| 【発明の名称】 |
露地水耕栽培方法の改良 |
| 【発明者】 |
【氏名】矢野原 良民
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| 【要約】 |
【課題】露地水耕栽培において、夏期の熱暑から植物を保護することを課題とする。
【解決手段】 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 栽培槽内に入れた培養液上に、植物を植えた定植パネルを支持すると共に、上記植物の根を上記培養液に浸した植物水耕栽培において、 上記培養液の液温を約15゜C〜25゜Cに冷却すると共に、該培養液の濃度を植物の細胞液の濃度よりやや高い濃度から濃度零に近い濃度の間に調整し、 夏期熱暑時に、上記植物を上記培養液中に短時間浸漬して冷却し、ついで植物を培養液から引き上げて植物に付着した水分の気化熱により冷却し、この短時間浸漬冷却と引き上げ冷却を所要回数繰返す、 露地水耕栽培における熱暑被害防止方法。 【請求項2】 栽培槽内に入れた培養液上に、植物を植えた定植パネルを支持すると共に、上記植物の根を上記培養液に浸した植物水耕栽培において、 上記培養液の濃度を、植物の細胞液の濃度から濃度零に近い濃度の間に調整し、 強風時に、上記植物を上記培養液中に、強風継続の間、浸漬して強風を回避させる、 露地水耕栽培における強風被害防止方法。 【請求項3】 栽培槽内に入れた培養液上に、植物を植えた定植パネルを支持すると共に植物の根を上記培養液に浸した植物水耕栽培において、 上記培養液の濃度を、植物の細胞液の濃度から濃度零に近い濃度の間に調整し、 酸性雨時に、上記植物を上記培養液中に所要時間浸漬して植物に付着した酸性雨を洗い流し、この所要時間浸漬洗浄を、酸性雨継続の間、短時間間隔をあけて繰返し、 雨後、上記培養液のPHを正常に調整する、 露地水耕栽培における酸性雨被害防止方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本願発明は、露地水耕栽培方法において、露地栽培なるが故に植物が被る夏期の熱暑被害、強風被害及び酸性雨被害を防止するための改良に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、露地水耕栽培において、夏期に長時間の熱暑により、植物の光合成が十分に行われなくなるため、葉、茎等がしおれ、生長が著しく遅れる被害を被ることとなり、その被害対策として、寒冷紗等の熱遮へいスクリーンを栽培槽の上に張設する方法を採っているが、強風時に遮へいスクリーンに損傷を受け、特に台風時には遮へいスクリーンは吹き飛ばされ、スクリーン支持枠は倒壊する欠点があった。 【0003】 又、強風によっては、上記遮へいスクリーンの損傷、倒壊のほか、植物の葉が吹きちぎられたり、茎が折れるばかりでなく、植物全体が定植パネルから離脱する被害を受け、その対策としては、ほとんど有効な手段が採られていないのが実状である。 【0004】 さらに、酸性雨によっては、植物の葉にシミができたり、孔があいて商品価値を低下させ、遂には全体が枯死状態に至る被害があり、その対策として、防水シートを栽培槽の上に張設する手段を採っているが、降雨ごとに防水シートを装脱する煩雑な作業が必要となる難点があった。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本願第1発明は、露地水耕栽培において、夏期の熱暑被害から植物を有効に保護することを課題とし、 本願第2発明は、強風被害から植物を有効に保護することを課題とし、 本願第3発明は、酸性雨の被害から植物を有効に保護することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 上記課題を解決するため、本発明者は、第1、第2及び第3の各発明に共通する基本的手段として、植物を栽培槽内の培養液中に浸漬することに着想したのである。 【0007】 そこで、まず植物を培養液中に浸漬した場合の植物の安全性について検討する。 一般に、植物を水溶液中に浸漬したとき、植物生理学上は、浸漬中植物の細胞が生き続けていさえすれば、浸漬後水溶液から取り出した植物は何の後遺症も残さず健全に成長する。その場合浸漬中の植物細胞の生死を左右するものは、植物の細胞液と水溶液との間の浸透圧の高低、換言すれば浸透圧を決める濃度の高低であることが知られている。そこで、両者を対比して検討してみる。なお、植物の細胞液の浸透圧は、植物の種類によって異なるが、常温で5〜10atm、濃度は0.2〜0.8M(モル濃度)である。 【0008】 (1)植物を該植物細胞液と等濃度の水溶液に浸漬した場合。 植物細胞への水の出入りはなく、細胞は形を維持したまま生存し続ける。 【0009】 (2)植物を該細胞液より低濃度の水溶液に浸漬した場合。 細胞は半透性の細胞膜を通して外側の水溶液から水を吸収して原形質を膨らませていく。ところで、植物細胞は、上記細胞膜の外側に全透性の弾性組織からなる細胞壁を有するため、上記の膨らんだ原形質が上記細胞壁に押し広げようとする膨圧を及ぼし、その反作用として細胞壁から元に戻ろうとする壁圧を原形質に受ける。細胞が膨らむにつれ細胞内の濃度は低下し、その浸透圧は減って行くと共に、上記膨圧が高まっていき、それと大きさの等しい壁圧が細胞内の浸透圧と等しくなったとき細胞の外側からの吸水を自動的に停止し、そして膨らんだ緊張状態で生存し続ける。 【0010】 (3)植物を濃度零の水溶液(すなわち水)に浸漬した場合。 上記(2)と同様である。 【0011】 (4)植物を該細胞液より高濃度の水溶液に浸漬した場合。 細胞内の水が外へ浸出して原形質が収縮していき、遂には原形質分離を起す。ここで、原形質分離を起した細胞は、水溶液の濃度が植物細胞液よりわずか高い程度であれば、再び水に浸すと原形質復帰を行うが、水溶液の濃度がそれよりも高いときは、多くの植物は原形質復帰が不可能となって死滅する。 この場合、原形質復帰を可能にする水溶液の濃度は、実験によれば、植物の種類によって異なるが、植物細胞液の濃度より約0.1〜0.3M高い濃度までである。 【0012】 上記検討をふまえて、上記課題を解決するための手段として、本願第1発明は、 栽培槽内に入れた培養液上に、植物を植えた定植パネルを支持すると共に、上記植物の根を上記培養液に浸した植物水耕栽培において、 上記培養液の液温を約15゜C〜25゜Cに冷却すると共に、該培養液の濃度を、植物の細胞液の濃度よりやや高い濃度から濃度零に近い濃度の間に調整し、 夏期熱暑時に、上記植物を上記培養液中に短時間浸漬して冷却し、ついで植物を培養液から引き上げて植物に付着した水分の気化熱により冷却し、この短時間浸漬冷却と引き上げ冷却を所要回数繰返す、 露地水耕栽培における熱暑被害防止方法を提案し、 【0013】 本願第2発明は、 栽培槽内に入れた培養液上に、植物を植えた定植パネルを支持すると共に、上記植物の根を上記培養液に浸した植物水耕栽培において、 上記培養液の濃度を、植物の細胞液の濃度から濃度零に近い濃度の間に調整し、 強風時に、上記植物を上記培養液中に、強風継続の間、浸漬して強風を回避させる、 露地水耕栽培における強風被害防止方法を提案し、 【0014】 本願第3発明は、 栽培槽内に入れた培養液上に、植物を植えた定植パネルを支持すると共に、植物の根を上記培養液に浸した植物水耕栽培において、 上記培養液の濃度を、植物の細胞液の濃度から濃度零に近い濃度の間に調整し、 酸性雨時に、上記植物を上記培養液中に所要時間浸漬して植物に付着した酸性雨を洗い流し、この所要時間浸漬洗浄を、酸性雨継続の間、短時間間隔をあけて繰返し、 雨後、上記培養液のPHを正常に調整する、 露地水耕栽培における酸性雨被害防止方法を提案する。 【発明の効果】 【0015】 本願第1発明によれば、真夏の熱暑中に植物を約15゜C〜25゜Cの培養液中に浸漬して冷却し、ついで引き上げて気化熱により冷却し、これを繰返すことにより植物を冷涼に保ち、それにより熱暑による被害を防止し、健全な生長を維持することができると共に、夏場にホウレンソウ、レタス等の冬野菜の栽培をも可能にするのである。 【0016】 本願第2発明によれば、強風時に植物を培養液中に浸漬して、強風の影響の全くない平穏状態に保つことができ、それにより強風特に台風時の被害を十分に防止することができるのである。 【0017】 本願第3発明によれば、酸性雨時に植物を培養液中に浸漬して植物に付着した酸性雨を洗い流すことを繰返すことにより、酸性雨被害を防止することができるのである。 【発明を実施するための最良の形態】 【0018】 本願第1発明において、上記「短時間浸漬」は、培養液の濃度を植物細胞液濃度より0.1〜0.3M高い濃度に調整したときは、原形質復帰が可能であっても、植物の安全のため、浸漬時間を3〜5分、間隔を10〜15分とするのが望ましい。しかし培養液の濃度を植物細胞液の濃度以下に調整したときは、浸漬時間を10〜20分と自由に選択できる。 又、培養液の低温調整には、栽培槽内に冷却パイプを配管し、該パイプに地下水、冷却機からの冷却水等を通して冷却を行う方法が好ましい。 【0019】 本願第2発明において、植物を「強風継続の間浸漬し」とは、2〜3時間強風が続く間浸漬し続けることは勿論、1日〜2日間強風が続く間浸漬し続けることもある。 【0020】 本願第3発明において、上記浸漬後次の浸漬までの間の「短時間間隔」とは、酸性雨の酸性度が強い場合は、植物が被害を受けないよう極く短時間間隔約1〜5分であり、酸性度が弱い場合は約5〜10分が好ましい。 又、降った雨が常に酸性雨とは限らないので、まず降雨があったときは、PHメーター、リトマス試験紙等により雨の酸性度を検知し、PH5.0以下のとき直ちに浸漬を開始するとよい。 雨後の「培養液のPH調整」は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のPH調整剤を添加して植物の栽培に好ましいPH5.5〜6.5(正常値)に調整する。 【実施例】 【0021】 (第1発明の実施例1) 定植パネルにコマツナが植えてあり、その細胞液の濃度は0.3Mである。 培養液に含まれる肥料の基本組成及びその濃度は、硝酸カルシウム1.77mM(ミリモル)、硝酸カリ2.37mM、硫酸マグネシウム1.25mM、リン酸二水素アンモニウム0.435mM、合計5.825mM(=0.005825M)で、これにEDTA鉄、硫酸銅、硫酸亜鉛、モリブデン酸アンモニウムを微量づつ添加し、さらに有機肥料を適量加えて培養液全体の濃度を約11.7mM(=0.0117M)とコマツナの細胞液濃度より低く調整してある。 【0022】 栽培槽内に配管した冷却パイプに地下水を通して培養液を23゜Cに冷却した。気温36゜C。上記コマツナを植えた定植パネルを適宜手段により培養液中に約15分間浸漬して該コマツナを23゜Cに冷却し、次に、上記パネルを培養液中から引き上げて元の水耕栽培の状態に戻し、そこでコマツナに付着した水分の気化熱により約20分間の冷却を行った。この15分間の浸漬冷却と20分間の気化熱冷却とを36゜Cの熱暑時間中(午後2時から同4時)繰返し行った。 【0023】 上記15分の浸漬によりコマツナ細胞が培養液から水分を吸収して原形質を膨らませていき、細胞が膨らむにつれ細胞内の濃度及び浸透圧が低下すると共に膨圧が高まっていき、該膨圧と大きさの等しい壁圧と細胞内浸透圧が等しくなったとき、水分の吸収を停止し、その膨らんだ状態で細胞は生き続ける。培養液からの引き上げ後の20分間に、膨らんだ細胞は徐々に正常に戻る。 【0024】 上記浸漬冷却と気化熱冷却の繰返しによりコマツナは熱暑被害を受けることはなかった。 【0025】 (第1発明の実施例2) 実施例1と同様コマツナを植え、培養液の濃度は、大量の肥料をさらに追加して0.4Mと、コマツナの細胞液の濃度0.3Mを超えるものとしたため、植物の安全を重視して浸漬時間をさらに短時間とした例である。 【0026】 気温36゜C、培養液22゜C。定植パネルを培養液中に約5分浸漬して冷却し、次に上記パネルを培養液から引き上げて約20分の気化熱冷却を行った。この5分間の浸漬冷却と20分間の気化熱冷却を熱暑時間中繰返し行った。 【0027】 上記短時間浸漬時に、植物細胞内の水分が外部に浸出し、原形質が収縮して遂に初期の原形質分離が起きる。しかし培養液の濃度が細胞液の濃度よりわずか(0.1M)高いだけに止め、しかし浸漬時間を5分と短縮したことにより、上記原形質分離がそれ以上に進むことはない。浸漬後元の水耕栽培に戻した20分の間に、コマツナは根から吸収した水分により原形質分離を正常に復帰させる。 【0028】 上記浸漬冷却及び引き上げ冷却によりコマツナは熱暑被害を受けない。 【0029】 (第2発明の実施例) 定植パネルにレタスを植え、その細胞液の濃度は0.4Mである。 培養液は、上記第1発明の実施例1における基本組成及びその濃度と実質的に同一の基本組成に、EDTA鉄、硫酸銅、硫酸亜鉛、モリブデン酸アンモニウムを微量づつ添加し、全体濃度を約11.2mM(=0.0112M)と、レタスの細胞液濃度より低くした。 【0030】 気温25゜C、培養液温度18゜Cの下、台風襲来とともにレタスを植えたパネルを培養液中に浸漬し、その状態で強風が去るまで23時間継続した。 【0031】 上記の長時間浸漬により、レタス細胞が水分を吸収して原形質を膨らませていき、細胞壁圧と細胞内浸透圧が等しくなったとき、水分の吸収を停止し、その膨らんだ状態で細胞は生き続ける。レタスを培養液から引き上げ、元の水耕栽培に戻すと、細胞は徐々に正常に戻る。 【0032】 培養液中に浸漬したレタスは無風の平穏状態に保たれ、強風による被害は全く受けない。 【0033】 (第3発明の実施例1) 定植パネルにサラダナを植え、その細胞液の濃度は0.5Mである。 培養液は、上記第2発明の実施例と同一の組成で、全体濃度を約10.6mM(=0.0106M)とサラダナの細胞液濃度より低くした。 【0034】 気温27゜C、培養液温度20゜Cの下で、降雨があったときPHメーターにより雨のPHを測定したところ4.5でやや強い酸性であった。そこで、サラダナを植えた定植パネルを培養液中に10分間浸漬し、付着した酸性雨を培養液により洗い流す。この場合植物に軽く振動を加えるとよい。ついでパネルを培養液中から引き上げ5分間の間隔をおき、以後雨のPH測定を続けながら10分間浸漬と5分間間隔とを繰返す。 【0035】 通常、酸性雨は降り出し当初に最も酸性度が高く、その後低下する傾向がある。雨のPHが5.0と高くなったときは、10分間浸漬と10分間間隔に切換える。 【0036】 以後10〜20分浸漬と5〜10分間間隔を繰返し、雨のPHが約5.5になり、又はそれに近づいたら浸漬を終了する。 【0037】 雨が上がった後、培養液のPHを測定し、酸性度が高くなっている培養液にPH調整剤4%水酸化ナトリウムを添加してPH5.5〜6.5に調整する。 【0038】 上記浸漬によりサラダナに付着した酸性雨を洗い流し、又培養液中から引き上げたときは、サラダナに付着した培養液分によって降りつける酸性雨を薄めることとなり、酸性雨被害を十分に防止する。 【0039】 (第3発明の実施例2) 上記実施例1において、当初の降雨のPHを測定したところ例えば3.0と強い酸性を示したときは、サラダナを植えたパネルを培養液中に浸漬して、雨の酸性度が低下するのを待つ。1時間経過後雨のPHが4.5に高くなったら、上記実施例1におけると同様の10分間浸漬と5分間間隔との繰返し、ついで10分間浸漬と10分間間隔の繰返しを行い、雨のPHが5.5又はそれに近い値になったら浸漬を終了する。 【0040】 雨が上がった後、培養液のPHを10%炭酸ナトリウム添加によりPH5.5〜6.5に調整する。本例によっても酸性雨被害を十分に防止する。
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| 【出願人】 |
【識別番号】395021239 【氏名又は名称】株式会社生物機能工学研究所
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| 【出願日】 |
平成16年3月31日(2004.3.31) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100061619 【弁理士】 【氏名又は名称】田中 武文
【識別番号】100092945 【弁理士】 【氏名又は名称】新関 千秋
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| 【公開番号】 |
特開2005−278587(P2005−278587A) |
| 【公開日】 |
平成17年10月13日(2005.10.13) |
| 【出願番号】 |
特願2004−101711(P2004−101711) |
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