| 【発明の名称】 |
動物体飼料補給時間決定方法及び補給時間決定システム並びにコンピュータ・ソフトウエア |
| 【発明者】 |
【氏名】大浦 良三
【氏名】大浦 洋一
|
| 【要約】 |
【課題】飼料を与えて反芻胃を有する動物体を飼育する際の補給時間を最適化する動物体飼料補給時間決定方法及び補給時間決定システムを提供する。
【解決手段】飼料補給時間を決定する方法であって、飼料のエネルギーと窒素の反芻胃内分解速度を推定し、反芻胃内の通過速度を推定し、摂取後の分解量と流出量を推定する手順と、基礎飼料の時間摂取量を把握する手順と、基礎飼料のみの時の時間放出量の日内変動量を推定する手順と、候補となる複数の時間又は時間の組合せについて時間放出量を推定し、反芻胃における菌体合成の効率を査定するための放出同調指数を算出する手段と、算出された指数の中から優れた値が得られた時間又は時間の組合せを補給時間として決定する手順とを有する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 基礎飼料と補助飼料を与えて反芻胃を有する動物体を飼育する際の補助飼料の補給時間を決定する方法であって、 基礎飼料と補助飼料のエネルギーと窒素の反芻胃内分解速度をそれぞれ推定し、反芻胃からの通過速度を推定し、摂取後の分解量と流出量を推定する手順と、基礎飼料の時間摂取量を把握する手順と、基礎飼料からの時間放出量の日内変動量を推定する手順と、補給時間の候補となる複数の時間又は時間の組合せについて全摂取飼料からの時間放出量を推定し、反芻胃における菌体合成の効率を査定するための放出同調指数をそれぞれ算出する手順と、算出された指数の中から優れた値が得られた時間又は時間の組合せを最適補給時間として決定する手順とを有することを特徴とする動物体飼料補給時間決定方法。 【請求項2】 請求項1記載の動物体飼料補給時間決定方法において、 使用する基礎飼料及び補助飼料の種類、量、給与回数を決める手順を有することを特徴とする動物体飼料補給時間決定方法。 【請求項3】 コンピュータを備え、基礎飼料と補助飼料を与えて反芻胃を有する動物体の飼料の補給時間を決定するシステムであって、 前記コンピュータは、与える基礎飼料と補助飼料それぞれの乾物あるいは有機物と窒素の含量と反芻胃内分解速度量、反芻胃の通過速度量及び基礎飼料の時間摂取量の各データを記憶する基礎データ記憶手段と、入力された基礎飼料について時間放出量の日内変動量及び放出同調指数を算出する手段と、補給時間の候補となる複数の時間又は時間の組合せのデータを入力する手段と、入力された補給時間又は時間の組合せについて、基礎データ記憶手段に記憶したデータを用いて放出同調指数を算出する手段と、算出結果を記憶する算出結果記憶手段と、算出結果を順次読み出し、その中から放出同調指数の優れた値に対応する時間又は時間の組合せを補給時間と決定する手段と、決定した補給時間を表示する手段とを有することを特徴とする補給時間決定システム。 【請求項4】 請求項3記載の補給時間決定システムにおいて、 上記コンピュータは、使用する補給飼料の種類、量、給与回数のデータを入力する手段を有することを特徴とする補給時間決定システム。 【請求項5】 基礎飼料と補助飼料を与えて反芻胃を有する動物体の飼料の補給時間を決定するシステムのコンピュータに使用されるソフトウエアであって、 与える基礎飼料と補助飼料それぞれの乾物あるいは有機物と窒素の含量と反芻胃内分解速度量、反芻胃の通過速度量及び基礎飼料の時間摂取量の各データを記憶する基礎データ記憶機能と、入力された基礎飼料について時間放出量の日内変動量及び放出同調指数を算出する機能と、補給時間の候補となる複数の時間又は時間の組合せのデータを入力する機能と、入力された補給時間又は時間の組合せについて、基礎データ記憶機能により記憶したデータを用いて放出同調指数を算出する機能と、算出結果を記憶する算出結果記憶機能と、算出結果を順次読み出し、その中から放出同調指数の優れた値に対応する時間又は時間の組合せを補給時間と決定する機能と、決定した補給時間を表示する機能とをコンピュータに実現させるプログラムからなるコンピュータ・ソフトウエア。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、動物体飼料補給時間決定方法及び補給時間決定システムであり、特に飼料を与えて反芻胃を有する動物体を飼育する際の補給時間を最適化する方法及びシステムに関する。 【背景技術】 【0002】 反芻家畜の最大の特徴は、微生物をその反芻胃に多数棲息させ、単胃動物では利用できない繊維質を微生物の持つ繊維分解酵素の働きで揮発性脂肪酸(VFA)等に変化させ、これを直接あるいは菌体蛋白質に一旦変換して動物体のエネルギー源にする点と、飼料中に蛋白質(アミノ酸)が含まれなくても窒素を適切に供給してやれば、それが反芻胃内で微生物の増殖の際に菌体アミノ酸に合成されて動物体の良質蛋白質源となり、動物体に利用・蓄積される点にある。このため、将来的に予想される世界的な食糧不足に際し、人間と食料が競合しない反芻家畜のこのような特徴を生かした乳・肉等の生産性向上が世界的な課題となっている。 【0003】 また、反芻胃において飼料から放出されるエネルギーと窒素のタイミングが合っていなければ、菌体蛋白質の合成効率が低下するだけでなく、余分なエネルギーや窒素がメタンガスや尿となって環境に放出されて地球温暖化や河川等の汚染を引き起こすことが指摘されており、これらの観点からもエネルギーと窒素の同調化は重要な課題である。 【0004】 大浦良三とFadel El−Seed,A.M.A.は、アンモニアで処理した稲わら(AS)及び尿素+水酸化カルシウムで処理した稲わら(CS)を基礎飼料とし、綿実粕(CSM)を窒素補助飼料として、本発明より最適補給時間(1:00と17:00に各75g)と最不適補給時間(8:00に150g)を決定し、これに基づいて動物体(緬羊)を使用した飼育実験を実施し、実際の効果を検証した。その結果、綿実粕の補給時間を最適化することにより反芻胃中のアンモニア態窒素量及びVFA量が高くなり、反芻胃内の菌体量の増加と飼料の反芻胃内滞留時間の延長が示唆された。これにより、飼料の乾物及び繊維質の消化率がそれぞれ2割上昇し,飼料中の全窒素のうち動物体に蓄積される量が6割増加し、逆に尿として排出される窒素は4割低減した。本飼育実験の結果は、本発明の補給時間決定システムが劣悪な繊維質飼料の利用性を高め、ひいては環境汚染につながる家畜からの窒素の排出を低減することを実証した。なお、本年9月11日、第53回関西畜産学会大会において、本飼育実験の詳細な報告を行う予定である。 【特許文献1】特表2002−509704号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は、従来の問題を解決するものであり、飼料を与えて反芻胃を有する動物体を飼育する際の補給時間を最適化する動物体飼料補給時間決定方法及び補給時間決定システムを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明は、基礎飼料と補助飼料を与えて反芻胃を有する動物体を飼育する際の補助飼料の補給時間を決定する方法であって、(イ)基礎飼料と補助飼料のエネルギーと窒素の反芻胃内分解速度をそれぞれ推定し、(ロ)反芻胃からの通過速度を推定し、摂取後の分解量と流出量を推定する手順と、(ハ)基礎飼料の時間摂取量を把握する手順と、(ニ)基礎飼料からの時間放出量の日内変動量を推定する手順と、(ホ)補給時間の候補となる複数の時間又は時間の組合せについて全摂取飼料からの時間放出量を推定し、(ヘ)反芻胃における菌体合成の効率を査定するための放出同調指数をそれぞれ算出する手順と、(ト)算出された指数の中から優れた値が得られた時間又は時間の組合せを最適補給時間として決定する手順とを有する動物体飼料補給時間決定方法である。 【0007】 また、本発明は、使用する基礎飼料及び補助飼料の種類、量、給与回数を決める手順を有する動物体飼料補給時間決定方法である。 【0008】 そして、本発明は、コンピュータを備え、基礎飼料と補助飼料を与えて反芻胃を有する動物体の飼料の補給時間を決定するシステムであって、前記コンピュータは、与える基礎飼料と補助飼料それぞれの乾物あるいは有機物(乾物から灰分を除いたもの)と窒素の含量と反芻胃内分解速度量、反芻胃の通過速度量及び基礎飼料の時間摂取量の各データを記憶する基礎データ記憶手段と、基礎飼料からの時間放出量の日内変動量及び放出同調指数(日同調乾物量)を算出する手段と、補給時間の候補となる複数の時間又は時間の組合せのデータを入力する手段と、入力された補給時間又は時間の組合せについて、(基礎データ記憶手段に記憶したデータを用いて)放出同調指数を算出する手段と、算出結果を記憶する算出結果記憶手段と、算出結果を順次読み出し、その中から放出同調指数の優れた値に対応する時間又は時間の組合せを補給時間と決定する手段と、決定した補給時間を表示する手段とを有する補給時間決定システムである。 【0009】 更に、本発明は、上記コンピュータは、使用する補給飼料の種類、量、給与回数のデータを入力する手段を有する補給時間決定システムである。 【0010】 また、本発明は、基礎飼料と補助飼料を与えて反芻胃を有する動物体の飼料の補給時間を決定するシステムのコンピュータに使用されるソフトウエアであって、与える基礎飼料と補助飼料それぞれの乾物あるいは有機物と窒素の含量と反芻胃内分解速度量、反芻胃の通過速度量及び基礎飼料の時間摂取量の各データを記憶する基礎データ記憶機能と、基礎飼料からの時間放出量の日内変動量及び放出同調指数を算出する機能と、補給時間の候補となる複数の時間又は時間の組合せのデータを入力する機能と、入力された補給時間又は時間の組合せについて、基礎データ記憶機能により記憶したデータを用いて放出同調指数を算出する機能と、算出結果を記憶する算出結果記憶機能と、算出結果を順次読み出し、その中から放出同調指数の優れた値に対応する時間又は時間の組合せを補給時間と決定する機能と、決定した補給時間を表示する機能とをコンピュータに実現させるプログラムからなるコンピュータ・ソフトウエアである。 【発明の効果】 【0011】 本発明によれば、飼料を与えて反芻胃を有する動物体を飼育する際の補給時間を最適化する動物体飼料補給時間決定方法及び補給時間決定システムを得ることができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0012】 本発明を実施するための最良の形態を説明する。 反芻家畜の飼養において、基礎飼料(繊維質飼料)のみの飼育はまれであり、不足するエネルギーや窒素を補給するために濃厚飼料が利用される。本発明者は、この補給飼料の給与時間に着目し、菌体蛋白合成に最適な補給飼料の給与時間を決定する方法を見出し、コンピュータ・シミュレーションによって推定する補給時間最適化(supplementing time optimization programming:STOP)システムを開発した。 【0013】 本方法及びシステムの概要を説明する。本方法及びシステムは、以下の項目1.〜6.を備える。 1.使用する可能性のあるすべての飼料のエネルギー(乾物等)と窒素の反芻胃内分解速度を推定し、このデータをコンピュータに記憶させる。 2.飼料片の反芻胃通過速度を推定し、このデータをコンピュータに記憶させ、各飼料を一度だけ単位重量反芻胃内に投入した場合の、投入後0〜240時間後における投入飼料の流出量と反芻胃内残存量を推定し、各単位時間あたりに残存飼料から放出される乾物あるいは有機物及び窒素の分解量を本システムから算出する。 3.実際の動物体飼育現場において、反芻胃を有する動物体に基礎飼料を給与したときの時間摂取量を電子天秤による飼槽の連続計量等により把握し、このデータをコンピュータに記憶させる。 4.基礎飼料の時間摂取パターンは毎日一定であると仮定し、反芻胃において各時間毎に基礎飼料から放出される乾物あるいは有機物及び窒素の日内変動量(それぞれhRDM及びhRN)を本システムにより算出する。 5.動物体に与える補助飼料の種類及び日給与量を日本飼養標準等に基づいて決定し、一日2回給与としてそれぞれの給与量をコンピュータに入力する。 6.放出同調指数として日同調乾物量(dSDM:時間乾物放出量と時間窒素放出量×40の低い方の値を一日24時間分累積した量、g/日)を補給飼料の給与時間全組合せ(24×24)について算出し、最適給与時間の組合せを採用する。 【0014】 本方法及びシステムの理論と実際を説明する。以下、項目別に説明する。最初に項目1.(乾物あるいは有機物と窒素の反芻胃内分解速度の推定)を説明する。まず、第一段階として必要となるのは、使用する可能性のある基礎飼料及び基礎飼料と補助飼料それぞれの乾物含量と窒素含量を分析等で推定して、STOPプログラム(本システムのシミュレーションプログラム)に入力することである。さらに、入力が必要な飼料データとして、各飼料中の乾物あるいは有機物及び窒素の反芻胃内分解速度定数がある。 【0015】 図1に、基礎飼料の乾物あるいは有機物の反芻胃内分解様相の例を示す。この例は、尿素+水酸化カルシウムで処理した稲わら(CS)をナイロン布製バッグに入れ、反芻胃内で培養した結果である。飼料を反芻胃内で培養した場合、培養後ただちに消失する易消化分画(A分画、0.142)と、一定の反応速度(分解速度:kd,0.027)でゆっくりと消失する難消化分画(B分画、0.507)及び最後まで残存しつづける不消化分画(C分画、0.351)に分かれ、培養t時間後における残存割合であるR(t)は次の(式1)に従うと考えられている(Orskov&McDonald,1979)。 R(t)=C+B・e−kd・t (式1) 【0016】 通常、飼料のこのような分解特性を把握するには、反芻胃カニューレを装着した反芻動物を準備し、一定の目開き(45μm前後)を有するナイロン布で作成したバッグに飼料を詰めて反芻胃に吊し、一定時間毎に取り出して残存する乾物あるいは有機物と窒素を定量する、という方法が取られる(Orskov&McDonald,1979)。これまで、世界各地でさまざまな飼料の分解速度を測定する試験が行われ、多くのデータが蓄積されてきており、英国のAgricultural Reseach Councilが中心となって、これらのデータをとりまとめてゆこうとする動きもある。 【0017】 本システムの運用に当たっては、利用する飼料個々について乾物あるいは有機物と窒素の分解特性を入力する必要があり、既に報告されている標準的な飼料のデータがそのまま利用できる場合もあろうが、参照可能なデータが存在しない場合には、その都度ナイロンバック法等を用いて測定する必要がある。 【0018】 項目2.(通過速度量の推定及び、摂取飼料の分解量と流出量の動態の推定)を説明する。反芻胃は微生物が多数生息する巨大な発酵槽であり、摂取した飼料は一旦この中に滞留し、微生物による分解を受ける。また、内容物飼料は分解と平行して一定の速度(通過速度:kp,/h)で第三胃へ流し出されるため、STOPプログラムでも反芻胃シミュレーションのためには通過速度kpの推定値を入力して、摂取飼料(特にB分画)がどの程度分解を受けずに第三胃に流出するかを推定する(図2参照)。図2(a)において、CSの易消化であるA分画はすべて反芻胃内で分解され、図2(b)において、不消化であるC分画はすべて通過速度(ここではkp=0.03/h)にしたがって第三胃に流出していく。しかし、図2(a)(b)において、難消化であるB分画は分解速度kdと通過速度kpの両者の速度の影響を受け、図2(a)の反芻胃で分解される部分と図2(b)の第三胃に流出する部分とに分かれると考えられる。本システムでは時間放出量を推定する際、通過速度kpの影響を考慮し、図2(a)で示すような、各飼料摂取一単位毎に摂取後の時間と反芻胃内分解量の関係を推定する。 【0019】 項目3.(基礎飼料の時間摂取量の把握)を説明する。通常、畜産農家の現場では基礎飼料となる牧草などの繊維質飼料を多めに給与し、家畜がいつでも自由に摂取できるような状態で飼養する場合が多い。また近年、乳牛の飼養では繊維質飼料や濃厚飼料をすべて配合したTMR(total mixed ratio)と呼ばれる全混合飼料が利用されつつあるが、本システムではこのTMRも基礎飼料の一形態ととらえることができる。本システムでは、各農家で飼養される家畜について、基礎飼料の1時間あたりの摂取量(時間摂取量:hDMI)を1日24時間単位で調査し、コンピュータに入力する必要がある。図3の例では、飼槽の下に電子天秤を配置し、連続して残食量を記録する方法で測定した結果を示している。図3に示すのは、雌緬羊4頭に基礎飼料としてCSを8:30と15:30に自由採食レベルで給与した時の、時間摂取量(hDMI、g)の平均値である。しかし、通常の農家ではこのような測定は困難であるため、ビデオカメラを用いて家畜の採食行動を調査し、採食時間から採食量を推定する。 【0020】 項目4.(基礎飼料からの時間放出量の日内変動の推定)を説明する。STOPプログラムでは図2aの結果と図3の結果より、基礎飼料からの時間放出量の日内変動量を推定する(図4参照)。図4は、CSを自由採食している緬羊において、各時間に内容物飼料片より反芻胃に放出される乾物(hRDM、g)と窒素(hRN、g)の推定量を示す。これが40:1の比率の時、どちらの成分も反芻胃内の微生物増殖に効率よく利用され、菌体蛋白合成に理想的であると考えられている(Czerkawski、1986)。このため、図4ではhRNは40倍の値にしてhRDMと比較しており、両者の高さが一致している場合は比較が適切であり、エネルギーと窒素が同調していると考えられる。逆に、どちらかが高い場合は、その余分な成分が動物体に利用されずに無駄となる可能性が高い。 【0021】 項目5.(補給飼料の種類、量及び給与回数の決定)を説明する。一般農家では通常、家畜に給与する飼料の種類と量を決定する場合、期待する生産量(日搾乳量や日体重増加量など)に基づいて養分要求量を推定し、それを充足するのに必要な飼料の配合と給与量を日本飼養標準(農林水産技術会議事務局)などから算出し、価格などの要素も勘案して決定している。本システムにおいても、家畜に給与する基礎飼料と補助飼料の合計が、期待生産量に必要な養分を充足するように決定する。本システムで使用している「補助飼料」という言葉は、通常「基礎飼料のみでは不足する養分を補助する飼料」の意であるが、ここでは、「反芻胃内の発酵とエネルギー及び窒素の放出を制御するための飼料」として使用しており、「発酵制御用飼料」とも言い換えることができる。このため、TMR(全混合飼料)を使用している農家に本システムを利用する場合には、TMRに含まれる飼料の一部を配合から取り除き、これを発酵制御用飼料として別途給与するようにして、その給与時間を調整することで反芻胃内の制御を行う。 【0022】 現在、飼料配合の決定に使用されている日本や英国(Agricultural Reseach Council)及び米国(National Research Council)の飼養標準では、各飼料の消化率や代謝率は定数として扱われており、実例(大浦とFadel El−Seed,A.M.A.の学会講演要旨概要)にあるように、補助時間の最適化により大幅な消化率の改善が見込まれるならば、飼料の消化率は一定に固定された定数ではなく、変動する数量として扱う必要が生ずる。現段階ではこのような変動を飼料配合の決定に組み込んではいないが、本システムでは今後、最適補給効果も加味して消化率なども数式化し、無駄のない飼料配合を決定できるように改良することが望まれる。 【0023】 項目6.(補給時間全組合せにおける日同調乾物量の推定と、最適時間の決定)を説明する。現STOPプログラムでは、利用する補給飼料の種類と量を入力し、補給回数を1日2回として最適時間を推定している。このため、シミュレーションの結果は図5のように2回の補給時間(x軸およびy軸)と放出同調指数(z軸)の3次元で示される。現在、本システムでは指数として日同調乾物量(dSDM):図4に示すhRDMとhRN×40の低い方の値を1日分積算した量、g)を採用している。図5では、尿素+水酸化カルシウムで処理した稲わら(CS)を基礎飼料として自由採食させている緬羊に、窒素補助飼料として綿実粕(CSM)を1日2回(各75g)給与することとした場合の、すべての補給時間の組合せについてのdSDM推定量の変動を示す。この場合、dSDMが最も高い値(227g)となる組合せ(2:00と17:00)が最適補給時間となるが、本システムの推定値にはさまざまな誤差要因が含まれているとみられるため、この組合せだけに限定することは適切ではない。 【0024】 図6は、緬羊に基礎飼料としてアンモニア処理稲わら(AS)あるいは尿素+水酸化カルシウム処理稲わら(CS)を飽食させ、窒素補給飼料として綿実粕(CSM)を2回(各75g)に分けてさまざまな時間(24×24)に給与した時の日同調乾物量(dSDM)を推定し、AS(図6a)及びCS(図6b)それぞれについて、それぞれの最高値を100%、最低値を0%として、各補給時間の組合せを最適(■:95〜100%)、適(▲:90〜95%)、不適(△:5〜10%)、最不適(□:0〜5%)及びその他([空白]:10〜90%)に分類して示す。このような分類を行うことにより、飼育管理者は推定値の許容範囲とその現場の実状を考慮した上で、任意に給与時間を決定することが可能となる。すなわち、管理者が推定値の許容範囲を5%以内と見積もった場合には、図6で示す最適候補時間(■)の中から、管理者の勤務時間帯にできるだけあった組合せを選ぶとか、実例(大浦とFadel El−Seed,A.M.A.の学会講演要旨概要)にあるように、基礎飼料が1種類ではなく複数ある場合にはいずれの基礎飼料においても許容範囲内にある組合せ(図6a及びb参照)を選ぶ、といった選択が可能である。 【0025】 本システムの実例では、図6(a)及び図6(b)をもとに最適時間処理として「1:00と17:00の2回に半量ずつ給与」を選択し、最不適時間処理では「8:00の1回に全量給与」として、緬羊を実際に飼育して実験を行った。1:00の給与は管理者が実施することが困難であったため、掃除機とタイマーを利用した自動給餌装置を作成して利用した。その結果は図7に示すように、最適時間処理では反芻胃内のpH、アンモニア態窒素量及びVFA量が高くなり、菌体が占めるとみられる懸濁性沈殿物が3割増加し、反芻胃に貯留する全乾物量が有意に増加し、乾物及び繊維質の消化率がそれぞれ2割、窒素蓄積率が6割向上し、窒素の尿中排出率は4割低減した。この結果をみると、「1:00と17:00の2回に半量ずつ給与」(最適時間処理)の場合は、「8:00の1回に全量給与」(不適時間処理)の場合より、反芻胃での菌体合成量が増加して繊維分解能が上昇し、飼料から放出されるエネルギー及び窒素が有効に利用されたと考えられる。すなわち、「1:00と17:00の2回に半量ずつ給与」が最適給与時間であることが判り、本システムで選択した最適給与時間が正しかったことを示している。 【0026】 以上説明したように、本発明の動物体飼料最適給与時間決定システムは、項目1.(乾物あるいは有機物と窒素の反芻胃内分解速度の推定)、項目2.(通過速度の推定及び、摂取飼料の分解と流出の動態の推定)、項目3.(基礎飼料の時間摂取量の把握)、項目4.(基礎飼料からの時間放出量の日内変動の推定)、項目5.(補助飼料の種類、量及び給与回数の決定)及び項目6.(補給時間全組合せにおける日同調乾物量の推定と、最適時間の決定)からなり、これらの項目をコンピュータに実現させるプログラムを使用する。 【0027】 すなわち、本システムのコンピュータは、与える基礎飼料と補助飼料それぞれの乾物あるいは有機物と窒素の含量と反芻胃内分解速度量、反芻胃の通過速度量、基礎飼料の時間摂取量、基礎飼料からの時間放出量の日内変動量及び放出同調指数(日同調乾物量)の各データを記憶する基礎データ記憶手段と、基礎飼料からの時間放出量の日内変動量及び放出同調指数を算出する手段と、補給時間の候補となる複数の時間及び時間の組合せのデータを入力する手段と、入力された時間又は時間の組合せについて、基礎データ記憶手段に記憶したデータを用いて放出同調指数を算出する手段と、算出結果を記憶する算出結果記憶手段と、算出結果を順次読み出し、その中から放出同調指数の優れた値に対応する時間又は時間の組合せを補給時間と決定する手段と、決定した補給時間を表示する手段とを有する。また、本システムのコンピュータは、使用する補給飼料の種類、量、給与回数のデータを入力する手段を有する。本システムの動作は、上記で説明した通りである。 【0028】 本システムを使用することにより、基礎飼料と補助飼料とを与えて反芻胃を有する動物体の飼料の補給時間として、複数の補給時間の中から選択して最適なものを得ることができる。 【図面の簡単な説明】 【0029】 【図1】ある飼料(尿素+水酸化カルシウム処理稲わら:CS)の反芻胃培養時間とバック内残存量の関係を示す説明図。 【図2】摂取されたある飼料(CS)一単位の、摂取後の時間と分解量(a)及び流出量(b)の関係を示す説明図。 【図3】ある基礎飼料(CS)を家畜に飽食させた時の、時間摂取量の日内変動量を示すデータの説明図。 【図4】ある基礎飼料(CS)を家畜に飽食させた時の、時間放出量の日内変動量を示すデータの説明図。 【図5】ある補助飼料(綿実粕:CSM)を1日2回、さまざまな時間の組合せ(24×24)で給与した場合の、日同調乾物量(dSDM)の変動を示すデータの説明図。 【図6】さまざまな時間の組合せ(24×24)で給与した場合の、補給時間の適不適等の分類を示すデータの説明図。 【図7】ある基礎飼料(CS)を緬羊に飽食させ,補助飼料(CSB)を給与しない場合(無補給control)、不適時間(8:00)に150g給与した場合(不適)及び最適時間(1:00と17:00)に各75g給与した場合(最適)の代謝成績を示すデータ一覧の図表。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】503317197 【氏名又は名称】大浦 良三
|
| 【出願日】 |
平成15年9月1日(2003.9.1) |
| 【代理人】 |
【識別番号】110000062 【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
|
| 【公開番号】 |
特開2005−73598(P2005−73598A) |
| 【公開日】 |
平成17年3月24日(2005.3.24) |
| 【出願番号】 |
特願2003−308887(P2003−308887) |
|