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【発明の名称】 きのこ栽培用の培養容器又は培養袋及びそれを用いたきのこの栽培法
【発明者】 【氏名】佐藤 拓
【住所又は居所】群馬県高崎市宮原町3番地 麒麟麦酒株式会社研究開発部応用開発センター内

【氏名】坂戸 純一
【住所又は居所】群馬県利根郡月夜野町大字真庭191番地1株式会社サカト産業内

【要約】 【課題】きのこの菌床人工栽培において、簡便且つ確実な手段で、品質の優れた子実体を生産性良く取得するきのこ栽培用培養容器又は培養袋、及び栽培方法を提供すること。

【解決手段】きのこ栽培用の培養容器又は培養袋において、培養容器又は培養袋の培養基と接触しない容器又は袋の部分に、微生物を通過させない通気用穿孔部を設け、かつ培養基と接触する容器又は袋の部分に、菌糸培養の所定の段階で開口して、培養容器又は培養袋の外部と連通させることが可能であり、かつ、該開口を通して原基の形成と子実体の成長とを行う原基形成及び子実体成長用の穿孔部とを設ける。本発明は、該培養容器又は培養袋を用い、菌糸培養の所定の段階すなわち培養基全体に菌糸が蔓延した段階、又はその後の低温熟成を完了した段階で原基形成用及び子実体成長用の穿孔部の開口部の覆い部材を剥離させて、該開口部を通して原基の形成と子実体の成長とを効率的に行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
きのこ栽培用の培養基を充填し、種菌を植え付けて培養するきのこ栽培用の培養容器又は培養袋において、培養容器又は培養袋の培養基と接触しない容器又は袋の部分に、微生物を通過させない通気フィルムで構成される通気用穿孔部を設け、かつ培養容器又は培養袋の培養基と接触する容器又は袋の部分に、菌糸培養の所定の段階で開口して、培養容器又は培養袋の外部と連通させることが可能であり、かつ、該開口を通して原基の形成と子実体の成長とを行う原基形成用及び子実体成長用の穿孔部とを設けたことを特徴とするきのこ栽培用の培養容器又は培養袋。
【請求項2】
微生物を通過させない通気フィルムで構成される通気用穿孔部が、培養容器又は培養袋に開けられた通気用穿孔と、空気を通過し微生物を通過させない微多孔性フィルムからなる通気フィルムを該穿孔に装着して形成されていることを特徴とする請求項1記載のきのこ栽培用の培養容器又は培養袋。
【請求項3】
原基形成用及び子実体成長用の穿孔部が、培養容器又は培養袋の培養基と接触する容器又は袋の部分に形成された開口部と、該開口部を覆い、かつ、菌糸培養の所定の段階で剥離することが可能なように装着された覆い部材によって形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のきのこ栽培用の培養容器又は培養袋。
【請求項4】
培養基と接触する容器又は袋の部分に形成された開口部を有する培養容器又は培養袋のプラスチックの材質と、該開口部を覆う覆い部材のプラスチックの材質とを異なる材質で形成したことを特徴とする請求項3記載のきのこ栽培用の培養容器又は培養袋。
【請求項5】
培養基と接触する容器又は袋の部分に形成された開口部を有する培養容器又は培養袋が、ポリプロピレン系プラスチックで形成された培養容器又はポリプロピレン系フィルムで形成された培養袋からなり、該開口部を覆う覆い部材が、ポリエチレン系フィルムからなり、該覆い部材を菌糸培養の所定の段階で剥離することが可能な程度に両者を熱融着したことを特徴とする請求項4記載のきのこ栽培用の培養容器又は培養袋。
【請求項6】
培養基と接触する容器又は袋の部分に形成された原基形成用及び子実体成長用の穿孔部の開口が、1個の原基を形成させ、かつ、1株の子実体を成長させるのに必要な大きさに限定して形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のきのこ栽培用の培養容器又は培養袋。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のきのこ栽培用の培養容器又は培養袋に、培養基を充填し、滅菌後、種菌を植菌し、培養容器又は培養袋を密封し、微生物を通過させない通気フィルムで構成される通気用穿孔部を通して通気しながら培養し、培養基全体に菌糸が蔓延した段階、又はその後の低温熟成後の段階で、原基形成用及び子実体成長用の穿孔部の開口部の覆い部材を剥離させて、培養容器又は培養袋を外部と連通させ、該開口部を通して原基の形成と子実体の成長とを行うことを特徴とするきのこの栽培方法。


【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、きのこの菌床人工栽培において、通気の管理、水分・湿度の管理、雑菌の混入防止のための管理とを連携的にコントロールして行い、菌糸の培養管理と原基の形成及び子実体の成長管理とを効果的に行って、簡便且つ確実な手段で、品質の優れた子実体を生産性良く取得することを可能とするきのこ栽培用の培養容器又は培養袋、及び該きのこ栽培用の培養容器又は培養袋を用いたきのこの栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
きのこは、その独特の食味、食感から、天然の食品素材として古くから親しまれてきており、また最近は、きのこの種々の健康機能から健康食品としての利用が注目されている。近年、きのこの生産のための人工栽培の技術が進展し、シイタケ、エノキタケ、ヒラタケ、ナメコ、マイタケ、ブナシメジ、ハタケシメジ等の食用きのこについて、人工栽培技術が発達してきている。人工栽培の方法は、大きく分類して原木人工栽培方法と菌床人工栽培方法とがある。前者は、例えばコナラ、ブナ、クヌギ等の原木をホダ木として使用する栽培方法であり、後者は、例えばオガクズ、コーンコブ等を培地間隙の保持と保水のための培地支持体用基材とし、これに米糠、小麦フスマ、コーンブラン等の栄養源としての基材を混合して調製した培養基(培地)をビン、箱などの容器や袋に充填した固形培養基を用いる栽培方法である。
【0003】
従来、きのこの栽培はコナラ、クヌギ、ブナ等の原木を利用したほだ木栽培が主力であったが、ほだ木栽培は気象条件により収穫が左右されることが多く、また最近ではほだ木に使用する原木の不足や、原木切り出しのための労働力が不足していること等によって原木の入手が困難となっており、更に、ほだ木栽培は栽培期間が長く、例えば種菌の接種からきのこの収穫までに1年半から2年も要すること等により、生産コスト等の経済的な面からの問題もあった。このため、近年エノキタケ、ヒラタケ、ブナシメジ、ナメコ等の栽培において、オガクズに米糠を配合した培養基等を用いた菌床人工栽培法が確立され、1年を通じて安定してきのこを収穫できる人工栽培法が取り入れられてきた。
【0004】
きのこを菌床人工栽培法により栽培するには、培養基(培地)を充填し、培養管理するためのビン、箱などの培養容器や培養袋が用いられる。固形培養基を培養容器や培養袋に充填し、きのこの栽培管理を行うに際しては、温度の管理とともに、通気の管理、水分・湿度の管理、雑菌の混入防止のための管理が重要となる。このためこれらの管理を適切に行うために、きのこ栽培用の種々の構造の培養容器や培養袋が提案されている。現在、培養容器や培養袋を使用した菌床人工栽培法において、空気を通過し、雑菌を遮断するフィルターを取り付けて全体を密封した培養容器や培養袋に培養基を入れてきのこを栽培する方法が多く取り入れられている。この方法を用いることで、雑菌の混入を排除し、しかも充分な空気の流通を確保することができるために従来の原木等による栽培に比べて安定したきのこの栽培が可能となった。この方法により、今日、マイタケ、シイタケ、エノキタケ、その他のきのこが安定かつ高収率で栽培することが可能となった。
【0005】
空気を通過し、雑菌を遮断するフィルターを取り付けて、全体を密封した構造の培養容器や培養袋を用い、該培養容器や培養袋に培養基を入れてきのこを栽培する方法に使用する該培養容器及び培養袋として、各種のものが開示されている。例えば、特公昭57−42287号公報には、オレフィン系プラスチックフィルム袋の一部分を、穴径0.1〜0.4μで空孔率35%以上の多孔性プラスチックフィルムで形成し、該フィルムを通して通気を行うことにより、雑菌の混入と水分の蒸発を抑えて茸菌を培養するようにした茸菌の培養袋について開示されている。また、特開平8−112033号公報には、気体透過性を有するがバクテリアや雑菌は通さない通気性シートで構成される部分を有するプラスチックフィルムからなる茸菌培養袋において、特定のポリエチレン及びエチレン(共)重合体をからなるフィルム袋を用いることにより、袋の開口性、ヒートシール性及び適度の柔軟性に優れた茸菌培養袋について開示されている。更に、特開平5−3724号公報及び特開2003−274756号公報には、蓋部に雑菌の混入を防止するプラスチック膜を設置した通気孔を備えたきのこ栽培用容器について開示されている。
【0006】
また、空気を通過し、雑菌を遮断するフィルターを取り付けた通気孔を設け、全体を密封した培養袋等において、その通気量を調整するようにした構造のきのこ栽培用袋も開示されている。例えば、実開平6−50426号公報には、茸菌類用培養袋の一部分に複数の通気穴を一箇所乃至数箇所設け、この複数の通気穴の部分にこれより一回り大きい寸法のフィルターを熱溶着或いは接着して、培養袋の製造における生産性の向上と共に、袋内の換気を高めた構造の茸菌類用培養袋について、及び、特開平6−319373号公報には、茸の菌床栽培における茸菌栽培袋において、培地と接触しない部位と、培地と接触する部位とに貫通孔を設け、該貫通孔を前者は、空気を通過し、雑菌を通過しないポーラスフィルムで被覆すると共に、後者は、通気性、疎水性素材からなる隔離層の両面に、空気を通過し、水を通過しないポーラスフィルムを設けたフィルター部材で被服することにより、培養袋の上下からの通気を可能とすると共に雑菌による汚染を防止した構造の茸菌の培養袋について開示されている。
【0007】
上記のような空気を通過し、雑菌を通過しない通気孔を設け、密封して培養する、きのこ栽培用の培養容器又は培養袋を用いてきのこを栽培するには、培養基(培地)を該培養容器や培養袋に充填し、滅菌後、種菌を接種し、密封後、該通気孔を介して通気の管理を行うと共に、温度や水分・湿度の管理を行うことにより菌糸の生育を行う。これらの培養容器又は培養袋を用いたきのこの栽培においては、菌糸が培養基(培地)に蔓延した段階で、発茸(子実体形成)のために、培養容器の上部を開放するか、或いは、培養袋の一部又は全部を破って、培養基(菌床)を露出させ、きのこを発生させることが行われている。きのこ培養袋において、上記のような培養基(菌床)の露出を容易に行えるような構造としたきのこ栽培用培養袋も知られている。例えば、特開昭55−23956号公報には、固体培養基に植菌して培養した後、菌糸が蔓延した状態で、袋の上部又はフィルム全部を除いて所定の環境下で発茸せしめる構造の茸類の培養袋が開示されている。
【0008】
また、特開平5−30853号公報には、袋のやや上方に穿孔を設け、該穿孔に空気を通過し、微生物を通過させないフィルターを貼着した茸菌の栽培袋において、該穿孔の周囲の袋底に面した側に引裂開始部を設け、茸菌の培養により袋体の培養基に菌糸が充分に蔓延した後に、該引裂開始部からの引裂により袋を容易に破り、培養基を袋から取出して子実体を発生させる作業を容易にする構造の茸栽培袋について開示されている。更に、特開平9−187168号公報には、プラスチックフィルムから形成された、きのこ培養袋において、該袋の一部に、通気孔を設け、該通気孔に通気性多孔質シートを接着し、きのこ菌糸が培地天面から50%以上蔓延した時点で剥離して、空気の流通促進を図るようにした構造のきのこ類の培養袋について開示されている。
【0009】
上記のように、空気を通過し、雑菌を通過しない通気孔を設け、密封して培養する、きのこ栽培用の培養容器又は培養袋を用いてきのこを栽培するに際しては、菌糸が培養基(培地)に蔓延した段階で、発茸(子実体形成)のために、培養容器の上部を開放するか、或いは、培養袋体の一部又は全部を破って、培養基(菌床)を露出させ、きのこを発生させることが行われているが、これらの栽培方法では、培養基(菌床)を露出させた後の湿度、水分管理が難しく、また、雑菌の混入も防止し得ないという問題がある。また、作業的にも、袋の一部、特に培地と接している部分を切断具で切り取る作業は面倒である上、培地を傷つけて発茸まで至らなくなる可能性もあり、大量生産に移行するにしたがい袋の開封に要する手間が作業コストの上で重要な障害になっていた。栽培現場の作業効率からすれば、袋を手で破ることが最も好ましい方法であるが、きのこの袋栽培では種菌接種前に、培養基を高温高圧下で長時間滅菌することが必須の条件であり、この滅菌工程に耐える充分な強度を有する袋が要求されることから、通常の方法では袋を切断具を用いずに破ることは困難であった。
【0010】
このような培養袋の一部又は全部を破って、培養基(菌床)を露出させ、きのこを発生させる方法に対して、培養器や培養袋のきのこを発生する部分だけに孔をあける培養袋等を用いたきのこの栽培方法が開示されている。特開昭54−130333号公報には、種菌が十分に増殖したところで容器の上部と培養基との間に設けられていた空間部をなくし、且つ発茸したきのこの柄が通りうる程度の小穴を容器にあけ、この小穴を通してきのこを発茸成長させるきのこの培養袋の構造について、及び、特開平3−43021号公報には、通気孔を設け無菌的に密封した培養袋の中に、培養基上の茸を発生させたい部位に穿孔を設けた無菌状態のシートを載置して茸の発生部位を予め特定し、該穿孔を通して茸を発生させる構造のきのこの培養袋の構造について、それぞれ開示されている。また、特開平7−95822号公報及び特開2000−300066号公報には、きのこ栽培容器内で、培養基に菌糸が蔓延し、原基が形成された時点で、栽培容器の原基が形成されている周辺箇所を切除し、該切除された箇所を通して子実体を成長させるきのこの栽培容器の構造について開示されている。
【0011】
これらの栽培容器や栽培袋を用いたきのこの栽培方法においては、容器や袋がそのまま保持されていることから、雑菌の侵入の防止等においては、略満足できるものの、例えば、特開昭54−130333号公報のような方法では、培養基全体に対する通気が遮断されるために、通気や保湿の全体的なバランスの面で必ずしも満足できるものではなかった。また、特開平7−95822号公報及び特開2000−300066号公報に記載される方法のように、原基が形成された時点で、栽培容器の原基が形成されている周辺箇所を切除し、該切除された箇所を通して子実体を成長させる方法では、切断具を用いて原基形成用の穿孔を切り抜く場合、穿孔の形、大きさ、場所を一定にすることは困難であり、しかも、きのこの栽培現場で、原基が形成された大量の培養基を原基を傷つけずに切除することには、非常な熟練を要し、したがって、無傷の品質の良いきのこを生産するという作業が難しく、歩留まりの面からも、改良すべき点を有していた。更に、該原基形成用の穿孔の形、大きさ、場所のばらつきのため、培地上の菌糸層から原基が形成される日数、形成率が大きく変動し、このことが大量生産時に計画的な栽培を達成する上での大きな障害となっていた。
【0012】
【特許文献1】特公昭57−42287号公報。
【特許文献2】特開昭54−130333号公報。
【特許文献3】特開昭55−23956号公報。
【特許文献4】特開平3−43021号公報。
【特許文献5】特開平5−3724号公報。
【特許文献6】特開平5−30853号公報。
【特許文献7】特開平6−319373号公報。
【特許文献8】特開平7−95822号公報。
【特許文献9】特開平8−112033号公報。
【特許文献10】特開平9−187168号公報。
【特許文献11】特開2000−300066号公報に。
【特許文献12】特開2003−274756号公報。
【特許文献13】実開平6−50426号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、きのこの菌床人工栽培において、通気の管理、水分・湿度の管理、雑菌の混入防止のための管理とを連携的にコントロールして行い、きのこ菌糸の培養管理と原基の形成及び子実体の成長管理とを効果的に行って、簡便且つ確実な手段で、品質の優れた子実体を生産性良く取得することを可能とするきのこ栽培用の培養容器又は培養袋、及び該きのこ栽培用の培養容器又は培養袋を用いたきのこの栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、きのこの菌床人工栽培における上記課題を解決すべく、菌床人工栽培における従来の培養容器及び培養袋における改良について、鋭意研究する中で、培養容器又は培養袋に微生物を通過させない通気フィルムで構成される通気用穿孔部を設け、該培養容器又は培養袋に培養基を充填し、種菌を植菌した後密封し、該通気用穿孔部を通して通気しながらきのこを培養するきのこ培養容器又は培養袋を用いたきのこの菌床人工栽培方法において、培養基全体に菌糸が蔓延した段階、又はその後の低温熟成を完了した段階で、培養容器又は培養袋の培養基と接触する容器又は袋の部分を部分的に開口して、培養容器又は培養袋の外部と連通させることにより、該穿孔部からの通気により、局部的にかかる箇所の菌糸層への酸素供給、炭酸ガス排出が急激に促進されることで、原基の形成が促され、該箇所を通して、子実体を成長させることにより、品質の優れたきのこ子実体を生産性良く取得することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明のきのこの菌床人工栽培において用いられるきのこの培養容器又は培養袋は、きのこ栽培用の培養基を充填し、種菌を植菌して培養するきのこ栽培用の培養容器又は培養袋において、培養容器又は培養袋の培養基と接触しない容器又は袋の部分に、微生物を通過させない通気フィルムで構成される通気用穿孔部を設け、かつ培養容器又は培養袋の培養基と接触する容器又は袋の部分に、培養基全体に菌糸が蔓延した段階、又はその後の低温熟成完了した段階で開口して、培養容器又は培養袋の外部と連通させることが可能であり、かつ、該開口を通して原基の形成と子実体の成長とを行う原基形成用及び子実体成長用の穿孔部とを設けたきのこ栽培用培養容器又は培養袋からなり、また、本発明のきのこの栽培方法は、該培養容器又は培養袋を用い、該培養容器又は培養袋に、培養基を充填し、滅菌後、種菌を植菌し、培養容器又は培養袋を密封した後、該通気用穿孔部を通して通気しながら培養し、所定の段階すなわち培養基全体に菌糸が蔓延した段階、又はその後の低温熟成を完了した段階で、原基形成用及び子実体成長用の穿孔部の開口部の覆い部材を剥離させて、培養容器又は培養袋を外部と連通させ、該開口部を通して原基の形成と子実体の成長とを行うきのこの栽培方法からなる。
【0016】
本発明の培養容器又は培養袋は、培養基全体に菌糸が蔓延した段階、又はその後の低温熟成を完了した段階の後でも、通気用穿孔部を通してそのまま通気が行われるため、培養基の菌糸体全体の生育に必要な酸素の供給はそのまま続けられ、培養容器又は培養袋内の湿度、水分の保持と雑菌侵入の防止の機能はそのまま維持される。
また、培養基全体に菌糸が蔓延した段階、又はその後の低温熟成を完了した段階で開口される培養基と接触する部分の原基形成用穿孔部においては、開口部を通して直接通気を行うことにより、十分な酸素の供給と炭酸ガスの排出がされるため、局部的に菌糸層への刺激が促進され、原基の形成を促すことができる。本発明の培養容器又は培養袋においては、原基形成用及び子実体成長用の穿孔部を通して直接外部と連通するが、該外部との連通は、局部的に行われ、なお且つ、菌糸が培養基全体に蔓延した段階、又はその後の低温熟成を完了した段階で行われるため、外部からの雑菌の侵入に対して実用上問題となることは殆どない。
【0017】
更に、本発明の培養容器又は培養袋は、菌糸が培養基全体に蔓延した段階、その後の低温熟成を完了した段階で、原基を形成させるために、培養容器又は栽培袋の一部を取り除き培地を外気に暴露させるような、簡単な構造で形成することができ、そして、該培養容器又は培養袋を用いたきのこの栽培方法は、所定の時期に予め設けられた易剥離の覆い部材を剥離するというような平易且つ確実な方法で実施することが可能であるため、従来の原基形成用及び子実体成長用の穿孔部を作成する作業を大幅に効率化し、かつ、常に一定の形状、大きさの穿孔部を、一定の位置に形成できることで、原基形成までの日数のばらつきの少ない原基形成が可能となる。
【0018】
すなわち具体的には本発明は、きのこ栽培用の培養基を充填し、種菌を植え付けて培養するきのこ栽培用の培養容器又は培養袋において、培養容器又は培養袋の培養基と接触しない容器又は袋の部分に、微生物を通過させない通気フィルムで構成される通気用穿孔部を設け、かつ培養容器又は培養袋の培養基と接触する容器又は袋の部分に、菌糸培養の所定の段階で開口して、培養容器又は培養袋の外部と連通させることが可能であり、かつ、該開口を通して原基の形成と子実体の成長とを行う原基形成用及び子実体成長用の穿孔部とを設けたことを特徴とするきのこ栽培用の培養容器又は培養袋(請求項1)や、微生物を通過させない通気フィルムで構成される通気用穿孔部が、培養容器又は培養袋に開けられた通気用穿孔と、空気を通過し微生物を通過させない微多孔性フィルムからなる通気フィルムを該穿孔に装着して形成されていることを特徴とする請求項1記載のきのこ栽培用の培養容器又は培養袋(請求項2)や、原基形成用及び子実体成長用の穿孔部が、培養容器又は培養袋の培養基と接触する容器又は袋の部分に形成された開口部と、該開口部を覆い、かつ、菌糸培養の所定の段階で剥離することが可能なように装着された覆い部材によって形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のきのこ栽培用の培養容器又は培養袋(請求項3)や、培養基と接触する容器又は袋の部分に形成された開口部を有する培養容器又は培養袋のプラスチックの材質と、該開口部を覆う覆い部材のプラスチックの材質とを異なる材質で形成したことを特徴とする請求項3記載のきのこ栽培用の培養容器又は培養袋(請求項4)や、培養基と接触する容器又は袋の部分に形成された開口部を有する培養容器又は培養袋が、ポリプロピレン系プラスチックで形成された培養容器又はポリプロピレン系フィルムで形成された培養袋からなり、該開口部を覆う覆い部材が、ポリエチレン系フィルムからなり、該覆い部材を菌糸培養の所定の段階で剥離することが可能な程度に両者を熱融着したことを特徴とする請求項4記載のきのこ栽培用の培養容器又は培養袋(請求項5)や、培養基と接触する容器又は袋の部分に形成された原基形成用及び子実体成長用の穿孔部の開口が、1個の原基を形成させ、かつ、1株の子実体を成長させるのに必要な大きさに限定して形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のきのこ栽培用の培養容器又は培養袋(請求項6)や、請求項1〜6のいずれかに記載のきのこ栽培用の培養容器又は培養袋に、培養基を充填し、滅菌後、種菌を植菌し、培養容器又は培養袋を密封し、微生物を通過させない通気フィルムで構成される通気用穿孔部を通して通気しながら培養し、培養基全体に菌糸が蔓延した段階、又はその後の低温熟成後の段階で、原基形成用及び子実体成長用の穿孔部の開口部の覆い部材を剥離させて、培養容器又は培養袋を外部と連通させ、該開口部を通して原基の形成と子実体の成長とを行うことを特徴とするきのこの栽培方法(請求項7)からなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、きのこの菌床人工栽培において、通気の管理、水分・湿度の管理、雑菌の混入防止のための管理とを連携的にコントロールして行い、菌糸の培養管理と原基の形成及び子実体の成長管理とを効果的に行って、簡便且つ確実な手段で、品質の優れた子実体を生産性良く取得することを可能とする。
すなわち、本発明のきのこ栽培用の培養容器又は培養袋は、培養容器又は培養袋の培養基と接触しない容器又は袋の部分に、微生物を通過させない通気フィルムで構成される通気用穿孔部を設け、かつ培養容器又は培養袋の培養基と接触する容器又は袋の部分に、菌糸の培養の所定の段階で開口して、培養容器又は培養袋の外部と連通させることが可能であり、かつ、該開口を通して原基の形成と子実体の成長とを行う原基形成用及び子実体成長用の穿孔部とを設けるという簡単な構造のきのこの栽培用の培養容器又は培養袋として形成することができる。
【0020】
そして、該培養容器又は培養袋を用いた本発明のきのこの栽培方法は、該きのこ栽培用の培養容器又は培養袋を用い、通気の管理、水分・湿度の管理、雑菌の混入防止のための管理を行って、菌糸の培養増殖を効果的に行うことが可能であり、かつ、該培養の所定の時期、すなわち培養基全体に菌糸が蔓延した段階、又はその後の低温熟成を完了した段階で原基形成用及び子実体成長用の穿孔部を開口するという平易な操作によって、原基の形成、子実体の成長管理とを簡便且つ確実な手段で行って、品質の優れた子実体を生産性良く取得することを可能とするという実用上優れた効果を有する。
【0021】
更に、本発明の培養容器又は培養袋を用いることにより、従来、原基形成用及び子実体成長用の穿孔部を作成する方法で、子実体の成長のために行われていた、培養基全体に菌糸がに蔓延した段階、その後の低温熟成を完了した段階で栽培袋の培養基に接する部分を一部切除或いは切り取るような作業を、原基形成用及び子実体成長用の開口部の覆い部材を手で剥離するのみで容易に行え、そして菌糸層面を傷めずに、一定の形状の原基形成用及び子実体成長用の穿孔を形成できるようになり、作業を大幅に効率化し、かつ、常に一定の形状、大きさの穿孔部を、一定の位置に形成できることで、原基形成までの日数のばらつきの少ない原基形成が可能となった。また、本発明の培養容器又は培養袋を用いたきのこの栽培方法により、形の整った無駄のない子実体の形成が可能となり、本発明は、きのこの菌床栽培において、その生産性を大幅に向上し、安定した栽培を可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、きのこ栽培用の培養基を充填し、種菌を植菌して培養するきのこ栽培用の培養容器又は培養袋において、培養容器又は培養袋の培養基と接触しない容器又は袋の部分に、微生物を通過させない通気フィルムで構成される通気用穿孔部を設け、かつ培養容器又は培養袋の培養基と接触する容器又は袋の部分に、培養基全体に菌糸が蔓延した段階、又はその後の低温熟成を完了した段階で開口して、培養容器又は培養袋の外部と連通させることが可能であり、かつ、該開口を通して原基の形成と子実体の成長とを行う原基形成用及び子実体成長用の穿孔部とを設けたきのこ栽培用培養容器又は培養袋からなる。また、本発明は、該きのこ栽培用の培養容器又は培養袋に、培養基を充填し、滅菌後、種菌を植菌し、培養容器又は培養袋を密封した後、該通気用穿孔部を通して通気しながら培養し、所定の段階すなわち培養基全体に菌糸が蔓延した段階、又はその後の低温熟成を完了した段階で、原基形成用及び子実体成長用の穿孔部の開口部の覆い部材を剥離させて、培養容器又は培養袋を外部と連通させ、該開口部を通して原基の形成と子実体の成長とを行うきのこの栽培方法からなる。
【0023】
本発明のきのこ栽培用培養容器又は培養袋の形状については、通気用及び原基形成用及び子実体成長用の穿孔を設けることができるものであれば、特に限定されないが、特に望ましい形状としては、両端にガセット折込を有し、合成高分子フィルムからなるチューブの一端を融着してなる形状のものが好ましく、袋の培養基と接触しない部分に通気用穿孔を設け、該穿孔に空気を通過し、微生物を通過させない微多孔性フィルムからなる通気フィルムを装着し、かつ、袋の通気フィルムを装着した部分から下の培養基と接触する部分に原基形成用及び子実体成長用の穿孔を設け、該穿孔を覆うように袋とは異なる材質の覆い部材を融着した構造のものを挙げることができる。該袋の形状はガセット折込みをし、底部を融着したものであるが、ガセット折込み袋は内容物を充填した場合、ほぼ直方体形状を保つことができるため、その後の管理に適している。また、通気フィルムを貼着する通気用の穿孔位置は袋の上部で、培養基と接触せず、しかも雑菌の混入を避けるために袋口を折り曲げたときに折込まれない位置に形成される。
【0024】
本発明のきのこ栽培用の培養容器又は培養袋の形成に用いられる材質としては、基本的にはプラスチック材料が用いられる。ここで、本発明の培養容器又は培養袋の形成に用いられる上記各種の付帯物や融着部は、すべて125℃、2〜5時間程度の高温加圧滅菌を行う必要があり、したがって、その材質としては該高温加圧滅菌に耐えるものでなければならない。そのような性質を有するプラスチック材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、フッ素樹脂フィルム、多層構造のOTPフィルム(日本製紙社)、三層(TPX層・接着層・ポリプロピレン層)フィルム(日本製紙社)等を使用することができる。また、資源の有効活用の観点から、飲料等で用いられている使用済みのペットボトル(ポリエチレンテレフタレート製)を加工して使用することもできる。このうち培養袋はポリプロピレンが特に好ましく、通気用フィルムの素材としてポリプロピレンが特に好ましい。更に、原基形成用及び子実体成長用の穿孔部の開口部の覆い部材の素材としてポリエチレンが好ましく、低密度ポリエチレンが特に好ましい。通気フィルムや原基形成用及び子実体成長用の穿孔部の開口部の覆い部材の素材については後で詳述する。ここでいう低密度とは、製造方法として高圧法(ラジカル重合)で製造されたものを指す。
【0025】
本発明のきのこ栽培用培養容器又は培養袋には、培養容器又は培養袋の培養基と接触しない部分に、微生物を通過させない通気フィルムで構成される通気用穿孔部が設けられる。該微生物を通過させない通気フィルムとしては、微多孔性フィルムからなる素材を用いることができる。該通気フィルムは、通気用の穿孔を覆うように、空気を通過し微生物を通過させない通気フィルムを融着する。この通気フィルムは微生物の通過を完全に遮断しなくても、現実に栽培している菌糸の発育に悪影響を与えない程度に遮断すれば本発明の効果を有する。通気フィルムは上記の条件を満たし、滅菌に耐え、袋素材と気密に融着され剥がれ難い材質であるポリプロピレン、ポリエチレン等の合成高分子製のものであれば良い。
【0026】
一般的には微多孔性フィルムと呼ばれる市販のフィルムが使用できる。例えば、デュポン社の「タイベック」、三井化学社の「シンテックスMB」等を用いることができる。通気用穿孔の大きさは、確実なガス交換の達成と、菌床の乾燥を防ぐという観点から、直径10〜90mmが好ましく、20〜40mmがより好ましい。また、通気用穿孔の数は何個でも構わないが、本発明で用いられる直径(例えば、直径10〜90mm)を有する場合であれば、好ましくは2個以下が容器作成に係わる作業性の面からもよく、更に、菌糸の成長及び子実体の形成に好適な通気環境を確保するという観点からは、より好ましくは1個である。
【0027】
本発明のきのこ栽培用の培養容器又は培養袋は、培養基と接触する部分に、原基形成用及び子実体成長用の穿孔が設けられる。該原基形成用及び子実体成長用の穿孔は、培養基全体に菌糸が蔓延した段階、又はその後の低温熟成を完了した段階で、剥離することが可能な覆い部材によって覆われる。好ましくは、原基形成用及び子実体成長用の穿孔は、この穿孔を覆うように、剥離用の覆い部材を融着する。覆い部材は滅菌に耐え、袋素材と気密に融着され、かつ、培養基全体に菌糸が蔓延した段階、又はその後の低温熟成を完了した段階の剥離時に手で容易に剥離可能となるように融着したものである。原基形成用及び子実体成長用の穿孔位置は袋の下部(培養基と接触する容器又は袋の部分の側面部)で、培養基を充填し直方体とした場合の底部を避け、かつ、培養基と接触する位置である。
【0028】
一般には、穿孔の中心位置で表現して栽培袋の底融着部から100〜250mmの位置である。直方体底部に剥離用の覆い部材を設定するのを避ける理由として、培養基充填時や培養室移動作業中に誤って剥離用の覆い部材が剥がれるのを防ぐことと、側面に設定する方が原基形成上、栽培管理上、好ましいことがあげられる。また、原基形成用及び子実体成長用の穿孔の大きさは、形成する原基の数を抑制し、子実体成長時に子実体下部の太さを確保するという観点から、直径20〜90mmが好ましく、30〜50mmがより好ましい。更に、原基形成用及び子実体成長用の穿孔の数は何個でも構わないが、例えば、直径20〜90mmを有する場合であれば、好ましくは2個以下が、容器作成や覆い部材の剥離に係わる作業性の面から好ましく、更に、1株の子実体とすることにより、より大きく育てられる結果、収率が最も良いという観点から、より好ましくは1個である。
【0029】
剥離用の覆い部材としては、容易に袋から剥離できることが望ましいため、培養容器や培養袋で使用している材質とは異なるものが好ましい。袋で使用している材質と同じ材質で融着した場合、融着部分が強固に接着するために手での剥離が困難になる。例えば、培養容器や培養袋をポリプロピレンで形成した場合に、該材質と同じ素材であるポリプロピレンフィルムを融着した場合、融着部分が強固に接着するために手での剥離が困難になる。一般的にはポリプロピレン以外の合成高分子フィルム、好ましくは高密度ポリエチレン系フィルム(例:市販の「出光高密度ポリエチレンフィルム;出光石油化学社製」)または低密度ポリエチレン系フィルム(例:市販の「出光低密度ポリエチレンフィルム;出光石油化学社製」)、より好ましくは低密度ポリエチレン系フィルムが使用できる。ここでいう高密度とは、製造方法として中圧法と低圧法(イオン重合)で製造されたものを指す。
【0030】
本発明のきのこ栽培用の培養容器又は培養袋を用いたきのこの栽培の対象となるきのことしては、この栽培法に適合する全てのきのこを対象として挙げることができるが、単一の原基を子実体まで成長させることが好ましいきのこが収量上有利である理由から、ヒダナシタケ目に属するきのこの栽培に用いることが好ましい。特に好ましいきのこの栽培例として、マイタケやブナハリタケの菌床人工栽培を挙げることができる。
【0031】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0032】
[実施例1]
図1は本発明の斜視図である。1は栽培袋(縦×横=450×200mm)、2はガセット折込み部(折込み部分の長さ=60mm)、3は袋に設けた通気用穿孔(円形で直径35mm)、この穿孔を確実に覆い得る大きさのデュポン社製の「タイベック」4(縦×横=60×60mm)を被せ、周囲を完全に融着した。図2の5は通気フィルムの融着部である。同6は袋に設けた原基形成用及び子実体成長用の穿孔、この穿孔を確実に覆い得る大きさの覆い部材7を被せ、200〜250℃で0.8〜1.2秒間熱を加え、長時間の高圧滅菌に耐え、かつ、手で容易に剥離できる強度に融着した。図3の8は覆い部材の融着部である。本実施例ではポリプロピレン系の袋(イセ化成工業社製の「ハイデンインフレーションフィルム」)を用い、ガセット折りして底9を融着し栽培袋1とした。
【0033】
通気フィルム4は微生物を遮断し、空気を自由に通過させる微多孔性フィルムである。覆い部材7は本実施例では高密度ポリプロピレン系フィルムを使用した。また、通気用穿孔の位置として培養基と接触せず、しかも雑菌の混入を避けるために袋口を折り曲げたときに折込まれない位置、すなわち、穿孔の中心位置で表現して栽培袋の底融着部から310mmの位置であり、一方、原基形成用及び子実体成長用の穿孔位置は袋のより下部で、培養基を充填し直方体とした場合の底部を避け、かつ、培養基と接触する位置、すなわち、穿孔の中心位置で表現して栽培袋の底融着部から上部140mmの位置である。原基形成用及び子実体成長用の穿孔の形は円形とし、大きさは直径40mmとした。
【0034】
ブナハリタケの栽培には、培養基(広葉樹オガクズ700g、乾燥オカラ85g、乾燥ビール粕85g、水道水1630gを混合したもの)を栽培袋の底融着部から上部220〜240mmの位置まで袋に充填することで培地詰め作業を行い、120℃で50分滅菌(加圧殺菌)し12個の培地を作成した。放冷した滅菌袋内の培養基にブナハリタケBNH−3株(FERM BP−6697としてつくばの特許生物寄託センターに国際寄託されている。特開2000−300066号公報)の種菌を一袋あたり約2g接種し、口を三重に折り曲げた後テープで閉じて、温度24℃、湿度70%、暗所の室内で60日間培養し、培養基全体に菌糸が蔓延した状態で、温度14℃、湿度90%、連続200ルクスの室内に移して20日間低温熟成させた段階で、に覆い部材7を手で剥離した。菌床12個の剥離を行う作業は約1分であり、穿孔の形、大きさ、場所が全て同一の原基形成用及び子実体成長用の穿孔を極めて短時間で容易に形成することが可能であったうえ、菌糸層面に傷をつけないように原基形成用及び子実体成長用の開口部を形成することができた。覆い部材の剥離後、平均3.0日で原基形成用及び子実体成長用の穿孔から原基が形成し、そのまま、温度14℃、湿度90%、連続200ルクスの室内で栽培を続けたところ、原基形成から平均13.7日後に1株のブナハリタケ子実体に成長した。得られた子実体は平均556.4g/培地で栽培に要した総栽培日数は平均96.7日であった(n=12)。
【0035】
[比較例1]
図1に示すきのこ栽培用培養袋(実施例1記載の栽培袋1)において、6の原基形成用及び子実体成長用の穿孔と覆い部材7のない栽培袋を使用した。きのこを栽培するにあたっては、原基形成用及び子実体成長用の穿孔を切断具を用いて形成する以外は実施例1と同条件とした。原基形成用及び子実体成長用の穿孔は図1の培養袋に示す6と同一の形、大きさ、場所とした。菌床12個の袋の原基形成用及び子実体成長用の開口部の形成を行う作業は約60分であり、菌糸層面に傷をつけないように原基形成用及び子実体成長用の開口部を形成するのは困難であった。原基形成用及び子実体成長用の穿孔形成後、平均4.7日で原基形成用及び子実体成長用の穿孔から原基が形成されたが、菌糸層面に傷がついたもの(菌床12個中菌床4個分)は原基形成が著しく遅延した。原基形成後はそのまま、温度14℃、湿度90%、連続200ルクスの室内で栽培を続けたところ、原基形成から平均13.9日後に1株のブナハリタケ子実体に成長した。得られた子実体は平均543.2g/培地で栽培に要した総栽培日数は平均98.6日であった(n=12)。
【0036】
[比較例2]
原基形成用及び子実体成長用の穿孔を菌床底面の中央部に設定する以外は比較例1と同条件とした。菌床12個の袋の原基形成用及び子実体成長用の開口部の形成を行う作業は約60分であり、菌糸層面に傷をつけないように原基形成用及び子実体成長用の開口部を形成するのは困難であった。原基形成用及び子実体成長用の穿孔形成後、平均7.8日で原基形成用及び子実体成長用の穿孔から原基が形成したが、菌糸層面に傷がついたもの(菌床12個中菌床8個分)は原基形成が著しく遅延した。原基形成後はそのまま、温度14℃、湿度90%、連続200ルクスの室内で栽培を続けたところ、原基形成から平均13.7日後に1株のブナハリタケ子実体に成長した。得られた子実体は平均467.3g/培地で栽培に要した総栽培日数は平均101.5日であった(n=12)。
【0037】
[比較例3]
原基形成用及び子実体成長用の穿孔の大きさを直径100mmの円形にする以外は比較例1と同条件とした。菌床12個の袋の原基形成用及び子実体成長用の開口部の形成を行う作業は約90分であり、菌糸層面に傷をつけないように原基形成用及び子実体成長用の開口部を形成するのは困難であった。原基形成用及び子実体成長用の穿孔形成後平均5.3日で原基形成用及び子実体成長用の穿孔から原基が形成したが、原基が複数個形成し、菌糸層面に傷がついたもの(菌床12個中菌床5個分)は原基形成が著しく遅延した。原基形成後はそのまま、温度14℃、湿度90%、連続200ルクスの室内で栽培を続けたところ、原基形成から平均13.7日後に多数の小さなブナハリタケ子実体にしか成長しなかった。得られた子実体は平均198.3g/培地で栽培に要した総栽培日数は平均101.3日であった(n=12)。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例における、本発明のきのこ栽培用培養袋の斜視図である。
【図2】本発明のきのこ栽培用培養袋の通気用穿孔とこの穿孔を覆うように融着した通気フィルムの関係を示す図である。
【図3】本発明のきのこ栽培用培養袋の原基形成用及び子実体成長用の穿孔とこの穿孔を覆うように融着した覆い部材の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 栽培袋
2 ガゼット折込み部
3 通気用穿孔
4 通気フィルム
5 通気フィルム融着部
6 原基形成用及び子実体成長用の穿孔
7 覆い部材
8 覆い部材融着部
9 栽培袋融着部

【出願人】 【識別番号】000253503
【氏名又は名称】麒麟麦酒株式会社
【住所又は居所】東京都中央区新川二丁目10番1号
【出願日】 平成16年4月28日(2004.4.28)
【代理人】 【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀

【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次

【識別番号】100118957
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 晴子

【公開番号】 特開2005−312332(P2005−312332A)
【公開日】 平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願番号】 特願2004−132543(P2004−132543)