| 【発明の名称】 |
ラット精子の凍結保存方法、該凍結保存方法に用いられる凍結保存用液および凍結保存用キット |
| 【発明者】 |
【氏名】中潟 直己
【氏名】柏崎 直巳
【氏名】中務 胞
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| 【要約】 |
【課題】ラット精子に対し物質的刺激が軽減されると共に、操作・条件が簡素化され効率的なラット精子の凍結保存方法、該凍結保存方法に用いられる凍結保存用液および凍結保存用キットを提供する。
【解決手段】ラットから採取した精子を、リポタンパク質からなる精子膜保護成分と非浸透性凍結保護成分、栄養源、緩衝剤、細菌抑制剤および蒸留水からなる水性媒体とを含有させた凍結保存用液に懸濁させることにより、精子懸濁液を調製し、該懸濁液を凍結用チューブに分注し、前記凍結用チューブに充填された前記精子懸濁液を1〜10℃に冷却した後、−80℃以下の条件下において凍結保存に供するラット精子の凍結保存方法 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ラットから採取した精子を、 リポタンパク質からなる精子膜保護成分と非浸透性凍結保護成分とを共存させてなる凍結保存用液に懸濁させることにより、精子懸濁液を調製し; 前記工程にて得られた前記精子懸濁液を凍結用チューブに分注し; 前記分注により前記凍結用チューブに充填された前記精子懸濁液を1〜10℃に冷却し; 前記冷却工程を経た前記凍結用チューブに充填された前記精子懸濁液を−80℃以下の条件下において凍結保存に供する 各工程を含むことを特徴とするラット精子の凍結保存方法。 【請求項2】 前記ラット精子の凍結操作が、前記精子懸濁液を凍結用チューブに分注し、2〜8℃にて5〜30分間冷却した後、液体窒素中へ浸漬することからなる請求項1に記載のラット精子の凍結保存方法。 【請求項3】 前記リポタンパク質が、卵黄リポタンパク質、乳リポタンパク質または血漿リポタンパク質である請求項1に記載のラット精子の凍結保存方法。 【請求項4】 前記非浸透性凍結保護成分が、ラウリル硫酸ナトリウム、ラフィノース、トレハロース、ラクトースおよびグルコースからなる群より選択される一種の界面活性剤または糖類である請求項1に記載のラット精子の凍結保存方法。 【請求項5】 前記緩衝剤が、トリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンである請求項1に記載のラット精子の凍結保存方法。 【請求項6】 ラット精子の凍結保存用液であって、リポタンパク質からなる精子膜保護成分と非浸透性凍結保護成分とを共存させてなり、さらに、少なくとも栄養源、緩衝剤、細菌抑制剤および蒸留水からなる水性媒体とを含有させてなることを特徴とするラット精子の凍結保存用液。 【請求項7】 前記リポタンパク質が、卵黄リポタンパク質、乳リポタンパク質または血漿リポタンパク質である請求項6に記載のラット精子の凍結保存用液。 【請求項8】 前記非浸透性凍結保護成分が、ラウリル硫酸ナトリウム、ラフィノース、トレハロース、ラクトースおよびグルコースからなる群より選択される一種の界面活性剤または糖類である請求項6に記載のラット精子の凍結保存用液。 【請求項9】 前記緩衝剤が、トリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカンである請求項6に記載のラット精子の凍結保存用液。 【請求項10】 請求項6のラット精子凍結保存用液、凍結用チューブ、融解液、シリンジとシリコンチューブおよびシャーレを少なくとも含むことを特徴とするラット精子の凍結保存用キット。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、ラット精子の凍結保存方法、該凍結保存方法に用いられる凍結保存用液および該凍結保存用液を含む凍結保存用キットに関するものであり、さらに詳しくは、ラット精子の新規な凍結保存方法ならびに該凍結保存方法に用いられる新規な単一の凍結保存用液および凍結保存用キットに関するものである。 【0002】 【従来の技術】 ラット精子は、他の哺乳動物の精子と比較して尾部が長く、また、精子の頭部の形態が鎌形であり、頭部と尾部の接合が弱いという特徴がある。従って、かかる精子の大きさおよび形態の特異性からラット精子はその頭部および尾部が切れやすいために、ピペッティング、遠心分離および洗浄等の物理的操作による刺戟、衝撃および急激な浸透圧の変化に対して泥弱である。かかる物理的刺戟等により、例えば運動性の低下、精子頭部の細胞膜の損傷等の性能低下が生じやすいという難点が包蔵されている。 【0003】 一方、ラットのうちでも、特に遺伝子改変ラットは、医学分野において、糖尿病、高血圧症等の各種疾患モデル動物の実験動物として極めて重要なものであり、モデル動物を維持するには、通常受精卵での凍結保存が行なわれている。しかし、次世代にそれらの遺伝子を伝達すれば良いことから精子の凍結保存で十分である。 【0004】 従来、哺乳動物の精液の凍結保存においては、精液を第一次希釈およびグリセリン3〜14%含有液による第二次希釈を経て冷却した後、凍結保存に供されているが、かかるラットの精子には前記の如き難点があるため、かかる方法を利用することができず、受精率が十分高く、また凍結保存における操作が簡便であり、実用的に有用な凍結保存方法は、未だ開発されていない。 【0005】 かかる状況下において、遠心分離等の物理的刺戟を与えない方法として、ラットから採取した精子をpH6.8〜7.3に保つトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ラクトース、卵黄,細菌抑制剤を含む一次希釈液に浮遊させ、これを15℃で10分間以上24時間以内の条件および2〜10℃で10分間以上24時間以内の条件の二段階で冷却し、この一次希釈液に対し、グリセリンの如き細胞の凍結保護剤を含有する二次希釈液を加え撹拌し、撹拌後の液をストロー法またはペレット法により液体窒素中で凍結する凍結保存方法が提案されている(特開2000−239101号公報参照。)。 【0006】 しかしながら、かかる凍結保存方法によれば、一次希釈液、二次希釈液の二種類の凍結用培地をそれぞれ調製することが必要である。また、二種の希釈液を用いることに伴ない、凍結保存方法の工程が複雑となり、特に、精子を懸濁させた一次希釈液を15℃および2〜10℃での温度の異なる二段階による冷却を必要としており、さらに微細な温度制御も必要である。具体的には、前記方法においては一次希釈液中で精巣上体尾部を細切りし、得られた精子懸濁液を15℃で30分間、さらに5℃で30分間の段階的な冷却が必要であり、冷却後に二次希釈液を添加し凍結処理に供するなど、操作上も煩雑であったために、これらの難点を解消し、迅速な処理が可能であり、かつ操作が簡便な高いラット精子の凍結保存方法が切望されてきた。 【0007】 【特許文献1】特開2000−239101号公報 【0008】 【発明が解決しようとする課題】 従って、本発明の課題は、前記の如きラット精子の凍結保存方法の従前の開発状況に鑑み、ラット精子の新規な凍結保存方法を提供することにあり、特に、ラット精子に対する物理的衝撃を軽減することが可能であり、短時間の作業時間で、かつ無菌的に封入した凍結保存液を用いて簡便な操作により、凍結精子の融解後の受精率の高いラット精子の凍結保存方法、該凍結保存方法に用いられる凍結保存用液および凍結保存用キットを提供することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】 そこで、本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ラット精子の凍結に際し、従来提案されてきた一次希釈液および二次希釈液の代わりに単一の凍結保存用液を用い、特定量の精子膜保護成分および凍結保護成分を含む各成分を配合することおよび不要な凍結保護成分の粒子を除去することにより濾過滅菌が可能であり、アンプル管などに無菌的に封入することにより、無菌状態の凍結保存用液が得られることに着目し、さらに該凍結保存用液を用いる凍結保存用キットおよびラット精子凍結保存方法の実現が可能であることを見い出し、これらの知見に基づいて本発明の完成に到達した。 【0010】 かくして、 本発明によれば、 ラットから採取した精子を、 リポタンパク質からなる精子膜保護成分と非浸透性凍結保護成分とを共存させてなり、さらに、栄養源、緩衝剤、細胞抑制剤および水性媒体からなる凍結保存用液に懸濁させることにより、精子懸濁液を調製し; 前記工程にて得られた前記精子懸濁液を凍結用チューブに分注し; 前記分注により前記凍結用チューブに充填された前記精子懸濁液を1〜10℃に冷却し; 前記冷却工程を経た前記凍結用チューブに充填された前記精子懸濁液を−80℃以下の条件下において凍結保存に供する 各工程を含むことを特徴とするラット精子の凍結保存方法 が提供される。 【0011】 また、本発明によれば、 ラット精子の凍結保存用液であって、リポタンパク質からなる精子膜保護成分と非浸透性凍結保護成分とを共存させてなり、さらに、栄養源、緩衝剤、細菌抑制剤および蒸留水からなる水性媒体とを含有し、濾過滅菌処理により無菌状態とされたことを特徴とするラット精子の凍結保存用液 が提供される。 【0012】 さらに、本発明によれば、 リポタンパク質からなる精子膜保護成分と非浸透性凍結保護成分とを共存させてなり、さらに、少なくとも栄養源、緩衝剤、細菌抑制剤および蒸留水とからなる水性媒体を含有するラット精子の凍結保存用液、凍結用チューブ、融解液、シリンジとシリコンチューブおよびシャーレを少なくとも含むことを特徴とするラット精子の凍結保存用キット が提供される。 【0013】 本発明によれば、前記の如く第一の発明に係る新規なラット精子の凍結保存方法、第二の発明に係るラット精子の凍結保存液および第三の発明に係るラット精子の凍結保存キットが提供されるのであるが、さらに好ましい実施の態様として次の1)〜7)に掲げるものを包含する。 【0014】 1)前記リポタンパク質が、卵黄リポタンパク質、乳リポタンパク質または血漿タンパク質である前記ラット精子の凍結保存方法。 2)前記卵黄リポタンパク質が、0.22μm以上の不要な卵黄粒子を除去してなる卵黄液である前記ラット精子の凍結保存方法。 3)前記卵黄リポタンパク質が、10,000から12,000回転の高速遠心分離により液相として回収された卵黄液である前記ラット精子の凍結保存方法。 4)前記非浸透性凍結保護成分が、ラウリル硫酸ナトリウム、ラフィノース、トレハロース、メチルセルロースおよびアミド化合物からなる群より選択される少なくとも一種の細胞膜保護作用を有する物質である前記ラット精子の凍結保存方法。 5)前記冷却の速度が、毎分0.5〜2℃であり、冷却時間が15分〜1時間である前記ラット精子の凍結保存方法。 6)少なくとも次の組成: ラクトース; 0.1〜1M 卵黄; 15〜30% ラウリル硫酸ナトリウム; 0.1〜3% トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン; 0.01〜0.3% 抗生物質; 0.01〜0.1% 蒸留水; 残量 を有するものであって、前記卵黄が0.22μm以上の卵黄粒子を除去してなるものである前記ラット精子凍結保存用液。 7)前記凍結保存用液の組成が、 ラクトース; 0.2〜0.4M 卵黄; 18〜25% ラウリル硫酸ナトリウム; 0.5〜2% トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン; 0.05〜0.2% 抗生物質; 0.01〜0.05% 蒸留水; 残量 であり、前記卵黄が0.22μm以上の卵黄粒子を除去したものである前記ラット精子凍結保存用液。 【0015】 【発明の実施の形態】 以下、本発明についてさらに詳細に説明する。 本発明に係るラット精子の凍結保存方法に用いられる凍結保存用液は、精子膜保護成分としてのリポタンパク質と非浸透性凍結保護成分としての界面活性剤と糖類を共存させたものである。凍結保存用液は、さらに栄養源、緩衝剤および細菌抑制剤を含有し、これらの成分と蒸留水とからなるものであり、無菌状態とされたものである。 【0016】 リポタンパク質としては、卵黄リポタンパク質、乳リポタンパク質および血漿リポタンパク質を挙げることができ、好ましいリポタンパク質は、卵黄リポタンパク質または乳リポタンパク質であり、卵黄リポタンパク質が特に好適である。特に、卵黄リポタンパク質は、不要な卵黄粒子を除去したものが好適である。不要な卵黄粒子の除去により、濾過滅菌の際の卵黄粒子によるすき間0.22μmのフィルターの目詰まりを防止し、凍結保存用液の濾過減菌を可能としたものであり、卵黄をベースとするラット精子凍結保存用液であって、無菌状態の保存液を実現したものである。不要な卵黄粒子の除去方法としては、10,000〜12,000回転または4,000〜5,000Gの条件による高速遠心分離方法を採用することが好ましい。その結果として、精子の生存率および受精能力の向上を図ることができる。 【0017】 リポタンパク質の含有量は、凍結保存用液の全重量を基準として15〜30%、好ましくは18〜25%の範囲で設定することができる。 また、凍結保護成分としては、通常、浸透性凍結保護成分と非浸透性凍結保護成分とに別されるが、本発明者らの検討により凍結保存用液の浸透圧を極端に上昇させるものは、ラット精子用の凍結保存用液の凍結保護成分として使用することには難点のあることが判明した。 従って,ラット精子の凍結保護成分としては、非浸透性のものが細胞外で作用させることができ、細胞膜通過により生ずる損傷を防止できる点で有用である。 【0018】 なお、本明細書において、「非浸透性凍結保護成分」とは、ラット精子に損傷を与えることなく、円滑な凍結保存が可能な凍結保護成分であれば、低浸透性の成分をも包含するものを意味している。 本発明において、非浸透性凍結保護成分としては、ラウリル硫酸ナトリウム等の界面活性作用を有する物質、ラフィノース、トレハロースなどの糖類、メチルセルロースの如き合成重合体、さらにはアミド化合物等を挙げることができる。特に好適な非浸透性凍結保護成分は、ラウリル硫酸ナトリウムを主成分とするアルキル硫酸エステルを含有するものであり、市販品としては、例えば、OEP(Equex Stem)(NOVA CHEMICAL SALES, INC製 界面活性剤)を入手することができる。 非浸透性凍結保護成分の含有量は、凍結保存用液の全容量を基準として、0.1〜3%、好ましくは0.5〜2%の範囲で採用することができる。 【0019】 本発明に係る凍結保存用液において、前記の如き非浸透性凍結保護成分を用いることにより、従来、他の哺乳動物の精子の凍結保存に用いられているグリセリン、ジメチルスルホキシドおよびアセトアミド等の浸透性凍結保護成分では得られない顕著な効果を奏することは、後述の実施例でも示す通りである。 【0020】 次に、本発明に係る凍結保存用液の成分として用いられる栄養源としてはラクトース、セロビオース、トレハロース、シュークロース、グルコース等の糖類を挙げることができるが、特にラクトースを用いることが好ましい。該糖類は、0.1〜1M、特に0.2〜0.4Mの範囲で使用することができる。 【0021】 また、凍結保存用液のpHは、6.5〜8.0、好ましくは7.4〜7.6の範囲に制御される。pH制御のためには、通常緩衝剤が用いられる。緩衝剤としては、特に限定されるものではないが、トリス(ヒドロキシアルキル)アミノアルカン、例えばトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、TES(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸)等を挙げることができる。これらのなかでも、特にトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンが凍結・融解の過程における細胞膜の維持および融解後の精子の円滑な代謝および生存の維持の観点からが好ましい。かかる緩衝剤の含有量は、有効量を任意に選択すればよいが、通常0.01〜0.3%、特に0.05〜0.2%の範囲で採用することができる。 【0022】 本発明に係る凍結保存用液は、濾過滅菌により得られた無菌状態のものであるが、さらに、細菌の繁殖の抑制のためには抗生物質が添加される。抗生物質としては限定されるものではなく、例えばパニマイシン、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン等、任意に選択して用いることができる。 【0023】 以上説明したように、本発明に係る凍結保存用液は、各成分から構成されるものであり、(A)卵黄液、(B)界面活性剤および(C)蒸留水を必須成分とし、さらに(a)ラクトース、(b)トリスパウダーおよび(c)抗生物質を少なくとも含有してなるものである。さらに配合割合は、具体的には次に示す通りのものである。 【0024】
【0025】 次に、本発明に係るラット精子凍結保存用キットは、前記ラット精子凍結保存用液、凍結用チューブ、融解液、シリンジ、シリコンチューブおよびシャーレの組合せからなるものである。前記凍結保存用液はアンプルまたはバイアルに保存したものとし、凍結用チューブとしては、内径10〜15mmのプラスチック製チューブが用いられる。長さは任意に決定すればよい。融解液としては、KRB mediumなどを無菌的にアンプル管に封入しておく。また、シリンジおよびシリコンチューブは、凍結用チューブに精子懸濁液を吸引充填させるものであり、シャーレは精巣上体尾部の細切りのために使用され、精子懸濁液から調製される。 また、本発明に係るラット精子凍結保存用キットの構成物品は、必要に応じて外箱に装填され、また操作マニュアルも加えられる。 かかるラット精子凍結保存用キットは、ラット精子の凍結保存を行なう場合に必要な保存液、用具等がその場で提供できるので極めて有用であり、効率よく、かつ円滑にラット精子の凍結保存を行なうことができる。 【0026】 次に、本発明に係るラット精子凍結保存用液および該凍結保存用キットを用いるラット精子の凍結保存方法について説明する。 本発明に係るラット精子の凍結保存方法は、 A.ラットから採取した精子を、 B.リポタンパク質からなる精子膜保護成分と非浸透性凍結保護成分とを共存させてなる凍結保存用液に懸濁させることにより、精子懸濁液を調製し; C.前記工程にて得られた前記精子懸濁液を凍結用チューブに分注し; D.前記分注により前記凍結用チューブに充填された前記精子懸濁液を1〜10℃に冷却し; E.前記冷却工程を経た前記凍結用チューブに充填された前記精子懸濁液を−80℃以下の条件下において凍結保存に供する A〜Eの各工程を含むことを特徴とするラット精子凍結保存方法 に関するものである。 【0027】 本発明に係るラット精子の凍結保存方法についてさらに具体的な操作および条件を次に示す。 すなわち、 a1. 成熟雄ラット(好ましくは15週齢以上)から精巣上体尾部を採取する; a2. 濾紙上で、該精巣上体尾部に付着した血液を取り除く; b1. 22〜26℃に加温した精子凍結保存用液中にて精巣上体尾部を細切りする; b2. 前記工程にて細切後、撹拌し、精子を保存用液中に懸濁させた精子懸濁液を調製する; c. 前記工程にて得られた精子懸濁液を凍結用チューブに分注する; d. 前記工程にて精子懸濁液を分注した凍結用チューブを2〜8℃の冷蔵庫内に5〜20分間静置する。; e1. 前記精子懸濁液を充填した凍結用チューブを−80℃のディープフリーザー内に15〜45分間静置するか、または前記精子懸濁液を充填した凍結用チューブを液体窒素液面上2〜5cmのところに浮き具(フロート)を用いて5〜15分間静置する; e2. 前記工程にて静置後、前記精子懸濁液を充填した凍結用チューブを液体窒素内(−196℃)に浸漬する; 各工程からなるラット精子の凍結保存方法が提供される。 工程a1〜e2は、前記工程AからFの好ましい実施形態を示すものであり、例えば、工程Aの具体的な実施形態をa1およびa2で示している。 【0028】 次に、凍結保存されたラット精子の融解方法について説明する。 前記のようにして凍結保存されたラット精子は、必要時に融解され、そして未受精卵、例えば、凍結保存された未受精卵子との体外受精および雌ラットの子宮に注入する人工授精に供される。 【0029】 具体的には、次に示す工程からなる。 1)液体窒素中より精子を充填したチューブを取り出し、35〜40℃の温水中にて2〜3分間温める; 2)あらかじめ35〜40℃に加温したKRB培養液をチューブ内の精子懸濁液に0.5〜2ml添加する; 3)チューブ内の懸濁液を精子の活力の観察および体外受精および人工授精に用いる。 【0030】 本発明に係る精子の融解方法は、従来法のKRB培養液の充填されたチューブにストロー内の精子懸濁液を取り出す工程を有しない点で工程が簡素化されたものである。 【0031】 以上説明したことから明らかなように、本発明のラット精子凍結保存方法における特異性の第一は、第一次希釈液および第二次希釈液を用いることなく、単一の精子凍結保存用液を用いる点にあり、その第二は、前記工程Dおよびdにて示すように、冷却工程が、1〜10℃での低温一段工程である点にある。 【0032】 かかる特異性から、後述のように従来法に比較して顕著な効果を奏する。特に、ラット精子の凍結保存方法の操作・条件の簡素化による効率化を図ることができ、作業時間が従来法の約半分でよいことも大きなメリットである。 【0033】 【実施例】 次に本発明について、実施例および比較例により、さらに具体的に説明する。もっとも本発明は、実施例等により限定されるものではない。 なお、凍結融解後の精子生存率および受精能力は、次の方法により評価した。 【0034】 ▲1▼精子生存率 精子の生存率は、融解後の凍結融解精子の運動率を示した。すなわち、あらかじめ37℃に加温した精液性状検査板へ融解した精子懸濁液を少量滴下し、その上からカバーグラスで覆い、顕微鏡下20〜100倍にて鏡検し、その運動精子の割合を求めた。 ▲2▼凍結融解精子の受精能力 凍結融解精子の受精能力の評価は、融解し希釈した精子を雌ラットの子宮へ注入(人工授精)することにより行なった。すなわち、精管結紮雄ラットと交配して、偽妊娠を誘起した雌ラットに麻酔を施す。次に、腹壁を切開し腹腔内から子宮を体外に固定する。注入は、子宮角上部から卵巣方向に向かって凍結融解した精子を注入した。左右の子宮へ注入された雌ラットは出産日まで飼育し、妊娠および着床、新生仔への発生の確認を行い、凍結融解精子の受精能力を評価した。 【0035】 実施例1 Wistar系の成熟雄ラット(15週齢以上)を麻酔し、と殺後、二個の精巣上体尾部を摘出した。濾紙上で摘出した精巣上体尾部に付着した血液等を取り除き、37℃に加温した下記の組成の新規精子凍結保存液3ml中にて精巣上体尾部を細切りした。細切り後、静かに撹拌し、精子を保存液中に懸濁させた。精子懸濁液0.2mlを常温で内径10mmの凍結用プラスチックチューブに分注し、精子懸濁液を封入したプラスチックチューブを5℃の冷蔵庫に入れ15分間放置し冷却した。次いで、−80℃のディープフリーザー内に30分間静置した後、液体窒素内(−196℃)に浸漬し、凍結保存に供した。なお、一部のプラスチックチューブについては5℃の冷蔵庫に入れ15分間冷却した後、液体窒素液面上2cmに10分間静置し、液体窒素内に浸漬した。 また、ここで使用した新精子凍結保存用液は、次の組成を有するものであり、あらかじめ5℃の冷蔵庫にて冷却しておいた。 【0036】
注)上記組成を混合後、10,000回転の高速遠心分離に供し、0.22μm以上 の固形の卵黄粒子を除去した。 【0037】 次に、前記方法により液体窒素中に保存したプラスチックチューブを取り出し、37℃の温水中で2〜3分間静置し温めた。これに、あらかじめ37℃に加温したKRB培養液を1ml添加した。 プラスチックチューブ内の懸濁液中の融解精子は、活力を顕微鏡で観察したところ、融解直後の精子生存率30%の結果を得た。また、ここで得られた融解精子を人工授精に用いたところ、約90%の受容雌が妊娠・着床し、新生仔への発生率は60%(1腹あたりの産子数6匹)であり、凍結融解後の精子が受精能力を有することが判明した。 【0038】 比較例1 Wistar系の成熟雄ラット(15週齢以上)を麻酔し、と殺後、二個の精巣上体尾部を摘出し、室温下(24℃)のシャーレの一次希釈液中にて細切りし、精子を懸濁させた。この精子懸濁液を15℃の恒温器に入れ30分間放置し、その後さらに5℃の冷蔵庫へ入れ30分間放置して冷却した。この懸濁液に対し、あらかじめ一次希釈液に1.4%(V/V)のOEPを添加して調製し、5℃に冷却した二次希釈液を等量加え撹拌した。この精子懸濁液を0.25mlプラスチックストローへ封入した。このプラスチックストローを液体窒素中に浸漬して凍結保存した。 凍結保存後、凍結精子を37℃の温水中で10秒間静置し、1mlのKRB培養液中に融解精液を浮遊させた。精子生存率および受精能力を前記方法にて評価したところ、精子生存率10%であり、受精能力を確認した。60%の受容雌が妊娠・着床し、新生仔への発生率60%(1腹あたりの産子数4匹)であった。 【0039】 なお、一次希釈液および二次希釈液の組成は次の通りのものとした。 一次希釈液 無水ラクト−ス 8.0% 卵黄 23.0% 抗生物質 10mg/100ml トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(pH7.4) 10.0% 蒸留水 二次希釈液 一次希釈液 98.6% OEP 1.4%(V/V) 【0040】 比較例2 Wistar系成熟雄ラット(15週齢以上)を麻酔し、と殺後、二個の精巣上体尾部を摘出し、室温下(24℃)のシャーレの一次希釈液中にて細切し、精子を懸濁させた。得られた精子懸濁液を5℃の冷蔵庫へ入れ30分間放置して冷却した。この懸濁液に対し、あらかじめ一次希釈液に1.4%(V/V)のOEPを添加して調製し、5℃に冷却した二次希釈液を等量加え撹拌した。この精子懸濁液を0.25mlプラスチックストローへ封入した後、液体窒素中に浸漬して凍結保存した。 凍結保存後、凍結精子を37℃の温水中で10秒間静置し、1mlのKRB培養液中に融解精液を浮遊させた。精子生存率および受精能力を評価したところ、精子生存率10%であり、受精能力を確認したところ、60%の受容雌が妊娠・着床し、新生仔への発生率60%(1腹あたりの産子数4匹)であった。 【0041】 比較例3 卵黄を高速遠心分離に供さなかったこと以外すべて実施例1の操作・条件と同一の操作・条件により凍結保存に供した。凍結保存用液は無菌状態とならず、凍結保存後の精子生存率10%であり、受精能力評価においても新生仔への発生率は60%(1腹あたりの産子数4匹)であった。不要な卵黄粒子の除去による効果が認められる。 【0042】 【発明の効果】 本発明は、以上述べた構成からなり、一次希釈液、二次希釈液の二種類の凍結用培地を使用する必要がないため、ラット精子の凍結保存方法の効率化を図ることができ、また、凍結保存用液のなかで、精巣上体尾部を細切し、その後、希釈を行なわないので、ラット精子に対する物理的障害を軽減することができる。 さらに、冷却は従来法の15℃と5℃の二段工程の方法を5℃のみの一段工程の方法に簡略化することができ、装置を軽減することができる。 また、凍結精子の融解方法についても従来方法に対し操作が容易である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】302042966 【氏名又は名称】アーク・リソース株式会社 【識別番号】595090462 【氏名又は名称】中潟 直己
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| 【出願日】 |
平成15年6月12日(2003.6.12) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100087918 【弁理士】 【氏名又は名称】久保田 耕平
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| 【公開番号】 |
特開2005−2058(P2005−2058A) |
| 【公開日】 |
平成17年1月6日(2005.1.6) |
| 【出願番号】 |
特願2003−168132(P2003−168132) |
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