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【発明の名称】 水産生物増殖装置
【発明者】 【氏名】飯田 裕司
【住所又は居所】大阪府大阪市大正区船町1丁目1番66号 株式会社中山製鋼所内

【氏名】寺島 知己
【住所又は居所】大阪府大阪市大正区船町1丁目1番66号 株式会社中山製鋼所内

【氏名】鶴丸 浩徳
【住所又は居所】大阪府大阪市大正区船町1丁目1番66号 株式会社中山製鋼所内

【氏名】奥山 正樹
【住所又は居所】大阪府大阪市大正区船町1丁目1番66号 株式会社中山製鋼所内

【要約】 【課題】藻類を十分に確保することができる藻食性の水産生物の増殖装置を提供する

【解決手段】沈設型構造体1の上面に、沈設型構造体1の一端から他端までを連通する凹状の流通溝3を形成し、該流通溝3内に、流れ藻を捕捉する籠2が設ける。また、沈設型構造体1の表面に、藻類の着生を向上させるための凹凸6、7を形成する。流通溝3内の籠2に藻類を捕捉できると共に、沈設型構造体1の表面にも藻類が着生するので、大量の藻類を確保することができる。このように、アワビ等の餌となる藻類を大量に確保できるので、アワビ等の増殖効果を高めることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈設型構造体の上面に、沈設型構造体の一端から他端にかけて凹状の流通溝が形成され、該流通溝内に、流れ藻を捕捉する籠が設けられたことを特徴とする水産生物増殖装置。
【請求項2】
前記沈設型構造体の表面に、藻類の着生を向上させるための凹凸が形成されたことを特徴とする請求項1記載の水産生物増殖装置。
【請求項3】
前記籠は、入口の開口が出口の開口よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2記載の水産生物増殖装置。
【請求項4】
前記籠は、鋼製であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水産生物増殖装置。
【請求項5】
前記沈設型構造体は、コンクリート製であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水産生物増殖装置。
【請求項6】
水産生物が、アワビであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水産生物増殖装置。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、水産生物増殖装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アワビは、岩礁に着生した藻や流れ藻等の藻類を主な食料として生活している。そこで、従来のアワビの養殖事業は、コンクリートブロックを海底に沈め、これを人工礁として利用することにより行われていた。コンクリートブロックの表面に藻類が着生、生育することにより、アワビの飼料となる藻場が形成され、アワビが増殖する。(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−239428
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、藻類がコンクリートブロック表面に着生、生育するまでに時間がかかり、また、着生できる量にも限界があるので、十分にアワビの飼料となる藻類を確保できず、上記の人工礁でのアワビの増殖効果は高いものではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑み、藻類を十分に確保することができる藻食性の水産生物の増殖装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る水産生物増殖装置は、沈設型構造体の上面に、沈設型構造体の一端から他端にかけて凹状の流通溝が形成され、該流通溝内に、流れ藻を内部に捕捉する籠が設けられたものである。
【0007】
このような本水産生物増殖装置を海底に設置すると、流通溝内に海流が流れ込み、それと共に海中を漂う流れ藻も流れ込む。そして、流通溝内に設けられた籠内に流れ藻が入り込むので、流れ藻を捕捉することができる。また、沈設型構造体の表面にも藻類が着生、生育することができる。したがって、本水産生物増殖装置は、籠に捕捉される藻類と、沈設型構造体の表面に着生する藻類との両方が存在するので、大量の藻類を確保することができる。
【0008】
なお、流通溝の形状は限定されるものではないが、海流が流通溝を通り抜けることができるように、沈設型構造体を縦断又は横断して設ければよい。また、海流が通り抜けやすいように、略直線状とするのが好ましい。
【0009】
また、本水産生物増殖装置は、流通溝の入口側を海流の上流側に向け、出口側を海流の下流側に向けて、流通溝が海流方向と平行になるように設置するのが好ましい。海流と共に流れ藻が流通溝を流れやすくなるので、流れ藻の捕捉量を高めることができるからである。
【0010】
籠は、その壁に、例えばざるのように穴の開いたものであれば、形状等は限定されるものではない。また、限定されるものではないが、籠は、鋼製とされる。鋼製であれば、生産加工がしやすく、また、鉄の錆が藻の生育を早めるので、沈設型構造体や籠に着生する藻類にも良い影響を与えることができる。なお、籠の大きさは、限定されるものではないが、流通溝を通る多くの藻類を捕捉できるように、流通溝の幅方向及び深さ方向の略全域に渡って設けるのが好ましい。
【0011】
籠は、入口の開口が出口の開口よりも大きいほうが好ましい。入口の開口は、藻類が通過できる程度の大きさであればよく、出口の開口は、藻類を流出させにくいが、水を流出可能な大きさとすればよい。これにより、流通溝を流れてくる流れ藻が籠の入口から中に入りやすく、また、籠の出口から流出しにくいので、流れ藻の捕捉能を高めることができる。さらに、籠内にアワビ等が侵入して藻類を食することができるように、アワビの侵入口を設けるのが好ましい。
【0012】
沈設型構造体の表面に、藻類の着生を向上させるための凹凸が形成される。凹凸の大きさは、限定されるものではない。凹凸を形成することにより、本水産生物増殖装置を自然の岩礁やサンゴ礁の形態に近いものとすることができる。凹凸により、沈設型構造体の表面に藻類が着生しやすくなり、藻類の保持能を向上させることができる。
【0013】
また、沈設型構造体は、限定されるものではないが、コンクリート製とされる。コンクリート製とすることにより、さらに、本水産生物増殖装置を自然の岩に近いものとすることができるので、より藻類の着生、生育効果やアワビの増殖効果を高めることができると考えられる。
【0014】
本水産生物増殖装置を用いて増殖させる水産生物としては、アワビ、ウニ等が挙げられるが、藻食性のものであれば、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
以上の説明から明らかな通り、本発明に係る水産生物増殖装置によると、流通溝内の籠で藻類を捕捉することができると共に、沈設型構造体の表面にも藻類が着生するので、本水産生物増殖装置は大量の藻類を確保することができる。したがって、その大量の藻類がアワビ等にとって十分な量の飼料となるので、アワビ等の増殖効果を高めることができる。このようにアワビが大量に増殖している本水産生物増殖装置上では、鉤捕り漁法(船上から鉤の付いた竿によりアワビを引っ掛けて採捕する方法)で容易にアワビを捕獲することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態の水産生物増殖装置の斜視図、図2は図1のA−A断面図、図3は同じく平面図、図4は同じく入口側から見た図、図5は図3の籠を取り除いた状態を示すB−B矢視図、図6は図3の籠を取り除いた状態を示すC−C矢視図、図7は図3のD−D断面図、図8は図3のE−E断面図、図9は籠の斜視図、図10は他の実施形態の水産生物増殖装置の斜視図である。
【0017】
水産生物増殖装置は、図1に示すように、沈設型構造体1と、沈設型構造体1に設置された籠2とから構成される。
【0018】
沈設型構造体1は、コンクリート製とされ、底辺が八角形で、山型状に形成される。沈設型構造体1の上面には、一辺からその対角線上の他辺にかけて凹状の流通溝3が形成される。流通溝3の中央部4には、図2及び図6に示すように、凹状の段部5が形成される。流通溝3は、該中央部4から両端に向って下り傾斜している。なお、沈設型構造体は、沈設可能なものであれば、その形状は特に限定されるものではないが、上記のように山型状に形成すれば、海底での設置の安定性があると共に、自然の岩礁やサンゴ礁に似せることができるので、よりアワビ等の生息環境に適したものとできると考えられる。
【0019】
沈設型構造体1の流通溝3以外の表面は、図3に示すように、6つの区画に分けられ、さらにそれぞれの区画の面は異方向に面している。6つの区画とは、流通溝3の中央部と隣接した両隣りの2つの区画と、それにより分けられた4つの区画である。流通溝3の中央部4と隣接した両隣りの2つの区画の表面には、図1、図3及び図8に示すように、沈設型構造体の高さ方向に向かう縦溝6が形成される。他の4つの区画のうちの、対角線上にある2つの区画の表面には、図1、図3及び図7に示すように、沈設型構造体の高さ方向と直行する方向に向かう横溝7が複数形成される。最後の2つの区画の表面は、何も溝を形成しない平らな面8とされる。
【0020】
このように、種々の方向に向かう溝(凹凸)を複数形成し、かつ、平面の部分を残すなどして複雑な他面構造とすることにより、自然に存在する岩礁等のような複雑な構造に似せることができる。なお、縦溝6、横溝7及び平面8の位置は上記に限定されるものではないが、上記のようにそれぞれ同じものが隣り合わせにならないように設定すれば、さらに表面を複雑な構造にすることができるので好ましい。
【0021】
沈設型構造体1の表面の上方に、4つのU字状の吊金具9が固定される。さらにまた、沈設型構造体1の内部には、コンクリートのクラックを防止するために、鉄筋が3次元的に張り巡らされている。
【0022】
籠2は、図2に示すように、流通溝3の中央部4の縁に設置された鋼板10の上に固定される。籠2及び鋼板10の固定方法は、溶接、固着等種々の方法をとってよい。籠2は、図9に示すように、鋼製で断面L字状の骨材を溶接により組み合わせて、6面体の骨格を形成し、その一部の面に、鉄筋の金網11が固定されて成る。籠2の一の側面が入口2aとされ、入口2aと対向する面が出口2bとされる。
【0023】
籠2の高さは、籠2の上端と沈設型構造体1の上端とが面一となるように、流通溝3の溝深さと略同一に設定される。これにより、籠2が沈設型構造体1より飛び出さないので、籠2及び水産生物増殖装置全体として受ける海流や波等による横方向の圧力が大きくならない。したがって、籠2の沈設型構造体1への設置安定性及び水産生物増殖装置の海底での設置安定性を高めることができる。また、籠2が沈設型構造体1から飛び出していないので、籠2内がアワビの良い隠れ場となるので、外敵からアワビを守ることができ、増殖効果を高めることができる。
【0024】
また、籠2の幅方向の長さは、流通溝3の幅と略同一とされ、籠2の入口2a及び出口2b以外の側面は、流通溝3の側壁3aにより略全体が覆われる。したがって、籠2は、流通溝3を流れる流れ藻のほとんどを捕捉することができる。
【0025】
金網11は、6面体の骨格の入口2a、出口2b及び上面2cに設けられるが、図10に示すように、入口2aには金網11を設けない形態としてもよいし、または、6面のすべてに設ける形態としても構わない。籠2の入口2a及び出口2b以外の側面は、流通溝3の側壁3aにより略全体が覆われているが、中央部4に隣接する両隣の沈設型構造体1の区画には縦溝6が形成され、その縦溝6により籠2の上方が開口するので、ここからアワビが籠2内に侵入し、籠2内の藻類を食べることができる。
【0026】
金網11は、縦に配される鉄筋と、横に配される鉄筋とが互いに交差し、交差部分が溶接されて成る。入口2aの金網11の網目は、出口2b及び上面2cの金網11の網目よりも大きく設定される。これにより、入口2aから流れ藻が流入しやすいが、出口2b及び上面2cから流れ藻が流出しにくいので、流れ藻を大量に捕捉することができる。詳しくは、入口2aの金網11の目合は、流れ藻の流入のしやすさの観点から、100mm以上とするのが好ましい。また、出口2b及び上面2cの金網11の目合は、流れ藻を流出させにくくするために、50mm以下とするのが好ましい。なお、本実施形態においては、出口2b及び上面2cの金網11の目合を入口2aの金網11の目合よりも小さくする方法として、出口2b及び上面2cにおいては、2枚の金網11を相互にずらして重ね合わせたものを用いている。入口2a、出口2b及び上面2cのすべての金網として、同一の金網を用いることができるのでコスト等の面からも好ましい。
【0027】
また、籠2の内部には、棒体12が立設されている。棒体12は、鋼製とされ、流通溝3の段部にドリルで複数の孔を開け、その孔に接着剤で固定されている。なお、棒体12の形状は、単純な棒形状のものであってもよいし、さらに流れ藻を捕捉しやすくするために、先端を鉤状に折曲させたり、枝分かれさせたりするなど、種々の形状をとってもよい。
【0028】
上記のように構成された水産生物増殖装置は、吊金具9にロープ等を引っ掛けて、海底まで下ろして沈設する。沈設する際、流通溝3の入口側(すなわち、籠2の入口2a側と同方向側)を海流の上流側に向け、流通溝の出口側(すなわち、籠2の出口2b側と同方向側)を海流の下流側に向けて、海流と流通溝3とが略平行となるように設置する。これにより、流通溝3に海流及び流れ藻が流れ込みやすくなる。
【0029】
そして、海流と共に流れ込んだ流れ藻は、籠2の入口2aから籠2内に流入し、その流入した流れ藻は、籠2の出口2bの目合が小さいので、籠2の内部に留まる。したがって、籠2内に流れ藻を捕捉することができる。また、籠2の内部には、棒12体が立設されているので、棒体12に流れ藻がからまり、さらに流れ藻の捕捉能を高めることができる。さらにまた、沈設型構造体1の表面には、縦溝6、横溝7などの凹凸と、平面8とが形成された他面構造となっており、この面に藻類が着生、生育することができる。
【0030】
以上のように、本水性生物増殖装置は、沈設型構造体1表面による藻類の着生、生育による藻類の確保の他に、籠2及び棒体12による流れ藻の捕捉ができるので、大量の藻類を確保することができる。したがって、アワビが沈設型構造体の表面に着生、生育した藻類を食べ尽くしたとしても、籠2内に捕捉される藻類を食べていくことができる。このように、アワビの飼料が豊富に存在するので、アワビにとってよい生育環境を形成することができ、高い増殖効果を得ることができる。また、沈設型構造体が自然の岩礁やサンゴ礁と似た構造をとっているので、アワビの成育環境をより自然に近いものとでき、アワビの増殖効果を高めることが期待できると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態の水産生物増殖装置の斜視図
【図2】図1のA−A断面図
【図3】同じく平面図
【図4】同じく入口側から見た図
【図5】図3の籠を取り除いた状態を示すB−B矢視図
【図6】図3の籠を取り除いた状態を示すC−C矢視図
【図7】図3のD−D断面図
【図8】図3のE−E断面図
【図9】籠の斜視図
【図10】他の実施形態の水産生物増殖装置の斜視図
【符号の説明】
【0032】
1 沈設型構造体
2 籠
2a 入口
2b 出口
2c 上面
3 流通溝
4 中央部
5 段部
6 縦溝
7 横溝
8 平面
11 金網
12 棒体

【出願人】 【識別番号】000150280
【氏名又は名称】株式会社中山製鋼所
【住所又は居所】大阪府大阪市大正区船町1丁目1番66号
【出願日】 平成15年8月29日(2003.8.29)
【代理人】 【識別番号】100077780
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 泰甫

【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三

【識別番号】100106873
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 誠司

【公開番号】 特開2005−73539(P2005−73539A)
【公開日】 平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願番号】 特願2003−306006(P2003−306006)