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【発明の名称】 加工された大豆β‐コングリシニンたん白
【発明者】 【氏名】石川 正広
【住所又は居所】大阪府泉佐野市住吉町1番地 不二製油株式会社阪南事業所内

【氏名】馬場 俊充
【住所又は居所】大阪府泉佐野市住吉町1番地 不二製油株式会社阪南事業所内

【氏名】岡嶋 哲彦
【住所又は居所】大阪府泉佐野市住吉町1番地 不二製油株式会社阪南事業所内

【氏名】廣塚 元彦
【住所又は居所】大阪府泉佐野市住吉町1番地 不二製油株式会社阪南事業所内

【要約】 【課題】β‐コングリシニンたん白は、その高水和性のために水戻り性が悪く、種々の食品形態に加工が困難であった。また高粘性なため、液状食品用に加工した場合は特に摂取しにくいという課題があった。本発明は、かかる課題を低減すべく加工されたβ‐コングリシニンたん白及びそれを含有する食品を提供することである。

【解決手段】β‐コングリシニンたん白を含む溶液を酸性下で加熱し、たん白の溶解性を低下させることで、高水和性、高粘性を低減する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
β‐コングリシニンたん白を含む溶液又はペーストを酸性下で加熱することを特徴とする加工されたβ‐コングリシニンたん白の製造法。
【請求項2】
酸性がpH3.5〜6.0である請求項1記載の製造法。
【請求項3】
加熱が75℃より高く160℃より低い温度で行う請求項1記載の製造法。
【請求項4】
中性溶液中での溶解率が70%以下である請求項1乃至3記載の方法で得られたβ‐コングリシニンたん白。
【請求項5】
請求項4記載のβ‐コングリシニンたん白を含む食品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、低水和性のβ‐コングリシニンたん白を製造する方法、およびその方法により得られる低水和性、低粘性のβ‐コングリシニンたん白、及びそれを含有する食品に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆たん白から分画されるβ‐コングリシニンは、血清脂質改善に大きな効果を有することが知られている(非特許文献1や特許文献1)。このようなβ‐コングリシニンを、飲料やスープなどの液状食品、ゲル状食品、また、パンやクッキーなどの乾燥または半乾燥食品、錠菓など様々な形態で摂取することができれば大変有用である。
大豆からβ‐コングリシニンを得る方法については、これまで多くの検討がなされているが、このうち、育種によりβ‐コングリシニンに富む大豆から分離したβ‐コングリシニンたん白を、肉、チーズ、粉乳、コーヒークリーマー等の代替品、栄養バー、飲料、粉末飲料、冷菓などの一般食品へ利用する方法が提案されている(特許文献2)。
【0003】
しかしながらβ‐コングリシニンに富むたん白は、従来から様々な食品に用いられている分離大豆タンパク質と比較しても水和性や粘性が著しく高く、従ってその粉末を様々な食品へ加工する際に所謂ままこを形成するため様々な問題が生じる。例えばスープや味噌汁、或いは水に溶解して飲むプロテインパウダーといった液状食品用として加工、摂取する場合には、ままこを形成し分散/溶解が非常に困難であり、また粘度が高いためのみ口が重いといった問題が発生する。また、パンやスポンジケーキ、煎餅のような小麦粉乃至澱粉性食品の場合も、生地に添加すると、β‐コングリシニンたん白が水を偏って奪う結果、小麦粉の吸水が不十分となり、均質でない生地になったり、或いは著しい粘度の上昇のため加水量を増やしたり、特殊な成型器を用いたりしなければ成型できない、又は手作業成型から脱却しがたい等の問題が生じる。以上の様に、β‐コングリシニンの高水和性、高粘性は種々の食品に加工する場合、或いは食品形態で摂取する場合に大きな障害となる場合が多い。
【0004】
β-コングリシニンたん白ほどではないにせよ、同じく水に溶かした際のままこが問題となる分離大豆タンパク質では、該水分散物を略中性(pH5.8〜pH6.2)で120℃以上の高温で10秒以上加熱し溶液への水分散性を改善する技術が特許文献3に開示されている。しかしながらこの技術は、β-コングリシニン含量が約30%以下の通常の分離大豆たん白を対象とし、等電点から離れた比較的溶解性の高い領域で加熱を行うものであり、β-コングリシニン含量が40%以上のたん白をその等電点を含む酸性域で加熱する本願とは異なる。また特許文献3では、レシチンや油脂をバインダーとした造粒を組み合わせる事により、一層分離大豆たん白の分散性の改善を図っているが、脂質の使用は経時的な風味劣化の原因となる他、血清脂質改善効果のあるβ‐コングリシニンに脂質を使用して分散性を改善することは可及的避けたい。
このように、β‐コングリシニンたん白の水和性、高粘性を低減し、水戻り性を改善するのに有効で、且つ利用上或いは風味上問題のない方法については、未だ存在しなかった。
【非特許文献1】AOYAMA,Biosci.Biotechnol.Biochem.,Vol.65,No.5, 1071-1075 2001
【特許文献1】特開2002-114694
【特許文献2】US 6,171,640 B1
【特許文献3】特開昭59-25650
【非特許文献2】J.Agric.Food Chem.,24,117 1976
【特許文献4】特開昭55-124457号公報
【特許文献5】特開昭48-56843号公報
【特許文献6】特開昭49-31843号公報
【特許文献7】特開昭58-36345号公報
【特許文献8】特開平5-43597号公報
【特許文献9】特開昭61-187755号公報
【非特許文献3】Breeding Science,50,101,2000
【特許文献10】US 6,171,640 B1
【非特許文献4】SAITO,Biosci.Biotechnol.Biochem.,Vol.65,No.4,884-887 2001
【特許文献11】WO 02/28198 A1
【特許文献12】特願2002-328243
【非特許文献5】Nature,227,680 1970
【非特許文献6】Cereal Chemistry, 63,475-478 1986
【非特許文献7】SAMOTO,Biosci.Biotechnol. Biochem.,Vol.62, No.5 935-940 1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、β‐コングリシニンたん白を種々の食品形態に加工、或いは摂取する場合に大きな障害となる高水和性、高粘性を低減すべく加工されたβ‐コングリシニンたん白を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、β‐コングリシニンたん白溶液の高水和性、高粘性を改善すべく検討を重ねた結果、該たん白の水性溶液又はペーストを酸性下に於いて加熱することにより、溶液のpHを本来たん白が可溶である中性に戻しても溶解性が低下すること、その結果、幅広いpH範囲でβ‐コングリシニンたん白の高水和性、高粘性が低下し水戻り性を改善でき、各種食品に加工、摂取しやすくなることを発見した。本発明者らは、さらに該たん白溶液の酸性下での加熱条件について、鋭意研究を重ねた結果、ついに本発明を完成するに至った。
本発明は、β‐コングリシニンたん白を含む溶液を酸性下で加熱することで、たん白の溶解性を低下させることを特徴とする、低水和性、低粘性の加工されたβ‐コングリシニンたん白の製造法に関する。また、上記方法で得られた加工されたβ‐コングリシニンたん白及びそれを含む食品に関する。
即ち本発明は、
(1)β‐コングリシニンたん白を含む溶液又はペーストを酸性下で加熱することを特徴とする加工されたβ‐コングリシニンたん白の製造法。
(2)酸性がpH3.5〜6.0である請求項1記載の製造法。
(3)加熱が75℃より高く160℃より低い温度で行う請求項1記載の製造法。
(4)中性溶液中での溶解率が70%以下である請求項1乃至3記載の方法で得られたβ‐コングリシニンたん白。
(5)請求項4記載のβ‐コングリシニンたん白を含む食品。
に関するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、大豆β‐コングリシニンたん白を含む溶液またはペーストを酸性下で加熱することにより、様々な食品に加工または摂取する場合に問題となる高水和性、高粘性を改善した大豆β‐コングリシニンたん白を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明においてβ‐コングリシニンは、大豆の可溶性の球状たん白質の総称であるグロブリンの中、分子量の超遠心沈降係数が7Sである7Sグロブリンに実質的に相当する。β‐コングリシニンは通常α、α’、βの3種類のサブユニットからなるが、サブユニットの一部が欠失している様なβ-コングリシニンであってもよい。β‐コングリシニンの量をいうときはそれらα、α’、βサブユニットのうち、存在するものの総量を指す。また、本発明においてβ‐コングリシニンたん白とは、β‐コングリシニンを通常の分離たん白より多く含むたん白を云う。通常その純度はたん白質中40%を越え、またこれより高純度になるほどβ-コングリシニンを効率よく摂取することが可能となる。
【0009】
本発明で用いるβ‐コングリシニンたん白は、Thanh & Shibasakiの方法(非特許文献2)を初めとし、等電点の違いを利用する分画法(特許文献4)、カルシウムとの反応性を利用する分画法(特許文献5)、pH・イオン強度での溶解性の違いを利用する分画法(特許文献6、特許文献7、特許文献8)、冷沈現象と還元剤を利用する分画法(特許文献9)等いずれの方法によって得られたものを用いても良い。また、育種によるβ‐コングリシニンに富む大豆から得たβ‐コングリシニンたん白(非特許文献3や特許文献10)を用いることもできる。
【0010】
以上の他、脱脂大豆からフィターゼを用いてβ‐コングリシニンを分画する手法に準じて調製したものや(非特許文献4)、大豆たん白を含む溶液をpH3.8〜6.8において、30〜75℃に加温した後に分画することで得られた高純度のβ‐コングリシニンたん白(特許文献11)を好適に用いることができる。或いは同じく酸性下での加温時にイオン強度の調整を行うことで、より低いpH域においても高純度のβ‐コングリシニンたん白の分画を可能にする方法によってもよい(特許文献12)。本発明に用いるβ‐コングリシニンたん白を含む溶液には、上記の方法等、いずれの方法により得られるβ‐コングリシニンたん白も用いることが可能である。ただし、食品として使用する場合には還元剤を使用せずに調製した方がより広い範囲の用途を期待できる。
【0011】
低溶解性化は、β‐コングリシニンたん白を含む溶液またはペーストをpH3.5 〜6.0の酸性下で加熱することにより行う。この範囲外であると、溶解性の低下が不十分となり、従って高水和性、高粘性が改善されない。又溶解性は、β-コングリシニンの等電点であるpH4.5〜5.0に近いpH域で加熱するとより大きく低下する。従って、加熱温度にも依存するがpH3.8 〜5.8で、特にpH4.0〜5.6で加熱すると、溶解性がより低減したβ-コングリシニンたん白が得られる。溶解性低下の最適な度合いは、利用する食品によって異なる。
【0012】
また、低溶解性化に適当な加熱温度は、pHにも依存するが75℃より高い温度であればよく、好ましくは85℃以上、さらに好ましくは95℃以上である。加熱温度が低すぎると、高水和性を改善することが困難となる。また、過度に高い温度で加熱することは実用的ではなく、160度より高い温度で加熱すると焦げが発生することがあり好ましくない。また、溶解性の低下はpHと温度の因子による影響が大きく、加熱時間の因子については小さい。但し、概して加熱温度が高い場合には短時間で良いが、加熱温度が低い場合には長時間を要する。
【0013】
加熱時のβ‐コングリシニンたん白の溶液またはペーストの濃度は特に制限はないが、5〜20%が好ましく、より好ましくは5〜15%、さらに好ましくは5〜10%である。濃度が高い場合には酸性加熱により凝集塊が生成する。凝集隗は、濃度が低い場合でも生成し得る。そのままでは酸性加熱後の加工や、食品への加工が困難になる場合があるため、酸性加熱時に生じた凝集塊は湿式粉砕機等で粉砕することが望ましい。また、湿式粉砕等により凝集塊を粉砕しても、乾燥して得られる低溶解性β‐コングリシニンたん白は粒子が粗い場合があり、飲料やスープ等の液状食品に用いる場合には食感がざらつく場合があるので、溶液を高圧ホモゲナイザー等で均質化することが望ましい。
【0014】
上述のいずれかの方法により調製したβ‐コングリシニンたん白は、このようにして酸性下での加熱を行わない場合は、中性(pH7.0)溶液中での溶解率(後述)が90%以上で高水和性、高粘性を有しているが、酸性下での加熱により中性(pH7.0)溶液中での溶解率が70%以下となり、水和性及び粘性の明らかな低減が認められる。
【0015】
上記の処理によって得られた低溶解性β‐コングリシニンたん白を含む溶液またはペーストは、そのまま、あるいは濃縮して、あるいは中和して、あるいは殺菌して用いても良いが、保存性や使い易さの点から中和の後殺菌して噴霧乾燥等の乾燥装置を用いて乾燥した低溶解性β‐コングリシニンたん白として用いるのが実用的である。但し、低溶解性化したβ‐コングリシニンを含む溶液またはペーストをpH6.0よりも上にして、高温で加熱殺菌することにより、溶解性が若干上がり水和性、粘性が戻る場合がある。その場合は、その点を留意して予め低溶解性化のための酸性下での加熱をより強い条件で行う等の工夫をすればよい。
【0016】
上記の濃縮をするための手段としては、一旦水で希釈したり、脱塩したりすることによりイオン強度を0.2未満に調整し、かつpH値 4.0〜5.0に調整して生じる不溶性画分を分離回収する、所謂等電点分離方法が例示され、その後加水、中和、加熱殺菌し、乾燥する形態が実用的である。加熱は公知のHTST、UHT処理等で行うことができる。
上記処理によって得られた低溶解性β‐コングリシニンたん白の中性(pH7.0)溶液中での溶解率は、70%以下であり、先に述べたように加熱条件を選択することによって60%以下、50%以下、或いは40%以下のものが得られ、用途に応じた使い分けができる。溶解率が70%より高くなると、種々の食品に加工する場合、或いは食品として摂取する場合に水戻り性が悪く又高粘度であり好ましくない。
【0017】
β‐コングリシニンたん白の純度は特に制限はないが、40%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上とすることで、β‐コングリシニンを効率よく摂取又は加工することが可能となる。このようにして得られたβ-コングリシニンたん白は、様々な食品に用いることが可能であり、例えばタブレット、粉末飲料や、焼き菓子様の食品、小麦粉乃至澱粉製食品、各種プレミックスなどへの利用が出来る。
【0018】
次にβ-コングリシニンたん白を含む各種食品の例として、タブレット、プロテインパウダー、煎餅様食品に加工する場合の実施の形態を例説する。
タブレットは、β-コングリシニンたん白を含有する粉体混合物、若しくは混合物を造粒したものを使用し、一般に錠剤などの製造に用いられている従来公知の打錠機の型に詰め、圧をかけて成形することで得られる。錠菓中にβ-コングリシニンたん白を80重量%以下含有させることができ、80重量%をこえるとタブレットとしての硬度が不足し、すぐに割れの生じるものとなり好ましくない。また、β-コングリシニン摂取を目的とすることより、20重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上のβ-コングリシニンたん白を含有させることが適当である。β-コングリシニンたん白以外に糖類を含んでもよく、糖類の選択により、様々な硬度及び食感や味の錠菓に仕上げることができる。また、タブレットに粉乳、ココアパウダー、果汁粉末、有機酸、香料などを加えることで嗜好性に優れた錠菓にすることができ、打錠性を改良するために乳化剤、多糖類、二酸化ケイ素などを添加することも可能である。
【0019】
このとき本発明の加工をしないβ-コングリシニンたん白を用いたタブレットは、その高粘性ゆえに噛むと歯に付着し非常に食べにくい。またβ-コングリシニンたん白の嵩比重が小さく、この粉体を主体として使用する場合、打錠機の臼の体積との関係により一錠当りの重量があまり大きくできない。さらに、硬度をだすためには高い圧力を要し、装置上もあまり好ましくない。一方、加工することによりβ-コングリシニンの嵩比重を上げることができ、また噛んだ際の歯への付着が抑えられ、作業性やタブレットの品質に関する上記課題が解決される。
【0020】
粉末飲料は、β-コングリシニンたん白を含有する粉体を他の原料紛体と混合、望ましくは造粒することで得られる。主に呈味剤を併用した粉末スープ、粉末味噌汁、粉末コーヒー等や、β-コングリシニンたん白を高配合したプロテインパウダーなどがある。β-コングリシニンたん白の含有率は特に制限はないが、β-コングリシニン摂取を効率よくするために、20重量%以上、好ましくは30重量%以上、更に好ましくは40重量%以上が適当である。プロテインパウダーとしての利用の場合には、そのもののたん白摂取という目的からも原料中70重量%以上が好ましい。粉末飲料には、野菜、芋類、豆類、穀物などのパウダーや粉末味噌、粉末醤油、調味料、果汁、粉末コーヒー、ココアパウダー、粉乳、糖類、澱粉類、香料、酸味料などを特に限定なく使用することができる。
【0021】
加工しないβ-コングリシニンたん白を用いると、造粒によりままこの形成は若干改良されるものの、含有率が高くなるにつれ改良が困難となる。特にβ-コングリシニンたん白が50重量%を超えるような利用の仕方の場合には、十分な分散性を得ることが難しく、更には造粒により増粘する場合も見られ適当な物性に仕上げることが困難である。
一方、加工したβ-コングリシニンたん白を用い、更には造粒をすることにより、プロテインパウダーのような含有率の高い食品に利用したとしても、増粘を伴わない分散性良好な粉末飲料を得ることができる。
【0022】
煎餅様食品は、加水生地を加熱などにより膨化させることにより得られる。β-コングリシニンたん白の配合率は、β-コングリシニンの摂取を目的とする場合、固形分中20重量%以上、好ましくは30重量%以上、更に好ましくは40重量%以上が適当である。又、他素材も配合することで、食感、風味を満足ゆくものにでき、この場合はβ-コングリシニンたん白は90重量%以下が適当である。配合には澱粉性物質、例えばコーン、ワキシーコーン、馬鈴薯、タピオカ、小麦、米などの澱粉やそれらの加工澱粉、或いは、小麦粉、米粉などの穀粉や油脂などを加えることができ嗜好性を向上させることができる。また、生地を調味するために、香辛料、調味料なども加えることができる。
【0023】
このようなβ-コングリシニンたん白を含有する粉体混合物に加水し生地を調製する場合、加工していないβ-コングリシニンたん白を使用するとままこを形成し均質な生地ができない。特に固形分中50重量%以上の高配合率にするには困難である。一方加工したβ-コングリシニンたん白を用いるとままこが形成されにくく、通常のミキシングに使われる縦型ミキサーでの混合が可能である。ただし、膨化の度合いは加工したものは小さくなる傾向があり、膨化が不完全であると硬すぎるものとなる場合がある。この場合は加工したβ-コングリシニンたん白を、加工していないものに適量置換することで、水分散性と膨化性の両方の特性を最適化することが可能である。
【0024】
以下に本発明で用いた分析法を記す。
*溶解率: 試料1重量%の水溶液をpH7.0に調整し、水溶液中の全たん白量に対する8,000Gで5分間の遠心分離上清画分のたん白量の割合をケルダール法で求めた。
*SDS-ポリアクリルアミド電気泳動;Laemmli(非特許文献5)の方法に基づきゲル濃度10-20%のグラディエントゲルで分析した。たん白アプライ量は5μg。
*フィチン酸;Alii Mohamed の方法(非特許文献6)に準拠して測定した。
*クロメタ油分;乾物試料に対してクロロホルム・メタノールの混合液(容量比、2:1)を50倍加え、160℃にて抽出される画分を秤量しクロメタ油分とした。
*純度(SPE基準):上記のSDS-ポリアクリルアミド電気泳動で得られた泳動パターンをデンシトメーターで面積として測定し、β‐コングリシニン画分の全面積に対する面積比率を純度(SPE基準)とした。ここにβ‐コングリシニン含量はα、α’、βサブユニットの総量を指す。
純度測定方法は、これ以外に下記に示すように、混在する脂質会合たん白(非特許文献7)の量も考慮した補正純度で求める場合もあるが、本願におけるβ‐コングリシニンたん白の純度は、SPE基準によるものを指す。
*補正純度:試料の純度(SPE基準)の値をA%とし、当該試料中にクロメタ油分の10重量倍に相当する脂質会合たん白質が混在するため、SPE値から脂質会合たん白質の量を差引いた合計たん白に対する純度として算出する。
補正純度(%)=(100(%)―クロメタ油分(%)*10)*A(%)/100
* 水戻り性の評価:500ml容ビーカーに20℃の水300gを入れ、オクタゴン型撹拌子(35mm(長さ)×7.5mm(径))を用いて300rpmで撹拌した状態で乾燥したβ‐コングリシニン粉体9gを添加し、5分間撹拌。その後16メッシュの篩いに掛け、ままこになって篩い上に残ったβ‐コングリシニンの乾燥重量を求めてままこになった割合を求めた。ままこになった割合が少ない程水戻り性が良く、1/4未満の場合を(◎)、1/4〜2/4未満の場合を(○)、2/4〜3/4未満の場合を(△)、3/4以上を(×)とした。
以下実施例により本発明の実施態様を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によってその技術範囲が限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
大豆を圧扁し、n-ヘキサンを抽出溶媒として油を抽出除去して得られた低変性脱脂大豆1重量部に、10重量部の抽出水(50℃)を加え、塩酸にてpH5.3に調整し30分間抽出処理を行った。この抽出スラリーを苛性ソーダにてpH 5.5に調整し、バッチ式遠心分離機(3,000G)で遠心分離した。遠心分離時の溶液温度は45℃付近であった。得られた可溶性画分の温度を50℃に調整した後、たん白重量あたり8unit相当のフィターゼ(ノボ社製「PHYTASE NOVO L」)を加え、50℃にて15分間の酵素処理を行い、その後20℃付近まで冷却し、塩酸にてpH4.9に調整し、遠心分離して低フィチン酸のβ-コングリシニンたん白の沈澱カードを得た(特許文献11の方法)。沈澱カードは5倍重量の水で均質化し(固形分含量6.7%)、苛性ソーダ、または塩酸を用いてpH3.3、3.8、4.0、5.0、5.5、5.8、6.0、7.0に調整して65℃、85℃、100℃、又は140℃で10秒間の加熱処理を行い、その後直ちに噴霧乾燥してβ‐コングリシニンたん白の粉末を得た。得られた粉末のβ‐コングリシニン純度は93%であった。表(1)に各々の条件で加熱して得たβ‐コングリシニンたん白粉末のpH7.0の中性溶液中での溶解率(%)、水戻り性を示す。
【0026】
【表1】


【0027】
以上の結果に示すとおり、中性もしくは強酸性下で、又は温度75℃以下で加熱処理を行った場合には得られるβ‐コングリシニンたん白の溶解性は低下せず、酸性下で75℃より高い温度で加熱することにより溶解率70%以下のβ‐コングリシニンたん白が得られる。
【実施例2】
【0028】
実施例1と同様に調製した低フィチン酸のβ-コングリシニンたん白の沈澱カードに水を加えて均質化し(固形分14.2%)、苛性ソーダを用いてpHを5.5に調整して120℃で10秒間の加熱処理を行った。その後、コミットロール(URSCHEL LABORATRIES, INC.製)を用いて生じた凝集塊を粉砕し、苛性ソーダを用いてpHを6.0に調整して142℃で7秒間の加熱殺菌を行い、直ちに噴霧乾燥してβ‐コングリシニンたん白の粉末を得た。得られた粉末のβ‐コングリシニン純度は93%、pH7.0での溶解率が34%であった。
【実施例3】
【0029】
タブレット(錠菓)
実施例1と同様に調製した低フィチン酸のβ‐コングリシニンたん白の沈澱カードを5倍重量の水で均質化し(固形分含量6.7%)、苛性ソーダを用いてpHを5.5に調整して120℃で10秒間の加熱を行った。その後、コミットロール(URSCHEL LABORATRIES, INC.製)を用いて生じた凝集隗を粉砕し、苛性ソーダを用いてpHを6.0に調整して142℃で7秒間の加熱殺菌を行い、直ちに噴霧乾燥してβ‐コングリシニンたん白の粉末(T-1;pH7.0での溶解率は38%)を得た。得られたT-1 32部と麦芽糖68部からなる混合物に、0.2重量%のグアーガム水溶液15部をバインダーとして使用した流動層造粒を行った後、DKエステルF-20W(第一工業製薬株式会社製)3部、粉末レモン果汁1部、粉末レモン香料0.5部、クエン酸1部を加え、打錠機にて直径20mmの錠菓(1.7g/粒)を調製した。得られた錠菓は、打錠時の粉体流動性や成型性に問題はなく、噛んで食べても歯への付着が殆どない良好なものであった。一方、比較として沈澱カードを5倍重量の水で均質化したものを(固形分含量6.7%)、酸性加熱を行わず苛性ソーダを用いてpH7.0に調整した。その後は同様に加熱殺菌、噴霧乾燥し加工しないβ‐コングリシニンたん白の粉末(C-1;pH7.0での溶解率は99%)を得た。これについても同様に直径20mmの錠菓を調製したが、噛んで食べると歯に付着し非常に食べにくいものであった。
以上の結果より、加工したβ‐コングリシニンを用いることにより食感的に良好な錠菓が得られることが示された。
【実施例4】
【0030】
粉末飲料
実施例1と同様に調製した低フィチン酸のβ‐コングリシニンたん白の沈澱カードを5倍重量の水で均質化し(固形分含量6.7%)、苛性ソーダを用いてpHを5.8に調整して120℃で10秒間の加熱処理を行った。その後、コミットロール(URSCHEL LABORATRIES, INC.製)を用いて生じた凝集塊を粉砕し、さらに高圧ホモゲナイザー(IZUMI FOOD MACHINERY CO.,LTD.製、150kgf/cm2)を用いて溶液を均質化し、苛性ソーダを用いてpHを6.0に調整して142℃で7秒間の加熱殺菌を行い、直ちに噴霧乾燥してβ‐コングリシニンたん白の粉末(T-2;pH7.0の中性溶液中での溶解率は68%)を得た。得られたT-2 または実施例3で得られたC-1のβ-コングリシニンたん白を90部、麦芽糖9部、ココア香料1部からなる混合物に、リョートーシュガーエステルS-570(三菱化学フーズ株式会社製)の4重量%水溶液10部をバインダーとして使用した流動層造粒を行い、プロテインパウダーを調製した。100gの水に得られたプロテインパウダー5gを加え、軽く掻き混ぜたところ、T-2を用いて調製したプロテインパウダーは均一に分散し、ざらつきもほとんど感じることはなかったが、C-1を用いて調製したプロテインパウダーは、固いままこが生じて均一に分散することが出来なかった。
【実施例5】
【0031】
煎餅様食品
T-1、C-1、またはT-1とC-1の1:1混合物70部と白玉粉25部、のり塩シーズニングパウダー5部からなるミックスをミキサーに加え、撹拌しながら水を徐々に200部加え混練して生地を調製した。得られた生地を8gに分割し、180℃に維持された挟み焼き可能な鉄板にて6分間加熱し膨化させた後、風温50℃の送風条件下で3時間乾燥させ煎餅様食品を調製した。
生地は、T-1およびT-1とC-1の1:1混合物を用いたもので均質なドウができたが、一方C-1を用いたものは、ままこが多く生じ均質なドウの調製ができなかった。また、挟み焼きによる膨化性は、T-1を用いた生地は膨化が小さかったのに対し、T-1とC-1の1:1混合物を用いた生地は適度に膨化した。食感は、T-1とC-1の1:1混合物を用いたものは適度なクリスピー感を有し、最も好ましいものであった。一方、T-1を用いたものは硬くなり、あまり好ましい食感にはならなかった。以上の結果より、加工したβ‐コングリシニンたん白を用いることで、生地調製が容易になり、さらに食感も良好な煎餅様食品が得られることが示された。
【出願人】 【識別番号】000236768
【氏名又は名称】不二製油株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区西心斎橋2丁目1番5号
【出願日】 平成15年7月30日(2003.7.30)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−46080(P2005−46080A)
【公開日】 平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願番号】 特願2003−282326(P2003−282326)