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【発明の名称】 タンニン含量が低減された植物体の生産方法およびこれを用いて得られる植物体、並びにその利用
【発明者】 【氏名】高木 優

【氏名】平津 圭一郎

【氏名】松井 恭子

【要約】 【課題】タンニン含量が低減された植物体の生産方法を提供する。

【解決手段】フェニルプロパノイドの合成系に関与する酵素の遺伝子発現を促進する転写因子をコードする遺伝子と、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドをコードするポリヌクレオチドとのキメラ遺伝子を植物細胞に導入して、上記転写因子と上記機能性ペプチドとを融合させたキメラタンパク質を植物細胞内で生産させる。該キメラタンパク質がタンニンの合成系に関与する遺伝子の発現を抑制し、タンニン含量が低減された植物体が生産される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物体のタンニン含量を低減させるために、
フェニルプロパノイドの合成系に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を促進する転写因子と、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドとを融合させたキメラタンパク質を、植物体で生産させることにより、タンニンの生産を抑制することを特徴とするタンニン含量が低減された植物体の生産方法。
【請求項2】
上記転写因子をコードする遺伝子と上記機能性ペプチドをコードするポリヌクレオチドとからなるキメラ遺伝子を含む組換え発現ベクターを、植物細胞に導入する形質転換工程を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の植物体の生産方法。
【請求項3】
さらに、上記組換え発現ベクターを構築する発現ベクター構築工程を含んでいることを特徴とする請求項2に記載の植物体の生産方法。
【請求項4】
上記転写因子が、以下の(a)又は(b)記載のタンパク質であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の植物体の生産方法。
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、フェニルプロパノイドの合成系に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を促進する機能を有するタンパク質。
【請求項5】
上記転写因子をコードする遺伝子として、以下の(c)又は(d)記載の遺伝子が用いられることを特徴とする請求項2または3に記載の植物体の生産方法。
(c)配列番号2に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する遺伝子。
(d)配列番号2に示される塩基配列からなる遺伝子と相補的な塩基配列からなる遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つ、フェニルプロパノイドの合成系に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を促進する転写因子をコードする遺伝子。
【請求項6】
上記転写因子が、以下の(e)又は(f)記載のタンパク質であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の植物体の生産方法。
(e)配列番号145に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(f)配列番号145に示されるアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、フェニルプロパノイドの合成系に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を促進する機能を有するタンパク質。
【請求項7】
上記転写因子をコードする遺伝子として、以下の(g)又は(h)記載の遺伝子が用いられることを特徴とする請求項2または3に記載の植物体の生産方法。
(g)配列番号146に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する遺伝子。
(h)配列番号146に示される塩基配列からなる遺伝子と相補的な塩基配列からなる遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つ、フェニルプロパノイドの合成系に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を促進する転写因子をコードする遺伝子。
【請求項8】
上記機能性ペプチドが、次に示す式(1)〜(4)
(1)X1−Leu−Asp−Leu−X2−Leu−X3
(但し、式中、X1は0〜10個のアミノ酸残基を示し、X2はAsn又はGluを示し、X3は少なくとも6個のアミノ酸残基を示す。)
(2)Y1−Phe−Asp−Leu−Asn−Y2−Y3
(但し、式中、Y1は0〜10個のアミノ酸残基を示し、Y2はPhe又はIleを示し、Y3は少なくとも6個のアミノ酸残基を示す。)
(3)Z1−Asp−Leu−Z2−Leu−Arg−Leu−Z3
(但し、式中、Z1はLeu、Asp−Leu又はLeu−Asp−Leuを示し、Z2はGlu、Gln又はAspを示し、Z3は0〜10個のアミノ酸残基を示す。)
(4)Asp−Leu−Z4−Leu−Arg−Leu
(但し、式中、Z4はGlu、Gln又はAspを示す。)
のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の植物体の生産方法。
【請求項9】
上記機能性ペプチドが、配列番号3〜19のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するぺプチドであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の植物体の生産方法。
【請求項10】
上記機能性ペプチドが、以下の(i)又は(j)記載のペプチドであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の植物体の生産方法。
(i)配列番号20又は21に示されるアミノ酸配列を有するペプチド。
(j)配列番号20又は21に示されるアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するペプチド。
【請求項11】
上記機能性ペプチドが、次に示す式(5)
(5)α1−Leu−β1−Leu−γ1−Leu
(但し、式中α1は、Asp、Asn、Glu、Gln、Thr又はSerを示し、β1は、Asp、Gln、Asn、Arg、Glu、Thr、Ser又はHisを示し、γ1は、Arg、Gln、Asn、Thr、Ser、His、Lys又はAspを示す。)
で表されるアミノ酸配列を有するものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の植物体の生産方法。
【請求項12】
上記機能性ペプチドが、次に示す式(6)〜(8)
(6)α1−Leu−β1−Leu−γ2−Leu
(7)α1−Leu−β2−Leu−Arg−Leu
(8)α2−Leu−β1−Leu−Arg−Leu
(但し、各式中α1は、Asp、Asn、Glu、Gln、Thr又はSerを示し、α2は、Asn、Glu、Gln、Thr又はSerを示し、β1は、Asp、Gln、Asn、Arg、Glu、Thr、Ser又はHisを示し、β2はAsn、Arg、Thr、Ser又はHisを示し、γ2はGln、Asn、Thr、Ser、His、Lys又はAspを示す。)
のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の植物体の生産方法。
【請求項13】
上記機能性ペプチドが、配列番号22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、133、134、135又は136に示されるアミノ酸配列を有するぺプチドであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の植物体の生産方法。
【請求項14】
上記機能性ペプチドが、配列番号38又は39に示されるアミノ酸配列を有するぺプチドであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の植物体の生産方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の生産方法により生産された、タンニン含量が低減された植物体。
【請求項16】
植物体には、成育した植物個体、植物細胞、植物組織、カルス、種子の少なくとも何れかが含まれることを特徴とする請求項15に記載の植物体。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の生産方法を行うためのキットであって、
フェニルプロパノイドの合成系に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を促進する転写因子をコードする遺伝子と、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドをコードするポリヌクレオチドと、プロモーターとを含む組換え発現ベクターを少なくとも含むことを特徴とする植物体のタンニン含量低減キット。
【請求項18】
さらに、上記組換え発現ベクターを植物細胞に導入するための試薬群を含むことを特徴とする請求項17に記載の植物体のタンニン含量低減キット。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、タンニン含量が低減された植物体の生産方法およびこれを用いて得られる植物体、並びにその利用に関するものであり、特にタンニンの合成系に関与する遺伝子の転写を抑制することによるタンニン含量が低減された植物体の生産方法およびこれを用いて得られる植物体、並びにその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、植物において、フェニルプロパノイドの合成系に関与する酵素の遺伝子発現を促進する転写因子としてシロイヌナズナのPAP1(Production of Anthocyanin Pigment1)タンパク質が知られている。PAP1タンパク質が過剰発現されると、フェニルプロパノイドの合成系に関与するカルコン合成酵素(CHS)、ジヒドロフラボノール還元酵素(DFR)、フェニルアラニンアンモニア−リラーゼ(PAL)等の発現を促進し、植物中のアントシアニン、ヒドロキシケイ皮酸、リグニンの濃度が増加することが報告されている(例えば、非特許文献3参照)。
【0003】
また、植物において、タンニンの合成系に関与する酵素の遺伝子発現を制御する転写因子としてシロイヌナズナのTT2(TRANSPARENT TESTA2)タンパク質が知られている。TT2タンパク質が過剰発現されると、シロイヌナズナの発芽10日目の植物の根においてフェニルプロパノイド合成系に関与するジヒドロフラボノール還元酵素(DFR)、アントシアニジン還元酵素、別名バンユラス(BAN)の発現が促進されることが報告されている(非特許文献8)。バンユラス(BAN)は、プロアントシアニジンの生合成において核となる酵素であり、TT2の遺伝子に変異が生じると、バンユラス(BAN)のプロモーター活性が失われることが知られている(非特許文献9)。
【0004】
ここで、本発明者は、任意の転写因子を転写抑制因子に転換するペプチドを種々見出している(例えば、特許文献1〜7、非特許文献1、2参照)。このペプチドは、Class II ERF(Ethylene Responsive Element Binding Factor)タンパク質や植物のジンクフィンガータンパク質(Zinc Finger Protein、例えばシロイヌナズナSUPERMANタンパク質等)から切り出されたもので、極めて単純な構造を有している。
【0005】
さらに本発明者は、上記PAP1タンパク質と上記ペプチドとを融合させた融合タンパク質(キメラタンパク質)を植物体内で発現させ、転写因子であるPAP1タンパク質を転写抑制因子に転換し、アントシアニンの蓄積を抑制することに成功している。具体的には、上記ペプチドをコードするポリヌクレオチドを、PAP1タンパク質をコードする遺伝子に結合してキメラ遺伝子を構築し、このキメラ遺伝子をベクターに組み込んで植物体に導入した。該キメラ遺伝子を発現した植物体を、ストレスを与える条件である3%のショ糖存在下で生育させると、野生型では観察されるアントシアニンの特徴を示す赤紫色の色素の蓄積が起こらないことが確認された(例えば、特許文献7参照)。
【0006】
ところで、植物ポリフェノールの一種としてタンニンが知られている。このタンニンは植物界において広く存在する物質であり、縮合型と加水分解型に区分される。このうち縮合型タンニンはフラボノイド重合体であるため、フェニルプロパノイド代謝産物であるが、正確な合成経路についてはよくわかっていない。
【0007】
タンニンは古くから皮なめしに用いられる等の有用性が知られており、近年ではその抗酸化作用も注目されている。しかしながらタンニンを植物体に含まれる成分として見ると、食害防護機能を発揮する成分という一面を有している。具体的には、タンニンを含む植物を食べた動物は、タンニンの有する収斂性の不愉快な味である「渋味」を感じるが、それだけではなく、植物タンパク質がタンニンと結合して消化できなくなったり、胃腸内酵素とタンニンとが反応したりする可能性がある。それゆえ、例えば、タンニンを多く含む植物は飼料効果がよくないという報告がある(例えば、非特許文献4、5、6、7参照)。
【0008】
同様の理由から、茶(特に緑茶)のタンニンは生体の細胞や組織あるいは酵素を変性するため体の弱い人にはよくないとされている。さらに、緑茶、果実酒などにおいては、渋みの原因となったり、酸化褐変により外観や風味を損なう原因となったりする。さらに、木材においても、タンニンは、変色やシミの原因となる。
【0009】
このように、植物体そのものを利用する用途では、当該植物体におけるタンニンの含量は少ない方が好ましい。したがって、タンニンの合成を抑制することによって、植物体のタンニン含量を低減できれば、これらの問題を解消することができる。このようにタンニン含量を低減することが利点となる領域は多い。
【特許文献1】特開2001−269177公報(平成13年(2001)10月2日公開)
【特許文献2】特開2001−269178公報(平成13年(2001)10月2日公開)
【特許文献3】特開2001−292776公報(平成13年(2001)10月2日公開)
【特許文献4】特開2001−292777公報(平成13年(2001)10月23日公開)
【特許文献5】特開2001−269176公報(平成13年(2001)10月2日公開)
【特許文献6】特開2001−269179公報(平成13年(2001)10月2日公開)
【特許文献7】国際公開第WO03/055903号パンフレット(平成15年(2003)7月10日公開)
【非特許文献1】Ohta,M.,Matsui,K.,Hiratsu,K.,Shinshi,H. and Ohme-Takagi,M.,The Plant Cell, Vol.13,1959-1968,August,2001
【非特許文献2】Hiratsu,K.,Ohta,M.,Matsui,K.,Ohme-Takagi,M.,FEBS Letters 514(2002)351-354
【非特許文献3】J.O.Borevitz, Y.Xia, J.Blount, R.A.Dixon, C.Lamb, Activation Tagging Identifies a Conserved MYB Regulator of Phenylpropanoid Biosynthesis
【非特許文献4】Hassan IA,Elzubeir EA,El Tinay AH,Growth and apparent absorption of minerals in broiler chicks fed diets with low or high tannin contents,Trop Anim Health Prod.2003 Apr;35(2):189-96
【非特許文献5】Van der Poel AF,Dellaert LM,Van Norel A,Helsper JP,The digestibility in piglets of faba bean as affected by breeding towards the absence of condensed tannins,Br J Nutr.1992 Nov;68(3):793-800
【非特許文献6】Sarwar,G.et al.,1981,Nutritional evaluation of meals and meal fractions derived from rape and mustard seed,Canadian Journal of Animal Science 61,719-733
【非特許文献7】Simbaya,J.et al.,1995,Quality characteristics of yellow-seeded Brassica seed meals:protein, carbohydrates, and dietary fiber components,Journal of agricultural and Food Chemistry 43,2062-2066
【非特許文献8】Nathalie Nesi, Clarisse Jond, Isabelle Debeaujon, Michel Caboche, and Loic lepiniec.,The Plant Cell, 13, 2099-2114, 2001
【非特許文献9】Debeaujon I, Nesi N, Perez P, Devic M, Grandjean O, Caboche M, Lepiniec L, Plant Cell,15,2514-2531. 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、タンニン含量が低減された植物体を得ることができれば非常に有用である。しかしながら、従来の技術では、タンニン含量が低減された植物体を生産することはできないという問題を生じる。
【0011】
すなわち、上述のように、PAP1タンパク質の過剰発現植物体においてCHS等の遺伝子の発現が促進されることや、TT2タンパク質の過剰発現植物体においてDFR等の遺伝子の発現が促進されることは報告されているが、タンニンの合成が促進されたとの報告はないため、タンニン合成経路のうちどの反応を抑制すればタンニンの合成を抑制することができるのかは明らかではない。また、従来、タンニンの合成系に関与する遺伝子の転写を抑制することによってタンニンの含量を低減する技術については知られていなかった。したがって、タンニン含量が低減された植物体を生産することは不可能であった。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、タンニンの合成系に関与する遺伝子の転写を抑制することによって、タンニン含量が低減された植物体を生産する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、PAP1タンパク質を転写抑制因子に転換することによって、アントシアニン合成ばかりでなく、タンニン合成をも抑制することができ、PAP1がタンニンの合成系にも関与する転写因子であることを初めて明らかにした。また、TT2タンパク質を転写抑制因子に転換することによって、タンニン合成を抑制することができることから、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明にかかるタンニン含量が低減された植物体の生産方法は、上記課題を解決すべく、植物体のタンニン含量を低減させるために、フェニルプロパノイドの合成系に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を促進する転写因子と、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドとを融合させたキメラタンパク質を、植物体で生産させることにより、タンニンの生産を抑制することを特徴としている。
【0015】
上記構成によれば、上記キメラタンパク質における上記転写因子由来のDNA結合ドメインが、タンニン合成系に関与すると推定される標的遺伝子に結合することにより、上記転写因子を転写抑制因子に転換することができ、植物体内では、上記転写因子の標的遺伝子の転写が抑制される。したがって、タンニン合成系の最終物質であるタンニンの生成が減少し、その結果、得られる植物体のタンニン含量を低減することができる。
【0016】
また、上記生産方法は、上記転写因子をコードする遺伝子と上記機能性ペプチドをコードするポリヌクレオチドとからなるキメラ遺伝子を含む組換え発現ベクターを、植物細胞に導入する形質転換工程を含んでいてもよい。
【0017】
また、上記生産方法は、さらに、上記組換え発現ベクターを構築する発現ベクター構築工程を含んでいてもよい。
【0018】
上記構成によれば、上記機能性ペプチドが付加されたカセットベクターに上記転写因子の遺伝子を組み込み、植物細胞に導入するだけで、上記キメラタンパク質を植物細胞内で発現させることができ、上記キメラタンパク質により転写因子の標的遺伝子の転写を容易に抑制することができる。したがって、得られる植物体のタンニン含量を低減することができる。
【0019】
上記転写因子は、以下の(a)又は(b)記載のタンパク質であることを特徴としている。(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、フェニルプロパノイドの合成系に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を促進する機能を有するタンパク質。
【0020】
また、上記転写因子をコードする遺伝子として、以下の(c)又は(d)記載の遺伝子が用いられることが好ましい。(c)配列番号2に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する遺伝子。(d)配列番号2に示される塩基配列からなる遺伝子と相補的な塩基配列からなる遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つ、フェニルプロパノイドの合成系に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を促進する転写因子をコードする遺伝子。
【0021】
また、上記転写因子は、以下の(e)または(f)記載のタンパク質であることを特徴としている。(e)配列番号145に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。(f)配列番号145に示されるアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、フェニルプロパノイドの合成系に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を促進する機能を有するタンパク質。
【0022】
また、上記転写因子をコードする遺伝子として、以下の(g)又は(h)記載の遺伝子が用いられることが好ましい。(g)配列番号146に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する遺伝子。(h)配列番号146に示される塩基配列からなる遺伝子と相補的な塩基配列からなる遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つ、フェニルプロパノイドの合成系に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を促進する転写因子をコードする遺伝子。
【0023】
上記構成によれば、上記転写因子は、上記機能性ペプチドにより転写抑制因子に転換され、上記転写因子の標的遺伝子の転写が抑制される。したがって、効率よくタンニン含量が低減された植物体を得ることができる。
【0024】
上記機能性ペプチドは、次に示す式(1)〜(4)
(1)X1−Leu−Asp−Leu−X2−Leu−X3
(但し、式中、X1は0〜10個のアミノ酸残基を示し、X2はAsn又はGluを示し、X3は少なくとも6個のアミノ酸残基を示す。)
(2)Y1−Phe−Asp−Leu−Asn−Y2−Y3
(但し、式中、Y1は0〜10個のアミノ酸残基を示し、Y2はPhe又はIleを示し、Y3は少なくとも6個のアミノ酸残基を示す。)
(3)Z1−Asp−Leu−Z2−Leu−Arg−Leu−Z3
(但し、式中、Z1はLeu、Asp−Leu又はLeu−Asp−Leuを示し、Z2はGlu、Gln又はAspを示し、Z3は0〜10個のアミノ酸残基を示す。)
(4)Asp−Leu−Z4−Leu−Arg−Leu
(但し、式中、Z4はGlu、Gln又はAspを示す。)
のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するものであることが好ましい。
【0025】
また、上記機能性ペプチドは、配列番号3〜19のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するぺプチドであることが好ましい。
【0026】
また、上記機能性ペプチドは、以下の(i)又は(j)記載のペプチドであってもよい。(i)配列番号20又は21に示されるアミノ酸配列を有するペプチド。(j)配列番号20又は21に示されるアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するペプチド。
【0027】
また、上記機能性ペプチドは、次に示す式(5)
(5)α1−Leu−β1−Leu−γ1−Leu
(但し、式中α1は、Asp、Asn、Glu、Gln、Thr又はSerを示し、β1は、Asp、Gln、Asn、Arg、Glu、Thr、Ser又はHisを示し、γ1は、Arg、Gln、Asn、Thr、Ser、His、Lys又はAspを示す。)
で表されるアミノ酸配列を有するものであってもよい。
【0028】
また、上記機能性ペプチドは、次に示す式(6)〜(8)
(6)α1−Leu−β1−Leu−γ2−Leu
(7)α1−Leu−β2−Leu−Arg−Leu
(8)α2−Leu−β1−Leu−Arg−Leu
(但し、各式中α1は、Asp、Asn、Glu、Gln、Thr又はSerを示し、α2は、Asn、Glu、Gln、Thr又はSerを示し、β1は、Asp、Gln、Asn、Arg、Glu、Thr、Ser又はHisを示し、β2はAsn、Arg、Thr、Ser又はHisを示し、γ2はGln、Asn、Thr、Ser、His、Lys又はAspを示す。)
のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するものであってもよい。
【0029】
また、上記機能性ペプチドは、配列番号22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、133、134、135又は136に示されるアミノ酸配列を有するぺプチドであってもよい。
【0030】
また、上記機能性ペプチドは、配列番号38又は39に示されるアミノ酸配列を有するぺプチドであってもよい。
【0031】
上記機能性ペプチドは、上記式のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するペプチドまたは上記配列番号に示されるいずれかのペプチドであり、その多くは極めて短いペプチドであるため、合成が容易であり、上記転写因子の標的遺伝子であるタンニン合成に関与する遺伝子の転写抑制を効率的に行うことができる。それゆえ、標的遺伝子の発現を効果的に抑制することができる。
【0032】
また、本発明にかかる植物体は、上記生産方法により生産され、タンニン含量が低減されていることを特徴としている。上記植物体には、成育した植物個体、植物細胞、植物組織、カルス、種子の少なくとも何れかが含まれることが好ましい。
【0033】
上記植物体には、上述のように、成育した植物個体や植物細胞、種子等、様々な形態のものが含まれ、いずれも野生型の植物体に比べてタンニン含量が低減されていると考えられる。したがって、農業や林業等の種々の分野において、タンニン含量が低減された植物体を所望の形態によって利用することが可能となる。
【0034】
また、本発明にかかる植物体のタンニン含量低減キットは、上記の生産方法を行うためのキットであって、フェニルプロパノイドの合成系に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を促進する転写因子をコードする遺伝子と、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドをコードするポリヌクレオチドと、プロモーターとを含む組換え発現ベクターを少なくとも含むことを特徴としている。上記タンニン含量低減キットは、さらに、上記組換え発現ベクターを植物細胞に導入するための試薬群を含んでいてもよい。
【0035】
上記タンニン含量低減キットは、本発明に係る植物体の生産方法を実施するために必要な構成を予め備えているので、上記生産方法を容易に実施することができる。したがって、上記タンニン含量低減キットによれば、タンニン含量が低減された植物体を効率的に得ることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る植物体の生産方法は、以上のように、フェニルプロパノイドの合成系に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を促進する転写因子と、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドとを融合させたキメラタンパク質を、植物体で生産させる構成を備えている。該キメラタンパク質は、タンニンの合成系に関与する遺伝子の転写を抑制することができる。それゆえ、本発明に係る植物体の生産方法は、得られる植物体のタンニン含量を低減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
本発明は、植物体のタンニン含量を低減させる技術であって、フェニルプロパノイドの合成系に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を促進する転写因子と、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドとを融合させたキメラタンパク質を、植物体で生産させる。これによって得られる植物体では、タンニンの生産が抑制されるため、タンニン含量が低減された植物体を生産することができる。
【0039】
ここで、タンニンの生産は次のように抑制される。すなわち、上記キメラタンパク質における上記転写因子由来のDNA結合ドメインが、タンニン合成系に関与すると推定される標的遺伝子に結合する。上記転写因子は転写抑制因子に転換され、標的遺伝子の転写が抑制される。これによりタンニン合成系の最終物質であるタンニンの生成が減少し、その結果、得られる植物体のタンニン含量を低減することができる。
【0040】
上述したように、PAP1タンパク質の過剰発現植物体において、PAL、CHS、DFRの遺伝子の発現が促進されアントシアニン、ヒドロキシケイ皮酸、リグニンの濃度が増加することが報告されている。図4(a)は、フェニルプロパノイド代謝産物の概観図で、PAP1転写因子がPAL、CHS、DFRの遺伝子発現を促進し、これによりアントシアニンの合成が促進される経路を太線で示している。しかし、フェニルプロパノイド合成初期のステップにかかわる酵素発現の増強があるにもかかわらずその下流に位置するタンニン(縮合型タンニン、図中Condensed tanninsと記載)合成が促進されたという報告はない。このことから、タンニン合成経路においてPAP1タンパク質以外の特有の調節因子が存在することが示唆される。
【0041】
また、上述したように、TT2タンパク質が過剰発現されると、シロイヌナズナ発芽10日目の植物の根においてフェニルプロパノイド合成系に関与するジヒドロフラボノール還元酵素(DFR)、アントシアニジン還元酵素、別名バンユラス(BAN)の発現が促進されることが報告されている。
【0042】
しかし、アントシアニンおよびタンニン(縮合型タンニン、図中Condensed tanninsと記載)の合成が促進されたという報告はない(非特許文献8)。このことから、タンニン合成経路においてTT2タンパク質以外の特有の調節因子が存在することが示唆される。
【0043】
一般的に、植物の二次代謝物質を遺伝子操作を用いて増強または低減させようとする場合、期待どおりの効果を得ることが難しいことが知られている(PNAS 2001,vol.19,367-372)。その理由として遺伝子操作の対象となる酵素および制御因子にアイソザイムや重複因子が存在していることや、別の代謝経路(バイパスの存在)にて補足されてしまうことが挙げられる。
【0044】
したがって、アントシアニン生合成、タンニン生合成にはそれぞれの経路に特異的な制御因子が存在し、かつ重複因子の存在が推定されるため、PAP1タンパク質またはTT2タンパク質が促進する転写を抑制するのみでは、タンニンの生産を抑制することは通常困難である。本発明にかかる方法では、上記機能性タンパク質をPAP1タンパク質またはTT2タンパク質と融合させることにより、かかる困難性を克服することに成功した。
【0045】
すなわち、PAP1タンパク質と、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドとを融合させたキメラタンパク質は、アントシアニンおよびタンニンの2つの生合成経路を同時に抑制することができた。また、TT2タンパク質と上記機能性ペプチドとを融合させたキメラタンパク質は、少なくともタンニンの生合成経路を抑制することができた。
【0046】
以降の説明では、本発明にかかるタンニン含量が低減された植物体(説明の便宜上、タンニン低減植物体と称する)の生産方法に用いられるキメラタンパク質、本発明にかかる植物体の生産方法の一例、これにより得られる植物体とその有用性、並びにその利用についてそれぞれ説明する。
【0047】
(I)本発明で用いられるキメラタンパク質
上述したように、本発明で用いられるキメラタンパク質は、フェニルプロパノイドの合成系に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を促進する転写因子と、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドとを融合させたものである。そこで、上記転写因子および機能性ペプチドそれぞれについて説明する。
【0048】
(I−1)フェニルプロパノイドの合成系に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を促進する転写因子
本発明で用いられる転写因子は、フェニルプロパノイドの合成系に関与する酵素の遺伝子発現を促進する転写因子であれば特に限定されるものではない。フェニルプロパノイドの合成系は植物界で広く保存されているため、かかる転写因子は多くの植物に保存されている。したがって、本発明で用いられる転写因子には、種々の植物に保存されている同様の機能を有するタンパク質が含まれる。中でも上記転写因子は、アントシアニン合成を促進するMYB様構造を有する転写因子であることがより好ましい。
【0049】
このような転写因子としては、例えば、PAP1タンパク質、PAP2タンパク質、TT2タンパク質、AN2タンパク質、C1タンパク質、P1タンパク質、Pタンパク質、GL1タンパク質、Mixtaタンパク質等を挙げることができるが特に限定されるものではない。
【0050】
本発明で用いられる転写因子の代表的な一例としては、例えば、PAP1タンパク質やTT2タンパク質を挙げることができる。PAP1タンパク質は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質であり、上述したように、フェニルプロパノイドの合成系に関与するカルコン合成酵素(CHS)、ジヒドロフラボノール還元酵素(DFR)、フェニルアラニンアンモニア−リラーゼ(PAL)等の発現を促進することが知られている。また、TT2タンパク質は、配列番号145に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質であり、TT2のヌル突然変異体では、ジヒドロフラボノール還元酵素(DFR)、ロイコアントシアニジンジオキシゲナーゼ(LDOX)、アントシアニジン還元酵素(BAN)およびTT2の発現が抑制されることが知られている。
【0051】
本発明では、例えば、このPAP1タンパク質やTT2タンパク質に後述する機能性ペプチドを融合させることにより、転写因子であるPAP1タンパク質やTT2タンパク質を転写抑制因子に転換させる。
【0052】
本発明で用いられる転写因子としては、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するPAP1タンパク質や配列番号145に示されるアミノ酸配列を有するTT2タンパク質に限定されるものではなく、フェニルプロパノイドの合成系に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を促進する機能を有する転写因子であればよい。具体的には、例えば配列番号1または145に示されるアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であっても、上記機能を有していれば本発明にて用いることができる。
【0053】
なお、上記の「配列番号1または145に示されるアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列」における「1個又は数個」の範囲は特に限定されないが、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1個から5個、特に好ましくは1個から3個を意味する。
【0054】
本発明で用いられるキメラタンパク質を生産させる際には、後述するように、公知の遺伝子組換え技術を好適に用いることができる。そこで、本発明にかかる植物体の生産方法には、上記転写因子をコードする遺伝子も好適に用いることができる。
【0055】
上記転写因子をコードする遺伝子としては特に限定されるものではないが、具体的な一例としては、例えば、転写因子としてPAP1タンパク質を用いる場合には、このPAP1タンパク質をコードする遺伝子(説明の便宜上、PAP1遺伝子と称する)を挙げることができる。PAP1遺伝子の具体的な一例としては、例えば、配列番号2に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム(ORF)として含むポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0056】
また、他の具体的な一例としては、例えば、転写因子としてTT2タンパク質を用いる場合には、このTT2タンパク質をコードする遺伝子(説明の便宜上、TT2遺伝子と称する)を挙げることができる。TT2遺伝子の具体的な一例としては、例えば、配列番号146に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム(ORF)として含むポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0057】
もちろん、本発明で用いられるPAP1遺伝子、TT2遺伝子、または、転写因子をコードする遺伝子としては、上記の例に限定されるものではなく、配列番号2に示される塩基配列や配列番号146に示される塩基配列と相同性を有する遺伝子であってもよい。具体的には、例えば、配列番号2または配列番号146に示される塩基配列からなる遺伝子と相補的な塩基配列からなる遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、上記転写因子をコードする遺伝子等を挙げることができる。なお、ここでストリンジェントな条件でハイブリダイズするとは、60℃で2×SSC洗浄条件下で結合することを意味する。
【0058】
上記ハイブリダイゼーションは、J. Sambrook et al. Molecular Cloning, A Laboratory Manual,2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory(1989)に記載されている方法等、従来公知の方法で行うことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなる(ハイブリダイズしがたくなる)。
【0059】
上記転写因子をコードする遺伝子を取得する方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法により、多くの植物から単離することができる。例えば、既知の転写因子の塩基配列に基づき作製したプライマー対を用いることができる。このプライマー対を用いて、植物のcDNA又はゲノミックDNAを鋳型としてPCRを行うこと等により上記遺伝子を得ることができる。また、上記転写因子をコードする遺伝子は、従来公知の方法により化学合成して得ることもできる。
【0060】
(I−2)任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチド
本発明で用いられる、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチド(説明の便宜上、転写抑制転換ペプチドと称する)としては、特に限定されるものではなく、転写因子と融合させたキメラタンパク質を形成させることにより、当該転写因子により制御される標的遺伝子の転写を抑制することができるペプチドであればよい。具体的には、例えば、本発明者によって見出された転写抑制転換ペプチド(特許文献1〜7、非特許文献1・2等参照)を挙げることができる。
【0061】
本発明者は、Class II ERF遺伝子群の一つであるシロイヌナズナ由来のAtERF3タンパク質、AtERF4タンパク質、AtERF7タンパク質、AtERF8タンパク質を転写因子に結合させたタンパク質が、遺伝子の転写を顕著に抑制するとの知見を得た。そこで、上記タンパク質をそれぞれコードする遺伝子およびこれから切り出したDNAを含むエフェクタープラスミドを構築し、これを植物細胞に導入することにより、実際に遺伝子の転写を抑制することに成功した(例えば特許文献1〜4参照)。
【0062】
また、Class II ERF遺伝子群の一つであるタバコERF3タンパク質(例えば特許文献5参照)、イネOsERF3タンパク質(例えば特許文献6参照)をコードする遺伝子、及び、ジンクフィンガータンパク質の遺伝子群の一つであるシロイヌナズナZAT10、同ZAT11をコードする遺伝子についても上記と同様な試験を行ったところ、遺伝子の転写を抑制することを見出している。さらに本発明者は、これらタンパク質は、カルボキシル基末端領域に、アスパラギン酸−ロイシン−アスパラギン(DLN)を含む共通のモチーフを有することを明らかにした。そして、この共通モチーフを有するタンパク質について検討した結果、遺伝子の転写を抑制するタンパク質は極めて単純な構造のペプチドであってもよく、これら単純な構造を有するペプチドが、任意の転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有することを見出している。
【0063】
また、本発明者は、シロイヌナズナSUPERMANタンパク質は、上記の共通のモチーフと一致しないモチーフを有するが、任意の転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有すること、また該SUPERMANタンパク質をコードする遺伝子を、転写因子のDNA結合ドメイン又は転写因子をコードする遺伝子に結合させたキメラ遺伝子は、強力な転写抑制能を有するタンパク質を産生することも見出している。
【0064】
したがって、本発明において用いられる転写抑制転換ペプチドの一例として、本実施の形態では、Class II ERFタンパク質であるシロイヌナズナ由来のAtERF3タンパク質、同AtERF4タンパク質、同AtERF7タンパク質、同AtERF8タンパク質、タバコERF3タンパク質、イネOsERF3タンパク質、ジンクフィンガータンパク質の一つであるシロイヌナズナZAT10タンパク質、同ZAT11タンパク質等のタンパク質、同SUPERMANタンパク質、これらから切り出したペプチドや、上記機能を有する合成ペプチド等を挙げることができる。
【0065】
上記転写抑制転換ペプチドの一例の具体的な構造は、下記式(1)〜(4)の何れかで表されるアミノ酸配列となっている。
(1)X1−Leu−Asp−Leu−X2−Leu−X3
(但し、式中、X1は0〜10個のアミノ酸残基を示し、X2はAsn又はGluを示し、X3は少なくとも6個のアミノ酸残基を示す。)
(2)Y1−Phe−Asp−Leu−Asn−Y2−Y3
(但し、式中、Y1は0〜10個のアミノ酸残基を示し、Y2はPheまたはIleを示し、Y3は少なくとも6個のアミノ酸残基を示す。)
(3)Z1−Asp−Leu−Z2−Leu−Arg−Leu−Z3
(但し、式中、Z1はLeu、Asp−LeuまたはLeu−Asp−Leuを示し、Z2はGlu、GlnまたはAspを示し、Z3は0〜10個のアミノ酸残基を示す。)
(4)Asp−Leu−Z4−Leu−Arg−Leu
(但し、式中、Z4はGlu、GlnまたはAspを示す。)
(I−2−1)式(1)の転写抑制転換ペプチド
上記式(1)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記X1で表されるアミノ酸残基の数は0〜10個の範囲内であればよい。また、X1で表されるアミノ酸残基を構成する具体的なアミノ酸の種類は特に限定されるものではなく、どのようなものであってもよい。換言すれば、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドにおいては、N末端側には、1個の任意のアミノ酸または2〜10個の任意のアミノ酸残基からなるオリゴマーが付加されていてもよいし、アミノ酸が何も付加されていなくてもよい。
【0066】
このX1で表されるアミノ酸残基は、式(1)の転写抑制転換ペプチドを合成するときの容易さからみれば、できるだけ短いほうがよい。具体的には、10個以下であることが好ましく、5個以下であることがより好ましい。
【0067】
同様に、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記X3で表されるアミノ酸残基の数は少なくとも6個であればよい。また、X3で表されるアミノ酸残基を構成する具体的なアミノ酸の種類は特に限定されるものではなく、どのようなものであってもよい。換言すれば、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドにおいては、C末端側には、6個以上の任意のアミノ酸残基からなるオリゴマーが付加されていればよい。上記X3で表されるアミノ酸残基は、最低6個あれば上記機能を示すことができる。
【0068】
上記式(1)の転写抑制転換ペプチドにおいて、X1およびX3を除いた5個のアミノ酸残基からなるペンタマー(5mer)の具体的な配列は、配列番号40、41に示す。なお、上記X2がAsnの場合のアミノ酸配列が配列番号40に示すアミノ酸配列であり、上記X2がGluの場合のアミノ酸配列が配列番号41に示すアミノ酸配列である。
【0069】
(I−2−2)式(2)の転写抑制転換ペプチド
上記式(2)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドのX1と同様、上記Y1で表されるアミノ酸残基の数は0〜10個の範囲内であればよい。また、Y1で表されるアミノ酸残基を構成する具体的なアミノ酸の種類は特に限定されるものではなく、どのようなものであってもよい。換言すれば、上記式(2)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドと同様、N末端側には、1個の任意のアミノ酸または2〜10個の任意のアミノ酸残基からなるオリゴマーが付加されていてもよいし、アミノ酸が何も付加されていなくてもよい。
【0070】
このY1で表されるアミノ酸残基は、式(2)の転写抑制転換ペプチドを合成するときの容易さからみれば、できるだけ短いほうがよい。具体的には、10個以下であることが好ましく、5個以下であることがより好ましい。
【0071】
同様に、上記式(2)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドのX3と同様、上記Y3で表されるアミノ酸残基の数は少なくとも6個であればよい。また、Y3で表されるアミノ酸残基を構成する具体的なアミノ酸の種類は特に限定されるものではく、どのようなものであってもよい。換言すれば、上記式(2)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドと同様、C末端側には、6個以上の任意のアミノ酸残基からなるオリゴマーが付加されていればよい。上記Y3で表されるアミノ酸残基は、最低6個あれば上記機能を示すことができる。
【0072】
上記式(2)の転写抑制転換ペプチドにおいて、Y1およびY3を除いた5個のアミノ酸残基からなるペンタマー(5mer)の具体的な配列は、配列番号42、43に示す。なお、上記Y2がPheの場合のアミノ酸配列が配列番号42に示すアミノ酸配列であり、上記Y2がIleの場合のアミノ酸配列が配列番号43に示すアミノ酸配列である。また、Y2を除いた4個のアミノ酸残基からなるテトラマー(4mer)の具体的な配列は、配列番号44に示す。
【0073】
(I−2−3)式(3)の転写抑制転換ペプチド
上記式(3)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記Z1で表されるアミノ酸残基は、1〜3個の範囲内でLeuを含むものとなっている。アミノ酸1個の場合は、Leuであり、アミノ酸2個の場合は、Asp−Leuとなっており、アミノ酸3個の場合はLeu−Asp−Leuとなっている。
【0074】
一方、上記式(3)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドのX1等と同様、上記Z3で表されるアミノ酸残基の数は0〜10個の範囲内であればよい。また、Z3で表されるアミノ酸残基を構成する具体的なアミノ酸の種類は特に限定されるものではなく、どのようなものであってもよい。換言すれば、上記式(3)の転写抑制転換ペプチドにおいては、C末端側には、1個の任意のアミノ酸または2〜10個の任意のアミノ酸残基からなるオリゴマーが付加されていてもよいし、アミノ酸が何も付加されていなくてもよい。
【0075】
このZ3で表されるアミノ酸残基は、式(3)の転写抑制転換ペプチドを合成するときに容易さからみれば、できるだけ短いほうがよい。具体的には、10個以下であることが好ましく、5個以下であることがより好ましい。Z3で表されるアミノ酸残基の具体的な例としては、Gly、Gly−Phe−Phe、Gly−Phe−Ala、Gly−Tyr−Tyr、Ala−Ala−Ala等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0076】
また、この式(3)で表される転写抑制転換ペプチド全体のアミノ酸残基の数は、特に限定されるものではないが、合成するときの容易さからみれば、20アミノ酸以下であることが好ましい。
【0077】
上記式(3)の転写抑制転換ペプチドにおいて、Z3を除いた7〜10個のアミノ酸残基からなるオリゴマーの具体的な配列は、配列番号45〜53に示す。なお、上記Z1がLeuかつZ2がGlu、GlnまたはAspの場合のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号45、46または47に示すアミノ酸配列であり、上記Z1がAsp−LeuかつZ2がGlu、GlnまたはAspの場合のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号48、49または50に示すアミノ酸配列であり、上記Z1がLeu−Asp−LeuかつZ2がGlu、GlnまたはAspの場合のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号51、52または53に示すアミノ酸配列である。
【0078】
(I−2−4)式(4)の転写抑制転換ペプチド
上記式(4)の転写抑制転換ペプチドは、6個のアミノ酸残基からなるヘキサマー(6mer)であり、その具体的な配列は、配列番号7、16、54に示す。なお、上記Z4がGluの場合のアミノ酸配列が配列番号7に示すアミノ酸配列であり、上記Z4がAspの場合のアミノ酸配列が配列番号16に示すアミノ酸配列であり、上記Z4がGlnの場合のアミノ酸配列が配列番号54に示すアミノ酸配列である。
【0079】
特に、本発明において用いられる転写抑制転換ペプチドは、上記式(4)で表されるヘキサマーのような最小配列を有するペプチドであってもよい。例えば、配列番号7に示すアミノ酸配列は、シロイヌナズナSUPERMANタンパク質(SUPタンパク質)の196〜201番目のアミノ酸配列に相当し、上述したように、本発明者が新たに上記転写抑制転換ペプチドとして見出したものである。
【0080】
(I−2−5)転写抑制転換ペプチドのより具体的な例
上述した各式で表される転写抑制転換ペプチドのより具体的な例としては、例えば、配列番号3〜19のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するぺプチドを挙げることができる。これらオリゴペプチドは、本発明者が上記転写抑制転換ペプチドであることを見出したものである(例えば、特許文献7参照)。
【0081】
さらに、上記転写抑制転換ペプチドの他の具体的な例として、次に示す(i)又は(j)記載のオリゴペプチドを挙げることができる。
(i)配列番号20又は21に示されるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチド。
(j)配列番号20又は21に示されるいずれかのアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるペプチド。
【0082】
上記配列番号20に示されるアミノ酸配列からなるペプチドは、SUPタンパク質である。また、上記の「配列番号20又は21に示されるいずれかのアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列」における「1個又は数個」の範囲は特に限定されないが、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1個から5個、特に好ましくは1個から3個を意味する。
【0083】
上記アミノ酸の欠失、置換若しくは付加は、上記ペプチドをコードする塩基配列を、当該技術分野で公知の手法によって改変することによって行うことができる。塩基配列に変異を導入するには、Kunkel法またはGapped duplex法等の公知手法又はこれに準ずる方法により行うことができ、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-KやMutant-G(何れも商品名、TAKARA社製))等を用いて、あるいはLA PCR in vitro Mutagenesisシリーズキット(商品名、TAKARA社製)を用いて変異が導入される。
【0084】
また、上記機能性ペプチドは、配列番号20に示されるアミノ酸配列の全長配列を有するペプチドに限られず、その部分配列を有するペプチドであってもよい。
【0085】
その部分配列を有するペプチドとしては、例えば、配列番号21に示されるアミノ酸配列(SUPタンパク質の175から204番目のアミノ酸配列)を有するペプチドが挙げられ、その部分配列を有するペプチドとしては、上記(3)で表されるペプチドが挙げられる。
【0086】
(I−3)転写抑制転換ペプチドの他の例
本発明者は、さらに、上記モチーフの構造について検討した結果、新たに6つのアミノ酸からなるモチーフを見出した。このモチーフは、具体的には、次に示す一般式(5)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドである。これらのペプチドも、上記転写抑制転換ペプチドに含まれる。
(5)α1−Leu−β1−Leu−γ1−Leu
但し、上記式(5)中α1は、Asp、Asn、Glu、Gln、Thr又はSerを示し、β1は、Asp、Gln、Asn、Arg、Glu、Thr、Ser又はHisを示し、γ1は、Arg、Gln、Asn、Thr、Ser、His、Lys又はAspを示す。
【0087】
なお、上記一般式(5)で表されるペプチドを、便宜上、次に示す一般式(6)、(7)、(8)又は(9)で表されるアミノ酸配列を有しているペプチドに分類する。
(6)α1−Leu−β1−Leu−γ2−Leu
(7)α1−Leu−β2−Leu−Arg−Leu
(8)α2−Leu−β1−Leu−Arg−Leu
(9)Asp−Leu−β3−Leu−Arg−Leu
但し、上記各式中、α1は、Asp、Asn、Glu、Gln、Thr又はSerを示し、α2は、Asn、Glu、Gln、Thr又はSerを示す。また、β1は、Asp、Gln、Asn、Arg、Glu、Thr、Ser又はHisを示し、β2はAsn、Arg、Thr、Ser又はHisを示し、β3は、Glu、Asp又はGlnを示す。さらに、γ2は、Gln、Asn、Thr、Ser、His、Lys又はAspを示す。
【0088】
上記式(5)〜(9)で表されるアミノ酸配列を有する転写抑制転換ペプチドのより具体的な例としては、配列番号22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、133、134、135又は136で表されるアミノ酸配列を有するペプチドを挙げることができる。このうち、配列番号29、30、32、34、133、134、135又は136のペプチドは、一般式(6)に示されるペプチドに相当し、配列番号22、25、35、36又は37のペプチドは、一般式(7)に示されるペプチドに相当し、配列番号26、27、28、31、又は33のペプチドは、一般式(8)に示されるペプチドに相当し、配列番号23又は24のペプチドは、一般式(9)に示されるペプチドに相当する。
【0089】
また、上記一般式(5)〜(9)に示されるペプチド以外にも配列番号38または39で表されるアミノ酸配列を有する転写抑制転換ペプチドを用いることもできる。
【0090】
(I−4)キメラタンパク質の生産方法
上記(I−2)および(I−3)で説明した各種転写抑制転換ペプチドは、上記(I−1)で説明した転写因子と融合してキメラタンパク質とすることにより、当該転写因子を転写抑制因子とすることができる。したがって、本発明では、上記転写抑制転換ペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いて、転写因子をコードする遺伝子とのキメラ遺伝子を得れば、キメラタンパク質を生産させることができる。
【0091】
具体的には、上記転写抑制転換ペプチドをコードするポリヌクレオチド(説明の便宜上、転写抑制転換ポリヌクレオチドと称する)と上記転写因子をコードする遺伝子とを連結することによりキメラ遺伝子を構築して、植物細胞に導入する。これによりキメラタンパク質を生産させることができる。なお、キメラ遺伝子を植物細胞に導入する具体的な方法については、後述する(2)の項で詳細に説明する。
【0092】
上記転写抑制転換ポリヌクレオチドの具体的な塩基配列は特に限定されるものではなく、遺伝暗号に基づいて、上記転写抑制転換ペプチドのアミノ酸配列に対応する塩基配列を含んでいればよい。また、必要に応じて、上記転写抑制転換ポリヌクレオチドは、転写因子遺伝子と連結するための連結部位となる塩基配列を含んでいてもよい。さらに、上記転写抑制転換ポリヌクレオチドのアミノ酸読み枠と転写因子遺伝子の読み枠とが一致しないような場合に、これらを一致させるための付加的な塩基配列を含んでいてもよい。
【0093】
上記転写抑制転換ポリヌクレオチドの具体例としては、例えば、配列番号61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、137、139、141又は143に示される塩基配列を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。また、配列番号62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、138、140、142、144に示されるポリヌクレオチドは、それぞれ、上記例示されたポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドである。また、上記転写抑制転換ポリヌクレオチドの他の具体例としては、例えば、配列番号95、96に示されるポリヌクレオチドを挙げることができる。これらのポリヌクレオチドは、以下の表1に示すように配列番号3〜39、133〜136に示されるアミノ酸配列に対応するものである。
【0094】
【表1】


【0095】
本発明で用いられるキメラタンパク質は、転写因子をコードする遺伝子と転写抑制転換ポリヌクレオチドとを連結した上記キメラ遺伝子から得ることができる。したがって、上記キメラタンパク質は、上記転写因子の部位と、上記転写抑制転換ペプチドの部位とが含まれていればよく、その構成は特に限定されるものではない。例えば、転写因子と転写抑制転換ペプチドとの間をつなぐためのリンカー機能を有するポリペプチドや、HisやMyc、Flag等のようにキメラタンパク質をエピトープ標識するためのポリペプチド等、各種の付加的なポリペプチドが含まれていてもよい。さらに上記キメラタンパク質には、必要に応じて、ポリペプチド以外の構造、例えば、糖鎖やイソプレノイド基等が含まれていてもよい。
【0096】
(II)本発明にかかる植物体の生産方法の一例
本発明にかかる植物体の生産方法は、上記(I)で説明したキメラタンパク質を植物体で生産させ、タンニンの生産を抑制させる過程を含んでいれば特に限定されるものではないが、本発明にかかる植物体の生産方法を具体的な工程で示せば、例えば、発現ベクター構築工程、形質転換工程、選抜工程等の工程を含む生産方法として挙げることができる。このうち、本発明では、少なくとも形質転換工程が含まれていればよい。以下、各工程について具体的に説明する。
【0097】
(II−1)発現ベクター構築工程
本発明において行われる発現ベクター構築工程は、上記(I−1)で説明した転写因子をコードする遺伝子と、上記(I−4)で説明した転写抑制転換ポリヌクレオチドと、プロモーターとを含む組換え発現ベクターを構築する工程であれば特に限定されるものではない。
【0098】
上記組換え発現ベクターの母体となるベクターとしては、従来公知の種々のベクターを用いることができる。例えば、プラスミド、ファージ、またはコスミド等を用いることができ、導入される植物細胞や導入方法に応じて適宜選択することができる。具体的には、例えば、pBR322、pBR325、pUC19、pUC119、pBluescript、pBluescriptSK、pBI系のベクター等を挙げることができる。特に、植物体へのベクターの導入法がアグロバクテリウムを用いる方法である場合には、pBI系のバイナリーベクターを用いることが好ましい。pBI系のバイナリーベクターとしては、具体的には、例えば、pBIG、pBIN19、pBI101、pBI121、pBI221等を挙げることができる。
【0099】
上記プロモーターは、植物体内で遺伝子を発現させることが可能なプロモーターであれば特に限定されるものではなく、公知のプロモーターを好適に用いることができる。かかるプロモーターとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(CaMV35S)、アクチンプロモーター、ノパリン合成酵素のプロモーター、タバコのPR1a遺伝子プロモーター、トマトのリブロース1,5−二リン酸カルボキシラーゼ・オキシダーゼ小サブユニットプロモーター等を挙げることができる。この中でも、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターまたはアクチンプロモーターをより好ましく用いることができる。上記各プロモーターを用いれば、得られる組換え発現ベクターでは、植物細胞内に導入されたときに任意の遺伝子を強く発現させることが可能となる。
【0100】
上記プロモーターは、転写因子をコードする遺伝子と転写抑制転換ポリヌクレオチドとを連結したキメラ遺伝子を発現しうるように連結され、ベクター内に導入されていればよく、組換え発現ベクターとしての具体的な構造は特に限定されるものではない。
【0101】
上記組換え発現ベクターは、上記プロモーターおよび上記キメラ遺伝子に加えて、さらに他のDNAセグメントを含んでいてもよい。当該他のDNAセグメントは特に限定されるものではないが、ターミネーター、選別マーカー、エンハンサー、翻訳効率を高めるための塩基配列等を挙げることができる。また、上記組換え発現ベクターは、さらにT−DNA領域を有していてもよい。T−DNA領域は特にアグロバクテリウムを用いて上記組換え発現ベクターを植物体に導入する場合に遺伝子導入の効率を高めることができる。
【0102】
ターミネーターは転写終結部位としての機能を有していれば特に限定されるものではなく、公知のものであってもよい。例えば、具体的には、ノパリン合成酵素遺伝子の転写終結領域(Nosターミネーター)、カリフラワーモザイクウイルス35Sの転写終結領域(CaMV35Sターミネーター)等を好ましく用いることができる。この中でもNosターミネーターをより好ましく用いることできる。
【0103】
上記形質転換ベクターにおいては、ターミネーターを適当な位置に配置することにより、植物細胞に導入された後に、不必要に長い転写物を合成したり、強力なプロモーターがプラスミドのコピー数の減少させたりするような現象の発生を防止することができる。
【0104】
上記選別マーカーとしては、例えば薬剤耐性遺伝子を用いることができる。かかる薬剤耐性遺伝子の具体的な一例としては、例えば、ハイグロマイシン、ブレオマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、クロラムフェニコール等に対する薬剤耐性遺伝子を挙げることができる。これにより、上記抗生物質を含む培地中で生育する植物体を選択することによって、形質転換された植物体を容易に選別することができる。
【0105】
上記翻訳効率を高めるための塩基配列としては、例えばタバコモザイクウイルス由来のomega配列を挙げることができる。このomega配列をプロモーターの非翻訳領域(5’UTR)に配置させることによって、上記キメラ遺伝子の翻訳効率を高めることができる。このように、上記形質転換ベクターには、その目的に応じて、さまざまなDNAセグメントを含ませることができる。
【0106】
上記組換え発現ベクターの構築方法についても特に限定されるものではなく、適宜選択された母体となるベクターに、上記プロモーター、転写因子をコードする遺伝子、および転写抑制転換ポリヌクレオチド、並びに必要に応じて上記他のDNAセグメントを所定の順序となるように導入すればよい。例えば、転写因子をコードする遺伝子と転写抑制転換ポリヌクレオチドとを連結してキメラ遺伝子を構築し、次に、このキメラ遺伝子とプロモーターと(必要に応じてターミネーター等)とを連結して発現カセットを構築し、これをベクターに導入すればよい。
【0107】
キメラ遺伝子の構築および発現カセットの構築では、例えば、各DNAセグメントの切断部位を互いに相補的な突出末端としておき、ライゲーション酵素で反応させることで、当該DNAセグメントの順序を規定することが可能となる。なお、発現カセットにターミネーターが含まれる場合には、上流から、プロモーター、上記キメラ遺伝子、ターミネーターの順となっていればよい。また、組換え発現ベクターを構築するための試薬類、すなわち制限酵素やライゲーション酵素等の種類についても特に限定されるものではなく、市販のものを適宜選択して用いればよい。
【0108】
また、上記組換え発現ベクターの増殖方法(生産方法)も特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。一般的には大腸菌をホストとして当該大腸菌内で増殖させればよい。このとき、ベクターの種類に応じて、好ましい大腸菌の種類を選択してもよい。
【0109】
(II−2)形質転換工程
本発明において行われる形質転換工程は、上記(II−1)で説明した組換え発現ベクターを植物細胞に導入して、上記(I)で説明したキメラタンパク質を生産させるようになっていればよい。
【0110】
上記組換え発現ベクターを植物細胞に導入する方法(形質転換方法)は特に限定されるものではなく、植物細胞に応じた適切な従来公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、アグロバクテリウムを用いる方法や直接植物細胞に導入する方法を用いることができる。アグロバクテリウムを用いる方法としては、例えば、Transformation of Arabidopsis thaliana by vacuum infiltration(http://www.bch.msu.edu/pamgreen/protocol.htm)を用いることができる。
【0111】
組換え発現ベクターを直接植物細胞に導入する方法としては、例えば、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法(電気穿孔法)、ポリエチレングリコール法、パーティクルガン法、プロトプラスト融合法、リン酸カルシウム法等を用いることができる。
【0112】
上記組換え発現ベクターが導入される植物細胞としては、例えば、花、葉、根等の植物器官における各組織の細胞、カルス、懸濁培養細胞等を挙げることができる。
【0113】
ここで、本発明にかかる植物体の生産方法においては、上記組換え発現ベクターは、生産しようとする種類の植物体に合わせて適切なものを適宜構築してもよいが、汎用的な組換え発現ベクターを予め構築しておき、それを植物細胞に導入してもよい。すなわち、本発明にかかる植物体の生産方法においては、上記(I−1)で説明した組換え発現ベクター構築工程が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
【0114】
(II−3)その他の工程、その他の方法
本発明にかかる植物体の生産方法においては、上記形質転換工程が含まれていればよく、さらに上記組換え発現ベクター構築工程が含まれていてもよいが、さらに他の工程が含まれていてもよい。具体的には、形質転換後の植物体から適切な形質転換体を選抜する選抜工程等を挙げることができる。
【0115】
選抜の方法は特に限定されるものではなく、例えば、ハイグロマイシン耐性等の薬剤耐性を基準として選抜してもよいし、形質転換体を育成した後に、植物体そのもの、または任意の器官や組織に含まれるタンニン含量から選抜してもよい。例えば、タンニン含量から選抜する例としては、形質転換体の種子の色を、形質転換していない植物体の種子の色と比較する方法を挙げることができる(後述の実施例参照)。特に種子にはタンニンが多く含有されるため、単に種子の色を比較するだけでも選抜が可能になるとともに、タンニン含量の低減という本発明の効果そのものも確認することができる。
【0116】
本発明にかかる植物体の生産方法では、上記キメラ遺伝子を植物体に導入するため、該植物体から、有性生殖または無性生殖によりタンニン含量が低減された子孫を得ることが可能となる。また、該植物体やその子孫から植物細胞や、種子、果実、株、カルス、塊茎、切穂、塊等の繁殖材料を得て、これらを基に該植物体を量産することも可能となる。したがって、本発明にかかる植物体の生産方法では、選抜後の植物体を繁殖させる繁殖工程(量産工程)が含まれていてもよい。
【0117】
なお、本発明における植物体とは、成育した植物個体、植物細胞、植物組織、カルス、種子の少なくとも何れかが含まれる。つまり、本発明では、最終的に植物個体まで成育させることができる状態のものであれば、全て植物体とみなす。また、上記植物細胞には、種々の形態の植物細胞が含まれる。かかる植物細胞としては、例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片等が含まれる。これらの植物細胞を増殖・分化させることにより植物体を得ることができる。なお、植物細胞からの植物体の再生は、植物細胞の種類に応じて、従来公知の方法を用いて行うことができる。したがって、本発明にかかる植物体の生産方法では、植物細胞から植物体を再生させる再生工程が含まれていてもよい。
【0118】
また、本発明にかかる植物体の生産方法は、組換え発現ベクターで形質転換する方法に限定されるものではなく、他の方法を用いてもよい。具体的には、例えば、上記キメラタンパク質そのものを植物体に投与してもよい。この場合、最終的に利用する植物体の部位においてタンニン含量を低減できるように、若年期の植物体にキメラタンパク質を投与すればよい。またキメラタンパク質の投与方法も特に限定されるものではなく、公知の各種方法を用いればよい。
【0119】
(III)本発明により得られる植物体とその有用性、並びにその利用
本発明にかかる植物体の生産方法は、上記キメラタンパク質をコードする遺伝子を植物体で発現させることによる。当該キメラタンパク質における転写因子由来のDNA結合ドメインが、タンニン合成系に関与すると推定される標的遺伝子に結合する。転写因子は転写抑制因子に転換され、標的遺伝子の転写が抑制される。これによりタンニン合成系の最終物質であるタンニンの生成が減少し、その結果、得られる植物体のタンニン含量を低減することができる。したがって、本発明には、上記植物体の生産方法により得られる植物体も含まれる。
【0120】
(III−1)本発明にかかる植物体の具体例
ここで、本発明にかかるタンニン含量が低減された植物体の具体的な種類は特に限定されるものではなく、タンニン含量の低減によりその有用性が高まる植物を挙げることができる。かかる植物は、被子植物であってもよいし裸子植物であってもよい。裸子植物としては、例えば、スギ目のスギ科、マツ科、ヒノキ科の植物やマキ科の植物を挙げることができる。また、被子植物としては、単子葉植物であってもよいし、双子葉植物であってもよい。双子葉植物としては、例えば、シロイヌナズナ等のアブラナ科、マメ科、チャ等のツバキ科等の植物を挙げることができる。また、単子葉植物としては、イネ、トウモロコシ、ムギ等のイネ科、ホシクサ科等の植物を挙げることができる。
【0121】
(III−2)本発明の有用性
本発明では、植物体のタンニン含量を低減することができるが、本発明の有用性は特に限定されるものではなく、低タンニンにより効果がある分野であればよいが、例えば、家畜飼料への応用、食品への応用、木材への応用等を挙げることができる。
【0122】
まず、家畜飼料への応用例について説明すると、例えば、低タンニン、無タンニンソルガム(ソルガム、ホワイトソルガム)代用飼料がある。これらは高タンニンソルガムに比べて、飼料効果が非常によく、例えば、低タンニンソルガムを与えられたブロイラーは、高タンニンのものを与えられた場合と比べ、顕著に成長が速くCa、P等のミネラル分の吸収がよいという報告がある(非特許文献4参照)。ソルガムはモロコシ類の植物で、低タンニン、無タンニンのものはコーンとほぼ同等の飼料効果をもっているとされている。主要な生産国は米国、アルゼンチン、豪州等であるが、特に豪州産は低タンニン、高蛋白で評価が高い。本発明はソルガムの低タンニン、無タンニン化に利用できると考えられる。なお、ソルガムは、一般的には飼料用が圧倒的であるが、近年の製粉技術向上により、パン・ケーキ用粉の加工や、澱粉、シロップ、アルコールといった食品分への応用技術も考えられている。
【0123】
また、子豚に低タンニンのソラマメを与えた場合、高タンニンのものと比べ、消化性がよいことが報告されている(非特許文献5参照)。その他にも、反芻動物以外の家畜およびヒトが、種子食品を飼料や栄養学的サプリメントとして利用する場合、収斂性の味、食品の褪色、タンパク質と反応して消化できない物質を作ること等、タンニンの好ましくない有害作用が認められることが報告されている(非特許文献6、7参照)。多種にわたる種子食品のタンニンの含量を低減させることができれば、例えばアブラナのような種子食品が、反芻動物以外の家畜の飼料や、ヒトのグルテンを含まない栄養サプリメントに利用可能となり、大豆と市場での有用性を競う存在となると考えられる。
【0124】
さらに、草食動物の食餌としても、タンニン含量を低減した植物を使う利点は大きい。タンニンを含む植物は、草食動物の食餌としては好ましくない。すなわち、食餌の植物タンパク質はタンニンと結合するため消化できなくなり、栄養源として役立たなくなる。またタンニンは草食動物の胃腸内消化酵素と反応する可能性がある。本技術は、飼料として用いる植物のタンニン含量の低減に利用できる。
【0125】
次に、食品への応用例について説明すると、例えば、タンニン含量が低減された緑茶、煎茶、紅茶、コーヒー等を挙げることができる。胃の弱い人には、緑茶、煎茶をあまり勧められないのはよく知られているが、それは茶(とくに緑茶)のタンニンが生体の細胞や組織、あるいは酵素を変成するためと考えられている。ちなみに、ヒトや動物の細胞を試験管の中で培養しそれにお茶を加えると、その細胞は直ちに死滅するとの報告もある。したがって、虚弱体質並びに妊婦、子供等に対しての緑茶、煎茶および紅茶に本技術が利用できると考えられる。
【0126】
さらに、緑茶、果実酒などにおいては、タンニンは渋みの原因となったり、酸化褐変により外観や風味を損なったりする原因ともなる。特にペットボトル飲料や瓶詰めの果実酒等においては、これらの問題を解決するためにタンニンの含量を低減することが望まれている。本発明はかかる領域においても利用できると考えられる。
【0127】
次に、木材への応用例について説明すると、例えば、建築用として多用されているレッドウッドやレッドシダーへの応用を挙げることができる。これら木材は高い耐久性や美しい木目の仕上がりから需要が大きいが、短所としてタンニン質が強い為、変色(主に黒色)しやすく、タンニン成分がシミになりやすいと言われている。本発明を用いれば、これら木材の長所を保ちつつ短所を改善することが可能になり、木材の品質改良にも利用が可能となる。
【0128】
(III−3)本発明の利用の一例
本発明の利用分野、利用方法は特に限定されるものではないが、一例として、本発明にかかる植物体の生産方法を行うためのキット、すなわちタンニン含量低減キットを挙げることができる。
【0129】
このタンニン含量低減キットの具体例としては、上記転写因子をコードする遺伝子と上記転写抑制転換ポリヌクレオチドとからなるキメラ遺伝子を含む組換え発現ベクターを少なくとも含んでいればよく、上記組換え発現ベクターを植物細胞に導入するための試薬群を含んでいればより好ましい。上記試薬群としては、形質転換の種類に応じた酵素やバッファー等を挙げることができる。その他、必要に応じてマイクロ遠心チューブ等の実験用素材を添付してもよい。
【実施例】
【0130】
以下、本発明を実施例及び図1、2に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0131】
以下の実施例においては、転写抑制転換ペプチドのひとつである12アミノ酸ペプチドLDLDLELRLGFA(SRDX)(配列番号19)をコードするポリヌクレオチドを、PAP1遺伝子またはTT2遺伝子と結合し、さらに植物細胞で機能するカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの下流につないで、組換え発現ベクターを構築し、これをシロイヌナズナにアグロバクテリウム法を用いて導入することにより、シロイヌナズナを形質転換した。
【0132】
(1)植物形質転換用ベクターpBIG2の構築
クローンテック社製(Clontech 社、USA)のプラスミドp35S−GFPを制限酵素HindIIIとBamHIで切断し、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターを含むDNA断片をアガロースゲル電気泳動で分離し回収した。
【0133】
米国ミシガン州立大学より譲渡された植物形質転換用ベクターpBIG−HYG(Becker, D. 1990 Nucleic Acid Research, 18:203)を制限酵素HindIIIとSstIとで切断し、アガロースゲル電気泳動によってGUS遺伝子を除いたDNA断片を得た。
【0134】
以下の配列を有するDNAを合成し、70℃で10分加温した後、自然冷却によりアニールさせて2本鎖DNAとした。このDNA断片は、5’末端から、BamHI制限酵素部位、翻訳効率を高めるタバコモザイクウイルス由来のomega配列、制限酵素部位SmaI、および制限酵素部位SalIとSstIとをこの順に有する。
5'-GATCCACAATTACCAACAACAACAAACAACAAACAACATTACAATTACAGATCCCGGGGGTACCGTCGACGAGCT-3'(配列番号59)
5'-CGTCGACGGTACCCCCGGGATCTGTAATTGTAATGTTGTTTGTTGTTTGTTGTTGTTGGTAATTGTG-3'(配列番号60)
次に、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター領域を含むDNA断片と、合成した2本鎖DNAとを、GUS遺伝子を除いたpBIG−HYGのHindIII、SstI部位に挿入し、植物形質転換用ベクターpBIG2を得た。
【0135】
(2)組換え発現ベクターpPAP1SRDXまたはpTT2SRDXの構築
<PAP1cDNAの単離>
シロイヌナズナcDNAライブラリーより、以下のプライマーを用いて終止コドンを除くPAP1のコード領域のみを含むDNA断片をPCRを用いて増幅し、アガロース電気泳動により分離し回収した。PCRの条件は、変性反応94℃1分、アニール反応47℃2分、伸長反応74℃1分を1サイクルとして25サイクル行った。
5’プライマー
5’-AAAATGGAGGGTTCGTCCAAAGGGCTGCGAAAAGG-3’(配列番号57)
3’プライマー
5’-ATCAAATTTCACAGTCTCTCCATCGAAAAGACTC-3’(配列番号58)
PAP1遺伝子のcDNAおよびコードするアミノ酸配列をそれぞれ配列番号2および1に示す。
<TT2cDNAの単離>
シロイヌナズナcDNAライブラリーより、以下のプライマーを用いて終止コドンを除くTT2のコード領域のみを含むDNA断片をPCRを用いて増幅し、アガロース電気泳動により分離し回収した。PCRの条件は、変性反応94℃1分、アニール反応47℃2分、伸長反応74℃1分を1サイクルとして25サイクル行った。
5’プライマー
5’- GATGGGAAAGAGAGCAACTACTAGTGTGAG -3’(配列番号147)
3’プライマー
5’- ACAAGTGAAGTCTCGGAGCCAATCTTCATC -3’(配列番号148)
TT2遺伝子のcDNAおよびコードするアミノ酸配列をそれぞれ配列番号146および145に示す。
【0136】
<転写抑制転換ペプチドLDLDLELRLGFA(SRDX)をコードするポリヌクレオチドの合成>
12アミノ酸ペプチドLDLDLELRLGFA(SRDX)をコードし、3’末端に終止コドンTAAを持つように設計した、以下の配列を有するDNAをそれぞれ合成し、70℃で10分加温した後、自然冷却によりアニールさせて2本鎖DNAとした。
5’-CTGGATCTGGATCTAGAACTCCGTTTGGGTTTCGCTTAAG-3’(配列番号55)
5’-CTTAAGCGAAACCCAAACGGAGTTCTAGATCCAGATCCAG-3’(配列場号56)
<組換え発現ベクターの構築>
上記で得たPAP1遺伝子またはTT2遺伝子のタンパク質コード領域のみを含むDNA断片と転写抑制転換ペプチドSRDXのコード領域を含むDNA断片とを、制限酵素SmaIで切断した上記pBIG2に挿入し、順方向にクローニングされているものを単離し、組換え組換え発現ベクターであるプラスミドp35S::PAP1SRDXを得た。図1(a)にp35S::PAP1SRDXの構造を示し、図1(b)にp35S::TT2SRDXの構造を示した。
【0137】
(3)組換え発現ベクターp35S::PAP1SRDXまたはp35S::TT2SRDXにより形質転換した植物体の作成
p35S::PAP1SRDXまたはp35S::TT2SRDXによるシロイヌナズナ植物の形質転換は、Transformation of Arabidopsis thaliana by vacuum infiltration(http://www.bch.msu.edu/pamgreen/protocol.htm)に従った。ただし、感染させるのにバキュウムは用いないで、浸すだけにした。p35S::PAP1SRDXまたはp35S::TT2SRDXを、土壌細菌Agrobacterium tumefaciens strain GV3101 (C58C1Rifr) pMP90 (Gmr)(koncz and Schell 1986)株にエレクトロポレーション法で導入した。導入した菌を1リットルの、抗生物質(カナマイシン(Km)50μg/ml、ゲンタマイシン(Gm)25μg/ml、リファンピシリン(Rif)50μg/ml)を含むYEP培地でOD600が1になるまで培養した。次いで、培養液から菌体を回収し、1リットルの感染用培地(Infiltration medium、下表2)に懸濁した。
【0138】
【表2】


【0139】
この溶液に、14日間生育したシロイヌナズナを1分間浸し、感染させた後、再び生育させて結種させた。回収した種子を50%ブリーチ、0.02%Triton X-100溶液で7分間滅菌した後、滅菌水で3回リンスし、滅菌したハイグロマイシン選択培地(下表3)に蒔種した。
【0140】
【表3】


【0141】
上記ハイグロマイシンプレートで生育する形質転換植物体を選抜し、土壌に植え替え次世代の種子を得た。p35S::PAP1SRDXで形質転換された植物体の種子を図2(b)、(c)に、野生型の植物体の種子を図2(a)に示し、p35S::TT2SRDXで形質転換された植物体の種子を図3(b)に、野生型の植物体の種子を図3(a)に示した。
【0142】
図2(a)に示すように野生型の種子はタンニンの蓄積を示す濃い褐色であるが、図2(b)および(c)に示すようにp35S::PAP1SRDXで形質転換された植物体の種子は白色を示した。同様に、図3(a)に示すように野生型の種子はタンニンの蓄積を示す濃い褐色であるが、図3(b)に示すように、p35S::TT2SRDXで形質転換された植物体の種子は白色を示した。このことから、形質転換された植物体ではタンニン含量が著しく低減されていることが確認された。
【0143】
PAP1転写因子およびTT2転写因子は、フェニルプロパノイド合成系に関与する酵素の遺伝子発現を促進する転写因子である。p35S::PAP1SRDXで形質転換したシロイヌナズナ植物体では、アントシアニン合成ばかりでなく、タンニンの合成も抑制されされたことから、PAP1がタンニンの合成系にも関与する転写因子であることが初めて明らかになった。また、p35S::TT2SRDXで形質転換したシロイヌナズナの植物体では、タンニンの合成を抑制することができた。
【0144】
このことは、PAP1転写因子遺伝子またはTT2転写因子遺伝子と転写抑制転換ポリヌクレオチドとのキメラ遺伝子を用いた遺伝子発現抑制システムが、タンニンの合成抑制にも利用できることを示している。
【0145】
すなわち、図4(a)に示すように、PAP1転写因子はフェニルプロパノイド合成系に関与する酵素PAL、CHS、DFRの遺伝子発現を促進し、これによりアントシアニンの合成は促進される。これに対して、このPAP1転写因子を転写抑制転換ペプチドSRDXと融合させたキメラタンパク質PAP1SRDXは、図4(b)に示すように、PAL、CHS、DFRのみならず、フェニルプロパノイド合成に関与する遺伝子の発現を抑制し、これにより、アントシアニンばかりでなくタンニンの合成も抑制される。
【0146】
また、上述のように、TT2転写因子の過剰発現植物体ではDFRおよびBANの遺伝子発現が促進されることが報告されている。しかしながら、上述のように、タンニン生合成には、それぞれの経路に特異的な制御因子が存在し、かつ重複因子の存在が推定されるため、TT2タンパク質が促進するDFRおよびBANの遺伝子の転写を抑制するのみでは、タンニンの生産を抑制することは通常困難である。
【0147】
本発明にかかる方法においては、キメラタンパク質TT2SRDXにより、DFRおよびBANの遺伝子のみならず、フェニルプロパノイド合成に関与する遺伝子の発現が抑制されると考えられ、これらの遺伝子発現の抑制により、タンニンの合成が抑制されると考えられる。
【0148】
(4)p35S:: PAP1SRDXで形質転換したシロイヌナズナにおけるシアニジンおよびアントシアニンの定量分析
p35S:: PAP1SRDXで形質転換したシロイヌナズナ(以下「形質転換シロイヌナズナ」という)のシアニジン含量は、De-Yu Xie, Shashi B. Sharma, Nancy L.Paiva, Daneel Ferreira, Richard A. Dixon., Science, 299, 396-399, 2003.に記載されている方法に準拠して算出した。シアニジンは、図4(a)および図4(b)中に示したアントシアニジンに属する色素である(理化学辞典第5版、552頁、岩波書店)。まず、標品(市販)シアニジンの希釈系列と550nmの吸光度から標準曲線を求めた。次に、野生型シロイヌナズナおよび上記形質転換シロイヌナズナの種子または葉の重量を測定後、上記種子または葉を5.26mMの異性重亜硫酸ナトリウムを含む70%アセトン溶液で処理し、上記種子または葉の抽出液を調製した。さらに、上記抽出液を95%ブタノール−5%塩酸溶液中で100℃, 1時間インキュベートした。続いて、上記インキュベートした抽出液の550nmの吸光度を測定し、測定した吸光度のデータをもとに上記標準曲線よりシアニジン量を算出した。
【0149】
図5(a)は、上記形質転換シロイヌナズナの種子1gあたりのシアニジン含量(mg)を示すものであり、図5(b)は、上記形質転換シロイヌナズナの葉新鮮重量1gあたりのシアニジン含量(μg)を示すものである。図5(a)、図5(b)の横軸は、WTが野生型のシロイヌナズナを示し、#12、#13、#17はそれぞれ上記形質転換シロイヌナズナの識別番号を示す。すなわち、3ラインの上記形質転換シロイヌナズナについてシアニジンの定量分析を行った。
【0150】
上記3ラインのいずれにおいても、種子、葉ともに野生型と比較して顕著にシアニジン含量が低減されていることが確認され、シアニジンの合成が抑制されていることが確認された。なお、一般的にシロイヌナズナでは、タンニン(シアニジン類)は種子には多く含まれるが、葉にはあまり含まれないため、単位表示が図5(a)ではmgとなっており、図5(b)ではμgとなっている。
【0151】
図5(c)における灰色のカラムは、0.5%ショ糖を含むMS培地(通常の条件)で生育させた野生型シロイヌナズナの530nmにおけるアントシアニン由来の吸光度を1とした場合の、上記形質転換シロイヌナズナの530nmにおけるアントシアニン由来の吸光度の相対値を表したものである。
【0152】
上記アントシアニン由来の吸光度の相対値は、Ron J.Laby, M.Sean Kincaid, Donggiun Kim and Susan I. Gibson., The Plant J, 23(5), 587-596, 2000に記載されている方法に準拠して算出した。まず、上記野生型シロイヌナズナ(2週齢)および上記形質転換シロイヌナズナ(2週齢)の葉の重量を測定後、上記葉を45%メタノール−5%酢酸溶液で処理して上記葉の抽出液を調製した。さらに、上記抽出液の530nmおよび637nmの吸光度を測定し、これらの吸光度の値から、上記文献に記載の計算式を用いて算出した値を、上記形質転換シロイヌナズナの葉新鮮重量1gあたりのアントシアニン量(相対値)とした。
【0153】
なお、シロイヌナズナは6%ショ糖を含むMS培地で生育させるとアントシアニンを蓄積することが知られている。そこで、アントシアニン含量の差をより見やすくするために、上記野生型シロイヌナズナ(2週齢)および上記形質転換シロイヌナズナ(2週齢)を5日間、6%ショ糖含有MS培地に移し、上記形質転換シロイヌナズナの葉新鮮重量1gあたりのアントシアニン量(相対値)の算出を行い、結果を図5(c)において黒色のカラムで表した。
【0154】
上記形質転換シロイヌナズナにおいては、上記3ラインのいずれにおいても、野生型と比較して顕著にアントシアニン含量が低減されていることが確認され、アントシアニンの合成が抑制されていることが確認された。
【0155】
(5)p35S:: PAP1SRDXで形質転換したシロイヌナズナにおけるフェニルプロパノイド合成系酵素および転写因子の遺伝子発現解析
上記形質転換シロイヌナズナにおけるフェニルプロパノイド合成系酵素および転写因子の遺伝子発現を、RT−PCR法によって解析した。
【0156】
まず、野生型シロイヌナズナの未熟さやと、上記形質転換シロイヌナズナの未熟さやとからそれぞれの全RNAを抽出精製し、上記野生型シロイヌナズナの全RNA1.65μgと、上記形質転換シロイヌナズナの全RNA1.65μgとを分取した後、混在するDNAを除くためDNase処理を行った。次にT-Primed First-Strand Kit (アマシャム社製)を用いてRNAをfirst strand cDNAに変換した。これを鋳型にして、以下に示す各遺伝子のプライマーを用いてPCRを行った。PCRは、95℃2分(1サイクル)の後、95℃30秒、58℃30秒、72℃1分を1サイクルとして21〜38サイクル行った。RT−PCR産物の一定量を電気泳動し、そのバンドから各遺伝子の発現量を考察した。比較対照としてβ-tubulinの発現量を同時に検出した。
【0157】
定量解析を行ったリアルタイムRT−PCRは、LightCycler(ロッシュ製)を用いて95℃10分(1サイクル)、95℃10秒、62℃10秒、72℃7秒を1サイクルとして40サイクル行った。
【0158】
[PCRに用いたプライマーの塩基配列]
<CHS 5’プライマー>
5’-TGGTCTCCGTCCTTCCGTCAA-3’(配列番号149)
<CHS 3’プライマー>
5’-CCCTCAAATGTCCGTCTATGGAA-3’(配列番号150)
<DFR 5’プライマー>
5’-AAAAAGATGACAGGATGGGT-3’(配列番号151)
<DFR 3’プライマー>
5’-CCCCTGTTTCTGTCTTGTTA-3’ (配列番号152)
<LDOX 5’プライマー>
5’-ATGGTTGCGGTTGAAAGAGTTGAGAG-3’ (配列番号153)
<LDOX 3’プライマー>
5’-CCAACTTCTTTCTCTAGACGGTCAGGC-3’ (配列番号154)
<BAN 5’プライマー>
5’-ATGGACCAGACTCTTACACACACCGGA-3’ (配列番号155)
<BAN 3’プライマー>
5’-GTTTCCGGCTATAAGTGCCGGAATCACG-3’ (配列番号156)
<TT2 5’プライマー>
5’-GGGATGGGAAAGAGAGCAACTACTAGTGTGAGG-3’ (配列番号157)
<TT2 3’プライマー>
5’-ACAAGTGAAGTCTCGGAGCCAATCTTCATCG-3’ (配列番号158)
<PAP2 5’プライマー>
5’-GAAAAACATTATTTCCCCTCCTACAAC-3’(配列番号159)
<PAP2 3’プライマー>
5’-CAATCGCATTAGCTTCTTGGTTTTCCC-3’(配列番号160)
<PAP1 5’プライマー>
5’-GGGATGGAGGGTTCGTCCAAAGGGCTGCGAAAAGG-3’(配列番号161)
<PAP1 3’プライマー>
5’-TACACAAACGCAAACAAATGTTCGAAAC-3’(配列番号162)
<PAP1SRDX 5’プライマー>
5’-GGGATGGAGGGTTCGTCCAAAGGGCTGCGAAAAGG-3’(配列番号163)
<PAP1SRDX 3’プライマー>
5’-AGCGAAACCCAAACGGAGTTCTAG-3’(配列番号164)
<TUB 5’プライマー>
5’-CGTGGATCACAGCAATACAGAGCC-3’(配列番号165)
<TUB 3’プライマー>
5’-CCTCCTGCACTTCCACTTCGTCTTC-3’(配列番号166)
[リアルタイムRT−PCRに用いたプライマーの塩基配列]
<CHS 5’プライマー>
5'-CGTGTTGAGCGAGTATGG-3’(配列番号167)
<CHS 3’プライマー>
5'-GCTGTGCAAGACGACTG-3’(配列番号168)
<DFR 5’プライマー>
5'-TGACAGGATGGATGTATTTC-3’(配列番号169)
<DFR 3’プライマー>
5'-GACCGACCACCAATGTT-3’(配列番号170)
<LDOX 5’プライマー>
5'-ACTGGAAAGATTCAAGGCTA-3’(配列番号171)
<LDOX 3’プライマー>
5'-GTACTCACTCGTTGCTTCTATG-3’(配列番号172)
<BAN 5’プライマー>
5'-ACGAAGAAAACTGGACTGAC-3’(配列番号173)
<BAN 3’プライマー>
5'-GCTATAAGTGCCGGAATCA-3’(配列番号174)
<TT2 5’プライマー>
5'-TTGATGGTTTGGACTGTG-3’(配列番号175)
<TT2 3’プライマー>
5'-GCAATATAGGCTCAACAAGT-3’(配列番号176)
<PAP1 5’プライマー>
5'-GAGGAAAGCCAAGAGGTA-3’(配列番号177)
<PAP1 3’プライマー>
5'-CAAACCTATACACAAACGCA-3’(配列番号178)
<PAP2 5’プライマー>
5'-AAACCAAGAAGCTGATGC-3’(配列番号179)
<PAP2 3’プライマー>
5'-AAAAGCCACCCACAATCT-3’(配列番号180)
図6は、上記RT−PCRの結果を示す電気泳動写真であり、併せて、上記リアルタイムRT−PCRの結果を示すものである。図6に示すバンドにおいて、左側の列は野生型シロイヌナズナ(WT)の結果を示し、右側の列は上記形質転換シロイヌナズナ(PAP1SRDX)の結果を示す。写真の左側に記載したCHS,DFR,LDOX,BANは、上述のようにフェニルプロパノイド合成系の酵素名の略称であり、TT2,PAP2,PAP1は、フェニルプロパノイド合成系に関与する酵素の遺伝子発現を促進する転写因子である。PAP1SRDX、TUBは比較対照として用いたものである。
【0159】
写真の右側に示した数字は、上記リアルタイムRT−PCRの結果を示すものであり、上記野生型シロイヌナズナにおける各酵素遺伝子または各転写因子遺伝子の発現量を1とした場合の、上記形質転換シロイヌナズナにおける各酵素遺伝子または各転写因子遺伝子の発現量の相対値である。上記相対値は、PCR産物のコピー数から算出したものであり、測定は2回行い、その平均値を求めた。
【0160】
図6より、上記形質転換シロイヌナズナにおいて、CHS,DFR,LDOX,BANの遺伝子はいずれも上記相対値が0.5未満となり、野生型に比べて発現が抑制されることが確認された。なお、上記形質転換シロイヌナズナにおけるPAP1遺伝子の発現は、内在性PAP1遺伝子の発現によるものである。すなわち、上記形質転換シロイヌナズナにおいてco-suppressionは生じない。また、上記形質転換シロイヌナズナにおけるTT2およびPAP2の遺伝子発現については、いずれの場合も上記相対値が0.5以上であるので、生物学的観点から、TT2およびPAP2の遺伝子発現が抑制されているとは判断されないと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0161】
このように、本発明では、タンニンの合成系に関与する遺伝子の転写を抑制することによってタンニンの含量を低減する植物体を得ることができる。それゆえ、本発明は、各種農業や林業、アグリビジネス、さらには農産物を加工する産業や食品産業等に利用可能であり、しかも非常に有用であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】(a)は実施例において用いる組換え発現ベクターp35S::PAP1SRDXの構造を示す模式図であり、(b)は実施例において用いる組換え発現ベクターp35S::TT2SRDXの構造を示す模式図である。
【図2】(a)は野生型のシロイヌナズナの次世代の種子を示す図であり、(b)および(c)は実施例で組換え発現ベクターp35S::PAP1SRDXにより形質転換されたシロイヌナズナの次世代の種子を示す図である。
【図3】(a)は野生型のシロイヌナズナの次世代の種子を示す図であり、(b)は実施例で組換え発現ベクターp35S::TT2SRDXにより形質転換されたシロイヌナズナの次世代の種子を示す図である。
【図4】(a)はPAP1がフェニルプロパノイド合成に関与する遺伝子の発現を促進することによりアントシアニン合成が促進されることを示す図であり、(b)はPAP1とSRDXとを融合させたキメラタンパク質がフェニルプロパノイド合成に関与する遺伝子の発現を抑制することによりアントシアニンばかりでなくタンニンの合成も抑制されることを示す図である。
【図5】(a)は、実施例で組換え発現ベクターp35S::PAP1SRDXにより形質転換されたシロイヌナズナの種子1gあたりのシアニジン含量を示すものであり、(b)は、実施例で組換え発現ベクターp35S::PAP1SRDXにより形質転換されたシロイヌナズナの葉新鮮重量1gあたりのシアニジン含量を示す図である。(c)は、実施例で組換え発現ベクターp35S::PAP1SRDXにより形質転換されたシロイヌナズナの530nmにおけるアントシアニン由来の吸光度の相対値を表したものである。
【図6】RT−PCRの結果を示す電気泳動写真であり、併せて、リアルタイムRT−PCRの結果を示すものである。
【出願人】 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【出願日】 平成16年12月24日(2004.12.24)
【代理人】 【識別番号】100080034
【弁理士】
【氏名又は名称】原 謙三

【公開番号】 特開2005−204657(P2005−204657A)
【公開日】 平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願番号】 特願2004−374159(P2004−374159)