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【発明の名称】 茶抽出液の沈澱及び/又はオリ発生抑制剤
【発明者】 【氏名】田中 隆宗
【住所又は居所】神奈川県小田原市成田540 明治乳業株式会社研究本部内

【氏名】久保田 康史
【住所又は居所】神奈川県小田原市成田540 明治乳業株式会社研究本部内

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チロシンを有効成分とする茶抽出液の沈殿及び/又はオリ発生抑制剤。
【請求項2】
請求項1記載の沈殿及び/又はオリ発生抑制剤を含むことを特徴とする茶抽出液。
【請求項3】
請求項1記載の沈殿及び/又はオリ発生抑制剤を20mg/100ml以上添加することにより茶抽出液の沈殿及び/又はオリ発生を抑制する方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法によって得られた沈殿及び/又はオリ発生が抑制された茶飲料。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、チロシンを有効成分とする茶抽出液の沈澱及び/又はオリ発生抑制剤に関し、工業的に茶飲料を製造するにあたり、長期間保存しても、沈殿・オリの発生が抑制できる茶飲料の新規な製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットボトル等の透明容器に密封充填された茶系飲料が次々と上市されているが、このような茶系飲料の中には長期保存中に沈澱・オリが発生することが知られており、フロック状又は浮遊物状或いは白濁状の懸濁・沈澱物が散見される。カビと誤認されることもあり、この様なオリが発生するということは、透明容器詰め茶飲料の品質的観点から、視覚的に著しく商品価値を失うことになる。
【0003】
保存中での沈澱・オリ発生のメカニズムに関しては様々な見解があり、未だ解明されていない。主原因としては、一般的に以下の様な見解がある。
【0004】
緑茶を抽出すると抽出液中のカテキン類は、抽出液中のカルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛および鉄等の金属イオンや溶存酸素によって酸化を受け、高分子ポリフェノールとなる。このような酸化ポリフェノールが経時的に金属イオンの触媒作用によって、カフェイン、タンパク質、ペクチンおよび多糖類等と結合して複合体を形成し、次第に懸濁を生じ視覚的にもフロック状の沈澱・オリとして発生するとの見解が知られている。ホットベンターなどで保存販売されるペット茶飲料などはこういった状態が散見されているが、効果的な対応策が見出されていないのが実状である。
【0005】
また、保存中に発生する沈澱・オリの発生防止目的として開発された従前の製造方法は以下の様な手段が挙げられる。
【0006】
遠心分離による抽出液中の沈殿除去または限外濾過、微細濾過、珪藻土濾過などの実施や、併用策として、濾過前の急冷によりオリの原因物質を積極的に析出させ、その後濾過する方法(特許文献1参照)、化学薬剤や酵素試薬を添加し、不溶性複合体を可溶化或いは安定化させるといった方法である(特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、濾過により沈殿物質を積極的に除去する場合、茶抽出液に含まれる旨味成分などが減少し、風味、味に影響を与えるという欠点がある。また、酵素等を使用すると、本来の茶とは異なるえぐみや酸味などが発生する可能性がある。
【0008】
【特許文献1】特開平4−311348
【特許文献2】特開平8−228684
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような技術の現状に鑑みてなされたものであって、本発明は、茶抽出液の沈殿及び/又はオリ発生抑制に関して、茶飲料を製造するにあたり、風味を損なうことのない、しかも工業的生産に適した茶抽出液の沈殿及び/又はオリ発生抑制剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために各方面から検討を行った結果、アミノ酸の一つであるチロシンを使用することによって上記課題が達成されるという新知見を得た。さらに、チロシンは、茶抽出液又は調合液中での安定的な溶解度と分散性を有し、チロシン濃度と沈澱・オリの発生量との間には密接な相関があること等の知見を得、かかる知見に基づき本発明を完成するに至った。以下、本発明について詳述する。
【0011】
本発明は、以下の(1)〜(4)に係わるものであり、
(1)チロシンを有効成分とする茶抽出液の沈殿及び/又はオリ発生抑制剤、
(2)前記(1)に記載の沈殿及び/又はオリ発生抑制剤を含むことを特徴とする茶抽出液、
(3)前記(1)に記載の沈殿及び/又はオリ発生抑制剤を20mg/100ml以上添加することにより茶抽出液の沈殿及び/又はオリ発生を抑制する方法、
(4)前記(3)に記載の方法によって得られた沈殿及び/又はオリ発生が抑制された茶飲料。
からなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により得られる沈殿及び/又はオリ発生抑制剤は、茶抽出液に添加することで、茶抽出液の沈殿・オリ発生を長期間抑制することができる。また、沈殿、オリ発生の原因となる高分子化合物を積極的に除去しなくても、沈殿及び/又はオリ発生を抑制することができるため、カテキン、L−テアニン、水溶性食物繊維、糖類、各種ビタミン等の固形分を高濃度に含み、旨味のある茶飲料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳述する。
本発明の茶抽出液の沈殿及び/又はオリ発生抑制剤は、チロシンを有効成分とするものである。チロシンは、L-チロシンに限らず、必要に応じ、異性体、その塩などを用いてもよい。また、チロシンは溶解性が悪いため、使用する前に予め温水で溶解しておく。例えばチロシンを50〜250mg/100mlとなるよう温水で溶解し(75〜85℃;60℃の溶解度は0.15)、冷却後、茶抽出液と混合する。温水に限らず、熱水や他の溶媒を用いて溶解することも可能で、茶抽出液との混合時、チロシンが溶解していれば、特に限定されることはない。
【0014】
チロシンは、茶抽出液に対してアミノ酸単位で20mg/100ml以上、より好ましくは50mg/100ml以上含有するよう添加する。添加時期としては、茶抽出液を加熱殺菌前、加熱殺菌後いずれでもかまわないが、好ましくは加熱殺菌前であり、茶抽出液を所望の濃度に調整後、添加することが最も効率的である。
【0015】
本発明における茶抽出液とは、茶葉を、冷水、温水、熱水、エタノール等で抽出した茶抽出液をいう。茶葉として、緑茶、紅茶、烏龍茶等を含む茶類全般が適用可能であり、これらから選ばれる茶葉を、1種または2種以上併用することができる。
【0016】
茶抽出処理における抽出温度、抽出時間等の各種条件は、選択する抽出法、使用する茶葉の種類、抽出溶媒の性質、量などに応じて適宜決定すればよい。
【0017】
茶抽出後、茶抽出液に含まれる茶殻は、適切な条件下、遠心分離や濾過等の分離・除去手段によって除去される。以下に一例をあげる。前述までに得られた茶抽出液から、デカンタ等の固液分離装置にて大まかな茶殻を除去する。次に、セパレーター、クラリファイヤー等の遠心分離装置にかける。分離能を向上させるためには、遠心分離装置にかける前に、冷却プレート等を用いて液温を10℃程度もしくはそれ以下にしておくとよい。必要があれば、珪藻土濾過処理、荷電濾過処理を行い、茶抽出液の微細物を除去する。
【0018】
次に、抽出溶媒を用いて茶抽出液中の固形含有量が所望の濃度となるよう調整する。茶飲料の場合、通常0.3%(w/w)程度の固形含有量であるが、本発明では、1.2%(w/w)程度の高濃度に調整することも可能である。また、茶抽出液には、退色防止に0.04〜0.12%(w/w)の範囲でアスコルビン酸やそのナトリウム塩を添加することもできる。
【0019】
茶抽出液には、糖類含有液(グルコース、フラクトース、シュークロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ラフィノース、ラクチュロース、メリビオース、ラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖)、異性化糖、液糖等を1種またはそれ以上含有する液状物;糖アルコール含有液(エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトールその他各種糖アルコールを1種又はそれ以上含有する液状物)カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム等のミネラル含有液;ビタミンA、B、C、D、E等のビタミン含有液;ペクチン、カルボキシメチルセルロース等の安定剤含有液;乳化剤、pH調整剤、香料、色素、酸化防止剤、甘味料、呈味量その他を必要に応じて加えることができる。さらに、増粘多糖類、有機酸など公知の沈殿防止剤を併用してもよい。
【0020】
茶抽出液は、加熱殺菌後、容器に充填、密封する。あるいは充填、密封した後、加熱殺菌する。こうして得られた茶抽出液は、冷却時又は加熱殺菌により発生する沈殿及び/又はオリを含め、保存中、経時的に発生するもの、高温での保存時に発生する沈殿及び/又はオリの発生等を抑制することができる。また、沈殿及び/又はオリの発生を長期間に渡って抑制できるため、容器に透明のペットボトルを用いることも望ましい。
【0021】
以下に、実施例をあげ、本発明について詳述するが、当該実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
[実施例1]ラボスケール(ホモミキサー使用)
浴比1:25(緑茶葉(かぶせ茶):イオン交換水)の混合比で、ホモミキサーにて粉砕抽出を行った。抽出温度は原料水水温に準じ(20℃)、ミキシング時間は5分とした。抽出液をネル袋で濾過後、760G、2分遠心分離を施し、茶抽出液から茶殻を除去した。次に、茶固形分が1.0%(w/w)となるようイオン交換水で調整し、アスコルビン酸Naを0.12%(w/w)添加した。80℃のイオン交換水で予め加温溶解したL-チロシンを、抽出液に対しアミノ酸単位で50mg/100ml、100mg/100ml、150mg/100mlとなるよう添加し、混合後、連続殺菌機で140℃±5℃、3〜7秒加熱殺菌した。10℃以下に冷却後、ペットボトルに充填した。ペットボトルに充填した茶飲料は、10℃、30℃の設定温度のインキュベーション内で暗所にて20日間静置保存し、各種特性値項目を測定した。遠沈量は、2000rpmで10分間遠心後の沈殿物重量を測定した。
【0023】
[比較例1]
L−チロシン水溶液を、イオン交換水に換え、実施例1と同様の方法にて茶飲料を製造した。
【0024】
その結果を表1に示す。実施例1により得られた茶飲料は、固形分を高濃度に含有するにもかかわらず、50mg/100mlのL−チロシン添加量で沈殿及び/又はオリ発生抑制効果が見られ、100mg/100mlの添加量では高い効果が得られることがわかった。遠沈量は、商品として許容できる上限が0.02%(w/w)であり、0.015%(w/w)以下のものは特に優れていた。また、茶飲料は、L−チロシン含有量に関係なく風味劣化はみられず、濃厚で、旨味、滋味の高いものであった。
【0025】
【表1】


【0026】
[実施例2]ラボスケール(ステンレス製バット使用)
浴比1:30(茶葉(かぶせ茶):イオン交換水(20℃))の混合比となるよう茶葉、原料水を秤量した。ステンレス製バット内で原料水を60℃に達温後、茶葉を投入し、保持時間10分で抽出後、実施例1と同様にしてペットボトル入り茶飲料を得た。
【0027】
[実施例3]実機スケール(エクストルーダー使用)
浴比1:25(茶葉(かぶせ茶):イオン交換水)の混合比でエクストルーダー((株)栗本鐵工所:型式S−5KRC)内に原料を供給した。抽出温度は、原料水水温に準じた(20℃)。3400G、2分遠心分離を施し、茶殻を除去後、イオン交換水で抽出液の固形分が1.0%(w/w)になるよう調整した。アスコルビン酸Naを0.12%(w/w)添加後、抽出液に対し、80℃のイオン交換水で別に加熱溶解したL−チロシンをアミノ酸単位で100mg/100mlとなるよう添加し、混合した。得られた茶抽出液を140℃±5℃、3〜7秒で加熱殺菌し、本発明の茶飲料を得た。
【0028】
[実施例4]実機スケール(抽出カラム使用)
抽出カラム内にネル袋を装着し、茶葉(かぶせ茶)を装填後、浴比1:25(茶葉:原料水)となるよう60℃のイオン交換水を供給し、10分間保持した。抽出カラムから得られた緑茶抽出液に、イオン交換水を加え1.0%(w/w)の茶固形分となるよう調整後、実施例3と同様にして、本発明の茶飲料を得た。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の沈殿及び/又はオリ発生抑制剤を添加することで、茶飲料の沈殿・オリ発生を容易に抑えることができるため、ペットボトル等の透明容器に密封充填した飲料の工業生産が可能である。
【出願人】 【識別番号】000006138
【氏名又は名称】明治乳業株式会社
【住所又は居所】東京都江東区新砂1丁目2番10号
【出願日】 平成16年5月24日(2004.5.24)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−333815(P2005−333815A)
【公開日】 平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願番号】 特願2004−153402(P2004−153402)