| 【発明の名称】 |
抜歯体の凍結保存方法、移植方法及び運搬用保存液 |
| 【発明者】 |
【氏名】河田 俊嗣
|
| 【要約】 |
【課題】歯の抜歯、その抜歯された抜歯体の回収、凍結、保存、解凍及び移植に至る各段階を効果的に行って、抜歯体の自家移植を促進する。
【解決手段】被抜歯者の抜歯体を該被抜歯者に自家移植するために凍結保存する方法であって、(1)前記抜歯体を抜歯箇所において運搬用保存液を満たした容器に収容する段階、(2)該抜歯体を収容した容器を凍結保存機関に運搬する段階、(3)凍結保存機関において、搬送された抜歯体を運搬用保存液から凍結保護液中に移して0℃〜-10℃に予備冷却し、ついで-65℃〜-80℃まで緩冷却し、さらに-145℃〜-155℃の保存温度まで急速冷却し、該保存温度で保存する段階を経て実施する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 被抜歯者の抜歯体を該被抜歯者に自家移植するために凍結保存する方法であって、下記の(1)〜(3)に記載された段階を包含することを特徴とする抜歯体の凍結保存方法。 記 (1) 前記抜歯体を抜歯箇所において運搬用保存液を満たした容器に収容する段階、 (2) 該抜歯体を収容した容器を凍結保存機関に運搬する段階、 (3) 凍結保存機関において、搬送された抜歯体を運搬用保存液から凍結保護液中に移して0℃〜-10℃に予備冷却し、ついで-65℃〜-80℃まで緩冷却し、さらに-145℃〜-155℃の保存温度まで急速冷却し、該保存温度で保存する段階。 【請求項2】 予備冷却前に抜歯体の歯根膜培養を行う段階を付加することを特徴とする請求項1に記載の抜歯体の凍結保存方法。 【請求項3】 抜歯体の歯の形、歯冠の状態、歯根の状態、歯根膜の状態をファクターとする評点に基づいて判断し、凍結保存を可とする抜歯体について凍結保存を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の抜歯体の凍結保存方法。 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の方法により凍結保存された抜歯体を下記の(4)〜(5)に記載された段階を経て自家移植する抜歯体の移植方法。 記 (4)治療機関の要請により凍結保存された抜歯体を凍結状態で治療機関まで運搬する段階、 (5)治療機関において運搬された抜歯体を解凍し自家移植する段階。 【請求項5】 請求項1〜3のいずれかに記載の凍結保存された抜歯体を下記の(6)〜(8)に記載された段階を経て自家移植する抜歯体の移植方法。 記 (6)治療機関の要請により、凍結保存された抜歯体を解凍する段階、 (7)解凍された抜歯体を運搬用保存液を満たした容器に収容し治療機関まで運搬する段階、 (8)治療機関において運搬された抜歯体を自家移植する段階。 【請求項6】 凍結保存された抜歯体の解凍後、抜歯体の歯根膜培養を行う段階を付加したことを特徴とする請求項4又は5に記載の抜歯体の移植方法。 【請求項7】 抜歯体の歯の形、歯冠の状態、歯根の状態、歯根膜の状態をファクターとする評点に基づいて判断し、移植を可とする抜歯体について移植を行うことを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の抜歯体の移植方法。 【請求項8】 粘稠性のある液体、微粒子が浮遊した液体又はゲルからなる抜歯体の運搬用保存液。 【請求項9】 歯牙保存液中に0.1〜1.5mass%の寒天を含むことを特徴とする請求項7に記載の抜歯体の運搬用保存液。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、生体から抜歯した歯(抜歯体)を凍結保存し、その凍結保存された抜歯体を必要に応じて解凍し自家移植する抜歯体の凍結保存方法、移植方法及び抜歯体の運搬に適した運搬用保存液に関する。 【背景技術】 【0002】 歯牙の失われた機能を補うためにチタン製インプラント等の人工歯が普及しつつある。これらは顎骨と直接的に結合されているために、繰返しの咀嚼力を受けて結合部がゆるみ人工歯が抜けやすく、また、咬合感覚が劣る等の問題がある。このため、抜歯体を利用した移植が検討されている。 【0003】 例えば、特許文献1には、歯根膜のうちセメント質に結合する組織を除いて抗原性を有する組織を全て除去した抜歯体をもとに、その歯根管に抽出コラーゲンを充填させ、さらに歯牙表面に抽出コラーゲン膜を備えて形成した人工歯の自家又は他家移植が提案されている。これに対し、抜歯時にできるだけ歯根膜を保持させた抜歯体を、あるいは欠損した歯根膜の再生を行った後の抜歯体を移植又は一定期間凍結保存後移植する方法も試験・研究機関で試みられている。 【0004】 【特許文献1】特開2002-11023号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかし、抜歯体の移植の結果の良否は歯根膜の存在の程度に左右されるものであり、特許文献1に提案された方法では必ずしも適切な移植を行うことができないという問題がある。一方、歯根膜を保持した抜歯体を移植する方法は、試験・研究機関で試みられている程度で組織的に行われていないので、抜歯体の再移植を促進させる管理体制が求められている。また、医療廃棄物として処分されている矯正治療で抜歯された多くの小臼歯便宜抜歯や口腔外科で抜歯された智歯の利用の促進を図る管理体制が求められている。 【0006】 本発明はかかる従来の問題点に鑑み、主として歯の抜歯及び移植を行う治療機関と抜歯体の回収、凍結、保存、解凍を行う凍結保存機関とを有機的に機能させ、歯の抜歯、その抜歯された抜歯体の回収、凍結、保存、解凍及び移植に至る各段階を効果的に行って、抜歯体の自家移植を促進する方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明に係る抜歯体の凍結保存方法は、被抜歯者の抜歯体を該被抜歯者に自家移植するために凍結保存する方法であって、下記の(1)〜(3)に記載された段階を包含してなる。すなわち、(1)前記抜歯体を抜歯箇所において運搬用保存液を満たした容器に収容する段階、(2)該抜歯体を収容した容器を凍結保存機関に運搬する段階、(3)凍結保存機関において、搬送された抜歯体を運搬用保存液から凍結保護液中に移して0℃〜-10℃に予備冷却し、ついで-65℃〜-80℃まで緩冷却し、さらに-145℃〜-155℃の保存温度まで急速冷却し、該保存温度で保存する段階を包含してなる。 【0008】 上記抜歯体の凍結保存方法においては、予備冷却前に抜歯体の歯根膜培養を行う段階を付加するのが好ましく、抜歯体の歯の形、歯冠の状態、歯根の状態、歯根膜の状態をファクターとする評点に基づいて判断し、凍結保存を可とする抜歯体について凍結保存を行うのが好ましい。 【0009】 また、本発明に係る抜歯体の移植方法は、上記いずれかの方法により凍結保存された抜歯体を下記の(4)〜(5)に記載された段階を経て実施される。すなわち、(4)治療機関の要請により凍結保存された抜歯体を凍結状態で治療機関まで運搬する段階、(5)治療機関において運搬された抜歯体を解凍し自家移植する段階を経て実施される。 【0010】 または、(6)治療機関の要請により、凍結保存された抜歯体を解凍する段階、(7)解凍された抜歯体を運搬用保存液を満たした容器に収容し治療機関まで運搬する段階、(8)治療機関において運搬された抜歯体を自家移植する段階を経て実施されるものであってもよい。 【0011】 上記抜歯体の移植方法においては、凍結保存された抜歯体の解凍後、抜歯体の歯根膜培養を行う段階を付加するのが好ましく、抜歯体の歯の形、歯冠の状態、歯根の状態、歯根膜の状態をファクターとする評点に基づいて判断し、凍結保存を可とする抜歯体について凍結保存を行うのが好ましい。 【0012】 上記抜歯体の運搬においては、粘稠性のある液体、微粒子が浮遊した液体又はゲルからなる抜歯体の運搬用保存液を用いるのがよく、なかでも、歯牙保存液中に0.1〜1.5mass%の寒天を含む抜歯体の運搬用保存液を用いるのが好ましい。 【発明の効果】 【0013】 本発明に係る抜歯体の凍結保存方法及び移植方法によれば、歯の抜歯、その抜歯された抜歯体の回収、凍結、保存、解凍及び移植に至る各段階を、主として歯の抜歯及び移植を行う治療機関と抜歯体の回収、凍結、保存、解凍を行う凍結保存機関との間で有機的・効果的に行うことができ、抜歯体の自家移植を促進することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0014】 本発明に係る抜歯体の凍結保存方法は、被抜歯者の抜歯体を該被抜歯者に自家移植するために凍結保存する方法であって、(1)前記抜歯体を抜歯箇所において運搬用保存液を満たした容器に収容する段階、(2)該抜歯体を収容した容器を凍結保存機関に運搬する段階、(3)凍結保存機関において、搬送された抜歯体を運搬用保存液から凍結保護液中に移して0℃〜-10℃に予備冷却し、ついで-65℃〜-80℃まで緩冷却し、さらに-145℃〜-155℃の保存温度まで急速冷却し、該保存温度で保存する段階を包含してなる。 【0015】 この方法の典型例は、図1に示すように治療機関と凍結保存機関の間でなされる。一般には抜歯は治療機関でなされる。抜歯に当たっては歯根膜の損傷を少なくするため、エレベータを使わず抜歯かん子で歯頚部を保持して頬側に揺らして亜脱臼させて行うのが好ましい。 【0016】 抜歯された歯(抜歯体A)は、治療機関で運搬用保存液を入れた容器に浸し、その容器に収容して凍結保存機関まで運搬される。運搬用保存液は歯根膜の損傷を防止するため、粘稠性のある液体、微粒子が浮遊した液体又はゲルからなる運搬用保存液に抜歯体Aを浸して運搬するのがよい。例えば、公知の歯牙保存液(ネオ製薬工業株式会社製商標ネオ)に0.1〜1.5mass%の寒天を含むものがよい。特に0.1〜0.5mass%の寒天を含むものが好ましい。 【0017】 寒天濃度は、0.1mass%で歯根膜の損傷が50%未満になり、寒天濃度が0.1mass%を超え0.5mass%までは寒天濃度の増加に従って歯根膜の損傷が減少する。しかしそれ以上は歯根膜の損傷度の変化がなくなり、寒天濃度が1.5mass%を超えると歯根膜の損傷度がわずかに増加する。歯牙保存液に加える寒天はできるだけ少ない方が望ましから、寒天濃度は0.1〜0.5mass%が好ましい。なお、歯根膜の損傷度は、運搬用保存液100mlを満たした200mlの容器に抜歯体を浸し、ロータリーシェーカー(株式会社井内盛栄堂社製型式RS―2)で160rpm、60min振動後、アルカリフォスファターゼ活性の差異より求めた。 【0018】 運搬され凍結保存機関に持ち込まれた抜歯体Aは、リスク評価表に基づいて以降の手続きが進められる。リスク評価表は、表1に示す通りであり、歯の形、歯冠の状態、歯根の状態及び歯根膜の状態からリスク評価値を算出し、その合計点(リスク度)を求めるものである。リスク度が0〜1のものは移植に問題なし(Aグループ)と判断して次の凍結段階に進める。リスク度が2〜6のものは移植に危険がある(Bグループ)と判断して被抜歯者との協議に回し、その結果によって次の凍結段階に進める。リスク度が7〜9であれば移植には適さない(Cグループ)と判断して被抜歯者の了解のもと抜歯体Aは廃棄される。なお、凍結段階に進むことが決定した場合は、被抜歯者にティースバンクカードが発行される。 【0019】 【表1】
【0020】 凍結保存は、運搬用保存液を洗浄した後、抜歯体Aを凍結保護液に浸して0℃〜-10℃に予備冷却し、ついで-65℃〜-80℃まで緩冷却し、さらに-145℃〜-155℃の保存温度まで急速冷却し、該保存温度で保存する段階を経て行われる。 【0021】 上記において、0℃〜-10℃まで予備冷却を行い-65℃〜-80℃まで緩冷却するのは、0℃以下、特に温度-15〜-60℃の範囲で細胞内水分が脱水し細胞内氷晶が形成されて細胞が破壊されるのを防止するためである。緩冷却は1〜0.3℃/minの速度で冷却するのが好ましい。なお、この緩冷却を均一に行うにはマイクロウェーブを照射するのが好ましい。 【0022】 緩冷却した抜歯体は、-145℃〜-155℃の保存温度まで早急に冷却するのがよい。これにより、細胞内外での微細氷結晶の成長を防止し長期保存が可能になる。この冷却速度は、冷却設備の能力、コスト等を考慮して40〜60℃/minであるのが好ましい。 【0023】 上記一連の凍結操作はロット管理によって行われる。例えば、抜歯体100本ロットで1本のテストピースを共に凍結し、一連の凍結操作後テストピースを取り出して顕微鏡で観察し凍結方法の良否を判断する。良と判断されたものを保存する。 【0024】 リスク評価表でBグループに区分され、歯根膜の再生を行った上で凍結保存すると判断されたものは以下の歯根膜培養を行う。歯根膜の培養は、抜歯体を吸収性人工骨(例えば、オリンパス社製商標オスフェリオン)に植立して行う。この場合、エナメルマトリックスタンパク質成分(例えばビオラ社製商標エムドゲイン)を塗布するのが好ましい。なお、歯根膜の再生状態は、ヨード染色法で確認することができる。 【0025】 凍結保存に用いられる凍結保護液は公知のものでよい。例えば、DMSO(ジメチルスルフォキサイド)1〜30mass%を上記歯牙保存液に混ぜたもの、または同一人の血清(0.4mass%)、グリセリン液(10mass%)含有のPBS(燐酸緩衝液)でもよい。なお、凍結保護液に酸化防止剤を添加するのが好ましい。抜歯体の酸化防止は、凍結保存容器中に窒素ガスを封入することによっても可能である。 【0026】 以上抜歯体Aの凍結保存について説明したが、抜歯体の移植の段階は治療機関から凍結保存機関への凍結抜歯体Aの支給要請によって始まる。この典型例を図2に示す。まず、治療機関からの要請に基づき凍結保存された抜歯体Aは凍結状態で治療機関まで運搬され、ついで治療機関において抜歯体Aを解凍し自家移植に供される。なお、抜歯体Aの特定は移植希望者が有するティースバンクカードに基づいてなされる。 【0027】 抜歯体Aの解凍は、歯根膜の損傷を防ぐため人の体温以下の恒温槽で除々に行う。解凍温度が低いほど歯根膜の損傷は少ない。歯根膜の損傷を少なくし、しかも早く解凍するには13〜18℃の水温中で解凍するのが好ましい。 【0028】 抜歯体Aの解凍は多くの場合上記段階を経て移植が行われる。しかし、解凍用の設備がない治療機関、また、凍結保存機関での解凍を要望する治療機関もあるので、凍結保存機関で解凍を行い、これを治療機関に運搬支給する場合がある。その運搬には上記の運搬用保存液が利用される。なお、凍結保存中に抜歯体Aに割れ等の損傷を生じる場合があるので、リスク評価表により再度チェックをした上で抜歯体Aは治療機関に運搬される。この再度のチェック結果により歯根膜培養が行われる場合もある。 【図面の簡単な説明】 【0029】 【図1】抜歯体の凍結保存方法の手順説明図である。 【図2】抜歯体の移植方法の手順説明図である。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】302013195 【氏名又は名称】河田 俊嗣
|
| 【出願日】 |
平成16年2月27日(2004.2.27) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2005−239690(P2005−239690A) |
| 【公開日】 |
平成17年9月8日(2005.9.8) |
| 【出願番号】 |
特願2004−55382(P2004−55382) |
|