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【発明の名称】 洋菓子的な濃厚な風味・香りを有する冷菓の製造方法
【発明者】 【氏名】田中 道高
【住所又は居所】大阪府大阪市西淀川区歌島4−6−5 江崎グリコ株式会社内

【要約】 【課題】洋菓子的な濃厚な風味・香りに富んだ冷菓を製造する。

【解決手段】乾熱下で加熱変性させた組成物を、アイスクリームに添加することにより、高級感あふれる冷菓を比較的廉価にて提供することが可能になった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳脂肪を含む油脂類(バター、生クリーム、植物性脂肪等)を乾熱下で糖類、及び風味原料素材類(脱脂粉乳、卵黄パウダー、ココアパウダー、小豆パウダー、バターミルクパウダー、粉末乳製品分解物、粉末香料等)を含む混合物を100℃以上120℃未満の温度で加熱変性させた組成物を含む冷菓。
【請求項2】
乾熱下で105℃以上115℃未満の温度で加熱変性させた請求項1の組成物を含む冷菓。
【請求項3】
乳脂肪を含む油脂類(バター、生クリーム、植物性脂肪等)を乾熱下で糖類、及び風味原料素材類を含む混合物を100℃以上120℃未満の温度で加熱変性させ、全体の水分値を、10%以下にした組成物を含む冷菓。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、洋菓子的な濃厚な風味・香りを有する冷菓の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高級アイスクリーム(いわゆるプレミアムアイスクリーム)分野の市場が着実に成長している。上記アイスクリームは、乳脂肪含量が高く空気含有率(OR)の低く、一般のアイスクリームと比して濃厚な風味になる特徴がある。濃厚な風味にするため、生クリーム、脱脂濃縮乳等を使用し、最高級香料を付与する。このため非常にコストが高くなるとともに、乳製品等の使用原料も限定され、香料による特徴付けが図られているが、差別化が困難な現状である。
【0003】
高級カスタードアイスクリームでは、濃厚な風味にするため、加糖冷凍卵黄を10%以上添加する必要がある。このためコストが高くなるとともに、アイスクリームミックスの増粘、オフフレーバーによる生臭さの発生といった欠点があり、その使用量に制限がある。
又カスタード風味を向上させるため、香料を添加する。しかし香料で濃厚なカスタード風味・香りを出すことは
難しく、 カスタード風味を強調するために過量添加した場合、製品全体の風味の調和が損なわれやすいため添加量が限られる。
【0004】
アイスクリーム製造においては、冷菓の殺菌条件として68℃30分同等以上の殺菌が指定されている。 しかし上記殺菌条件では、高級カスタードアイスクリームにおいて、加糖冷凍卵黄の配合量が多くても、カスタード風味の本来のおいしさである、洋菓子的なカラメライズによる香り高いカスタード風味の出現が困難である。このため
全体としてカスタード風味の香りが弱い特徴の薄いものとなる。
【0005】
一方、洋菓子におけるカスタード風味は、卵黄、砂糖、油脂等を混合し適度な加熱処理により、卵黄蛋白と砂糖、乳原料がカラメライズしてメイラード反応を起こし、卵黄と砂糖が焼けたカステラのメイラード風味が付与 され、特徴のある濃厚なカスタード風味・香りとなる。
【0006】

以上のように従来技術では、、カステラなど焼成行程を有する洋菓子においては濃厚なカスタード風味を付与することは可能であるが、焼成行程を経ない高級カスタードアイスクリームにおいて、配合面、製造面から洋菓子的な濃厚な風味・香りを持つアイスクリームを作ることは、おのずと限界があった。
【0007】
【特許文献1】特開平 6−30706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、乾熱下で加熱変性させた組成物をアイスクリームに添加することにより、従来製品と差別化出来る、洋菓子的な濃厚な風味・香りを有する各種冷菓を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は乳脂肪を含む油脂類(バター、植物性油脂等)を乾熱下で糖類、及び風味原料素材類(脱脂粉乳、卵黄パウダー、ココアパウダー、小豆パウダー、粉末香料等)を含む混合物を、100℃以上120℃未満好ましくは105℃以上115℃未満の温度で加熱して得られる組成物をアイスクリームミックスに添加することで従来製品と差別化出来る、洋菓子的な濃厚な風味・香りを有する冷菓を得ることができるという知見を得た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において用いられる油脂類としては、バター、生クリーム、植物性脂肪等があげられる。またこれら油脂類は2種類以上を用いても良い。上記油脂類においては、風味面より乳脂肪類が良好であり、固形分が50 重量%、特に好ましくは80重量%以上の油脂が最適である。
【0011】
本発明において用いられる糖類としては、砂糖、上白糖、中白糖、三温糖、和三盆糖、黒砂糖等があげられる。またこれら糖類は2種類以上を用いてもよい。
【0012】
本発明における風味原料素材類としては、脱脂粉乳、乾燥卵黄パウダー、バターミルクパウダー、ココアパウダー、紅茶パウダー、コーヒーパウダー、小豆パウダー、カラメルパウダー、蜂蜜パウダー、粉末香料等があげられる。またこれらの風味原料素材類は2種類以上を用いても良い。上記風味原料素材類としては、固形分が
90重量%、特に好ましくは95重量%以上の乾燥パウダーが最適である。
【0013】
上記各種風味原料素材において、乾燥卵黄パウダー、脱脂粉乳、ココアパウダー等脂質を含有する風味原料素材がより最適である。脂質を含有することで、油脂類原料と加熱混合時により均一な組成物が得られ、風味面及び物性面で安定する。風味原料素材として、脂質分が0.5重量%、特に好ましくは5重量%以上の乾燥パウダーが最適である。
【0014】
上記以外の各種風味原料素材として、コーヒーパウダー、小豆パウダー、カラメルパウダー、蜂蜜パウダー、粉末香料等がある。
【0015】
本発明でいう乾熱下とは、油脂類中の水分が実質的に2%以下、特に好ましくは0.5%以下の状態で糖類、風味原料素材類を加熱・混合を開始することをいう。2%以上を超えて加熱・混合した場合、又混合する糖類、風味原料素材類の水分値が多い場合、ブロック状に固化し、固形物の中心部の加熱の程度が周囲に比較し低く、その結果均一な品質を得がたいので好ましくない。
【0016】
本発明でいう加熱・混合の方法は、どのような方法でも良いが、均一に加熱・混合することが重要である。
例えば、電熱や蒸気やオイル湯煎による方法もある。掻きとり撹拌羽を有する平釜若しくは真空釜による方法が最も簡単である。
【0017】

油脂類、糖類及び風味原料素材類を含む混合物の混合比は、バター、植物性油脂などから選択された1種類以上の油脂類が、好ましくは20〜60重量%、特に好ましくは35〜45重量%。砂糖、上白糖などから選択された1種類以上の糖類が、好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは25〜35重量%。脱脂粉乳、卵黄パウダー、ココアパウダーなどから選択された風味原料素材類が、好ましくは0.5%〜40重量%で全体として 100重量%とする。油脂類の量が上記より少ないと全体の流動性がなくなり作業性が悪くなり釜底・壁面に残って過加熱され風味が損なわれる。
【0018】
製造工程は、先ず油脂類を平釜に投入し、油脂類温度113℃〜115℃になるまで、10分〜60分 油脂類中の水分が実質的に2%以下になるまで均一に加熱撹拌する。これにより均一な油脂物を得る。
加熱時間はおおむね10分〜60分の範囲にあるが、これは平釜の形状、平釜中の混合ミックス量、使用する
熱源などにより異なる。
【0019】
次に、糖類、風味原料素材類の粉体を均一に混合する。混合後、上記油脂物に混合し均一に加熱する。撹拌装置は平釜全体を緩やかに撹拌できる掻き取り式のものが好ましい。撹拌回転数は使用機器、投入量等により異なるが全体を均一に撹拌出来る回転数が必要である。加熱は混合ミックスが100℃以上〜120℃未満、特に好ましくは105℃以上115℃未満で行う。なお、焦げによる変色等の品質劣化がなければ120℃以上となってもかまわない。加熱時間はおおむね5分〜40分の範囲にあるが、これは平釜の形状、平釜中の混合組成物量、使用する熱源などにより異なり、またどの程度のフレーバーを付与するか、また原材料によってはこれより短い、あるいは長いこともありうる。
【0020】
混合組成物が目的とする温度に達した後、速やかに平釜から取り出す。短時間に速やかに50℃以下に、冷却することにより、風味が豊かなものが得られる。冷却時間は5〜60分の範囲が適切である。反対に長時間高温放置することにより、油層分離、加熱臭により風味劣化が生じることは当然である。冷却時間はおおむね5分〜60分の範囲にあるが、これは平釜の形状、平釜中の混合組成物量、冷却装置などにより異なる。
【0021】
上記のようにして得られた混合組成物は、冷却後冷凍保管される。使用に当たっては解凍すれば呈味に変化はない。
【0022】
代表的な油脂組成物の配合比について記す。
(配合例1)
本配合にてカスタード風味を持つ組成物を得ることが出来る。
【表1】


【0023】
(配合例2)
本配合にてミルク風味を持つ組成物を得ることが出来る。
【表2】


【0024】
(配合例3)
本配合にて小豆風味を持つ組成物を得ることが出来る
【表3】


【0025】
(配合例4)
本配合にてバニラ風味を持つ組成物を得ることが出来る
【表4】


【0026】
(配合例5)
本配合にてココア風味を持つ組成物を得ることが出来る
【表5】


【0027】
この組成物を、アイスクリームミックスに混合比で1〜20重量%、好ましくは1〜15%、特に好ましくは1〜10%含有させると、従来製品と差別化出来る洋菓子的な濃厚な風味・香りを有する各種アイスクリームを得ることが出来る。
【0028】
本発明において組成物を混合する冷菓は、従来公知の任意の冷菓(氷菓またはアイスクリーム類)でよい。 その風味も任意のものでありうる。
【実施例】
【0029】

以下実施例に基づき詳細に説明する。以下の実施例において%は重量%である。
(実施例1)
【表6】


【0030】
無塩バター80kgをジャケット付き平釜(蒸気圧2.3kg)に投入し、蒸気熱にて、無塩バターの品温を100℃になるまで、35分間加熱する。さらに無塩バター品温が110℃になるまでさらに7分間加熱し、無塩バターの水分値を実質的に0.5%以下に調整した。
砂糖50kg、脱脂粉乳30kg、卵黄パウダー40kgを均一に予め混合する。混合後、上記油脂物に投入し、均一に加熱、混合する。撹拌装置は平釜全体を緩やかに撹拌できる掻き取り式である。撹拌回転数を15rpmで行う。粉体類の投入直後には品温は低下するが、10分間加熱すれば品温は86℃まで上昇した。さらに11分間加熱により終点温度110℃に到達した時点で加熱を終了した。直ちにジャケット内に冷却水を注入することにより、80℃まで冷却した。用した時間は30分間である。その後冷却水を切り、ジャケット付き平釜より混合ミックスを取出した。その後50℃にて充填、包装し冷凍保管した。
【0031】
(実施例2,3)
終点温度を100℃、120℃とした他は実施例1と同様にした。

【0032】
(結果)
実施例1−3で得られたカスタード風味組成物の香気成分を、ガスクロマトグラフィー(GC−MS)で分析した。同時に分析で得られた主要なカスタード香気成分につき、終点温度100℃、110℃、
120℃で比較分類した。
【0033】
代表的なカスタード香気成分として、Methyl amyl ketone,Limonene,Acetion、Methyl
heptyl ketone,Methyl nonyl ketone,n−Butyric acid,Furfruyl alcohol, δ−Hexalactone,Maltolno9香気成分がある。
【0034】
上記分析結果を表1に示す。
【表7】


【0035】
表7からわかるように、代表的なカスタード香気成分は、110℃でピークであるか、あるいは増加・減少傾向の
中間段階である。
【0036】
(比較例1)
実施例1と同原料配合比とし、原料を一括混合方式とした。
無塩バター80kgをジャケット付き平釜(蒸気圧2.3kg)に投入した。蒸気熱にて、無塩バターの品温を60℃にて溶解した。砂糖50kg、脱脂粉乳30kg、卵黄パウダー40kgを均一に混合する。混合後、上記無塩バターに
投入し加熱撹拌を開始した。直ちに無塩バターと粉類が一体となった生地(ドウ)にまとまる。表面から油脂分が滲み出し、撹拌を継続しると生地(ドウ)・油脂分がはねて飛び散る状態となった。撹拌を停止すると、完全に油脂分と生地(団魂状)に分離する。加熱開始後7分間後撹拌を継続することが困難な状態になる。混合物の品温は、80℃であった。その後50℃にて充填、包装し冷凍保管した。
【0037】
(結果)
比較例1で得られた、カスタード風味組成物の香気成分を、ガスクロマトグラフィー(GC−MS)で分析した。同時に分析で得られた主要なカスタード香気成分につき、実施例1−3で得られた終点温度100℃、110℃、 120℃で比較分類した。
【0038】
代表的なカスタード香気成分として、Methyl amyl ketone,Limonene,Acetion,Methyl
heptyl ketone,Methyl nonyl ketone,n−Butyric acid,Furfruyl alcohol, δ−Hexalactone,Maltolの9香気成分がある。
【0039】
上記分析結果を表8に示す。
【表8】


【0040】
表8からわかるように、代表的なカスタードの香気成分は、実施例1−3で得られた方が、明らかに比較例1に比べて香気成分のピークが大きい。
【0041】
又、その他香気成分を含めたトータルの香気成分比較においても、実施例1−3で得られた方が、明らかに比較例1に比べて大きい。

【0042】

冷菓ミックスの配合 本発明のアイスミックス(アイスクリームミックス)を表9の組成で配合した。
(実施例4)
【表9】


【0043】
上記アイスクリーム配合から成る、空気含有率(OR)30のスーパープレミアムアイスクリームを常法により 製造した。これを−25℃の冷凍庫にて1晩保管した。
【0044】
(比較例2)
表9よりカスタード風味組成物を除き、その原料の無塩バター、砂糖、卵黄パウターを、別個に加えた配合を表10に示す。この配合でアイスクリームミックスを実施例4で示したのと同様の方法にて製造した。これを−25℃の冷凍庫にて1晩保管した。表9及び表10の製品中の乳成分、卵成分、糖成分は同等である。
【表10】


【0045】
(結果)
実施例4並びに比較例2で得られたカスタードアイスクリームの香気成分を、同様にガスクロマトグラフィー(GC−MS)で分析した。主要なカスタード香気成分につき、比較分類した。
【0046】
代表的なカスタード香気成分として、Methyl amyl ketone,Limonene,Acetion,Methyl
heptyl ketone,Methyl nonyl ketone,n−Butyric acid,Furfruyl alcohol, δ−Hexalactone,Maltolの9香気成分がある。

【0047】
上記分析結果を表11に示す。
【表11】


【0048】
表11からわかるように、代表的なカスタードの香気成分は、実施例4で示したカスタード風味組成物を配合したものが、比較例2よりも明らかに大きなピークである。
【0049】
官能試験
実施例4、比較例2を専門パネラー10名にて風味、香り、濃厚さを評価した。結果を表12に示す。
【表12】


【0050】
評価点の基準(各人5点満点)
5点:風味食感レベルが高く非常に優れている。
4点:風味食感レベルが高く優れている。
3点:普通
2点:風味食感レベルが低くやや劣る
1点:風味食感レベルが低く非常に劣る

【産業上の利用可能性】
【0051】

本発明に得られた乾熱下で加熱変性させた組成物を、アイスクリームに添加することにより、従来製品と差別化出来る濃厚な風味・香りを有する各種冷菓を提供することが出来た。これにより、カスタード原料を大量に配合しなくともカスタード風味に富んだ冷菓を製造することが可能となり、高級感あふれる冷菓を比較的廉価にて製造することが可能となった。

【出願人】 【識別番号】000000228
【氏名又は名称】江崎グリコ株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市西淀川区歌島4丁目6番5号
【出願日】 平成16年3月10日(2004.3.10)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−253328(P2005−253328A)
【公開日】 平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願番号】 特願2004−66824(P2004−66824)