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【発明の名称】 非成熟性単藻培養株、その製造方法及びそれが増殖した藻体
【発明者】 【氏名】垣田 浩孝

【氏名】上嶋 洋

【要約】 【課題】紅藻類大型藻類について、非成熟性で長期間にわたり保存可能、培養可能で、生理活性物質の生産量が高い、藻体の生長速度が早い及び栄養塩の吸収能力が高いという性質のうち、少なくとも1つの性質を有している培養効率が高い新規な単藻培養株を提供する。

【解決手段】天然で成熟体として雌性配偶体が検出されず、四分胞子体のみの成熟体が検出される特徴をもち、淡水混入天然海水域で繁殖する紅藻類大型海藻由来の非成熟性単藻培養株であって、この成熟胞子体を採取し、この胞子体を切断して放置することにより胞子を放出させ、放出された胞子を培養し、発芽した胞子から直立体が生育した後も増殖培養することにより製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然で成熟体として雌性配偶体が検出されず、四分胞子体のみの成熟体が検出される特徴をもち、淡水混入天然海水域で繁殖する紅藻類大型海藻由来の非成熟性単藻培養株。
【請求項2】
紅藻類大型海藻がオゴノリ属紅藻類(Gracilaria sp.)である請求項1記載の非成熟性単藻培養株。
【請求項3】
オゴノリ属紅藻類がオゴノリ(Gracilaria verrucosa)又はツルシラモ(Gracilaria chorda)あるいはそれらの亜種である請求項2記載の非成熟性単藻培養株。
【請求項4】
3年間継続培養後において、湿質量400mg当りの付着藻類が10細胞未満である請求項1、2又は3記載の非成熟性単藻培養株。
【請求項5】
天然で成熟体として雌性配偶体が検出されず、四分胞子体のみの成熟体が検出される特徴をもち、淡水混入天然海水域で繁殖している紅藻類大型海藻の成熟胞子体を採取し、この胞子体を切断して放置することにより胞子を放出させ、放出された胞子を培養し、発芽した胞子から直立体が生育した後も増殖培養することを特徴とする非成熟性単藻培養株の製造方法。
【請求項6】
紅藻類大型海藻がオゴノリ属紅藻類(Gracilaria sp.)である請求項5記載の非成熟性単藻培養株の製造方法。
【請求項7】
オゴノリ属紅藻類がオゴノリ(Gracilaria verrucosa)又はツルシラモ(Gracilaria chorda)あるいはそれらの亜種である請求項5記載の非成熟性単藻培養株の製造方法。
【請求項8】
淡水混入天然海水域が塩分1.0質量%以下の海水域である請求項5,6又は7記載の非成熟性単藻培養株の製造方法。
【請求項9】
得られる非成熟性単藻培養株が、3年間継続培養後において、湿質量400mg当りの付着藻類が10細胞未満である請求項5ないし8のいずれかに記載の非成熟性単藻培養株の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし4のいずれかに記載の非成熟性単藻培養株が増殖した藻体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、長期間にわたって保存あるいは培養を継続しても成熟せず、他の藻類が極めて付着しにくい紅藻類大型海藻由来の新規な単藻培養株、その製造方法及びそれが増殖した藻体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
森林伐採などで陸上生物資源の枯渇が危ぶまれている現在、有用海洋資源を探索し、その利用をはかることは、資源小国日本における重要な課題となっている。特に、海洋という特殊な環境で生育する大型海藻には陸上生物にみられない特殊成分が含まれており、これらの特殊成分が食品や工業製品の原料として利用されているが(非特許文献1、2参照)、近年に至り、大型海藻の分割画分やそれから分離された成分の中から、いくつかの新規生理活性物質が見出され、その結果、大型海藻がファインケミカルの原料として注目されるようになってきている(非特許文献3、4参照)。
【0003】
ところで、大型海藻由来の成分は、海藻生育時期によって質的変動や量的変動が起こるため(非特許文献5参照)、有用成分生産の目的には生育時期を精密制御した培養方法、例えば環境因子を精密制御した室内培養などが必要になってくるが、海藻の生長速度が遅いことやろ過海水の大量消費などが障害となり大型海藻の大量室内培養は、非常に困難であった。
【0004】
すなわち、藻類の室内培養には、その条件設定が重要であり、この条件設定のための生長実験用の海藻試料が必要であるが、大型海藻生長評価実験において、天然に生育している大型海藻をそのまま使用することはむずかしい。
【0005】
その理由は、大型海藻付着共存微生物などの生長速度が人工的培養条件下で大型海藻よりも速い場合が多く、微生物などが異常増殖して大型海藻の生長に影響を及ぼすからである。そして、このような付着共存微生物を除去するには薬剤処理法や単藻培養株作成法が知られているが、薬剤処理法よりも藻体のダメージが少ない理由で単藻培養株作成法が好ましい。
【0006】
ところで、藻類の有用成分の開発に際しては、藻類は成熟後枯死するので、毎年単藻培養株を入手しなければならないが、成熟しない培養株があれば、これを長時間連続して培養を継続しても成熟、枯死することがないので、毎年新鮮な培養株を入手しなくてもよくなる。そして、大型海藻のうち、緑藻類については、例えばアオサ属に属する難成熟性海藻が知られているが、紅藻類については、これまでこの種の海藻は全く知られていなかった。
【0007】
他方、一般に単藻培養株を増殖させる前段階では、直立体を生長の遅い条件に静置して保存し、この直立体から単藻培養株を増殖培養する方法が知られているが、この直立体から必要量の単藻培養株を増殖させるには、通常かなりの時間、オゴノリ属の海藻の場合2〜4週間を要するため、その間実験が停滞するのを免れない。
【0008】
また、単藻培養株での増殖と、直立体からの単藻培養株の増殖を並行的に行って処理時間の節約をはかることも考えられるが、この場合、操作が複雑になる上に、培養設備や労力が増大するという欠点がある。
したがって、この技術分野においては、必要時にすぐに増殖培養でき、あるいは成熟せずに継続的に培養を続けられる単藻培養株の出現が強く要望されていた。
【0009】
そして、紅藻類は、静止期にあるリンパ球を成長させ、増殖する引き金となるマイトジェン刺激を起し、エイズを含む種々の疾病の患者の免疫能を判定したり、新らしいガンの治療法であるLAK療法におけるリンパ球の分裂促進を行う赤血球凝集剤の生産量が高いために、特に注目されている。
【0010】
なお、海藻類を人工的に培養する方法として、緑藻類に属する不稔性海藻例えばアオサを培養して汚染海域の浄化を行う方法(特許文献1参照)、食品や医薬品原料としてアオサを海洋上又はソーラードーム内で培養する方法(特許文献2、3参照)などが提案されている。
【0011】
しかしながら、緑藻類アオサ属海藻は、フラットな形状、膜状をしており、以下の(1)から(4)の欠点がある。
(1)膜状なので、多層重ねて培養できない。(2)円筒形の紅藻類オゴノリに比較して藻体が弱く、ちぎれやすい。(3)藻体がちぎれやすいため、担体に固定して培養できない。回収が容易でなく、ちぎれ藻が汚染の原因になる。(4)30cm四方を超えるとアオサの曲がりや撹拌による分散が困難になり太陽光の受光損失を生じ、生長速度の低下を引き起こすため、回収し、裁断しなければ、生長速度の回復ができない(特許文献1、3参照)。
【0012】
また、一般的に緑藻類は紅藻類海藻よりも生長に強い光強度が必要である。海藻の生長に伴う生産物の利用や生長する海藻の機能を利用するには、緑藻類海藻を使用する場合は、紅藻類海藻を使用する場合よりも一般に強い光強度を保つ設備あるいは条件が必要となる。
【0013】
不稔性アオサは腐って、分解され消失し、一部が残って、次の年、栄養塩が高くなると増殖、異常繁殖する。毎年この繰り返しが起こっていると考えられる。実際に海浜にたまった不稔性アオサが公害の原因となっている。水分を含むアオサは比較的腐りやすく、例えば一日で腐敗するため、培地あるいは海水から回収後は、早急に脱水、乾燥することが必要であることが指摘されている(特許文献1、3参照)。
【0014】
これに対し、紅藻類例えばオゴノリは、藻体が丈夫で、切断されにくいため担体に固定して大量に培養することができ、管理、回収が容易であり、藻類寸法が大きくなっても受光損失は起こりにくいし、弱い光でも生長する上に腐敗しにくく、環境汚染を生じないし、藻体が糸状で藻体が重なっていても培養し得るので、大量室内培養に適している。
【0015】
【非特許文献1】徳田廣、大野正夫、小河久朗著、「海藻資源養殖学」、緑書房、1987年、p.35−66
【非特許文献2】「食品開発」、1984年、第19巻、p.43−48
【非特許文献3】「月刊海洋」、1995年、第27巻、p.13−21
【非特許文献4】「月刊海洋」、1995年、第27巻、p.34−39
【非特許文献5】「ハイドロバイオロジア(Hydrobiologia)」、1993年、第260/261巻、p.541−547
【特許文献1】特開2000−254685号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献2】特開平11−289894号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献3】特開2004−97003号公報(特許請求の範囲その他)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、このような事情のもとで、紅藻類大型藻類について、非成熟性で長期間にわたり保存可能、かつ培養可能であり、しかも生理活性物質の生産量が高いという性質、藻体の生長速度が早いという性質、及び栄養塩の吸収能力が高いという性質のうち、少なくとも1つの性質を有している培養効率が高い新規な単藻培養株を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、紅藻類大型海藻からの単藻培養株について種々研究を重ねた結果、天然で成熟体として雌性配偶体が検出されず、四分胞子体のみの成熟体が検出される特徴をもち、淡水混入天然海水域で繁殖している紅藻類大型海藻由来の単藻培養株は長期間にわたって成熟せず、しかも長期間にわたって継続培養した後でも、他の藻類が極めて付着しにくいことを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0018】
すなわち、本発明は、天然で成熟体として雌性配偶体が検出されず、四分胞子体のみの成熟体が検出される特徴をもち、淡水混入天然海水域で繁殖する紅藻類大型海藻由来の非成熟性単藻培養株、天然で成熟体として雌性配偶体が検出されず、四分胞子体のみの成熟体が検出される特徴をもち、淡水混入天然海水域で繁殖している紅藻類大型海藻の成熟胞子体を採取し、この胞子体を切断して放置することにより胞子を放出させ、放出された胞子を培養し、発芽した胞子から直立体が生育した後も増殖培養することを特徴とする非成熟性単藻培養株の製造方法及び上記の非成熟性単藻培養株が増殖した藻体を提供するものである。
【0019】
ここで、非成熟性単藻培養株とは、培養条件下で3年以上継続して培養しても成熟せず、海藻から単藻培養株作成直後の培養株と同様の生理活性物質を生産するものを意味する。また、低栄養あるいは低温あるいは低光強度など非増殖培養条件で3年以上の単藻培養株の保存を行っても、その後、培養条件にもたらすと、培養条件下で3年以上継続して培養しても成熟せず、海藻から単藻培養株作成直後の培養株と同様の性質、すなわち生理活性物質の生産量が高いという性質、藻体の生長速度が早いという性質、栄養塩の吸収能力が高いという性質のうちの少なくとも1つを有しているものを意味する。
【0020】
次に、本発明を詳細に説明する。
本発明の非成熟性単藻培養株は、淡水混入天然海水域、特に塩分1.0質量%以下の海水域例えば河川の水が海洋に流れ込む河口域において、天然で成熟体として雌性配偶体が検出されず、四分胞子体のみの成熟体が検出される特徴をもち、繁殖している紅藻類大型海藻を原料として生産することができる。
【0021】
本発明において紅藻類大型海藻とは、植物分類系の紅藻網に属するもので大型のものを指し、主要合成色素としてクロロフィルaとフィコビリンをもち、光合成によりフロリドシドと紅藻デンプンを生成し、貯蔵するという特徴を有している。この中にはテングサ類、オゴノリ類、スギノリ類、ツノマタ類、アマノリ類などが含まれるが、本発明で用いる紅藻類大型海藻としては、オゴノリ(Gracilaria verrucosa)、ツルシラモ(Gracilaria chorda)、それらの亜種が好ましい。
【0022】
本発明においてオゴノリ属紅藻類(Gracilaria sp.)とは、(1)オゴノリ属海藻(Gracilaria sp.)に分類される海藻、あるいは、(2)Gracilariopsis sp.に分類される海藻、あるいは、(3)Gracilariopsis sp.に過去に分類された海藻を含む。
【0023】
例えば、日本産海藻では、オゴノリ属紅藻類(Gracilaria sp.)とは、「新日本海藻誌日本産海藻類総覧、吉田忠生著、内田老鶴圃発行、1998年」においてオゴノリ目(Gracilariales:グラシラリアレス)オゴノリ科(Gracilariaceae:グラシラリアシー)に分類されている海藻を含む。これらの紅藻類は、寒海にも存在するが、特に暖海に多く、わが国ではほとんどすべての海岸地帯に分布しており、寒天の増量物や刺身のつまなどに用いられている。
【0024】
この紅藻類大型海藻から、非成熟性単藻培養株を製造するには、例えば、天然で成熟体として雌性配偶体が検出されず、四分胞子体のみの成熟体が検出される特徴をもち、淡水混入天然海水域で繁殖している紅藻類大型海藻の成熟胞子体の成熟部分を2〜5cm、好ましくは3〜4cmの長さに切断し、滅菌した水又は海水で洗浄後、滅菌海水中に6〜15時間放置し、胞子を放出させる。
【0025】
次に、この放出された胞子を分離し、培養液の入った容器に移植し、温度10〜30℃において露光下及び暗所で10〜15時間ずつ交互に静置培養する。この際の培養液としては、例えば滅菌した海水に普通の海水強化栄養剤を添加したものが用いられる。
このようにして、15〜25日間静置培養後、胞子が発芽して生長した海藻直立体の中から、太く、色が濃い直立体を選び、50〜80日間、引き続き静置培養すると、長さ10mmに生長する。
直立体を培養容器の底からピンセットではずしフラスコに移植し、保存培養条件下で培養することにより、藻体が増殖し、その結果一定量以上の単藻培養株を得ることができる。
【0026】
この培養条件は、例えば、温度が15〜30℃、光強度が50〜120μmol/m2sec、光周期は8時間明期−16時間暗期〜24時間明期−0時間暗期が挙げられる。必要であれば、振とう(50〜200rpm程度)やエアレーションを行ってもよい。培養液としては、天然海水でもよいし、人工海水でもよい。場合によっては培養液に、Provasoli(プロバゾリ)の海水補強栄養剤[西澤一俊、千原光雄編集、藻類研究法、共立出版、東京(1979)、pp.281−305]など海藻生長促進成分を添加してもよい。
【0027】
本発明では、直立体が増殖培養により増殖した藻体を単藻培養株という。
また、直立体あるいは単藻培養株は、低栄養あるいは低温あるいは低光強度など非増殖培養条件下に置くことによって、藻体生長速度を抑えることができ、保存や低増殖培養が可能である。保存や低増殖培養は、直立体あるいは単藻培養株の使用予定のない場合あるいは、藻体増殖量の調節をしたい場合に便利である。
【0028】
この低栄養あるいは低温あるいは低光強度など非増殖培養条件とは、例えば(1)硝酸態窒素とアンモニア態窒素の濃度が3μM以下、リン酸イオン濃度が1μM以下などの栄養塩濃度条件、(2)温度が5〜14℃の低温条件、(3)光強度が20〜40μmol/m2secの低光強度条件、(4)及び(1)〜(3)の組合せなどが例に挙げられる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の非成熟性単藻培養株は、培養条件下で3年以上継続して培養しても成熟せず、付着藻類も増殖しにくい。一般に海藻は、付着藻類が多くなると、海藻よりも生長の早い付着藻類に培地中の栄養分が摂取され、増殖が阻害され、最悪の場合には、枯死する。
【0030】
本発明の非成熟性単藻培養株は、付着藻類が付着しにくいため、3年以上の長期にわたって保存可能である。また培地による速成培養が可能となり、保存後、所望の時期に迅速に増殖を開始させることができる。
【0031】
本発明の非成熟性単藻培養株は、付着藻類が付着しにくいので、増殖後、藻体から有用物質を回収する際に付着藻類由来の不純分や有毒成分が混入しないという利点がある。しかも(1)生理活性物質の生産量が高い、(2)藻体の生長速度が早い、(3)栄養塩の吸収能力が高い、以上(1)から(3)の性質のうち少なくとも1つ以上の性質を有している紅藻類大型海藻であり、長期間にわたって成熟させずに培養あるいは保存することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に、実施例により本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0033】
オゴノリ属紅藻類の選抜
オゴノリ属紅藻類(Gracilaria sp.)の例として、オゴノリ属紅藻類ツルシラモ(Gracilaria chorda)について3箇所の地点で1998年4月から2001年3月までの3年間にわたって、海藻の出現量(生長)と成熟の調査を毎月1回行った。
【0034】
調査地点Aとして徳島県徳島市勝浦川河口の勝浦川の中を選んだ。調査地点Aで生育している海藻を以下勝浦川産オゴノリ属海藻という。この場所では、大潮の干潮時には勝浦川産オゴノリ属海藻(ツルシラモ)群落の全体あるいは一部が干出した。
この調査地点Aで生育している海藻を以下勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)という。
【0035】
調査地点Bとして徳島県徳島市河内町の海岸(一級河川である吉野川の河口に隣接した海岸。汽水域への適応性は勝浦川産オゴノリ属より低い)を選んだ。この調査地点Bで生育している海藻を以下徳島県徳島市川内町沖産オゴノリ属海藻[あるいはツルシラモ(徳島県吉野川河口域産)]という。
調査地点Cとして徳島県小松島市和田島沖の瀬戸内海を選んだ。この調査地点Cで生育している海藻を以下小松島沖産ツルシラモという。
【0036】
各調査地点で潮間帯の平磯上(調査地点Aについては、干潮時に干上がる河口域)に生息するツルシラモ群落中の単位体積当りのツルシラモ藻類湿質量の変化と、ツルシラモ全個体中の成熟個体数を調べた。この際、ツルシラモ群落中に縦横20cmの方形枠の設置数は毎回4回とし、4回の平均値を平均とした。
【0037】
採取したツルシラモ藻体の成熟及び非成熟の判定は、実体顕微鏡を用いて観察し、藻体に四分胞子嚢あるいは嚢果が形成されているか否かで判断した。観察により四分胞子嚢の形成が検出された藻体を成熟四分胞子体、一方、嚢果を形成していることが観察された藻体を成熟雌性配偶体と判断した。この観察結果より、全ツルシラモ個体数に対する成熟四分胞子体個体数を成熟四分胞子体の割合(%)として求めた。また、全ツルシラモ個体数に対する成熟雌性配偶体個体数を成熟雌性配偶体の割合(%)として求めた。各調査地点の結果を比較することにより、天然で成熟体として雌性配偶体が検出されず、四分胞子体のみの成熟体が検出される特徴をもつオゴノリ属紅藻類が選抜できる。
【0038】
1998年4月〜1999年3月までのツルシラモ成熟個体の調査結果を表1に、1999年4月〜2000年3月までのツルシラモ成熟個体の調査結果を表2に、2000年4月〜2001年3月までのツルシラモ成熟個体の調査結果を表3にそれぞれ示した、各表の数値はツルシラモ群落中へ設置した4箇所の縦横20cmの方形枠での値の平均値である。
【0039】
【表1】


【0040】
【表2】


【0041】
【表3】


【0042】
表1ないし3より、天然で成熟体として雌性配偶体が検出されず、四分胞子体のみの成熟体が検出される特徴を持つオゴノリ属紅藻類として調査地点Aに繁殖している「勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)」を選抜することができる。
【実施例2】
【0043】
(1)単藻培養株調製用の胞子採取及び胞子植え付け;
原料としては、天然で成熟体として雌性配偶体が検出されず、四分胞子体のみの成熟体が検出される特徴をもつオゴノリ属紅藻類として調査地点Aすなわち徳島県徳島市勝浦川河口汽水域(塩濃度0.5質量%)で採取したオゴノリ属大型海藻ツルシラモ(Gracilaria chorda)の成熟胞子体を用いた。
【0044】
成熟胞子体の成熟部分を30mmの長さに切断し、滅菌海水で洗浄後、滅菌海水中で一晩放置することにより胞子を放出させた。放出された胞子を滅菌したパスツールピペットで吸い上げ、保存培養用培養液30mlの入ったスクリュー管に分離し、14時間明期、10時間暗期の周期で光を与えて静置培養を行った。1つのスクリュー管に植え付ける胞子は20個ずつとした。スクリュー管は全部で1000個使用した。静置培養は、(i)光強度60μmol/m2secの一定条件で温度6条件(10℃から30℃まで4℃変動)、(ii)温度18℃の条件で光強度5条件(20μmol/m2secから100μmol/m2secまで20μmol/m2sec変動)の合計10条件で行った。
【0045】
この海水培地は、香川県高松市屋島湾水深約1.5mで採取した海水を0.20μmのセルロースアセテートメンブランフィルター(アドバンテック東洋社製)でろ過後、1/10容量の蒸留水を添加し混合した後で、100℃30分間滅菌し、あらかじめ滅菌処理したProvasoli(プロバゾリ)の海水補強栄養剤を添加して調製した。
【0046】
(2)直立体選別;
21日間の静置培養をした時点で、胞子の発芽が観察された実験群の中から、直立体が太く、赤色色素が鮮やかで、培養液中の浮遊物がない実験条件を選ぶ。実施例2では、「温度18℃、光強度40μmol/m2sec」の条件で発芽した直立体を実験材料に選んだ。
【0047】
選ばれた直立体は、静置培養により直立体の長さが10mmになるまで培養を続ける。この際、培地交換は4週間に1度の割合で行った。このようにして約70日間で10mmの長さの直立体を得た。
【0048】
(3)直立体の増殖培養;
約10mmに生長した直立体をスクリュー管底からピンセットではずしフラスコに移植し、直立体の増殖培養を行った。直立体の増殖培養は、培養液1リットルの入った1リットル丸底フラスコ中で温度16℃、光強度40μmol/m2sec(14時間明期、10時間暗期の光周期)の条件でエアレーションをしながら行った。培養液交換は2週間に1度行った。増殖培養を70日間行い、直立体を増殖させた。この工程は、直立体の保存にも適応できるので、直立体の保存培養工程ともいう。1個の丸底フラスコ内で増殖した直立体を数個の培養液1リットルの入った1リットル丸底フラスコ中へ分割することにより、保存培養工程期間を延長することができる。
【0049】
(4)単藻培養株の予備培養;
前工程で増殖させた直立体を、培養液1リットルの入った1リットル丸底フラスコ中で温度18℃、光強度40μmol/m2sec(14時間明期、10時間暗期の光周期)の条件でエアレーションをしながら行った。培養液交換は2週間に1度行った。予備培養を35日間行い、単藻培養株を得た。
【0050】
(5)単藻培養株の成熟性評価と生長速度評価;
温度制御(温度分布±0.5℃)、光強度制御(無断階調光)、日長時間制御などが可能な藻類培養試験器を使用し、単藻培養株の成熟性を評価した。なお、本装置は500ml三角フラスコ50個を同時に培養できる(槽内寸法1250W×720D×900Hmm)。大型海藻ツルシラモの単藻培養株から長さ4mmのアピカルフラグメントを調製し、培養海水400mlの入った三角フラスコ1本当りフラグメント6本を添加した。照射条件は14時間明期、10時間暗期の条件で行い、培養液交換は1週間ごとに行った。同一培養条件での実験点数は5点とした。
【0051】
次いで、単藻培養株の成熟性評価を、(i)光強度60μmol/m2secの一定条件で温度6条件(10℃から30℃まで4℃変動)、(ii)温度22±0.5℃の条件で光強度5条件(20μmol/m2secから100μmol/m2secまで20μmol/m2sec変動)の合計10条件でエアレーションしながら行った。
【0052】
また、培養液交換と海藻湿質量測定を、クリーンブース内で行った。このようにして、フラスコ1本当りの海藻湿質量を記録するとともに、海藻表層での嚢果や四分胞子嚢あるいは精子嚢果などの生殖器官の形成の有無を顕微鏡で観察することにより、成熟の有無を判断した。
【0053】
この結果、12週間の培養においても成熟した実験区は認められなかった。1個の400ml三角フラスコ内の海藻湿質量が0.2gに達した時点で、0.02gまで間引きして培養を継続したが、培養開始[(5)工程開始]より3年を経過しても成熟しなかった。
【0054】
生長率
相対的成長率(Relative growth rate:RGR)をRとして表す。培養開始時の海藻湿質量をW0、培養t日後の海藻湿質量をWtとすると、R=(lnWt−lnW0)/tにより相対生長率が求められる。生長率(%/day)はRに100を乗じて算出した。
培養2週間から3週間にかけてのツルシラモ(勝浦川河口産)単藻培養株の生長率は、実験区の中で、温度22℃、光強度60μmol/m2secの条件で最大の生長率であり、その値は14.4%/dayであった。
【0055】
20リットル培養液での生長と成熟評価
ツルシラモ(勝浦川河口産)単藻培養株を1リットルの平底フラスコ10本で培養し、湿質量4g以上まで増殖させる。400ml規模培養で最大生長率が得られた条件「温度22℃、光強度60μmol/m2sec、光周期は14時間明期−10時間暗期、終日エアレーション、培地交換1週間毎」をこのときの培養条件に設定した。この培養条件を増殖培養条件という。
【0056】
なお、培養液(海水培地)は、香川県高松市屋島湾水深1.5mで採取した海水を0.20μmのセルロースアセテートメンブランフィルター(アドバンテック東洋社製)でろ過後、1/10容量の蒸留水を添加し混合した後で、100℃30分間滅菌し、予め滅菌処理したProvasoli(プロバゾリ)の海水補強栄養剤を添加して調製した。以下この培養液(海水培地)を増殖培養用海水という。
【0057】
増殖培養して得たツルシラモ(勝浦川河口産)単藻培養株4gを増殖培養用海水20リットルが入っている30リットルの培養容器に移植し、増殖培養条件で4週間培養した。4週間後に海藻湿質量は約12倍の約47gに増加した。
12週間の培養でも成熟した実験区は見られなかった。その後、増殖培養海水20リットルが入っている20リットル培養液内の海藻湿質量が300gに達した時点で、10gまで間引きして培養を継続した。培養開始より3年を経過しても、成熟しなかった。400ml培養液及び20リットル培養液での単藻培養株の生長率、海藻収量及び成熟の有無を表4に示す。
【0058】
【表4】


【0059】
(6)単藻培養株の生理活性物質活性量の評価;
(a)水溶性画分の抽出;
培養4週目で得られたツルシラモ(勝浦川河口産)湿質量25gを0.15M塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、−30℃で凍結した。30mM塩化カリウムと3μM硫酸亜鉛、5mM2‐メルカプトエタノールを含んだ0.5Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH8.2)を抽出用緩衝液として使用し、細かく粉砕した凍結海藻(ツルシラモ湿質量500g相当)に対し、抽出用緩衝液40mlを加えてホモゲナイズしたのち、このホモゲナイズした液を4℃で6時間放置後、遠心分離して上澄である粗抽出液を得た。
【0060】
次いで、この粗抽出液に、最終濃度35質量%飽和溶液になるように硫酸アンモニウムを加えて1段目の塩析を行った。硫酸アンモニウムを添加終了後、4℃で1時間放置したのち、生成した沈殿を遠心分離して除去した。この操作で色素などの夾雑物が沈殿画分として除去された。次に、遠心分離で得た上澄に、最終濃度70質量%飽和溶液になるように硫酸アンモニウムを添加終了後、4℃で一晩放置したのち、生成した沈殿を遠心分離して分別した。分別した沈殿画分を、0.15M塩化ナトリウム含有100mMリン酸緩衝液(pH6.9)で再溶解し、次いで0.15M塩化ナトリウム含有100mMリン酸緩衝液(pH6.9)に対して透析し、粗活性画分を得た。得られた粗活性画分のウサギ赤血球に対する赤血球凝集活性は512単位であり、比活性は6948単位/mgプロテインであった。ここで、凝集活性の単位は、凝集活性が検出できる試料の最大希釈率の逆数と定義した。
【0061】
培養3年目で得られたツルシラモ(勝浦川河口産)湿質量25gを0.15M塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、−30℃で凍結した。30mM塩化カリウムと3μM硫酸亜鉛、5mM2−メルカプトエタノールを含んだ0.5Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH8.2)を抽出用緩衝液として使用し、細かく粉砕した凍結海藻(ツルシラモ湿質量500g相当)に対し、抽出用緩衝液40mlを加えてホモゲナイズしたのち、このホモゲナイズした液を4℃で6時間放置後、遠心分離して上澄である粗抽出液を得た。
【0062】
次いで、この粗抽出液に、最終濃度35質量%飽和溶液になるように硫酸アンモニウムを加えて1段目の塩析を行った。硫酸アンモニウムを添加終了後、4℃で1時間放置したのち、生成した沈殿を遠心分離して除去した。この操作で色素などの夾雑物が沈殿画分として除去された。次に、遠心分離で得た上澄に、最終濃度70質量%飽和溶液になるように硫酸アンモニウムを添加終了後、4℃で一晩放置した後、生成した沈殿を遠心分離して分別した。分別した沈殿画分を、0.15塩化ナトリウム含有100Mリン酸緩衝液(pH6.9)で再溶解し、次いで0.15M塩化ナトリウム含有100mMリン酸緩衝液(pH6.9)に対して透析し、粗活性画分を得た。得られた粗活性画分のウサギ赤血球に対する赤血球凝集活性は512単位であり、比活性は6810単位/mgプロテインであった。結果を表5に示す。
【0063】
【表5】


【0064】
粗活性画分についてマイトジェン活性を測定した。ヒトリンパ球幼若化試験を行った。
【0065】
次に、3H−チミジンの取り込みによる、ヒトリンパ球幼若化試験を行って、粗活性画分を精製標品についてのマイトジェン活性を測定した。この場合、すべての細胞培養に要する材料、例えば、マイクロプレート、セルハーベスター、グラスファイバーフィルター、カウンティングバイアル、3H−チミジン、トルエンシンチレーター(POPO 0.1g+PPO 5g/リットルトルエン)、液体シンチレーションカウンターの準備およびこれらを用いて行う操作はいずれも無菌的に行った。
【0066】
次に、培養液として純粋100mlに対してRPM1 1640 1.05g、NaHCO3 0.2g、ペニシリン10000Unit、ストレプトマイシン10mg、ウシ胎児血清10mlの割合で溶解した水溶液を準備し、フィルターでろ過滅菌後、使用量にあわせて小びんにつめ、密栓して−20℃で保存した。この状態で2か月は保存使用可能であった。使用時は閉栓して使い切るようにし、凍結融解は繰り返さないようにした。
【0067】
リンパ球は、ヘパリン添加血液からフィコール・コンレイ法により分離した。次いでCMF−PBS(pH7.0)で3階洗浄したのち、培養液1mlに懸濁し、リンパ球数を算定した。次いで培養液で5×105個/mlに調整した。
【0068】
リンパ球の培養は、マイクロプレートの各ウェルに、リンパ球浮遊液を200μlずつ分注して行った。次いでリンパ球の入ったマイクロプレートを30分間クリーンブース内に放置後、マイトジェン溶液として、粗活性画分、リン酸緩衝液(PES)を各ウェルに20μlずつ分注した。粗活性画分は、緩衝液で希釈した希釈液(10倍希釈から320倍希釈)を調整し、実験に供した。粗活性画分での3H−チミジンの取り込み量(cpm)は、希釈液での測定値に希釈倍率を乗じて原液に換算した値を算出することにより求めた。
次いで5%CO2含有空気中37℃の湿潤状態で、3日間培養した。次いで培養終了8時間前に3H−チミジンを培養液当りの最終濃度が1μCi/mlになるように各ウェルに分注した。
【0069】
活性の測定は次のように行った。Labo−MASH等を用いて食塩水でウェル内をハーベストしつつ、細胞をグラスファイバーフィルター上に集め、これを連続吸引してフィルター上の細胞を洗浄した(約20秒間、生理食塩水約1.5ml)。次いでグラスフィルター上の細胞固着部を剥離し、カウンティングバイアルに入れた。次いで十分乾燥させたのち、液体シンチレーター5mlをディスペンサーを用いて各バイアルに分注し、シンチレーションカウンターにて計測した。培養4週間目の単藻類培養株から得た粗活性画分の評価には3人の検体(以下、検体I、検体II及び検体IIIという)からのリンパ球を用いて実験した。ある実験条件での実験数を3回とし、平均は3回の測定の平均値を示す。結果を表6に示す。また、培養3年目の単藻類培養株から得た粗活性画分の評価には3人の検体(以下、検体IV、検体V及び検体VIという)からのリンパ球を用いて実験した。ある実験条件での実験数を3回とし、平均は3回の測定の平均値を示す。結果を表7に示す。
【0070】
【表6】


【0071】
【表7】


【0072】
大型海藻は、栄養塩を吸収する能力がある。栄養塩とは、硝酸態窒素、リン酸イオン、アンモニウムイオン(窒素)などが挙げられる。単藻培養株の栄養塩吸収能として、硝酸態窒素の1日当りの最大吸収量を評価した。
勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)の胞子から調製した単藻培養株の培養4週間目の単位湿質量当りの硝酸イオン最大負荷量は約0.4mg窒素/海藻湿質量g・日であった。結果を表8に示す。培養3年目の単位湿質量当りの硝酸イオン日最大負荷量も約0.4mg窒素/海藻湿質量g・日であった。
【0073】
【表8】


【0074】
比較例1
原料として徳島県徳島市勝浦川河口汽水域(塩濃度0.5質量%)で採取したオゴノリ属大型海藻ツルシラモ(Gracilaria chorda)「勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)」の代わりに、ツルシラモ(吉野川河口域産)を用いた以外は実施例2と同様にして、単藻培養株を得た。
【0075】
ツルシラモ(吉野川河口域産)から調製した単藻培養株について、成熟性の評価と生長速度を測定した結果、400ミリリットルの培養でも20リットルの培養でも12週間で成熟が認められた。また、生長率は、8.2%/dayであり、4gの海藻の培養4週間後の質量も12gと「勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)」から調製した非成熟性単藻培養株より低かった(表4)。含まれている赤血球凝集活性は粗活性画分で256単位、比活性3204単位/mgプロテインと「勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)」から調製した非成熟性単藻培養株より低かった(表5)。マイトジェン活性は、3人の検体とも、「勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)」から調製した非成熟性単藻培養株より低かった(表6)。日最大窒素負荷許容量は、0.2mg窒素/海藻湿質量g・日と「勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)」から調製した非成熟性単藻培養株の2分の1の値であった(表7)。
【0076】
比較例2
原料として徳島県徳島市勝浦川河口汽水域(塩濃度0.5質量%)で採取したオゴノリ属大型海藻ツルシラモ(Gracilaria chorda)「勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)」の代わりに、小松島沖産ツルシラモを用いた以外は実施例2と同調にして、単藻培養株を得た。
【0077】
小松島沖産ツルシラモから調製した単藻培養株について、成熟性の評価と生長速度を測定した結果、400ミリリットルの培養でも20リットルの培養でも11週間で成熟が認められた。また、生長率は、7.7%/dayであり、4gの海藻の培養4週間後の質量も11gと「勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)」から調製した非成熟性単藻培養株より低かった(表4)。含まれている赤血球凝集活性は粗活性画分で256単位、比活性3063単位/mgプロテインと「勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)」から調製した非成熟性単藻培養株より低かった(表5)。マイトジェン活性は、3人の検体とも、「勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)」から調製した非成熟性単藻培養株より低かった(表6)。日最大窒素負荷許容量は、0.1mg窒素/海藻湿質量g・日と「勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)」から調製した非成熟性単藻培養株の4分の1の値であった(表7)。
【0078】
それぞれの結果から、勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)の胞子から調製した単藻培養株は、培養条件下で3年以上継続して培養しても成熟せず、しかも(1)生理活性物質の生産量が高い、(2)藻体の生長速度が早い、(3)栄養塩の吸収能力が高い、以上(1)から(3)の性質のうち少なくとも一つ以上の性質を有しているオゴノリ属紅藻類であることが分かる。
【0079】
勝浦川産オゴノリ属海藻(勝浦川産ツルシラモ)の胞子から調製した単藻培養株は、ツルシラモ(吉野川河口域産)の胞子から調製した単藻培養株あるいは、小松島沖産ツルシラモの胞子から調製した単藻培養株に比べ次の点で優れている。(1)成熟しない。(2)生長量が高い。(3)生理活性物質含有量が高い。(4)栄養塩吸収能力が高い。これらの長所は、産業的に有利である。
【実施例3】
【0080】
実施例2と同様にして勝浦川河口産のツルシラモの胞子から非成熟性単藻培養株を調製し、これを5年間継続培養した。この培養株について、顕微鏡観察により、その表面に付着している他の藻類の数を計測したところ、培養株湿質量400mg当り10細胞未満であった。
【0081】
比較のために、小松島沖産ツルシラモを天然海域から採取し、実施例2記載の海水培地で3回洗浄後に、顕微鏡観察によりその表面に付着している他の藻類を計測したところ、既にツルシラモ湿質量400mg当り、約70000細胞の付着が認められた。また、この小松島沖産ツルシラモ天然採取藻体を、さらに実施例2記載の海水培地で10回洗浄後、藻体を3cmに切断し、さらに実施例2記載の海水培地で10回洗浄して洗浄切片を得、この洗浄切片を実施例2記載の海水培地で培養を開始したところ、培養開始14日目で海藻切片を入れたフラスコ中で微細藻類の繁殖が目立ち、海藻湿質量増加が低減し、培養21目の海藻湿質量は14日目の海藻湿質量を下回った。
このことから、本発明の非成熟性単藻培養株は、付着藻類を増殖させにくい性質を有することが分る。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の非成熟性単藻培養株は、赤血球凝集剤のような生理活性物質の製造に好適に用いられる。
【出願人】 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【出願日】 平成17年2月4日(2005.2.4)
【代理人】 【識別番号】100071825
【弁理士】
【氏名又は名称】阿形 明

【公開番号】 特開2005−312432(P2005−312432A)
【公開日】 平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願番号】 特願2005−29818(P2005−29818)