| 【発明の名称】 |
水産物の解毒方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】野口 玉雄
【氏名】荒川 修
【氏名】高谷 智裕
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| 【要約】 |
【課題】本発明は、水産資源の有効利用を図るために、水産物の風味を損なうことなしに、水産物を効率的に解毒する方法を提供することにある。
【解決手段】 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 マイクロウェーブ処理することによって、水産物中のマリントキシンを解毒する水産物の解毒方法。 【請求項2】 前記水産物を液相中でマイクロウェーブ処理する請求項1記載の方法。 【請求項3】 前記液相が、水又は蒸留水である請求項1又は2項のいずれか1項に記載の方法。 【請求項4】 前記マイクロウェーブ処理が、5〜30分である請求項1〜3項のいずれか1項に記載の方法。 【請求項5】 前記マイクロウェーブ処理の前に、アルカリ、及び/又は塩漬で前記水産物を処理する請求項1〜4項のいずれか1項に記載の方法。 【請求項6】 前記アルカリが、NaOH、NaHCO3からなる群から選択される少なくとも1種である請求項5記載の方法。 【請求項7】 前記アルカリでの前処理時間が、1〜24時間である請求項5又は6項に記載の方法。 【請求項8】 前記水産物が、フグ、貝、カニ、ホヤからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜7項記載の方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、水産物の解毒方法に関し、特に、マイクロウェーブを使用した水産物の解毒方法に関する。 【背景技術】 【0002】 水産物には、そのものに自然毒が含まれているために、利用されないで廃棄されているものが多い。例えば、フグの肝臓は、名物のフグの肝(きも)として、従来、全国に知れわたっていた。現在では、フグの肝臓は、かならずしも無毒でないことから、全ての種で食用が禁止されている。 【0003】 また、環境汚染による有毒プランクトンの発生などにより水産物にマリントキシンが混入されることが多くなり、水産物の資源が利用し難くなってきている。 【0004】 こうした中、水産物の解毒を行なうために、熱処理法による,麻痺性貝毒(PSPともいう)の分解方法が知られている。例えば、高毒性成分主体の二枚貝を試料とした減毒方法として、帆立貝を缶詰製造中、特に加熱殺菌工程で毒が顕著に消失することが知られている(T.Noguchi, Y.Ueda, Y.Onoue, M. Kono(1980):Reduction in toxicity of PSP infested scallop during canning process. Bull. Jpn. Soc. Sci. Fish. 46, 1273-1277.)。 【0005】 【非特許文献1】T.Noguchi, Y.Ueda, Y.Onoue, M. Kono(1980):Reduction in toxicity of PSP infested scallop during canning process. Bull. Jpn. Soc. Sci. Fish. 46, 1273-1277. 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、これまで、風味を損なわずに水産物を解毒する方法は存在しない。たとえば、上述の従来の解毒方法においては、簡便に、無毒(<2.0MU/g)まで解毒できるような解毒方法は存在せず、組織内に毒が残存する場合もあった。 【0007】 したがって、水産物の無毒化を達成できれば、水産物を食品として有効利用できることから、水産物の風味を損なわずに水産物を解毒することが可能であれば望ましい。このような解毒方法により、廃棄されている水産資源を有効に利用することができるからである。 【0008】 そこで、本発明は、水産資源の有効利用を図るために、水産物の風味を損なうことなしに、水産物を効率的に解毒する方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0009】 上記目的を達成するために、発明者らは、自然毒としてマリントキシンに着目し、当該マリントキシンの分解方法について鋭意研究を重ねた結果、本発明の水産物の解毒方法を見出すに至った。 【0010】 すなわち、本発明の水産物の解毒方法は、マイクロウェーブ処理することによって、水産物中のマリントキシンを解毒することを特徴とする。 【0011】 また、本発明の水産物の解毒方法の好ましい実施態様において、前記水産物を液相中でマイクロウェーブ処理することを特徴とする。 【0012】 また、本発明の水産物の解毒方法の好ましい実施態様において、前記液相が水又は蒸留水であることを特徴とする。 【0013】 また、本発明の水産物の解毒方法の好ましい実施態様において、前記マイクロウェーブ処理が、5〜30分であることを特徴とする。 【0014】 また、本発明の水産物の解毒方法の好ましい実施態様において、前記マイクロウェーブ処理の前に、アルカリ及び/又は塩漬で前記水産物を処理することを特徴とする。 【0015】 また、本発明の水産物の解毒方法の好ましい実施態様において、前記アルカリが、NaOH、NaHCO3からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。 【0016】 また、本発明の水産物の解毒方法の好ましい実施態様において、前記アルカリでの前処理時間が、1〜24時間であることを特徴とする。 【発明の効果】 【0017】 本発明の解毒方法によれば、食品としての安全性を確保しつつ、本来の水産物の風味を損なうことなしに、効率的に解毒することができるという有利な効果を奏する。 【0018】 また、本発明の解毒方法によれば、毒性としてはかなり高い値を有する水産物であっても無毒化(<2.0MU/g)することができ幅広い毒力を有する水産物に対しても対応することができるという有利な効果を奏する。 【発明を実施するための最良の形態】 【0019】 本発明の水産物の解毒方法は、マイクロウェーブ処理することによって、水産物中のマリントキシンを解毒する。マイクロウェーブ処理とは、マイクロ波による処理を意図し、特に限定されるものではない。身近なものとして、電子レンジ等による処理を挙げることができる。 【0020】 また、水産物についても特に限定されない。例えば、フグ、貝類、カニ、ホヤなどを例示することができる。また、マリントキシンとは、魚介類による自然毒の総称をいう。具体的には、マリントキシンとしては、フグ毒(テトロドトキシン)、麻痺性貝毒(ゴニオトキシン、サキシトキシン)、下痢性貝毒(ディノフィシストキシン)、シガテラ毒(シガトキシン、マイトトキシン、スカリトキシン)、アオブダイ毒(パリトキシン)、コイ毒(5-α-シプリノールサルフェート)、記憶喪失性買毒(ドウモイ酸)、テトラミン((CH3)4N+))、バイの毒(スルガトキシン、ネオスルガトキシン、プロスルガトキシン)、イシナギ(過剰のビタミンA)などを挙げることができる。 【0021】 このうち、フグ毒の特徴は、麻痺で食後20分〜3時間で知覚麻痺、言語障害、呼吸困難、血圧降下を示し、やがて全身麻痺を起こし、致死量を越えると1.5〜8時間で死亡するというものである。また、麻痺性貝毒は、フグ毒と同様の中毒症状を示す。その毒力もフグ毒に匹敵する。麻痺性貝毒は欧米では古くから報告があるが、わが国では、三重県尾鷲湾で麻痺性貝毒産生有害プランクトン(渦鞭毛藻類アレキサンドリウム・カテネラ)が発見されたのが最初である。その後、各地で有害プランクトンの発生が認められ、ホタテガイ、カキ、アサリ、ムラサキイガイなどの貝類が毎年のように毒化している。 【0022】 本発明では、上述のようなマリントキシンにより毒化された水産物を、効率よく解毒しようとするものである。 【0023】 好ましい実施態様において、水産物を液相中でマイクロウェーブ処理する。このように液相中で水産物をマイクロウェーブ処理することとしたのは、水産物の肉質の変化を最小限に抑え、ひいては、水産物の風味を損なわないようにするためである。すなわち、急激にマイクロウェーブ処理を施すと、食品である水産物の肉質が変化し、水産物の本来の風味を失う可能性があるという問題が生じるからである。 【0024】 液相とは、例えば、水、蒸留水などを挙げることができる。例えば、液相として、初め温水を用いて、温水中でレトルトパウチに入れたフグ肝臓などを固定し、その温水が沸騰するまで加熱することができる。このように緩やかに処理することにより、肉質の変化を最小限に抑えることができる。 【0025】 この他、肉質の変化を最小限に抑える方法としては、レトルトパウチ詰め、加圧などの方法を挙げることができる。 【0026】 また、前記マイクロウェーブ処理は、緩やかな条件で行なうことができれば、特に限定されないが、肉質を良好な状態に保つという観点から、5〜30分とするのが好ましい。 【0027】 本発明では、前記マイクロウェーブ処理の前に、アルカリ及び/又は塩漬で前記水産物を処理しても良い。アルカリ処理をするのは、水産物の食品としての風味を損なうことなく短時間に、完全に毒を分解するという観点からである。このようなアルカリとしては、NaOH、NaHCO3からなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。解毒の効果が比較的高いという観点から、アルカリとしては、NaHCO3を挙げることができる。アルカリでの前処理時間は、生産物本来の品質を保ちつつ、解毒を達成するという観点から、1〜24時間であることが好ましい。 【実施例】 【0028】 以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定して解釈される意図ではない。 【0029】 実施例1 次に、試料として、熊本県宮野河内湾産マガキ及び岩手県大船渡湾産ホタテガイを用いた。 【0030】 <減毒処理方法> 各試料をそのままそれぞれレトルトパウチ詰め加工し、マイクロウエーブで5〜30分間加熱した。マイクロウエーブ処理には、圧力、出力、温度を調節できるMILESTONE社製ETHOS TC(2455MHz、波長12.25cm)を用いた。 【0031】 <抽出> 試料からの麻痺性貝毒(PSP)の抽出は「食品衛生検査指針」理化学編の「試験法:麻痺性貝毒:試料の調製」に準拠して行なった。試料を磨砕し、均一化してその5.0gを秤量し、よく撹拌した。試料と等倍量の0.1M HClを加えた(抽出比2)後、超音波により5分間抽出し、18000×gで20分間遠心分離して上澄み液を抽出液とした。 【0032】 <マウス毒性試験> 「食品衛生検査指針」理化学編の「試験法:麻痺性貝毒:マウス毒性試験」に準じて行なった。毒性試験には、体重20g前後の健康な雄マウス(ddy系)を用いた。抽出液1mlをマウスの腹腔内に投与し、呼吸停止までの時間(致死時間とみなす)を秒単位で記録した。このとき、抽出液によっては、麻痺性買毒の致死時間―マウス単位換算表を参照して致死時間が5分から7分程度になるように蒸留水で希釈した。このようにして得られた致死時間から、マウス単位(MU)を求めた。次いで、マウス体重―毒力換算表の体重補正値から求めたMUを当該抽出液の毒力(MU/ml)とした。抽出液の毒力に希釈倍率、抽出比を乗じて試料1g当たりのMUを求め、MU/gで表した。マウス毒性試験は1つの試料について3尾以上のマウスを用いて行い、その毒力の中間値を試料の毒力とした。麻痺性貝毒の1MUとは体重20gの雄マウスを15分間で殺す毒量とされている。また、可食部が4MU/g以上の毒量をもつ二枚貝は食用に不適とされ、その出荷が規制されている。 【0033】 <高速液体クロマトグラフィー(HPLC)−蛍光分析> マガキより得られた抽出液を限外濾過膜(分画分子量10,000da,モルカット、ADVANTEC)により濾過したものをHPLC試験液とした。逆相系高速液体クロマトグラフィーは、既知の方法に基づいてWaters allianceを用いた逆相イオン対クロマトグラフィーのシステムにより行なった。 【0034】 カラムは、LiChroCART Superspher RP-18(e)(4×250mm、Merck)を用いた。移動相にはその毒成分群(gonyautoxin: GTX,saxitoxin:STX,C-toxin:C)により、以下の3種類の溶媒系を用い、その流速を0.8ml/minとした。 (1)GTX群分析用:2mMヘプタンスルホン酸を含む10mMリン酸アンモニウム緩衝液(pH7.3) (2)STX群分析用:2mMヘプタンスルホン酸を含む4%アセトニトリルー30mMリン酸アンモニウム緩衝液(pH7.3) (3)C郡分析用:1mMリン酸テトラ-n-ブチルアンモニウム緩衝液(pH5.8) 蛍光化及びそれを促進させるための反応液として、50mM過ヨウ素酸及び0.2M水酸化カリウムー1Mギ酸アンモニウムー50%ホルムアミド混合液をそれぞれ0.4ml/minずつ流し、カラム通過後に混合させた。恒温槽内において65℃で1.5分間加熱し、蛍光化させ、その強度を蛍光検出器で測定した。このときの測定波長は、励起波長:336nm、蛍光波長:392nmに設定した。 【0035】 <結果> ―マガキの毒力及び毒組成― マイクロウエーブ処理後のマガキの毒力と毒組成を図5に示す。毒力は、10分間の加熱で15.2MU/gになり、15分間で若干増加したが、その後は加熱とともに減少し、30分間の加熱で3.9MU/gに減少した。各毒成分は、5分間の加熱で若干のdc体の増加がみられ、加熱時間とともに減少したが、30分間の加熱において残存した。 【0036】 ―ホタテガイの毒力及び毒組成― マイクロウエーブ処理後のホタテガイの毒力と毒組成を図6及び図7にそれぞれ示す。毒力はいずれの重量でも、加熱時間とともに顕著な減少がみられ、20−30gと30−40gのものは5分間以上の加熱で、また40g以上のものは20分間以上の加熱でそれぞれ2MU/g未満まで減少した。また、各毒成分は20―30gと30−40gのものは、5分間の加熱で殆ど分解され、微量のGTX1,4が確認された。しかし、30分間の加熱においても、それらは完全に分解されず残存した。一方、重量が40g以上のものは5分間の加熱で急激な減少がみられたが、GTX1,4、GTX2,3の4成分が残存し、その後は加熱時間とともに減少したものの、30分間の加熱でもGTX1,4が残存した。 【0037】 マガキの加熱処理のおいて、オートクレーブよりもマイクロウエーブの方が効果的であった理由として、前者は外部から内側に徐々に熱が伝わるために、内部に残っている毒成分が熱の伝わる前に高毒性成分に変換し、その後、到達した熱により、壊されるのに対し、後者では均等に熱が伝わるため、若干の変換が見られるものの、前者にくらべ、変換が抑えられることが考えられる。 【0038】 ホタテガイにおいて、その重量により毒力及び各毒成分の変化が若干異なったのは、もともとそれが保有する毒力と毒量の差であると考えられた。また、両加熱ともに毒成分間の変換に起因する毒力の増加は認められず、加熱により速やかに減毒されることから、高毒性成分主体のPSPをもつ二枚貝は高圧加熱処理やマイクロウエーブ処理でよく減毒されることが示された。 【0039】 実施例1 熊本県宮野河内湾で採取された低毒性成分[C1,2(PX1,2)及びGTX5,6]主体のPSPをもつ有毒マガキ(平均毒力67MU/g)を試料として以下の実験を行なった。むき身を(1)そのまま、(2)粉末の塩または炭酸水素ナトリウム(重曹)に24時間漬け込んだ後、若しくは(3)水、0.5M食塩水または同重曹水に浸漬したまま、レトルトパウチ詰めし、オートクレーブ中121℃で5-15分加熱した。一方、むき身に、(4)24時間の塩漬け後、0.5−60分間重曹水に浸漬する操作を施した上、もしくは(5)同塩漬けと60分間の重曹水浸漬を2−5回繰り返した後、同様の加熱処理を行なった。いずれも加熱処理前後に毒を抽出し、マウス試験およびHPLC-蛍光法により毒力と毒組成を調べた。その結果、マガキむき身は、そのまま、または塩漬け後に加熱すると、C1,2およびGTX5から対応するデカルバモイル体への変換に起因すると推定される毒力の漸増がみられた。一方、重曹漬けと重曹水浸漬では、水及び食塩水浸漬に比べ遥かに効率よく解毒が進み、5分間の加熱で4MU/g未満にまで毒力が減少したが、処理済みのむき身は食用には不適であった。そこで、(4)及び(5)の処理について検討したところ、24時間の塩漬けと60分間の重曹水浸漬を3回以上繰り返すことにより、食用に適した状態を保ったまま4MU/g未満にまで解毒可能であることが明らかとなった。 【0040】 実施例2 同様に、熊本県宮野河内湾で採取したC1,2及びGTX5,6主体のPSPをもつ毒化マガキ(平均毒力79MU/g)を用い、1または3日間の食塩漬け後、重曹水に1日間浸漬、もしくは1日間の食塩漬け後、重曹水に1−24時間浸漬のうえ、それぞれレトルトパウチ詰めし、5−15分間オートクレーブ中で加熱した。一方、同マガキにつき、各1日間の食塩漬けと重曹水浸漬を行った後、同様にパウチ詰めし、オートクレーブならびにマイクロウェーブによりそれぞれ5−15分間加熱した。いずれの場合も、マウス毒性試験及びHPLC-蛍光法により各処理前後の毒力と毒組成を調べた。その結果、前処理条件としては、食塩漬けおよび重曹水浸漬ともに1日間で十分な効果が得られ、いずれも処理後10−15分間の加熱でマガキの毒力は2MU/g未満まで減少したが、微量のデカルバモイル(dc)体が残存することがわかった。一方、オートクレーブとマイクロウェーブによる加熱を比較した場合、前者では一旦C1,2およびGTX5,6から対応するdc体への変換に起因する毒力の増加がみられ、その後15分間で2.1MU/gにまで解毒されたのに対し、後者では5分間ですでに2MU/g未満まで解毒が進み、dc体の残存も認められなかった。 【0041】 実施例3 次に、TTXを含むフグ肝を材料として、塩漬とアルカリ処理をそれぞれ単独で行なった場合の減毒効果について検討した。 【0042】 塩漬 東京の築地より送られてきたマフグ2尾、サンサイフグ1尾の肝臓を一部切り取り「食品衛生検査指針、理化学編」のフグ毒検査法に準じて抽出後、マウス毒性試験により毒性値を求め、それぞれ525MU/g、95.4MU/g、313MU/gであることを確認後に試験に用いた。 【0043】 それぞれの肝臓から一辺3cmの立方体を3つずつ調製し、300mlビーカーに入れ、NaClを肝臓が隠れるまで入れ、4℃で放置した。その内の一つを1日後に取り出し、重量を測定し、マウス毒性試験に供し、さらにHPLCにより処理前との毒成分の違いを比較した。3日後、10日後も同様にして重量、毒性値、毒成分を求め、肉質と除毒効果を検討した。 【0044】 肝臓総毒量と重量の変化を図1に示す。どの肝臓も1日までは1g当たりの毒力は減少したが、10日間ではすべての肝臓で再び1g当たりの毒力が上昇した。これは肝臓からテトロドトキシン(TTX)だけではなく水分も排出され重量が小さくなり、結果として肝臓の毒が濃縮し1g当たりの毒力が上昇したと思われる。肝臓の総毒量を考えると、除毒の効果は3日間で最大となり、およそ半分の毒力が減少した。 【0045】 HPLCでは日数が経過してもテトロドン酸(TDA)のピークの上昇は見られなかったが、TTXのピークがやや減少していることから塩漬の効果としてTTXを分解するのではなく、肝臓外へ排出していることが確認できた。 【0046】 一方、肉質は、1-3日間ではレトルトパウチに入れるのに良好な硬さであったが、10日間でやや硬くなりすぎた。フグの肝臓や卵巣の塩漬けは地域によって販売されているところもあるが、これは、1年から2年漬けるものである。その過程で殆どのTTXは排出されるが完全な「塩蔵品」となり、味は生の状態とは完全に異なる。本実施例では、生の品質での除毒、減毒方法を検討すべく、以下の処理方法との関係から、3日間の処理期間を最適とした。 【0047】 アルカリ処理 山口県下関で水揚げされたトラフグの肝臓を一部切り取り「食品衛生検査指針、理化学編」のフグ毒検査法に準じて抽出後、マウス毒性試験により毒性値を求めた後、ホモジナイザーで有毒肝臓と無毒肝臓を混ぜ毒力を均一化し、約100MU/gと50MU/gになるようにして用いた。 【0048】 2gのホモジネート肝臓にそれぞれ0.1MHCl、蒸留水、0.05MNaOHを2mlずつ加え撹拌し、それぞれpH2.6、5.0、8.3としたものを4℃で0、12、24、72時間放置した。「食品衛生検査指針、理化学編」のフグ毒検査法では10分間の加熱抽出があり、その過程で0.05MNaOHを加えた肝臓は、TTXが分解する可能性があるので、超音波により抽出した。各時間の肝臓の超音波抽出により得られた抽出液をマウス毒性試験及びHPLCに供し、毒性値の変化と毒成分の変化を肉質とともに検討した。 【0049】 毒性試験の結果を図2に示す。公定法による毒性試験で54.1MU/g、102MU/gであった肝臓ホモジネートは、0.1%酢酸を等量加え超音波抽出したところ、それぞれ73.3MU/g、132MU/gを示してこれを肝臓ホモジネートの未処理毒力とした。0時間においての毒力はpH2.6、5.0ともに未処理と同程度でTTXの分解は起こっていない。 【0050】 一方、pH8.3の場合では、0時間で2種類の肝臓とも多少の毒力の低下がみられた。これは0.05M NaOHによるTTXの分解かもしくは抽出効率の違いによると考えられる。毒力変化が小さすぎてHPLCによるクロマトではTTXの分解は確認できなかった。 【0051】 12、24、72時間経過後もpH2.6、5.0では2種類の肝臓とも毒力の変化はほとんどなかったが、pH8.3の場合では、2種類の肝臓ともわずかだが毒力の減少がみられ、またTDA様物質のピークの増加がみられ、TTXが分解されていることが確認できた。しかし、肉質は時間の経過とともに悪くなり、72時間経過後ではレトルトパウチにとじることができないほど柔らかくなっていた。 【0052】 以上より、加熱前の処理として、塩漬の方が除毒効果、肉質ともにアルカリ水処理よりも優れていることが判明した。 【0053】 実施例4 次に、フグの肝臓の内部の減毒処理を行なった。 フグの肝臓は、トラフグなどの大型のフグになると1kg以上になることもある。このような肝臓をそのまま加熱処理した場合、内部まで熱がとおりにくく、減毒できない場合がある。この節では分子に直接働きかけ内部まで熱がとおり易いとされるマイクロウエーブ処理の効果をボイルと比較した。 【0054】 東京の築地より送られてきたマフグ2尾、サンサイフグ1尾の肝臓の中心部と外側を一部切り取り「食品衛生検査指針、理化学編」のフグ毒検査法に準じて抽出後、マウス毒性試験により毒性値を求め、中心部と外側と毒力の違いがないことを確認後、試験に用いた。 【0055】 それぞれの肝臓から一辺4cmの立方体を2つずつ切り出し、レトルトパウチに入れたものの一方を500mlビーカーに入れ、沸騰水を加え、水面に浮かばないように固定し、電子レンジ(500w)で5分間加熱し、急冷後肝臓の内側の5gと外側の5gに等量の0.1%酢酸を加え超音波抽出(図3)し、マウス毒性試験及びHPLCに供し、中心部と外側との減毒効果の違いを検討した。また対照としてもう一方のレトルトパウチに入れたものは沸騰水中に浮かばないように固定し、5分間加熱し、電子レンジと同様に急冷後肝臓の内側5gと外側の5gに等量の0.1%酢酸を加え、超音波抽出し、マウス毒性試験及びHPLCに供し、中心部と外側との減毒効率の違いをマイクロウエーブ処理と比較した。 HPLCの測定条件 HPLC装置:HITACHI L-7100 カラム:LiChroCART Superspher RP-18(e)(φ4×250mm、Merck) カラム温度:20℃ 移動相:流速0.8ml/分 4mM ヘプタンスルホン酸を含む10mMリン酸アンモニウム緩衝液(pH2.2) 試薬:流速0.8ml/分 4N NaOH 反応:110℃、2分 検出器:HITACHI L-7480 Emission:505nm, Excitation : 384nm 注入体積:10μl 【0056】 毒性試験の結果を図4に示す。肝臓をそのまま電子レンジにかけると1、2分程度で表面が焦げ、減毒する前に水分が蒸発し、食品としての品質を保てなかったので、今回は試料をレトルトパウチに入れ、沸騰水中固定し、ボイルとの比較で減毒効果の違いを検討した。加熱後の肝臓毒力の中心と外側との毒力の差は、ボイルでは平均で、20MU/gであったのに対して、マイクロウエーブ処理ではその差が平均でも5MU/gと小さく、ボイルより肝臓内部まで均一に減毒可能であることが示された。よって、マイクロウエーブ処理は、加熱処理後の仕上げに適している事がわかる。HPLCでもその傾向は顕著でマイクロウエーブ処理の方がボイルより中心と外側でのTDA様物質の増加量に差がなく、また全体的にボイルよりマイクロウエーブ処理の方がTDA様物質の増加量は多く、TTXを分解しやすいことが判明した。 【0057】 高速液体クロマトグラフィー(HPLC) 前述のHPLC法では、TTX、4−epiTTX、anh-TTXのピークは検出できるが、TTXの分解物である無毒のTDAのピークは妨害物質により検出できない。ここではその分解を考え移動相として4mMヘプタンスルホン酸を含む10mMリン酸アンモニウム緩衝液(pH2.2)を用い、TDA様物質の検出を行なった。 【0058】 実施例5 次に、塩漬、アルカリ処理、マイクロウエーブ処理を組み合わせて行い、解毒の効果を調べた。 【0059】 実際に、有毒ナシフグ肝臓を減毒し、食品として利用し得るか否かをマウス毒性試験で検討した。 【0060】 本実施例では、水産物としてナシフグを用いた。ナシフグ肝臓の減毒処理は以下のとおりである。まず、フグから肝臓を10g以下に切り出した。ついで、肝臓を3日間食塩に浸漬した後、水洗いした。肝臓に等容量の0.05M NaOHを加え、レトルトパウチに入れた。ついで、レトルトパウチに入れたものをオートクレーブ(1ポンド、120℃)で35分間加熱後、放置し室温に戻した。 【0061】 室温に戻したものを容器に入れ、蒸留水を加え、水面に浮かばないように固定し、電子レンジ(500W)で蒸留水が蒸発するまで(約15分間)加熱後、放置し室温に戻した。 【0062】 その後、レトルトパウチを開き肝臓を取り出し、0.1%酢酸で洗浄し、約10分0.1%酢酸に浸漬後、水洗いした。 【0063】 減毒処理したナシフグ肝臓を、「食品衛生検査指針, 理化学編」のフグ毒検査法に準じて毒を抽出した。得られた抽出液をマウス毒性試験に用いた。 【0064】 処理後の肝臓はすべて規制値(10MU/g)未満であり、食用可能と判断された。処理前の肝臓の最大毒性値は1530MU/gであったが、2.0MU/g未満に減毒できた。 【産業上の利用可能性】 【0065】 本発明は、水産業における増養殖分野において、確実に無毒化処理を行なうことが可能であり、魚類種苗生産を実施する上で、貢献度が極めて高い。 【図面の簡単な説明】 【0066】 【図1】図1は、肝臓総毒量と重量の変化を示す。Mafugu(A)は、マフグ(A)を、Sansaifuguは、サンサイフグを、Mafugu(B)は、マフグ(B)を、それぞれ示す。 【図2】図2は、毒性試験の結果を示す。 【図3】図3は、超音波によるTTXの抽出を示す。 【図4】図4は、毒性試験の結果を示す。 【図5】図5は、マイクロウエーブ処理後のマガキの毒力と毒組成の変化を示す。 【図6】図6は、マイクロウエーブ処理後のホタテガイの毒力の変化を示す。 【図7】図7は、マイクロウエーブ処理後のホタテガイの毒組成の変化を示す。
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| 【出願人】 |
【識別番号】502218433 【氏名又は名称】野口 玉雄 【識別番号】502217920 【氏名又は名称】荒川 修 【識別番号】502218444 【氏名又は名称】高谷 智裕
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| 【出願日】 |
平成16年2月24日(2004.2.24) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100072051 【弁理士】 【氏名又は名称】杉村 興作
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| 【公開番号】 |
特開2005−237212(P2005−237212A) |
| 【公開日】 |
平成17年9月8日(2005.9.8) |
| 【出願番号】 |
特願2004−48012(P2004−48012) |
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