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【発明の名称】 脱臭ココアバターの製造方法
【発明者】 【氏名】伊藤 大典
【住所又は居所】東京都荒川区東尾久7丁目2番35号 旭電化工業株式会社内

【要約】 【課題】経日的な風味劣化が抑制されて戻り臭の発生が防止され、しかもこれらを使用したチョコレート(ダーク、ミルク及びホワイトチョコレート)や各種クリーム類(生クリーム、ストロベリー等)等の素材の味を引き出すことのできる、脱臭ココアバターを製造し得る方法を提供すること。

【解決手段】原料ココアバターを有機酸処理し、有機酸共存下で漂白した後、脱臭することを特徴とする脱臭ココアバターの製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ココアバターを有機酸処理し、有機酸共存下で漂白した後、脱臭することを特徴とする脱臭ココアバターの製造方法。
【請求項2】
上記有機酸がクエン酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、タンニン酸、コハク酸及び酒石酸からなる群から選ばれた1種又は2種以上である請求項1記載の脱臭ココアバターの製造方法。
【請求項3】
上記有機酸を水溶液の形態で添加する請求項1又は2記載の脱臭ココアバターの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の製造方法によって得られた脱臭ココアバター。
【請求項5】
トコフェロール及び/又はレシチンを含有する請求項4記載の脱臭ココアバター。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、風味劣化が抑制されて戻り臭の発生が防止された脱臭ココアバターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホワイトチョコレートや各種クリーム等(ストロベリー、生クリーム等)にココアバターを使用する場合は、脱臭ココアバター(未脱臭ココアバターを一部併用したものを含む)を使用することが多い。これは、脱臭ココアバターは、カカオ独特の臭いや味が弱いため、コンチェング時間の短縮、風味が淡泊になり他の呈味成分の風味を強調し得る等の利点を持つためである。
また、最近、ダークチョコレートやミルクチョコレートでもカカオ風味の弱いものが好まれる傾向があり、これらのチョコレートにも脱臭ココアバターが使用されるようになっている。
【0003】
しかしながら、脱臭ココアバターを使用したホワイトチョコレートあるいはクリーム等は、脱臭ココアバターを使用していないものに比べて風味劣化が速いことが知られている。これは、ココアバターや脱臭ココアバターが、大豆油等の植物油脂と比較して酸化安定性の高いものであるにもかかわらず、脱臭ココアバターが経日的に風味劣化を起こし、戻り臭が発生するためである。
【0004】
脱臭ココアバターの風味劣化や戻り臭の発生は、一般的に知られている大豆油等の植物油脂の酸化安定性を改善する手段では防止することが困難である。このため古くから、これを防止する方法が各種検討されてきた。
例えば、脱臭ココアバターにトコフェロール、レシチン、甘草抽出物、L−アスコルビン酸ステアレート、L−アスコルビン酸パルミテートといった酸化防止剤を添加する方法及び香料等でマスキングする方法が従来行われている。
しかしながら、脱臭ココアバターにおける、トコフェロールもしくはレシチンの添加は、その風味劣化の抑制には効果的でなく、甘草抽出物は添加量を多くしなければならないためその特異な風味が問題となる。さらにL−アスコルビン酸ステアレートもしくはL−アスコルビン酸パルミテートの添加は、これらが油脂に難溶のため、作業性に問題があった。また、香料等でマスキングする方法は、効果が見られなかったり、香料そのものの風味から用途が限定されたりするため、長期間保存する商品への応用は難しかった。
【0005】
このため、このような植物油脂としては特異的な脱臭ココアバターの風味劣化の防止のために特に有効な方法として、茶抽出物を添加する方法(例えば特許文献1参照)が開示されている。しかしながら、この方法は、カテキンは油脂への溶解性が低いため、風味劣化の防止効果を高めるために配合量をふやすことが難しいという欠点があった。
【特許文献1】特開平5- 252869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、経日的な風味劣化が抑制されて戻り臭の発生が防止され、しかもこれらを使用したチョコレート(ダーク、ミルク及びホワイトチョコレート)や各種クリーム類(生クリーム、ストロベリー等)等の素材の味を引き出すことのできる、脱臭ココアバターを製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、種々検討した結果、原料ココアバターに有機酸を添加し、該有機酸共存
下で漂白をした後、脱臭することによって、上記目的を達成する脱臭ココアバターが得られることを知見した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、原料ココアバターを有機酸処理し、有機酸共存下で漂白した後、脱臭することを特徴とする脱臭ココアバターの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の脱臭ココアバターの製造方法によれば、経日的な風味劣化が抑制されて戻り臭の発生が防止され、しかもこれらを使用したチョコレート(ダーク、ミルク及びホワイトチョコレート)や各種クリーム類(生クリーム、ストロベリー等)等の素材の味を引き出すことのできる、脱臭ココアバターが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の脱臭ココアバターの製造方法について詳述する。
本発明に使用する原料ココアバターは、その産地や種類等を限定するものではなく、各種のものを単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。また、原料ココアバターは、脱ガム処理及び/又は脱酸処理を行なったものであってもよい。
脱ガム処理の方法としては特に限定されず、例えば水添加の方法の他、リン酸添加、有機酸添加等の方法を挙げることができる。また、脱酸処理の方法についても特に限定されず、例えばアルカリ処理等の方法を挙げることができる。
【0010】
本発明の脱臭ココアバターの製造方法を実施するには、まず、上記の原料ココアバターを有機酸処理する。
該有機酸処理は、原料ココアバターに有機酸を添加し、攪拌することにより行われる。有機酸の添加方法については特に限定されないが、60〜90℃に加温融解した上記原料ココアバターに有機酸を添加するのが好ましく、この加温溶解を減圧下で行うことがさらに好ましい。
【0011】
上記有機酸としては、例えば、アジピン酸、安息香酸、クエン酸、グルコン酸、ケイ皮酸、コハク酸、シュウ酸、ソルビン酸、乳酸、酢酸、フマル酸、プロピオン酸、葉酸、酪酸、マレイン酸、タンニン酸、酒石酸、蟻酸、リンゴ酸、フィチン酸、各種アミノ酸等が挙げられ、これらの中でもクエン酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、タンニン酸、コハク酸、酒石酸が好ましい。これらの有機酸は、単独で使用してもよく、2種以上併用することもできる。本発明においては、金属キレート能を有する点及び油脂への溶解度が高いことから、クエン酸を使用することが特に好ましい。
【0012】
上記有機酸の原料ココアバターへの添加量は特に限定されないが、原料ココアバター100質量部に対して、好ましくは有機酸を0.0001〜2質量部、より好ましくは0.0005〜1質量部、さらに好ましくは0.001〜0.5質量部である。有機酸の添加量が0.0001質量部未満であると、本発明の効果が得られないおそれがあり、2質量部を超える添加量は、改良効果がそれ以上得られない点において好ましくない。
【0013】
また、原料ココアバターに対し上記有機酸を添加する際は、原料ココアバターに均一に接触させることが容易になる等、作業性が良好なことから、有機酸を水溶液の形態で添加することが好ましい。この場合、該水溶液の有機酸濃度は、好ましくは5〜85質量%、より好ましくは10〜40質量%である。
【0014】
原料ココアバターに有機酸を添加後、これらを充分に撹拌する。この撹拌はバッチ式でも連続式でも可能である。ここで、完全に有機酸を原料ココアバター中に分散させるため、バッチ式の場合は60〜90℃で5〜60分間撹拌することが好ましく、連続式の場合は60〜90℃で2秒〜1分間撹拌することが好ましい。
【0015】
次いで、有機酸処理した原料ココアバターを、該有機酸共存下で漂白処理を行う。ここで、有機酸を水溶液の形態で添加した場合には、漂白処理に供する前に、減圧下にて脱水処理を行うことが好ましい。
上記漂白処理は特に限定されず、通常の油脂精製工程による方法を適用することができ、活性白土等の吸着剤を添加し減圧下で加温・撹拌する方法が一般的である。例えば、原料ココアバター100質量部に対し活性白土を1〜8質量部添加し、温度60〜120℃で5〜60分間撹拌することが好ましい。
このような漂白処理を行った後、フィルタープレス等で吸着剤を除去して漂白油を得る。
【0016】
次いで、上記漂白油を脱臭処理することにより、本発明に係る脱臭ココアバターが得られる。脱臭方法としては特に限定されず、水蒸気蒸留法等の通常の油脂精製工程による方法を適用することができる。水蒸気蒸留法を行う際の好ましい処理条件としては、例えば、温度が160〜260℃、好ましくは180〜200℃、真空度は8.0×102 Pa以下、好ましくは4.0×102 Pa以下、時間としては30〜60分間という条件が挙げられる。脱臭処理温度が160℃未満では、十分な脱臭効果が得られにくく、260℃超では脂肪酸の異性化やトリアシルグリセロールのエステル交換反応による組成の変化がおこりやすく好ましくない。
【0017】
上記の如くして得られる本発明の脱臭ココアバターは、酸価が2.0以下であることが好ましい。また、その色調は、ロビボンド法5.25インチセルで測定し、赤をR、黄色をYとした場合、10R+Yの数値が50以下、好ましくは35以下であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の脱臭ココアバターには、トコフェロール及び/又はレシチンを含有させることが好ましく、それにより戻り臭防止効果をさらに向上させることができる。
上記トコフェロール及び/又はレシチンの含有量は、脱臭ココアバター中に、好ましくは0.001〜0.15質量%である。ただし、トコフェロール含有量の上限は0.1質量%であり、レシチン含有量の上限は0.05質量%である。上記トコフェロール及び/又はレシチンの含有量が0.001質量%未満であると、戻り臭防止効果の向上が見られず、上記トコフェロール添加量が0.1質量%を超えるか、レシチンの含有量が0.05質量%を超えると、トコフェロール及び/又はレシチンの風味が感じられるようになり好ましくない。
上記トコフェロール及び/又はレシチンは、本発明の脱臭ココアバター製造のどの段階で添加してもよいが、トコフェロール及び/又はレシチンは脱臭工程での消長が大きいため、脱臭工程の後に上記含有量になるように添加することが好ましい。
【0019】
本発明で得られた脱臭ココアバターは、無色ないし淡黄色の色調で、穏やかなカカオ風味、もしくはほとんど無味無臭の状態であり、ホワイトチョコレート、ミルクチョコレート、ビターチョコレート等の各種チョコレート、チョコレート菓子、各種クリーム等(ストロベリー、生クリーム等)に好適に使用することができる。
また、本発明の脱臭ココアバターをチョコレート製品の使用に供する場合、好ましい風味をもつ選別された脱臭未処理のココアバター(非脱臭ココアバター)を適宜の割合で添加混合することにより、脱臭ココアバターの戻り臭防止効果を損なうことなく、さらに好ましいカカオ風味を付与することができる。上記脱臭未処理のココアバターの添加量は、脱臭ココアバター100質量部に対し、好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。
【0020】
また更に、本発明で得られた脱臭ココアバターを分別して、スナップ性、耐熱性に優れたチョコレート用に適したステアリン画分や、口溶けが良好なチョココーティング用や冷菓用に適したオレイン画分とすることもできる。
【実施例】
【0021】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。
【0022】
(実施例1)
酸価2.44、色調(ロビボンド1インチセル)10R+Y=48の原料ココアバター1500gを減圧下で撹拌しながら85℃まで昇温し、20%クエン酸水溶液を15g添加し30分間撹拌した。続いて、減圧下にて脱水した後、45gの活性白土を添加して30分間撹拌保持した後、セライトでプレコートした濾紙で、真空度3.0×102 Paにて減圧濾過することにより活性白土を除去し、1420gの漂白油を得た。この漂白油1000gを減圧下200℃で1時間水蒸気蒸留し、989gの本発明の脱臭ココアバターを得た。この脱臭ココアバターの酸価は0.60、色調(ロビボンド5.25インチセル)10R+Y=22であった。
【0023】
(実施例2)
20%クエン酸水溶液の添加量を7.5gとした以外は実施例1と同様の操作にて本発明の脱臭ココアバターを得た。この脱臭ココアバターの酸価は0.38、色調(ロビボンド5.25インチセル)10R+Y=24であった。
【0024】
(実施例3)
20%クエン酸水溶液の添加量を1.5gとした以外は実施例1と同様の操作にて本発明の脱臭ココアバターを得た。この脱臭ココアバターの酸価は0.92、色調(ロビボンド5.25インチセル)10R+Y=24であった。
【0025】
(実施例4)
20%クエン酸水溶液の添加量を0.15gとした以外は実施例1と同様の操作にて本発明の脱臭ココアバターを得た。この脱臭ココアバターの酸価は0.98、色調(ロビボンド5.25インチセル)10R+Y=24であった。
【0026】
(実施例5)
20%クエン酸水溶液の代わりに20%酢酸溶液を用いた以外は実施例1と同様の操作にて本発明の脱臭ココアバターを得た。この脱臭ココアバターの酸価は0.38、色調(ロビボンド5.25インチセル)10R+Y=26であった。
【0027】
(実施例6)
20%クエン酸水溶液の代わりに20%シュウ酸溶液を用いた以外は実施例1と同様の操作にて本発明の脱臭ココアバターを得た。この脱臭ココアバターの酸価は0.38、色調(ロビボンド5.25インチセル)10R+Y=26であった。
【0028】
(実施例7)
20%クエン酸水溶液の代わりに20%マレイン酸溶液を用いた以外は実施例1と同様の操作にて本発明の脱臭ココアバターを得た。この脱臭ココアバターの酸価は0.38、色調(ロビボンド5.25インチセル)10R+Y=26であった。
【0029】
(実施例8)
20%クエン酸水溶液の代わりに20%タンニン酸溶液を用いた以外は実施例1と同様の操作にて本発明の脱臭ココアバターを得た。この脱臭ココアバターの酸価は0.38、色調(ロビボンド5.25インチセル)10R+Y=26であった。
【0030】
(実施例9)
20%クエン酸水溶液の代わりに20%コハク酸溶液を用いた以外は実施例1と同様の操作にて本発明の脱臭ココアバターを得た。この脱臭ココアバターの酸価は0.38、色調(ロビボンド5.25インチセル)10R+Y=26であった。
【0031】
(実施例10)
20%クエン酸水溶液の代わりに20%酒石酸溶液を用いた以外は実施例1と同様の操作にて本発明の脱臭ココアバターを得た。この脱臭ココアバターの酸価は0.38、色調(ロビボンド5.25インチセル)10R+Y=26であった。
【0032】
(実施例11)
実施例1で得られた脱臭ココアバターを加温溶解し、トコフェロールを0.01質量%となるように添加混合した。この脱臭ココアバターの酸価は0.38、色調(ロビボンド5.25インチセル)10R+Y=22であった。
【0033】
(実施例12)
実施例1で得られた脱臭ココアバターを加温溶解し、レシチンを0.01質量%となるように添加混合した。この脱臭ココアバターの酸価は0.38、色調(ロビボンド5.25インチセル)10R+Y=22であった。
【0034】
(実施例13)
実施例1で得られた脱臭ココアバターを加温溶解し、トコフェロールを0.01質量%及びレシチンを0.01質量%となるように添加混合した。この脱臭ココアバターの酸価は0.38、色調(ロビボンド5.25インチセル)10R+Y=22であった。
【0035】
(比較例1)
20%クエン酸水溶液を無添加とした以外は実施例1と同様の操作にて脱臭ココアバターを得た。この脱臭ココアバターの酸価は0.64、色調(ロビボンド5.25インチセル)10R+Y=26であった。
【0036】
(シャールオーブン試験)
実施例1〜13及び比較例1で得られた脱臭ココアバターをそれぞれ100mlガラス瓶に70g採取して、これらを65℃の恒温槽に静置し、シャールオーブン試験を行った。サンプリングは1週間目、2週間目、3週間目、4週間目の7日毎に行い、その戻り臭の強さを3段階〔○:戻り臭なし、△:やや戻り臭発生、×:戻り臭あり〕で評価した。それらの結果を下記表1に示す。
【0037】
【表1】


【0038】
上記表1に示す結果から明らかなように、実施例1〜13で得られた本発明の脱臭ココアバターは、比較例1で得られた脱臭ココアバターと比較して、4週間目でも戻り臭がなく、風味安定性に優れたものであることがわかる。
【出願人】 【識別番号】000000387
【氏名又は名称】旭電化工業株式会社
【住所又は居所】東京都荒川区東尾久7丁目2番35号
【出願日】 平成16年3月4日(2004.3.4)
【代理人】 【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修

【公開番号】 特開2005−245313(P2005−245313A)
【公開日】 平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願番号】 特願2004−60534(P2004−60534)