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【発明の名称】 中通し竿
【発明者】 【氏名】牛尾 朗
【住所又は居所】東京都品川区南品川四丁目1−15 日本ペイント株式会社内

【氏名】安原 清忠
【住所又は居所】東京都品川区南品川四丁目1−15 日本ペイント株式会社内

【氏名】原田 孝文
【住所又は居所】大阪府堺市老松町3丁77番地 株式会社シマノ内

【氏名】金沢 正英
【住所又は居所】大阪府堺市老松町3丁77番地 株式会社シマノ内

【氏名】森田 篤
【住所又は居所】大阪府堺市老松町3丁77番地 株式会社シマノ内

【氏名】塩谷 幸信
【住所又は居所】大阪府堺市老松町3丁77番地 株式会社シマノ内

【氏名】柳瀬 貴司
【住所又は居所】大阪府堺市老松町3丁77番地 株式会社シマノ内

【要約】 【課題】釣糸通路の撥水性及びその撥水性の維持にも優れた中通し竿を提供する。

【解決手段】この中通し竿を構成する竿体の1つである元上竿2は、その内部を釣糸が挿通するための釣糸挿通路とする管状体である。元上竿2は、管状の本体部11と、本体部11の内周面に螺旋状に形成されている釣糸支持突起12とを有する。この元上竿2の内周面には撥水塗膜10が形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣糸が挿通するための釣糸通路を内部に有する竿体と、前記釣糸通路の内周面に形成された撥水塗膜を備え、
前記撥水塗膜は、シリコーンアクリルブロック重合体、α,β−不飽和カルボニル基含有体、シリコーンオイル及び疎水性シリカを含有する撥水性塗料組成物により得られるものであり、
前記シリコーンアクリルブロック重合体は、アゾ基含有シリコーンマクロ開始剤の存在下、活性メチレン基価が30〜150であり、かつ、水酸基価又はテトラハイドロフルフリル基価が1〜10であるモノマー混合物を重合して得られるものである、中通し竿。
【請求項2】
前記撥水性塗料組成物の前記シリコーンアクリルブロック重合体と前記α,β−不飽和カルボニル基含有体との含有量の固形分質量比が95/5〜70/30である、請求項1記載の中通し竿。
【請求項3】
前記疎水性シリカは、平均粒子径が数10nmである一次粒子の凝集体であって、1〜10μmの平均粒子径を有するものである、請求項1又は2記載の中通し竿。
【請求項4】
前記撥水性塗料組成物は、0.2〜5μmの平均粒子径を有するポリテトラフルオロエチレン粒子をさらに含有する、請求項1〜3の何れかに記載の中通し竿。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は釣竿、特に、竿体の内部に釣糸が挿通するための釣糸通路が形成されている中通し竿と呼ばれるタイプの釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣りに用いる釣竿の中には、竿体の内部を釣糸が挿通するための釣糸通路とし、竿体の内部にリールからの釣糸を挿通させて、竿体の穂先側端部から外部に導出するタイプの「中通し竿」がある。このような中通し竿は、竿体の周面に釣糸ガイドを配置して釣糸を案内する「外通し竿」に比べて、釣糸ガイドへの糸絡みや糸ふけなどが生じにくく、また、釣糸が風の影響も受けにくいというメリットがある。このため、近時、中通し竿は広く用いられるようになっている。
【0003】
しかし、中通し竿では、水中に投じられた釣糸をリールで巻き上げる際に、釣糸と共に釣糸に付着した水も竿体内部の釣糸通路を挿通するので、釣糸通路内にその水が付着して溜まってしまう恐れがある。特に、近時の中通し竿は、釣糸と釣糸通路内周面との接触面積を低減するために、釣糸支持突起が螺旋状に形成されているものも多い。このような釣糸支持突起は、釣糸通路内に溜まった水の排水を妨げてしまう。釣糸通路内に水が溜まると、溜まった水の抵抗により釣糸の導出をスムーズに行うことができず、また、釣竿全体の重量化等も生じる。
【0004】
そこで、このような問題を解決するために、釣糸通路の内周面にフッ素系材料等からなる撥水塗膜を形成し、水滴の付着を抑制する方法が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2など参照)。撥水塗膜を釣糸通路の内周面に形成することで、釣糸通路内に溜まりがちな水の排水を円滑にするのである。
【0005】
しかし、従来の撥水塗膜を形成した中通し竿では、その撥水塗膜の十分な耐久性を担保できていない。即ち、釣糸が挿通する釣糸通路内周面は、釣糸との接触が繰り返される過酷な環境である。釣糸との接触を繰り返しても、容易に撥水塗膜が竿体の内周面から剥離しないような特性が撥水塗膜には要求される。従来の撥水塗膜は、このような要求に十分に応じるものになっておらず、さらなる改良が求められている。
【特許文献1】特開平10−42750号公報
【特許文献2】特開平11−299397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、釣糸通路の撥水性及びその撥水性の維持にも優れた中通し竿を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の中通し竿は、釣糸が挿通するための釣糸通路を内部に有する竿体と、釣糸通路の内周面に形成された撥水塗膜を備えている。この撥水塗膜は、シリコーンアクリルブロック重合体、α,β−不飽和カルボニル基含有体、シリコーンオイル及び疎水性シリカを含有する撥水性塗料組成物により得られるものであり、シリコーンアクリルブロック重合体は、アゾ基含有シリコーンマクロ開始剤の存在下、活性メチレン基価が30〜150であり、かつ、水酸基価又はテトラハイドロフルフリル基価が1〜10であるモノマー混合物を重合して得られるものである。
【0008】
この撥水性塗料組成物のシリコーンアクリルブロック重合体とα,β−不飽和カルボニル基含有体との含有量の固形分質量比は、95/5〜70/30であることが好ましい。
【0009】
また、疎水性シリカは、平均粒子径が数10nmである一次粒子の凝集体であって、1〜10μmの平均粒子径を有するものであるものとしてもよい。
【0010】
さらに、撥水性塗料組成物は、0.2〜5μmの平均粒子径を有するポリテトラフルオロエチレン粒子をさらに含有するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の中通し竿はその釣糸通路の撥水性及びその撥水性の維持に優れる。従って、長期にわたって使用しても、釣竿の操作性などを損なうこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。
(中通し竿全体の構造)
本発明の1つの実施形態を採用した中通し竿は、図1に示すように、複数の先細り管状体である竿体を連結して構成されている。例えば、この中通し竿は、元竿1と、その穂先側に順次振出形式若しくは並継ぎ形式に連結される元上竿2,中竿3,穂先竿4を連結して構成されている。もっとも、竿体の本数はこれに限定されるものではなく、必要に応じて任意の本数を設定する。
【0013】
元竿1は、その周面にリールRを脱着自在に装着するための、リールシート5が設けられ、また、リールシート5の穂先側の周面にはリールRからの釣糸Lを元竿1内に導入するための、釣糸導入口6が形成されている。釣糸導入口6付近の元竿1の周面には、さらに、釣糸導入口6へ釣糸Lを案内するための釣糸導入ガイド7が装着される。
【0014】
また、元上竿2〜穂先竿4の各竿体の内部の中空は釣糸通路になっている。これらの各竿体の内周面には、管状体の部分と一体的に螺旋状の釣糸支持突起を形成してもよい。なお、これらの釣糸通路の内周面には、後に詳しく説明するように、撥水塗膜10が形成されている。さらに、穂先竿4の穂先側端部にはトップガイド8が装着されている。
【0015】
このような中通し竿では、リールRからの釣糸Lが釣糸導入ガイド7を介して釣糸導入口6から元竿1内に挿入される。この釣糸Lは各竿体内の釣糸通路を順次挿通して、トップガイド8から外部に導出される。
(元上竿2の構造について)
次に、元上竿2を例にして、内部に釣糸通路が形成されている竿体について説明する。
【0016】
図2に示すように、元上竿2は、管状の本体部11と、本体部11の内周面に螺旋状に形成された釣糸支持突起12と、本体部11の内周面に塗布されて形成されている撥水塗膜10とからなる。
【0017】
管状の本体部11は、炭素繊維やガラス繊維などの強化繊維を引き揃えエポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸させたプリプレグ素材から構成される管状体である。この管状の本体部11の内部の中空が釣糸Lのための釣糸通路である。その内周面に形成される釣糸支持突起12も、上述のプリプレグ素材によって形成される。釣糸支持突起12と本体部11とは所定のプリプレグ素材を焼成する際に一体化されている。
【0018】
釣糸支持突起12と本体部11とにより、元上竿2の釣糸通路の内周面には軸方向に渡って凹凸が形成されることになるが、この凹凸の凹部分(即ち、釣糸支持突起12の最も釣糸通路内方向に突出している面部分を除く部分)にのみ撥水塗膜10を形成するのが好ましい。
【0019】
この撥水塗膜10は、シリコーンアクリルブロック重合体、α,β−不飽和カルボニル基含有体、シリコーンオイル及び疎水性シリカを含む超撥水性塗料組成物により形成されている。この撥水塗膜10は、いわゆる「超撥水性」と呼ばれる性能を有するものである。なお、本明細書において、超撥水性とは150゜以上の水接触角を示す性質を意味するものとする。
【0020】
なお、この撥水塗膜10を形成している超撥水性塗料組成物については、以下に詳細に説明する。
(超撥水性塗料組成物について)
撥水塗膜10を形成する超水性塗膜組成物は、上述のように、シリコーンアクリルブロック重合体、α,β−不飽和カルボニル基含有体、シリコーンオイル及び疎水性シリカを含む超撥水性塗料組成物により形成されている。
【0021】
このシリコーンアクリルブロック重合体は、アゾ基含有シリコーンマクロ開始剤の存在下、活性メチレン基価が30〜150であり、かつ、水酸基価又はテトラハイドロフルフリル基価が1〜10であるモノマー混合物を重合して得られるものである。アゾ基含有シリコーンマクロ開始剤としては特に限定されず、例えば、特公平2−33053号公報及び特開平7−18139号公報に記載されている下記式(1):
【0022】
【化1】


(式中、R1は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はニトリル基を表わす。R2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表わす。R3は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換のアルキル基又はフェニル基を表わす。p及びqは、同一又は異なって、0〜6の整数を表わす。mは、0〜200の整数を表わす。)
で表わされる繰り返し単位からなるアゾ基含有ポリシロキサンアミド等を挙げることができる。
【0023】
このようなアゾ基含有シリコーンマクロ開始剤としては、シリコーン鎖部分の数平均分子量が2000〜30000のものが好ましい。アゾ基含有シリコーンマクロ開始剤は、例えば、ポリシロキサンセグメントを有するジアミンとアゾ基を含有する二塩基酸ジハライドとを反応させることにより合成することができる。アゾ基含有シリコーンマクロ開始剤としては、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)をアミド結合によりポリジメチルシロキサン鎖へ結合したものであるVPSシリーズ(和光純薬社製)等を利用することも可能である。
【0024】
また、シリコーンアクリルブロック重合体を製造するのに用いられるモノマー混合物は、活性メチレン基価が30〜150であり、かつ、水酸基価又はテトラハイドロフルフリル基価1〜10である。活性メチレン基価が30未満だと、得られる撥水塗膜の硬化性が充分でなく、得られた撥水塗膜の撥水性が経時で低下するおそれがある。また、活性メチレン基価が150を超えてもそれに見合う効果が得られない。一方、水酸基価又はテトラハイドロフルフリル基価が1未満だと釣り竿本体への密着性が充分でなく、10を超えるとかえって撥水塗膜の撥水性を低下させるおそれがある。なお、上記モノマー混合物が水酸基価とテトラハイドロフルフリル基価との両方を有する場合、その合計値が上記範囲に含まれている必要がある。
【0025】
上述の活性メチレン基価を有するため、上記モノマー混合物は、活性メチレン基含有アクリル単量体を含んでいる。上記活性メチレン基含有アクリル単量体としては特に限定されず、例えば、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシマロニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−シアノアセトキシエチルエステル、N−(2−シアノアセトキシエチル)アクリルアミド、N−(2−プロピオニルアセトキシブチル)アクリルアミド、N−4−(アセトアセトキシメチル)ベンジルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトアミドエチル)ベンジルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトアミドエチル)メタクリルアミド等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
一方、上記水酸基価又はテトラハイドロフルフリル基価を有するため、上記モノマー混合物は、水酸基含有アクリル単量体又はテトラハイドロフルフリル基含有アクリル単量体を含んでいる。上記水酸基含有アクリル単量体としては特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンの付加物(プラクセルFMシリーズ又はプラクセルFAシリーズ)等を挙げることができる。また、上記テトラハイドロフルフリル基アクリル単量体としては特に限定されず、例えば、テトラフルフリルメチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0027】
上述のモノマー混合物は、通常、上記の単量体に加え、反応性官能基を持たない単量体を含んでいる。このような単量体としては特に限定されず、例えば、芳香族単量体、アルキル(メタ)アクリレート、フルオロアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル及び酢酸ビニル等のその他の単量体等を挙げることができる。
【0028】
また、更に、上記モノマー混合物は、必要に応じて、エポキシ基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、アミド基含有単量体等の反応性基を有する単量体を含むことができる。これらの単量体は、本発明で使用する撥水性塗料組成物において、安定性の諸性能に影響を及ぼさない範囲で使用することが好ましい。
【0029】
上述のシリコーンアクリルブロック重合体は、上記アゾ基含有シリコーンマクロ開始剤の存在下、上記モノマー混合物を常法のバルク重合、又は、溶液重合によって重合することにより得ることができる。上記モノマー混合物と上記シリコーンマクロ開始剤との配合割合は、両者の合計を100質量部とした場合、質量比で95/5〜50/50(モノマー混合物/シリコーンマクロ開始剤)の範囲内であることが好ましい。上記範囲外であると、シリコーンアクリルブロック重合体の良好な撥水性機能が得られず、他の成分との相溶性が劣る場合がある。上記配合割合は、90/10〜65/35がより好ましい。
【0030】
このモノマー混合物の重合は、上記アゾ基含有シリコーンマクロ開始剤が加熱又は光照射によって窒素(N2)を発生しながら分解してラジカル種を生じることによって開始され、同時に、上記アゾ基含有シリコーンマクロ開始剤から生成するポリシロキサンセグメントを有するラジカル切片がアクリル重合体中に導入されて、ポリシロキサンセグメント(A1)とアクリル重合体セグメント(A2)からなる[(A1)(A2)]型又は[(A1)(A2)(A1)]型のシリコーンアクリルブロック重合体を製造することができる。上記シリコーンアクリルブロック重合体は、鎖中に1〜2個のアクリル重合体ブロックを含み、その数平均分子量は通常数万のオーダーである。
【0031】
撥水性塗料組成物に含まれるα,β−不飽和カルボニル基含有体は、上記シリコーンアクリルブロック重合体が有する活性メチレン基とマイケル付加反応し、これにより硬化が進行するものである。上記α,β−不飽和カルボニル基とは、カルボニル基に対するα炭素及びβ炭素の間に二重結合がある官能基であり、例えば、メタクリレート基、アクリレート基、マレエート基、フマレート基等を挙げることができる。
【0032】
α,β−不飽和カルボニル基含有体は、1分子中に2個以上のα,β−不飽和カルボニル基を有していることが硬化性の観点から好ましい。1分子中に3〜6個のα,β−不飽和カルボニル基を有していることがより好ましい。
【0033】
なお、α,β−不飽和カルボニル基含有体としては特に限定されず、例えば、ポリオールの(メタ)アクリル酸エステル、フマル酸やマレイン酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸を酸成分として含む不飽和ポリエステル重合体、エポキシ重合体(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロイル基含有ウレタン化合物、α,β−不飽和カルボニル基含有アクリル重合体、(メタ)アクリロイル基含有ポリエーテル重合体及び(メタ)アクリロイル基含有シリコーンオリゴマー等を挙げることができる。
【0034】
特に、α,β−不飽和カルボニル基含有体としては、工業的な入手が容易であることから、ポリオールの(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。また、ポリオールの(メタ)アクリル酸エステルは、2個以上の水酸基を有する化合物であるポリオールと(メタ)アクリル酸とのエステルである。ここで上記ポリオールは、低分子量のものであっても、重合体であってもよい。
【0035】
ポリオールが低分子量のものである場合、上記α,β−不飽和カルボニル基含有体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキシルジメタノールジ(メタ)アクリレート、4,4’−イソプロピリデンジシクロヘキサノールジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ〔5,2,1,0〕デカンジ(メタ)アクリレート、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)シアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる
また、ポリオールが重合体である場合、上記α,β−不飽和カルボニル基含有体としては、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール、ポリウレタンポリオール及びシリコーンポリオール等の(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。
【0036】
α,β−不飽和カルボニル基含有体の数平均分子量は、下限200、上限5000の範囲内であることが好ましい。上記数平均分子量が200未満であると、撥水塗膜の硬化性が低下し、膜物性に影響を与えるおそれがある。一方、上記数平均分子量が5000を超えると、反応が充分に進行しないおそれがある。上記下限は、300がより好ましく、上記上限は、3000がより好ましい。
【0037】
α,β−不飽和カルボニル基含有体の二重結合当量は、下限100、上限1500の範囲内であることが好ましい。上記二重結合当量が100未満である場合、得られる撥水塗膜中に未反応の(メタ)アクリレート基が残存し、耐候性が低下したり、硬く脆くなったりする場合がある。また、上記二重結合当量が1500を超えると、得られる塗膜の架橋密度が小さくなり、塗膜物性や性能が低下する場合がある。なお、本明細書における二重結合当量は、二重結合1個当たりの分子量を意味するものである。上記上限は、1000であることがより好ましい。
【0038】
上記撥水性塗料組成物において、上記シリコーンアクリルブロック重合体/上記α,β−不飽和カルボニル基含有体の固形分質量比は、95/5〜70/30の範囲内であることが好ましい。95/5を超えると塗膜密着性が不充分となるおそれがあり、50/50未満であると撥水性が低下するおそれがある。なお、硬化性の観点から、上記シリコーンアクリルブロック重合体に含まれる活性メチレン基/α,β−不飽和カルボニル基含有体の官能基比は、1.0/2.0〜1.0/0.8の範囲内になるように設定しておくことが好ましい。
【0039】
本発明において使用する撥水性塗料組成物は、シリコーンオイルを含むものである。シリコーンオイルを含むことにより、得られる塗膜に長期間にわたって撥水性を付与することができるものである。
【0040】
このシリコーンオイルとしては特に限定されず、例えば、従来公知の液状のポリジメチルシロキサン等を挙げることができる。また、水酸基、アミノ基、エポキシ基等の反応性官能基を有する反応性シリコーンについては、これらの反応性基が塗膜物性に悪影響を及ぼさない限り使用することができる。
【0041】
シリコーンオイルの数平均分子量は、上記シリコーンアクリル重合体のシリコーン鎖部分よりも小さいことが好ましい。また、上記シリコーンオイルの数平均分子量の下限は、1500程度が好ましい。上記数平均分子量が1500未満であると、ブリードが生じるおそれがある。
【0042】
この撥水性塗料組成物におけるシリコーンオイルの含有量は、シリコーンアクリルブロック重合体固形分100質量部に対して、下限1質量部、上限50質量部の範囲内であることが好ましい。上記含有量が1質量部未満であると、塗膜の撥水維持効果が得られず、50質量部を超えてもそれに見合う効果が得られず経済的でない。
【0043】
また、本発明において使用する撥水性塗料組成物は、更に疎水性シリカを含むものである、上記疎水性シリカは、塗膜中に粒状物として存在することによって、塗膜表面に微細な凹凸を付与し、これによって塗膜の水に対するみかけの接触角が高くなり、より高度な撥水性を得ることができるものである。
【0044】
この疎水性シリカは、平均粒子径が数10nmである一次粒子の凝集体であって、1〜10μmの平均粒子径を有するものであることが好ましい。上記疎水性シリカのより好ましい平均粒子径は、1〜5μmである。1μm未満では充分な撥水性を得ることができず、10μmを超えると、得られる塗膜の表面の凹凸が大きくなりすぎて撥水性が低下する場合がある。なお、平均粒子径は、コールターカウンター等のよく知られた方法により求めることができる。上記一次粒子の粒子径は、数10nmであるが、本明細書中において、数10nmとは、10nm以上100nm未満の範囲を意味するものである。
【0045】
この疎水性シリカは、平均粒子径数μmのシリカを塩基性条件下で数10nmのシリカとし、次にこれを酸性条件下で、二次凝集させて得たものに疎水化処理を施したものである。上記疎水化処理としは、無機酸化物の粉体表面に対してメチル基、エチル基等の低級アルキル基、フッ化アルキル基等の疎水性基を有するように処理を行う方法や、シリコーンオイルを気相吸着することによる表面処理方法等を挙げることができる。
【0046】
上記疎水性シリカとしては、シリコーンオイルを気相吸着することによる処理を行ったシリカが好ましく、市販品としては日本シリカ工業社製Nipsil SSシリーズ等を挙げることができる。また、疎水性シリカの含有量は、上記撥水性塗料組成物の固形分全質量に対して、下限10質量%、上限60質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が10質量%未満であると、得られる撥水塗膜のみかけの水接触角が大きくならず、超撥水性を得られないおそれがある。上記含有量が60質量%を超えても、得られる塗膜の撥水性が変化しないだけでなく、密着性が低下するおそれがある。上記下限は、20質量%がより好ましく、上記上限は、55質量%がより好ましい。
【0047】
なお、ここで用いる撥水性塗料組成物としては、更に、0.2〜5μmの平均粒子径を有するポリテトラフルオロエチレン粒子を含むことが好ましい。上記ポリテトラフルオロエチレン粒子を含むことにより、長期にわたり超撥水性を維持することができる。上記ポリテトラフルオロエチレン粒子としては特に限定されず、例えば、ダイキン工業社製のルブロンシリーズ等を挙げることができる。
【0048】
ポリテトラフルオロエチレン粒子の含有量は、上記撥水性塗料組成物の固形分全質量に対して、下限10質量%、上限60質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が10質量%未満であると、撥水性付与効果が期待できない。上記含有量が60質量%を超えると、塗膜密着性が低下するおそれがある。上記下限は、20質量%がより好ましく、上記上限は、40質量%がより好ましい。
【0049】
なお、この撥水性塗料組成物は、上記成分以外に、たれ防止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤等の一般的に用いられる塗料用添加剤を含んでいてもよい。また、必要に応じて、着色成分として種々の顔料を含むことも可能である。
(元上竿2の製造方法)
次に、このような元上竿2の製造方法について概説する。
【0050】
まず、所定のテーパを施したマンドレル(芯材)100の外周面に必要に応じて離型材などを塗布する。図3(a)に示すように、このマンドレル100の周面に螺旋状に一定の間隔を隔てつつ離型テープAを巻回する。
【0051】
続いて、離型テープAの隙間に第1プリプレグテープP1を、その隙間を埋めるように巻回する。この第1プリプレグテープは所定のプリプレグ素材をテープ状に加工したものであり、そのテープの長手方向に強化繊維が引き揃えられて配向されているものである。この第1プリプレグテープP1が最終的に釣糸支持突起12を構成することになる。
【0052】
図3(b)に示すように、この第1プリプレグテープP1及び離型テープAの周面に、さらに、圧をかけながらプリプレグシートP2を巻回する。このプリプレグシートP2は、所定のプリレグ素材をシート状に加工したものである。マンドレル100の軸方向に凡そ平行になるように強化繊維が配向されている。このようなプリプレグシートP2を数プライ分だけ巻回する。もっとも、1つのプリプレグシートP2を数プライ巻回するのではなく、異なる複数枚のプリプレグシートP2をそれぞれ巻回してもよい。このプリプレグシートP2は最終的に本体部11を構成することになる。
【0053】
このようにして任意プライ分だけプリプレグシートP2を巻回した後、図3(c)に示すように、さらにその外周に第2プリプレグテープP3を螺旋状に隙間なく圧をかけながら巻回する。この第2プリプレグテープP3も所定のプリプレグ素材をテープ状に加工したものであり、テープの長手方向に強化繊維が引き揃えられて配向されている。この第2プリプレグテープP3も上述のプリプレグシートP2と共に本体部11を構成することになる。このように積層された各プリプレグの状態を図4に模式的に示す。
【0054】
その後、必要に応じてポリエステルまたはポリプロピレン等からなる成形テープをさらにこれらのプリプレグの外周面に巻回し、竿素材を成型する。得られた竿素材を炉内で焼成し、マンドレル100を抜き取り、成形テープを外周面から剥離する。さらに、マンドレル100を引き抜いた竿素材の内周面から離型テープAを剥離する。この離型テープAの剥離により、第1プリプレグテープP1の部分のみが竿素材の内周面に残存することになる。
【0055】
その後、竿素材の外周面に必要な表面処理を施し、軸方向長さを調整する。そして、この竿素材の内周面に上述の撥水性塗料組成物を塗布する。この撥水性塗料組成物を塗布する方法としては、流し塗り、スプレー塗装、刷毛塗装等も例示できる。その選択は任意である。
【0056】
ここでは、竿素材内に撥水性塗料組成物を加圧装置で送り込む方法を説明する。この方法は、図5に示すような装置を用いて行うことができる。この装置は、圧力容器20と、圧力容器20内に配置された組成物収納容器21と、圧力容器20内を加圧する加圧装置22とから構成されている。また、加圧容器20の上面からその内部にパイプ23が挿入されており、さらに、液面検出センサ24が加圧容器20上方に配置されている。この組成物収納容器21内には、撥水性塗料組成物を溶剤によって希釈した撥水性塗料液が蓄えられている。パイプ23は、その下端部が組成物収用容器21内の撥水性塗料液に差し込まれており、上端部は竿素材を連結するための連結部分となっている。この連結部分に竿素材の一端を連結し、竿素材の他端にはシリコーンの透明キャップ25を嵌める。そして、液面検出センサ24は、連結部分とキャップ25で液面を検出する。
【0057】
加圧装置22により圧力容器20内が加圧されると、組成物収納容器21内の撥水性塗料液はパイプ内から竿素材内に吹き上がる。透明キャップ25まで撥水性塗料液が吹き上がると、液面検出センサ24がこれを感知し、加圧装置22の加圧を解除して圧力容器20内の圧力を下げ、再び、撥水性塗料液の液面は連結部分に戻る。このようにして、この装置により、竿素材内に撥水性塗料液を通すことができる。
【0058】
竿素材内に撥水性塗料液を通した後、竿素材は水平方向に配置する。そして、まず第1のステップとして、撥水性塗料液の溶剤を揮発させるための送風を行う。即ち、竿素材を周方向に回転させながら、竿素材の内部に一方から他方に向かって送風する。好ましい送風の条件は、1〜3kPa,15〜40℃,30〜90分程度,竿素材の回転速度は10rpm程度で30秒毎に回転方向を反転させる。竿素材をこのような条件下で回転させながら送風することで、釣糸支持突起12に相当する部分の周面の撥水性塗料液が他の部分に流れ落ちつつ、撥水性塗料液の溶剤が揮発する。なお、油圧式送風機を用いる場合には、送風機にフィルターを取り付けて、油分が撥水性塗料組成物に影響を与えないように配慮する必要がある。次に第2のステップとして、撥水性塗料組成物を硬化させて撥水塗膜とするための加熱を行う。撥水塗膜の硬化の条件は、60〜120℃で60〜120分程度加熱することが好ましい。この場合も、第1のステップに準じて、竿素材を回転させる。
【0059】
このようにして竿素材の内周面に塗布する撥水塗膜の膜厚は、下限5μm、上限150μmの範囲内であることが好ましい。上記膜厚が上記範囲外であると、撥水持続性が低下して好ましくない。上記下限は、15μmがより好ましく、上記上限は、50μmがより好ましい。その後、釣糸ガイドなどの必要な部品を竿素材に取り付けて、元上竿2を得ることになる。
【0060】
ここでは、元上竿2を例に説明しているが、その他の中竿3や穂先竿4も同様の製法により製造し得る。
【0061】
また、ここでは、釣糸支持突起を内周面に形成した竿体について説明しているが、釣糸支持突起を設けていない竿体を有する中通し竿に本発明を適用することも当然に可能である。さらに、ここでは、釣糸支持突起に敢えて撥水塗膜を形成していないが、釣糸支持突起を含めた竿体内周面全体に撥水塗膜を形成してもよい。
【実施例】
【0062】
以下、本発明について実施例を挙げつつ説明する。もっとも、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。また、実施例中、「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味するものである。
【0063】
撥水塗膜の性能評価
[合成例1]
活性メチレン基及び水酸基を有するシリコーンアクリルブロック重合体の製造
攪拌羽根、窒素導入管、冷却コンデンサー及び滴下ロートを備えた500mLのガラス容器に、酢酸ブチル180.8gを加え、窒素雰囲気下120℃に加温した。その容器に、酢酸ブチル90gに溶解させたVPS−1001(アゾ基含有シリコーンアミド;和光純薬社製)30g、2−アセトアセトキシエチルメタアクリレート43.0g、HEMA2.8g、シクロヘキシルメタクリレート57.5g、2−エチルヘキシルメタクリレート16.8gを3時間かけて等速滴下した。その後、120℃で0.5時間保持し、7.5gの酢酸ブチルに溶解したtert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート0.3gを30分で等速滴下した。更に、110℃で1.5時間加温を続けることによって、目的のブロック共重合体を得た。なお、VPS−1001は、下記構造を有するものである。
【0064】
【化2】


このようにして合成したブロック共重合体について、GPCを用いて得られた標準ポリスチレン換算の分子量の値は、Mn=34000、Mw=118400、Mw/Mn=3.48であった。また、樹脂固形分は32.1%であった。
【0065】
[合成例2]
活性メチレン基を有し、水酸基を有さないシリコーンアクリルブロック重合体の製造
HEMAを用いなかったこととシクロヘキシルメタクリレートを57.5gから60.2gに増量したことを除き、合成例1と同様にして、ブロック共重合体を得た。
【0066】
このブロック共重合体について、GPCを用いて得られた標準ポリスチレン換算の分子量の値は、Mn=32100、Mw=116800、Mw/Mn=3.64であった。また、樹脂固形分は31.6%であった。
【0067】
[合成例3]
水酸基を有し、活性メチレン基を有さない水酸基含有シリコーンアクリルブロック重合体の製造
攪拌羽根、窒素導入管、冷却コンデンサー及び滴下ロートを備えた500mLのガラス容器に、酢酸ブチル51.5g、メトキシプロピルアセテート116.5gを加え、窒素雰囲気下120℃に加温した。その容器に、酢酸ブチル60gに溶解させたVPS−1001 20g、シクロヘキシルメタクリレート47.9g、プラクセルFM−2D(ダイセル工業社製、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとε−カプロラクトンとの1:2付加物)23.0g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート9.0gを3時間かけて等速滴下した。その後、120℃で0.5時間保持し、5gの酢酸ブチルに溶解したアゾビスイソブチロニトリル0.2gを30分で等速滴下した。更に、120℃で1.5時間加温を続けることによって、目的のブロック共重合体を得た。
【0068】
合成したブロック共重合体について、GPCを用いて得られた標準ポリスチレン換算の分子量の値は、Mn=9300、Mw=96700、Mw/Mn=10.44であった。また、水酸基価は、75.0mgKOH/g、樹脂固形分は27%であった。
【0069】
[実施例1]
合成例1で製造した活性メチレン基及び水酸基を有するシリコーンアクリルブロック重合体31.15g、α,β−不飽和カルボニル基含有体としてトリメチロールプロパントリアクリレート1.65g、シリコーンオイルとしてKF−96(信越化学社製、粘度100cs)1.14g、平均粒子径3μmの疎水性シリカとしてSS178B(日本シリカ社製)7.10g、平均粒子径0.3μmのポリテトラフルオロエチレン粒子としてルブロンL−2 8.52g、触媒としてテトラブチルアンモニウムフルオリド0.03g及び酢酸エチル57.0gを混合して、撥水性塗料組成物を得た。
【0070】
注射器を用いてこの撥水性塗料組成物を流し塗りにより、上述の製法で製造した竿素材の内周面に塗布し、エアコンプレッサーにより竿素材の内部にエアを30分送風し、さらに、100度・60分ほど加熱し、撥水性性塗料組成物を硬化させて撥水塗膜を形成した。このようにして、釣糸通路の内周面に撥水塗膜を形成した竿体を得た。この撥水塗膜の膜厚は30μmであった。
【0071】
[比較例1]
実施例1において、活性メチレン基及び水酸基を有するシリコーンアクリルブロック重合体に代えて、合成例2で製造した活性メチレン基を有し、水酸基を有さないシリコーンアクリルブロック重合体31.65gを用い、テトラブチルアンモニウムフルオリド及び酢酸エチルの量をそれぞれ0.02g、5.0gに変更したこと以外は同様にして撥水性塗料組成物を調製し、釣糸通路の内周面に撥水塗膜を形成した竿体を得た。
【0072】
[比較例2]
活性メチレン基及び水酸基を有するシリコーンアクリルブロック共重合体に代えて、合成例3で製造した水酸基を有し、活性メチレン基を有さないシリコーンアクリルブロック重合体33.11gを用い、テトラブチルアンモニウムフルオリド0.03g,酢酸エチル45.0gに変更した以外は、実施例1と同様にして、撥水性塗膜組成物を調整した。そして、釣糸通路の内周面に撥水塗膜を形成した竿体を得た。
【0073】
[比較例3]
合成例2で製造した活性メチレン基を有し水酸基を有さないシリコーンアクリルブロック重合体34.03g、イソシアネート硬化剤であるコロネートHX(日本ポリウレタン工業社製:HM01ストレートタイプ)2.64g、硬化触媒としてジブチルスズラウレート0.005g及び酢酸エチル20.0gを混合し、撥水性塗料組成物を得た。得られた撥水性塗料組成物を用いて、釣糸通路の内周面に撥水塗膜を形成した竿体を得た。
【0074】
[試験]
上述のようにして得られた各竿体の撥水塗膜について、以下の評価試験を行った。
【0075】
<撥水性>
水接触角及び水転落角を測定することにより撥水性の評価を行った。
【0076】
これらの測定には接触角計(協和界面化学社製、CA−C)を用いた。なお、上記水転落角は、所定量の水滴が滑り出す時の試験板の傾斜角度として求めたものであり、水接触角が所定の値を示していても、この水転落角が合格とされる範囲内にはっていないと、本発明で求められる超撥水性を得られないものとする。
【0077】
水接触角については、150゜以上である場合、超撥水性を有していると判断される。一方、水転落角については、超撥水性では15゜以下であれば合格とみなされる。なお、上記水転落角の測定時に使用した水滴の量は、10μlであった。
【0078】
<密着性>
塗膜を爪でひっかいて密着性の評価を行った。塗膜が全く剥がれないか、剥がれても極一部にすぎないものを合格とする。
【0079】
<塗膜性能の維持>
また、塗膜の性能が長期にわたって維持されるかどうかを、塗膜を温水浸漬した後の水接触角及び水転落角を測定することで評価した。具体的には、塗膜を40℃の温水に浸漬した後、塗膜表面に形成される空気層を水圧で強制的に除去することにより、洗面に温水が接触するようにし、それから1時間後に塗膜を取り出し、30分間風乾して水接触角及び水転落角の測定を行った。
【0080】
[結果]
以上の評価の結果を表1に示す。
【0081】
【表1】


表1より明らかなように、実施例1の竿体はその内部の釣糸通路内において優れた撥水特性を示している。
【0082】
撥水塗膜の耐久性評価
[実施例2]
上述の製法により得た竿素材の内周面に上記実施例1に係る撥水性塗膜組成物を塗布して形成した竿体を製造した。ここでは、竿素材に対する撥水性塗膜組成物の塗布方法は、実施例1に係る撥水性塗膜組成物を35%希釈剤で希釈し、竿素材内に撥水性塗料組成物を加圧装置で送り込む方法を利用した。このようにして製造した竿体は、穂先竿(♯1)、中竿(♯2)、元上竿(♯3)である。これらの竿体を元竿の穂先側に連結し、4本継ぎの中通し竿を得た。
【0083】
[比較例4]
撥水性塗膜組成物としてフッ素系の撥水性塗料組成物を利用し、その他については実施例2と同様にして、4本継ぎの中通し竿を得た。
【0084】
[試験]
上述のようにして得られた2つの中通し竿について、以下の評価試験を行った。
【0085】
〈実投試験〉
得られた実施例2,比較例4それぞれの中通し竿にリールを装着し、釣糸を釣糸通路に挿通させ、釣糸の先端に錘を装着した。そして、実際に海中に向かって錘を実投した。各実投の際の実投距離は20m以上とし、中通し竿から導出した釣糸は、一度海水に浸した後にリールに巻き上げた。
【0086】
実投回数100回後、穂先竿(♯1)、中竿(♯2)、元上竿(♯3)のそれぞれの竿体に分解し、各竿体の内部に10秒間送風し、各竿体内部の水を一度排水した。この状態で各竿体の重さを測定した。その後、各竿体を水槽内に潜らせて、水槽から引き上げた後に各竿体の重さを測定した。そして、水槽に潜らせた前の各竿体と水槽に潜らせた後の各竿体の重さの差を測定した。この重さの差が、水槽に潜らせた際に各竿体内に侵入し残った水の重さと考えられる。また、同様の測定を、実投試験前(初期)、実投回数200回後、350回後、500回後についても行った。
【0087】
さらに、穂先竿(♯1)〜元上竿(♯3)のそれぞれの竿体の内部に10秒間送風して、各竿体内部の水を一度排水した後に、各竿体を連結して中通し竿とし、その穂先側を水平より10度の角度で上空に傾けて固定した。その後、トップガイドから釣糸通路内に水を10ccほど注入して、各竿体内部に水を行き渡らせた後、釣糸を各竿体の釣糸通路に挿通させてトップガイドから導出し、釣糸の先端に負荷をかけて、釣糸が移動し始めるのに必要な力の大きさ測定した。複数回この測定を繰り返し、最大値を測定値とした。この力の大きさの差が、釣糸通路内に侵入し残存している水による釣糸の導出抵抗(釣竿の内部抵抗)を反映するものと考えられる。
【0088】
この結果を表2に示す。
【0089】
【表2】


表2から明らかなように、実施例2は、比較例4に比較して500投近くまで残存水量が小さく抑えられている。長期に渡って各竿体内の撥水塗膜がその撥水性を維持していることが理解できる。また、内部抵抗も比較例4に比較して抑えられている。
【0090】
〈海水漬け試験〉
実施例2,比較例4それぞれの中通し竿を構成する穂先竿(♯1)、中竿(♯2)、元上竿(♯3)を、人工海水中に完全に浸した。1日後に各竿体を人工海水中から引きあげ、各竿体の内部に10秒間送風し、各竿体内部の水を一度排水した。この状態で各竿体の重さを測定した。その後、各竿体を水槽内に潜らせて、水槽から引き上げた後に各竿体の重さを測定した。そして、水槽に潜らせた前の各竿体と水槽に潜らせた後の各竿体の重さの差を測定した。また、同様の測定を、人工海水に浸す前(初期)、人工海水中に浸して3日後、5日後、10日後、14日後においても行った。
【0091】
さらに、穂先竿(♯1)〜元上竿(♯3)のそれぞれの竿体の内部に10秒間送風して、各竿体内部の水を一度排水した後に、各竿体を連結して中通し竿とし、その穂先側を水平より10度の角度で上空に傾けて固定した。その後、トップガイドから釣糸通路内に水を10ccほど注入して、各竿体内部に水を行き渡らせた後、釣糸を各竿体の釣糸通路に挿通させてトップガイドから導出し、釣糸の先端に負荷をかけて、釣糸が移動し始めるのに必要な力の大きさ測定した。複数回この測定を繰り返し、最大値を測定値とした。
【0092】
この結果を表3に示す。
【0093】
【表3】


表3から明らかなように、実施例2は、比較例4に比較して、釣糸通路内の撥水性を長期に渡って維持している。
【0094】
〈走行試験〉
実施例2,比較例4それぞれの中通し竿を構成する穂先竿(♯1)、中竿(♯2)、元上竿(♯3)に対し、人工海水を付着させた釣糸を250km分相当、それぞれの竿体の内部の釣糸通路を走行させた。走行後に、各竿体の内部に10秒間送風し、各竿体内部の水を一度排水した。この状態で各竿体の重さを測定した。その後、各竿体を水槽内に潜らせて、水槽から引き上げた後に各竿体の重さを測定した。そして、水槽に潜らせた前の各竿体と水槽に潜らせた後の各竿体の重さの差を測定した。この重さの差が、水槽に潜らせた際に各竿体内に侵入し残った水の重さと考えられる。また、同様の測定は、当該釣糸の走行前にも行っている(初期)。
【0095】
さらに、穂先竿(♯1)〜元上竿(♯3)のそれぞれの竿体の内部に10秒間送風して、各竿体内部の水を一度排水した後に、各竿体を連結して中通し竿とし、その穂先側を水平より10度の角度で上空に傾けて固定した。その後、トップガイドから釣糸通路内に水を10ccほど注入して、各竿体内部に水を行き渡らせた後、釣糸を各竿体の釣糸通路に挿通させてトップガイドから導出し、釣糸の先端に負荷をかけて、釣糸が移動し始めるのに必要な力の大きさ測定した。複数回この測定を繰り返し、最大値を測定値とした。
【0096】
この結果を表4に示す。
【0097】
【表4】


表4から明らかなように、実施例2は、比較例4に比較して、釣糸通路内の撥水性を長期に渡って維持している。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の1つの実施形態を採用した中通し竿の全体図。
【図2】図1の中通し竿の元上竿2の拡大断面図。
【図3】元上竿2の製造工程を示した図。
【図4】元上竿2の製造工程におけるプリプレグの積層状態を示した図。
【図5】竿素材内へ撥水性塗膜組成物を塗布するための装置の一例を示した図。
【符号の説明】
【0099】
2 元上竿
3 中竿
4 穂先竿
10 撥水塗膜
11 本体部
12 釣糸支持突起
【出願人】 【識別番号】000230054
【氏名又は名称】日本ペイント株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区大淀北2丁目1番2号
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
【住所又は居所】大阪府堺市老松町3丁77番地
【出願日】 平成15年8月19日(2003.8.19)
【代理人】 【識別番号】100094145
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 由己男

【識別番号】100109450
【弁理士】
【氏名又は名称】關 健一

【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠

【公開番号】 特開2005−58138(P2005−58138A)
【公開日】 平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願番号】 特願2003−294838(P2003−294838)