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【発明の名称】 陸上における有用海生生物養殖方法、その装置およびその方法により得られた有用海生生物
【発明者】 【氏名】與儀 明文

【氏名】鈴木 啓容

【氏名】下地 雅俊

【氏名】伊佐 真賢

【氏名】垣田 浩孝

【氏名】チトラカー ラメシュ

【氏名】手束 聡子

【氏名】坂根 幸治

【要約】 【課題】本発明の課題は、海象や天候等の自然環境条件に左右されずに、安定且つ効率的に、低コストのサンゴを養殖する方法を提供することである。

【解決手段】I)地下浸透海水の窒素及び/又はリンの濃度を低減させる工程、及び
【特許請求の範囲】
【請求項1】
I)地下浸透海水の窒素及び/又はリンの濃度を低減させる工程、及び
II)工程Iで得られた地下浸透海水を含む養殖用水槽中で、サンゴ卵、サンゴプラヌラ幼生、稚サンゴ、サンゴ成体からなる群より選択される少なくとも1種を生育させる工程、
を包含する、かけ流し方式の、サンゴの養殖方法。
【請求項2】
工程I)による地下浸透海水中の窒素濃度及び/又はリン濃度の低減を、海藻バイオフィルター水槽、二枚貝フィルタ−水槽、プロテェインスキマー並びに窒素吸着剤及び/又はリン吸着剤を収容する水槽からなる群より選択される少なくとも1種の予備処理水槽において行う、請求項1に記載のサンゴの養殖方法。
【請求項3】
III)養殖用水槽中で、藻類摂食動物および底砂脱窒機能生物を飼育する工程、
をさらに包含する、請求項1又は2に記載のサンゴの養殖方法。
【請求項4】
II)予め窒素及び/又はリンの濃度を低減させた地下浸透海水を含む養殖用水槽中で、サンゴ卵、サンゴプラヌラ幼生、稚サンゴ、サンゴ成体からなる群より選択される少なくとも1種を生育させる工程、
III)養殖用水槽中で、藻類摂食動物および底砂脱窒機能生物を飼育する工程、
を包含する、かけ流し方式の、サンゴの養殖方法。
【請求項5】
養殖用水槽中でアワビ、サラサバティラ、ギンタカハマガイ、チョウセンサザエ、シャコガイ、ニシキウズラ、シラヒゲウニ、マガキガイからなる群から選ばれた海藻コントロール機能を発揮する生物の少なくとも1種とマガキガイ、ナマコ類からなる群から選ばれた底砂脱窒機能を発揮する生物の少なくとも1種とアコヤガイ、シャコガイからなる群より選択される栄養源吸収低減機能を発揮する生物の少なくとも1種とが飼育され、及び/又は養殖用水槽にライブサンドが設置される、請求項1〜4のいずれかに記載のサンゴの養殖方法。
【請求項6】
地下浸透海水が、琉球石灰岩層あるいは透水性の高い地層を浸透した地下浸透海水である、請求項1〜5のいずれかに記載のサンゴの養殖方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法に従って養殖されたサンゴ。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法に従って養殖された有用海生生物(サンゴを除く)。
【請求項9】
有用海生生物が、アワビである請求項8に記載の有用海生生物。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載のサンゴの養殖方法に準じて、海生生物(サンゴを除く)を生育又は増殖させる、有用水産生物の養殖方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法に従って生育又は増殖された、有用海生生物(サンゴを除く)。
【請求項12】
海藻バイオフィルター水槽、二枚貝フィルター水槽、プロテェインスキマー並びに窒素吸着剤及び/又はリン吸着剤を収容する水槽からなる群より選択される少なくとも1種の地下浸透海水予備処理水槽と
予備処理槽から地下浸透海水を取り込む取水管、サンゴ付着基質、水流発生装置、エアレーション装置、通水性支持体上に配置されたライブサンド層、ライブサンド層と水槽底部との間に設けられた高濃度硝酸含有海水収容部、および該収容部から高濃度硝酸海水を系外に取り出す排出管を設けた海生生物養殖用水槽と
該収容部から系外に取り出された排水を集合させ、栄養塩低減化を行う排水水槽と
を備えたことを特徴とする、かけ流し式有用海生生物養殖装置。
【請求項13】
請求項12に記載のかけ流し式海生生物養殖装置を備える、陸上屋内有用海生生物養殖施設。
【請求項14】
さらに、照度調節装置及び/又は水深調節装置を備える、請求項12または13に記載の陸上屋内有用海生生物養殖施設。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれかに記載のかけ流し式有用海生生物養殖装置を備える、陸上屋内サンゴ養殖施設。
【請求項16】
請求項12〜14のいずれかに記載のかけ流し式有用海生生物養殖装置を備える、陸上屋内アワビ養殖施設。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、陸上において地下浸透海水を利用するかけ流し方式の有用海生生物(以下の説明においては、支障のない限り、サンゴをもって有用海生生物を代表させるものとし、それ以外の有用海生生物に関しては、必要に応じて具体的に言及する)の養殖方法及びその方法により養殖された有用生物、ならびに地下浸透海水を利用するかけ流し式海生生物養殖装置及び陸上屋内海生生物養殖施設に関する。
【背景技術】
【0002】
サンゴ礁は、その外観の美しさゆえに観光資源として利用されるだけでなく、他の海洋生物の生息場所としての役割を果たし、海洋生態系の一員としての大きな役割を担っている(熱帯・亜熱帯浅海域の生態系を形成する上での鍵種(基盤)としての役割を担っている。)。また、沖縄諸島などの熱帯・亜熱帯地域の島嶼においては、自然の堤防として機能し、台風による高潮等から人命や財産を守る役目を果たしている。
【0003】
しかし、近年、産業廃水や生活雑排水などによる海水の汚染、海水温度の上昇による大規模なサンゴの白化現象や、台風や津波などの天災、或いはサンゴを捕食する生物の大量発生などによるサンゴの減少が、各地で報告されている。例えば、沖縄本島周辺のサンゴ礁は、これら種々の阻害要因のため、危機的な状況にあり、このように一旦破壊されたサンゴ礁を自然の力で回復させるには、膨大な時間を必要とする。
【0004】
また、天然海域から親サンゴを採取し、それを幾つかのサンゴ片に分けて増殖する従来の方法(従来の無性生殖による養殖)では、残されたサンゴに与えるダメージが大きい。
【0005】
そこで、サンゴ卵又はプラヌラ幼生をサンゴ成体に育てる有性生殖による養殖技術及び一旦有性生殖による養殖によって得られた養殖サンゴを無性生殖により増殖させる養殖技術の開発が強く求められている。
【0006】
現在行われているサンゴ養殖方法として、天然海域での垂下式による無性生殖による方法と、モナコ方式やベルリン方式などと呼ばれる閉鎖循環式水槽による極めて小規模な無性生殖による方法とがある。前者は、台風、高水温等の自然条件に左右されるので、安定的な供給が見込めず、競合する海藻類のコントロール等に多大な労力を費やさなければならない。後者は、電力消費量の大きいメタルハライドライト照明や水温管理用のユニットクーラー等の電気代、定期的な微量物質等の添加剤投入による薬剤代などの費用がかかり、非常に高コストとなる;また、規模が小さいため、広範囲に白化したサンゴ礁を修復するための十分なサンゴ移植用苗を提供することができないなどの欠点をもつ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、安定且つ効率的に低コストで、サンゴを養殖する手段を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
地下浸透海水は、透水性の高いサンゴ礁などに由来する石灰岩や、同じく透水性の高い砂質等が堆積した地層の一部が海洋底まで繋がっている地下基盤をもつ地域(例えば、沖縄県)において、採取することができる海水である。地下浸透海水とは、海洋から浸入した海水が、石灰岩層(例えば、琉球石灰岩層)または透水性の高い地層により自然浄化されながら、陸地の地下まで浸透したものである。地下浸透海水は、外洋の海水と同程度の塩分やミネラル分を含んでおり、ほぼ無菌状態であり、年間を通じて安定し且つサンゴの養殖に適した水温を保っている。
【0009】
しかしながら、例えば、沖縄諸島において、限られた一部の地域を除く殆どの地域では、地下浸透海水には、人間の生活活動、農業生産などの由来する窒素成分および/またはリン成分を含んでいる。これらの“富栄養化”した地下浸透海水は、サンゴに対する有害な微生物、競合生物などの生育に好適な環境を提供するので、サンゴの安定した養殖に利用することは、実際上不可能である。
【0010】
本発明者らは、サンゴの養殖に地下浸透海水を利用する場合の問題点に留意しつつ、研究を重ねた結果、以下の事実を見出した。すなわち、陸上で、かけ流し方式を採用し、予め窒素成分および/またはリン成分を低減する予備処理を行った地下浸透海水を使用して、養殖用水槽内に水流を発生させつつ、該養殖用水槽中で藻類摂食動物や脱窒機能を有する生物等を飼育する生態系システムを構築する場合には、窒素成分および/またはリン成分が効果的に低減され、海水の栄養塩濃度、水温、水質等がサンゴの養殖に適している環境が形成されること、その結果、サンゴにとって有害な細菌や競合生物の影響を受けず、自然環境にも影響されることなく、年間を通して安定して効率的且つ低コストでサンゴを養殖することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
さらに、この様な生態系システムにおいては、上記のサンゴ養殖に適したシステムを機能的に支えるアワビなどの他の有用な海生生物をサンゴとともに、或いは単独で(サンゴの不存在下に)、生育(養殖)させるも可能であることを併せて見出した。
【0012】
即ち、本発明は、下記の有用海生生物の養殖方法、養殖装置、養殖施設などに関する。
項目1.
I)地下浸透海水の窒素及び/又はリンの濃度を低減させる工程、及び
II)工程Iで得られた地下浸透海水を含む養殖用水槽中で、サンゴ卵、サンゴプラヌラ幼生、稚サンゴ、サンゴ成体からなる群より選択される少なくとも1種を生育させる工程、
を包含する、かけ流し方式の、サンゴの養殖方法。
項目2.
工程I)による地下浸透海水中の窒素濃度及び/又はリン濃度の低減を、海藻バイオフィルター水槽、二枚貝フィルタ−水槽、プロテェインスキマー並びに窒素吸着剤及び/又はリン吸着剤を収容する水槽からなる群より選択される少なくとも1種の予備処理水槽において行う、項目1に記載のサンゴの養殖方法。
項目3.
III)養殖用水槽中で、藻類摂食動物および底砂脱窒機能生物を飼育する工程、
をさらに包含する、項目1又は2に記載のサンゴの養殖方法。
項目4.
II)予め窒素及び/又はリンの濃度を低減させた地下浸透海水を含む養殖用水槽中で、サンゴ卵、サンゴプラヌラ幼生、稚サンゴ、サンゴ成体からなる群より選択される少なくとも1種を生育させる工程、
III)養殖用水槽中で、藻類摂食動物および底砂脱窒機能生物を飼育する工程、
を包含する、かけ流し方式の、サンゴの養殖方法。
項目5.
養殖用水槽中でアワビ、サラサバティラ、ギンタカハマガイ、チョウセンサザエ、シャコガイ、ニシキウズラ、シラヒゲウニ、マガキガイからなる群から選ばれた海藻コントロール機能を発揮する生物の少なくとも1種とマガキガイ、ナマコ類からなる群から選ばれた底砂脱窒機能を発揮する生物の少なくとも1種とアコヤガイ、シャコガイからなる群より選択される栄養源吸収低減機能を発揮する生物の少なくとも1種とが飼育され、及び/又は養殖用水槽にライブサンドが設置される、請求項1〜4のいずれかに記載のサンゴの養殖方法。
項目6.
地下浸透海水が、琉球石灰岩層及び透水性の高い地層を浸透した地下浸透海水である、項目1〜5のいずれかに記載のサンゴの養殖方法。
項目7.
項目1〜6のいずれかに記載の方法に従って養殖されたサンゴ。
項目8.
項目1〜6のいずれかに記載の方法に従って養殖された有用海生生物(サンゴを除く)。
項目9.
有用海生生物が、アワビである請求項8に記載の有用海生生物。
項目10.
項目1〜6のいずれかに記載のサンゴの養殖方法に準じて、海生生物(サンゴを除く)を生育又は増殖させる、有用水産生物の養殖方法。
項目11.
項目10に記載の方法に従って生育又は増殖された、有用海生生物(サンゴを除く)。
項目12.
海藻バイオフィルター水槽、二枚貝フィルター水槽、プロテェインスキマー並びに窒素吸着剤及び/又はリン吸着剤を収容する水槽からなる群より選択される少なくとも1種の地下浸透海水予備処理水槽と
予備処理槽から地下浸透海水を取り込む取水管、サンゴ付着基質、水流発生装置、エアレーション装置、通水性支持体上に配置されたライブサンド層、ライブサンド層と水槽底部との間に設けられた高濃度硝酸含有海水収容部および海生生物養殖槽と、
該収容部から系外に取り出された排水を集合させ、栄養塩低減化を行う排水水槽と
を備えたことを特徴とする、かけ流し式有用海生生物養殖装置。
項目13.
項目12に記載のかけ流し式海生生物養殖装置を備える、陸上屋内有用海生生物養殖施設。
項目14.
さらに、照度調節装置及び/又は水深調節装置を備える、項目12または13に記載の陸上屋内有用海生生物養殖施設。
項目15.
項目12〜14のいずれかに記載のかけ流し式有用海生生物養殖装置を備える、陸上屋内サンゴ養殖施設。
項目16.
項目12〜14のいずれかに記載のかけ流し式有用海生生物養殖装置を備える、陸上屋内アワビ養殖施設。
【0013】
以下に、必要に応じて、図面を参照しつつ、本発明に関連する種々の要素について、より詳細に説明する。
【0014】
サンゴ卵又はサンゴプラヌラ幼生
サンゴ卵又はサンゴプラヌラ幼生は、いかなるサンゴ礁から採集されたものであってもよいが、状態良好なサンゴ礁から採集された卵又は幼生を用いることが望ましい。サンゴの種類はいかなる種類であってもよいが、養殖したサンゴを海底に移植することを目的とする場合には、その移植場所でかつて生息していたサンゴと同種のサンゴを選択することが好ましい。
【0015】
サンゴ卵又はプラヌラ幼生の収集方法としては、例えば、笠の形をした卵回収装置を産卵間際のサンゴの上部にかぶせておき、産卵後に、笠の上部の円筒内に、サンゴの卵や精子を含んだ浮遊性のバンドルを収容して、獲得する方法;大潮時に一斉に産卵されて、海面付近を漂っている卵又は幼生を不透過性の網材で回収する方法(特開2003−219751号公報)などの公知の方法を採用することができる。
【0016】
サンゴ卵をサンゴ付着基質に着生させる方法も、限定されず、例えば、特開2003−219751号公報に記載された公知の方法を採用することができる。
【0017】
或いは、天然海域で放出されたサンゴの卵塊(スリック)を採取して、養殖用水槽内で受精および定着させた後、飼育しても良い。
【0018】
着生期
着生期とは、一般に、サンゴ卵から孵化したプラヌラ幼生が、サンゴ付着基質への着生を開始してから、着生後、変態を終えるまでの期間をいう。
【0019】
稚サンゴ成長期
稚サンゴとは、一般に、着生後のサンゴ幼生が、骨格の形成をもつポリプ(親サンゴと同じ体のつくりをしたポリプ)へ変態した後のサンゴのことを意味する。稚サンゴは、幼ポリプと呼ばれることもある。稚サンゴ成長期とは、一般に、稚サンゴが成長していく期間をいう。
【0020】
群体増殖期
群体増殖期は、一般に、稚サンゴが生殖を開始してから、稚サンゴが分裂したり芽を出したりすることにより個体数を増やして、群体として増殖していく期間を示し、群体が死滅するまで続く。
【0021】
サンゴの生殖
本発明において、サンゴの生殖は、無性生殖により行ってもよく、或いは有性生殖により行っても良い。天然サンゴを傷つけないためには、有性生殖により養殖するか、或いは一旦有性生殖により生育させた養殖サンゴ成体を用い、無性生殖により増殖させることが好ましい。
【0022】
地下浸透海水
地下浸透海水としては、地下の深層部まで海水が浸透した場所で得られたものを使用することができる。特に、陸水の影響が少ない海岸から近い場所で採取され、塩濃度やミネラル濃度を低下させるような地層を経由せずに採取された地下浸透海水が好ましい。
【0023】
特に好ましい地下浸透海水の例としては、多孔性の石灰岩である琉球石灰岩の地層を浸透した地下浸透海水が挙げられる。
【0024】
地下浸透海水の採取は、既知の採取方法(例えば、特願平5−39272号公報に記載のような方法)に従って行なうことができる。このとき、ボーリングと並行して、地下浸透海水中の塩分、ミネラル分の濃度、水温、細菌数、窒素成分およびリン成分の濃度などを測定しながら行なうのが好ましい。
【0025】
採取された地下浸透海水は、一旦タンク等に貯留し、溶存酸素量、PHなどを調整した後に、海藻バイオフィルター(二枚貝フィルター)水槽、窒素吸着剤及び/又はリン吸着剤を収容する水槽などの予備処理槽のいずれか一方または双方において処理して、脱窒およびまたは脱リンを行い、次にプロテェインスキマーによる更なる栄養塩低減を行い、最後に、養殖用水槽へ注水することが好ましい。
【0026】
溶存酸素量、PHの調整は、市販のエアストーンやエアポンプなどを用いたエアレーションにより、行なうことができる。
【0027】
菌体数の測定は、常法(例えば、電子顕微鏡、光学顕微鏡などによる観察)により、行なうことができる。
【0028】
養殖用水槽
養殖用水槽は、市販のかけ流し式水槽を適宜改良して用いることができる。また、空気中の細菌、胞子、塵などが水槽内に入り込むのを防ぐため、蓋を備えていることが好ましい。養殖用水槽の側面および蓋は、光を透過する材質でできていることが好ましい。また、サンゴの種類や主な生息水深の照度を考慮し、減光ネット、減光フィルター、減光フィルム及びクリアトタンなど照度調節装置(照度調節材)によって減光したり、或いは、水槽内にて、サンゴの設置水深を選択したりすることによって、適宜、照度を調節するのが好ましい。サンゴの設置水深を調節するための水深調節装置としては、例えば、異なる高さの段を設けた網棚、はしご状又は階段状の支柱に段を設けた棚などを用いることができる。
【0029】
光は、太陽光が好ましい。また、水槽の大きさや形状はいかなるものであってもよい。
【0030】
また、稚サンゴ、又は稚サンゴよりも未熟な発育段階におけるサンゴについては、上記かけ流し方式による養殖用水槽とは別の閉鎖循環方式水槽で生育させてもよい。このとき、稚サンゴ、又は稚サンゴよりも未熟な発育段階におけるサンゴに適した飼育用海水を用いてもよい。また、適宜(例えば、1ヶ月に1回程度)、閉鎖環方式水槽内の飼育用海水を交換することが好ましい。
【0031】
サンゴ付着基質
サンゴ付着基質は、天然基質であっても、人工基質であってもよい。人工基質としては、特に制限されず、例えば、塩化ビニル、素焼き、ゼオライトなどが好適に使用できる。
【0032】
サンゴ付着基質は、吊り下げ方式、水槽底部に設置する方式などの慣例的に用いられる方法により、水槽に設置することができる。例えば、吊り下げ方式は、サンゴ付着基質を水槽の上部から吊り下げた状態で設置するので、水槽内壁やサンゴ付着基質を這って移動する藻類摂食動物からサンゴを守ることができ、好適である。
【0033】
窒素及び/又はリンの除去
窒素及び/又はリンの除去は、以下に記載する海藻バイオフィルター(二枚貝フィルター)を使用して、窒素吸着剤及び/又はリン吸着剤を使用して、海水中の有機物を餌とする動物を飼育して、或いは、従来の脱窒素及び/又は脱リン方法などにより、或いはこれらの方法を適宜組み合わせることにより、予備処理水槽内で行なうことができる。さらに、予備処理された海水が給水されるサンゴ飼育水槽においても、海水及び水槽底に敷設された底砂上の有機物を餌とする動物を飼育して、或いはライブサンドとその下部の間隙層からなる硝酸態窒素凝集装置とそれに連結する強制排水管を組み合わせて、より高度の除去をおこなうことが出来る。
【0034】
海藻バイオフィルター(海藻バイオフィルター水槽)
海藻バイオフィルターは、海藻が窒素やリンを栄養源として吸収することを利用する生物濾過装置の一形態である。海藻バイオフィルターは、常法(例えば、水槽の底部に砂又は支持体を敷設し、その上で海藻を生育させる方法など)により、形成することができる。また、水槽中に浮遊した状態で海藻を生育させる方法も使用することができる。海藻バイオフィルターにより、地下浸透海水中の窒素及びリンが吸収され、後続の養殖用水槽内でサンゴと競合する生物(例えば、藻類)の発生や繁殖を抑えることができる。
【0035】
海藻バイオフィルターに用いる海藻の種類は、いかなるものであってもよいが、例えば、大型海藻を好適に用いることができる。大型海藻としては、特に制限されず、例えば、緑藻アオサ属海藻、紅藻ツノマタ属海藻、紅藻オゴノリ属海藻、褐藻コンブ属海藻、緑藻イワズタ属海藻などが挙げられる。
【0036】
海藻バイオフィルターに使用する海藻が有用種である場合には、本発明のサンゴなどの有用生物養殖方法を利用して、有用海藻の生育及び/又は増殖を併せて行うことが可能である。これにより生育及び/又は増殖した有用海藻は、食用や観賞用などとして広く使用できる。
【0037】
海藻バイオフィルターは、サンゴの養殖用水槽とは別に、予備処理水槽としての海藻バイオフィルター用の水槽内に収容する。この場合、海藻バイオフィルターを収容した水槽(海藻バイオフィルター水槽)と養殖用水槽とを繋ぐパイプ、海藻バイオフィルター水槽から養殖用水槽へ海水を送り込むためのポンプやモーターなどを、適宜設置する。
【0038】
二枚貝フィルター(海藻バイオフィルター水槽と同じ水槽)
二枚貝フィルターは、アコヤガイなどの二枚貝が、窒素成分、リン成分、浮遊有機物などを栄養源として吸収することを利用する生物濾過装置の他の形態である。二枚貝フィルターは、常法(例えば、メッシュ状の段を設置し、その上で生育させる方法や、ロープを水面より垂下させ、そのロープに結び生育させる方法等)により、形成することができる。二枚貝フィルターにより、地下浸透海水中の窒素及びリンが吸収され、後続の養殖用水槽内でサンゴと競合する生物(例えば、藻類)の発生や繁殖を抑えることができる。
【0039】
二枚貝フィルターに用いる二枚貝の種類は、いかなるものであってもよい
が、例えば、大型の二枚貝を好適に用いることができる。種類としては、特に制限されず、例えば、アコヤガイ、ウミギクガイ、シロトゲウミギクガイ、マガキ、ムラサキイガイ、クロチョウガイなどが挙げられる。
【0040】
二枚貝フィルターに使用する二枚貝が有用種である場合には、本発明のサンゴなどの有用生物養殖方法を利用して、有用二枚貝の生育及び/又は増殖を併せて行うことが可能である。これにより生育及び/又は増殖した有用二枚貝は、食用や観賞用などとして広く使用できる。
【0041】
二枚貝フィルターは、サンゴの養殖用水槽とは別に、海藻フィルターと同じ予備処理水槽内に収容する。この場合、予備処理水槽と養殖用水槽とを繋ぐパイプ、プロテェインスキマー、予備処理水槽から養殖用水槽へ海水を送り込むためのポンプやモーターなどを、適宜設置する。
【0042】
窒素吸着剤及び/又はリン吸着剤
本発明において、予備処理水槽内に収容した窒素吸着剤及び/又はリン吸着剤を用いて、地下浸透海水中の窒素及び/又はリンの濃度を低減させることができる。本発明においては、予め海藻バイオフィルターにより地下浸透海藻中の窒素及び/又はリンの濃度を低減させ、さらに窒素吸着剤及び/又はリン吸着剤を用いてより高度の脱窒素及び/又は脱リンを行った後、この地下浸透海水をサンゴ養殖用水槽内へ送り込むことが好ましい。それゆえ、窒素吸着剤及び/又はリン吸着剤は、海藻バイオフィルター水槽と養殖用水槽とはそれぞれ独立した予備処理水槽内に収容することが好ましい。複数の吸着剤を用いる場合は、それぞれを別々の予備処理水槽内に収容してもよいし、複数の吸着剤を同じ予備処理水槽内に収容してもよい。
【0043】
予備処理水槽を経て養殖用水槽内へ注水される地下浸透海水は、硝酸イオン濃度が、例えば約100ppb以下、好ましくは約70ppb以下、さらに好ましくは約40ppb以下であることが望ましい。リン濃度については、例えば約20ppb以下、好ましくは約15ppb以下、さらに好ましくは約9ppb以下であることが望ましい。
【0044】
窒素吸着剤としては、特に制限はなく、例えば、硝酸塩吸着剤を用いることができる。
【0045】
硝酸吸着剤としても、特に制限はなく、例えば、複合金属水酸化物の結晶の加熱処理物を有効成分とするNi−Feを含む水酸化物から合成した層状複水酸化物(LDH)を有効成分とする硝酸吸着剤(特願2002−296740号公報)、黒鉛−硝酸化合物(特公昭60−18605号公報)、トリブチルアミノ基を有するイオン交換樹脂(米国特許第4,479,877号明細書)、二級アミン置換基および3級アミン置換基を有する樹脂(特開平5−15776号公報)、リン酸エステルとアミノ基を有する共重合体(特開平7−238113号公報)などを用いることができる。またアンモニウムイオン吸着剤としても、特に制限はなく、例えば、ゼオライトなどを用いることができる。
【0046】
リン吸着剤としても、特に制限はなく、例えば、MII1-xIIIx(OH)2n-y・mH2Oで表わされる複合金属水酸化物の結晶の加熱処理物を有効成分とするリン吸着剤(特願2002−250965号公報)、石灰質原料、ケイ酸質原料及びゼオライトの反応生成物からなる脱リン材(特開2001−9470号公報)、アロフェンを主成分とする物質を成形し、300〜600℃で焼成してなる除去材(特開平3−68445号公報)、産業廃棄物を溶融処理して得たスラグを微粉砕し、その中の酸化カルシウムをアルカリ処理して除去し、多孔状化したリン除去用無機吸着材(特開昭63−39632号公報)、流動床ボイラーから排出される灰を主成分とする脱リン材(特開平5−261378号公報)、ハイドロタルサイト類を有効成分とした脱リン剤(特開2000−24658号公報)などを用いることができる。
【0047】
窒素吸着剤及び/又はリン吸着剤の添加量は、添加剤の種類、地下海水の窒素及び/又はリン濃度(硝酸イオン濃度、リン酸イオン濃度、アンモニウムイオン濃度など)、処理容積、処理流速、温度、吸着剤の状態、競合生物の成長に必要な最低栄養塩濃度などを総合的に考慮して、適切に選択することができる。
【0048】
藻類摂食動物の飼育
養殖用水槽内で藻類摂食動物を飼育することにより、水槽内で成長した藻類を取り除くことができる。藻類摂食動物としては、サンゴの生育に適した条件下で生息可能な藻類摂食動物が適している。
【0049】
さらに、藻類摂食動物としては、サンゴに食害等の悪影響を与えない適切な種類を用いる必要がある。例えば、巻貝については、ギンタカハマガイ、ニシキウズガイ、ムラサキウズガイ、チョウセンサザエ、マガキガイ、コシダカギンタカハマガイ、ベニシリダカガイ、オオウラウズガイなどは、親サンゴだけでなく、稚サンゴも食害することがないことを確認しており、十分に使用可能である。ウニについては、例えば、シラヒゲウニなどが挙げられる。
【0050】
特に注目すべきことに、北方系のエゾアワビは、その飼育適温が22〜23℃であるといわれていた。しかるに、本発明で使用する約25℃の地下浸透海水中においても、生存率が高く、飼育可能であることが明らかとなった。換言すれば、地下浸透海水の高栄養塩濃度と低温安定性とにより、餌となる海藻が適度に繁茂し、その成長速度が速いので、アワビを無給餌でかつ特別の管理を行うことなく、収穫することが出来る。ただし、エゾアワビは、サンゴを食害するので、サンゴの不存在状態で、或いはサンゴから隔離して、飼育する必要がある。
【0051】
藻類摂食微小動物を用いても、藻類摂食動物の飼育による競合生物の除去を好適に行なうことができる。藻類摂食微小動物としては、例えば、コマキアゲエビスガイなどのニシキウズガイ科巻貝などが挙げられる。
【0052】
藻類摂食動物(藻類摂食微小動物を含む)によるサンゴ幼生や稚サンゴの混食が考えられる時期(サンゴの骨格が形成される前)には、海藻バイオフィルター、リン吸着剤及び窒素吸着剤からなる群より選択される少なくとも1種を用いた窒素及び/又はリン濃度の低減による海藻除去が好ましい。即ち、群体増殖期においては、海藻バイオフィルター、リン吸着剤及び窒素吸着剤からなる群より選択される少なくとも1種を用いた窒素及び/又はリン濃度の低減による海藻除去を行なうとともに、或いはそれらを行なう代わりに、藻類摂食動物の飼育を好適に行なうことができる。
【0053】
藻類摂食動物が有用種である場合には、本発明のサンゴ養殖方法を利用して、サンゴとともに、或いはサンゴの不存在状態で、有用動物の生育及び/又は増殖が可能である。この生育及び/又は増殖した有用動物は食用や観賞用などとして広く使用できる。
【0054】
藻類摂食動物の種類や数は、海藻の繁殖速度、藻類摂食動物の摂食能力、水量などに応じて、適宜選択することが出来る。
【0055】
ライブサンド
ライブサンドとは、一般的に、濾過能力をもつバクテリアが生息している砂を意味する。ライブサンドは、表面付近の好気性バクテリアによるアンモニア→亜硝酸→硝酸塩という硝化作用と、砂底付近の嫌気性バクテリアによる硝酸塩→窒素ガスという反硝化作用をもち、水中の硝酸塩レベルを低い状態を維持することができる。
【0056】
本発明においても、このようなライブサンドを用いて、サンゴや藻類摂食動物が排泄した老廃物中のアンモニアを最終的に窒素ガスに変え、地下浸透海水中の硝酸塩濃度を低く保つことができる。
【0057】
ライブサンドとしては、市販のライブサンドを好適に用いることができる。
【0058】
ライブサンドの量は、水槽内の水量、ライブサンドの濾過能力、藻類摂食動物の個体数などに応じて、適宜、選択することができる。
【0059】
ライブサンドは、サンゴを飼育している養殖用水槽の内部に設置(敷設)するか、または外付けのライブサンド用水槽内に敷設する。水槽内にライブサンドを敷設する場合は、ライブサンドと底面との間に間隙層を設けることが出来る。ライブサンド層を透水性であるが砂を透過させないメッシュ材上に敷設し、メッシュ材下方に間隙層を形成することが好ましい。この間隙層に存在する海水は、図12に示す後述の手法で強制的に排水する。
【0060】
取水管
本発明の養殖用水槽は、予備処理された地下浸透海水を養殖用水槽に取り込むための取水管を備える。給水量等を考慮して、市販品を選択すればよい。
【0061】
プロテェインスキマー
予備水槽からの予備処理された地下浸透海水を養殖用水槽に取り込む前に、プロテェインスキマーにより、さらに高度の脱窒処理を行うことが好ましい。これにより、藻類の破片、浮遊有機物、ならびにアンモニア態窒素が大幅に低減され、養殖用水槽での海藻繁茂を良好に制御することが可能となる。
【0062】
排水管
本発明の養殖用水槽は、生物類の生育活動により生成する硝酸を高濃度で含む地下浸透海水廃水を外部へ排出するための排水管を備える。
【0063】
すなわち、地下浸透海水のかけ流し方式による本発明においては、地下浸透海水の栄養塩濃度が高く、更に給水量の制限により水槽内の滞留時間が長い為、生物活動により生成される硝酸が増加し、常に、海水や底砂が富栄養化傾向にある。その場合、窒素成分の供給量が分解量を超えるので、窒素成分を窒素にまで完全分解させる「生物脱窒による方法」のみで栄養塩のコントロールを行うことは、不可能である。
【0064】
そのため、養殖用水槽中のライブサンド層下方に設けられた上述の間隙層内には、ライブサンドとメッシュ材とを透過して、硝酸濃度の高い地下浸透海水廃水が次第に蓄積してくる。従って、図12に模式的に示す様に、間隙層内或いは間隙層底部に上端が位置する排水管を養殖用水槽外に延びる様に配設し、硝酸濃度が所定の値まで上昇した時点で、排水管下流側の強制排水バルブを開いて、養殖用水槽外に排水を行う。排水管の本数、排水の回数などは、養殖用水槽の大きさなどに応じて、適宜選択できる。
【0065】
動物を用いた脱窒方法
さらに、海水中の有機物を餌とするナマコ類(例えば、ニセクロナマコ、クロナマコ、ニシキナマコ、フタスジナマコ、バイカナマコ)や巻貝のマガキガイなどの生物を飼育し、脱窒を行ってもよい。脱窒に用いる生物が有用種である場合には、本発明のサンゴ養殖方法を利用して、有用生物の生育及び/又は増殖が可能である。このように生育及び/又は増殖した有用生物は食用や観賞用などとして広く使用できる。
【0066】
動物を用いた砂上生育藻類除去方法
さらに、マガキガイ、ウニ類(例えば、シラヒゲウニ、ラッパウニ、マダラウニ)などの生物を飼育し、砂上生育藻類の除去を行ってもよい。砂上生育藻類除去に使用する動物が有用種である場合には、本発明のサンゴ養殖方法を利用して、サンゴとともに、或いはそれ自身単独で、有用動物の生育及び/又は増殖が可能である。このように生育及び/又は増殖した有用生物は食用や観賞用などとして広く使用できる。
【0067】
浄化装置(濾過装置)
本発明においては、必要に応じて、養殖用水槽に浄化装置を設置し、水中の藻類摂食動物の排泄物やバクテリアの死骸を除去してもよい。
【0068】
浄化装置には、例えば、市販されている活性炭フィルター、ゼオライトフィルター、アンモニウム吸着剤として有機アニオン系吸着剤とゼオライトのミックスbedなどを用いることができる。
【0069】
水流発生装置
本発明では、養殖用水槽に、水流発生装置を設置することにより、養殖用水槽内の水温や水質を均一に保つことができる。また、水流発生装置を利用し、清浄な水をサンゴ付着基質付近に送り込んだり、不浄な水を排水口付近に送り込んだりすることができる。又、サンゴ白化防止に機能する。
【0070】
水流発生装置としては、水流を発生させるポンプやモーターだけでなく、水流発生の効率を高めるように配置された隔壁なども含む。
【0071】
かけ流し方式(かけ流し式)
かけ流し方式は、新しい水を注水しながら、それと同量の水を水槽から排出する方法である。一般的に、かけ流し方式は、循環方式に比べ、水槽を清潔に保つことができるという利点を有する。
【0072】
注水量及び排出量は、水槽を清潔に保つことができ、さらにサンゴの成長に適した水温を維持することができる量であることが好ましい。例えば、400リットルの水槽の場合、3〜6リットル/分程度、好ましくは4〜5リットル/分程度である。
【0073】
栄養塩低下用排水処理水槽
上記の養殖用水槽からの高硝酸濃度排水とかけ流し方式からの排出水とを併せて処理することにより、排水全体の栄養塩低減化をおこなう。この処理水槽における栄養塩低減化は、前述の海藻バイオフィルターおよび二枚貝フィルターにおけると同様の手法により、行うことが出来る。
【0074】
養殖場所
養殖場所は、地下浸透海水を入手しやすい場所が好ましい。外気の温度、天候などに影響されない屋内が好ましい。いかなる場所でも、照度調節などを行い、サンゴの生育に適した環境をつくることが必要である。
【0075】
陸上屋内サンゴ養殖用施設
陸上屋内サンゴ養殖施設の屋根・壁等の材料については、地下浸透海水を利用する上でのサンゴの適性照度を考慮し、遮光率、紫外線遮断率を考慮し選択する。又、屋根・壁の遮光率、紫外線遮断率に加え、太陽光の水深による減衰を考慮し、水槽の深さを確保する。水槽の深さは、例えば1〜5m程度、好ましくは1.5〜3.5m程度、さらに好ましくは2m程度である。水分の蒸発防止や胞子等の混入防止のため、或いは照度調節のため、養殖用水槽にビニールシートやトタンなどの覆い又は蓋をしてもよい。また、必要に応じて、前述のような、照度調節装置及び/又は水深調節装置を備える。
【0076】
サンゴ礁の造成
本発明に従って養殖したサンゴを白化現象がみられる海域に移植し、サンゴ礁を造成することができる。本発明に従って養殖したサンゴは、例えば、特願2002−102945号公報、特願2002−87543号公報、特願2001−197161号公報などに記載の既知の方法に従って、移植することができる。
【発明の効果】
【0077】
本発明に従い、地下浸透海水を使用すると同時に、海藻バイオフィルター、二枚貝フィルター、プロテェインスキマーの使用、窒素及び/又はリンの除去、及び藻類摂食動物の飼育による競合生物の繁殖抑制などを適宜行なうことによって、陸上で、清浄な環境で、低コストで、効率的に、且つ年間を通じて安定して、サンゴを大量に養殖することが可能になった。
【0078】
また、本発明は、陸上で行われるため、天災や海水汚染などに影響されずに、安定にサンゴを養殖することができる。
【0079】
サンゴが天然に生息している海域の海水と同程度の塩分、ミネラル分、その他の微量成分等を含む地下浸透海水を用いることにより、サンゴにストレスをかけることなく、サンゴを陸上で養殖することが可能になった。これにより、サンゴの生存率、成長率を高めることが可能になった。
【0080】
ほぼ無菌状態の地下浸透海水の使用によって、サンゴにとって有害な病原菌を含まない清潔な環境においてサンゴを養殖することが可能となり、それゆえサンゴの生存率を高めることが可能になった。
【0081】
地下浸透海水の使用に加え、海藻バイオフィルター等による競合生物の抑制を行なうことにより、さらに、サンゴの生存率、成長率を高めることが可能になった。
【0082】
また、水槽の蓋・側面、施設の屋根・壁などに遮光効果及び/又は紫外線遮断効果を有する材料を使用することにより、又、サンゴ付着基質を設置する水深を調節することにより、天候の変化による水質変化や季節の照度変化で起きる白化の発生を制御し、効率的に成長を高めることが可能になった。
【0083】
また、地下浸透海水は年間を通じてサンゴの養殖に適した水温で存在するので、天然海域と違って、年間を通して高い成長が見込め、更に、温度調節に費やす電力や労力を節約することができる。
【0084】
また、海藻バイオフィルターや藻類除去に用いる藻類や動物等がアワビ類などの有用生物である場合には、本発明のサンゴ養殖システムを、そのまま他の水産物の増殖システムとして利用することもできる。これらの水産物は、清浄な地下浸透海水中で生育するため、海洋の海水中に含まれる有害物質等を含まず、また、他の生物による食圧を受けないので、非常に高品質である。これらの水産物の生育或いは養殖は、サンゴとともにおこなっても良く、或いはサンゴの養殖とは独立しておこなっても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0085】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明するための単なる例示であって、本発明を何ら限定するものではない。
[実施例1]
(1)単藻類培養株の作成
大型海藻成長評価実験において、天然に生育している大型海藻をそのまま使用することは難しい。その理由は、大型海藻付着共存微生物などの成長速度が人工的培養条件下で大型海藻よりも速い場合が多く、微生物などが異常増殖して大型海藻の成長に影響を及ぼすからである。付着共存微生物を除去する方法には薬剤処理法や単藻培養株作成法等が知られているが、単藻培養株作成法を選択した。単藻培養株の出発材料としては紅藻テングサ属大型海藻の成熟雌性配偶体を天然海域から採取して用いた。
【0086】
成熟雌性配偶体の成熟部分を3cmの長さに切断し、滅菌海水等で洗浄後、滅菌海水中で一晩放置することにより胞子を放出させた。放出された胞子を滅菌したパスツールピペットで吸い上げ保存培養用培養液30mlの入ったスクリュー管に分離し、14時間明期/10時間暗期の周期で光を与えて静置培養を行った。保存培養用培養液は海水を0.20μmのセルロースアセテートメンブランフィルター(アドバンテック東洋社製)でろ過後、100℃30分間滅菌し、予め滅菌処理したProvasoliの海水補強栄養剤を添加して調製した。
【0087】
静置培養開始後21日目までに、胞子の発芽が観察された。培養液交換は28日毎に行った。培養開始後70日間で直立体の長さは約1cmまで成長した。直立体をスクリュー管底からピンセットではずしフラスコに移植し,保存培養条件で培養することにより、テングサ属大型海藻の単藻培養株を得た。
【0088】
(2)硝酸吸着剤の合成
海水から硝酸イオンを吸着除去する吸着剤としてNi−Feを含む水酸化物を合成した。合成はNiCl2とFeCl3の混合溶液にNaOHを加えて共沈させ、120℃で1日熟成した後、沈殿物を濾過洗浄し、50℃で1日間乾燥して行った。
【0089】
合成した吸着剤の海水中の硝酸イオンに対する吸着性能を、市販のイオン交換樹脂および市販の水槽用硝酸吸着剤と比較した。吸着実験はNaNO3が1.86mg/Lの硝酸添加海水1Lに吸着剤0.1gを添加し、25℃で3日間行った。ここで用いた海水は香川県庵治町沖より得られた海水に硝酸ナトリウムを加え、硝酸イオン濃度を3.5mg/lに調製した海水を用いた。硝酸イオンの定量は吸光光度法(カドミウム還元法)により行った。硝酸吸着量の比較結果を以下の表1に示す。合成した吸着剤は市販の吸着剤と比べ、約3倍の吸着性能を有していた。
【0090】
【表1】


【0091】
硝酸イオン吸着等温線は、NaNO3が1.86mg/Lの海水1LにNi−Fe吸着剤を0.05gから0.175g添加し、25℃で3日間行って求めた。結果を溶液中に残存する硝酸濃度に対して吸着剤中の硝酸吸着量をプロットした吸着等温線は、Freundlich型であった。なお、本吸着剤を175mg加えた場合、硝酸イオン濃度は0.22mg/Lまで減少し、吸着剤添加量を増やすことにより、硝酸イオンをさらに低濃度まで吸着除去できることが示唆される。
【0092】
硝酸イオン吸着量のpH依存性はHClおよびNaOHでpHを調整したNaNO3が1.86mg/Lの海水1Lに吸着剤0.1gを添加し、25℃で3日間行った。硝酸イオンの吸着量は海水のpHに大きく依存し、pH8付近で最大となり、35mg/gの吸着量を示した。これらの結果から、Ni−Fe LDHは海水から硝酸イオンを選択的に除去する新規の吸着剤として有望である。
【0093】
(3)地下浸透海水中の窒素濃度の低減処理
沖縄県浦添市牧港内の地下海水サンゴ陸上養殖プラント内でくみ上げた地下浸透海水200mLに対して上記硝酸吸着剤湿重量1gを入れ約80分間撹拌し、窒素濃度の低減処理をした。窒素濃度の低減処理をした地下浸透海水を窒素低減処理済み地下浸透海水という。一方、硝酸吸着剤で処理を行わなかった地下浸透海水を未処理地下浸透海水という。
【0094】
硝酸吸着剤による海藻成長抑制を評価するために、窒素低減処理済み地下浸透海水あるいは未処理地下浸透海水を用いて培養したときの海藻成長量の比較をおこなった。
【0095】
テングサ属大型海藻の単藻培養株4.8mg(湿重量)を培養海水200mLの入った三角フラスコ1本に添加した。温度を25℃,14時間明期/10時間暗期の光周期の条件で、攪拌(100rpm)を行いながら海藻培養器の中で培養した。培養は,月曜日に開始し、培養液交換は金曜日と月曜日に行なう、週2回換水の条件で行った。窒素低減処理済み地下浸透海水あるいは未処理地下浸透海水それぞれの実験点数は5点とした。未処理地下浸透海水の実験区を実験区Aとした。窒素低減処理済み地下浸透海水の実験区を実験区Bとした。培養開始から1週間は、両実験区とも未処理地下浸透海水で培養し、培養1週間目から実験区Aは未処理地下浸透海水、一方、実験区Bは窒素低減処理済み地下浸透海水で培養した。培養1週間毎に海藻の湿重量を測定した。実験区Aの1週間毎の海藻湿重量(実験点数5点の平均値)は、培養1週目で11.5mg、培養2週目で17.1mg、培養3週目で20.8mg、培養4週目で25.2mgと順調に成長した(図5○印)。一方、実験区Bでは培養1週目は11.8mgであったが、培養2週目で13.4mg、培養3週目で13.5mg、培養4週目で13.5mgと湿重量の増加が見られなかった(図5△印)。
【0096】
このことから、硝酸吸着剤処理による地下浸透海水中の窒素濃度低減により、サンゴ生育を競合する海藻類の成長を効率よく抑制できることが明らかである。
[実施例2]
(1)プロテインスキマーの機能評価試験(栄養塩低減機能試験)
プロテインスキマーは、その内部に大量の気泡を発生させ、気泡と海水との界面において水中の不要な物質を吸着させ、水槽外へ除去する装置である。その効果については科学的な研究は十分に行なわれておらず、個々人の経験則に基づいて利用がなされている状況である。そこで、高栄養塩の地下浸透海水のかけ流し式での、プロテインスキマーにおける栄養塩低減効果の検証を行なった。地下浸透海水の高栄養塩は、サンゴの競合生物である海藻の繁茂条件となり、安定したサンゴ養殖を行う上ではデメリットとなる。
【0097】
その方法は、原水から直接プロテインスキマーへ流入させ(海藻フィルター水槽を介さない、原水からプロテインスキマーへの通水量は30L/min)、その前後の海水をサンプリングし、栄養塩類(NO3-N、NH4+-N、PO43‐-P)とSi(OH)4-Siについて分析を行ない、その増減を比較した。その結果を表2に示す。
【0098】
その結果、NO3-Nは1.21μmolから1.50μmolに増加したが、NH4+-Nは11.06μmolから8.92μmolに、PO43‐-Pは1.52μmolから1.32μmolに減少し、又、珪藻の繁茂要因となるシリカについても、91.88μmolから70.06μmolに減少した。これより、かけ流し式においても、有効に栄養塩や珪藻繁茂の要因となるシリカ等が効率よく低減されることが判明した。
【0099】
【表2】


【0100】
(2)海藻フィルター(藍藻フィルター)の作成(栄養塩低減の効果検証)
サンゴ飼育にデメリットとなる地下浸透海水の高栄養塩特性に対し、その低減方法として、プロテェインスキマーと並んで海藻フィルターを検討した。具体的には、藍藻類を用いた海藻フィルターを作成しその効果を検証した。システムとしては、藍藻フィルターからその後のスキマーにより、更なる栄養塩低減を図った。高栄養塩の地下浸透海水中において、藍藻類は成長が早い、しかし、藻体がやわく、手でこするだけで溶けるように粉砕される。この性質はスキマーによる浄化効果(栄養塩低減効果)をより上昇させるものと期待された。
【0101】
試験の方法は、図13に示す様に、藍藻フィルター処理及びプロテェインスキマ処理(ケース2)、藍藻フィルター単独処理(ケース1)を設定し、原水、各ケースの処理後の海水を試料として採取し、NO3-N、NH4+-N、PO43‐-P、Si(OH)4-Si等について分析を行なった(各処理区の通水量は30L/minである)。
【0102】
その結果は、表3に示す通りである。藍藻フィルターによる処理が含まれるケース1(処理1:藍藻フィルター,処理2:プロテェインスキマー)とプロテェインスキマー処理だけのケース2の比較は、NH4+-Nのケース1では11.06μmolから6.92μmolの低減(37.4%の低減)に対し、ケ−ス2(11.06μmolから8.92μmol、19.3%の低減)であり、明らかな藍藻フィルターの有効性が確認された。PO43‐-Pについても、ケース1(1.52μmolから1.16μmol、23.7%の低減)、ケース2(1.52μmolから1.32μmol、13.2%の低減)であり、藍藻フィルターの有効性が確認された。
【0103】
しかし、Si(OH)4-Siについては、ケース1(低減率11.5%)、ケース2(低減率21.82%)であり、その効果は確認されていない。又、NO3-Nは、原水の1.21μmolから2.36μmolに増加した(95.0%の増加)。これは、水槽内の底砂の汚染が原因である。又、ケース2のプロテェインスキマーでもNO3-Nは増加していることから、エアレーションを行なうことによりNO3-Nが増加することが確認された。
【0104】
【表3】


【0105】
(3)二枚貝フィルターの機能評価(アコヤガイの栄養塩吸収低減機能の評価試験)
プロテェインスキマー、海藻フィルターと並んで、栄養塩低減方策として、濾過食性であるアコヤガイ等の二枚貝フィルターによる栄養塩低減を検討した。本方策は、更に水槽内の海藻類繁茂を防ぐ目的の巻貝等の排泄物により水槽底部の水質の悪化を未然に防ぐ目的の方策としても重要である。
【0106】
その方法は、アコヤガイの清浄効果を把握する為に、プロテェインスキマーからの高栄養塩排水の水槽へ入れ、汚水がどのような変化をするか調べた。具体的には、アコヤガイ10個体、総重量327.2gを60l水槽にプロテインスキマーからの排水を入れ、エアレーションをかけて飼育を行った。また、60L水槽は水温管理を行うために、一定の水温が保たれている地下浸透海水サンゴ飼育水槽の排水を利用した掛け流し式の400L水槽内に入れた。試験は飼育水の色が変化した7日目まで行った。試験開始と試験終了後の飼育水を採水し、栄養塩等の変化を調べた。
【0107】
その結果は、表4に示す通りであった。3日後には試験に用いたプロテインスキマー排水の色(茶色)がほぼ無くなった、試験終了時の5日後には緑藻が発生し、若干、緑がかった海水に変化した。
【0108】
【表4】


【0109】
表4に示す結果から、明らかな様に、
・硝酸塩については、吸収低減機能はない。
【0110】
・シリカについては、約五分の一程度にまで減少している。
・アンモニアについては、試験開始から3日間で四分の一程度にまで低減されている。
【0111】
・リンについても同様に低減されている。
【0112】
結論として、硝酸塩以外の栄養塩については、アコヤガイのろ過により低減可能であることが判明した。
【0113】
なお、試験開始から5日目のNO3の除いた各項目の値が増加している。これについては、プロテインスキマーからの排水を入れた後に、試験を閉鎖系で行ったために、水槽内での生物相が変化した結果であると考えている。すなわち、アコヤガイのような懸濁物食性二枚貝は、他の懸濁物とともに植物プランクトンを濾過して摂食し、その一部が成長に使われ、残りは排出される。排出される液体には植物プランクトンの成長に必要なアンモニアや無機態リンが含まれていることが知られている。アコヤガイにおいても同様のことが確認できたものと考えられる。
【0114】
(4)脱窒生物(マガキガイ・ナマコ)の機能評価試験
(i)ナマコの脱窒機能評価試験
ライブサンド中には硝化菌等の微生物が存在し脱窒作用を有しているが、地下浸透海水は高栄養塩であるため、その機能が追いつかない可能性が高い、それを補う形として、開発されるシステムでのナマコによる脱窒方法を検討した。
【0115】
その方法は、サンゴ礁海域に生息するジャノメナマコを使用し、400L水槽を用いて、地下浸透海水のかけ流し式により試験を行なった(その際の換水率は8回で、観測期間中の水温は25℃前後に保たれた)。ジャノメナマコ入りの試験水槽とジャノメナマコなしの試験水槽を設置し、両水槽ともにサンゴの数量(総重量)、海藻コントロール用の巻貝の数量をほぼ同じにして飼育を行なった。試験開始33日後に飼育試験を終了し、サンゴ養殖水槽底に敷詰めた砂を採取して、全窒素量及び全リン量を調べ、両水槽の比較を行った(表5に、各試験水槽における投入生物を示した)。また、底砂に含まれる海水についても、同項目について分析を行った。
【0116】
【表5】


【0117】
その結果は、両方の底砂を比較すると、硫化物は同じ値を示すが、全窒素、全リンに関してはナマコ有り水槽が有意に低い。底質中の海水に関しては、全窒、全リンでは、ナマコ無し水槽の方が、ナマコ有り水槽の2倍以上の値を記録した。全イオウに関しては、両サンプルとも、一般的な海水中の濃度(900mg/L)とほぼ同様である(表6に示す各水槽の底砂、底砂中海水の分析結果を参照)。これより、明らかにナマコ有り水槽では、底質から栄養塩が脱窒されている。定量的には、4個体(2,760.6g)のナマコで、1.8mg/lの窒素が脱窒され、0.15 mg/lのリンが脱リンされたことになる(要した時間は約33日)。
【0118】
【表6】


【0119】
(ii)マガキガイの脱窒機能評価試験
ライブサンド中には硝化細菌等の微生物が存在し脱窒作用を有しているが、地下浸透海水は高栄養塩であるため、その機能が追いつかない可能性が高い、それを補う形として、開発されるシステムでのマガキガイによる脱窒方法を検討した。
【0120】
その方法は、サンゴ礁海域に生息するマガキガイを使用し、400L水槽を用いて、地下浸透海水のかけ流し式により試験を行なった(その際の換水率は8回で、観測期間中の水温は25℃前後に保たれた)。マガキガイ有り(40個)の試験水槽とマガキガイなしの試験水槽を設置し、両水槽ともにサンゴの数量(総重量)、海藻コントロール用の巻貝の数量をほぼ同じにして飼育を行なった。開始63日後に試験を終了し(試験期間:12月15日〜2月17日)、サンゴ養殖水槽底に敷詰めた砂を採取して、全窒素量及び全リン量を調べ、両水槽の比較を行った(表7に、各試験水槽における投入生物を示した)。また、底砂に含まれる海水も同時に同じ項目について分析を行った。
【0121】
【表7】


【0122】
その結果は、底砂の分析結果では、硫化物、全窒素に関してはマガキガイ有りの方が硫化物、全窒素は若干低くなっており、全リンに関しては同じ値になっている。底砂中の海水に関しては、マガキガイ有りの方が、全窒素、全リンに関し有意に低い値となっており、いずれも有意にマガキガイの脱窒効果が確認されている。定量的には(底砂中の海水分析結果から)、40個体(729g)のマガキガイにより、全窒素が1.9mg/g、全リンが0.18 mg/g低減できたことになる(要した時間は63日)。
【0123】
本種は底砂中にもぐったり、移動の際に砂を攪拌していることも底砂の清浄化に寄与していると考えられる。サンゴ飼育水槽内において、底砂を清浄に保ち、人手のいらない安定した飼育環境(生態系)を作り出す場合に、ナマコと同様にマガキガイは有効であることが判明した(表8および表9参照)。又、マガキガイは、底砂上の有機物だけでなく、藍藻類や珪藻類を積極的に食すことが判明し、底砂上の脱窒だけでなく、海藻コントロール機能としても有効である。
【0124】
【表8】


【0125】
【表9】


【0126】
[実施例3]
(1)巻貝摂餌圧による海藻コントロールの効果検証
海藻フィルター、プロテェインスキマー、二枚貝フィルター、底砂上の生物による脱窒、強制排水等による栄養塩低減方策によっても、サンゴ養殖水槽内の栄養塩濃度レベルは、サンゴ礁海域の外海と比較すると、高いレベルにあり、藻類が繁茂傾向にある(理想としては、天然の外洋海水における栄養塩濃度近くまで濃度を落とす必要があると推察された)。そこで、海藻繁茂の制御方法として、藻類食巻貝類の海藻摂餌圧による方法の検討を行なった。
【0127】
その内容は、サンゴ礁海域に広く分布し、水産重要種となっているサラサバティラ・ニシキウズカイ・チョウセンサザエの3種と、サンゴ礁海域には生息しておらず北方系の巻貝であるエゾアワビについて、どの程度の海藻摂餌圧があるのか試験を行った。
【0128】
その方法は、試験水槽内に藻類を繁茂させるために、暗室内の地下浸透海水掛け流し水槽(60L)にメタルハライドライトが12時間照射されるようにセットし、水槽壁面を藻類が被い安定した状態になるまで待った(要した期間は14日間であった)。その際、対照となる試験水槽を幾つか同じようにセットし、その水槽壁の藻類を削り取り、乾燥重量を計測した(3個の水槽の平均を算出した結果、約16.5gとなった)。次に、半年以上、地下浸透海水で飼育していた試験対象の巻貝の個体の数量を計測し、藻類が繁茂した水槽内に投入し、その後、水槽内側面及び底面から藻類がなくなるまでの日数(時間)を計測した。結果を表10に示す。
【0129】
その結果、サラサバティラ・ニシキウズカイの2種については、試験開始から3日後には水槽内壁面に藻類は見られなくなった。エゾアワビは試験開始から4日後、チョウセンサザエは7日後であった。藻類コントロール貝類4種それぞれの、日当たり摂餌量、日当たり1個体の摂餌量、日当たり個体1gあたりの摂餌量を、表11に示した(算出方法は以下の式により行なった)。
【0130】
{16.5g・dry(試験開始壁面藻類付着量)+1.20×t(完食までの日数における藻類発生量)}÷N÷t=(1日あたり1個体の藻類摂餌量)
(1日あたり1個体の藻類摂餌量)÷(1個体あたりの平均重量)=(1日あたり貝類重量1gあたりの摂餌量)
※完食までの日数をt、試験貝類個体数をNとする。
【0131】
各種の1個体あたりの摂餌量はサラサバティラ、ニシキウズガイが1.34gで最も多く、次にチョウセンサザエで0.71g、1個体当たりの重量が最も小さいエゾアワビが0.44gであった。
【0132】
次に、各種の巻貝類の1日1gあたりの摂餌量は、エゾアワビが最も高く0.17gであった。次にニシキウズガイの0.04g、サラサバティラの0.03g、チョウセンサザエの0.01gであった。
【0133】
【表10】


【0134】
【表11】


【0135】
施設内暗室の人工光源下による試験ではあるが、試験に使用したどの巻貝類においても、水槽内に投入することにより、摂餌圧によって水槽壁面に発生した藻類をコントロールすることができた。
[実施例4]
(1)サンゴ卵の回収と受精に至る作業過程
夜間の満潮時に産卵が行なわれる為、夕方頃から卵採取用トラップを親サンゴ上に設置する。その後、産卵まで水換えを繰り返す。産卵が10:00〜11:30の間に起こり、その後、採取装置に集合したバンドルを集め、受精用の水槽に入れる。更に、その中へ分けて採取した精子を受精用の水槽の中へ入れる。受精用水槽はエアレーションがなされ、又、換水と同時に多少の水流を発生させるようにしている。その後、顕微鏡により卵割の様子を観察する。
【0136】
(2)幼生定着後
幼生定着後は、水質維持と水温上昇を防ぐ為、換水と遮光等を行い、定着した幼生の安定するのを待つ。又、定着した幼生は、水中より褐虫藻を体内に取り込む為、その意味でもサンゴ礁海域からの新鮮な海水は欠かせず、親サンゴを一緒に入れ確実に褐虫藻を取り込ませる。
【0137】
(3)稚サンゴの養殖実験
試験施設は、沖縄本島浦添市内の牧港漁港内地下浸透海水取水施設に位置している。実施例1で用いた栄養塩除去処理した地下浸透海水と同程度の水温やリン濃度及び窒素濃度を保つために構成された人工海水系バイオシステムを用いて、稚サンゴを生育させることが可能であるか実験した。ここで用いた人工海水系バイオシステムは、次のような構成であった。上部の水槽がサンゴ飼育水槽で、下部の砂(ライブサンド:生物が生きた状態の砂)が引かれた水槽がろ過水槽である閉鎖循環方式水槽を用いた。閉鎖循環方式水槽で行うに当たって次の点を注意して行った。飼育水槽の直立パイプから溢れ出た水は、プロテインスキマーと呼ばれる装置により余分な蛋白質等の汚れが漉し取られ、その後、ろ過水槽のライブサンド内の生物により、アンモニアや硝酸態などの窒素化合物の脱窒作用を受けるようにした。更に、一定の温度に設定されたユニットクーラーにより、水温調節され再び上部の飼育水槽へ送られるようにした。上部の飼育水槽では、一定の流速が、サンゴの成長に有効であることが言われており、その為、流入口は横向けにした。又、別に流入口の反対側にも水流を起こす装置を設置した。閉鎖循環方式の水槽では、サンゴの成長による消費や、濾過水槽による脱窒作用等により、飼育・成長に必要な微量元素が欠乏する。したがって、定期的な微量元素の添加が必要である。カルシウムに関しては、サンゴ砂を入れた容器内に飼育水と一緒にCO2を送り込んでカルシウムを溶かし、濃度を上げるカルシウムリアクターと呼ばれる器具で常に補充した。飼育水槽は縦60cmx横180cmx高さ60cm(容積648l)のアクリル製水槽を、ろ過水槽は大きさ35cmx横35cmx高さ50cm(容量約250l)のアクリル性水槽を使用した。照明は250Wメタルハライドライト2基を用い15000Luxとし、水温25.5℃で実験した。
【0138】
(4)試験結果
マーキングされた9枚の付着板の稚サンゴの全てについて、顕微鏡を用いてポリプの数、ポリプあるいはコロニ−の径を計測し、写真撮影を行った。その際、稚サンゴになるべくストレスを与えない様、水を浸した浅い容器内に付着板を起き、その状態で顕微鏡により観察,写真撮影を行った。その後、一ヶ月間隔で同様なデータ計測を行った。10月に総ポリプ数は139だったが、2月には520に増加した。またコロニーの直径が最大で15mmまで大きくなった(表12及び図6)。
【0139】
【表12】


【0140】
[実施例5]
地下浸透海水を利用した親サンゴ生長試験
(1)地下浸透海水は天然海水と比べて、塩分濃度が1〜2‰程低いものとなっており、又、アンモニア濃度が高い。しかし、水温がサンゴ飼育の適温を常に保っていることから、かけ流し方式によりサンゴを飼育することが出来れば、水質の維持管理等の人件費や設備費等が必要なく、低コスト養殖が可能になる。本試験では、この様な地下浸透海水により、実際に50種程度の親サンゴを用いて、生長・飼育試験を行なうものである。
【0141】
(2)試験水槽
試験で使用する水槽は、クリアトタンに囲まれ、天然光を取り込む事が可能な部屋に配置している(図11)。容量は400Lで、素材はグラスフアィバ−である為、側面からの採光はなされない。地下浸透海水を1日に17回程度の換水率でかけ流しで使用する(図11)。
【0142】
(3)試験条件
先述の水槽方式の他に、試験条件として以下に設定した。
【0143】
照明:太陽光
水槽及び水質管理:1日に17回程度の換水率とする。水質管理は水槽底の老廃物等の除去を2ヶ月ごとに1回行なった。
【0144】
藻類繁殖等の管理:藻類繁殖は光条件に大きく影響を与えるため、人為的に管理を行なう。その方法は、人手による直接除去と、藻類食貝類(エゾアワビ、ギンタカハマガイ・サラサバティラ・ムラサキウズガイ・ニシキウズガイ・チョウセンサザエ等)によるコントロールである。
【0145】
対象とするサンゴ:対象とするサンゴ類は、沖縄県より特別採捕許可を取得し、10月22日より恩納村海域、糸満市大渡海岸等で50種程度捕獲し、それらを使用した。その捕獲した水深は、約1mから10m程度の比較的浅場であり、リーフ内から礁原上、礁斜面に至るまでの種類を用意した。以下に、試験に使用した種類を科別に示した。
【0146】
ハナヤサイサンゴ科
ハナヤサイサンゴ、イボハダハナヤサイサンゴ、チリメンハナヤサイサンゴの3種
ミドリイシ科
コモンサンゴ属、エダコモンサンゴ、トゲコモンンサンゴ、トゲエダコモンサンゴ、サボテンコモンサンゴ、チジミウスコモンサンゴ、ニオウミドリイシ、ツツユビミドリイシ、オヤユビミドリイシ、サンカクミドリイシ、コユビミドリイシ、スギノキミドリイシ、コエダミドリイシ、ヒメマツミドリイシ、ハナガサミドリイシ、サボテンミドリイシ、ウォーレスミドリイシ、ハナバチミドリイシ、アナサンゴ属、枝状ミドリイシ属の20種
ハマサンゴ科
ハマサンゴ、ユビエダハマサンゴ、クボミハマサンゴ、パラオハマサンゴ、ハマサンゴ属、アワサンゴ属の6種
ヤスリサンゴ科
ヤッコアミメサンゴ、アミメサンゴの2種
ヒラフキサンゴ科
サオトメシコロサンゴ、コノハシコロサンゴの2種
クサビライシ科
クサビライシ、スワリクサビライシの2種
ビワガライシ科
アザミサンゴの1種
サザナミサンゴ科
エダイボサンゴ、ウスサザナミサンゴの2種
キクメイシ科
アツキクメイシ、カメノコキクメイシ、ゴカクキクメイシ、コカメノコキクメイシ、ヒラノウサンゴ、アラルリサンゴ、ニホントゲキクメイシの7種
(4)試験方法
試料は、試験開始前に可能な限り、サンゴ以外の岩盤や他の生物(藻類含む)等が除去され、整理番号と種名、採取場所(水深含む)を書いたラベルを紐で付けられ、紐ごとその湿重量を計測した。又、その際、四方八方から写真撮影を行い、微小藻類やサンゴ以外の部分について記録を行った。その後、1ヶ月ごとに、湿重量を計測する。その際には、試験当初の試料の写真記録を基に、出来る限りの藻類等の適切な除去を行なった後に計測する。計測の方法は、サンゴにストレスを与えない様、約50cm程度上下に水切りを2回行なった後、キムタオル上に3秒静止して置いた後に重量計にのせ計測する。この方法を全種、全試料で徹底して行なった。
【0147】
試験区は、天然光の400L水槽2個に、水深10cmと60cmの試験区を設定した。更に、比較のため、閉鎖循環方式の水槽内にも試験区を設定した。3つの試験区において、出来る限り同種・同コロニ−からの試料を配置した。その状況を以下に示した。
【0148】
(5)結果
結果を図7〜10に示す。
【0149】
図7〜10から分かるように、地下浸透海水を用いた本サンゴ養殖システムで多種類の親サンゴの養殖が可能であることが明らかである。
【0150】
藻類節食動物として400lの親サンゴ養殖水槽内に導入した巻き貝類により藻類は繁茂せず親サンゴの成長が良好であった。また、ギンタカハマガイ、ニシキウズガイ、ムラサキウズガイ、ウズイチモンジガイ、チョウセンサザエなどの巻き貝類についても、良好に成長していることが観察された。これにより、本発明のサンゴ養殖方法において、藻類摂食など生態系作用を利用した生物(ここでは藻類摂食動物など)として有用種を用いることにより、食用や観賞用生物として価値の高い有用水産物を良好に生育又は増殖することが可能であることが実証された。
[実施例5]
以上の結果から、本発明の方法に従って栄養塩濃度を低減した地下浸透海水を使用するにより、海藻の成長を抑制できることが明らかになった。さらに、用いた地下浸透海水と同程度のリン濃度及び窒素濃度である人工海水を用いて、稚サンゴを生育させることが可能であることが示された。
【0151】
従って、本発明の方法に従って、窒素及び/又はリンの濃度を低減させた地下浸透海水を用いれば、サンゴと競合する海藻の成長を抑制することができ、サンゴ成体の場合(実施例4)と同様に、稚サンゴを養殖することができる。さらに、サンゴ卵やサンゴプラヌラ幼生からの生育についても稚サンゴと同様の条件下で可能であることから、サンゴ卵やプラヌラ幼生についても、サンゴ成体と同様に、本発明の方法を用いて養殖することができる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明により、熱帯や亜熱帯の海域において、白化現象によりダメージを被ったサンゴ礁を修復し、美しいサンゴ礁を再現することが可能になるであろう。また、鑑賞用サンゴの供給、海洋学研究用材料のとしてのサンゴの供給をより容易にすることが可能になるであろう。
【0153】
さらに、本発明の方法において、アワビなどの藻類摂食動物や海藻バイオフィルター用海藻等として有用種を用いることにより、食用や観賞用生物として価値の高い良質な有用水産物を生育又は増殖することが可能になるであろう。
【0154】
本発明は、環境の保護及び産業の発達に多大な貢献をするであろう。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】サンゴ卵からのサンゴ生産による環境保全技術の開発のシナリオについての概略図である。
【図2】サンゴ卵からのサンゴ生産による環境保全技術の開発のこれからの展開についての概略図である。
【図3】本発明のサンゴの養殖方法による環境保全技術の開発についての概略図である。
【図4】サンゴ養殖技術についての概略図である。
【図5】硝酸吸着剤による海藻成長抑制効果を示すグラフであるグラフである。
【図6】稚サンゴの各月におけるポリプ数の変化を示すグラフである。
【図7】地下浸透海水を用いた親サンゴ成長試験(水深10cm)の結果を示すグラフである。
【図8】地下浸透海水を用いた親サンゴ成長試験(水深10cm)の結果を示すグラフである。
【図9】地下浸透海水を用いた親サンゴ成長試験(水深60cm)の結果を示すグラフである。
【図10】地下浸透海水を用いた親サンゴ成長試験(水深60cm)の結果を示すグラフである。
【図11】施設内での水槽配置を示す概略図である。
【図12】養殖用水槽における地下浸透海水廃水の強制排出機構を示す概略斜面図である。
【図13】海藻フィルターとプロテインスキマーとによる栄養塩低減効果の概要を示すフローチャートである。
【出願人】 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【識別番号】599177178
【氏名又は名称】沖電設計株式会社
【出願日】 平成17年4月14日(2005.4.14)
【代理人】 【識別番号】100065215
【弁理士】
【氏名又は名称】三枝 英二

【識別番号】100076510
【弁理士】
【氏名又は名称】掛樋 悠路

【公開番号】 特開2005−323593(P2005−323593A)
【公開日】 平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願番号】 特願2005−117314(P2005−117314)