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【発明の名称】 チョコレート流動性改良乳化剤
【発明者】 【氏名】山本一也

【氏名】大久保泰宏

【要約】 【課題】チョコレートの流動性を改善し使用油脂分を低減する効果を有する乳化剤を提供し、流動性の改善されたチョコレートを提供する

【解決手段】チョコレートにポリグリセリンエルカ酸エステルを配合することにより流動性改善効果が見出された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグリセリンエルカ酸エステルを含有するチョコレート、およびその製造方法。
【請求項2】
ポリグリセリンのグリセリン重合度が3〜10であり、かつ、ポリグリセリンとエルカ酸との反応モル比が、1:3〜1:11であることを特徴とするポリグリセリンエルカ酸エステルを含有する請求項1に記載のチョコレート、およびその製造方法。
【請求項3】
ポリグリセリン脂肪酸エステルのチョコレートへの添加量が0.1〜2.0重量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載のチョコレート、およびその製造方法。
【請求項4】
ポリグリセリン脂肪酸エステルのチョコレートへの添加量が0.2〜1.0重量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載のチョコレート、およびその製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4に記載のチョコレートを用いることを特徴とするチョコレート被覆菓子。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、チョコレートの流動性を改善し使用油脂分を低減する効果を有する乳化剤を提供し、流動性の改善されたチョコレートを提供することに関する。

【背景技術】
【0002】
チョコレートの流動性改良剤は、チョコレートに添加されることによりチョコレートの粘度を低下させることにより作業性を向上させる乳化剤であり、古くからレシチンが用いられている。レシチンはチョコレート中の油脂と固体粒子間のすべりを良くすることでチョコレートの流動性を高め、チョコレートを食した際のなめらかさを付与することに寄与しており、通常0.2〜0.5%程度添加される。しかし、レシチンは、チョコレートへの添加濃度が0.5%前後の時に、最も良好な流動性を有し、これ以上のレシチン添加は逆にチョコレートの流動性を悪化させる。

【0003】
油脂を添加すると、やや粘度が低下してチョコレートの流動性が改善されることは知られているが、チョコレートの油分が多くなるために油っぽい食感となり、製品とした時の品質上、好ましいことではない。

【0004】
そこで、チョコレートに添加することによりさらに流動性を改善しうるレシチン以外の乳化剤が広く使用されている。このような乳化剤としては、従来、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(以下、PGPRという)に、強い粘度低下効果を有することが知られており、広く利用されている。また、ショ糖脂肪酸エステル(以下、SEEという)やポリグリセリン脂肪酸エステルにも粘度低下作用を有するものがあることが知られており、チョコレートの流動性改良剤として利用されている。

【0005】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンを重合させて得たポリグリセリンと、脂肪酸を反応させることによって製造される乳化剤の一種であり、チョコレートのみならず多くの食品に利用されている。脂肪酸としては主に、ステアリン酸(C18:0)、パルミチン酸(C16:0)、オレイン酸(C18:1)が用いられているが、これまでにチョコレートにエルカ酸(C22:1)を用いたポリグリセリンエルカ酸エステル(以下、PGEEという)に添加した際の効果は検討されていない。
【特許文献1】三菱化学フーズ株式会社「リョートーシュガーエステルER−290」パンフレット(平成8年3月印刷)
【特許文献2】阪本薬品工業株式会社編:ポリグリセリンエステル(、1994年10月3日、同社発行)、150−155頁
【特許文献3】戸田義郎他編:食品用乳化剤−基礎と応用−(平成9年4月1日、株式会社光琳発行)、86−87頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、PGEEのチョコレートへの利用方法を提供するものである。

【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、PGEEを合成し、その作用を検討した結果、これにチョコレートの流動性改善効果がある事を見出し、本発明を完成した。

【発明の効果】
【0008】
ポリグリセリンエルカ酸エステルのチョコレートへの用途は従来知られていなかったが、チョコレートの流動性を改善することができることが明らかとなった。本発明により、ポリグリセリンエルカ酸エステルを利用して、チョコレートの流動性改善をすることができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で言うチョコレートとは、チョコレート、およびそれと同等の物性を有する食品を言う。すなわち、チョコレート規約に言うチョコレートや準チョコレートのみならず、カカオ分を少量しか、あるいは全く含まず、カカオ脂代替用として開発された油脂(以下、カカオ代用脂と称する)、及び/又はそれらと同等の融点を有するノーテンパ型油脂(チョコレートの結晶をつくるための品温操作、いわゆるテンパリング操作が不要な油脂)をカカオ脂及びカカオ代用脂の代わりに用いることにより、40℃以上で油脂が完全に融解するチョコレート様食品も包含する。また、これらの配合や製造方法は特別なものでなくてよく、常法によって製造してよい。

【0010】
PGEEの製法は常法によってよく、一般的なポリグリセリン脂肪酸エステルと同様の方法で作成することができる。例えば、グリセリンをアルカリ触媒下に重合させてポリグリセリンを得、これとエルカ酸を加熱反応させることでPGEEが得られる。

【0011】
添加するPGEEは、そのグリセリン平均重合度が3〜10のものが好ましい。また、加熱反応させるエルカ酸のポリグリセリンとの比率は、1モルのポリグリセリンに対して、3〜11モルのエルカ酸であることが好ましい。具体的には、ペンタグリセリントリエルカ酸エステル、デカグリセリンペンタエルカ酸エステル、ペンタグリセリンペンタエルカ酸エステル、やデカグリセリンウンデカエルカ酸エステルなどが例示できる。

【0012】
PGEEのチョコレートへの添加方法には制限がない。例えば、完成したチョコレートに添加してもよいし、製造工程中の油脂にあらかじめ混合しておいても良い。

【0013】
チョコレートは非ニュートン流体であり、見かけ粘度だけではその物性を十分に評価することができない。物性の評価方法として、Brookfield粘度計を用いた、2つの数値(塑性粘度と降伏値)による評価が一般的に行われる。この評価方法によると、レシチン、PGPR、SEEそれぞれのチョコレートの流動性改善効果は異なっていることが知られている。

【0014】
レシチンは、通常の添加量の範囲であれば、見かけ粘度を低下させる効果を有する。しかし、それ以上添加すると、見かけ粘度の上昇が認められる。これは、降伏値の上昇によるものであり、レシチンの添加量が0.5%を超えるようになると見られる現象である。

【0015】
一方、PGPRは、チョコレートの見かけ粘度を大きく低下させる効果を有するが、詳細に調べると、チョコレートの塑性粘度はあまり低下させないが、降伏値を大きく低下させることが明らかとなっている。

【0016】
また、SEEの一つであるリョートーシュガーエステルER−290(三菱化学フーズ株式会社製)は、降伏値を低下させる効果が弱く、見かけ粘度を低下させる効果もPGPRと比較すると小さいが、塑性粘度については、PGPRよりも低下させる効果が大きい。

【0017】
PGEEをチョコレートに添加したところ、チョコレートの見かけ粘度は低下した。PGEEの降伏値を低下させる効果はPGPRに及ばないが、デカグリセリンペンタエルカ酸エステルにおいては、塑性粘度を低下させる効果に優れているからである。すなわち、SEEに似た効果を有することが明らかとなった。

【0018】
PGEEを添加したチョコレートは、流動性が添加前よりも改善されており、エンローバーやモールドへの流し込みといった、一般的なチョコレートの成型方法に適した物性を有していた。

【実施例】
【0019】
デカグリセリンペンタエルカ酸エステルを常法により製造した。すなわち、グリセリン500gにアルカリ触媒としてNaOHを添加し、窒素気流下において260℃で20時間反応させた後、これを脱色・脱塩することによりデカグリセリンを得た。
このデカグリセリン1モルに対して、エルカ酸5モルを混合し、窒素気流中において250℃で3時間加熱反応させ、これを脱臭、脱色、脱塩することによりデカグリセリンペンタエルカ酸エステルとした。こうして製造したデカグリセリンペンタエルカ酸エステルを、表1に示した配合のチョコレートに0%、0.25%、0.50%添加し、十分に混合した後、温度を約45℃に昇温した。その後、40℃に温度調整し、PROGRAMABLE DV3+RHEOMETER(Brookfield Engineering Laboratories Inc.製)にて粘度測定を行なった。塑性粘度と降伏値は、NCA/CMA Casson法により求めた。デカグリセリンウンデカエルカ酸エステルについても、デカグリセリン1モルに対してエルカ酸11モルを反応させる以外はデカグリセリンペンタエルカ酸エステルの製造時と同様にして製造し、チョコレートに0.5%、1.0%添加し、同様に試験した。結果を表2に示すが、これらPGEEが,降伏値を低下させること、また、デカグリセリンペンタエルカ酸エステルが、塑性粘度を大きく低下させることが明らかとなった。

【0020】
【表1】



【0021】
【表2】



【0022】
(比較例1)
実施例で得られたデカグリセリン1モルに対して、ステアリン酸酸5モルを混合し、窒素気流中において250℃で3時間加熱反応させ、これを脱臭、脱色、脱塩することによりデカグリセリンペンタステアリン酸エステルとした。こうして製造したデカグリセリンペンタエルカ酸エステルを、表1に示した配合のチョコレートに0%、0.25%、0.50%添加し、十分に混合した後、温度を約45℃に昇温した。その後、40℃に温度調整し、PROGRAMABLE DV3+RHEOMETER(Brookfield Engineering Laboratories Inc.製)にて粘度測定を行なった。塑性粘度と降伏値は、NCA/CMA Casson法により求めた。デカグリセリンペンタパルミチン酸エステルについても、ステアリンサンの代わりにパルミチン酸を用いる以外はデカグリセリンペンタステアリン酸エステルの製造時と同様にして製造し、デカグリセリンペンタオレイン酸エステルについても、ステアリン酸の代わりにオレイン酸を用いる以外はデカグリセリンペンタステアリン酸エステルの製造時と同様にして製造し、チョコレートに0.5%、1.0%添加し、同様に試験した。結果を表3に示すが、これらのPGFEはチョコレートの塑性粘度、降伏値ともほとんど下げることはなかった。

【0023】
【表3】



【0024】
(比較例2)
実施例で得られたデカグリセリン1モルに対して、エルカ酸1モルを混合し、窒素気流中において250℃で3時間加熱反応させ、これを脱臭、脱色、脱塩することによりデカグリセリンモノエルカ酸エステルとした。こうして製造したデカグリセリンモノエルカ酸エステルを、表1に示した配合のチョコレートに0%、0.50%、1.0%添加し、十分に混合した後、温度を約45℃に昇温した。その後、40℃に温度調整し、PROGRAMABLE DV3+RHEOMETER(Brookfield Engineering Laboratories Inc.製)にて粘度測定を行なった。塑性粘度と降伏値は、NCA/CMA Casson法により求めた。また実施例で得られたデカグリセリン1モルに対してエルカ酸12モルを混合し、窒素気流中において250℃、6時間加熱反応させデカグリセリンドデカエルカ酸エステルを製造し、チョコレートに0.5%、1.0%添加し、同様に試験した。結果を表4に示すが、これらのPGFEはチョコレートの塑性粘度、降伏値ともほとんど下げることはなかった。

【0025】
【表4】



【出願人】 【識別番号】000000228
【氏名又は名称】江崎グリコ株式会社
【出願日】 平成15年9月1日(2003.9.1)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−73613(P2005−73613A)
【公開日】 平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願番号】 特願2003−309309(P2003−309309)