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【発明の名称】 樹木の樹体ジョイント仕立て法
【発明者】 【氏名】柴田 健一郎

【氏名】川嶋 幸喜

【要約】 【課題】果樹においては早期に成園化と多収穫可能な、また植木においては垣根形成や人工的な樹形形成が容易な仕立て法の開発を課題とする。

【解決手段】樹木の主枝先端部と隣接樹の主枝基部を接ぎ木するか又は隣接樹間の横枝を接ぎ木することにより樹木を連結することが有効であることを見出し、本発明を完成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木の主枝先端部と隣接樹の主枝基部を接ぎ木するか又は隣接樹間の横枝を接ぎ木することにより樹木を連結することを特徴とする樹木の仕立て法。
【請求項2】
樹木が植木又は果樹であることを特徴とする請求項1に記載の樹木の仕立て法。
【請求項3】
植木がサクラ、ハナモモ、サルスベリ、ムクゲ又はカエデであることを特徴とする請求項2に記載の樹木の仕立て法。
【請求項4】
果樹が梨、梅又は柿であることを特徴とする請求項2に記載の樹木の仕立て法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木を連結させる樹体ジョイント仕立て法に関するもので、果樹であれば連続的に接ぎ木により連結することで、早期に樹体の骨格を完成させ、早期多収が可能であり、また植木を連続的に接ぎ木により連結して生垣等に利用することで、容易に垣根を形成できる樹木の仕立て法の開発に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹木を仕立てるには、個々の樹木を整枝、剪定等により行って、それを単独あるいは連接させて植栽することが通常であった。しかし、特殊な植物ではその用途に即した仕立てを行っている。
【0003】
例えば、梨の栽培には風害回避や果実を大きくする目的で3〜4本の主枝を棚に固定しているが、仕立て法には大別して3通りある。
【0004】
幹を棚面近くまで高くし、そこで水平に主枝を分岐するのが平棚仕立てで、関東式と呼ばれている。一方、60cm内外の高さのところから主枝を分岐させて、それを斜めに棚へ持っていくのが盃状形仕立てであり、地形の関係と、棚材料を多少でも節約しようとして生まれたものといわれ、関西式とも呼ばれる。もう一つは折衷仕立てでこの両者の中間的なものである。
【0005】
しかしながら、これらの3〜4本主枝仕立ては、初期収量が低いことに加え、亜主枝、側枝の配置が複雑であるため、省力的で早期成園化を図った仕立て法として、2本主枝仕立てが開発され、一部利用されてはいる。しかし、これもバランスのとれた樹勢配分が難しく、基部側枝の強大化、主枝先端部の樹勢低下、側枝発生不良等が問題となり、普及が進んでいない。
【0006】
また、特に近年ナシ産地では「幸水」、「豊水」等主要品種の高樹齢化により、生産性が低下している。今後ナシ産地の活性化を図るには、急速な若返り更新が必要であり、大苗育成による成園化促進等の取り組みがなされているものの、成園化まで10年近くを要し、育苗圃場確保の難しさ、生産者の高齢化等により普及導入例が少なく、現場では簡易な早期成園化技術が求められている。
【0007】
更に、果樹の樹体融合栽培法として、落葉果樹の異なる品種の苗を複数本ねじり合わせて栽培することにより、ベンジャミン様に仕立てることは既に知られている(特開平07−115845号公報、特許文献1)。しかし、この栽培方法は、組み合わせた各品種の開花の時期をほぼ同時とさせ、結実率を高め果樹の成長を調節することを目的としたものである。
【0008】
また、特開平3−10622号公報(特許文献2)には「連接ぎ木樹木」として、丸型、角型、一連型に樹木を圧着させたり、接着剤を使用して繋ぎ合わせることが開示されている。しかし、これは単に樹木を繋ぎ合わせて変形の樹木を作ることを目的としたものにすぎない。
【0009】
この他にも、同植物又は異植物を数本纏めて上集幹部と下集幹部をそれぞれ癒着又は撚合せて灯篭植木を作ったもの(特開昭63−313402号公報、特許文献3)等があるが、いずれも鑑賞用に作られたにすぎず、その手法は大規模な仕立てには応用することはできない。
【0010】
【特許文献1】特開平07−115845号公報
【特許文献2】特開平3−10622号公報
【特許文献3】特開昭63−313402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、果樹においては早期に成園化と多収穫が可能な、また植木においては垣根形成や人工的な樹形形成が容易な仕立て法の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意努力した結果、樹木の主枝先端部と隣接樹の主枝基部を接ぎ木するか又は隣接樹間の横枝を接ぎ木することにより樹木を連結することが有効であることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は
(1) 樹木の主枝先端部と隣接樹の主枝基部を接ぎ木するか又は隣接樹間の横枝を接ぎ木することにより樹木を連結することを特徴とする樹木の仕立て法、
(2) 樹木が植木又は果樹であることを特徴とする(1)記載の樹木の仕立て法、
(3) 植木がサクラ、ハナモモ、サルスベリ、ムクゲ又はカエデであることを特徴とする(2)記載の樹木の仕立て法、
(4) 果樹が梨、梅又は柿であることを特徴とする(2)記載の樹木の仕立て法
に関する。
【0014】
本発明(以下、「樹体ジョイント仕立て」と称する。)の樹木の仕立て法は、主枝を一方向へ延長し、主枝先端部と隣接樹の主枝基部の接ぎ木連結や隣接樹間の横枝を接ぎ木連結し、複数樹を直線状の単純な樹形や人為的樹形にすることを特徴とするが、接ぎ木における活着率は高く、比較的容易に必要に応じた長さ、形状の骨格枝形成や自然界には存在しない人工的な樹形、耐荷、耐風強度の高い樹形を形成されることができる。
【0015】
従って、生きた樹木による柵、フェンス、オブジェや公園遊具、風害に強い街路樹等の形成を可能とする。
【0016】
更に、果樹においては、結実における無効部分である主枝先端部やふところ部(主幹周辺部)が極めて少ない特徴を発揮させることができる(図1、図2、図3)。従って収量増を可能とする。
【0017】
本発明の接ぎ木による連結は、慣行法である穂木(切断された組織)を台木に接ぎ木するものと異なり、生体同士の接ぎ木であるため、極めて容易に活着することができることも特徴である。
【0018】
植木及び果樹の樹体ジョイントの活着率を測定したところ、表1のようになった。
【0019】
【表1】


【0020】
なお、ジョイント数は樹数より1つ少なくなり、活着率はジョイント数の内の活着した割合を示す。
表1から分かるように、活着率はほぼ100%であり、「樹体ジョイント仕立て」の成功率の高さを表している。
【0021】
連結の方法としては、腹接ぎ(片面を削った主枝先端部を、コの字型に樹皮を剥いだ隣接樹の主枝基部へ挿し入れ、接ぎ木テープを巻き密着させる。)、寄接ぎ(片面を削った主枝先端部を、樹皮を削り取った隣接樹の主枝基部へ寄せ合わせ、接ぎ木テープを巻き密着させる。)等がある。
【0022】
本発明を適用可能な植木としては、サクラ、ハナモモ、サルスベリ、ムクゲ、カエデ等のさまざまな樹種が挙げられる。また果樹類としては、梨、ブドウ、桜桃、リンゴ、梅、桃、柿等が挙げられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、果樹の早期成園化、果樹の早期多収穫を可能ならしめ、また樹木による垣根や公園における遊具あるいはオブジェを容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明をより具体的に説明するために、実施例を示すがこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
図1、図2に示すようなやり方で、ニホンナシ「幸水」の主枝を一方向へ延長し、先端部を隣接樹の主幹肩部へ接ぎ木により連結し、複数樹を直線状の単純な樹形にした。
【0026】
植栽間隔は株間2m、列間4mで、10a当り125本の苗を植えた。
接ぎ木は、2年生苗定植後2年又は3年目(樹齢4年又は5年)に腹接ぎを実施した。
【0027】
この「樹体ジョイント仕立て」が通常の2本主枝と収量がどのように異なるかを示したものが図4である。これをみると樹齢5〜8年までは、「樹体ジョイント仕立て」は2本主枝に比し20〜76%多く収穫されることがわかる。
【0028】
新梢の生育についてみてみると、2本主枝仕立てでは先端部へ向かうほど急激に総新梢長(長さ15cm以上の新梢の長さ合計)が減少し、樹勢が低下するのに対し、「樹体ジョイント仕立て」では連結部(150〜200cm)まで総新梢長が長く、樹勢が維持されている(図5)。このことにより、先端連結部周辺の枝にも十分果実を実らせることができ、収量増が達成される。
【0029】
なお、図5において200cm以上については「樹体ジョイント仕立て」の総新梢長が記入されていないが、「樹体ジョイント仕立て」は200cm近辺で隣接樹に連結させるため、これ以降は隣接樹の主枝となり、同様の新梢発生傾向が繰り返され続いていくことになる。
【0030】
果実品質比較を行ったところ、「樹体ジョイント仕立て」によるものと2本主枝仕立てによるものとで、1個の果実重量及び果実糖度で有意差が認められない(表2)。すなわち、「樹枝ジョイント仕立て」によって、2本主枝仕立てのものと品質同一のものが数量多く収穫できることを証明している。
【0031】
【表2】


【0032】
更に、2本主枝仕立ての欠点である、主幹から遠い主枝先端部の側枝が弱くなり、更新用の枝が確保できなくなる現象は、「樹体ジョイント仕立て」では認められない。すなわち、「樹体ジョイント仕立て」により隣接樹を接ぎ木すると、主枝先端部の樹勢が強化され、更新用の枝を確保することができ、連年の安定生産に繋げることができる。
【実施例2】
【0033】
梅について実施例1と同様に、図1の「樹体ジョイント仕立て」を施した結果を図6、図7、図8に示す。
【0034】
2年生苗を利用して、定植時に主枝部をジョイント完成することで、早期成園化と早期収穫が可能となった。すなわち、定植翌年から主枝部周辺に開花が認められ、6月には果実が収穫できた。また、主枝部から発生した徒長枝(長さ1m以上の強い上向き枝)に短果枝(花芽が形成され果実の実る枝)が形成され、3年目からは収穫が大幅に増加することが予測できる状態となった。更に、樹高を低くする栽培方法(低樹高化栽培)は慣行栽培に比較して、収穫や防除、剪定作業等が容易になり効率化を図ることができる。
【実施例3】
【0035】
柿について、実施例1と同様に、図1の「樹体ジョイント仕立て」を施した結果を図9、図10に示す。
【0036】
この柿の場合、枝の先端どうしをジョイントするもので、このようなジョイント方法で樹勢の均一化を図り、花芽の着生を安定化させることが出来た。
【実施例4】
【0037】
ハナモモについて、実施例1と同様に、図1の「樹体ジョイント仕立て」を施した結果を図11に示す。これは先端どうしのジョイントと横どうしのジョイントにより東屋風のオブジェをこしらえたものである。先端の連結は寄接ぎにより行った。
【0038】
また、図12のように梨をジョイントして鉄棒状に仕立て公園等における遊具としても利用することが可能である。
【実施例5】
【0039】
サルスベリ、トウカエデ、ヤマザクラ、ムクゲについてそれぞれ「樹体ジョイント仕立て」を施して柵や垣根を作成してみた。その結果をサルスベリについては図13、図14、トウカエデについては図15、図16、ヤマザクラについては図17、図18、ムクゲについては図19、図20にそれぞれ示す。
【0040】
サルスベリの樹体ジョイントは枝に柔軟性があることから曲線状の柵の形成することが出来る。生育の旺盛なトウカエデの場合、長さ3mの苗木を利用することで早期に低コストで生きた樹木による柵を形成することができる。また柵部分から発生する新梢の若葉は赤から黄緑の葉色を呈し鑑賞性も高い。
【0041】
東北南部から九州の温暖地帯に分布し、造園木や街路樹として広く植栽され身近な樹でもあるヤマザクラのジョイント柵は、新梢の発生は少ないものの、ジョイント活着率は100%と高く、容易に生きた樹木によるフェンスを作成することができる。
【0042】
ムクゲの場合、独立樹では生育旺盛で直立し、横への株張りが少なく、生垣への利用は少ないが、ジョイント仕立てを利用することで、定植1年目から低コストでコンパクトな生垣が形成され、花も長期間楽しむことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】「樹体ジョイント仕立て」の概略を示す図。
【図2】「樹体ジョイント仕立て」の一例を示す図。
【図3】連結部分を拡大して示した図。
【図4】ニホンナシ「幸水」の仕立て法別収量推移を示す図。
【図5】ニホンナシ「幸水」の仕立て法の違いによる主幹からの距離別総新梢長を示す図。
【図6】梅のジョイント部の活着状況を示す図。
【図7】梅の樹体ジョイントによる低樹高化栽培を示す図。
【図8】梅の樹体ジョイントを上部から見た図。
【図9】柿の先端部どうしのジョイントを示す図。
【図10】柿の樹体ジョイントにより垣根状に栽培したものを示す図。
【図11】ハナモモを東屋風のオブジェにジョイントしたものを示す図。
【図12】梨を鉄棒状にジョイントしたものを示す図。
【図13】サルスベリのジョイント部を示す図。
【図14】サルスベリの樹体ジョイントによる柵の形成を示す図。
【図15】トウカエデのジョイント部を示す図。
【図16】トウカエデの樹体ジョイントによる柵の形成を示す図。
【図17】ヤマザクラのジョイント部を示す図。
【図18】ヤマザクラの樹体ジョイントによる柵の形成を示す図。
【図19】ムクゲのジョイント部を示す図。
【図20】ムクゲの樹体ジョイントによる柵の形成を示す図。
【出願人】 【識別番号】000192903
【氏名又は名称】神奈川県
【出願日】 平成17年3月18日(2005.3.18)
【代理人】 【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔

【識別番号】100096183
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貞次

【識別番号】100107168
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 徹夫

【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節

【公開番号】 特開2005−304495(P2005−304495A)
【公開日】 平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願番号】 特願2005−79029(P2005−79029)