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【発明の名称】 パン用小麦粉、パン生地及びそれらを用いて製造されたパン
【発明者】 【氏名】斉藤 斉
【住所又は居所】富山県滑川市下梅沢526番地 株式会社パウダー・ノバ内

【氏名】大和 智
【住所又は居所】富山県滑川市下梅沢526番地 株式会社パウダー・ノバ内

【氏名】釜田 浩之
【住所又は居所】富山県滑川市下梅沢526番地 株式会社パウダー・ノバ内

【要約】 【課題】弾力ある触感、口解けがよく、咽越しがスムーズな食感及び大きなカロリーダウンが達成されたパン、その製造に用いられるパン用小麦粉及びパン生地を提供する。

【解決手段】50%径が20μm以下の強力粉を含むことを特徴とするパン用小麦粉、また、前記パン用小麦粉を用いて製造されたパン生地であって、パン生地がパン用小麦粉と水とを含み、水の含有量がパン用小麦粉100質量部に対して75質量部以上であることを特徴とするパン生地、さらに、前記パン生地を用いて製造されたことを特徴とするパン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
50%径が20μm以下の強力粉を含むことを特徴とするパン用小麦粉。
【請求項2】
請求項1のパン用小麦粉を用いて製造されたパン生地であって、前記パン用小麦粉と水とを含み、前記水の含有量が、前記パン用小麦粉100質量部に対して、75質量部以上であることを特徴とするパン生地。
【請求項3】
請求項2のパン生地を用いて製造されたことを特徴とするパン。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、パン用小麦粉、パン生地及びそれらを用いて製造されたパンに関する。
【背景技術】
【0002】
小麦粉は、タンパク質(グリテニン又はグリアジン)の含有量によって分類され、その含有量が多い順に、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉に分類される。そして、このタンパク質は水分と混合することにより、粘り気のあるグルテンに変化する。従来、パン用小麦粉としては、タンパク質を比較的多量に含有する強力粉が主に用いられていた。
【0003】
そして、この強力粉は、その50%径が約60μmと比較的大きいため、パン生地の製造の際に水と混合されても、強力粉の吸水速度が遅く、パン生地の含水率が低くなる傾向にある。そのため、形成されるグルテンは強力粉間にゆっくりと形成され、十分なグルテンが形成される前にパン生地の製造を終了してしまい、粘弾性不足のパン生地が製造されることが多かった。その結果、このような粘弾性不足のパン生地を用いて製造されるパンでは、焼成により腰折れが生じる場合があり、また、触感も硬くなる傾向にあるという問題があった。
【0004】
また、グルテンの形成が十分でないため、パン生地内に包み込まれる炭酸ガス量が少なく、パン生地を焼成してもパンの体積が大きくならない(パンにボリューム感がない)。その結果、パン重量比に対するカロリーダウンが大きくならないという問題があった。
【0005】
さらに、強力粉の粒径が大きいため、強力粉に含まれる澱粉が唾液中のアミラーゼで分解されにくく、パンを食した際に口解けがわるく、咽越しもスムーズでないという問題があった。
【0006】
そのため、これらを改善するため、50%径が小さい分級薄力粉を主体としたパン用小麦粉、パン生地及びそれらを用いて製造されたパンが提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−157148号公報(段落番号0002〜0004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、分級薄力粉は、パン生地の製造の際に水と混合されても、タンパク質の含有量が少ないため、グルテンの形成量が少ない。その結果、分級薄力粉を用いたパンにおいても、弾力のある触感を得ることは難しいという問題があった。また、グルテンの形成量が少ないため、前記の強力粉を用いて製造されたパンと同様に、パン生地中に包み込まれる炭酸ガス量が少なく、パン生地を焼成してもパンの体積が大きくならない。したがって、ボリューム感を得るためには、発酵の際の炭酸ガス量を増加させる必要があり、パン用小麦粉に加える糖類が多くなる。その結果、製造されるパンのカロリーがアップするという問題があった。
【0008】
本発明は上記の問題を鑑みてなされたもので、弾力ある触感、口解けがよく、咽越しがスムーズな食感及び大きなカロリーダウンが達成されたパン、その製造に用いられるパン用小麦粉及びパン生地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、請求項1の発明は、50%径が20μm以下の強力粉を含むパン用小麦粉として構成したものである。このように構成すれば、パン用小麦粉の粒径が小さいため、パン生地の製造の際に、この強力粉の吸水速度が速くなり、水分をより多く吸収して、強力粉間にグルテンを早く多量に形成する。そして、形成されたグルテンによって、パン生地内の強力粉同士が幅広く、力強くつなぎ止められるため、粘弾性に優れたパン生地が製造される。また、パン生地内の糖類は、酵母の発酵をうけて炭酸ガスを発生し、この炭酸ガスは、形成されたグルテンによって、パン生地内にうまく包み込まれる。したがって、炭酸ガス量が少なくても、パン生地内に十分な量の炭酸ガスが包み込まれるため、パン生地内に含まれる糖類を少なくすることが可能となる。そして、パン生地の焼成の際に、この炭酸ガスが膨張して、製造されるパンは、その体積が大きくなる(ボリューム感がでる)。さらに、製造されたパンを食した際には、パン用小麦粉の粒径が小さいため、強力粉に含まれる澱粉が唾液中のアミラーゼで分解されやすくなる。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1のパン用小麦粉を用いて製造されたパン生地であって、前記パン用小麦粉と水とを含み、前記水の含有量が、前記パン用小麦粉100質量部に対して、75質量部以上であるパン生地として構成したものである。このように構成すれば、パン生地に含まれる水の含有量を所定量に限定することによって、パン生地内の水分量が多くなり、強力粉間にグルテンが早く多量に形成される。その結果、パン生地内に包み込まれる炭酸ガス量が多くなる。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項2のパン生地を用いて製造されたパンとして構成したものである。このように構成すれば、パン生地内で発生する炭酸ガス量が少なくても、パン生地内に十分な炭酸ガスが包み込まれ、体積の大きい(ボリューム感のある)パンが製造される。その結果、パン内に含まれる糖類を少なく、又は無添加にすることが可能となり、製造されるパンの重量比に対する糖分量が低くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パン生地内に早く多量にグルテンが形成され、十分な量の炭酸ガスが包み込まれるため、弾力のある触感、口解けがよく咽越しがスムーズな食感が達成されたパン、その製造に用いられるパン用小麦粉及びパン生地を提供することが可能となる。
【0013】
また、製造時に付加する糖類を少なく、又は無添加とすることが可能になると共に、パンの体積が増大するため、重量あたりのエネルギー量が低下して、大きなカロリーダウンが達成されたパン、その製造に用いられるパン用小麦粉及びパン生地を提供することが可能となる。また、常用量あたりの微量栄養素が増え、血糖曲線が緩和、GI値が飛躍的に改善できると考えられるパンは、糖分量を抑えた食事が望まれている学校給食用のパンとして対応できると共に、糖尿、動脈硬化及び高血圧等の成人病の予防及び治療食、又は、腎臓病の低タンパク食等の病院給食用、老人給食用のパンとして対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本発明は、パン用小麦粉、パン生地及びそれらを用いて製造されたパンに関するものである。本発明において、パンは、例えば、食パン、菓子パン、ロールパン、フランスパン、蒸しパンであって、特に限定されるものではない。以下、パン用小麦粉、パン生地及びそれらを用いて製造されたパンについて説明する。
【0015】
(パン用小麦粉)
本発明のパン用小麦粉は、50%径が20μm以下の強力粉を含むものである。ここで、50%径とは、マイクロトラック(登録商標)粒度分析計で測定した際の50%累積パーセント径である。強力粉の50%径が20μmを超えると、パン生地の製造の際に強力粉と水を混合しても、強力粉の吸水速度が遅いため、グルテンの形成がゆっくりと進行し、グルテン形成が不十分な粘弾性不足のパン生地が製造される。その結果、このパン生地から製造されるパンは、焼成により腰折れが生じ、触感が硬くなる。
【0016】
また、パン用小麦粉は、50%径が20μm以下の強力粉の他に、強力粉、準強力粉、中力粉及び薄力粉から選択された少なくとも1種からなるものを含んでもよい。ここで、強力粉、準強力粉、中力粉及び薄力粉の粒径に特に制限はない。そして、50%径が20μm以下の強力粉の含有量は、50〜100質量%が好ましく、100質量%が特に好ましい。50%径20μm以下の強力粉の含有量が50質量%未満であると、パン生地内に形成されるグルテン量が少なくなり、粘弾性不足のパン生地が製造されやすい。
【0017】
また、強力粉は、市販されている品種である、カナダ産「ウェスタン・レッド・スプリング」、アメリカ産「ダーク・ノーザン・スプリング」、北海道産「ハルユタカ」等を使用し、強力粉の形成するグルテン量は、強力粉の等級又は調合方法により左右されるが、11.5〜13.0質量%を目安とする。
【0018】
また、50%径20μm以下の強力粉は、市販の強力粉を使用して製造される。具体的には、市販の強力粉は、その50%径が約60μmと大きいため、従来公知の粉砕機等で粉砕して50%径20μm以下の強力粉を作製する。ここで、粉砕機としては、特開2001-334158号に記載されている伸和工業(株)製の乾式粉砕機「エコナミル(登録商標)」を使用することが好ましい。
【0019】
(パン生地)
本発明のパン生地は、前記パン用小麦粉を用いて製造されたものであって、パン生地がパン用小麦粉と水とを含み、水の含有量が、パン用小麦粉100質量部に対して、75質量部以上である。パン生地に含まれる水の含有量が75質量部未満であると、パン生地内に形成されるグルテン量が少なくなる。その結果、粘弾性不足のパン生地が製造され、このパン生地から製造されるパンは、焼成により腰折れが生じ、触感が硬くなる。
【0020】
また、パン生地は、前記パン用小麦粉100質量部に対し、パン用小麦粉以外の従来公知の他の原料、例えば、砂糖等の糖類が0〜50質量部、脱脂粉乳等の乳製品が0〜4.0質量部、イースト菌等の酵母が0.5〜5.0質量部、食塩が0.5〜2.0質量部、ショ−トニング等の油脂が2〜25質量部、バター、マーガリン等の香味料が0.1〜3.0質量部配合されたものが好ましい。特に、糖類は0質量部、又は2質量部以下がより好ましい。他の原料の配合比(質量部)が前記の範囲外であると、製造されるパンの外観、触感、食感が悪くなりやすい。
【0021】
また、パン生地は以下の(1)〜(3)に挙げた方法によって製造され、製造されたパンの外観、触感、食感が優れている点、また、パン生地の製造工程での作業性が優れている点で、(1)直捏法が好ましい。しかしながら、本発明のパン生地の製造方法は、以下の(1)〜(3)の方法に限定されるものではない。
【0022】
(1)直捏法
前記パン用小麦粉に、他の原料、例えば、糖類、乳製品、酵母、食塩、油脂、香味料、水等の他の原料を加え、混捏、発酵してパン生地を製造する。
(2)中種法
前記パン用小麦粉に、酵母、水を加えて混捏して中種を作り、中種を発酵させる。発酵させた中種に、糖類、乳製品、食塩、油脂、香味料等の残りの原料を加え、混捏してパン生地を製造する。前記直捏法との相違点は、直捏法が1回の混捏に対し、中種法は2回の混捏を行う点である。
(3)水種法
前記パン用小麦粉の20〜40質量%に、同量の水と、適量の酵母を加えて混捏し、前記中種よりも柔らかい液種を作り、液種を発酵させる。発酵させた液種に、小麦粉、糖類、乳製品、食塩、油脂、香味料等の残りの原料を加え、混捏してパン生地を製造する。
【0023】
(パン)
本発明のパンは、前記パン生地を用いて製造されたものであって、前記パン生地を用いることによって、パンを食した際の糖分摂取量が少なくなり、糖尿、動脈硬化、高血圧等の成人病の予防及び治療食として対応できるようになる。また、最近要望されつつある糖分量を抑えた学校給食としても対応できるようになる。
【0024】
また、本発明のパンは、前記パン生地を適量に分割し、分割されたパン生地を金型等に入れて成型し、金型等内でホイロ(最終発酵)した後、オーブン等で焼成することによって製造される。
【実施例】
【0025】
次に、本発明の実施例について具体的に説明する。本発明の特許請求の範囲を満足するものを実施例1〜2、本発明の特許請求の範囲を満足しないものを比較例1とした。
(パン用小麦粉の製造)
強力粉(日本製粉(株)製)を乾式粉砕機(伸和工業(株)製「エコナミル(登録商標)」)を用いて粉砕した。なお、粉砕前の強力粉を強力粉A、粉砕後の強力粉を強力粉Bとし、強力粉A、Bの50%径を、マイクロトラック(登録商標)粒度分析計(日機装(株)製)で測定した。その結果、強力粉Aの50%径が62μm、強力粉Bの50%径が19μmであった。そして、実施例1〜2では、強力粉Bのみを使用してパン用小麦粉とし、比較対照としての比較例1では、強力粉Aのみを使用してパン用小麦粉とした。
【0026】
(パン生地の製造)
次に、ミキサー(関東混合機工業(株)製)内で、前記強力粉A、Bのそれぞれに、砂糖、脱脂粉乳、イースト菌、食塩及び水を表1に示す配合で加え、低速2分、中高速6分の条件で混捏した。ただし、水は、混捏状態を確認しながら少量に分けて加え、表1の数値はその積算量である。その後、ショートニング、バター・マーガリンを表1に示す配合で加え、低速2分、中高速8分の条件で混捏した。次いで、温度27℃、湿度75%の条件で50分間発酵を行い、パン生地とした。
【0027】
(パンの製造)
次に、前記で得られた220gのパン生地を3斤金型に入れ、温度38℃、湿度85%の条件で40分間ホイロ(最終発酵)を行った。その後、ホイロが終了したパン生地をオーブンに入れて、200℃、35分間の条件で焼成して山型のパンを得た。
【0028】
【表1】


【0029】
(パンの評価)
得られたパンについて、重量あたりのエネルギー量を日本食品標準成分表により算出した。また、以下の評価基準で触感、食感を評価した。その結果を表2に示す。
(1)触感
パン表面を指で押した際に、弾力に優れ、モチモチ感のあるものを○、弾力がなく、硬い触感のものを×とした。
(2)食感
パンを食した際に、口解けがよく、咽越しがスムーズなものを○、パサツキがあり、咽越しが悪いものを×とした。
【0030】
【表2】


【0031】
表2に示すように、実施例1〜2のパンは、その重量あたりのエネルギー量が少なく、パン重量比に対するカロリーダウンが期待できるものであった。また、実施例1〜2のパンは、その触感及び食感においても優れるものであった。次に、比較例1のパンは、その重量あたりのエネルギー量が多く、パン重量比に対するカロリーダウンが期待できないものであった。また、比較例1のパンは、その触感及び食感においても劣るものであった。
【出願人】 【識別番号】504183643
【氏名又は名称】株式会社パウダー・ノバ
【住所又は居所】富山県滑川市下梅沢526番地
【識別番号】504183654
【氏名又は名称】田村 孝志
【住所又は居所】三重県津市高野尾町3214−46
【識別番号】504184260
【氏名又は名称】西村 欣也
【住所又は居所】三重県四日市市天ヶ須賀2−3−2
【識別番号】504183665
【氏名又は名称】長谷川 義洋
【住所又は居所】富山県富山市向新庄町1−23−7
【識別番号】504184020
【氏名又は名称】清水 仁司
【住所又は居所】富山県下新川郡朝日町金山406番地
【出願日】 平成16年5月12日(2004.5.12)
【代理人】 【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造

【公開番号】 特開2005−323503(P2005−323503A)
【公開日】 平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願番号】 特願2004−141966(P2004−141966)