| 【発明の名称】 |
農園芸用殺菌剤組成物 |
| 【発明者】 |
【氏名】渡辺 哲 【住所又は居所】東京都台東区池之端1丁目4番26号 クミアイ化学工業株式会社内
【氏名】三浦 一郎 【住所又は居所】東京都台東区池之端1丁目4番26号 クミアイ化学工業株式会社内
【氏名】永山 孝三 【住所又は居所】東京都台東区池之端1丁目4番26号 クミアイ化学工業株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】
【解決手段】農園芸用殺菌性化合物から選択される1種または2種以上の殺菌性化合物、及びトリコデルマ属に属する糸状菌を含有する農園芸用殺菌剤組成物が提供される。トリコデルマ属に属する糸状菌としては、トリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1菌株(FERM P−16510)、同SKT−2菌株(FERM P−16511)、同SKT−3菌株(FERM P−17021)が例示され、その菌体及び/又は胞子が湿潤体又は乾燥体で使用される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 農園芸用殺菌化合物から選択される1種または2種以上の化学殺菌剤、及び、トリコデルマ(Trichoderma)属に属する糸状菌を含有してなること、を特徴とする農園芸用殺菌剤組成物。 【請求項2】 トリコデルマ属に属する糸状菌が、トリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)である請求項1記載の農園芸用殺菌剤組成物。 【請求項3】 トリコデルマ属に属する糸状菌が、トリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1菌株(FERM P−16510)である請求項1記載の農園芸用殺菌剤組成物。 【請求項4】 トリコデルマ属に属する糸状菌が、トリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−2菌株(FERM P−16511)である請求項1記載の農園芸用殺菌剤組成物。 【請求項5】 トリコデルマ属に属する糸状菌が、トリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−3菌株(FERM P−17021)である請求項1記載の農園芸用殺菌剤組成物。 【請求項6】 トリコデルマ属に属する糸状菌が培養菌体又は胞子体であること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の農園芸用殺菌剤組成物。 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項に記載の農園芸用殺菌剤組成物を施用すること、を特徴とする植物病害防除方法。 【請求項8】 請求項1〜6のいずれか1項に記載の農園芸用殺菌剤組成物を使用するに際し、化学殺菌剤及びトリコデルマ属に属する糸状菌を同時に又は別々に施用すること、を特徴とする植物病害防除方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、農園芸用殺菌剤に関し、更に詳しくは、トリコデルマ属に属する糸状菌と化学合成殺菌剤を含有する、病害防除作用に優れた農園芸用殺菌剤組成物に関する。 【0002】 【従来の技術】 植物病害防除法としては、輪作や太陽熱を利用した耕種的あるいは物理的防除、化学農薬を用いる化学的防除、病害抵抗性品種の利用による防除、弱毒ウィルスや病原菌に対する拮抗微生物を用いた生物的防除等が挙げられる。これらのうち、化学農薬、特に有機合成殺菌剤の開発研究は近年に至るまで目覚ましく発達し、効力が高く様々な作用を有する多数の薬剤が次々と開発され、更には様々な施用法も開発された。これらを用いた化学的防除法は植物の病害防除並びに防除作業の省力化等に大きく貢献し、広く普及している。 【0003】 しかしながら、近年のいわゆる薬剤耐性菌の出現により、化学的防除法による防除効果が低下するという現象が一部作物、病害で認められ、問題となってきている。また作物の指定産地化が進むにつれて連作を余儀なくされる結果、化学農薬では難防除とされる土壌伝染性病害の発生も各地で深刻な問題となっている。さらに、化学農薬を大量に何度も繰り返して用いる方法は、自然界に存在しない化学物質を環境中に放出するため、動植物に直接毒性を有する薬剤のみならず、そうでない薬剤であっても、環境へ悪影響を引き起こすことが懸念されている。 【0004】 以上のように化学農薬による病害防除は耐性菌の出現によって防除効果が低下する可能性が高く、その場合新たなる殺菌剤の開発が必要となってしまう。また化学農薬では難防除とされる病害防除に対しては、代替手段あるいは他の方法を併用する手段を講じなくてはならない。さらに、環境に対してより安全性の高い防除技術の確立も望まれている。 【0005】 近年このような背景のもと、化学農薬の使用に偏った防除方法を見直し、化学農薬からより環境への安全性が高いと想定される微生物を利用した生物防除(いわゆる生物農薬)方法が提案され、その一部は実用化されている。例えば、バチルス属細菌を用いる生物殺虫剤が一部実用化されており、具体的には、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)を用いる殺虫剤が市販されている。(例えば、非特許文献1参照)。 【0006】 しかしながら、本来、化学農薬は害虫、病害菌、雑草等の生物を殺滅するものであるから、化学農薬と生物農薬として用いる生物を併用すれば、通常の場合、病虫害を防除する前に、化学農薬によって生物農薬用生物自体が死滅してしまうものである。したがって、化学農薬と生物農薬の混用ないし併用、つまり、化学合成した農薬と拮抗微生物を共存させることはきわめて困難ないし不可能といっても過言ではないことは、当業者ならずとも容易に理解できるところである。ましてや、殺菌剤はまさに微生物を死滅させるものであるから、化学合成殺菌剤と拮抗微生物(病原菌と拮抗する微生物)とが共存することは本来あり得ない程度に困難であり、両者併用による病害菌の防除は著しく困難である。 【0007】 本発明は、このような技術の現状にもかかわらず、あえて両者の併用について研究した結果、遂に、化学合成殺菌剤と特定の糸状菌の併用による病害菌の防除に成功しただけでなく、相加効果をこえた相乗的な殺菌効果を得るのにはじめて成功したものである。したがって、本発明は技術レベルをはるかにこえたものであって、充分に特許要件を具備するものである。 【0008】 なお、合成殺かび剤と微生物との併用による殺かび組成物が提案されているが(例えば、特許文献1参照)、使用する微生物が細菌、しかもバチルス・サチリス(Bacillus subtilis)という特定の細菌でありそれもその内性胞子であって、本発明で使用する糸状菌、しかもトリコデルマ属菌という特定の糸状菌とは全く相違している。本発明は、細菌とは全く異なる糸状菌、それもトリコデルマ属菌というきわめて特定された糸状菌と化学合成殺菌剤と併用し、しかも相加効果をはるかにこえた相乗効果を奏するものであるが、このような農園芸用殺菌剤組成物は、従来未知の新規物質である。すなわち、本発明に用いられるトリコデルマ属に属する糸状菌と農園芸用殺菌化合物の混合剤については、従来知られておらず、新規である。 【0009】 【特許文献1】 特表平6−511258号公報 【0010】 【非特許文献1】 「三共農薬手帳 第30版」、昭和56年6月、三共(株)、p.126〜127。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、上記観点からなされたものであり、化学合成殺菌剤の使用量が少なくても殺菌効果が大きく、環境に対してより安全性の高い病害防除作用に優れた農園芸用殺菌剤組成物を提供することを目的とする。 【0012】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは、上記課題を解決するために各方面から検討の結果、当業者ならずともその共存、併用がきわめて困難ないし不可能であることすら予測される合成殺菌剤と拮抗微生物との併用にあえて着目し、広範なスクリーニングを行い、鋭意研究を重ねた結果、トリコデルマ属に属する糸状菌と化学合成殺菌剤との組合せにより、上記の課題が解決されることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。 【0013】 すなわち、本発明は、トリコデルマ属に属する糸状菌と化学合成殺菌剤とを併用することにより、植物病害を防除することを基本的技術思想とするものであって、該糸状菌の1種又は2種以上、あるいは同種であっても同種に属する菌株の1又は2以上、及び、化学殺菌剤の1種又は2種以上を併用するものである。 【0014】 本発明の態様を例示すると、次のとおりである。 【0015】 (1)農園芸用殺菌化合物から選択される1種又は2種以上の化学殺菌剤、及び、トリコデルマ属に属する糸状菌を含有することを特徴とする農園芸用殺菌剤組成物。 【0016】 (2)化学殺菌剤として、下記する化学合成殺菌化合物から選択される1種又は2種以上を含有してなる上記(1)記載の農園芸用殺菌剤組成物: 化学合成殺菌化合物、すなわち無機銅化合物、例えば(A)塩基性硫酸銅、(B)無水硫酸銅、(C)水酸化第二銅、(D)塩基性塩化銅等、有機銅化合物、例えば(E)有機銅、(F)ノニルフェノールスルホン酸銅等、無機硫黄化合物、例えば(G)硫黄、(H)全硫化態硫黄等、有機硫黄化合物、例えば(I)ジネブ、(J)マンネブ、(K)プロピネブ、(L)チアジアジン、(M)チウラム、(N)ポリカーバメート等、アニリノピリミジン系化合物、例えば(O)シプロジニル、(P)ピリメタニル、(Q)メパニピリム等、フェニルピロール系化合物、例えば(R)フルジオキソニル等、有機塩素系化合物、例えば(S)クロロタロニル、(T)キャプタン、(U)トリアジン、(V)フルアジナム、(W)スルフェン酸、(X)フサライド等、炭酸水素塩剤、例えば(Y)炭酸水素ナトリウム、(Z)炭酸水素カリウム等。 【0017】 有機リン系化合物、例えば(AA)EDDP、(AB)ホセチル、(AC)トルクロホスメチル、(AD)IBP等、ベンズイミダゾール系化合物、例えば(AE)カルベンダジム、(AF)チオファネートメチル、(AG)チアベンダゾール、(AH)ベノミル、(Al)フベリダゾール等、ジカルボキシイミド系化合物、例えば(AJ)イプロジオン、(AK)プロシミドン、(AL)ビンクロゾリン等、アゾール系化合物、例えば(AM)フェンブコナゾール、(AN)シメコナゾール、(AO)ジクロブトラゾー−ル、(AP)トリチコナゾール、(AQ)イプコナゾール、(AR)フルコナゾール、(AS)ミクロブタニル、(AT)ペンコナゾール、(AU)ビテルタノール、(AV)ブロムコナゾール、(AW)オキスポコナゾール、(AX)シプロコナゾール、(AY)ジフェノコナゾール、(AZ)ジニコナゾール、(BA)エポキシコナゾール、(BB)フェンブコナゾール、(BC)フルキンコナゾール、(BD)フルシラゾール、(BE)フルトリアホール、(BF)ヘキサコナゾール、(BG)イミベンコナゾール、(BH)メトコナゾール、(BI)プロピコナゾール、(BJ)シプコナゾール、(BK)テブコナゾール、(BL)テトラコナゾール、(BM)トリアジメホン、(BN)トリアジメノール等。 【0018】 イミダゾール系化合物、例えば(BO)トリフルミゾール、(BP)プロクロラズ、(BQ)イマザリル、(BR)ペフラゾエート等、ピペラジン系化合物、例えば(BS)トリホリン等、モルホリン系化合物、例えば(BT)フェンプロピモルフ、(BU)トリデモルフ、(BV)フェンプロピジン等、ヒドロキシピリミジン系化合物、例えば(BW)エチリモル、(BX)ジメチリモル等、グアニジン化合物、例えば(BY)イミノクタジン酢酸塩、(BZ)イミノクタジンアルベシル酸塩。 【0019】 (CA)グアザチン等、酸アミド系化合物、例えば(CB)オキシカルボキシン等、ベンゾアニリド系化合物、例えば(CC)メプロニル、(CD)ジクロメジン、(CE)フルトラニル、(CF)ペンシクロン(CG)フラメトピル、(CH)チフルザミド等、アシルアラニン系化合物、例えば、(CI)オキサジキシル、(CJ)メタラキシル、メトキシアクリレート系化合物、例えば(CK)アゾキシストロビン、(CL)クレソキシムメチル、(CM)メトミノストロビン、(CN)トリフロキシストロビン、(CO)ピコキシストロビン、(CP)ピラクロストロビン、(CQ)オリサストロビン等、キノキサリン系化合物、例えば(CR)キノメチオネート等、ヒドロキシアニリド系化合物、例えば(CS)フェンヘキサミド等、シアノアセトアミド系化合物、例えば(CT)シモキサニル等、シアノイミダゾール系化合物、例えば(CU)シアゾファミド等。 【0020】 その他(CV)ファモキサドン、(CW)スピロキサミン、(CX)トリアゾキシド、(CY)ピラゾホス、(CZ)フルオルイミド、(DA)ジメトモルフ、(DB)イプロバリカルブ、(DC)フェナミドン、(DD)エタボキサム、(DE)シフルフェナミド、(DF)ジチアノン、(DG)カルプロパミド、(DH)プロベナゾール、(DI)メタルスホカルブ、(DJ)ピロキロン、(DK)ヒドロキシイソキサゾール、(DL)トリシクラゾール、(DM)ジフルメトリム、(DN)フェナジンキシド、(DO)イソプロチオラン、(DP)オキソリニック酸、(DQ)アシベンゾラル−S−メチル、(DR)キノキシフェン、例えば(DS)ポリオキシン、(DT)カスガマイシン、(DU)バリダマイシン、(DV)ストレプトマイシン硫酸塩等、抗生物質。 【0021】 (3)トリコデルマ属に属する糸状菌が、トリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)である前記(3)記載の農園芸用殺菌剤組成物。 【0022】 (4)トリコデルマ属に属する糸状菌が、トリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1菌株(FERM P−16510)である前記(3)記載の農園芸用殺菌剤組成物。 【0023】 (5)トリコデルマ属に属する糸状菌が、トリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−2菌株(FERM P−16511)である前記(3)記載の農園芸用殺菌剤組成物。 【0024】 (6)トリコデルマ属に属する糸状菌が、トリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−3菌株(FERM P−17021)である前記(3)記載の農園芸用殺菌剤組成物。 【0025】 (7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の農園芸用殺菌剤組成物を使用する植物病害防除方法。 【0026】 【発明の実施の形態】 以下、本発明について詳細に説明する。 【0027】 <1>トリコデルマ属に属する糸状菌 本発明に係る農園芸用殺菌剤組成物は、トリコデルマ属に属する糸状菌を有効成分のひとつとして含有するものである。本発明に用いるトリコデルマ属に属する糸状菌としては、トリコデルマ属に属する糸状菌であれば特に制限されないが、好ましくは植物病原菌と拮抗するトリコデルマ属に属する糸状菌が挙げられ、その中でもより好ましくは、トリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1菌株(FERM P−16510)、トリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−2菌株(FERM P−16511)、及び前記トリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1菌株(FERM P−16510)の変異を誘発させて得られた殺菌剤ベノミル高度耐性変異菌であるトリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−3菌株(FERM P−17021)が例示される。 【0028】 これらの菌株は、本発明者らが、各種植物の根圏、根面あるいは土壌より非常に多数のトリコデルマ属に属する糸状菌を分離し、これらの糸状菌について、各種作物病害に対する防除活性について検討し、その結果、芝(ノシバ)根圏から分離した菌株(SKT−1)、及びサラダナ根圏から分離した菌株(SKT−2)が非常にすぐれた作物病害防除作用を有するという有用な新知見を得、更に研究の結果、植物病原菌と拮抗するトリコデルマ属に属する新規菌株であることを見出したものである。 【0029】 このようにして新たに分離した2菌株は、後記する菌学的性質を有することから、いずれもトリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)に属するものと認められたが、非常にすぐれた作物病害防除作用を有する点で従来既知の菌株とは明らかに区別することができるので、これらを新菌株と同定し、前者の菌株(SKT−1)をトリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1と命名し、後者の菌株(SKT−2)をトリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−2と命名した。また、SKT−1に変異を誘発させて得られた殺菌剤ベノミル高度耐性変異菌(SKT−3)についても、親株のSKT−1と同等の非常にすぐれた病害防除作用を有しており、これをトリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−3と命名したものである。 【0030】 本発明のSKT−1菌株、SKT−2菌株及びSKT−3菌株は現在、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにおいて、トリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1菌株(FERM P−16510)、トリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−2菌株(FERM P−16511)及びトリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−3菌株(FERM P−17021)として寄託されている。 【0031】 トリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1菌株、トリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−2菌株及びトリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−3菌株は、以下の性質を有する。 【0032】 (1)培地上での性質 ポテトデキストロース培地(PDA:ジャガイモ200.0g、グルコース20.0g、寒天20.0g、蒸留水1000ml)上及び2%麦芽エキス培地(麦芽エキス20.0g、寒天20.0g、蒸留水1000ml)上での生育は良好で、菌糸伸長は早い。はじめ気生菌糸少なく白色、しだいに羊毛状の気生菌糸を生じ、分生子形成に従って緑色〜暗緑色となる。 【0033】 (2)形態的性質 分生子柄は気生菌糸より生じ、多くは綿毛状にかたまる。輪生状或るいは不規則に分枝、各分枝は下方のものほど伸びて分枝をくりかえし、全体としては円すい形を呈する。各分枝はほぼ直角に分かれ先端はフィアライドとなる。フィアライドは分生子柄先端に2〜4個(平均3個)が規則正しく対生または輪生し、フィアライド先端は細くなる。分生子はフィアライド頂端に塊状に形成される。球形〜亜球形で表面は平滑であり、SKT−1菌株、SKT−3菌株は2.5〜4.0×2.5〜3.5μm、SKT−2菌株は3.0〜4.0×2.7〜3.5μmである。 【0034】 (3)生理学的性質 生育温度は10〜35℃であり、最適温度は25℃付近である。pH4.0〜8.0の間で生育可能であり、最適pHは5.0〜7.0である。 【0035】 本発明に係るトリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1菌株(FERM P−16510)、SKT−2菌株(FERM P−16511)又はSKT−3菌株(FERM P−17021)は、いずれも作物に対して病原性を示すことがないので(例えば、その分生胞子懸濁液に24時間浸漬したイネ種子を播種しても何らの病原性も認められなかった)、自由に殺菌防除剤の有効成分として使用することができる。 【0036】 本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、上記のように植物病害を防除できるトリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1菌株(FERM P−16510)、トリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−2菌株(FERM P−16511)及びトリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−3菌株(FERM P−17021)を含有するものである。本発明の植物病害防除剤においては、トリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1菌株(FERM P−16510)、トリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−2菌株(FERM P−16511)及びトリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−3菌株(FERM P−17021)を単体で使用することもできるが、混合して用いることも可能である。また同様に変異体を用いることも可能である。変異体は、上記菌株の糸状菌学的特性を有し、植物病害防除作用を有するものであり、自然突然変異株、紫外線や化学変異剤を用いての突然変異株、また細胞融合株および遺伝子組み替え株も利用が可能である。 【0037】 本発明に用いる菌体は、上記トリコデルマ属に属する糸状菌の培養物から得られる。トリコデルマ属に属する糸状菌の培養は、例えば往復式振とう培養、ジャーファンメーター培養、培養タンク等の液体培養や固体培養等、トリコデルマ属に属する糸状菌の通常の培養方法に準じて行うことができる。例えば麦芽エキス培地など一般的な培地の他、グルコース、ペプトン、イーストエキスを含む培地などが挙げられる。また液体培地以外に寒天入りの斜面培地および平板培地等の固体培地を用いてもよい。培養によってトリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1菌株(FERM P−16510)、トリコデルマアトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−2菌株(FERM P−16511)及びトリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−3菌株(FERM P−17021)を増殖させて、所望の菌体量を得ることができる。 【0038】 培地の炭素源としては、上記菌株が同化しうるあらゆるものが利用可能である。例えばグルコース、ガラクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、麦芽エキス澱粉加水分解物などの糖の外に、トリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1菌株(FERM P−16510)、トリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−2菌株(FERM P−16511)及びトリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−3菌株(FERM P−17021)が利用し得る各種の合成または天然炭素源をあげることができる。培地の窒素源として、同様に、ペプトン、肉エキス、酵母エキスなどの有機窒素含有物をはじめ、該菌株が利用し得る各種の合成又は天然物も利用可能である。微生物培養の常法に従って、食塩、リン酸塩などの無機塩類、カルシウム、マグネシウム、鉄などの金属の塩類、ビタミン、アミノ酸などの微量栄養源も必要に応じて添加することができる。 【0039】 培養は、振とう培養、通気培養、静置培養などの好気的条件下で行うことができる。培養温度は20〜30℃、好ましくは25〜30℃、pHは4〜8、好ましくは5〜7、培養期間は1〜14日、好ましくは3〜10日が適当である。 【0040】 上記のようにして得られたトリコデルマ属に属する糸状菌の培養物より菌体を分離する方法としては、膜分離、遠心分離、濾過分離等の方法を用いて行うことができる。得られた芽胞画分は、そのままある程度の水分を含んだ状態で本発明の農園芸用殺菌剤組成物に用いることも、また、必要に応じて凍結乾燥、スプレードライ等の乾燥法を用いて乾燥物として本発明の農園芸用殺菌剤組成物に用いることが可能である 【0041】 上記したように、本発明において、トリコデルマ属に属する糸状菌としては、分離した菌体自体、分生胞子等の胞子体自体(いずれも、乾燥又は湿潤状態を問わない)が使用できるほか、これらの含有物も使用できる。含有物としては、糸状菌の懸濁液、ないし培養液、又はその処理物(濃縮物、乳化物、ペースト化物、乾燥物、希釈物等)が例示される。 【0042】 <2>化学合成殺菌剤 本発明において使用する化学合成殺菌剤は、トリコデルマ属に属する糸状菌の菌体、芽胞、それらの含有物(本発明において、糸状菌は、菌体、芽胞(分生胞子、胞子)、それらの含有物を広く包含するものである。)との併用で、相乗的な殺菌効果を奏するものである。 【0043】 農園芸用殺菌化合物は市販されているか、または農園芸用殺菌剤として知られた化合物であり、これらの化合物は日本植物防疫協会発行の農薬ハンドブック(2002年)、全国農業協同組合連合会発行のクミアイ農薬総覧(2002年)及び同連合会発行のSHIBUYA INDEX(2002年)などで知られる。 【0044】 <3>農園芸用殺菌剤組成物 本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、上記トリコデルマ属に属する糸状菌及び上記化学合成殺菌剤をそれぞれ1種または2種以上含有するものである。 【0045】 本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、通常の微生物製剤の製造方法に従って、上記トリコデルマ属に属する糸状菌の菌体及び上記化学合成殺菌剤を必要に応じて各種任意成分と共に、粉剤、粒剤、水和剤、乳剤、液剤、フロアブル剤、塗布剤等に製剤して使用することができる。 【0046】 さらに、本発明による植物病害防除剤においてトリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1菌株(FERM P−16510)、トリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−2菌株(FERMP−16511)及びトリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−3菌株(FERM P−17021)は、菌体または培養物を単独で用いるほか、不活性な液体または固体の担体で希釈し、必要に応じて界面活性剤、その他の補助剤を加えた薬剤として用いてもよい。具体的な製剤例としては、粒剤、粉剤、水和剤、懸濁製剤、乳剤等の剤型等があげられる。 【0047】 好ましい担体の例としては、タルク、ベントナイト、クレー、カオリン、珪藻土、ホワイトカーボン、バーミキュライト、消石灰、珪砂、硫安、尿素、多孔質などの固体担体、水、イソプロピルアルコール、キシレン、シクロヘキサノン、メチルナフタレン、アルキレングリコール、などの液体担体等があげられる。界面活性剤および分散剤としては、例えばジナフチルメタンスルホン酸塩、アルコール硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシエチレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノアルキレート等があげられる。補助剤としては、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、アラビアゴム、キサンタンガム等、保護剤としてはスキムミルク、pH緩衝剤等があげられる。この場合、トリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−1菌株(FERM P−16510)、トリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−2菌株(FERM P−16511)及びトリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)SKT−3菌株(FERM P−17021)および/またはその培養物の量、さらには適用時期および適用量は上記生菌の場合に準じて適宜決定することができる。 【0048】 このようにして得られる本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、製剤の態様によらず長期間の保存が可能で、例えば、水和剤として48月間室温にて保存した後にも、化学合成殺菌剤無添加のものと同等の防除価が得られる。 【0049】 本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、施用形態により、藻菌類(Oomycetes)、子のう菌類(Ascomycetes)、担子菌類(Basidiomycetes)、及び不完全菌類(Deuteromycetes)に属する菌類、および糸状菌類に起因する植物の病害を防除することができる。 【0050】 本発明の農園芸用殺菌剤組成物が防除することのできる植物の病原菌として、具体的にはシュードペロノスポラ(Pseudoperonospora)属菌、例えばキュウリベと病菌(Pseudoperonospora cubensis)、ベンチュリア(Venturia)属菌、例えばリンゴ黒星病菌(Venturia inaequalis)、エリシフェ(Erysiphe)属菌、例えばコムギうどんこ病菌(Erysiphe graminis)、ピリキュラリア(Pyricularia)属菌、例えばイネいもち病菌(Pyricularia oryzae)、ボトリチス(Botrytis)属菌、例えばキュウリ灰色かび病菌(Botrytis cinerea)、リゾクトニア(Rhizoctonia)属菌、例えばイネ紋枯病菌(Bhizoctonia solani)、クラドスポリウム(Cladosporium)属菌、例えばトマト葉かび病菌(Cladosporium fulvum)、コレトトリカム(Colletotrichum)属菌、例えばイチゴ炭そ病菌(Colletotrichum fragariae)、パクシニア(Puccinia)属菌、例えばコムギ赤さび病菌(Puccinia recondita)、セプトリア(Septoria)属菌、例えばコムギふ枯病菌(Septoria nodorum)、スクレロティニア(Sclerotinia)属菌、例えばキュウリ菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)、ピシウム(Pythium)属菌、例えばキュウリ苗立枯病菌(Pythium debaryanum Hesse)、ゲウマノマイセス(Gaeumannomyces)属菌、例えばコムギ立枯病菌(Gaeumannomyces graminis)、また糸状菌として、バークホルデリア(Burkholderia)、例えばイネ苗立枯糸状菌病(Burkholderia plantarii)などをあげることができるが、本発明はこれらの例により限定されるものではない。 【0051】 <4>本発明の農園芸用殺菌剤組成物の施用方法 本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、そのまま直接施用するか、あるいは水などで希釈して施用することができる。植物病害防除剤としての施用方法は、特に限定されず、例えば、直接植物に散布する方法、土壌に散布する方法、植物や土壌に添加する水や肥料に添加する方法などがあげられる。その他、製剤の施用量は、対象病害、対象作物、施用方法、発生傾向、被害の程度、環境条件、使用する剤型などによって変動するので、適宜調整されることが好ましい。 【0052】 また、栽培植物への農園芸用殺菌剤組成物の施用に際して、殺虫剤、殺線虫剤、除草剤、植物生長調節剤、肥料、土壌改良資材等を混合施用、交互施用、または同時施用することも可能である。 【0053】 本発明の農園芸用殺菌剤組成物の施用量は、病害の種類、適用植物の種類、殺菌剤組成物の剤型等によって異なるため、一概に規定できないが、例えば液剤の農園芸用殺菌剤組成物を地上散布する場合には、菌体濃度として105〜1010cfu(コロニー形成単位)/mlであり、好ましくは106〜109cfu/mlである。また施用量は10アールあたり液剤の農園芸用殺菌剤組成物を0.5〜1000リットル施用するのが好ましい。 【0054】 本発明を実施するには、通常は、上記した農園芸用殺菌剤組成物を施用するが、つまり化学殺菌剤とトリコデルマ属糸状菌とを同時に施用するが、所望するのであれば、これらを別々に施用することが可能であるし、一部の化学殺菌剤とトリコデルマ属糸状菌を同時に施用した後に残りの化学殺菌剤を施用したり、あるいはその逆の施用も可能である。なお、「一部」とは、同一の化学殺菌剤の施用量の一部を指すか、あるいは、異種の化学殺菌剤を数種類使用する場合の一部の種類を指すか、あるいは両方を指すものである。 【0055】 【実施例】 以下に本発明の実施例について述べる。 【0056】 <製造例> 先ず、本発明に係る農園芸用殺菌剤組成物に配合するトリコデルマ属に属する糸状菌の菌体及び胞子の製造例について説明する。 【0057】 製造例1:湿潤菌体の製造 デンプン36g、ハイニュートSMP3.6g、リン酸二水素カリウム1.2g、硫酸マグネシウム0.6g、塩化カリウム0.6g、硫酸第一鉄0.012gを1.2Lの蒸留水に溶解し、500ml容の三角フラスコ12本に100mlづつ分注後、120℃で20分間蒸気滅菌した。滅菌後冷却した上記培地を含む三角フラスコにトリコデルマ・アトロビリデSKT−1株を植菌し、27℃で5日間振とうして前培養を行った。 【0058】 デンプン3.6kg、ハイニュートSMP360g、リン酸二水素カリウム120g、硫酸マグネシウム60g、塩化カリウム60g、硫酸第一鉄1.2g、プロナール120gを120Lの水道水を入れた200Lタンクに加え、緩やかに攪拌しながら、蒸気滅菌を行った。冷却後、培地のpHを10%アンモニア水で6に調整し、三角フラスコ12本分の前培養液を植菌口より投入して培養を開始した。培養条件は、温度27℃、攪拌225rpm、通気VVM=1で行った。培養期間中、培養液のpHをpHメーターでモニターし、pHが6以下となった時に、10%アンモニア水を注入してpHを調整した。この様にして、7日間培養を行った。 得られた培養物を遠心分離することにより、湿潤菌体を得た。 【0059】 製造例2 製造例1と同様の方法により、トリコデルマ・アトロビリデSKT−2株を培養し、菌体を得た。 【0060】 製造例3 製造例1と同様の方法により、トリコデルマ・アトロビリデSKT−3株を培養し、菌体を得た。 【0061】 製造例4:乾燥菌体(胞子)の製造 3%精糖蜜、0.5%脱脂大豆、0.1%KH2PO4、0.05%MgSO4・7H2O、0.05%KCl、0.001%FeSO4・7H2O、pH無調整の培地にトリコデルマ・アトロビリデSKT−1株を接種し、27℃で48時間振とう培養を行った。 【0062】 培地全体に菌糸が広がったのを確認し、この培養物をアルミのバットに広げ、そのまま27℃で空気を送りながら液体静置培養を行った。液体静置培養を1週間行うと、振とう培養で得られた菌糸は空気との接触面一面に分生子を形成した。これを水抜き、風乾、もしくは乾燥を行うことにより、菌糸はアルミのパットに粘着した。引き続き、分生子の水分含量が1〜20%になるまで乾燥し、この状態の培養物から分生子を取得した。 【0063】 製造例5 製造例4と同様の方法により、トリコデルマ・アトロビリデSKT−2株を培養し、分生子を得た。 【0064】 製造例6 製造例4と同様の方法により、トリコデルマ・アトロビリデSKT−3株を培養し、分生子を得た。 【0065】 <製剤例> 次に本発明に係る農園芸用殺菌剤組成物の代表的な製剤例をあげて製剤方法を具体的に説明する。以下の説明において「%」は重量百分率を示す。糸状菌株としては、粉剤と水和剤の製剤例においては、製造例で製造した乾燥菌体(胞子)を使用し、他の製剤例においては、湿潤菌体を使用した。各製剤例の農園芸用殺菌化合物の後のアルファベットは、既述した(2)化学殺菌剤の項で記載したアルファベットと同じ意味を表わす。 【0066】 製剤例1:フロアブル トリコデルマ・アトロビリデSKT−1株を5%、農園芸用殺菌化合物CCを5%、リグニンスルホン酸ナトリウム塩6%、ポリオキシエチレンアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩1%、キサンタンガム0.1%、水72.9%を加え混合粉砕しフロアブル剤とした。 【0067】 製剤例2:フロアブル トリコデルマ・アトロビリデSKT−2株を5%、農園芸用殺菌化合物CCを5%、リグニンスルホン酸ナトリウム塩6%、ポリオキシエチレンアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩1%、キサンタンガム0.1%、水72.9%を加え混合粉砕しフロアブル剤とした。 【0068】 製剤例3:フロアブル トリコデルマ・アトロビリデSKT−3株を5%、農園芸用殺菌化合物CCを5%、リグニンスルホン酸ナトリウム塩6%、ポリオキシエチレンアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩1%、キサンタンガム0.1%、水72.9%を加え混合粉砕しフロアブル剤とした。 【0069】 製剤例4:乳剤 トリコデルマ・アトロビリデSKT−1株を5%、農園芸用殺菌化合物DSを10%、シクロヘキサノン30%、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル18%、アルキルベンゼンスルホン酸カルシウム4%及びメチルナフタリン33.0%を均一に溶解して乳剤とした。 【0070】 製剤例5:乳剤 トリコデルマ・アトロビリデSKT−2株を5%、農園芸用殺菌化合物DSを10%、シクロヘキサノン30%、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル18%、アルキルベンゼンスルホン酸カルシウム4%及びメチルナフタリン33.0%を均一に溶解して乳剤とした。 【0071】 製剤例6:乳剤 トリコデルマ・アトロビリデSKT−3株を5%、農園芸用殺菌化合物DSを10%、シクロヘキサノン30%、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル18%、アルキルベンゼンスルホン酸カルシウム4%及びメチルナフタリン33.0%を均一に溶解して乳剤とした。 【0072】 製剤例7:粉剤 トリコデルマ・アトロビリデSKT−1株を5%、農園芸用殺菌化合物DLを1%、珪藻土6%及びクレー88.0%を均一に混合粉砕して粉剤とした。 【0073】 製剤例8:粉剤 トリコデルマ・アトロビリデSKT−2株を5%、農園芸用殺菌化合物DLを1%、珪藻土6%及びクレー88.0%を均一に混合粉砕して粉剤とした。 【0074】 製剤例9:粉剤 トリコデルマ・アトロビリデSKT−3株を5%、農園芸用殺菌化合物DLを1%、珪藻土6%及びクレー88.0%を均一に混合粉砕して粉剤とした。 【0075】 製剤例10:水和剤 トリコデルマ・アトロビリデSKT−1株を10%、農園芸用殺菌化合物AFを10%、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩1.5%、ポリオキシエチレンアルキルアリール1.5%、珪藻土26%、クレー57%を均一に混合粉砕して、水和剤とした。 【0076】 製剤例11:水和剤 トリコデルマ・アトロビリデSKT−2株を10%、農園芸用殺菌化合物AFを10%、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩1.5%、ポリオキシエチレンアルキルアリール1.5%、珪藻土26%、クレー57%を均一に混合粉砕して、水和剤とした。 【0077】 製剤例12:水和剤 トリコデルマ・アトロビリデSKT−3株を10%、農園芸用殺菌化合物AFを10%、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩1.5%、ポリオキシエチレンアルキルアリール1.5%、珪藻土26%、クレー57%を均一に混合粉砕して、水和剤とした。 【0078】 製剤例13:水和剤 トリコデルマ・アトロビリデSKT−3株を10%、農園芸用殺菌化合物AHを10%、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩1.5%、ポリオキシエチレンアルキルアリール1.5%、珪藻土26%、クレー57%を均一に混合粉砕して、水和剤とした。 【0079】 <試験例> 次に、本発明の農園芸用殺菌剤組成物の殺菌効果について、試験例をあげて具体的に説明する。 【0080】 本発明の農園芸用殺菌剤組成物の優れた殺菌効果は下記の試験例からも明らかである。つまり、個々の活性化合物(拮抗微生物)はある程度の殺菌効果を示すが、それらの組み合わせは単なる個々の活性化合物(微生物)の殺菌効果の合計より大きな殺菌効果を示し、相乗効果が見られる。 【0081】 個々の活性化合物(微生物)の組み合わせによる期待される殺菌効果はコルビー(Colby)の計算式より求めることができる(除草剤の組み合わせの相乗的及び拮抗的反応の計算:Calculating Synergistic and Antagonistic Responses of Herbicide Combination、Weed 15、20〜22ぺージ、1967)。コルビー(Colby)の計算式を下記数1に示す。 【0082】 【数1】
【0083】 なお、式中、Xは微生物Aをmcfu/mlの濃度で用いた場合の無処理対照の百分率で表される殺菌効果(防除価)を表し、Yは活性化合物Bをnppmの濃度で用いた場合の無処理対照の百分率で表される殺菌効果(防除価)を表し、そしてEは拮抗微生物Aをmcfu/ml、活性化合物Bをnppmの濃度に混合して用いた場合の無処理対照の百分率で表される殺菌効果(防除価)を表している。 【0084】 本発明の農園芸用殺菌剤組成物の殺菌効果がコルビー(Colby)の計算式より求められる計算値(E)より大きい場合は、この組み合わせによる殺菌効果は相乗効果を示すこととなる。次に、本発明の農園芸用殺菌剤組成物の殺菌効果が相乗効果を示すことを試験例をあげて具体的に説明する。なお、糸状菌は分生胞子を使用した。 【0085】 (キュウリ灰色かび病防除効果試験) 9cm×9cmの塩ビ製鉢にキュウリ種子(品種:相模半白)を10粒づつ播種し、温室内で7日間育成させ、子葉が展開したキュウリ幼苗を供試植物として用いた。製剤例に準じて調製した本発明の農園芸用殺菌剤組成物、及びトリコデルマ・アトロビリデSKT−1株と化学合成殺菌剤を所定濃度の有効成分になるように水で希釈し、1ポット当たり10ml散布した。風乾後、キュウリ灰色かび病菌(Botrytis cinerea)の胞子懸濁液を浸したぺーパーディスクをキュウリ子葉表面に置床接種し、20℃の湿室で管理した。接種3日後に子葉の病斑直径を求め、得られた数値をもとに、数2により防除価(%)を求めた。試験によって得られた実験値の防除価(%)、及びコルビーの計算式より求められた計算値の防除価(%)を表1に示した。 【0086】 【数2】
【0087】 【表1】
【0088】 (コムギうどんこ病防除効果試験) 9cm×9cmの塩ビ製鉢に小麦種子(品種:農林61号)を9粒づつ播種し、温室内で8日間育成させ、製剤例に準じて調製した本発明の農園芸用殺菌剤組成物、及びトリコデルマ・アトロビリデSKT−2株と化学合成殺菌剤を所定濃度の有効成分になるように水で希釈し、1鉢当たり10ml散布した。風乾後、コムギうどんこ病菌(Erysiphe graminis)の胞子を接種し、20〜25℃の温室内に入れた。接種10日後に各々の第1葉の発病面積を下記の基準に従って指数調査し、得られた指数値をもとに、数3により被害度を求め、さらに数4により防除価(%)を求めた。試験によって得られた実験値の防除価(%)、及びコルビーの計算式より求められた計算値の防除価(%)を表2に示した。 【0089】
【0090】 【数3】
【0091】 【数4】
【0092】 【表2】
【0093】 (キュウリベと病防除効果試験) 9cm×9cmの塩ビ製鉢にキュウリ種子(品種:相模半白)を10粒づつ播種し、温室内で7日間育成させ、子葉が展開したキュウリ幼苗を供試植物として用いた。製剤例に準じて調製した本発明の農園芸用殺菌剤組成物、及びトリコデルマ・アトロビリデSKT−3株と化学合成殺菌剤を所定濃度の有効成分になるように水で希釈し、各々1鉢当たり10mlを噴霧散布した。風乾後、キュウリベと病菌(Pseudoperonospora cubensis)の分生胞子懸濁液を噴霧接種し、直ちに20℃の湿室内に24時間入れた。その後温室内に移し、7日後に各子葉の発病程度を下記の発病指数の基準に従って調査し、得られた指数値をもとに、数3により被害度を求め、さらに数4により防除価(%)を求めた。試験によって得られた実験値の防除価(%)、及びコルビーの計算式より求められた計算値の防除価(%)を表3に示した。 【0094】
【0095】 【表3】
【0096】 (イネいもち病予防効果試験) 直径7cmの素焼鉢に水稲種子(品種:愛知旭)を約15粒ずつ播種し、温室内で2〜3週間育成した。第4葉が完全に展開したイネ苗に製剤例に準じて調製した本発明の農園芸用殺菌剤組成物、及びトリコデルマ・アトロビリデSKT−1株と化学合成殺菌剤を所定濃度の有効成分になるように水で希釈し、各々1鉢当たり10mlを噴霧散布した。風乾後、イネいもち病菌(Pyricularia oryzae)の分生胞子懸濁液を噴霧接種し、直ちに25℃の湿室内に24時間入れた。その後温室内に移し、接種5日後に第4葉の病斑数を調査した。数5により防除価を求め、表2の基準により評価した結果を表4に示した。 【0097】 【数5】
【0098】 【表4】
【0099】 【発明の効果】 化学殺菌剤は本来微生物を殺滅するものであるから、両者を混合すれば、通常の場合、微生物は死滅してしまうため、たとえ有用な作用を有する微生物であっても、これを化学殺菌剤と併用して、両者の作用を有効利用することはきわめて困難であって容易なことではない。 【0100】 本発明は、このような技術常識に全く反して、特定の微生物、つまりトリコデルマ属に属する糸状菌は、化学殺菌剤と併用しても死滅することがないばかりか、本菌が有している病害菌との拮抗性という新しい作用が損われることがなく、それどころか化学殺菌剤が本来有する殺菌作用と合まって相乗効果が奏される点できわめて特徴的である。 【0101】 試験例からも明らかなように、本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、キュウリ灰色かび病、べと病、コムギうどんこ病、イネいもち病等の各種病原菌に対して優れた相乗時防除効果を示し、化学合成殺菌剤の使用量を減らすことができるだけでなく、抗菌スペクトルも広範なものとなる。また、有用作物に対する安全性が極めて高く、環境公害防止上においてもすぐれている。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000000169 【氏名又は名称】クミアイ化学工業株式会社 【住所又は居所】東京都台東区池之端1丁目4番26号
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| 【出願日】 |
平成15年7月8日(2003.7.8) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100075775 【弁理士】 【氏名又は名称】戸田 親男
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| 【公開番号】 |
特開2005−29477(P2005−29477A) |
| 【公開日】 |
平成17年2月3日(2005.2.3) |
| 【出願番号】 |
特願2003−193688(P2003−193688) |
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