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【発明の名称】 海草増殖基盤
【発明者】 【氏名】稲田 勉
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区高麗橋4丁目1番1号 東洋建設株式会社内

【氏名】徳元 秀光
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区高麗橋4丁目1番1号 東洋建設株式会社内

【要約】 【課題】製作が容易であり、しかも播種はもとより、幼体または成体の移植にも安定して適用できる利用価値の高い海草増殖基盤を提供する。

【解決手段】ヤシマット2の上にリュウキュウスガモの種子3を配置すると共に、種子3の上に生分解性の被覆ネット4を配置し、被覆ネット4とヤシマット2とを連結部材により固結して、両者により前記種子3を挟持する。この海草増殖基盤1を海底に敷設すると、種子3から発芽した葉茎部が被覆ネット4を通して自由に伸長するともに、根茎部がヤシマット2を通して自由に伸長し、海草類が順調に生育する。一方、被覆ネット4およびヤシマット2は、適当な期間が経過すると分解するので、環境に悪影響を与えることがない。種子3に代えて海草類の幼体または成体を配置すれば、移植に用いることができる。また、剛性を適当に高めるため、被覆ネット4の上に目の大きい金網を配置してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性を有する多孔質の支持板の上に海草類の種子を配置すると共に、前記種子の上に生分解性を有する被覆ネットを配置し、前記支持板と前記被覆ネットとを連結部材により固結して、両者により前記種子を挟持したことを特徴とする海草増殖基盤。
【請求項2】
生分解性を有する多孔質の支持板の上に海草類の幼体または成体を配置すると共に、前記幼体または成体の上に生分解性を有する被覆ネットを配置し、前記支持板と前記被覆ネットとを連結部材により固結して、両者により前記幼体または成体の根茎部を挟持したことを特徴とする海草増殖基盤。
【請求項3】
支持板が、ヤシマットからなることを特徴とする請求項1または2に記載の海草増殖基盤。
【請求項4】
支持板が、生分解性のネットからなることを特徴とする請求項1または2に記載の海草増殖基盤。
【請求項5】
海草類が、リュウキュウスガモであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の海草増殖基盤。
【請求項6】
海草類が、リュウキュウアマモ、ベニアマモ、ボウバアマモ、ウミジグサ、マツバウミジグサ、ウミショウブ、ウミヒルモから選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の海草増殖基盤。
【請求項7】
被覆ネットの上に、該被覆ネットよりも大きな目を有する金網を配置し、該金網と、被覆ネットと支持板とを連結部材により固結したことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の海草増殖基盤。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、アマモ、リュウキュウスガモ等の海草類の藻場、いわゆる海草場の造成に用いる海草増殖基盤に関する。
【背景技術】
【0002】
藻場は、底生生物、魚類、プランクトン等の様々な生物の生息に適した環境を提供するほか、水質浄化、親水等の環境改善にも寄与するものとなっている。特に、アマモ場は、顕花植物であるアマモとそれに付着する微細藻類とにより大きな幼稚仔育成機能をもつことが知られており、近年、その保全、再生(造成)が重要なテーマとなっている。
【0003】
上記アマモ場の造成に関しては、従来より種々の方法が提案されているが、その基本形態は、アマモの種子を播種する播種方式とアマモの幼体または成体を移植する移植方式とに大別される。このうち、播種方式の藻場造成方法としては、例えば、特許文献1に記載されたものがあり、このものでは、布地、不織布、ネット、多孔膜等からなる生分解性のシート部材の上、あるいは二枚のシート部材の間にアマモの種子を配置して固着してなる播種シートを製作し、該播種シートをロール状に巻いて海底に降ろして敷設するようにしている。また、移植方式の藻場造成方法としては、例えば、特許文献2に記載されたものがあり、このものでは、バケットにアマモの幼体や成体を水底土砂ごと採取し、これを移植場所に沈降させてバケットから海底に落し込むようにしている。
【特許文献1】特開平10−42626号公報
【特許文献2】特開平11−318200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載される藻場造成方法によれば、固着剤を用いてシート部材に種子を固着するようにしているため、例えば、種子を分散させた生分解性樹脂のエマルジョン液にシート部材を浸漬させるなどの面倒な工程が必要になり、播種シートが高コストになる、という問題があった。また、上記特許文献2に記載される藻場造成方法によれば、潮流や波浪の影響で土砂と一緒に幼体や成体が流出することが多いため、移植効率が低いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記した技術的背景に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、製作が容易であり、しかも播種はもとより、幼体または成体の移植にも安定して適用できる利用価値の高い海草増殖基盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1の発明は、生分解性を有する多孔質の支持板の上に海草類の種子を配置すると共に、前記種子の上に生分解性を有する被覆ネットを配置し、前記支持板と前記被覆ネットとを連結部材により固結して、両者により前記種子を挟持したことを特徴とする。
【0007】
また、第2の発明は、生分解性を有する多孔質の支持板の上に海草類の幼体または成体を配置すると共に、前記幼体または成体の上に生分解性を有する被覆ネットを配置し、前記支持板と前記被覆ネットとを連結部材により固結して、両者により前記幼体または成体の根茎部を挟持したことを特徴とする。
【0008】
上記第1の発明は播種用として、第2の発明は移植用としてそれぞれ構成されたものであるが、何れの発明においても、支持板と被覆ネットとに海草類の種子やその幼体または成体の根茎部を機械的に挟持させた構造となっているので、固着剤による面倒な固着工程は不要となり、製作コストは低減する。また、下層には多孔質の支持板が、上層には開口率の大きい被覆ネットがそれぞれ配置されているので、通根や通芽が阻害されることはなく、しかも、支持板および被覆ネットは、生分解性を有して長期的に分解消失するので、環境に悪影響を与えることもない。
【0009】
本第1および第2の発明において、上記支持板の材種は任意であるが、ヤシ殻からなるヤシマットを用いる場合はコスト的に有利であり、また、被覆ネットと同種の生分解性のネットを用いる場合は、全体が透過構造となるので、海中への沈降が容易となる。
【0010】
また、上記海草類の種類も任意であるが、播種用の第1の発明においては、大きな粒径の種子を産むリュウキュウスガモを選択するのが望ましく、一方、移植用の第2の発明においては、繁殖力が旺盛なリュウキュウアマモ、ベニアマモ、ボウバアマモ、ウミジグサ、マツバウミジグサ、ウミショウブ、ウミヒルモ等を選択するのが望ましい。
【0011】
本第1および第2の発明は、上記被覆ネットの上に、該被覆ネットよりも大きな目を有する金網を配置し、該金網と、被覆ネットと支持板とを連結部材により固結した構成としてもよいものである。このように金網を付加した場合は、全体が適度の剛性を有するものとなるので、その取扱いが容易となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る海草増殖基盤によれば、製作コストが容易で安価に提供できることに加え、播種および移植の双方に安定して適用できるので、海草類の藻場いわゆる海草場の造成に向けて好適となる。また、取扱いが容易で海底への敷設も容易であるので、海草場の造成を効率よく行うことができる。さらには、支持板および被覆ネットは長期的に分解消失するので、環境に悪影響を与えることがなく、本発明の利用価値は、総じて大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基いて説明する。
【0014】
図1および図2は、本発明の第1実施形態としての海草増殖基盤を示したものである。本海草増殖基盤1は、播種用として構成されており、ヤシマット(支持板)2と、このヤシマット2の上に分散して配置された海草類(ここでは、リュウキュウスガモ)の種子3と、前記種子3の上に被せられた生分解性の被覆ネット4と、ヤシマット2と被覆ネット4とを固結する連結部材(図示略)とからなっている。被覆ネット4は、種子3の粒径(リュウキュウスガモの場合は、7〜8mm)よりも細かい目を有しており、該被覆ネット4を前記連結部材によりヤシマット2に固結することで、種子3は、ヤシマット2と被覆ネット4とに機械的に挟持される。
【0015】
上記ヤシマット2は、ヤシ殻繊維をマット化したもので、所望により生分解性の結合剤を加えてマット化してもよい。このヤシマット2は、図2に示すように多数の開口2aを有する多孔構造(多孔質)となっており、通水および保水機能に加え、海草の根の通過を許容する通根機能を有している。ヤシマット2はまた、海底で一定期間経過することで分解する性質を有しており、したがって、生分解性を有していると定義することができる。ヤシマット2の厚さは任意であるが、あまり薄いと強度が不足して破損し易くなり、逆に厚すぎると無駄な材料が多くなってコストが高くなるので、2〜10mm程度とするのが望ましい。
【0016】
上記被覆ネット4としては、生分解性の樹脂の成形体を用いることができる。この場合、生分解性の樹脂の種類は任意であるが、種子3の発根、発芽が十分に進むまでの間は、生分解しないで形状を維持するものを選択する。リュウキュウスガモの種子3の場合は、その発根、発芽が十分に進むまでに1〜2ヶ月を要するので、少なくともこの間は生分解を起こさない樹脂を選択する必要がある。例えば、生分解性のポリ乳酸は、完全に生分解するまでにほぼ2〜3年を要するので、この目的に十分に適合する。被覆ネット4の厚さは任意であるが、ヤシマット2との間における種子3の挟持を確実にするには、ある程度厚くして適度の剛性を持たせるのが望ましい。生分解性のポリ乳酸によりこの被覆ネット4を成形する場合は、1〜3mm程度の厚さとすれば十分である。
【0017】
本第1実施形態において、支持板としてのヤシマット2と被覆ネット4とを固結する固結部材および固結方法は任意であり、縫合糸により縫合する方法、線状体により固縛する方法、ホチキス(登録商標)で針を打って止める方法、連結具により締結またはクランプする方法等を用いることができる。この固結は、周縁部に対して重点的に実施し、内部側については、ヤシマット2と被覆ネット4との間に緩みを生じない適当な間隔で実施する。なお、この固結に際しては、締付力で種子3が潰れるのを防止するため、ヤシマット2と被覆ネット4との間に適当な厚さのスペーサを介装するようにしてもよい。
【0018】
本海草増殖基盤1を製作するには、後の搬送性、敷設作業性等を考慮してヤシマット2および被覆ネット4の大きさを決定し、所定大きさのヤシマット2および被覆ネット4を用意する。一方、海底に繁殖しているリュウキュウスガモから果実を採取し、この果実を水槽に入れてその裂開を待ち、上記した種子3を採取する。なお、この種子3としては、海上に浮遊しているものを採取して用いてもよいことはもちろんである。そして、ヤシマット2上に所定の分布となるように種子3を配置し、続いてその上に被覆ネット4を被せ、その後、ヤシマット2と被覆ネット4とを適宜の連結部材を用いて固結し、これにて海草増殖基盤1は完成する。リュウキュウスガモの種子3は乾燥状態でも長期間生存するので、完成した海草増殖基盤1は、そのまま乾燥状態で保管することができる。ただし、種子3の採取から後述の敷設までにあまり時間がかかる場合は、海草増殖基盤1に適当に海水を散布して湿潤状態で保管するようにしてもよい。また、この海草増殖基盤1は、上記したようにヤシマット2と被覆ネット4との間にスペーサを介装した場合は、段積み状態で保管することができる。
【0019】
上記海草増殖基盤1を海底に敷設するには、台船を目標とする藻場造成域に係留し、台船上のクレーンにより海草増殖基盤1の一枚または複数枚(段積み状態)を吊上げ、これを海中に降ろす。ヤシマット2は上記したように多孔質であることから、海草増殖基盤1を海中に降ろすと、海水がヤシマット2の内部に直ちに浸透すると共に、ヤシマット2の開口2aを通して流通し、これにより、海草増殖基盤1は海水の抵抗をあまり受けずに円滑に沈降する。そして、海草増殖基盤1が海底に到達したら、潜水作業により海草増殖基盤1を1枚ずつ海底に敷設し、以降、前記操作を繰返して藻場造成域に必要枚数の海草増殖基盤を敷き並べる。このように敷設された海草増殖基盤1は、上層の被覆ネット4はもちろん、下層のヤシマット2が十分なる通水機能を有しているので、敷設したままでも安定するが、より安定化を図るため、該海草増殖基盤1の上面に適宜の重量物や砂を載せ、あるいは固定具(アンカー)を海草増殖基盤1を通して海底地盤に打ち込んでもよい。
【0020】
上記のように海草増殖基盤1を敷設した後、2〜3週間程度経過すると、海草増殖基盤1内のリュウキュウスガモの種子3が発芽および発根し始め、その後、時間経過とともに、葉茎および根茎が伸びて、図3に示すごとき幼体5に成長する。この場合、海草増殖基盤1の上層には粗い目の被覆ネット4が、その下層には多孔性のヤシマット2がそれぞれ存在するので、図3に示すように前記被覆ネット4を通して幼体5の葉茎部5aが自由に伸長し、かつヤシマット2を通して根茎部5bが自由に伸長する。その後、時間経過とともに葉茎部5aおよび根茎部5bが大きく成長し、その根茎部5bは海底地盤G中に十分深く着生するようになる。しかして、この間、上層の被覆ネット4は、生分解せずにその形状を維持するので、種子3はもとより幼体5の流出が防止される。一方、生分解性ポリ乳酸からなる被覆ネット4は2〜3年程度で生分解し、また、ヤシマット2は長期的に分解するので、環境に悪影響を与えることはない。
【0021】
上記のように構成した海草増殖基盤1は、支持板としてのヤシマット2と被覆ネット4とに種子3を機械的に挟持させた構造となっているので、従来のように固着剤による面倒な固着工程は不要となり、製作コストは低減する。本第1実施形態においては特に、支持板として安価なヤシマット2を用いているので、コストの安い海草増殖基盤1を提供できる。また、海草増殖基盤1は、その全体が適度の剛性を有する盤状をなすと共に軽量であるので、取扱いが容易であり、海底への敷設も容易となる。
【0022】
なお、上記種子3は、リュウキュウスガモ以外の種々の海草類の種子であってもよいことはもちろんである。ただし、海草類の種子は、一般的にかなり細かいので、被覆ネットとして、これら種子を通さない細かいものを用いる必要がある。
【0023】
図4は、本発明の第2実施形態としての海草増殖基盤を示したものである。本海草増殖基盤10は、移植用として構成されたもので、上記第1実施形態におけるリュウキュウスガモの種子3に代えてリュウキュウスガモの幼体11を配置したことを特徴とする。なお、この幼体11を除く構成は、第1実施形態と同じであるので、ここでは、同一構成要素に同一符号を付している。リュウキュウスガモの幼体11は、上記のようにして採取した種子を土砂に播種して水槽内で発芽させることにより得ることができる。この場合、土砂としては現地から採取した底泥を用いることが望ましく、また、水槽内は現地の環境に似せて温度管理、光量管理等を行うようにする。なお、この幼体11は、現地から採取したものをそのまま用いてもよいことはもちろんである。
【0024】
本海草増殖基盤10を製作するには、上記第1実施形態と同様に所定大きさのヤシマット2と被覆ネット4とを用意し、先ず、一定高さに保持した被覆ネット4に対して、幼体11の葉茎部11aを挿入しながら該幼体11を下向きにセットし、続いて、幼体11の上にヤシマット2を被せ、その後、ヤシマット2と被覆ネット4とを適宜の連結部材により固結する。すなわち、第1実施形態とは組付順序が逆となるが、前記固結後、反転すれば、図4に示す状態の海草増殖基盤10となる。この場合、幼体11の根茎部11bはヤシマット2上に押えられた状態となるが、これによって根茎部11bが損傷を受けることはない。ただし、安全を期すため、ヤシマット2と被覆ネット4との間に前記したスペーサを介装してもよい。なお、この海草増殖基盤10は、被覆ネット4の上方へ幼体11の葉茎部11aがはみ出しているので、その保管に際しては、葉茎部11aが損傷しないように配慮する必要がある。
【0025】
上記海草増殖基盤10を海底に敷設する手順は、上記第1実施形態と同じであり、台船上からクレーン操作および潜水作業により藻場造成域に必要枚数の海草増殖基盤10を敷き並べる。本海草増殖基盤10は、上記播種用の海草増殖基盤1と同様に取扱いが容易で、海底への敷設も容易であるので、移植作業を高能率にかつ安定して行なうことができる。このように敷設された海草増殖基盤10は、幼体11の根茎部11bがある程度成長していることもあって、該根茎部11bはヤシマット2を通して速やかに伸長し、比較的短期間(2ヶ月程度)で海底地盤に着生する。しかして、この間、上層の被覆ネット4は、生分解せずにその形状を維持するので、幼体11の流出が防止される。この場合、根茎部11bが比較的短期間で海底地盤に着生することから、ここで採用する被覆ネット4としては、生分解の時間が短い材料を選択することができる。
【0026】
本第2実施形態において、上記幼体11の種類は任意であり、リュウキュウスガモ以外の種々の海草類の幼体を用いることができる。例えば、沖縄周辺には、リュウキュウアマモ、ベニアマモ、ボウバアマモ、ウミジグサ、マツバウミジグサ、ウミショウブ、ウミヒルモ等の多種の海草類が存在するが、これらは、何れも種子を発見するのが困難であるので、本海草増殖基盤10を用いて幼体移植を行うようにすれば、これらの海草場を効率よく造成できる。
【0027】
図5は、本発明の第3実施形態としての海草増殖基盤を示したものである。本海草増殖基盤15は、移植用として構成されている点で上記第2実施形態と同じであるが、ここでは、上記第2実施形態における幼体11に代えてリュウキュウスガモの成体16を配置している。リュウキュウスガモの成体は、現地で繁殖している状態では、根茎部16bが隣接するもの同士で相互にからまって複雑に入り組んでいるので、現地から塊で採取した後、葉茎部16aの単位で根茎部16bを裁断して、株分けする。
【0028】
本海草増殖基盤15を製作するには、被覆ネット4に対し、その片側から他側へ成体16の根茎部16bをまとめて挿通させ、次に、前記根茎部16bを下側にしてヤシマット2上に被覆ネット4を重ね、その後、ヤシマット2と被覆ネット4とを適宜の連結部材により固結する。この場合、成体16の根茎部16bはヤシマット2上に押えられた状態となるが、これによって根茎部16bが損傷を受けることはないが、安全を期すには、第2実施形態と同様に、ヤシマット2と被覆ネット4との間にスペーサを介装するのが望ましい。このように製作された海草増殖基盤15は、被覆ネット4の上方へ成体16の葉茎部16aが大きく延ばされるので、その保管に際しては、葉茎部16aが損傷しないように配慮する必要がある。
【0029】
上記海草増殖基盤15を海底に敷設する手順は、上記第1および第2実施形態と同じであり、台船上からクレーン操作および潜水作業により藻場造成域に必要数の海草増殖基盤15を敷き並べる。このように敷設された海草増殖基盤15は、その成体16の根茎部16bがヤシマット2を通して速やかに伸長し、比較的短期間で海底地盤に着生する。しかして、この間、上層の被覆ネット4は、生分解せずにその形状を維持するので、成体16の流出が防止される。なお、成体16は、リュウキュウスガモ以外の種々の海草類の成体であってもよいことはもちろんで、第2実施形態で挙げた各種海草類の移植に適用できる。
【0030】
ここで、上記第1〜3実施形態においては、下層の支持板としてヤシマット2を用いたが、この支持板は、通根を許容する十分なる多孔構造を有しかつ生分解性を有していれば、その種類は任意である。図6は、前記ヤシマット2に代えて、前記被覆ネット4と同種のネット21を用いた海草増殖基盤20(第4実施形態)を示したものである。本海草増殖基盤20は播種用として構成されており、この場合は、支持板としてのネット21上に種子3を配置すると共に、この種子3上に被覆ネット4を被せ、この状態で、被覆ネット4とネット21とを適宜の連結部材により固結する。このように構成された海草増殖基盤20は、その全体が大きな開口面積を有する透過構造となっているので、水の抵抗をほとんど受けず、したがって、海底への沈降が円滑となると共に、敷設後の潮流に対しても安定する。なお、本第4実施形態は、移植用として構成してもよいことはもちろんで、この場合は、該ネット21と被覆ネット4との間に幼体11(図4)または成体16(図5)が配置されることになる。
【0031】
図7および図8は、本発明の第5実施形態としての海草増殖基盤を示したものである。本海草増殖基盤25の特徴とするところは、上記第1実施形態としての播種用海草増殖基盤1に対し、その上層の被覆ネット4の上にさらに金網26を配置し、この金網26と、被覆ネット4とヤシマット2とを連結部材により相互に固結した点にある。金網26は、全体の剛性を適当に高める目的で配置されたもので、海草類の成長の妨げにならないように、被覆ネット4よりも十分大きな目を有するものを選択する。一例として、該金網26としては、線径が1.9〜2.3mmで、目の大きさが5〜7cm程度のものが選択される。金網26の種類(形状)は任意であり、図7に示すごとき菱形金網であっても、亀甲状金網であっても、あるいは単に縦線と横線とを交差させたものでもよい。このように構成された海草増殖基盤25は、金網26によって適度に剛性が高まっているので、その取扱いはより容易となり、海底への敷設も容易となる。なお、本第5実施形態は、移植用として構成してもよいことはもちろんで、この場合は、第2実施形態である海草増殖基盤10(図4)の被覆ネット4の上、または第3実施形態である海草増殖基盤15(図5)の被覆ネット4の上に前記金網26が配置される。
【0032】
なお、上記各実施形態においては、播種用の海草増殖基盤1および1Cと移植用の海草増殖基盤1Aおよび1Bとを完全に使い分けるようにしたが、本発明は、1つの基盤に種子と幼体または成体とを混合して保持させるようにしてもよい。
【実施例】
【0033】
1m四方の大きさを有する厚さ約3mmのヤシマットと、厚さ約1mmで目合6×6mmの被覆ネット(ポリ乳酸ネット)とを用意した。そして、これらヤシマットと被覆ネットとの間に、図9に示すように、リュウキュウスガモの種子5粒を1単位Aとしてその10単位(50粒)を分散して配置すると共に、リュウキュウスガモの幼体5株を1単位Bとしてその1単位を配置した。次に、前記被覆ネットの上に菱形金網を配置し、前記金網、被覆ネットおよびヤシマットの3者を縫合糸により縫合して一体の海草増殖基盤(ヤシマット基盤)を製作した。また、前記ヤシマットに代えてポリ乳酸ネットを用いる以外は、前記と同じ手順で海草増殖基盤(ネット基盤)を製作した。そして、沖縄の瀬長島地先の海域を敷設場所として選定し、3月中旬を選択して、前記ヤシマット基盤の2枚とネット基盤の2枚とを砂地盤上に並べて敷設し、固定具を海底に打込んで各基盤を固定した。その後、経時的に種子の発芽状況および幼体の生育状況を観察した。この結果、約2週間経過で種子の発芽が認められ、約1ヶ月経過で種子の約60%が発芽し、葉茎部が30mmにも達しているものも認められた。一方、幼体については、その全てが順調に生育し、約1ヶ月経過で葉茎部に多くの藻類や苔類が付着しているのが観察された。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態としての播種用海草増殖基盤の構造を模式的に示す斜視図である。
【図2】本第1実施形態としての播種用海草増殖基盤の構造を模式的に示す断面図である。
【図3】本播種用海草増殖基盤における種子の発芽状況を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態としての移植用海草増殖基盤の構造を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態としての移植用海草増殖基盤の構造を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態としての移植用海草増殖基盤の構造を模式的に示す斜視図である。
【図7】本発明の第5実施形態としての播種用海草増殖基盤の構造を模式的に示す斜視図である。
【図8】本第5実施形態としての播種用海草増殖基盤の構造を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明の実施例における種子および幼体の配置状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0035】
1、20、25 播種用海草増殖基盤
10、15 移植用海草増殖基盤
2 ヤシマット(支持板)
3 種子
4 被覆ネット
11 幼体、 11a 葉茎部、 11b 根茎部
16 成体、 16a 葉茎部、 16b 根茎部
21 ネット(支持板)
26 金網

【出願人】 【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区高麗橋4丁目1番1号
【出願日】 平成16年6月14日(2004.6.14)
【代理人】 【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫

【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫

【識別番号】100080908
【弁理士】
【氏名又は名称】舘石 光雄

【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫

【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏

【識別番号】100093193
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 壽夫

【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉

【識別番号】100093414
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 祐輔

【識別番号】100131141
【弁理士】
【氏名又は名称】小宮 知明

【公開番号】 特開2005−348696(P2005−348696A)
【公開日】 平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願番号】 特願2004−175880(P2004−175880)