がある。 【発明を実施するための最良の形態】 【0022】 以下、本発明の実験の詳細を示すが、これによって本発明が限定されるものではない。 牛乳乳清タンパク質(WPI)は、粗タンパク質95%(ドライベース、ケルダール法)、灰分3%(灰化法)、ラクトース1%、粗脂肪1%(酸分解法)、水分5%(常圧乾燥法)を成分とする乳清タンパク質分離物(商品名:ダイイチラクト、第一化成製)を用いた。これを12%になるように蒸留水に溶解し、最終的に104倍容量の蒸留水に対して透析を行い試験用のタンパク質液とした。WPI溶液のpHを2 M 塩酸または水酸化ナトリウムで7.0または3.5に調整後、タンパク質濃度を5%に調整し、90℃で30分間加熱した。pH 7.0および3.5で加熱して得られた改質乳清タンパク質をそれぞれPWP、aPWPとした。牛ゼラチン(牛皮膚由来、Type B、ゲル強度225 Bloom)および豚ゼラチン(豚皮膚由来、Type A、ゲル強度300 Bloom)はSigma社より購入し、5 % 懸濁液を60℃で10分間加温溶解して使用した。タンニン酸は和光純薬工業から購入した。 【0023】 乳清タンパク質およびゼラチン溶液のpHを2M 塩酸で3.5に調整後、104 倍容量の5mMリン酸緩衝液(pH3.5)に対して透析した。透析した溶液のpHを5mMリン酸緩衝液で正確に3.5に調整後、所定のタンパク質濃度に希釈したものを渋味評価試料とした。 【0024】 官能検査は28〜37歳の健康な男性7名のパネラーで行った。官能検査は検査毎に被験者に口腔を充分に蒸留水で洗浄させた後、直ちに行った。検査後の口腔の洗浄は150mM 塩化ナトリウム/10 mMリン酸緩衝液(pH7.4)で口腔を洗浄させることで行った。検液の溶媒は2.5 mLの5 mM リン酸緩衝(pH3.5)であり、検液の温度を一定にするため検査前に少なくとも2時間室温放置した。評点法による渋味の官能評価は、標準渋味試料としてタンニン酸を用いた。 【0025】 [渋味スコアの標準化] 任意濃度のタンニン酸液を、あらかじめスコアを設定した既知濃度のタンニン酸液の渋味の程度と比較することにより、渋味スコアの標準化を次の手順で行った。 0, 0.343, 0.537, 0.842および1.319 mM タンニン酸の渋味スコアがそれぞれ0, 2, 4, 6および8の渋味標準試料とし、0.343, 0.429, 0.537, 0.673, 0.842, 1.054, 1.319, 1.651および2.066 mM のタンニン酸液を評価試料として渋味を評価した結果をグラフ(図1)にプロットし検量線を作成し、次式を得た。 . 渋味スコア = 4.49985 Lnタンニン酸濃度(mM) + 6.32211 この検量線より、0, 0.383, 0.597, 0.931, 1.452および2.264 mMタンニン酸の渋味スコアを0, 2, 4, 6, 8および10とした。 評点法による渋味の評価はこれらを渋味標準試料として用いて行った。渋味スコアと官能評価との関係は、0は渋味を全く感じない、2はごく僅かに渋味を感じる、4は僅かに渋味を感じる、6は明らかに渋味を感じる、8〜>10は強い渋味・収斂味を感じる、となる。 【0026】 [評点法を用いた渋味評価試料の渋味スコアの測定] pH3.5、タンパク質濃度0.25、 0.5および1%のときのWPI、PWPおよびaPWPの渋味スコアを測定した結果、WPI, PWP, およびaPWPはいずれも8〜9の渋味スコアに相当する強い渋味・収斂味を呈した。渋味の強度はタンパク質濃度の増加に依存して上昇したが、試料間に強度の差は見られなかった。 一方、牛および豚ゼラチンについて同様に渋味の強さを評価した結果、渋味スコアは1〜2であり、明確な渋味は呈しなかった。また、タンパク質濃度に依存した渋味の増加は見られず、pH3.5においてゼラチンは明確な渋味を呈さなかった。また、同様の試験をカゼイン(ナカライテスク製試薬カゼイン(牛乳由来)を等電点沈殿法で再精製したもの)、大豆タンパク質分離物(脱脂大豆粉より等電点沈殿法で分離精製したもの)および乾燥卵白末(第一化成製)を用いて行ったところ、WPI,およびPWPと同等の渋味・収斂味を呈することが確認できた(図2)。 以上の試験から、渋味の程度がタンニン酸を指標とした評価法と渋味スコアを用いた定量化できることが確認できた。更に、乳清、カゼイン、大豆や卵白タンパク質は、未変成、変成に関わらず酸性域で渋味を呈することが明らかとなった。 【0027】 牛乳乳清タンパク質、牛乳カゼイン、大豆タンパク質や卵白タンパク質などのタンパク質の等電点は一般的にpH5付近である。例えばpH3に調製した乳清タンパク質は、未加熱/加熱に関わらず渋味・収斂味を呈する。発明者らはこの味刺激は、タンパク質液のpHが一般的に中性付近にある唾液により上昇し、等電点域を通過する際に形成した凝集体が、舌上皮や口腔内上皮に存在する脂質二重層膜に沈殿することにより発現すると考えた。そこで、乳清タンパク質に、プルラン、HM−ペクチン、デキストラン、キサンタンガム、グアガム、アラビアガム、κ−カラゲナン、ι−カラゲナン、κ,λ−カラゲナン、キシログルカンなどの多糖類を添加した後酸性域に調整し、未加熱または加熱・冷却後の渋味・収斂味の程度を多糖類無添加品と比較した。その結果、キシログルカンを除き、全ての多糖類添加区では対象品と同程度の渋味収斂味を呈した。しかし、キシログルカン添加区では、渋味スコアは極めて低いものとなった。この結果から、乳清タンパク質にキシログルカンを共存させれば、酸性域(低pH)加工食品のタンパク質由来の渋味・収斂味が低減できることが明らかとなった。 【0028】 この現象は、酸性域においてタンパク質凝集体(または唾液との複合体)が舌上皮や口腔内の上皮に存在する脂質二重層膜へ沈殿するのをキシログルカンが直接的に阻害しているか、キシログルカン自身が脂質二重層膜を保護するためタンパク質凝集体や複合体の沈殿接触を防護していると考えられる。 【0029】 発明者らは上記の研究を行った結果、キシログルカンが酸性域における牛乳乳清などのタンパク質が呈する渋味・収斂味を低減させることを発見した。さらにまた、キシログルカンは渋味物質であるタンニン酸などのポリフェノール類そのものが呈する渋味・収斂味をも低減させることを見いだした。この効果は、前述した他の多糖類よりも遙かに高いものであった。本現象は、食品中のポリフェノール類が唾液中のプロリン・リッチ・プロテインと凝集体を形成し、これらが舌上皮や口腔内の上皮に存在する脂質二重層膜に沈殿することをキシログルカンが直接的に阻害しているか、キシログルカン自身が脂質二重層膜を保護するためタンパク質凝集体や複合体の沈殿接触を間接的に防護していると考えられる。 【実施例】 【0030】 以下、本発明の実施例を説明する。なお、実施例中に%とあるのは、特に断りがない限り、重量%を示す。 [実施例1] 牛乳乳清タンパク質(WPI)として、粗タンパク質95%(ドライベース、ケルダール法)、灰分3%(灰化法)、ラクトース1%、粗脂肪1%(酸分解法)、水分5%(常圧乾燥法)を成分とする乳清タンパク質分離物(商品名ダイイチラクト、第一化成製)を用い、多糖類として、α−1,6−ポリマルトトリオース(プルラン,林原生物化学研究所)、メチル化ポリガラクチュロン酸(HM−ペクチン,大日本製薬製)、デキストラン(MW32,000〜45,000Da,和光純薬製)、キサンタンガム(ケルコ社製)、グアガム(三晶製)、アラビアガム(三栄薬品貿易製)、カラゲナン(κ−,ι−,κλ−,MRCポリサッカライド製)およびキシログルカン(タマリンド種子由来、大日本製薬製)を用いて以下の実験をした。 【0031】 水に対して十分透析を行ったWPIを、タンパク質含量5%、pH7の水溶液とし、密封系で90℃で30分間の加熱を行い、その後、室温まで十分に放冷した。本操作により、透明で粘稠性の改質乳清タンパク質(PWP)が得られた。次いで、このPWPのpHを、2M塩酸を用いて、3.5に調整した後、本タンパク質液に各多糖類を0.2%添加し、さらに、5mM、pH3.5のリン酸緩衝液を用いてタンパク質濃度を1%に希釈し、官能検査用試料とした。 この試料を、前述のタンニン酸を指標とした評点法を用い官能検査(28〜37歳、男7名)で、渋味の強度を渋味スコアとして測定した。対照として多糖類無添加品を用いた試験結果の一部を図3に示す。 【0032】 PWPのpH3.5における渋味スコアは8〜9であり、極めて強い渋味・収斂味を呈した(○)。一方、α−1,6−ポリマルトトリオース(△)、メチル化ポリガラクチュロン酸(□)、デキストラン(◇)を添加した系の渋味スコアは多糖類無添加品を同程度であった。しかし、本発明に従って、キシログルカンを添加した系(●)では渋味スコアは約3となり、渋味の程度は有意に低減していた。実験で用いた他の多糖類を添加した場合の渋味スコアは、無添加品と差は見られなかった。また、未加熱の乳清タンパク質を用いて同様の実験を行った結果も、全く同様の傾向が確認できた。 【0033】 次に、PWPとキシログルカンを用いて、キシログルカンの添加量を0,0.04,0.08,0.12,0.16および0.2%に変えて同様の試験を行った。結果を図4に示す。 PWP(○)の渋味スコアは、キシログルカン(●)の添加量に依存して有意に減少することが確認できた。 以上の結果より、乳清タンパク質の酸性域における渋味・収斂味の低減にキシログルカンが有効であることが確認できた。 【0034】 「実施例2] 実施例1で用いたPWPのタンパク質濃度を5%、pH9に調整し、実施例1に示す多糖類を2%(デキストランは10%)添加した後90℃で120分間加熱を行った。次いで、各タンパク質液のpHを2M塩酸を用いて3.5に調整した後、5mM、pH3.5のリン酸緩衝液を用いてタンパク質濃度を1%、多糖類濃度0.4%(デキストランは2%)に希釈し、官能検査用試料とした。本試料について、実施例1と同様の方法を用いて渋味スコアを測定した。対照として多糖類無添加品を用いた。結果の一部を図5に示す。 【0035】 PWPをpH3.5で加熱したときの渋味スコアは>10であり、極めて強い渋味・収斂味を呈した(○)。一方、α−1,6−ポリマルトトリオース(△)、メチル化ポリガラクチュロン酸(□)、デキストラン(◇)を添加した系の渋味スコアは6〜8であった。これに対して、キシログルカンを添加した系(●)では渋味スコアは<2となり、渋味の程度は有意に低減していた。実験で用いた他の多糖類を添加した場合の渋味スコアは、キシログルカン添加区と比較し有意に高かった。 次に、前述のPWPとキシログルカンを用いて、キシログルカンの添加量を0,0.05,0.1,0.15および0.2%に変えて同様の試験を行った。結果を図6に示す。 加熱したPWP(○)の渋味スコアは、キシログルカン(●)の添加量に依存して有意に減少することが確認できた。 以上の結果より、乳清タンパク質の酸性域における渋味・収斂味の低減にキシログルカンが有効であることが確認できた。 【0036】 [実施例3] 実施例1に示すキシログルカンおよびカゼイン(ナカライテスク製試薬カゼイン(牛乳由来)を等電点沈殿法で再精製したもの)、大豆タンパク質分離物(脱脂大豆粉より等電点沈殿法で分離精製したもの)、乾燥卵白末(第一化成製)を用いた。各タンパク質水溶液(タンパク質濃度5%)のpHを2M塩酸を用いて3.5に調整した後、5mM、pH3.5のリン酸緩衝液を用いてタンパク質濃度を1%に希釈し、キシログルカンを0.2%添加したものを官能検査用試料とした。本試料液の渋味スコアを実施例1と同様の方法を用いて測定した。結果を図7に示す。 pH3.5において、カゼイン(○)、大豆タンパク質(□)および卵白タンパク質(△)は9から10の渋味スコアを示した。しかし、いずれのタンパク質においても、キシログルカン添加区の渋味スコアは有意に低下した(●,■,▲,スコア4〜5)。 【0037】 [実施例4] 実施例1の渋味スコア測定方法において、渋味スコア10を示す濃度(2.264mM)のタンニン酸水溶液(5mM,pH3.5,リン酸緩衝液)に、実施例1で用いたキシログルカンを0.05,0.1および0.2%添加して、官能検査用試料とした。本試料液の渋味スコアを実施例1と同様の方法を用いて測定した。結果を図8に示す。 強い渋味・収斂味を呈するタンニン酸水溶液の渋味スコアは、キシログルカンの添加量に依存して有意に低下した。 キシログルカンは、酸性域における牛乳、大豆や卵白タンパク質が呈する渋味・収斂味だけでなく、ポリフェノール類であるタンニン酸が呈する渋味・収斂味も低減させることが確認できた。 【0038】 [実施例5] 実施例1に示すWPIおよびPWPとキシログルカンを用い、実施例1の方法を用いて試料タンパク質液を調製した。試料タンパク質液(タンパク質濃度6.4%、pH3.5)78.5%、キシログルカン0.2%、砂糖混合異性化糖12%、ビタミンB20.05%、レモン香料0.05%および飲料水9.2%のレシピを用いて酸性タンパク質飲料を調製した。 試作手順としては、(1)ビタミンB2を飲料水に溶解、(2)キシログルカンを加温溶解し、常温まで冷却、(3)実施例1の試料タンパク質(WPIまたはPWP)および砂糖混合異性化糖を添加混合する(4)香料を添加、(5)容器に充填後、90℃で20分間加熱、(6)急冷、を行った。これらの操作により透明で僅かに粘稠な飲料が調製できた。飲料のpHは3.5、タンパク質含量は5%であった。 キシログルカンを添加していない、WPIまたはPWPを用いた酸性タンパク質飲料は、極めて強い渋味・収斂味を呈していた。一方、キシログルカンを添加したWPIまたはPWPを用いた飲料の渋味は、顕著に低減されており、渋味の程度は、市販の非タンパク質系嗜好性飲料と大差はなかった。この結果から、本発明によりさわやかな酸味を有し渋味・収斂味を呈しない高タンパク質飲料を調製できることが確認できた。 【0039】 [実施例6] 実施例1に示すPWPとキシログルカンを用い、実施例1の方法を用いて試料タンパク質液を調製した。試料タンパク質液(タンパク質濃度10.8%、pH3.5)89.7%、キシログルカン0.2%、アスパルテーム製剤5%、5%乳酸カルシウム水溶液5%、ビタミンB20.05%、およびレモン香料0.05%のレシピを用いて酸性タンパク質ゼリーを調製した。 試作手順としては、(1)アスパルテーム製剤およびビタミンB2を飲料水に溶解、(2)キシログルカンを加温溶解し、常温まで冷却、(3)実施例1の試料タンパク質(PWP)を添加混合する、(4)香料を添加、(5)容器に充填後、90℃で40分間加熱、(6)急冷、を行った。 キシログルカンを添加していないPWPを用いた酸性タンパク質ゼリーは、極めて強い渋味・収斂味を呈していた。一方、キシログルカンを添加したPWPを用いたゼリーの渋味は、顕著に低減されており、渋味の程度は、市販のデザートゼリーと大差はなかった。この結果から、本発明によりさわやかな酸味を有し渋味・収斂味を呈しない高タンパク質ゼリーを調製できることが確認できた。 【0040】 [実施例7] 市販の緑茶葉を用いて緑茶を煮出し、これに2.264mMになるようにタンニン酸を添加して溶解し、渋茶を調製した。これに実施例1に示すキシログルカンを0.2%になるように添加して加温溶解した。 試作手順としては、(1)緑茶を煮出し、(2)タンニン酸を添加し、(3)実施例1のキシログルカンを添加して加温溶解、(6)常温まで冷却した。 キシログルカンを添加していない渋茶は、極めて強い渋味・収斂味を呈していた。一方、キシログルカンを添加した渋味は、顕著に低減されており、渋味の程度は、市販の緑茶と大差はなかった。この結果から、本発明によりポリフェノール類を高含有し、かつ渋味・収斂味を呈しない緑茶を調製できることが確認できた。 【図面の簡単な説明】 【0041】 【図1】渋味、収斂味の基準としてタンニン酸を用いて評点法で作成した検量線のグラフである。 【図2】評点法を用いた、酸性域におけるタンパク質の渋味スコアを示すグラフである。 【図3】PWPにpH3.5で多糖類を添加したときの渋味スコアを示すグラフである。 【図4】PWPにpH3.5でキシログルカンの濃度を変えて変化したときの渋味スコアを示すグラフである。 【図5】PWPに多糖類を添加し、加熱後のpHを3.5にしたときの渋味スコアを示すグラフである。 【図6】PWPにpH3.5でキシログルカンの濃度を変えて添加し、加熱したときの渋味スコアを示すグラフである。 【図7】食品タンパク質にpH3.5でキシログルカンを添加したときの渋味スコアを示すグラフである。 【図8】pH3.5でキシログルカンを添加したときのタンニン酸の渋味スコアを示すグラフである。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】591054602 【氏名又は名称】株式会社第一化成 【識別番号】504132272 【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
|
| 【出願日】 |
平成16年3月3日(2004.3.3) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100068032 【弁理士】 【氏名又は名称】武石 靖彦
【識別番号】100080333 【弁理士】 【氏名又は名称】村田 紀子
【識別番号】100115222 【弁理士】 【氏名又は名称】徳岡 修二
【識別番号】100124796 【弁理士】 【氏名又は名称】重本 博充
【識別番号】100125586 【弁理士】 【氏名又は名称】大角 菜穂子
|
| 【公開番号】 |
特開2005−245291(P2005−245291A) |
| 【公開日】 |
平成17年9月15日(2005.9.15) |
| 【出願番号】 |
特願2004−59562(P2004−59562) |
|