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【発明の名称】 植物プランクトンの増殖を抑制する方法
【発明者】 【氏名】長谷川 浩

【氏名】牧 輝弥

【氏名】上田 一正

【要約】 【課題】本発明は、植物プランクトンの増殖を抑制する方法及びそのための組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、望ましくない植物プランクトンの増殖を選択的に抑制する方法を提供することを目的とする。

【解決手段】本発明は、対数増殖期にある植物プランクトン及び鉄イオンが含まれる水系中に、鉄イオンと結合し得るキレート化剤を添加することを含む、植物プランクトンの増殖を抑制する方法に関する。本発明はまた、望ましくない植物プランクトン、望ましい植物プランクトン及び鉄イオンが含まれ、且つ当該望ましくない植物プランクトンが対数増殖期にある水系中に、鉄イオンと結合し得るキレート化剤を添加することを含む、当該望ましくない植物プランクトンの増殖を選択的に抑制する方法に関する。本発明はまた、鉄イオンと結合し得るキレート化剤を含有する、対数増殖期にある植物プランクトンの増殖を抑制するための組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対数増殖期にある植物プランクトン及び鉄イオンが含まれる水系中に、鉄イオンと結合し得るキレート化剤を添加することを含む、植物プランクトンの増殖を抑制する方法。
【請求項2】
望ましくない植物プランクトン、望ましい植物プランクトン及び鉄イオンが含まれ、且つ当該望ましくない植物プランクトンが対数増殖期にある水系中に、鉄イオンと結合し得るキレート化剤を添加することを含む、当該望ましくない植物プランクトンの増殖を選択的に抑制する方法。
【請求項3】
鉄イオンと結合し得るキレート化剤を含有する、対数増殖期にある植物プランクトンの増殖を抑制するための組成物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は植物プランクトンの増殖を抑制する方法及びそのための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
かつての我が国は清浄な水にあふれていた。しかしながら、1960年代以降、海、湖、河川の水質は年々悪化し、水産資源の減少や飲み水の安全性が社会問題化している。世界的にも人類が利用できる水は意外に少なく、21世紀は水源の確保が国際問題になると予測されている。
【0003】
水質悪化の原因として第一に挙げられるのは、海、湖、河川における富栄養化の問題である。工業廃水からの有害物質は排出源における規制が比較的容易であるが、富栄養化の主な原因物質である窒素やリンは、家庭排水、農業廃水を経由して広範囲から莫大な量が流入するため、完全に浄化するには限界がある。その結果、人口が集中した地域では、付近の水域で植物プランクトンが異常発生し、水質が悪化している。
【0004】
一方、水圏生態系において、植物プランクトンは光合成により二酸化炭素を有機物に変換する一次生産者として重要な役割を担っている。植物プランクトンの全光合成量は陸上植物とほぼ等しく、水圏の豊かな漁業資源を支える源となっている。また、海洋には大気中の二酸化炭素の数十倍以上の炭素が含まれているが、この地球規模の炭素循環においても、植物プランクトンが関与する生物サイクルが大きく寄与している。陸上で草木を栽培し林を育てるのと同様に、水圏において植物プランクトンを自在に養うことができたら、人類は水圏生態系を適正に管理し、水質悪化を防止する手段を手に入れることになる。例えば、海洋で増殖する植物プランクトンの種類と生産量の制御が実現すれば、沿岸海域での赤潮や磯焼け、海洋の砂漠化において有効な対策となり得る。
【0005】
なお、本発明に関連する文献として非特許文献1及び2がある。これらの文献では、鉄イオンに対して飢餓状態にある植物プランクトンに各種のキレート化剤によりキレート化された鉄イオンを与えて鉄イオンの取込み量の差異を観測している。一方、本発明は以下に詳述する通り、鉄イオンが十分に存在する条件下で対数増殖期にある植物プランクトンの増殖を、鉄イオンと結合し得るキレート化剤を添加することにより抑制する方法に関するものであり、非特許文献1及び2に記載された技術とは顕著に相違する。
【0006】
【非特許文献1】日本化学会近畿支部平成14年度北陸地区講演会(富山大学)要旨集、第285頁、「J04:海洋植物プランクトンの生長におけるEDTA類縁体の影響」
【非特許文献2】日本化学会近畿支部平成14年度北陸地区講演会(富山大学)要旨集、第299頁、「J18:植物プランクトンの増殖に及ぼす微量金属の影響」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、植物プランクトンの増殖を抑制する方法及びそのための組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、望ましくない植物プランクトンの増殖を選択的に抑制する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の発明を包含する。
(1)対数増殖期にある植物プランクトン及び鉄イオンが含まれる水系中に、鉄イオンと結合し得るキレート化剤を添加することを含む、植物プランクトンの増殖を抑制する方法。
【0009】
(2)望ましくない植物プランクトン、望ましい植物プランクトン及び鉄イオンが含まれ、且つ当該望ましくない植物プランクトンが対数増殖期にある水系中に、鉄イオンと結合し得るキレート化剤を添加することを含む、当該望ましくない植物プランクトンの増殖を選択的に抑制する方法。
【0010】
(3)鉄イオンと結合し得るキレート化剤を含有する、対数増殖期にある植物プランクトンの増殖を抑制するための組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、対数増殖期にある植物プランクトンの増殖を抑制する方法及びそのための組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、対数増殖期にある植物プランクトン及び鉄イオンが含まれる水系中に、鉄イオンと結合し得るキレート化剤を添加することを含む、植物プランクトンの増殖を抑制する方法を提供する。
【0013】
本発明の方法により増殖が抑制され得る植物プランクトンとしては、例えばプレウロクリシス属(Pleurochrysis)、クリコスフェラ属(Cricosphera)等のハプト藻類、ヘテロシグマ属(Heterosigma)、シャトネラ属(Chattnella)等のラフィド藻類、スケレトネマ属(Skeltonema)等の珪藻類、ロドモナス属(Rhodomonas)等のクリプト藻類、シアノバクテリア類、渦鞭毛藻類、緑藻類、原核緑藻類、ユーグレナ藻類、プラシノ藻類が挙げられるがこれらに限られない。
【0014】
ここで鉄イオンはFe2+又はFe3+のどちらであってもよく、それらが混合されたものであってもよい。水系中における鉄イオンの濃度は特に限定されないが、植物プランクトンが対数増殖するのに十分な濃度、例えば、外洋においては1nM〜1000nM、沿岸においては50nM〜100μMであることが好ましい。
【0015】
本発明に使用され得るキレート化剤は、鉄イオンに結合してキレート化合物を生成する複数の供与原子をもつ試薬であれば特に限定されないが、例えば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EDTA−OH(ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、EDTPO(エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸)、DPTA−OH(1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−N,N,N’,N’−四酢酸)、GEDTA(グリコールエーテルジアミン四酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、IDA(イミノ二酢酸)等のアミノカルボン酸類、ロードトルーリック酸(rhodotrulic acid)、DFOB(デスフェリオキサミンB)等のヒドロキサム酸類、エンテロバクチン等のカテコール類が挙げられる。
【0016】
本発明において「鉄イオンに結合し得るキレート化剤」は、鉄イオンなどの金属カチオンとキレート化合物を形成した状態で使用されてもよい。例えばEDTAは、「EDTA−鉄」(鉄イオンとのキレート化合物)として水系中に添加されてもよい。
【0017】
キレート化剤の水系中への添加方法は特に限定されないが、例えば、キレート化剤は水系中に直接に投与されてもよく、水等の適当な媒体に懸濁又は溶解された状態で投与されてもよく、錠剤、カプセル剤等の適当な形態に製剤化されて投与されてもよい。
【0018】
キレート化剤の水系中への添加量は植物プランクトンの増殖抑制が達成される量であれば特に限定されないが、典型的には、鉄イオンを1とした場合にキレート化剤がモル比で0.001以上、好ましくは0.001〜1000となる量である。
【0019】
特定のキレート化剤が特定の植物プランクトンの増殖を特に強力に抑制する場合があることが本発明者らの鋭意研究の結果見出された。この知見に基づけば、望ましくない植物プランクトンと望ましい植物プランクトンとが鉄イオン存在下で共存しており且つ当該望ましくない植物プランクトンが対数増殖期にある水系中に、適当なキレート化剤を、望ましくない植物プランクトンの増殖は抑制されるが望ましい植物プランクトンの増殖は抑制されない量で添加することにより、望ましくない植物プランクトンの増殖を選択的に抑制することができる。
【0020】
本発明の方法によれば、望ましくない植物プランクトンと望ましい植物プランクトンとが共存する水系において、望ましくない植物プランクトンの増殖を選択的に抑制し、その結果として、望ましい植物プランクトンを優先種として増殖させることが可能である。すなわち、本発明によれば植物プランクトンを選択的に制御することが可能である。一方、従来技術においては、海洋に無機鉄を散布することにより植物プランクトンを増殖させる手法が確立されているが、どのような種類の植物プランクトンが増殖するのか予測できなかった。この点において本発明は従来技術にはない有利な効果を奏するものといえる。
【0021】
また、本発明において添加されるキレート化剤は水系中の鉄イオンと結合して有機鉄錯体を形成する。形成された有機鉄錯体は溶存態として安定に存在するため、望ましい植物プランクトンに対しては安定な鉄供給体となる(鉄供給体として無機鉄を添加したとしても、水系中で水和酸化物粒子となり速やかに除去されてしまう)。本発明の方法は、この点でも優れた効果を奏する。
【0022】
ある植物プランクトンが望ましいものであるか否かは、求められる目的に応じて適宜判断される。
【0023】
望ましくない植物プランクトンとしては、典型的には、赤潮、磯焼け、海洋の砂漠化の原因となる植物プランクトン(具体的には、ヘテロカプサ、ヘテロシグマ、シャトネラ、ギムノディニウム、アレキサンドリウム、ディノフィシス等)、ハプト藻類の一種である円石藻(具体的には、エミリアニア、ゲフィロカプサ等)等が挙げられる。円石藻は炭酸カルシウムを生成する性質を有しており、炭酸カルシウムが海水中で生成されると海水が酸性化して大気中の二酸化炭素濃度が増大するといわれていることから、円石藻の増殖を抑制することができれば大気中の二酸化炭素濃度を低減することができると期待される。
【0024】
望ましい植物プランクトンとしては、典型的には、有害な性質を持たず魚や二枚貝のエサになる種類の植物プランクトンや、珪藻類(具体的には、タラシオシラ、スケレトネマ等)が挙げられる。珪藻類は海水中の有機物に含まれる炭素を珪酸殻中に固定化後速やかに海底まで沈降するため、珪藻類が増殖すれば炭素が生物圏から半永久的に除去され、結果として大気中の二酸化炭素濃度が低下される。
【0025】
例えば「望ましくない植物プランクトン」が、プレウロクリシス属、クリコスフェラ属等のハプト藻類、ヘテロシグマ属、シャトネラ属等のラフィド藻類、スケレトネマ属等の珪藻類、ロドモナス属等のクリプト藻類、又はシアノバクテリア類である場合、これらの植物プランクトンの増殖は、EDTA、EDTA−OH、DTPA、EDTPO、DPTA−OH、GEDTA等のポリアミノカルボン酸類を適当量添加することにより選択的に抑制される。ここで「適当量」は求められる結果に応じて適宜決定され得るが、典型的には、水系中の鉄イオンを1とした場合にポリアミノカルボン酸類がモル比で0.001以上、好ましくは0.001〜1000、より好ましくは0.1〜1000、最も好ましくは5〜100となる量を指す。
【0026】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によっては限定されない。
【実施例1】
【0027】
材料
植物プランクトンとして、プレウロクリシス・カルテラ(Pleurochrysis carterae)、クリコスフェラ・ロスコフェンシス(Cricosphera roscoffensis)、ヘテロシグマ・アカシオ(Heterosigma akashiwo)、シャトネラ・アンティーカ(Chattnella antiqua)、スケレトネマ・コスタツム(Skeltonema costatum)、ロドモナス・オバリス(Rhodomonas ovalis)、シアノバクテリアC7株(strain C7)、シアノバクテリアC8株(strain C8)を使用した。
【0028】
培地として改変f/2培地を使用した。改変f/2培地は、人工海水中にNaNO 8.82x10−6M、NaHPO・2HO 4.29x10−7M、ビタミンB12 3.69x10−12M、ビオチン 2.05x10−11M、チアミンHCl 2.96x10−10M、NaSiO・9HO 3.52x10−7M、NaSeO 1.00x10−7Mとなるように各成分が添加された溶液100mLに、f/2金属類水溶液(CoSO・7HO 4.27x10−12M、ZnSO・7HO 3.48x10−12M、MnCl・4HO 9.09x10−11M、CuSO・5HO 2.80x10−12M、NaMoO・2HO 2.89x10−12M)を0.10mL添加することにより調製した。
【0029】
キレート化剤としてEDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、EDTPO(エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸)を使用した。
【0030】
鉄イオン源としてFeClを使用した。
【0031】
本実験では、溶液、培地、容器、マイクロピペッター、マイクロピペッター用チップはすべて、オートクレーブで高圧滅菌(120℃、30分間)し、続いて70%エタノールを吹きかけたクリーンベンチ内で20分間以上UV照射したものを使用した。
【0032】
対数増殖期におけるキレート化剤の添加実験
前培養では、改変f/2培地30mL(この時点でのFe3+濃度:約0.05μM)に対数増殖期の植物プランクトンを 20 cells mL-1以下になるように植え継ぎ、水温20℃、明暗サイクル12時間/12時間、光量180μmolE/m/sの条件下で培養した。
【0033】
続いて別の改変f/2培地30mLに2.25 mMのEDTA水溶液100μL、及び、0.45 mMのFeCl水溶液100μLを添加した(この時点でのEDTA濃度:7.5μM、Fe3+濃度:1.5μM)。この培地に前培養から植物プランクトンを20 cellsmL-1以下になるように植え継ぎ、水温20℃、明暗サイクル12時間/12時間、光量180μmolE/m/sの条件下で培養を行った。植物プランクトンの細胞密度は540nmにおける光散乱を吸光度として分光光度計で経時的に測定した。吸光度の測定結果から植物プランクトンが対数増殖期にあることを確認した後に、2.25 mM又は45mMの各キレート化剤の水溶液を、各キレート化剤の濃度が7.5μM(Fe3+に対して5倍量)又は150μM(Fe3+に対して100倍量)となる量だけ添加した。添加後、増殖が止まるまで培養を続けた。
【0034】
対照実験として、各キレート化剤の水溶液の代わりに水を添加する以外は上記と同様の操作を行う実験を行った。
【0035】
各植物プランクトンについての経時的な細胞密度の変化を図1に示す。図中の矢印はキレート化剤を添加した日を示す。
【0036】
図1から次のことがわかる。
プレウロクリシス・カルテラについてはFe3+に対して5倍量以上のDTPAもしくはEDTPOまたは100倍量以上のEDTAを加えることにより増殖が抑制される。
【0037】
クリコスフェラ・ロスコフェンシスについてはFe3+に対して5倍量以上のDTPAもしくはEDTPOまたは100倍量以上のEDTAを加えることにより増殖が抑制される。
【0038】
ヘテロシグマ・アカシオについてはFe3+に対して5倍量以上のDTPAもしくはEDTPOまたは100倍量以上のEDTAを加えることにより増殖が抑制される。
【0039】
シャトネラ・アンティーカについてはFe3+に対して5倍量以上のEDTPOまたは100倍量以上のDTPAを加えることにより増殖が抑制される。
【0040】
スケレトネマ・コスタツムについてはFe3+に対して5倍量以上のEDTPOまたは100倍量以上のDTPAを加えることにより増殖が抑制される。
【0041】
ロドモナス・オバリスについてはFe3+に対して5倍量以上のEDTPOまたは100倍量以上のDTPAを加えることにより増殖が抑制される。
【0042】
シアノバクテリアC7株についてはFe3+に対して5倍量以上のEDTA、DTPA又はEDTPOを加えることにより増殖が抑制される。
【0043】
シアノバクテリアC8株についてはFe3+に対して5倍量以上のDTPA又はEDTPOを加えることにより増殖が抑制される。
【実施例2】
【0044】
本実施例では、各種キレート化剤(EDTPO、DPTA−OH、DTPA、EDTA−OH、EDTA)について、各種植物プランクトン(クリコスフェラ・ロスコフェンシス、ヘテロシグマ・アカシオ、プレウロクリシス・カルテラ、スケレトネマ・コスタツム、シャトネラ・アンティーカ、ロドモナス・オバリス)に対する生長抑制濃度を測定した。
【0045】
なお本実施例で用いた材料等は特に断りのない限り実施例1で用いたものと同一である。
キレート化剤の生長抑制濃度の測定(Fe3+濃度1.5μMの場合)
改変f/2培地30mL(この時点でのFe3+濃度:約0.05μM)に0.45 mMのFeCl水溶液100μL、0.45〜45mMのキレート化剤水溶液100μLを添加した(この時点でFe3+濃度:1.5μM、キレート化剤濃度:1.5〜150μM)。この培地に前培養から植物プランクトンを20 cellsmL-1以下になるように植え継ぎ、水温20℃、明暗サイクル12時間/12時間、光量180μmolE/m/sの条件下で培養を行った。植物プランクトンの細胞密度を、540nmにおける光散乱を吸光度として分光光度計で経時的に測定した。
【0046】
対照実験(キレート化剤無添加)として、キレート化剤水溶液の代わりに水を用いた実験を行った。
【0047】
細胞密度の測定結果に基いて、各条件(植物プランクトン種類/キレート化剤種類/キレート化剤濃度)ごとに生長速度(μ)を式:
μ[day−1]=LogΔN/Δday
N:細胞密度[細胞数/mL]
を用いて算出した。
【0048】
例えば、プレウロクリシス・カルテレについて、各種キレート化剤の濃度が1.5μM、7.5μM、150μMの場合の生長速度(μ)は表1の通りであった。
【0049】
【表1】


【0050】
次に、各条件(植物プランクトン種類/キレート化剤種類/キレート化剤濃度)ごとに生長率(%)を算出した。生長率(%)とは、生長速度を、対照実験の生長速度を100%としたときの百分率で表現したものである。
【0051】
続いて、植物プランクトン種類/キレート化剤種類ごとに生長抑制濃度を算出した。生長抑制濃度は次のように定義した。すなわち、植物プランクトン種類/キレート化剤種類ごとに、横軸をキレート化剤濃度(μM)とし、縦軸を生長率(%)としてプロットを行い、近似直線を引き、近似直線上で生長率が50%となるときのキレート化剤濃度(μM)を、その植物プランクトン種類/キレート化剤種類における生長抑制濃度(μM)と定義した。
【0052】
キレート化剤の生長抑制濃度の測定(Fe3+濃度15μMの場合)
生長抑制濃度は系中のFe3+濃度により異なる場合があることから、上記と同様の実験及び計算を鉄イオン濃度15μMの場合についても行った。鉄イオン濃度15μMの場合は、0.45mMのFeCl水溶液に代えて、4.5mMのFeCl水溶液を使用した。また、ロドモナス・オバリスについては測定を行わなかった。
【0053】
まとめ
こうして算出された、植物プランクトン及びキレート化剤の種類ごとの生長抑制濃度を表2(鉄イオン濃度:1.5μM)及び表3(鉄イオン濃度:15μM)に示す。なお、表2及び表3においては生長抑制濃度を鉄イオン濃度に対する百分率(%)で表現する。
【0054】
表2に示される通り、鉄イオン濃度が1.5μMである場合には、クリコスフェラ・ロスコフェンシス又はヘテロシグマ・アカシオに対しては特にEDTPO、DPTA−OH、DTPA又はEDTA−OHが、中でも特にEDTPO、DPTA−OH又はDTPAが、プレウロクリシス・カルテラ、スケレトネマ・コスタツム又はシャトネラ・アンティーカに対しては特にEDTPO、DPTA−OH又はDTPAが、中でも特にEDTPO又はDPTA−OHが、ロドモナス・オバリスに対しては特にEDTPO、DPTA−OH又はDTPAが、中でも特にEDTPOが、有効な生長抑制剤になり得る。
【0055】
表3に示される通り、鉄イオン濃度が15μMである場合には、ヘテロシグマ・アカシオに対しては特にEDTPO、DPTA−OH、DTPA、EDTA−OH又はEDTAが、中でも特にEDTPO、DPTA−OH又はDTPAが、スケレトネマ・コスタツムに対しては特にEDTPO、DPTA−OH、DTPA、EDTA−OH又はEDTAが、中でも特にEDTPO又はDTPAが、シャトネラ・アンティーカに対しては特にEDTPO、DPTA−OH又はDTPAが、中でも特にEDTPO又はDTPAが、プレウロクリシス・カルテラに対しては特にEDTPO、DPTA−OH又はDTPAが、中でも特にEDTPOが、クリコスフェラ・ロスコフェンシスに対しては特にEDTPO、DPTA−OH又はDTPAが、中でも特にEDTPO又はDTPAが、有効な生長抑制剤になり得る。
【0056】
【表2】


【0057】
【表3】


【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1a】各植物プランクトンについての経時的な細胞密度の変化における、各種キレート化剤の添加の影響を示す図である。
【図1b】各植物プランクトンについての経時的な細胞密度の変化における、各種キレート化剤の添加の影響を示す図である。
【出願人】 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
【出願日】 平成16年5月14日(2004.5.14)
【代理人】 【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔

【識別番号】100096183
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貞次

【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節

【識別番号】100101904
【弁理士】
【氏名又は名称】島村 直己

【公開番号】 特開2005−325064(P2005−325064A)
【公開日】 平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願番号】 特願2004−145013(P2004−145013)