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【発明の名称】 洋生菓子の製造方法
【発明者】 【氏名】森本 圭次
【住所又は居所】神奈川県座間市東原五丁目1番83号 森永乳業株式会社食品総合研究所内

【氏名】丹野 大樹
【住所又は居所】神奈川県座間市東原五丁目1番83号 森永乳業株式会社食品総合研究所内

【氏名】品田 幸代
【住所又は居所】神奈川県座間市東原五丁目1番83号 森永乳業株式会社食品総合研究所内

【要約】 【課題】良好な加熱香味を得ることができるとともに、十分な殺菌も行えるようにした洋生菓子の製造方法を提供する。

【解決手段】原料として、少なくとも卵類、糖類、乳類およびゲル化剤を用いてゲル状の洋生菓子を製造する方法であって、原料として用いる卵類の全部、糖類の一部または全部、乳類の一部または全部、およびアミノ酸を含む混合物を加熱して第1の液を調製する工程と、前記第1の液に、ゲル化剤、および卵類以外の残りの原料を混合して第2の液を調製する工程と、前記第2の液を加熱殺菌した後、冷却してゲル化させる工程を有することを特徴とする洋生菓子の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料として、少なくとも卵類、糖類、乳類およびゲル化剤を用いてゲル状の洋生菓子を製造する方法であって、
原料として用いる卵類の全部、糖類の一部または全部、乳類の一部または全部、およびアミノ酸を含む混合物を加熱して第1の液を調製する工程と、
前記第1の液に、ゲル化剤、および卵類以外の残りの原料を混合して第2の液を調製する工程と、
前記第2の液を加熱殺菌した後、冷却してゲル化させる工程を有することを特徴とする洋生菓子の製造方法。
【請求項2】
卵黄の含有量が15〜25質量%、糖類の含有量が15〜25質量%、乳脂肪の含有量が1.5〜10質量%、アミノ酸の含有量が0.1〜0.5質量%である混合物を、80〜100℃で20〜60分間加熱して前記第1の液を調製することを特徴とする請求項1記載の洋生菓子の製造方法。
【請求項3】
前記第2の液における卵黄の含有量が1〜5質量%であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の洋生菓子の製造方法。
【請求項4】
前記アミノ酸として、アラニン、グリシン、セリン、イソロイシン及びシスチンからなる群より選択される1種類以上を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の洋生菓子の製造方法。


【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、洋生菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スポンジケーキ、カステラ、クッキー、ビスケット等の焼き菓子では、卵類、糖類及び乳類等が主要原料として使用され、それらが加熱(焼成)された時に生成する加熱香味が最終製品の嗜好性を高めることに利用されている。
また、プリン、カスタードクリーム、チーズケーキ、ババロア、ムース、ブラマンジェ等、ゲル状の洋生菓子にも、卵類、糖類及び乳類等が主要原料として使用され、それらの加熱香味が利用されている。
【0003】
卵類を含むゲル状の洋生菓子を、オーブンや蒸煮器等による静置加熱工程を経て製造する場合は、卵の添加量についての制限要因は特に無いが、加熱レベルは、卵類の熱凝固性や、卵類、糖類及び乳類の加熱香味の程度によって決定される。このため、加熱レベルを、十分な殺菌効果が得られる程度に高くできない場合がある。
【0004】
一方、ゲル化される前のベース液に対して、例えばUHT殺菌機のような連続式加熱殺菌機を用いて加熱を行うことにより十分な殺菌効果を得ることは可能である。しかしながら、液中における卵の含有量が多いと、加熱部で卵成分がゲル化して焦げ付いたり、殺菌後のベース液に卵のゲル化組織によるザラツキが生じたりする。このため、例えば、プレート式UHT殺菌機で120〜140℃、2〜15秒程度の滅菌レベルの加熱殺菌を行う場合には、卵の含有量を5%前後までしか多くすることができず、卵類、糖類及び乳類の加熱香味が十分に得られないという問題がある。
このように、従来は、十分な殺菌効果と良好な加熱香味の両方を同時に達成することが困難であった。
【0005】
ところで、食品の加熱香味の一つは、アミノカルボニール反応に由来し、還元糖とアミノ化合物からメラノイジンに至る反応の中間物質によることが知られている。また、この反応による香味は、反応するアミノ酸の種類と加熱温度により生ずる匂いが異なることが知られている(下記、非特許文献1)。
また、伝統的な料理で、調理により褐変化したバターの風味が賞味されるのは、芳ばしいラクトンが生成することによることが知られている。(下記、非特許文献2)
そして、香料メーカーからは、アミノ酸と糖の加熱調理香料や、バターやバターミルクの加熱調理香料等が提供されているが、これ等を洋生菓子に添加すると、不自然な加熱香味になり、好ましい加熱香味の補強には至っていない。
【非特許文献1】「農産物利用学」、坂村貞雄他著、朝倉書店、1973年、60〜63頁
【非特許文献2】「乳の科学」、上野川修一編、朝倉書店、1997年、81〜82頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、良好な加熱香味を得ることができるとともに、十分な殺菌も行えるようにした洋生菓子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の洋生菓子の製造方法は、原料として、少なくとも卵類、糖類、乳類およびゲル化剤を用いてゲル状の洋生菓子を製造する方法であって、原料として用いる卵類の全部、糖類の一部または全部、乳類の一部または全部、およびアミノ酸を含む混合物を加熱して第1の液を調製する工程と、前記第1の液に、ゲル化剤、および卵類以外の残りの原料を混合して第2の液を調製する工程と、前記第2の液を加熱殺菌した後、冷却してゲル化させる工程を有することを特徴とする。
【0008】
前記第1の液は、卵黄の含有量が15〜25質量%、糖類の含有量が15〜25質量%、乳脂肪の含有量が1.5〜10質量%、アミノ酸の含有量が0.1〜0.5質量%である混合物を、80〜100℃で20〜60分間加熱して調製することが好ましい。
【0009】
前記第2の液における卵黄の含有量が1〜5質量%であることが好ましい。
【0010】
前記アミノ酸として、アラニン、グリシン、セリン、イソロイシン及びシスチンからなる群より選択される1種類以上を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ゲル状の洋生菓子を製造する際に、高度な加熱殺菌による焦げ付きやざらつき等を防止するとともに、良好な加熱香味を得ることができる。例えば連続式の殺菌機で滅菌レベルの殺菌も可能であり、保存性が良好で、品質に優れた洋生菓子を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
洋生菓子とは、洋生菓子の衛生規範において「出来上がり直後において水分を40%以上含むもの」と定義されている(「食品衛生小六法 平成14年版」、食品衛生研究会編、1675頁)。
本発明は該洋生菓子の中でも、特に、原料として、少なくとも卵類、糖類、乳類およびゲル化剤を用いたゲル状の洋生菓子に好ましく適用される。具体例としては、プリン、カスタードクリーム、レアチーズケーキ、ババロア、ムース、ブラマンジェ、クレームブリュレ等が挙げられる。
【0013】
本発明において、卵類は、卵黄が必須成分であり、卵黄のみでもよく、全卵でもよい。例えば液卵や粉末など適宜の性状に加工された原料を用いてもよい。
【0014】
糖類は、特に限定されず、例えば砂糖、蜂蜜、メープルシロップ、水飴、ブドウ糖、果糖、転化糖、異性化糖など一般的に洋生菓子の製造に用いられる各種糖類を用いることができる。1種単独で用いてよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
乳類には乳および乳製品が含まれる。乳類は特に限定されず、例えば牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、バター、チーズ、クリーム、無糖れん乳、加糖れん乳、バターオイル、バターミルク、バターミルクパウダーなど一般的に洋生菓子の製造に用いられる各種乳類を用いることができる。1種単独で用いてよく、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、第1の液には乳脂肪を含有する乳類を含有させることが必要である。具体的には、バターが好ましい。
【0016】
ゲル化剤は特に限定されず、一般的に洋生菓子の製造に用いられる各種ゲル化剤を用いることができる。具体例としては、ゼラチン、寒天、ローメトキシルペクチン、カラギナン、アルギン酸ナトリウム、ファーセルラン、ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビンガム等が挙げられる。これらは1種単独で用いてよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
また、その他の原料として、例えばグリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤、油脂、色素、調味料、香料、チョコレート等を適宜添加することができる。
【0018】
本発明の方法により洋生菓子を製造するには、まず全原料のうち、少なくとも、配合する卵類の全部と、配合する糖類の一部または全部と、配合する乳類の一部または全部と、アミノ酸を含む混合物を調製する。アミノ酸は、アラニン、グリシン、セリン、イソロイシン及びシスチンからなる群より選択される1種類以上を用いることが好ましい。
前記混合物における卵黄の配合量は、十分な風味を得るためには15質量%以上が好ましい。一方、卵黄の配合量が多すぎると加熱殺菌装置で不都合が生じ易くなるので、25質量%以下が好ましい。より好ましい範囲は17〜23質量%である。
なお、卵類の使用量は、後述の第2の液における該卵黄の含有量が1〜5質量%となる範囲とすることが好ましい。
【0019】
前記混合物における糖類の配合量は15〜25質量%が好ましく、この範囲内とすることにより、好ましい加熱香味と加熱殺菌機特性の両方を達成することができる。より好ましい範囲は17〜23質量%である。
前記混合物における乳類の配合量は、乳脂肪の含有量が1.5〜10質量%となるように設定することが好ましい。乳脂肪の含有量をこの範囲内とすることにより、好ましい加熱香味と加熱殺菌機特性の両方を達成することができる。より好ましい範囲は3.0〜5.0質量%である。
前記混合物におけるアミノ酸の配合量は、0.1〜0.5質量%が好ましく、この範囲内とすることにより、好ましい加熱香味と加熱殺菌機特性の両方を達成することができる。より好ましい範囲は0.2〜0.4質量%である。
【0020】
前記混合物を加熱して第1の液を調製する際の加熱温度は80〜100℃が好ましく、より好ましくは85〜95℃である。この加熱温度が低すぎると加熱殺菌装置で不都合が生じ易く、高すぎると良好な風味が得られない。また加熱時間は20〜60分間が好ましく、より好ましくは30〜50分間である。この加熱時間が短すぎると加熱殺菌装置で不都合が生じ易く、長すぎると良好な風味が得られない。
【0021】
次に、第1の液に、ゲル化剤と、卵類以外の残りの原料を混合して第2の液を調製する。前記その他の原料は第1の液に含有させず、第2の液を調製する際に添加することが好ましい。ただし、その他の原料のうち加熱香味の向上に寄与し得るものは第1の液に含有させてもよい。
第2の液における卵黄の含有量は、多すぎると加熱殺菌機特性が劣化し、少なすぎると良好な風味が十分に得られないので、1〜5質量%の範囲内となるように、第1の液における卵黄の含有量の含有量および第2の液中における第1の液の含有量を設定するのが好ましい。第2の液における卵黄の含有量のより好ましい範囲は2.0〜4.0質量%である。
また、第2の液中におけるゲル化剤の含有量は、使用するゲル化剤の種類に応じて、冷却後に好ましいゲル化状態が得られるように、適宜設定することができる。各種ゲル化剤をそれぞれ用いる場合の、第2の液における好ましい含有量の例を下記に示す。
【0022】
カラギナン 0.15〜0.3質量%
ゼラチン 0.8〜1.5質量%
寒天 0.2〜0.4質量%
ローメトキシルペクチン 0.4〜0.7質量%
ジェランガム 0.07〜0.15質量%
ファーセルラン 0.2〜0.5質量%
【0023】
次に第2の液を加熱殺菌する。この時の加熱条件は十分な殺菌効果が得られるように設定する。例えば、120〜150℃で1秒以上5秒以内で殺菌を行う超高温加熱処理法(ultra high temperature heating method;UHT法)が、高い殺菌効果が得られるので好ましい。UHT法は直接加熱法と間接加熱法のいずれで行ってもよいが、間接加熱法は、第2の液と加熱媒体とが直接接触しないのでより好ましい。殺菌装置は、特に限定されないが、連続式の加熱殺菌装置が好ましい。
【0024】
そして、加熱殺菌を終えた第2の液を、容器に充填するなどした後、冷却して固化させることによりゲル状の洋生菓子が得られる。
【0025】
[試験例]
以下の試験例および実施例において、配合割合(配合比)の単位は質量部であり、%は特に断りのない限り質量%である。
また、以下の試験例および実施例において、各原料としては、特に断りのない限り以下のものを用いた。
【0026】
【表1】


【0027】
<試験1>
(目的)
この試験は、第1の液に含有させる成分を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
第1の液は、表2の配合により、それぞれを混合し、90℃に加熱し、90℃で40分保持した後、冷却して20℃にして調製した。第1の液の構成成分を変えて4種類の第1の液を得た(No.1a〜4a)。
得られた第1の液(No.1a〜4a)をそれぞれ使用してゲル状の試料(No.1b〜4b)を調製した。すなわち、表3の配合により、それぞれを混合して第2の液を得、これをプレート式UHT殺菌機(MOプレート式UHT殺菌機:森永エンジニアリング社製)で125℃、2秒の殺菌を行い、85℃に冷却して均質機(HOMOGENIZER:三丸機械工業社製)で15MPaの条件で均質化し、60℃に冷却し、プラスチックカップ(生駒化学社製)に充填し、冷蔵庫にて10℃に静置冷却して固化させた。
尚、表3の配合においては、総脂肪(卵黄脂肪+乳脂肪)とSNF(無脂乳固形分)が、後述の表4の配合とそれぞれ一致するように、バターと脱脂粉乳の配合量を調整した。
【0028】
【表2】


【0029】
【表3】


【0030】
(比較試料の調製)
比較試料として、静置加熱法によりゲル状の試料を調製した。すなわち、表4の配合により、原料を混合し、60℃に加温した後、均質機(HOMOGENIZER:三丸機械工業社製)で15MPaの条件で均質化し、プラスチックカップ(生駒化学社製)に充填し、オートクレーブ(高圧滅菌機:中村医科理科社製)に入れ、無加圧で蒸気加熱し、試料の中心温度が85℃に達してから10分間保持する条件で静置加熱した後、冷蔵庫にて10℃に静置冷却した。
【0031】
【表4】


【0032】
(評価方法)
(1)官能評価
10人のパネルで、各試料の風味評価をし、比較試料に近い順に順位をつけ、各試料の順位の合計を求めた。この結果から、順位法の検定表を用いる方法(「おいしさを測る−食品官能検査の実際」、古川秀子著、幸書房、1994年、28頁)で有意差を検定した。この結果を表5に示す。
官能評価の結果を示す表において、**は「1%の危険率で有意差有り」を示し、*は「5%の危険率で有意差有り」を示す(以下、同様)。
【0033】
【表5】


【0034】
(2)殺菌機適性
UHT殺菌機の殺菌機適性については、各液を用いて、30分間、連続して殺菌操作を行い、殺菌開始時と殺菌終了時の最終加熱部出口圧力を調べた。殺菌開始時の圧力に対し、殺菌終了時の圧力が0.1MPa以上低下した場合には、最終加熱部の焦げ付き等による付着量が多く、殺菌機適性不良と判定し、圧力の差が0.1MPa未満の場合は、殺菌機適性良好と判定した。これらの結果を表6に示す。
殺菌機適性を示す表において、○は殺菌機適性良好であることを示し、×は殺菌機適性不良であることを示す(以下、同様)。
【0035】
【表6】


【0036】
(結果)
表5の結果より、比較試料に風味が近い順は、
No.4b>3b>=2b>=1bの順であった。
>:記号の左が右より上位で統計的有意差があることを示す(以下、同様)。
>=:記号の左が右より上位であるが統計的な有意差はないことを示す(以下、同様)。
また、表6の結果より、殺菌機適性で不良なものは無かった。
(考察)
この試験結果より、静置加熱法で製造した比較試料に最も近い風味を有するのは、卵黄、砂糖、バター及びセリンを含有する第1の液(4a)を使用したものであることが分かった。
【0037】
<試験2>
(目的)
この試験は、第1の液における卵黄の含有量を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
第1の液は、表7の配合により、試験1と同一の方法で調製した。第1の液における卵黄の含有量を変えて5種類の第1の液を得た(No.11a〜15a)。
得られた第1の液(No.11a〜15a)をそれぞれ使用してゲル状の試料(No.11b〜15b)を調製した。すなわち、表8の配合により、試験1と同一の方法でゲル状の試料を調製した。
尚、表8の配合割合では、第1の液に由来する卵黄脂の量の違いを、バターの添加量で補正し、総脂肪量が一定になるように調整した。
静置加熱法による比較試料は、試験1と同一のものを用いた。
(評価方法)
試験1と同一の方法で行った。その結果を表9、10に示す。
なお、No.15bは殺菌機適性が不良であったので官能評価は行わなかった。
【0038】
【表7】


【0039】
【表8】


【0040】
【表9】


【0041】
【表10】


【0042】
(結果)
表9の結果より、比較試料に風味が近い順は、
14b>=13b>=12b>11bであった。
また、表10の結果より、殺菌機適性では、15bが不良であり官能評価から除外したが、他は殺菌機適性が良好であった。
(考察)
この試験結果より、静置加熱法で製造した比較試料に近い風味を有するのは、第1の液の卵黄含有量が15%以上であり、殺菌機適性が良好なのは第1の液の卵黄含有量が25%以下であることが分かった。
官能評価と殺菌機適性が共に良好なのは、第1の液の卵黄含有量が15〜25%の範囲であることが分かった。
【0043】
<試験3>
(目的)
この試験は、第1の液における糖類の含有量を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
第1の液は、表11の配合により、試験1と同一の方法で調製した。第1の液における砂糖の含有量を変えて6種類の第1の液を得た(No.21a〜26a)。
得られた第1の液(No.21a〜26a)をそれぞれ使用してゲル状の試料(No.21b〜26b)を調製した。すなわち、表12の配合により、試験1と同一の方法でゲル状の試料を調製した。
静置加熱法による比較試料は、試験1と同一のものを用いた。
(評価方法)
試験1と同一の方法で行った。この結果を表13,14に示す。
なお、No.26bは殺菌機適性が不良であったので官能評価は行わなかった。
【0044】
【表11】


【0045】
【表12】


【0046】
【表13】


【0047】
【表14】


【0048】
(結果)
表13の結果より、比較試料に風味が近い順は、
23b>=24b>=22b>25b>=21bであった。
また、表14の結果より、殺菌機適性では、26bが不良であり、官能評価から除外したが、他は殺菌機適性が良好であった。
(考察)
この試験結果より、静置加熱法で製造した比較試料に近い風味を有するのは、第1の液の砂糖の含有量が15%以上25%以下であり、殺菌機適性が良好なのは第1の液の砂糖含量が30%以下であることが分かった。
また、官能評価と殺菌機適性が共に良好なのは、第1の液の砂糖含有量が15〜25%の範囲であることが分かった。
【0049】
<試験4>
(目的)
この試験は、第1の液における乳脂肪の含有量を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
第1の液は、表15の配合により、試験1と同一の方法で調製した。第1の液におけるバターの含有量を変えて5種類の第1の液を得た(No.31a〜35a)。
得られた第1の液(No.31a〜35a)をそれぞれ使用してゲル状の試料(No.31b〜35b)を調製した。すなわち、表16の配合により、試験1と同一の方法でゲル状の試料を調製した。
静置加熱法による比較試料は、試験1と同一のものを用いた。
(評価方法)
試験1と同一の方法で行った。この結果を表17,18に示す。
【0050】
【表15】


【0051】
【表16】


【0052】
【表17】


【0053】
【表18】


【0054】
(結果)
表17の結果より、比較試料に風味が近い順は、
33b>=32b>=34b>31b>=35bであった。
また、表18の結果より、殺菌機適性が不良なものは無かった。
(考察)
この試験結果より、第1の液の乳脂肪の含有量が1.5〜10質量%の範囲で、静置加熱法で製造した比較試料に近い風味が得られることが分かった。
【0055】
<試験5>
(目的)
この試験は、第1の液におけるアミノ酸の含有量を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
第1の液は、表19の配合により、試験1と同一の方法で調製した。第1の液におけるセリンの含有量を変えて5種類の第1の液を得た(No.41a〜45a)。
得られた第1の液(No.41a〜45a)をそれぞれ使用してゲル状の試料(No.41b〜45b)を調製した。すなわち、表20の配合により、試験1と同一の方法でゲル状の試料を調製した。
静置加熱法による比較試料は、試験1と同一のものを用いた。
(評価方法)
試験1と同一の方法で行った。この結果を表21,22に示す。
【0056】
【表19】


【0057】
【表20】


【0058】
【表21】


【0059】
【表22】


【0060】
(結果)
表21の結果より、比較試料に風味が近い順は、
43b>=42b>=44b>41b>=45bであった。
また、表22の結果より、殺菌機適性が不良なものは無かった。
(考察)
この試験結果より、静置加熱法で製造した比較試料に近い風味を有するのは、第1の液のアミノ酸の含有量が0.1〜0.5%の範囲であることが分かった。
【0061】
<試験6>
(目的)
この試験は、第1の液の加熱温度を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
第1の液は、前記No.4aの配合のものを用いた。加熱条件のみを表23に示す5通りに変え、その他は試験1と同一の方法で5種類の第1の液を調製した(No.51a〜55a)。
得られた第1の液(No.51a〜55a)をそれぞれ使用してゲル状の試料(No.51b〜55b)を調製した。すなわち、前記No.4bと同じ配合比で、試験1と同一の方法でそれぞれ調製した。
静置加熱法による比較試料は、試験1と同一のものを用いた。
(評価方法)
試験1と同一の方法で行った。この結果を表24,25に示す。
なお、No.51bは殺菌機適性が不良であったので官能評価は行わなかった。
【0062】
【表23】


【0063】
【表24】


【0064】
【表25】


【0065】
(結果)
表24の結果より、比較試料に風味が近い順は、
53b>=52b>=54b>55bであった。
また、表25の結果より、殺菌機適性では、51bが不良であり官能評価から除外したが、他は殺菌機適性が良好であった。
(考察)
この試験結果より、静置加熱法で製造した比較試料に近い風味を有するのは、第1の液の加熱温度が100℃以下で、殺菌機適性が良好なのは、加熱温度が80℃以上であることがわかった。
官能評価と殺菌機適性が共に良好なのは、第1の液の加熱温度が80〜100℃であることがわかった。
尚、加熱時間を20〜60分の範囲で変更して試験しても、同様の結果が得られた。
【0066】
<試験7>
(目的)
この試験は、第1の液の加熱時間を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
第1の液は、前記No.4aの配合のものを用いた。加熱条件のみを表26に示す5通りに変え、その他は試験1と同一の方法で5種類の第1の液を調製した(No.61a〜65a)。
得られた第1の液(No.61a〜65a)をそれぞれ使用してゲル状の試料(No.61b〜65b)を調製した。すなわち、前記No.4bと同じ配合比で、試験1と同一の方法でそれぞれ調製した。
静置加熱法による比較試料は、試験1と同一のものを用いた。
(評価方法)
試験1と同一の方法で行った。この結果を表27,28に示す。
なお、No.61bは殺菌機適性が不良であったので官能評価は行わなかった。
【0067】
【表26】


【0068】
【表27】


【0069】
【表28】


【0070】
(結果)
表27の結果より、比較試料に風味が近い順は、
62b>=64b>=63b>65bであった。
また、表28の結果より、殺菌機適性では、61bが不良であり官能評価から除外したが、他は殺菌機適性が良好であった。
(考察)
この試験結果より、静置加熱法で製造した比較試料に近い風味を有するのは、第1の液の加熱時間が60分以下で、殺菌機適性が良好なのは、加熱時間が20分以上であることがわかった。
官能評価と殺菌機適性が共に良好なのは、第1の液の加熱時間は、20〜60分であることがわかった。
尚、加熱温度を80〜100℃の範囲で変更して試験しても、同様の結果が得られた。
【0071】
<試験8>
(目的)
この試験は、第1の液に含有させるアミノ酸の種類を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
第1の液は、表29の配合により、試験1と同一の方法で調製した。第1の液に含有させるアミノ酸の種類を変えて8種類の第1の液を得た(No.71a〜78a)。
得られた第1の液(No.71a〜78a)をそれぞれ使用してゲル状の試料(No.71b〜78b)を調製した。すなわち、前記No.4bと同じ配合比で、試験1と同一の方法でそれぞれ調製した。
静置加熱法による比較試料は、試験1と同一のものを用いた。
(評価方法)
試験1と同一の方法で行った。この結果を表30,31に示す。
【0072】
【表29】


【0073】
【表30】


【0074】
【表31】


【0075】
(結果)
表30の結果より、比較試料に風味が近い順は、
77b>=72b=74b>=71b>=75b>76b>=78b>=73bであった。
また、表31の結果より、殺菌機適性が不良なものは無かった。
(考察)
この試験結果より、静置加熱法で製造した比較試料に近い風味を有するのは、第1の液のアミノ酸の種類が、アラニン、グリシン、イソロイシン、セリン及びシスチンであることが分かった。
【0076】
<試験9>
(目的)
この試験は、第2の液を調製する際の第1の液の添加量を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
第1の液は、前記No.4aと同じ配合で、試験1と同一の方法で調製した。
第1の液(4a)と残りの原料を混合して第2の液を調製する際の、第1の液の使用量を変えて7種類のゲル状の試料(No.81b〜87b)を調製した。すなわち、表32の配合により、試験1と同一の方法でゲル状の試料を調製した。
静置加熱法による比較試料は、試験1と同一のものを用いた。
(評価方法)
試験1と同一の方法で行った。その結果を表33,34に示す。
【0077】
【表32】


【0078】
【表33】


【0079】
【表34】


【0080】
(結果)
表33の結果より、比較試料に風味が近い順は、
85b>=84b>=86b>=83b>=82b>81bであった。
また、表34の結果、殺菌機適性では、87bが不良であり官能評価から除外したが、他は殺菌機適性が良好であった。
(考察)
この試験結果により、静置加熱法で製造した比較試料に近い風味を有するのは、第2の液中における、第1の液の含有量が5%以上、卵黄相当量で1%以上であり、殺菌機適性が良好なのは、第1の液の添加量が25%以下、卵黄相当量で5%以下であった。
官能評価と殺菌機適性が共に良好なのは、第1の液の添加量が5〜25%で、卵黄相当量で1〜5%であることがわかった。
【実施例】
【0081】
<実施例1:プリンの製造例>
第1の液は、表35のA1の配合割合で原料を混合し、バッチパストライザー(Bパス:ヤスダファインテ社製)で85℃に加温し30分保持した後、10℃に冷却して調製した。この第1の液を使用して、プリンを製造した。
プリンベースは、表36のA2の配合割合に従って原料を混合して第2の液を調製し、これをプレート式UHT殺菌機(MOプレート式UHT殺菌機:森永エンジニアリング社製)で130℃,2秒保持の条件で殺菌した後、85℃に冷却し、均質機(HOMOGENIZER:三丸機械工業社製)で15MPaの条件で均質化した後、65℃に冷却して調製した。
カラメルシロップは、表37のA3の配合割合に従って原料を混合し、多管式殺菌機(MOチューブラ式殺菌機:森永エンジニアリング社製)で125℃,15秒保持の条件で殺菌した後、55℃に冷却して調製した。
充填機(BK Cup Filler:HAMBA社製)のメインフィラーでプラスチックカップ(大日本印刷社製)に、上記で得たプリンベース90gを充填し、続いて同じ充填機にポストフィラーでカラメルシロップ10gを充填してプリンベースの下に沈ませた。続いて、プラスチックリッド(東洋アルミニウム社製)を被せ、ヒートシーラーで熱圧シールして密封した後、冷蔵庫にて10℃に冷却して、カラメルシロップ入りプリンを製造した。
このプリンは、良好な加熱香味を有し、粉っぽさとザラツキの無い滑らかな食感であった。また、このプリンの保存性を評価するために、同様にして製造した製品1000個を30℃の恒温室で5日間保持し、腐敗の有無を官能で検査した。この結果、腐敗が認められたものは無く、保存性は良好であった。
【0082】
<実施例2:クレームブリュレの製造例>
第1の液は、表35のB1の配合割合で原料を混合し、バッチパストライザー(Bパス:ヤスダファインテ社製)で80℃に加温し20分保持した後、10℃に冷却して調製し、−15℃の冷凍庫に1週間冷凍保管した。この第1の液を用いて、クレームブリュレを製造した。
ブリュレベースは、表36のB2の配合割合に従って原料を混合して第2の液を調製し、プレート式UHT殺菌機(MOプレート式UHT殺菌機:森永エンジニアリング社製)で140℃,2秒保持の条件で殺菌した後、85℃に冷却し、均質機(HOMOGENIZER:三丸機械工業社製)で15MPaの条件で均質化した後、20℃に冷却した。これをアセプティックタンク(ATタンク:ヤスダファインテ社製)において20℃で2日間貯蔵した後、多管式熱交換機(スピフレックス:新光産業社製)で85℃に再加温した後、60℃に再冷却して調製した。
カラメルシロップは、表37のB3の配合割合に従って原料を混合し、多管式殺菌機(MOチューブラ殺菌機:森永エンジニアリング社製)で140℃,2秒保持の条件で殺菌した後、55℃に冷却して調整した。
充填機(DOGAseptic:GASTI社製)のメインフィラーでプラスチックカップ(吉野工業所社製)にブリュレベース110gを充填し、続いて同じ充填機にポストフィラーでカラメルシロップ10gを充填してブリュレベースの下に沈ませた。続いて、アルミニウムリッド(東洋アルミニウム社製)を被せ、ヒートシーラーで熱圧シールして密封した後、冷蔵庫にて10℃に冷却して、カラメルシロップ入りクレームブリュレを製造した。
このクレームブリュレは、良好な加熱香味とバニラ風味を有し、粉っぽさとザラツキの無い滑らかな食感であった。また、このクレームブリュレの保存性を評価するために、同様にして製造した製品1000個を30℃の恒温室で5日間保持し、腐敗の有無を官能で検査した。この結果、腐敗が認められたものは無く、保存性は良好であった。
【0083】
尚、この実施例では第1の液を冷凍保管した。冷凍保管によって、加熱香味が失われることは無かった。これより、第1の液の調製工程とベースの調製工程を一貫した連続工程で行う必要は無いことが分かった。
また、この実施例では、殺菌後のベースを、アセプティックタンク(ATタンク:ヤスダファインテ社製)で2日間貯蔵し、その後再加温し再冷却した。そしてこのように貯蔵と再加温・再冷却を行っても加熱香味が失われることは無かった。このことから、ベースの調製工程と充填工程を一貫した連続工程で行う必要が無いことが分かった。但し、ベースを貯蔵が可能な条件としては、殺菌を滅菌レベルまで行い、貯蔵タンクがアセプティック仕様である必要がある。
尚、この実施例で、貯蔵後、充填前に、ベースを再加温してから再冷却しているのは、ベースに配合したゲル化剤のゲル化能力を充填前に復活させるためである。
【0084】
<実施例3:レアチーズケーキの製造>
第1の液は、表35のC1の配合割合で原料を混合し、バッチパストライザー(Bパス:ヤスダファインテ社製)で100℃に加温し20分保持した後、10℃に冷却して調製し、−15℃の冷凍庫に1週間冷凍保管した。この第1の液を用いて、レアチーズケーキを製造した。
チーズケーキベースは、表36のC2の配合割合に従って原料を混合して第2の液を調製し、プレート式UHT殺菌機(MOプレート式UHT殺菌機:森永エンジニアリング社製)で120℃,2秒保持の条件で殺菌した後、85℃に冷却し、均質機(HOMOGENIZER:三丸機械工業社製)で15MPaの条件で均質化し、20℃に冷却した。これをアセプティックタンク(ATタンク:ヤスダファインテ社製)において20℃で2日間貯蔵した後、多管式熱交換機(スピフレックス:新光産業社製)で85℃に再加温した後、60℃に再冷却して調製した。
充填機(DOGAseptic:GASTI社製)のメインフィラーでプラスチックカップ(吉野工業所社製)にチーズケーキベース100gを充填し、アルミニウムリッド(東洋アルミニウム社製)を被せ、ヒートシーラーで熱圧シールして密封した後、冷蔵庫にて10℃に冷却して、レアチーズケーキを製造した。
このレアチーズケーキは、良好な加熱香味とチーズ風味を有し、粉っぽさとザラツキの無い滑らかな食感であった。また、このレアチーズケーキの保存性を評価するために、同様にして製造した製品1000個を30℃の恒温室で5日間保持し、腐敗の有無を官能で検査した。この結果、腐敗が認められたものは無く、保存性は良好であった。
【0085】
【表35】


【0086】
【表36】


【0087】
【表37】



【出願人】 【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
【住所又は居所】東京都港区芝5丁目33番1号
【出願日】 平成15年7月4日(2003.7.4)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男

【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆

【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和

【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義

【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉

【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦

【公開番号】 特開2005−27568(P2005−27568A)
【公開日】 平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願番号】 特願2003−271163(P2003−271163)