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【発明の名称】 逆流防止機能付き用水弁
【発明者】 【氏名】小野寺 恒雄

【氏名】藤森 新作

【要約】 【課題】耕作区への用水供給量を調節できるとともに耕作区からの逆流も防止でき、しかも簡単な構造で製造コストや保守コストの低減を図れる逆流防止機能付き用水弁を提供する。

【解決手段】給水側パイプラインから給水パイプに供給される用水を水田の耕作区に供給するための用水弁であって、給水パイプに供給される用水の圧力が設定圧力より高くなったときに開弁し、前記設定圧力未満では閉弁する弁体14と、該弁体を全閉位置から全開位置までの間で該弁体の開方向への作動を規制するための開度規制手段15とを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水側パイプラインから給水パイプに供給される用水を水田の耕作区に供給するための用水弁であって、給水パイプに供給される用水の圧力が設定圧力より高くなったときに開弁し、前記設定圧力未満では閉弁する弁体と、該弁体を全閉位置から全開位置までの間で該弁体の開方向への作動を規制するための開度規制手段とを備えていることを特徴とする逆流防止機能付き用水弁。
【請求項2】
前記弁体を、全開位置又は中間開度位置で固定可能な開度固定手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の逆流防止機能付き用水弁。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、逆流防止機能付き用水弁に関し、詳しくは、給水側パイプラインから給水パイプに供給される用水を水田の各耕作区に供給するための逆流防止機能付き用水弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の圃場整備事業では、大型作業機械の効率的運用のために、従来のオープン水路ではなく、農道等に給排水用のパイプラインを埋設する形態となることが多い。給水側パイプラインから圃場内の各耕作区に用水を供給するためには、用水供給時に耕作区への用水供給量を調節できるようにするとともに、給水側パイプラインに用水が供給されていないときには、耕作区内の用水が給水側パイプラインに逆流することを防止できるようにした給水装置が用いられている。このような給水装置として、鉛直方向に立上がった給水パイプの上端開口部に設けられた弁座と、前記給水パイプの軸線方向に移動して前記弁座を開閉する弁体と、該弁体の開閉操作を行う操作部とを備えた給水弁のに逆流防止堰を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−354948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のパイプラインは、耕作区地表面よりも低い位置、例えば農道の路面から1200mm程度の位置に埋設されていることが多いため、給水装置としては、上述のように、鉛直方向に立上がった給水パイプの上端開口を開閉する弁体を有する給水弁と、該給水弁の周囲に設けた逆流防止堰とで形成することができた。すなわち、従来は、比較的簡単な構造の給水装置を用いても、用水供給量の調節や逆流の防止を図ることができた。
【0004】
しかし、近年は、圃場整備の低コスト化が求められる中で、給水側パイプラインの埋設深を浅くすること、例えば路面から600mm程度の位置に埋設することの検討がなされている。このように給水側パイプラインの位置が今までより高く(浅く)なると、従来の給水装置のような立ち上がり管(鉛直方向に立上がった給水パイプ)を設けることができなくなり、給水側パイプラインから用水を導く給水パイプを水平方向に設置する必要がある。
【0005】
このように給水パイプを水平方向に設置すると、用水供給量の調節を行うための給水装置として、従来のものを使用することができないので、一般的な配管に用いられている高価なゲート弁を使用せざるを得ないことになり、圃場整備の低コスト化に反することになってしまう。さらに、給水側パイプラインの用水の水頭が低くても耕作区への給水が迅速にできるように、給水パイプの位置を低くしておくと、ゲート弁が開いた状態で給水側パイプラインへの用水供給が停止された場合、耕作区内の用水がゲート弁を通って給水側パイプラインに逆流し、下流側の耕作区に用水が吸い出される状態になってしまうことがある。
【0006】
この逆流を防止するためには、給水パイプの流出部の周囲に逆流防止堰を設ければよいが、水頭が低いときには逆流防止堰が邪魔になって耕作区への給水が困難になってしまう。このため、給水パイプにゲート弁に加えて逆止弁を設ける必要がでてくるが、これも大幅なコストアップの要因となる。また、ゲート弁や逆止弁は、設置後の保守点検に要するコストも問題となることがある。
【0007】
そこで本発明は、耕作区への用水供給量を調節できるとともに耕作区からの逆流も防止でき、しかも簡単な構造で製造コストや保守コストの低減を図れる逆流防止機能付き用水弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の逆流防止機能付き用水弁は、給水側パイプラインから給水パイプに供給される用水を水田の耕作区に供給するための用水弁であって、給水パイプに供給される用水の圧力が設定圧力より高くなったときに開弁し、前記設定圧力未満では閉弁する弁体と、該弁体を全閉位置から全開位置までの間で該弁体の開方向への作動を規制するための開度規制手段とを備えていることを特徴とし、さらに、前記弁体を全開位置又は中間開度位置で固定可能な開度固定手段を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の逆流防止機能付き用水弁は、給水側パイプラインから供給される用水の圧力が所定圧力以上のときには開弁して用水を耕作区に供給する。また、給水側パイプラインの用水の圧力が低くなると閉弁して耕作区から給水側パイプラインへの用水の逆流を防止する。さらに、開度規制手段で弁体の開方向への作動を適当な位置で規制することにより用水の最大流量を設定できる。また、開度固定手段で弁体の開度を固定しておくことにより、常時開弁状態としておくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図は本発明の逆流防止機能付き用水弁の一形態例を示すもので、図1は側面図、図2は正面図、図3は開弁状態を示す側面図、図4は逆流防止機能付き用水弁の設置状態例を示す側面図である。
【0011】
この逆流防止機能付き用水弁は、給水側パイプライン11から分岐した給水パイプ12の先端部に設けられるものであって、パイプ端13aを斜め45度に切り落としたパイプからなる弁箱部13と、この弁箱部13のパイプ端13aを開閉する弁体14と、該弁体14の最大開度を規制する開度規制手段15と、弁体14及び開度規制手段15を弁箱部13に装着するための支持部材16とで形成されており、弁箱部13は、パイプ端13aが上方に開口するように設置される。
【0012】
支持部材16は、弁体14を回動可能に支持するための軸支部17と、開度規制手段15を取り付けるための雌ねじ部材18とを有するとともに、該支持部材16を弁箱部13の所定位置に固定するための半割状のブラケット19,20を有している。一方の半割状ブラケット19には前記支持部材16が一体に設けられており、このブラケット19を弁箱部13の上半部に取り付けるとともに、他方のブラケット20を弁箱部13の下半部に取り付け、両者の突き合わせ部をボルト及びナット21で締め付けることにより、支持部材16を介して弁体14及び開度規制手段15が弁箱部13の所定位置に固定される。
【0013】
開度規制手段15は、前記雌ねじ部材18に設けられた雌ねじ22に螺合する雄ねじ部材23の基端部に操作用のハンドル24を設けたものであって、前記雄ねじ部材23の先端が弁体14の外面に当接することにより、弁体14を全閉位置に保持したり、全閉位置と全開位置との間の任意の位置に弁体14の最大開度を設定できるようにしている。
【0014】
弁体14は、前記軸支部17に取り付けた水平方向の回動軸25により、弁体先端14aが上下方向に回動するように設けられており、その外面で、前記雄ねじ部材23の先端が当接する部分には、開位置の弁体14を閉方向に操作する際に雄ねじ部材23の先端がスライドするためのガイド溝26と、雄ねじ部材23により弁体14を全閉位置に保持する際の雄ねじ部材23の下降限を規制するための突起27とが設けられている。このようなガイド溝26や突起27を設けておくことにより、弁体14の開閉を円滑に行うことができ、全閉時に弁体14や開度規制手段15に無理な力が加わることを防止できる。
【0015】
また、弁体14は、合成樹脂や金属等の任意の材料で形成することができるが、逆流防止機能を得るためには、弁体14が1.0を超える比重を有している必要がある。このとき、弁体14の本体を形成する材料の比重が1.0以下の場合は、弁体14の適当な位置に適当な重量のおもりを取り付けるようにしてもよい。さらに、弁箱部13のパイプ端13aと弁体14の内面との止水性を高めるため、両者の当接部に耐久性及び止水性に優れた材質のパッキン、例えば、発泡合成ゴム系のパッキンを取り付けておくことができる。
【0016】
このように形成された逆流防止機能付き用水弁は、図4に示すように、弁箱部13のパイプ端13aを耕作区28内で上方に開口させた状態で、農道29の地中に埋設された給水側パイプライン11から分岐した給水パイプ12の先端部に設置される。用水が無い状態の耕作区28へ給水側パイプライン11から用水を供給する際には、開度規制手段15のハンドル24を操作して雄ねじ部材23を上昇させる。
【0017】
雄ねじ部材23の上昇によって弁体14が開方向に回動可能な状態になるので、弁体14は、給水側パイプライン11から給水パイプ12、弁箱部13を通って供給される用水の圧力によって開弁する。このときの弁体14の最大開度は、弁体14の外面が雄ねじ部材23の先端に当接することによって規制される。したがって、耕作区28への用水の最大流量は、開度規制手段15で弁体14の最大開度を調節することにより、任意に設定することができる。
【0018】
このとき、弁体14には、開方向への力として給水パイプ12から弁箱部13に供給される用水の圧力が作用し、閉方向への力として耕作区28内の用水の圧力と弁体14の重量(水中での重量)とが作用する状態になる。したがって、弁箱部13に供給される用水の圧力が、耕作区28内の用水の圧力と弁体14の重量(水中での重量)との合計より大きくなると弁体14は開方向に回動し、逆の場合には閉方向に回動することになる。
【0019】
これにより、給水側パイプライン11への用水の供給圧力が減少したり、用水の供給が停止したりした場合は、弁体14に作用する閉方向の力が大きくなり、弁体14がパイプ端13aに当接して自動的に閉弁状態となり、耕作区28から給水側パイプライン11への用水の逆流が防止される。
【0020】
なお、耕作区28内に用水が無いときには、弁箱部13に供給される用水の圧力と弁体14の重量との関係のみで弁体14の開閉状態が決まり、弁体14を重くしすぎると用水の圧力で弁体14を開くことができなくなるので、弁箱部13に供給される用水の圧力により生じる弁体開方向への力が、弁体14の重量により作用する弁体閉方向への力を上回るように設定しておく必要がある。また、弁体開方向に作用する用水の圧力は、弁箱部13の軸線に対する弁体14の角度によって変化し、弁体14が軸線に対して平行となる全開状態で最小、弁体14と軸線との交差角度が最大となる全閉状態で最大となる。一方、弁体閉方向に作用する弁体14の重量は、全開状態で最大、全閉状態で最小となる。さらに、弁体14が水中にあるときは、弁体14に作用する浮力に応じて弁体閉方向への力は小さくなる。
【0021】
これらのことを考慮した上で、弁箱部13に供給される用水の圧力に対応させて、弁箱部13の口径やパイプ端13aの角度、弁体14の大きさや重量等の条件を適当に設定することにより、給水側パイプライン11への給水状態や耕作区28内の水位に応じて弁体14を自動的に開閉させることができ、給水パイプ12が水平方向に設置されていても、用水供給や逆流防止を確実に行うことができる。これにより、高価なゲート弁や逆止弁を使用する必要がなくなって大幅なコストダウンを図れる。また、給水水頭が低いときでも確実な給水を行うことができる。
【0022】
弁箱部13のパイプ端13aの角度は、給水パイプ12の設置角度や耕作区28の状態によって適当に設定することができ、供給される用水の圧力が低くなったときに弁体14が全閉可能な状態になっていればよく、弁体14に適当なおもりやスプリング等を取り付けることにより、パイプ端13aを下向きに開口させることも可能である。
【0023】
さらに、この逆流防止機能付き用水弁は、弁体14と開度規制手段15とを、適当な部材によってパイプの所定位置に装着するだけで形成することができるので、構造も簡単であり、製造コストや保守コストの低減を図れる。また、弁箱部13は、給水パイプ12の端部を利用することが可能であり、専用の弁箱部13を製作するときには、パイプ部とともに支持部材16を一体形成することも可能である。このとき、弁箱部13のパイプ端13aに、該パイプ端13aの開口上部を塞ぐような状態で塞ぎ板を設け、この塞ぎ板に前記支持部材16の基部を固定し、塞ぎ板より下方に開口した部分を弁体14で開閉するようにしてもよい。
【0024】
また、耕作区28の状況によって常時開弁状態にしておく必要があるときには、弁体14を全開位置又は中間開度位置で固定可能な開度固定手段を設けておけばよい。この開度固定手段には、任意の固定手段を採用することが可能であり、例えば、雌ねじ部材18の先端部と弁体14の外面とに、それぞれ着脱可能な係止部材をあらかじめ設けておき、この係止部材を係止させることによって弁体14を適当な開状態に固定したり、雌ねじ部材18及び弁体14の適当な位置にワイヤー係止具をそれぞれ形成しておき、両ワイヤー係止具にワイヤーの両端を係止させて弁体14を固定したりするなどの手段を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の逆流防止機能付き用水弁の一形態例を示す側面図である。
【図2】正面図である。
【図3】開弁状態を示す側面図である。
【図4】逆流防止機能付き用水弁の設置状態例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0026】
11…給水側パイプライン、12…給水パイプ、13…弁箱部、14…弁体、15…開度規制手段、16…支持部材、17…軸支部、18…雌ねじ部材、19,20…ブラケット、21…ボルト及びナット、22…雌ねじ、23…雄ねじ部材、24…ハンドル、25…回動軸、26…ガイド溝、27…突起、28…耕作区、29…農道
【出願人】 【識別番号】301035976
【氏名又は名称】独立行政法人農業工学研究所
【識別番号】596029085
【氏名又は名称】株式会社パディ研究所
【出願日】 平成16年3月23日(2004.3.23)
【代理人】 【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦

【公開番号】 特開2005−269910(P2005−269910A)
【公開日】 平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願番号】 特願2004−83889(P2004−83889)