| 【発明の名称】 |
植物の育成方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】浅田 隆之 【住所又は居所】三重県亀山市能褒野町24番地9号 王子製紙株式会社森林資源研究所RITE王子亀山第1分室内
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| 【要約】 |
【課題】製紙原料の安定供給と大気中の二酸化炭素の大規模固定化を推進する目的で、大面積に植林されているユーカリ属植物及びアカシア属植物のクローン苗を効率的に生産する方法を提供する。
【解決手段】大気の二酸化炭素分圧下での飽和濃度以上に二酸化炭素が溶解している上に、炭酸塩又は重炭酸塩の添加によってpHが4〜6.6の範囲に調整された炭酸水を植物に供給する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 二酸化炭素を強制的に溶解させて得た炭酸水を植物に供給する植物の育成方法において、植物に供給される前記炭酸水の二酸化炭素含有量を50ppm以上とすると共に、炭酸塩又は重炭酸塩の添加によって前記炭酸水のpHを4〜6.6の範囲に調整することを特徴とする植物の育成方法。 【請求項2】 植物に供給される前記炭酸水が重炭酸イオンを0.12〜2.0mM/L含有している請求項1記載の方法。 【請求項3】 育成される植物が、ユーカリ属植物(Eucalyptus spp.)及びアカシア属植物(Acacia spp.)からなる群より選択される植物であることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項4】 二酸化炭素含有量が50ppm以上であり、炭酸塩又は重炭酸塩の添加によってpHが4〜6.6の範囲に調整された炭酸水を、植物の挿し穂に供給して挿し穂を発根させる方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、植物の育成方法に関するものであって、さらに詳しくは、環境ストレスに対する耐性を高めながら植物の育成を促進させることができ、また植物の挿し穂の発根を促進させることも可能な植物育成方法に係る。 【背景技術】 【0002】 本発明者らは既に、二酸化炭素を高濃度に溶解させた炭酸水を植物に与えて植物の育成を促進する技術(特許文献1参照)、また炭酸水を植林した苗に供給することで環境ストレスの厳しい地域への植林を可能にする技術(特許文献2参照)、さらには炭酸水、炭酸水素イオン水、炭酸イオン水からなる群より選択される少なくとも一種の溶解水を植物の挿し穂に供給して挿し穂の発根を促進する技術(特許文献3参照)を開発している。 類似の技術として、植物類生育用二酸化炭素溶液の製造方法及び植物類生育用二酸化炭素溶液の供給装置(特許文献4,5参照)が開発されている。 【0003】 二酸化炭素が水に溶解して生ずる炭酸(H2CO3)は、水溶液としてのみ存在する。二酸化炭素の水への溶解度は、気相の二酸化炭素分圧に依存し、大気圧下では0.52ppmの二酸化炭素が水に溶解する。水溶液中の炭酸は、その一部が電離して水素イオンと重炭酸イオンを生じ、ここで生じた重炭酸イオンの一部は、さらに水素イオンと炭酸イオンとに電離するので、炭酸の水溶液である炭酸水は、酸性を呈するのが通例である。そして、その酸性の程度は溶解した二酸化炭素量に依存し、溶解した二酸化炭素量の増大に伴って、炭酸水の水素イオン指数(pH)は低下する。ちなみに、純水1リットルに二酸化炭素を1気圧での飽和濃度まで溶解させると、その水溶液は、最大10−3.91molの水素イオンと0.12mMの重炭酸イオンを含み、そのpHは3.91となる。 【0004】 二酸化炭素を水に強制的に溶解させて得られる炭酸水を植物に与えることは、植物の育成を促進する上で極めて有効ではあるが、上記したように、二酸化炭素を高濃度に溶解させた炭酸水は、必然的に低いpH値にあるので、こうした炭酸水を植物に与えることは、植物体から陽イオン(NH4+、K+など)を溶脱させる結果を招くため好ましくない。 【0005】 一方、実際の農業・林業などの生産場面では、植物供給水として純水やイオン交換水を使うことは極めて稀であり、通常は最寄りの河川からの河川水又は当該河川水を処理した水道水を使うことがほとんどである。各地域の河川に含まれる重炭酸イオン濃度は、世界平均値で51.7mg/l(約0.85mM/L)とされているが、日本でのそれは、珊瑚礁上にある沖縄を除くと総じて低く、全国平均では31mg/l(約0.51mM/L)とされている。このような水を原水とし、これに二酸化炭素を溶解させて炭酸水とした場合、溶解当初の炭酸水のpHは、植物に悪影響を及ぼす程には低下しない。 しかし、本発明者らによる最近の研究によれば、液中の炭酸が水素イオンと重炭酸イオンに電離する平衡関係が逆方向に進み、水素イオンと重炭酸イオンとの中和反応により炭酸分子が生成し、この分子がやがて炭酸ガスとして大気中に放出される。このため、炭酸水の調製を密閉タンクで行い、新しい原水を添加(補給)しない状態で炭酸水を調製し続けると、重炭酸イオンが消費されて次第に炭酸水のpHが低下し、これを植物に連続施用すると、植物に悪影響が及ぶことが判明した。 【0006】 炭酸水を使用する代わりに、二酸化炭素を一定空間全体に暴露し、植物に高い濃度の二酸化炭素を与えることにより植物の育成を促進させる技術および挿し木方法(特許文献6参照)が「CO2施肥」として実用化されている。このようなガス環境下で植物を育成すると初期には成長が急激に進むが、やがて植物体内の窒素濃度の減少が起こり、光合成速度や成長速度の低下が生じることが知られている。この現象も前述したように植物体内の水が酸性化することによって説明できる。高い濃度のCO2環境で成長を続けるためには、窒素養分をはじめリン、カリウムなどの各種栄養塩を十分に供給し、植物体内の水の酸性化を緩和する対策を施さなければならず、作用効果を経済的に見合わせて普及させるのが難しい現状である。 【特許文献1】特開2003-111521号公報 【特許文献2】特開2003-325063号公報 【特許文献3】特開2003-339227号公報 【特許文献4】特許2843772号公報 【特許文献5】特許2843773号公報 【特許文献6】特開2001-186814号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 植物の育成を促進すること、植物の環境に対する耐性を高めること、および挿し穂の発根を促進することは、いずれも産業上の利益に直接繋がるので、植物の育成を様々な育成環境の元に高いレベルで安定的にかつ持続的に促進し、さらには挿し穂からの発根を高い効率で安定的に行わせる簡便なCO2施肥技術の開発が待ち望まれている。特に製紙原料の安定供給と大気中の二酸化炭素の大規模固定化を推進する目的で、大面積に植林されているユーカリ属植物及びアカシア属植物のクローン苗を効率的に生産する方法を提供することが課題となっている。 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、従来に比べて効率良く安定的にかつ持続的に植物の育成を促進する技術、植物の環境に対する耐性を高める技術、さらには効率良く安定的に挿し穂からの発根を促進させる挿し木技術を提供する。 【課題を解決するための手段】 【0008】 上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。 即ち、本発明に係る植物の育成方法は、二酸化炭素を強制的に水に溶解させて得た炭酸水を植物に供給する植物の育成方法において、植物に供給される炭酸水の二酸化炭素含有量を50ppm以上とする共に、重炭酸塩又は炭酸塩を添加することで、当該炭酸水のpHを4〜6.6の範囲に保持することを特徴とする。 炭酸水に添加される炭酸塩又は重炭酸塩の量は、炭酸水中の重炭酸イオン量が0.12〜2.0mM/Lの範囲になるように選ばれる。 本発明の方法で育成される植物には、ユーカリ属植物(Eucalyptus spp.)及びアカシア属植物(Acacia spp.)が含まれ、また、本発明で言う植物の育成には、挿し穂の発根が含まれる。 【発明の効果】 【0009】 本発明の植物育成方法によれば、水道水を用いる一般的な農業・林業や、従来開示されている二酸化炭素を高濃度に溶解させた炭酸水を植物に与える植物育成方法および挿し木方法と比べて、より植物の育成を促進させ、植物の環境に対する耐性を高め、挿し穂の発根を促進させることができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0010】 以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。 本発明は二酸化炭素を高濃度に溶解した炭酸水を使用する。ここで炭酸水とは、大気中の二酸化炭素分圧(350ppm)及び水温25℃において、水1リットル当たり0.52mgを超える二酸化炭素が溶解している水を意味する。本発明で使用する炭酸水の二酸化炭素含有量は、50ppm以上であれば特に制限はないが、5℃の水に対する1気圧の炭酸ガスの飽和溶解度である約2800ppm以上の二酸化炭素を含有する炭酸水は、過剰な炭酸ガスが逃げ易く経済的でないので、好ましい二酸化炭素含有量は、50〜2800ppmの範囲にある。 【0011】 25℃において二酸化炭素1気圧の下で、水1リットル当たり最大1,491mgの二酸化炭素を溶解させることができ、5℃においては最大2,815mgの二酸化炭素を溶解させることができる。水と接触している二酸化炭素は、極めてゆるやかに溶解し、液中では炭酸として存在する。液中の炭酸は、水素イオンと重炭酸イオンとに電離して平衡状態に達している。この時の水1リットルは、10−3.91molの水素イオンと、0.12mM/Lの重炭酸イオンを含み、そのpHは3.91となる。なお、25℃の大気中の二酸化炭素分圧(0.035気圧)の下では、水1リットル当たり最大0.52mgの二酸化炭素が溶解できるが、この時の水1リットルは、10−5.64molの水素イオンと約2μM/Lの重炭酸イオンを含み、そのpHは5.64である。 二酸化炭素が50ppm溶解している炭酸水のpHは、約4.7であるが、この炭酸水の重炭酸イオン含有量は、約0.02mM/L(20μM/L)でしかない。然るに、この炭酸水に重炭酸塩を溶解させ、重炭酸イオンの量を2.0mM/Lにまで強制的に増大させると、そのpHは一時的に約6.6まで上昇させることができる。 【0012】 炭酸水のpHを調節するには、アルカリ性物質が何れも使用可能であるが、植物に二酸化炭素を供給することを目的とする本発明では、アルカリ性物質として炭酸塩又は重炭酸塩を使用する。これ以外のアルカリ性物質を炭酸水に添加すると、溶解している炭酸が解離(電離)して失われるため、炭酸塩又は重炭酸塩の使用が好ましい。炭酸塩又は重炭酸塩としては、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩が適している。 重炭酸塩を使用してpH調整した炭酸水を取得する方法(1)(2)を、数値例を挙げて以下に説明するが、特に断らない限り、本発明で言う二酸化炭素の溶解濃度や重炭酸イオン濃度は、液温25℃の水溶液における二酸化炭素溶解量や重炭酸イオン濃度を意味する。 【0013】 (1)大気中に存在する水に、重炭酸塩を添加していくと、そのpHは順次上昇し、重炭酸塩の添加量が1mM/Lの時、pHは8.27になり、2mM/Lの時、pHは8.57となる。この水を原水として、これに二酸化炭素を1気圧下での飽和濃度まで溶解させると、pHはそれぞれ4.82及び5.11まで低下する。 (2)大気中に存在する水に、二酸化炭素を1気圧下での飽和濃度まで溶解させると、そのpHは3.91(重炭酸イオン濃度0.12mM/L)であるが、この炭酸水に重炭酸塩を添加していくと、そのpHは順次上昇し、添加量1mM/Lで4.82、添加量2mM/Lで5.11となる。 方法(1)の場合、重炭酸塩に変えて炭酸塩を使用することもできるが、重炭酸塩の添加に比較して炭酸塩の添加は、pHを急激に上昇させるので、重炭酸塩の使用が好ましい。また、方法(2)の場合も、重炭酸塩の代わりに炭酸塩を使用し、これを炭酸水に添加することで、液中の重炭酸イオン量を0.12mM/L以上に増加させることができるが、炭酸塩は少量の添加でpHを著しく上昇させるので、重炭酸塩の使用が好ましい。 【0014】 本発明では、上記した方法(1)と方法(2)を組み合わせて、二酸化炭素の溶解と重炭酸塩の添加を同時に進行させ、原水に二酸化炭素を溶解させながら、炭酸塩又は重炭酸塩あるいはその溶液を添加することで、二酸化炭素を50ppm以上含有し、しかも所望のpH値に調整された炭酸水を得ることもできる。 いずれにしても、二酸化炭素を50ppm以上含有している炭酸水を植物に供給する時点で、当該炭酸水が重炭酸イオンを0.12〜2.0mM/L含有する状態を強制的に作り、そのpHを4〜6.6の範囲に調整すればよい。 植物はその種類によって最適な育成を示すpHが異なるが、本発明によれば、二酸化炭素を高濃度で含有する炭酸水を、育成する植物に最適なpHで植物に供給することができるので、植物の成長促進効果や挿し穂の発根促進効果などを最大限に引き出すことが可能となる。ちなみに、多くの植物では、細胞内外のpHの差によって生じる細胞内pHの受動的な変化を抑え、細胞内pHを好適な範囲に維持することが、生化学的なプロセスを進行させるために重要であり、細胞内外のpHの差が小さいことが、水素イオンの輸送に要するエネルギーの消費が少なくなるので好ましい。通常植物が育成する最適なpHは、4〜7の範囲にあるとされており、最適値は個々の植物で異なるが、本発明では、炭酸水に溶存する重炭酸イオン量を加減することで、その炭酸水のpHを4〜6.6の範囲で任意に調節することができる。 【0015】 本発明において、「50ppm以上の二酸化炭素が溶解し、pHが4〜6.6の範囲に調整された炭酸水」が、植物の育成及び挿し穂の発根に及ぼす作用は、以下のように説明することができる。 すなわち、植物の育成に必要な炭酸固定(光合成など)の律速段階を支配するのは、植物体内の水に溶けている二酸化炭素及び重炭酸イオンの濃度である。植物が育成される二酸化炭素分圧下において、植物体内の水にはその分圧での飽和濃度以上の二酸化炭素は溶けることができない。一方で、植物体内の水のpHに従って水に溶けた二酸化炭素は、重炭酸イオンに電離して平衡状態に達しようとする。さらには植物に広く存在しているカルボニックアンヒドラーゼ(炭酸デヒドラターゼ)の高い分子活性により、二酸化炭素は速やかに重炭酸イオンに変換されてしまう場合もある。特に、葉緑体のpHは8付近であるために、この反応は積極的に行われていると言える。 以上のことから、植物体内の水に溶けている二酸化炭素の濃度は、二酸化炭素分圧と植物体内の水のpHとカルボニックアンヒドラーゼの働きにより決定されており、植物の育成又は挿し穂の発根を実現させるのに充分な条件であるとは限らない。本発明によれば、大気中で育成される植物体内の水に溶けている二酸化炭素及び重炭酸イオンの濃度を、植物が通常育成される状態のそれよりも高めることができると考えられるので、炭酸固定に関わるリブロースビスリン酸カルボキシラーゼやホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼなどの酵素反応を活性化でき、その結果、植物の育成促進や挿し穂の発根促進が達成されるものと考えられる。 【0016】 また、上記した本発明の炭酸水が果たす植物の環境ストレス耐性向上作用は、以下のように説明することができる。 その第一は、二酸化炭素欠乏ストレスの緩和である。植物は光合成反応の最終電子受容体である二酸化炭素が十分供給されないと、光合成反応は停止し、細胞はストレスを受ける。クロロフィルによって受容された過剰な光エネルギーは、炭酸固定反応で消費できず、一部は蛍光や熱として放出されるが、残りのエネルギーによって酸素分子が還元されて活性酸素が生じ、光化学系などの細胞構成成分が損傷を受ける。 本発明によれば、大気中で育成される植物体内の水に溶けている二酸化炭素及び重炭酸イオンの濃度を、植物が通常育成される状態のそれよりも高めることができると考えられるので、強光・乾燥・塩分過多などの環境ストレス条件においても、C4植物や水生光合成生物が有する無機炭素(二酸化炭素または重炭酸イオン)を能動的に生体内へ取り込み濃縮する機構と同じ理由によって、二酸化炭素欠乏ストレス状態を回避し、環境ストレスに対する耐性が高まるものと考えられる。 また、第二には、高濃度の二酸化炭素により誘導される気孔閉鎖による蒸散量の抑制を挙げることができる。植物体内の二酸化炭素分圧が高まると、気孔が閉じられることは良く知られているが、本発明によれば、この作用により乾燥や高塩濃度などによって引き起こされる水分損失を緩和又は回避し、環境ストレスに対する耐性が高まるものと考えられる。 【0017】 次に、炭酸水の製造方法を以下に例示する。二酸化炭素を水に溶解させるには、従来公知の方法が何れも採用可能である。例えば、化石燃料等の燃焼ガスやガスボンベに充填された二酸化炭素を、水に吹き込む方法、炭素材料製電極を使用して水を電解する方法、ドライアイスを水に接触させる方法、二酸化炭素を充満させたタンクの中に水を導入する方法、可溶性の炭酸塩または重炭酸塩を水に溶解させた後に酸を作用させる方法、微小径の多孔質膜や非多孔質ガス透過膜からなる中空糸膜などの膜モジュールを用いて、二酸化炭素を給気することにより膜の反対側にある水に溶解させる方法などを採ることができる。 これらの方法のなかでは、所望濃度の炭酸水を必要な量だけ簡便に調製できる点で、膜モジュールを備えた植物育成用の装置(特許文献1参照)を使用する方法が好ましい。 また、水又は炭酸水に重炭酸イオンを含有させるには、可溶性の炭酸塩又は重炭酸塩を水又は炭酸水に直接添加するか、あるいは炭酸塩又は重炭酸塩の水溶液を予め調製し、これを水又は炭酸水に添加する方法が採用できる。或いはまた、水酸化ナトリウムのような強い塩基性化合物を添加した水やアンモニア水を炭酸水とするなど、いずれの方法も採ることができる。 最終的に重炭酸イオンの濃度が0.12〜2.0mM/Lの範囲にあり、二酸化炭素の濃度が50〜2,815ppmの範囲にあり、前述のようにpHが好適に調整された水を簡便に迅速に調達できることが、本発明では重要である。このためには、二酸化炭素給気装置や重炭酸塩などの塩基性化合物溶液の送液ポンプと、二酸化炭素濃度計やpH計とを連動させることが好ましい。 本発明で使用するところの、pH調整された炭酸水には、必要に応じて、窒素、リン酸、カリウム,マグネシウム、カルシウム、鉄などの元素を、所望濃度で溶解させておくことができる。 【0018】 本発明の炭酸水を植物あるいは植物の挿し穂に供給する方法を説明する。 第1の例としては、植物体又は植物の挿し穂の地上部に間欠的に噴霧する方法がある。噴霧の頻度は、植物の種類及びその育成環境によって異なるので一概には特定できないが、例えば、1回の噴霧時間を15秒〜1分程度とした場合、噴霧頻度は1回/10分間〜1回/2日の範囲で選ぶことができる。第2の例としては、植物体又は植物の挿し穂の地下部に灌水する方法がある。灌水の頻度は、植物の種類及びその育成環境によって異なるので一概には特定できないが、例えば、1日に数回〜1週間に1回程度の範囲で選ぶことができる。 【0019】 本発明において、育成対象とする植物については特に限定はなく、農業、林業,園芸の分野で普通に育成されている植物を全て対象とすることができる。近年植林が奨励されているユーカリ属植物、アカシア属植物は、典型的な育成対象植物である。 ちなみに、ユーカリ属植物としては、製紙原料用樹種(パルプ材)としてユーカリ・カマルドレンシス(Eucalyptus camaldulensis)、ユーカリ・グランディス(E. grandis)、ユーカリ・グロブラス(E. globulus)、ユーカリ・ナイテンス(E. nitens)、ユーカリ・テルティコルニス(E. tereticornis)、ユーカリ・ユーロフィラ(E. urophylla)等、及びこれらを片親とする交雑種や、これらの亜種・変種、及び造園・緑化・観賞用樹種としてユーカリ・グンニ(E. gunnii)、ユーカリ・ビミナリス(E. viminalis)等が含まれる。 【0020】 また、アカシア属植物としては、製紙原料用樹種としてアカシア・アウリカリフォルミス(Acacia auriculiformis)、アカシア・マンギウム(A. mangium)、アカシア・メアランシー(A. mearnsii)、アカシア・クラシカルパ(A. crassicarpa)、アカシア・アウラコカルパ(A. aulacocarpa)等、及びこれらを片親とする交雑種や、これらの亜種・変種、及び造園・緑化・観賞用樹種としてハナアカシア(A. baileyana)、フサアカシア(A. dealbata)等が含まれる。 【0021】 実験例1 次のような7種類の水耕液A〜Gを用意した。 水耕液A:重炭酸イオンを38mg/L(約0.62mM/L)含む水道水(pHの測定値は7.70)を原水とし、この原水に硫酸カリウム4mM/L、硝酸アンモニウム2mM/L、リン酸二水素カリウム0.4mM/L、硝酸マグネシウム0.2mM/L、塩化カルシウム0.8mM/L、Fe(III)-EDTA0.02mM/L、ホウ酸9.7μM/L、硫酸マンガン8.3μM/L、硫酸亜鉛1.4μM/L、ヨウ化カリウム0.9μM/L、モリブデン酸二ナトリウム0.2μM/L、硫酸銅0.02μM/L、塩化コバルト0.02μM/Lをそれぞれ溶解させて水耕液Aとした。水耕液AのpHは7.32であった。 水耕液B:上記水耕液Aに対して2日に1回の割で、二酸化炭素を1000ppm溶解させた水溶液を水耕液Bとした。二酸化炭素を溶解させた直後の水耕液BのpHは、4.72に低下した。 水耕液C:水耕液Aの硫酸カリウム4mM/Lの代わりに、重炭酸カリウム0.25mM/Lと硫酸カリウム3.875mM/Lを使用し、2日に1回の割で、二酸化炭素を1000ppm溶解させた水溶液を水耕液Cとした。 水耕液D:水耕液Aの硫酸カリウム4mM/Lの代わりに、重炭酸カリウム0.5mM/Lと硫酸カリウム3.75mM/Lを使用し、2日に1回の割で二酸化炭素を1000ppm溶解させた水溶液を水耕液Dとした。 水耕液E:水耕液Aの硫酸カリウム4mM/Lの代わりに、重炭酸カリウム1.0mM/Lと硫酸カリウム3.5mM/Lを使用し、2日に1回の割で二酸化炭素を1000ppm溶解させ水溶液を水耕液Eとした。 水耕液F:水耕液Aの硫酸カリウム4mM/Lの代わりに、重炭酸カリウム2.0mM/Lと硫酸カリウム3.0mM/Lを使用し、2日に1回の割で二酸化炭素を1000ppm溶解させ水溶液を水耕液Fとした。 水耕液G:水耕液Aの硫酸カリウム4mM/Lの代わりに、重炭酸カリウム4.0mM/Lと硫酸カリウム2.0mM/Lを使用し、2日に1回の割で二酸化炭素を1000ppm溶解させ水溶液を水耕液Gとした。 【0022】 図1に概要を示す実験システムを用い、循環実験水として上記の各水耕液A〜Gをそれぞれ使用し、実験植物としてユーカリ・グロブラス(E.globulus)の挿し木苗木を選んで7週間育成した。水耕液は容器に入れ、エアーポンプにて常時通気しながら循環させた。水耕液A〜Gは、それぞれ最初の1週間後に交換し、その後はpH4以下になる以前に調製したての水耕液A〜Gと交換した。 二酸化炭素を溶解させる前の各水耕液のpH、溶解後の各水耕液のpH並びに実験植物を1週間育成後の各水耕液のpH及び重炭酸イオン濃度を測定した。結果を表1に示す。 【0023】 【表1】
【0024】 重炭酸イオンを0.62〜4.62mM/L含有する原水(pH7.32〜8.35)に、二酸化炭素を1000ppm溶解させると、水のpHは4.72〜5.59となり、実験植物1週間栽培後の水のpHは3.98〜8.29となった。その時に水に含まれる重炭酸イオン濃度は、水耕液Bでは0.08mM/L以下となり、pHも4以下となって実験植物の育成に不適となった。しかし、液中の重炭酸イオンの濃度が0.87〜2.62mM/Lの範囲になるように、重炭酸カリウムが添加されている水耕液C〜Fは、育成1週間後でも、液中の重炭酸イオン濃度が0.19〜1.00mM/Lとなり、pHも4〜6.6の範囲内となって実験植物の育成に好適な条件を維持している。 なお、水耕液Bの場合でも、重炭酸イオンが0.12mM/L以下になる1週間以内に調製したての水耕液Bに交換すれば、実験植物の育成に好適な条件を維持できる。また、水耕液Gの場合、育成1週間後に実験植物の葉の一部が黄変した。これは育成1週間後の水耕液GのpHが8以上と高すぎるためであるが、そうした水耕液でも重炭酸イオンが2.0mM/L以下に、かつ、pHを4〜6.6の範囲になるように高濃度の二酸化炭素を溶解させておけば実験植物の育成に適した水耕液とすることができる。 【0025】 実験例2 上記した各水耕液A〜Gをそれぞれ使用して4週間育成した実験植物(クローン苗木を4本づつ)の苗高・葉のサイズ(縦×横)・SPAD値、並びに育成7週間後の実験植物の乾物重量を測定した。結果を表2に示す。なお、表中のカッコ内の数値は、実験開始当初のデータである。 【0026】 【表2】
【0027】 水耕液B〜Gで育成した実験植物の7週間後の全乾物重は、7.38〜8.39g/plantの範囲であり、二酸化炭素を溶解させていない水耕液Aで育成した実験植物の7週間後の全乾物重である7.14g/plantと比較して、育成が促進されていることが分かる。特に根の重量増加が顕著であった。 しかしながら、水耕液B(これには2日に1回の割で二酸化炭素を溶解させているので、従来技術の炭酸水に相当する)で育成した実験植物の7週間後の全乾物重は、二酸化炭素を溶解させていない水耕液Aの全乾物重と有意差がなく、茎乾物重ではむしろ小さかった。苗高・葉のサイズ・SPAD値のいずれの値も、水耕液Aのそれより小さく、従来技術による二酸化炭素を高濃度に溶解させた炭酸水では、必ずしもすべての部位で植物の育成を促進した結果とならないことが分かる。 これとは対照的に、重炭酸イオンの濃度が0.87mM/L以上となるように重炭酸カリウムを添加した水耕液C〜Gで育成した場合には、実験植物の7週間後の乾物重がすべて水耕液Aでのそれを大きく上回っている。但し、苗高はそれほど変わらず、葉のサイズ・SPAD値は水耕液Aの値より小さい。特に水耕液Gで育成した実験植物は、葉の一部が黄変し、葉のクロロフィル濃度の指標値であるSPAD値も著しく小さかった。このことから、重炭酸イオン濃度が2.0mM/L以上の状態が続くと、二酸化炭素が高濃度で溶解している場合を除いてpH値が過度に上昇し、鉄イオン等の微量要素の欠乏が厳しくなって植物の育成に不適となることが判明した。 【0028】 実験例3 上記した水耕液A,B,D,Fそれぞれを使用して6週間育成した実験植物(クローン苗木を3本づつ)の光合成速度、暗適応後(30-40分間暗黒処理)の蒸散速度、光飽和後(350ppm二酸化炭素、1,500μmol光量子m-2s-1)の蒸散速度及びコンダクタンスを測定した。また、実験植物が環境ストレス(光阻害)を受けた場合の影響を調べるために、塩化ナトリウムの200mM/L溶液に植物根部を浸漬しながら弱光下に12〜14時間放置して適応後、400μmol光量子m-2s-1の光照射下に6時間放置して、上と同様の測定を行った。結果を表3に示す。 【0029】 【表3】
【0030】 2日に1回の割で二酸化炭素を溶解させた水耕液B,D,Fで6週間育成し、環境ストレスを与えていない(光阻害前の)実験植物の蒸散速度及びコンダクタンスは、水耕液Aで育成した実験植物のそれに比較して小さい。この傾向は環境ストレスを与えた後(光阻害後)も同様であった。特に水耕液Dで育成した実験植物の光合成速度は、実験植物は水分損失を緩和して回避し、環境ストレスに対する耐性が向上していた。 【実施例】 【0031】 ユーカリ・グロブラス(Eucalyptus globulus)の採穂母樹から調整した挿し穂を、赤玉土に挿し付けて育成対象物とし、図2に概要を示す実験システムの温室に、前記の育成対象植物を収容した。次いで、1日あたりの灌水量が1〜2mm/cm2になるように、温室の天井から下記の散水液を噴霧した。 散水液a:重炭酸イオンを0.62mM/L含有する水道水に、膜モジュールを搭載した二酸化炭素注気装置において、二酸化炭素を溶解させて炭酸水とし、これを処理水タンクに貯留した。また、処理タンクに供給される炭酸水6L当たり、約30mlの重炭酸アンモニウム溶液(濃度100mM/L)を、薬液タンクから処理水タンクに送液して炭酸水に添加した。さらに、循環ポンプを1時間毎に2分間稼働させて処理水タンクの液を、前記の二酸化炭素注気装置に循環させ、液中に二酸化炭素を注気した。これにより大気圧下での飽和濃度以上に二酸化炭素が溶解し(1500ppm)、しかも、重炭酸イオンが0.5〜1.2mM/Lの範囲で含まれる散水液aを調製することができた。 散水液b:重炭酸アンモニウム溶液(濃度100mM/L)を添加しなかった以外は、散水液aと同様な炭酸水を散水液bとした。この散水液bは重炭酸塩を添加していないので、従来技術の炭酸水に相当する。 散水液c:重炭酸イオンを0.62mM/L含有する水道水そのものを散水液cとした。 【0032】 上記の散水液a〜cそれぞれを、散水条件を変えて育成対象物に散水してこれを育成し、8週間後の発根率を調査した。結果を表4に示す。発根率は各実験12本の挿し穂あたりの発根した挿し穂の本数を百分率で示す。 【0033】 【表4】
【0034】 植物が育成される大気圧下での飽和濃度以上に二酸化炭素を溶解させ、さらに重炭酸イオンを含有させた散水液aを用いて上記の挿し穂を育成した場合、発根率は58%であるのに対し、二酸化炭素が大気圧下での飽和濃度以上には溶解していない普通の水道水(散水液c)を使用した場合の発根率は、8〜25%でしかない。また、従来技術の炭酸水(散水液b)を使用した場合の発根率は、33〜42%である。このことから、挿し穂の発根を含む植物の育成にとって、高濃度で二酸化炭素が溶解し、しかも適当量の重炭酸イオンを含有する炭酸水が有効であることが分かる。 【産業上の利用可能性】 【0035】 本発明は、農業・林業・園芸全般に対しても広く適用することができ、穀類・野菜類などの農作物、花卉類、果樹、植林・緑化用樹木などの収量増加、品質向上、挿し木による大量クローン増殖などに優れた効果を発揮する。 【図面の簡単な説明】 【0036】 【図1】実験例で採用した実験システムの概要図。 【図2】実施例で採用した実験システムの概要図。
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| 【出願人】 |
【識別番号】591178012 【氏名又は名称】財団法人地球環境産業技術研究機構 【住所又は居所】京都府相楽郡木津町木津川台9丁目2番地
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| 【出願日】 |
平成16年5月25日(2004.5.25) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100072224 【弁理士】 【氏名又は名称】朝倉 正幸
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| 【公開番号】 |
特開2005−333854(P2005−333854A) |
| 【公開日】 |
平成17年12月8日(2005.12.8) |
| 【出願番号】 |
特願2004−154924(P2004−154924) |
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