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【発明の名称】 植物水耕栽培における葉面施肥方法
【発明者】 【氏名】矢野原 良民

【要約】 【課題】植物の葉の表裏両面に液肥を供給する葉面施肥方法を提供する。

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培槽内に入れた培養液上に、植物を植えた定植パネルを、該植物の根を上記培養液に浸した状態で、支持した植物水耕栽培において、
上記培養液の濃度を、上記植物の細胞液の濃度よりやや高い濃度以下に調整し、
上記植物を植えた定植パネルを上記調整した培養液中に短時間浸漬し、ついで培養液中から引き上げて元の水耕栽培に戻し、この短時間浸漬を所要回数行う、
植物水耕栽培における葉面施肥方法。



【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の水耕栽培において、植物のさらなる生長促進のため植物の葉、茎に施肥する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、植物は葉や茎からも肥料を吸収することができ、その特色は、葉茎部からの吸収速度が根からのそれよりも速いこと、及び葉の裏面からの吸収能力が高いことである。
【0003】
従来、ハウス土耕栽培、水耕栽培等における葉面施肥方法として、液肥を植物の上から散布する方法が広く行われているが、この従来方法では、液肥のほとんどが葉の表面に供給されるものであるため、施肥の効果はあっても、供給される液肥の相当量が無駄に流失してしまう欠点は否めない。
【0004】
そこで、散布器もって葉の裏面に液肥を散布する方法が行われたが、甚だしく手間のかかる難点があり、それは広い農場において特に著しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、植物の特に葉の表裏両面に液肥を供給する葉面施肥方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明者は、まず、大量の培養液を備える水耕栽培工程に着目し、ついで上記培養液中に植物を浸漬するという基本的発想を得たのである。
【0007】
そこで、まず植物を培養液中に浸漬した場合の植物の安全性について検討する。
一般に、植物を水溶液中に浸漬したとき、植物生理学上は、浸漬中植物の細胞が生き続けていさえすれば、浸漬後水溶液から取り出した植物は何の後遺症も残さず健全に成長する。その場合浸漬中の植物細胞の生死を左右するものは、植物の細胞液と水溶液との間の浸透圧の高低、換言すれば浸透圧を決める濃度の高低であることが知られている。そこで、両者を対比して検討してみる。なお、植物の細胞液の浸透圧は、植物の種類によって異なるが、常温で5〜10atm、濃度は0.2〜0.8M(モル濃度)である。
【0008】
(1)植物を該植物細胞液と等濃度の水溶液に浸漬した場合。
植物細胞への水の出入りはなく、細胞は形を維持したまま生存し続ける。
【0009】
(2)植物を該細胞液より低濃度の水溶液に浸漬した場合。
細胞は半透性の細胞膜を通して外側の水溶液から水を吸収して原形質を膨らませていく。ところで、植物細胞は、上記細胞膜の外側に全透性の弾性組織からなる細胞壁を有するため、上記の膨らんだ原形質が上記細胞壁に押し広げようとする膨圧を及ぼし、その反作用として細胞壁から元に戻ろうとする壁圧を原形質に受ける。細胞が膨らむにつれ細胞内の濃度は低下し、その浸透圧は減って行くと共に、上記膨圧が高まっていき、それと大きさの等しい壁圧が細胞内の浸透圧と等しくなったとき細胞の外側からの吸水を自動的に停止し、そして膨らんだ緊張状態で生存し続ける。
【0010】
(3)植物を濃度零の水溶液(すなわち水)に浸漬した場合。
上記(2)と同様である。
【0011】
(4)植物を該細胞液より高濃度の水溶液に浸漬した場合。
細胞内の水が外へ浸出して原形質が収縮していき、遂には原形質分離を起す。ここで、原形質分離を起した細胞は、水溶液の濃度が植物細胞液よりわずか高い程度であれば、再び水に浸すと原形質復帰を行うが、水溶液の濃度がそれよりも高いときは、多くの植物は原形質復帰が不可能となって死滅する。
この場合、原形質復帰を可能にする水溶液の濃度は、実験によれば、植物の種類により異なるが、植物細胞液の濃度より約0.05〜0.3M高い濃度までである。
【0012】
上記の検討に基づき、上記課題解決の手段として、本発明は、
栽培槽内に入れた培養液上に、植物を植えた定植パネルを、該植物の根を上記培養液に浸した状態で、支持した植物水耕栽培において、
上記培養液の濃度を、上記植物の細胞液の濃度よりやや高い濃度以下に調整し、
上記植物を植えた定植パネルを上記調整した培養液中に短時間浸漬し、ついで培養液中から引き上げて元の水耕栽培に戻し、この短時間浸漬を所要回数行う、
植物水耕栽培における葉面施肥方法を提案する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の植物水耕栽培における葉面施肥方法によれば、水耕栽培の培養液を利用し、該培養液中に植物を植えた定植パネルを浸漬することにより、植物全体、特に葉の表裏両面に培養液を供給することができ、しかも浸漬によって植物に何らのダメージをも与えることはなく、安全に有効施肥を行うことができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明において、培養液の濃度を植物の細胞液の濃度よりやや高い濃度以下に調整することにより浸漬時の植物の安全は確保されるから、浸漬時間は自由に選択することができる。しかし実際上は、作業能率等を考慮して、1回の浸漬時間5〜20分の「短時間」として、これを所要回数繰返すのが望ましい。
【0015】
上記短時間浸漬の「所要回数」は、気温、天候等によって異なるが、例えば、日中(8時間)において1時間に1〜5回の割合で繰返す。
以下本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
定植パネルにコマツナを植え、その細胞液の濃度は0.3Mである。
培養液に含まれる肥料の基本組成及び濃度は、硝酸カルシウム1.77mM(ミリモル)、硝酸カリ2.37mM、硫酸マグネシウム1.25mM、リン酸二水素アンモニウム0.435mM、合計5.825mM(=0.005825M)で、これにEDTA鉄、硫酸銅、硫酸亜鉛、モリブデン酸アンモニウムを微量つづ添加し、さらに有機肥料を適量加えて培養液全体の濃度を約11.7mM(=0.0117M)と、コマツナの細胞液濃度より低く調整した。
【0017】
気温30℃、培養液温23℃、晴。上記コマツナ定植パネルを適宜手段により上記培養液中に約10分浸漬し、ついで液中から引き上げて水耕栽培に戻し、この10分間浸漬を、日中(午前8時〜午後4時)、1時間に2回の割合で繰返した。
【0018】
上記約10分の浸漬によりコマツナ細胞が培養液から水分を吸収して原形質を膨らませていき、細胞が膨らむにつれ細胞内の濃度及び浸透圧が低下すると共に膨圧が高まっていき、該膨圧と大きさの等しい壁圧と細胞内浸透圧とが等しくなったとき、水分の吸収を停止し、その膨らんだ状態で細胞は生き続ける。引き上げて水耕栽培に戻した後、膨らんだ細胞は徐々に正常に戻った。
【0019】
上記10分の培養液中での浸漬時に、根から肥料吸収を引き続き行うと共に、葉の表、裏両面から根よりも早い吸収速度で肥料を吸収する。そして培養液から引き上げた後も、葉の両面に付着する肥料分を吸収し続ける。
【実施例2】
【0020】
定植パネルにレタスを植え、その細胞液の濃度は0.4Mである。
培養液は、上記実施例1における基本組成及び濃度と実質的に同一の基本組成に、EDTA鉄、硫酸銅、硫酸亜鉛、モリブデン酸アンモニウムを微量づつ添加、全体濃度を約11.2mM(=0.0112M)と、レタスの細胞液濃度よりも低くした。
【0021】
気温27℃、培養液温20℃、雲。レタスを植えた定植パネルを上記培養液中に約15分浸漬し、ついで水耕栽培に戻し、この15分浸漬を、日中1時間に1回の割合で繰返した。
【0022】
上記15分の浸漬によりレタス細胞は膨らんだ状態で生き続け、水耕栽培に戻した後正常に復した。
【0023】
上記15分の浸漬時に、根及び葉の両面から肥料を十分に吸収する。培養液から引き上げた後も、葉の両面に付着する肥料を吸収した。



【出願人】 【識別番号】395021239
【氏名又は名称】株式会社生物機能工学研究所
【出願日】 平成16年6月2日(2004.6.2)
【代理人】 【識別番号】100061619
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 武文

【識別番号】100092945
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 千秋

【公開番号】 特開2005−341846(P2005−341846A)
【公開日】 平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願番号】 特願2004−164004(P2004−164004)