| 【発明の名称】 |
防虫ネット用マルチフィラメント |
| 【発明者】 |
【氏名】原 義智 【住所又は居所】山口県防府市鐘紡町4番1号 カネボウ合繊株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】紫外線劣化の少ない防虫ネット用マルチフィラメントを提供する。
【解決手段】極限粘度0.60以上のポリエステルに、有機系紫外線吸収剤をフィラメント重量に対して0.3%〜5.0%含有させた、破断強度4.0cN/dtex以上のである防虫ネット用マルチフィラメント。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 極限粘度0.60以上のポリエステルに有機系紫外線吸収剤をフィラメント重量に対して0.3%〜5.0%含有させた、破断強度4.0cN/dtex以上である防虫ネット用マルチフィラメント。 【請求項2】 紫外線吸収剤が、トリアジン系化合物であることを特徴とする請求項1記載の防虫ネット用マルチフィラメント。 【請求項3】 防虫ネット用マルチフィラメントの強キセノン型フェードメーター測定における48時間曝露後の破断強度保持率が、60%以上であることを特徴とする請求項1または2記載の防虫ネット用マルチフィラメント。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、農業用および園芸用に使用される防虫ネット用マルチフィラメントに関する。 【背景技術】 【0002】 農作物を害虫から守ることは長年の課題である。これまでの害虫対策として、農薬による殺虫、被覆資材による害虫侵入防止、忌避剤による害虫の排除などが挙げられる。中でも、農薬はここ数十年で開発が大幅に進み、農作物の害虫を激滅させることが出来るようになり、広く普及するに至った。しかし、農薬使用により収穫量は大幅に増大する反面、生態系や自然環境の破壊や、人体への悪影響などの多くの問題を引き起こした。このため、近年は環境や人体に無害な農薬が研究開発されているが、長期蓄積性や慢性毒性などについてはまだ完全には解決されていない。 【0003】 最近は、食物や健康に対する意識が高まり、無農薬の有機栽培農作物が広く求められている。そこで、従来の農薬を用いない害虫対策の一つとして、農作物をネットで覆い、害虫の飛来や侵入を防ぐ方法が広く用いられるようになってきた。ネットは、雨風などの自然環境に対する耐久性を維持するために、合成繊維を用いるのが主流である。しかし、合成繊維は太陽から放射される紫外線により劣化し、破断強度が低下するという問題点があった。 【0004】 特開平10−44273号公報、特開2000−217497号公報などでは、熱融着性繊維からなる織物交点を熱融着した防虫ネットが提案されている。熱融着することによって織物開口部の目ずれはなくなるが、実際屋外で使用する際、紫外線により強度低下し、長期使用ができないという欠点があった。特開2000−217446号公報では、熱接着性繊維からなる織編物の交点を熱接着し、かつ紫外線吸収剤を含有した防虫ネットが提案されている。しかし、糸全体に紫外線吸収剤を練込むことで、多量に添加しなくてはならず効率が悪くなるだけでなく、練込による溶融粘度低下により、糸の破断強度が低下してしまう。更に、特開平7−303426号公報には、芯鞘型繊維を用いた不織布を融着させた被覆シートが提案されている。しかし、不織布では農作物への太陽光の照射量が減り、かつ通気度が悪くなるため内部が蒸れやすくなり好ましくない。 【0005】 【特許文献1】特開平10―44273号公報 【特許文献2】特開2000−217497号公報 【特許文献3】特開2000−217446号公報 【特許文献4】特開平7−303426号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明の目的は、上記問題点を解消し、紫外線劣化の少ない防虫ネット用マルチフィラメントを簡便に提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0007】 上記課題は、極限粘度0.60以上のポリエステルに、有機系紫外線吸収剤をフィラメ ント重量に対して0.3%〜5.0%含有させた、破断強度4.0cN/dtex以上のである防虫ネット用マルチフィラメントにより解決する。 【発明の効果】 【0008】 本発明により、紡糸操業性良好で紫外線劣化の少ないポリエステルマルチフィラメントを得ることができ、破断強度が高いので耐久性に優れた、後加工も不要な防虫ネット用マルチフィラメントを提供することが可能となる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0009】 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明の防虫ネット用フィラメントは、マルチフィラメントであることが必要である。マルチフィラメントとすることによって、ソフトタッチで屈曲にも強く、作業性のよい防虫ネットを得ることができる。モノフィラメントでは、ごわつきで作業性が悪くなる上、屈曲にも弱くなる。 【0010】 マルチフィラメントは、ポリエステルであることが必要である。ポリエステルは、コストパフォーマンスに優れ、寸法安定性、耐水性が良好であり、防虫ネットに適している。用いられるポリエステルの種類としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のような芳香族ポリエステル、または、ポリエチレンサクシネート、ポリカプロラクトンのような脂肪族ポリエステルが挙げられる。中でも、PETは溶融紡糸の簡便性、製造コストなどの観点より特に好ましく用いられる。 【0011】 マルチフィラメントには、有機化合物系の紫外線吸収剤を含有させることが必要である。紫外線吸収剤は、紫外線領域の波長を吸収し、無害な熱エネルギーに変換することにより、ポリマーの物性低下を抑制する効果がある。無機系の紫外線吸収剤は、溶融紡糸にて粒子同士が凝集しやすく、均一分散が困難となるため、性能安定させることが困難となる。 【0012】 有機系の紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物などが挙げられ、数多く市販されている。一般的に有機系の紫外線吸収剤は昇華または揮発しやすいため、できるだけ耐熱性の高い紫外線吸収剤が好ましい。特に耐熱性やポリエステルとの相溶性の観点から、本発明の防虫ネット用マルチフィラメントにはトリアジン系化合物が好ましく用いられる。トリアジン系化合物の主なものとして、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]―フェノールが挙げられる。 【0013】 紫外線吸収剤はフィラメント重量に対して0.3%〜5.0%含有させることが必要であり、特に好ましくは1.0%〜3.0%である。0.3%未満であると、紫外線吸収剤の量が少なすぎて、太陽光に曝露された際ポリマー劣化が顕著となる。また、5.0%を超えると、性能が頭打ちになり紫外線吸収剤が無駄になる上、含有量が多くなりすぎてポリエステルの溶融粘度低下を引き起こし、紡糸操業性不良となる上、マルチフィラメントの破断強度が低下してしまう。 【0014】 紫外線吸収剤は、フィラメントに含有させることが必要である。後加工による含浸では、防虫ネットにした際に降雨などで脱落してしまう。含有は、練込、重合時添加などが挙げられるが、紫外線吸収剤がポリマー内にとりこまれていれば、含有方法は特に限定されない。 【0015】 ポリエステルの極限粘度は、極限粘度0.60以上が必要であり、特に好ましくは0. 64以上である。0.60未満であると、破断強度を維持できないだけでなく、溶融紡糸操業性も不良となる。また、上限は特に限定されるものではないが、溶融押出の観点から、0.80までで十分である。 【0016】 マルチフィラメントの破断強度は4.0cN/dtex以上が必要であり、特に好ましくは5.0cN/dtexである。4.0cN/dtex未満であると、マルチフィラメントを防虫ネットとした際に、外部からの衝撃に弱く、頑丈な防虫ネットを得ることができない。 【0017】 マルチフィラメントの横断面形状は異型、円形など特に限定されるものではないが、円形が好ましい。 【0018】 マルチフィラメントの繊度は特に限定されるものではないが、防虫ネットとしての利便性、耐久性の観点から、50〜100dtexが好ましい。この範囲であれば、適度な剛性で丈夫な防虫ネットが得られる。 【0019】 マルチフィラメントは、防虫ネットにして屋外で使用する際、紫外線による強度低下が少ないことが必要である。通常、半年から1年かけて屋外での曝露試験を行うが、この耐光評価を短時間で簡便に行うために、強キセノン型フェードメーターを使用して照射後の破断強度を測定する方法がある。本発明の防虫ネット用マルチフィラメントは、強キセノン型フェードメーター測定において、48時間曝露後の破断強度保持率が60%以上であることが好ましく、70%以上が特に好ましい。この範囲であると、自然曝露下においても紫外線による劣化が少ないので、耐久性のある防虫ネットを作ることができる。 【0020】 本発明の防虫ネット用マルチフィラメントは、織編物として使用することができる。長時間の自然曝露中に目ずれを起こさないようにするために、ハイメッシュの織物か、編物にすることが好ましい。 【実施例】 【0021】 以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下に述べる実施例に限定されるものではない。 【0022】 A.極限粘度の測定 極限粘度は、溶媒にフェノール/テトラクロロエタン(体積比率6/4)を用いて、20℃の恒温槽にて測定した。 【0023】 B.マルチフィラメントの破断強度の測定 破断強度は、JIS−L−1013法に準じ、試料糸長20cm、定速引張速度20cm/分の条件で求めた。 【0024】 C.防虫ネットの破裂強度の測定 破裂強度は、JIS−L−1096A法(ミューレン形法)に準じ、ネット試料15cm×15cmとして測定した。 【0025】 D.フェードメーター耐光評価 フェードメーター耐光評価は、スガ試験機株式会社製『強エネルギーキセノンフェードメーターSC700−FA』にて、ブラックパネル温度63℃、湿度50%の環境下でフィラメント試料またはネット試料を装着し、48時間照射した。その後取り出し、破断強度または破裂強度を測定した。 【0026】 E.練込PETの作製 極限粘度0.68のPETに、トリアジン系紫外線吸収剤として、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]―フェノールをPETに対し1.0重量%添加し、ベント付二軸混練機にて270℃で溶融押出して、練込PETを得た。得られたチップの極限粘度は0.64、融点は257℃であった。 【0027】 F.マルチフィラメントの作製 (E.)で得られた練込PETを用い、従来公知の芯鞘複合紡糸方法に従った。すなわち、紡糸温度290℃、紡速1000m/分にて未延伸糸を巻き上げた後、室温にて1日エージングした。その後、ホットローラー85℃、プレートヒーター温度150℃、延伸倍率3.2倍にて延伸を行い、84dtex/8フィラメントのマルチフィラメントを得た。 【0028】 G.防虫ネットの作製 (F.)記載のマルチフィラメントを経緯使いで、スルーザー型織機にて30本/2.54cm(1インチ)の平織物として防虫ネットを得た。この平織物の開口部の目開きは、約0.8mmであった。 【0029】 実施例1 (F.)記載に従ってマルチフィラメントを作製した。このマルチフィラメントの破断強度は4.22cN/dtexであった。この芯鞘型フィラメントを(D.)記載に従ってフェードメーター耐光評価を行ったところ、48時間暴露後の破断強度は3.01cN/dtexであり、破断強度保持率は71.3%であった。このマルチフィラメントを使って(G.)記載の防虫ネットを作製し、キャベツ用の防虫ネットとして使用した。なお、(C.)記載の方法に従って破裂強度を測定したところ510kPaであり、フェードメーター48時間曝露後の防虫ネットの破裂強度は367kPa、強度保持率は72%であった。このネットは、高強度マルチフィラメントであるので裂けにくく丈夫な防虫ネットとなり、紫外線劣化が少ないために6ヶ月使用でも裂けや破れがなく、耐久性良好であった。 【0030】 <紫外線吸収剤の添加有無による防虫ネット性能評価> 比較例1 極限粘度0.68のホモPETを用いた以外は、(F.)記載に従ってマルチフィラメントを作製した。この芯鞘型マルチフィラメントの破断強度は4.25cN/dtexであった。このマルチフィラメントを(D.)記載に従ってフェードメーター耐光評価を行ったところ、48時間曝露後の破断強度は1.96cN/dtexであり、破断強度保持率は46.1%であった。このマルチフィラメントを使って(G.)記載の防虫ネットを作製し、キャベツ用の防虫ネットとして使用した。なお、(C.)記載の方法に従って破裂強度を測定したところ503kPaであり、フェードメーター48時間曝露後の防虫ネットの破裂強度は241kPa、強度保持率は48%であった。このネットは、高強度であるので裂けにくく丈夫な防虫ネットになった。しかし、紫外線吸収剤が入っていなかったので、長時間自然曝露するうちに紫外線劣化が激しくなり、2ヶ月のうちに草木に引っかかるだけでも裂けや破れが生じた。従って、防虫ネットとしては使用不可であった。 【0031】 <PETの極限粘度の違いによる防虫ネット性能評価> 比較例2 極限粘度0.58のPETを使用した以外は、(E.)記載に従って練込PETを作製した。なお、得られたチップの極限粘度は0.52であった。このPETを(F.)記載に従ってマルチフィラメントを作製した。ところが、溶融粘度の低下が激しく、溶融紡糸操業性は極めて不良であった。得られたマルチフィラメントの破断強度は2.38cN/ dtexであった。このマルチフィラメントを(G.)記載に従って防虫ネットを作製し、キャベツ用の防虫ネットとして使用したが、極めて破れやすい防虫ネットとなり、使用不可であった。 【0032】 <破断強度の違いによる防虫ネット性能評価> 比較例3 延伸倍率を3.0倍とした以外は、(F.)記載に従ってマルチフィラメントを作製した。得られたマルチフィラメントの破断強度は3.92cN/dtexであった。このマルチフィラメントを(G.)記載に従って防虫ネットを作製し、キャベツ用の防虫ネットとして使用したが、極めて破れやすい防虫ネットとなり、使用不可であった。 【0033】 <紫外線吸収剤の添加量変化による防虫ネット性能評価> (F.)記載の方法に従ってマルチフィラメントを作製し、その際に表1に示すように紫外線吸収剤の添加量を種々変化させて、評価を行った。 【0034】 【表1】
【0035】 比較例4は、紫外線吸収剤の添加量が少なすぎるために、破断強度は高いものの、フェードメーター評価による破断強度保持率は低くなった。このマルチフィラメントで防虫ネットを作製し使用したところ、長時間の自然曝露により紫外線劣化が激しく、脆い防虫ネットとなったため、防虫ネット性能評価は不良(×)であった。比較例5は、紫外線吸収剤の添加量が多すぎるために、紡糸時に溶融粘度が大きく低下し、毛羽が多発し、紡糸操業性が極めて不良(×)であった。また、フェードメーター評価も頭打ちとなり、極めて紫外線吸収効率の悪いマルチフィラメントとなった。一方、本発明に準ずる実施例1〜5は、破断強度が高いので防虫ネット評価は良好であり、特に実施例1、4は、紫外線吸収剤の添加量、破断強度とも最適であるので、防虫ネットとして屋外にて使用した場合、いずれも6ヶ月以上使用しても裂けや破れがなく、優良であった。 【産業上の利用可能性】 【0036】 本発明のマルチフィラメントは、特に農業、園芸分野に使用される防虫ネット用途に適している。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000000952 【氏名又は名称】カネボウ株式会社 【住所又は居所】東京都墨田区墨田五丁目17番4号 【識別番号】596154239 【氏名又は名称】カネボウ合繊株式会社 【住所又は居所】大阪府大阪市北区梅田一丁目2番2号
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| 【出願日】 |
平成16年3月24日(2004.3.24) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2005−269962(P2005−269962A) |
| 【公開日】 |
平成17年10月6日(2005.10.6) |
| 【出願番号】 |
特願2004−86518(P2004−86518) |
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