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【発明の名称】 植物育成装置
【発明者】 【氏名】雑賀 昇

【氏名】中西 勉

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材内部に開口部の直径の異なる多孔経路を階層的に分散させた成形体を鉢体にした植物育成装置。
【請求項2】
前記鉢体が、概略立方体形状で、植物の根部と植物育成用の用土を装入するための穴部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の植物育成装置。
【請求項3】
前記鉢体が、循環水を保留するためのトレーの上部に設置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の植物育成装置。
【請求項4】
前記用土が、鋳鉄スラグと粘土を焼結して発泡させた発泡体を粉砕した用土、ピートを発酵させて無機化した用土、あるいはそれらを一部含有する混合物であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の植物育成装置。
【請求項5】
前記母材が、金属、鋳鉄スラグ、プラスチック、ゴム、活性炭、木材、紙の内の少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1乃至4に記載の植物育成装置。
【請求項6】
前記循環水が、雨水、上水、中水、下水の内の少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1乃至5に記載の植物育成装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、観葉植物、鉢花、山野草、野菜、その他の植物を育成するための鉢体、およびその鉢体を用いた広域緑化システムの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭用、あるいは小規模の観賞用の植物は、一般的に素焼き鉢や駄温鉢等の陶器鉢、ポリポットやプランターなどのプラスチック鉢に育成用の用土とともに装入され、育成されている。
【0003】
ところが、プラスチック製の鉢は排水性、通気性が悪い。陶器製の鉢は、通気性がプラスチック製の鉢に対して良好であるが、排水性が悪い。さらに両者とも、植物の根に対して大量の用土を使用するため、排水性や通気性が悪いと鉢の内部に残留する水が、腐敗し、pHが上昇し、雑菌が繁殖するという不具合が生じる。また、根の育成に必要な水分中の溶存酸素濃度の低下も招く。結果として、植物を育成するためには慣習的に水やり三年などの困難な技術の修得が必要であり、大衆万人に一般的に気軽に植物を育成できる環境が整っているとは言えない状況である。
【0004】
そこで、これらの課題を解決するために、特に排水性を重視して天然の軽石や、発泡火山岩を鉢状に加工したものが市販されている。
【0005】
しかし、これらの天然物を利用した鉢は、排水性や通気性を植物の育成環境に合わせて制御し加工することが困難であり、さらに、通気性と排水性を高めるために発泡分が多くなるため、母材自身の強度が弱くなると言う不具合が生じる。
【0006】
一方では、天然物の欠点を補うためと、現在の環境負荷低減およびマテリアルリサイクルの観点から、大型製造プラント、鉄鋼プラント、廃棄物処理プラントなどで発生する焼成スラグなどを溶融発泡成形して鉢状に成型した、植物育成用のポットが開発されている。
【0007】
たとえば下記参考文献1には、「炭酸カルシウムの熱分解によって生成するミクロンからサブミクロンサイズの連続した気孔を多く形成したセラミック」を水耕栽培用の育成床として利用することが記載されている。
【特許文献1】特開平11−103702号公報
【0008】
しかし、この焼成物は、気孔径がランダムに母材内部に分散されたものであるため、一旦吸水した水が成形体全体に、水の一様な表面張力の影響を受けて滞留してしまい水の離水性が悪くなり、さらに水が循環しないために新たな新鮮な水を給水する吸水性も弱くなるという欠点が生じる。
【0009】
さらに、従来の技術による焼成物を広範囲に敷き詰めて、ビルの屋上、学校の校庭、居室内部などに植物の育成床として緑化システムを形成した場合、重力方向のみならず水平方向にも水分が均等に好適に浸透して拡散しないため、水が浸透しない部分が生じたり、水のみが通る水道が形成されたりして、植物の育成に悪影響を及ぼす結果となる。
【0010】
本発明者は、これらの従来技術の課題を鑑み、開口径の異なる多孔経路を階層的に交互に形成することに起因する水の表面張力の差を利用して、水の離水性、排水性、通気性に差をつけることによって、全体として機能を向上することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、植物の育成用の鉢体を構成部分に含む植物栽培装置であって、水の排水性(あるいは離水性)、吸水性、通気性を損なうことのないようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、このような課題を解決するために、母材の内部に開口部の直径の異なる多孔経路を階層的に分散させた成形体を植物栽培用の鉢体として利用することを特徴とする。
【0013】
ここで、前記階層部の構成は、開口部の小さい多孔経路を主に有する層と、開口部の大きい多孔経路を主に有する層を水平方向に交互に階層的に集積しているものであることが望ましい。
【0014】
開口部の小さい多孔経路を主に有する層(低多孔層)は、水を吸い上げる吸水性が強い。また、開口部の大きい多孔経路を主に有する層(高多孔層)は、水を流通する排水性が強い。これらの層を交互に形成すると、吸水性と排水性を交互に繰り返す作用が生じる。
【0015】
すなわち、低多孔層に水が浸透し、水が貯留されると、直上の高多孔層に急速に水が浸透し移送する。これを重力方向に交互に繰り返すため、水面からかなりの高い位置まで水を移送する作用が生じる。
【0016】
さらにこの階層部を有する鉢体が広域面積に亘って設置されている場合であっても、高多孔層を介して水が水平方向に縦横無尽に移送されることとなる。高多孔層を水が浸透する速度が、低多孔層を水が浸透する速度が遅いため、高多孔層と低多孔層の界面に水がある場合であっても、水平方向に優先して水が移送されていくのである。
【0017】
さらに、前記鉢体が、立方体形状で、植物の根部と植物育成用の用土を装入するための穴部が設けられていることを特徴とする。また、本発明の鉢体で育成した植物を畑などに植培して利用する場合、用土は植物の鉢体への固定化と、用水分の一次補給部として利用することが望ましい。
【0018】
これは、水耕栽培のような水分のみで育成するシステムでは、下記文献2に「水耕栽培された植物には根毛がないので、土中の養分を吸収できない。そのため、土に植え替えてもすぐに枯れてしまう。」との記載があるように、用土を用いない場合は植物の育成に阻害を与えてしまうためである。
【非特許文献1】小学館発行,図解ガーデニングコツのコツ,84(2001)
【0019】
さらに、前記鉢体が、循環水を貯留するためのトレーの上部に設置されていることを特徴とする。例えば、広範囲の敷地面積に鉢体を平面的に集積して設置した場合、上面からの降水のみならず鉢体の底面からも水分を吸水させるようにした方が植物の育成に好適であるためである。
【0020】
さらに、前記用土が、鋳鉄スラグと粘土を焼結して発泡させた発泡体を粉砕した用土、ピートを発酵させて無機化した用土、あるいはそれらの混合物であることを特徴とする。循環する水の腐敗防止、養分の過多による根腐れ防止の観点から有機質の腐葉土より、無機成分用土が好ましい。
【0021】
さらに、前記母材が、金属、鋳鉄スラグ、プラスチック、ゴム、活性炭、木材、紙の内の少なくとも1種であることを特徴とする。要は、径の異なる多孔質の経路を形成して、その内部を通過する水の通水性、通気性、排水性を制御できる物であれば、材質は問わないのである。特に、鋳鉄スラグは、鉄鋼製造の過程で大量に発生するスラグであり、現在は産業廃棄物として埋め立て処理などが行われている。また、有効利用の観点から、溶融して煉瓦などを生成する技術もあるが、煉瓦としての強度やその他物性が基準値に達成していないため、煉瓦として有効に利用されていないのが現状である。そのため、本発明によれば植物栽培装置として有効に活用することができるため、環境保全の観点からも有効である。
【0022】
さらに、前記循環水が、雨水、上水、中水、下水の内、1種以上であることを特徴とする。特に、建築物の屋上に平面的に本発明の鉢体を設置した場合、利用する水分が、主として雨水であるシステムにすることが環境保護の観点からも好ましい。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明は、母材内部に開口部の小さい多孔経路を主に有する層と、開口部の大きい多孔経路を主に有する層を水平方向に交互に階層的に集積して吸水性と吸水性を高めた結果、植物の安定した育成を図り、さらに給水の作業を軽減できるという効果が生じる。
【0024】
さらに、吸水性と排水性の向上により、水の移動に伴って新鮮な空気を鉢体内部に供給できると共に、移動する水についても溶存酸素濃度の高い新鮮な水を循環して供給することができるため、植物の根の発育と植物全体の育成が極めて高いという効果が生じる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例について図面に基づき説明する。
【0026】
(実施例1)
本実施例では、鉢体1として鋳鉄スラグを利用した焼成ブロック体を用いた。鉢体1の製造方法として、鋳鉄を製造する際に発生するスラグ、モンモリロナイトを主成分とする粘土鉱物、発泡剤としてのn−ペンタンの混合物を金型内部で、1300℃の高温で焼成した。
【0027】
次に、焼成物を縦、横、高さがそれぞれ5cmの立方体形状に裁断し、階層部分が水平線方向と平行になるように配置し、その上部に穴径2cm深さ3cmの植物投入用の穴部2を開けた。本鉢体の概要を図1に示した。
【0028】
階層部分は、高多孔層と低多孔層の二つから形成されていることが確認され、高多孔層の厚みは平均2mm、低多孔層の厚みは平均1mmであった。この鉢体の物性は、見かけ比重0.7〜0.8、吸水性40〜45%、その他、耐酸性、耐水性などは異常なしであった。
【0029】
本発明の吸水性を調べるため、水平線方向と垂直に上方に鉢体を積み上げて最下段の鉢体に深さ1cm水没させた。その結果、5段目の中間部まで(22cm)水を吸い上げることが確認できた。市販の軽石を積み上げて確認したが、10cm程度の高さに水を吸い上げることが限界であった。
【0030】
次に、本実施例の鉢体に、ピートを発酵させ熟成した無機化汚泥を用土にして、イチゴを植えた。本発明の鉢体で育成したイチゴは、通常の植木鉢と用土で育成した物と比べて果実が大きく、草体も大きいことが分かった。
【0031】
(実施例2)
本実施例では、鉢体1の寸法を縦10cm、横20cm、高さ5cmにとした。鉢体の元になる焼成ブロック体を成形する方法は実施例1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0032】
本実施例では、植物投入用の穴部2を10個開け、それぞれに植物として玉龍を植えた。2年経過後、玉龍の育成状況に有意差は見られず、何れの位置のものも均等に育成していることが確認できた。本実施例の鉢体1の概略図を図2に示す。
【0033】
(実施例3)
本実施例では、鉢体1の寸法を縦10cm、横25cm、高さ5cmとした。鉢体1の元になる焼成ブロック体を成形する方法は実施例1及び2と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0034】
本実施例では、植物投入用の穴部を5個開け、乾燥に弱い蔓性のワイヤープランツそれぞれの穴に植えた。2年経過後、ワイヤープランツの育成状況に有意差は見られず、何れの位置のものも均等に繁殖し育成していることが確認できた。本実施例の鉢体1の概略図を図3に示す。
【0035】
(実施例4)
本実施例では、鉢体1の寸法を縦50cm、横50cm、高さ5cmにとした。鉢体の元になる焼成ブロック体を成形する方法は実施例1乃至4と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0036】
本実施例では、当該鉢体1を水平方向に6段密着し、縦100cm、横150cmの広域面積に亘る植物栽培用床15を形成した。また、各植物栽培用床15の下部に橋脚部として、高さ15cmの当該鉢体と同じ材質の焼成ブロック体22を設置した。さらに、橋脚部の下部に植物への給水用水の貯留槽13を設置した。さらに、貯留槽13の水を循環するための循環ポンプ21を設け、水を循環する循環水回路14設置し、緑化システムを作成した。なお貯水槽13に貯水する水は雨水11を利用するが、雨水が不足すると上水道12で補う。さらには貯水される水の浄化のために浄化槽20を設けた。
【0037】
本実施例では、植物投入用の穴部は開けずに、直接鉢体上部に用土18を投入し、植物としてポインセチアを植えた。これによりトレー13に注入された循環水17は焼成ブロック体22より吸水されて、上部に配置された植物栽培用床15に水が導水される。さらに植物栽培用床15から用土18に給水されて、植えられた植物に水が補給される。
【0038】
さらに、同じ面積での軽石によるポインセチア育成状況と、本実施例とを比較した結果、本実施例の方が、葉色、葉高、葉密度は高い結果となり、育成状況が良いことが証明できた。本実施例の緑化システムの概略図を図4に示す。
【0039】
(その他実施例)
その他の実施例として、泡の直径の異なるウレタン性スポンジを階層的に積層して、上記実施例1と同様の形状の鉢体を作成した。厚さ2mmの高多孔層と、厚さ1mmの低多孔層を交互に積載した。
【0040】
同じ発泡径のウレタンスポンジと比較して、吸水性と排水性は高い結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の植物栽培装置は、通水性、排水性、通気性に優れているため、家庭用、業務用の観葉目的のセット、広域的には建設物の屋上や公園、ビオトープなどにおける緑化システムなどの植物育成用の設備の用途に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】一実施形態としての植物栽培装置の概略図
【図2】一実施形態としての植物栽培装置の概略図
【図3】一実施形態としての植物栽培装置の概略図
【図4】一実施形態としての植物栽培装置を利用した緑化システム
【出願人】 【識別番号】302062805
【氏名又は名称】雑賀 昇
【出願日】 平成16年3月8日(2004.3.8)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−245370(P2005−245370A)
【公開日】 平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願番号】 特願2004−63316(P2004−63316)