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【発明の名称】 洋菓子及び嚥下困難者用に調整された食品
【発明者】 【氏名】唐澤 秀美
【住所又は居所】長野県伊那市西春近5074番地 伊那食品工業株式会社内

【氏名】伊藤 暢宏
【住所又は居所】長野県伊那市西春近5074番地 伊那食品工業株式会社内

【要約】 【課題】葛澱粉が含まれた洋菓子や嚥下困難者用に調整された食品を提供である。

【解決手段】葛澱粉と、寒天、カラギナン、ジェランガム、ファーセレラン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グアーガム、グアーガム分解物、サイリュームシードガム、タマリンドガム、アラビアガム、ペクチン、ゼラチン、マンナン、プルラン、大豆多糖類、並びにアルギン酸及びその塩のうち少なくとも1以上の糊料と、が含有されていることを特徴とする洋菓子である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
葛澱粉と、寒天、カラギナン、ジェランガム、ファーセレラン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グアーガム、グアーガム分解物、サイリュームシードガム、タマリンドガム、アラビアガム、ペクチン、ゼラチン、マンナン、プルラン、大豆多糖類、並びにアルギン酸及びその塩のうち少なくとも1以上の糊料と、が含有されていることを特徴とする洋菓子。
【請求項2】
前記葛澱粉は、α化処理が施されていることを特徴とする請求項1記載の洋菓子。
【請求項3】
葛澱粉と、寒天、カラギナン、ジェランガム、ファーセレラン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グアーガム、グアーガム分解物、サイリュームシードガム、タマリンドガム、アラビアガム、ペクチン、ゼラチン、マンナン、プルラン、大豆多糖類、並びにアルギン酸及びその塩のうち少なくとも1以上の糊料と、を含んでいることを特徴とする嚥下困難者用に調整された食品。


【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、葛澱粉を含有するパティスリー(練り粉菓子)又はコンフィズリー(砂糖菓子)などの洋菓子及び嚥下困難者用に調整された食品に関する。
【背景技術】
【0002】
マメ科の蔓性多年草である葛の根からとれる葛粉は、古来(奈良時代)より、日本独特のデンプンとして珍重されてきた素材である。特に、和菓子においては、蒸し羊羹や葛饅頭類、葛焼き、葛きり、葛ちまき、葛湯などに重用されている。また、日本料理や精進料理としては、葛あんかけや胡麻豆腐などに利用されている(特許文献1及び2)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−242771号公報
【特許文献2】特開平8−205793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
葛粉の特徴は、澱粉特有の風味を持つこと、加熱による糊化処理(α化処理)後に冷却するとβ化が生じて老化しやすいこと、原料が稀少で限定されること、及びこのため価格が比較的高いことなどが挙げられる。この老化しやすく価格の高い特徴は、葛粉のマイナス要因と考えられるため、今まで特殊素材として研究することがほとんどなく、その応用範囲も広がっていない。馬鈴薯、小麦、甘藷、タピオカ、トウモロコシなどの穀物や芋類から得られる他の澱粉においては、生澱粉に酸化や置換、架橋などの加工を施こしたり、また澱粉と酵素や乳化剤(シュガーエステルやモノグリセライド)などを併用して老化を抑制しているが、葛粉の場合には風味を重要視した使われ方が多く、上述のような加工を施すと風味の低下・変質があるために、葛粉の加工澱粉を作ることは行なわれていないのが現状である。
【0005】
そこで、本発明は、葛粉を和菓子以外の他の様々な分野に応用すべく、葛澱粉が含まれた洋菓子や嚥下困難者用に調整された食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するため、本発明は、葛澱粉と、寒天、カラギナン、ジェランガム、ファーセレラン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グアーガム、グアーガム分解物、サイリュームシードガム、タマリンドガム、アラビアガム、ペクチン、ゼラチン、マンナン、プルラン、大豆多糖類、並びにアルギン酸及びその塩のうち少なくとも1以上の糊料と、を含んでいることを特徴とする洋菓子である。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明は、葛澱粉と、寒天、カラギナン、ジェランガム、ファーセレラン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タラガム、グアーガム、グアーガム分解物、サイリュームシードガム、タマリンドガム、アラビアガム、ペクチン、ゼラチン、マンナン、プルラン、大豆多糖類、並びにアルギン酸及びその塩のうち少なくとも1以上の糊料と、を含んでいることを特徴とする嚥下困難者用に調整された食品である。
【0008】
本発明に係る洋菓子及び嚥下困難者用に調整された食品において、葛澱粉とはマメ科の蔓性多年草である葛の根からとれる澱粉のことをいう。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、葛澱粉が含まれた洋菓子や嚥下困難者用に調整された食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る洋菓子は、このように葛澱粉と糊料を併用して含有させることによって、他の澱粉のように食感が崩れて柔らかいものが固くなったり、逆にべたつき感を生じたり、または粘性を有していたものが激しい離水現象を起こしたりすることを防止することができる。すなわち、本発明者らは、葛粉と糊料を併用したものについては、β化による老化が生じても、食感が崩れて柔らかいものが固くなったり、逆にべたつき感を生じたり、粘性を有していたものが激しい離水現象を起こすことがないことを見出した。
【0011】
例えば、図1に葛粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉のそれぞれ10%溶液を加熱処理して作ったゲルの常温および冷蔵状態におけるゲル強度を示す。老化することの指標として強度の増加があるが、明らかに葛粉においては強度の変化は少なく、他の澱粉との差が認められる。さらに老化した葛粉は他の生澱粉よりも離水が少ないという傾向にある。このように葛粉と糊料が含有された洋菓子は、時間が経っても、固くなったりせず、離水が少なくさらにべたつき感が生じることはないので、近年の冷凍流通に適した洋菓子を提供することができる。
【0012】
本発明に係る洋菓子としては、パティスリー(練り粉菓子)またはコンフィズリー(砂糖菓子)が好ましく、例えばパイ(ガレットやタルト、パートフュユテ、パートブリゼなど)やビスケット(パート・シュクレ、サブレー、クッキーズなど)、スポンジ(ジェノワーズ、ビスキュイ、マドレーヌなど)、バターケーク(パウンドケーキ、バームクーヘンなど)、シュー(パーター・シューなど)、ワッフル(ゴーフル、ソフトワッフルなど)、マカロン、ムース、ババロア、ブラマンジェ、スフレ、各種クリームなどがある。葛粉と糊料をこれらの洋菓子に添加すると、小麦中心の焼き菓子に対して食感改良や保湿性が増すことがわかった。さらに冷凍保存しても解凍後に水分移行も少なく、例えばシュークリームのシュー生地に葛粉を含ませるとカスタードクリームからの水分移行が抑えられ、従来のシューよりも食感が冷凍前の状態に近いものを得ることができる。
【0013】
本発明に係る洋菓子において、前記葛澱粉は、例えば加熱によりα化処理が施されていることが好ましく、このように葛澱粉をα化処理することによって、洋菓子の水分の少ない系での配合においても、葛澱粉の機能を十分に発揮することができる。α化澱粉を使用すると生地への溶解性が高まり、生地粘性が上がり、例えばジェノワーズにおいて、生地の起泡安定性が向上し、焼成時の釜落ちを抑制してボリューム感のある柔らかなスポンジを得ることができる。
【0014】
葛澱粉のα化処理の方法としては、溶解した葛粉溶液を、微粒化分散して熱風中で瞬時に乾燥する方法(スプレードライ法)、加熱したドラム上で乾燥する方法(ドラムドライ法)、真空連続ベルト上で乾燥する方法(CVD法)、もしくはスクリューを有する加熱容器内に葛粉と水を連続的に投入して加圧して溶解乾燥を行う方法(エクストルーダー法)などがある。これらの方法により作られたα化澱粉は、加熱しない水に分散するだけで糊化する性質を有する。これらの粉末は水分散をよくするために、必要に応じて造粒機で顆粒化することもできる。
【0015】
また、葛粉と糊料を含ませたものは、食品にトロミや柔らかなゲル食感を付与することができ、嚥下困難者用に調整された食品に利用することができる。
【実施例1】
【0016】
実施例1
次に、表1に示す配合で葛粉(広八堂社製)、低強度寒天(UX−100、伊那食品工業(株)製)、生クリーム(乳脂肪45%)、牛乳、砂糖及び水を混ぜたものを加熱することによって沸騰溶解し、その溶解したものを容器に充填し、その後冷却することによって本発明に係る洋菓子の実施例1としてミルクブラマンジェを得た。また、比較例1として実施例1から低強度寒天が含まれないミルクブラマンジェを得た。
【0017】
【表1】


【0018】
比較例1に係るミルクブラマンジェは、容器から取り出すのが困難であったが、実施例1に係るミルクブラマンジェは、容易に容器から取り出すことができ、食感に優れていた。
【0019】
実施例2
次に、表2に示す配合で寒天(UP-7、伊那食品工業(株)製)、全卵、グラニュー糖、薄力粉、葛粉(広八堂社製)、牛乳及び無塩バターを原料とし、本発明に係る洋菓子の実施例2としてスポンジケーキを得た。実施例2の製法は、寒天とグラニュー糖を混ぜ合わせ、全卵と攪拌混合し、約30℃まで加温する。そこに予めふるっておいた薄力粉と葛粉を混ぜ合わせ、さらに牛乳と無塩バターを加え生地を作る。生地を容器に流し入れ、オーブンで170℃20分焼成する。また、比較例2として実施例2の葛粉及び寒天が含まれないスポンジケーキを用意した。
【0020】
【表2】


【0021】
実施例2に係るスポンジケーキは、比較例2に係るスポンジケーキと比較して釜落ち(焼き縮み)が少なく、きめの細かいソフトな食感を得ることができた。
【0022】
実施例3
次に、表3に示す配合でアラビアガム(スプレーガム、CNI社製)、薄力粉、葛粉(広八堂社製)、牛乳、水、バター、食塩及び全卵を原料とし、本発明に係る洋菓子の実施例3としてパータシューを得た。実施例3の製法は、牛乳、水、バター、塩を混ぜ加熱し、アラビアガム、薄力粉、葛粉を混合した粉を素早く投入する。攪拌しながら加熱した後、生地をボールに移し、溶きほぐした全卵を徐々に加え生地を作る。生地を25gに絞りだし、オーブンで200℃25分焼成する。また、比較例3として実施例3の葛粉及びアラビアガムが含まれないパータシューを用意した。
【0023】
【表3】


【0024】
実施例3に係るパータシューは、比較例3に係るパータシューと比較して膨らみが大きく、焼き縮みが小さく、サックリした食感を得ることができた。
【0025】
実施例4
次に、表4に示す配合で低強度寒天(UX−100、伊那食品工業(株)製)、小麦粉、葛粉(広八堂社製)、牛乳、グラニュー糖、卵黄及び無塩バターを原料とし、本発明に係る洋菓子の実施例4としてカスタードクリームを得た。実施例4の製法は、卵黄とグラニュー糖を擦り混ぜ、そこに低強度寒天、小麦粉、葛粉を混合した粉を攪拌しながら投入する。つぎに温めた牛乳を攪拌しながら加え、とろみが出るまで加熱する。火を止め、無塩バターを加え、攪拌しながら冷却する。また、比較例4として実施例4の葛粉及び低強度寒天が含まれないカスタードクリームを用意した。
【0026】
【表4】


【0027】
実施例4に係るカスタードクリームは、比較例4に係るカスタードクリームと比較して糊状感も少なくさっぱりとした食感や味立ちの良い卵の風味を得ることができた。また、実施例4及び比較例4に係るカスタードクリームそれぞれを実施例3及び比較例3に係るパータシューそれぞれに入れて経時変化を見たところ、実施例3及び4の組合せの方がサックリとした食感を持続することができた。
【0028】
実施例5
水に10重量%の葛粉(広八堂社製)を分散させ、表面温度120℃のダブルドラムドライヤー(楠製作所社製)で加熱α化しながら乾燥させ、粉砕機(ターボ工業社製)によりα化葛粉を製造した。次に、表5に示す配合で前記α化葛粉と、カラギナン(CSM−2、CPケルコ社製)、トレハロース、牛乳、生クリーム、チョコレート及び洋酒を原料とし、本発明に係る洋菓子の実施例5としてチョコレートムースを得た。実施例5の製造方法は、牛乳の中に、カラギナン、葛粉、ゼラチン、トレハロースを混ぜ合わした粉を投入し、加熱溶解する。そこに温めたチョコレートを加え、さらに泡立てた生クリームを混ぜ合わせる。また、比較例5として実施例5の葛粉及びカラギナンの代わりにゼラチンを添加したチョコレートムースを用意した。
【0029】
【表5】


【0030】
実施例5に係るチョコレートムースは、比較例5に係るチョコレートムースと比較して口どけもほとんど差がなく、味立ちの良い食感を得ることができた。また、実施例5に係るチョコレートムースは、比較例5に係るチョコレートムースと比較して常温における溶け出しも少なかった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】葛粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉のそれぞれ常温および冷蔵状態におけるゲル強度を示すグラフである。
【出願人】 【識別番号】000118615
【氏名又は名称】伊那食品工業株式会社
【住所又は居所】長野県伊那市西春近5074番地
【出願日】 平成16年3月10日(2004.3.10)
【代理人】 【識別番号】100092820
【弁理士】
【氏名又は名称】伊丹 勝

【識別番号】100103274
【弁理士】
【氏名又は名称】千且 和也

【公開番号】 特開2005−253347(P2005−253347A)
【公開日】 平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願番号】 特願2004−68183(P2004−68183)