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【発明の名称】 クワガタムシ幼虫飼育用菌床、及びその製造方法
【発明者】 【氏名】金子 崇範

【氏名】関 高憲

【要約】 【課題】雑菌に接触してもキノコ菌糸の抵抗力が強く、又高温に保持されてもキノコの菌糸が損傷を受けず、しかもキノコの子実体が発生しにくいクワガタムシ幼虫飼育用菌床、及びその製造方法の提供。

【解決手段】(A)広葉樹のオガクズを主原料とする培地に、アガリクス属(Agaricus)のキノコの菌糸を成育させたことを特徴とするクワガタムシの幼虫飼育用菌床。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
広葉樹のオガクズを主原料とする培地に、アガリクス属のキノコの菌糸を成育させたことを特徴とするクワガタムシの幼虫飼育用菌床。
【請求項2】
アガリクス属のキノコが、カワリハラタケである請求項1に記載するクワガタムシの幼虫飼育用菌床。
【請求項3】
広葉樹がクヌギ、エノキ、ブナ、ナラ、カシ、シイ、サクラ、又はクリである請求項1又は請求項2に記載するクワガタムシの幼虫飼育用菌床。
【請求項4】
下記の(1)〜(3)の工程を順次経ることを特徴とするクワガタムシの幼虫飼育用菌床の製造方法。
(1)広葉樹のオガクズを主原料とする培地に、フスマ、小麦粉、おから、ビール粕、酵母エキス、ビタミン類、アミノ酸類等から選択される副原料の1種以上を加えた混合物を得る工程
(2)前記混合物を、耐熱性の容器に詰めて加圧蒸気殺菌する工程
(3)アガリクス属のキノコの菌糸を接種して培養する工程
【請求項5】
アガリクス属のキノコが、カワリハラタケである請求項4に記載するクワガタムシの幼虫飼育用菌床の製造方法。
【請求項6】
培養温度が、20〜29℃、培養期間が50〜90日である請求項5に記載するクワガタムシの幼虫飼育用菌床の製造方法。
【請求項7】
耐熱性の容器がガラス製、又は耐熱性プラスチック製である請求項5又は請求項6に記載するクワガタムシの幼虫飼育用菌床の製造方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、製造後(キノコ菌糸の成育後)、雑菌に接触してもキノコ菌糸の抵抗力が強く、又高温に保持されてもキノコの菌糸が損傷を受けず、しかもキノコの子実体が発生しにくいクワガタムシ幼虫飼育用菌床、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クワガタムシ幼虫飼育用菌床には、広葉樹のオガクズを主成分とする培地に、ヒラタケ科、キシメジ科、モエギタケ科のキノコの菌糸を接種・培養したものが用いられていた。
【特許文献1】特開2001−8579
【特許文献2】特開平11−28036
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来使用されているヒラタケ科、キシメジ科、モエギタケ科のキノコの菌糸(以下従来菌糸という)を使用した、クワガタムシ幼虫飼育用菌床には下記の欠点があった。
(イ)従来菌糸は、雑菌に接触すると抵抗力が弱く、キノコの菌糸が部分的若しくは完全に死滅してしまうことが多い。
(ロ)従来菌糸を接種・培養して、折角キノコ菌糸が良好に成育した菌床が得られても、夏季の30℃を越えるような高温に保持されると、キノコ菌糸が損傷を受け、菌床が劣化してしまう。そのため、常温での保存や輸送が困難である。
(ハ)従来菌糸は、温度又は湿度の変化により子実体が発生し易い。そしてクワガタムシは、その蛹時において、菌床(培養基)内に子実体の発生があると、しばしば羽化不全となり、商品価値がなくなる。
(ニ)この培養基内の子実体の発生を防止するために、特許文献1においては、従来菌糸から、一核菌糸を調製して用いているが、この操作は非常に煩雑で管理が難しい。
【0004】
発明者は、以上の欠点を解消するために、雑菌の侵入や高温に対し抵抗力が強く、しかも子実体が発生しにくいキノコを選別したところ、アガリクス属(Agaricus)のキノコの菌糸が、前記欠点を全て解消することを知り本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は上記の欠点を解決するためになされたもので、下記の請求項1〜請求項7により構成されている。
請求項1: 広葉樹のオガクズを主原料とする培地に、アガリクス属のキノコの菌糸を成育させたことを特徴とするクワガタムシの幼虫飼育用菌床。
請求項2: アガリクス属のキノコが、カワリハラタケである請求項1に記載するクワガタムシの幼虫飼育用菌床。
請求項3: 広葉樹がクヌギ、エノキ、ブナ、ナラ、カシ、シイ、サクラ、又はクリである請求項1又は請求項2に記載するクワガタムシの幼虫飼育用菌床。
請求項4: 下記の(1)〜(3)の工程を順次経ることを特徴とするクワガタムシの幼虫飼育用菌床の製造方法。
(1)広葉樹のオガクズを主原料とする培地に、フスマ、小麦粉、おから、ビール粕、酵母エキス、ビタミン類、アミノ酸類等から選択される副原料の1種以上を加えた混合物を得る工程
(2)前記混合物を、耐熱性の容器に詰めて加圧蒸気殺菌する工程
(3)アガリクス属のキノコの菌糸を接種して培養する工程
請求項5: アガリクス属のキノコが、カワリハラタケである請求項4に記載するクワガタムシの幼虫飼育用菌床の製造方法。
請求項6: 培養温度が、20〜29℃、培養期間が50〜90日である請求項5に記載するクワガタムシの幼虫飼育用菌床の製造方法。
請求項7: 耐熱性の容器がガラス製、又は耐熱性プラスチック製である請求項5又は請求項6に記載するクワガタムシの幼虫飼育用菌床の製造方法。
【0006】
本願発明を以上のように構成する理由は、従来菌糸に代えてアガリクス属のキノコの菌糸、特にカワリハラタケ(Agaricus brazei)の菌糸を成育させたクワガタムシ幼虫飼育用菌床は、従来菌糸に比較して雑菌の侵入や高温に対し抵抗力が強く、長期間常温で保存可能であり、しかも子実体が発生しにくいためである。
【発明の効果】
【0007】
本願発明のクワガタムシの幼虫飼育用菌床に成育しているアガリクス属のキノコ菌糸は、従来菌糸に比較して雑菌の侵入や高温に対し抵抗力が強く、しかも子実体が発生しにくいので下記の優れた効果が得られる。
(イ)クワガタムシがその蛹時に子実体と共生する機会がないため、羽化不全障害を激減させることが可能となる。
(ロ)菌床が高温に保持されても変質・劣化しないので、夏季の高温時においても菌床(培養基)を冷蔵保存する必要がない。
(ハ)菌床が長期間にわたって変質・劣化せず、餌としての効果が長期間持続するので、餌交換の頻度をが減少させることができる。そのため餌交換によるクワガタムシの体重減少を防止することができ、良好に成長させることができる。
(ニ)前記(イ)〜(ハ)の技術的効果は、クワガタムシの幼虫飼育用菌床の製造コスト、及び流通コストを著しく軽減し、ひいては良質なクワガタムシの成虫個体を安価に提供することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本願発明において、広葉樹(特にクヌギ、エノキ、ブナ、ナラ、クリ、カシ、シイ、サクラ)のオガクズは、生のものを使用するのが好ましい。
本願発明に用いられるキノコの菌糸は、ハラタケ科のアガリクス属のキノコの菌糸である。
アガリクス属の菌糸としては、カワリハラタケ(Agaricus brazei)の他に、ツクリタケ(Agaricus bisporus)、シロオオハラタケ(Agaricus arvensis)が汎用される。
本願発明の菌床により飼育されるクワガタムシは、クワガタムシ科の昆虫をいう(特に市場性の良好なオオクワガタ、ノコギリクワガタ、ヒラタクワガタ、コクワガタ等の成育に適している。)。
本願発明に用いられる培養基(菌床)の広葉樹(オガクズ)以外の原料としては、小麦粉、フスマ、おから、ビール粕、酵母エキス、アミノ酸類、ビタミン類、無機塩類等が用いられる。
本願発明に用いられる培養基(菌床)は、通常上記培地原料に水を加えて、その水分含量を40〜70重量%に調整して用いる。
本願発明の培養基(菌床)の殺菌は加圧蒸気により行なわれ、通常耐熱性細菌の胞子(Bacillus)を死滅させる条件(例えば120℃で40分)が採用される。
本願発明の培養基(菌床)を詰める耐熱性の容器は、その内部を観察できるガラス容器が好ましいが、耐熱性プラスチック(例えばポリプロピレン)製でも全く支障がない。
本願発明において、培養基(菌床)にアガリクス属のキノコの菌糸を接種して培養する温度は、15〜30℃、より好ましくは20〜29℃であり、培養期間は20〜100日、より好ましくは50〜90日である。
【実施例】
【0009】
下記の配合により原料を混合した。
ブナ:ナラ:クヌギ=1:1:1のオガクズ(水分41%) 50重量%
小麦粉(水分14%) 4重量%
フスマ(水分11%) 5重量%
酵母エキス 1重量%
水 40重量%
(TOTAL水分) (61重量%)
【0010】
前記混合物を、容量800mlのガラスビンに400g詰め、通気性のあるキャップをして、オートクレーブで120℃、40分間滅菌して、クワガタムシの幼虫飼育用培養基を200本得た。この培養基にカワリハラタケの菌糸を接種し、27℃で、65日間培養した。
前記200本の培養基内に、カワリハラタケの菌糸が蔓延した菌床は、199本であり、極めて成功率が高かった。
【0011】
前記段落0009及び段落0010と同一の方法で調製したカワリハラタケの菌糸が蔓延した菌床100本を、120日間屋内の常温で保存テストを実施したところ、外見から劣化したことを目測で判断できたものは1本もなかった。又カビの発生したもの及び子実体が発生したものも1本もなかった。
これに対し、前記段落0009及び段落0010と同一の方法で得た、従来菌糸のヒラタケ(Pleurotus ostreatus)の菌糸が蔓延した菌床100本を同一の条件で保存しところ、外見から劣化したと目測で判断できたものは16本であり、又カビの発生したものは1本、子実体が発生したものは27本であった。
【0012】
前記段落0009及び段落0010と同一の方法で調製したカワリハラタケの菌糸が蔓延した菌床100本を、30日間、40℃で保存テストを実施したところ、外見から劣化したと目測で判断できたものは1本もなく、カワリハラタケの菌糸が確認できた。
これに対し、前記段落0009及び段落0010と同一の方法で得た、従来菌糸のヒラタケの菌糸が蔓延した菌床100本を同一の条件で保存しところ、外見から劣化したと目測で判断できたものは100本であった。
【0013】
前記段落0009及び段落0010と同一の方法で調製したカワリハラタケの菌糸が蔓延した菌床100本を、温度ショックを与えるために24時間、5℃の低温にさらし、その後10日間常温に保持して、子実体が発生するや否やについて調べたところ、子実体が発生したものは1本もなかった。
これに対し、前記段落0009及び段落0010と同一の方法で得た、従来菌糸のヒラタケの菌糸が蔓延した菌床100本を同一の条件で保存したところ、子実体が発生したものは42本であった。
【0014】
前記段落0010〜0013の結果によれば、本願発明に係るクワガタムシ幼虫飼育用菌床は、常温保存が可能であり、特に夏場の暑い時期にも冷蔵する必要がなく、子実体の発生もないことがわかる。
【0015】
前記段落0009及び段落0010で調製した菌床に、国産のオオクワガタ、ノコギリクワガタ、ヒラタクワガタ、コクワガタ等の幼虫を入れ、実際の飼育テストを行なった。
その結果、菌床へ初令幼虫を投入しても、幼虫の成長は極めて良好であった。
【0016】
容量1500mlのガラスビンを使用する(培養基750g充填)以外は、前記段落0009及び段落0010と同じ方法で調製したカワリハラタケの菌糸が蔓延した菌床に、国産のオオクワガタ、ノコギリクワガタ、ヒラタクワガタ、コクワガタ等の幼虫を入れ、実際の飼育テストを行なったところ、初令幼虫から餌交換なしで、大型の個体を羽化させることができた。

【出願人】 【識別番号】503397421
【氏名又は名称】有限会社月夜野きのこ園
【出願日】 平成15年10月29日(2003.10.29)
【代理人】 【識別番号】100086829
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 将夫

【公開番号】 特開2005−130735(P2005−130735A)
【公開日】 平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願番号】 特願2003−368281(P2003−368281)