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【発明の名称】 貯水デッキ
【発明者】 【氏名】岡 洋

【氏名】成松 重之

【氏名】大賀 健児

【氏名】立山 亮治

【要約】 【課題】長期間にわたり、雨水だけで、特別な装置を必要とすることなく適宜自動的に植栽に必要な水をまかなえ、簡便で軽量な貯水デッキ、及び該貯水デッキを利用した人工基盤上の緑化方法を提供する。

【解決手段】排水口を具備した歩行に耐える強度を有するデッキ材の下部空間に、感温吸排水性樹脂を分散・含有させた多孔ブロックを備え、貯水デッキとする。該貯水デッキと植栽部とを組み合わせることにより、人工基盤上を緑化する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口を具備した歩行に耐える強度を有するデッキ材の下部空間に、感温吸排水性樹脂を分散・含有させた多孔ブロックを備えた、感温給水機能を有する貯水デッキ。
【請求項2】
請求項1記載の貯水デッキと植栽部とを組み合わせることを特徴とする、人工基盤上の緑化方法。
【請求項3】
人工基盤が屋上である、請求項2記載の人工基盤上の緑化方法。
【請求項4】
施行面積に対する貯水デッキの割合(x)及び植栽部の施行厚(a:cm)が、下記[1]式及び[2]式を満足するものである、制限重量がW(kg/m)である人工基盤上に、N日以上の無灌水緑化が可能な、請求項2記載の人工基盤上の緑化方法。
【数1】


なお、[1]式及び[2]式において、W(kg/m)は人工基盤の重量制限、N(日)は無灌水日数、D(kg/l)は植栽部の植栽基盤の湿比重、M(kg/l)は同植栽基盤の最大保水量、D’(kg/l)は多孔ブロックの湿比重、M’(kg/l)は多孔ブロックの最大保水量、S(kg/m)は植栽部の植物の重量、K(kg/m)はデッキ材の重量、V(kg/m)は植栽部の蒸発散量、を、それぞれ意味する。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水等の自然水を吸収保水し、適宜、人工基盤上の植栽基盤に水を供給できる、歩行可能な貯水デッキ、及び該デッキを用いる人工基盤の緑化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市化の進展に伴い、人工基盤で覆われた地面や建築物屋上が増加している。このため、景観の無機化が進み、また、ヒートアイランド現象等の様々な問題が発生してきている。そこで、都市に潤いを取り戻し、ヒートアイランド現象の緩和を目的として、人工基盤上を緑化することが盛んになってきた。しかしながら、人工基盤上は植物の生育にとって好ましい環境条件ではなく、特に、植物を育てる上での最大の問題は、地層が薄いことによる水不足で、灌水装置あるいは人手により水道水等を灌水する必要があり、緑化面積が増加すれば、装置が大型化するとともに、水道水の不足という事態を招きかねない。
【0003】
自然に生育している植物は、基本的には雨水等の自然降雨に依存している。都市空間においても、できるだけ雨水を植栽に活用し、飲料水である水道水の使用は避けるのが合理的な考え方である。このような観点から、雨水を集めて地下等のタンクに保存し、この水を適時ポンプアップして植物に灌水使用するという試みが報告されているが(例えば、特許文献1)、設備コストの面、あるいは配管系の保守、点検の面からの制約が大きい。
そこで、屋上に設置しながら極端な加重の負荷増を避けるため、広い範囲に配置されるガーデンデッキ下の空間を利用して貯水部を設けたガーデンデッキ構造が提案されている(特許文献2)。しかしこの構造も、貯水された雨水等を適宜植物に供給するための装置が必要となる。
また、植栽部への通水用微細孔を有し、内部に保水性材料を充填した貯水槽が配置された屋上集合ガーデンプランターも提案されている(特許文献3)。しかしながら微細孔により適切な水量を安定して提供することは容易ではなく、容器の重量を考慮すると、貯水量にも限界があった。
【特許文献1】特開平8−228618号公報
【特許文献2】特開2000−144885号公報
【特許文献3】特開2003−310060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、長期間にわたり、雨水だけで、特別な装置を必要とすることなく適宜自動的に植栽に必要な水をまかなえ、簡便で軽量な貯水デッキ、及び該貯水デッキを利用した人工基盤上の緑化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、かかる課題を解決する為に鋭意研究した結果、歩行用デッキの下部空間を利用し、ここに感温吸排水性樹脂を含有する多孔ブロックを設置することにより、上記課題が解決できることを見いだし、本発明に到達した。
すなわち本発明は、
(1)排水口を具備した歩行に耐える強度を有するデッキ材の下部空間に、感温吸排水性樹脂を分散・含有させた多孔ブロックを備えた、感温給水機能を有する貯水デッキ、
(2)上記(1)記載の貯水デッキと植栽部とを組み合わせることを特徴とする、人工基盤上の緑化方法、
(3)人工基盤が屋上である、上記(2)記載の人工基盤上の緑化方法、
(4)施行面積に対する貯水デッキの割合(x)及び植栽部の施行厚(a:cm)が、下記[1]式及び[2]式を満足するものである、制限重量がW(kg/m)である人工基盤上に、N日以上の無灌水緑化が可能な、請求項2記載の人工基盤上の緑化方法、
【0006】
【数2】


【0007】
なお、[1]式及び[2]式において、W(kg/m)は人工基盤の重量制限、N(日)は無灌水日数、D(kg/l)は植栽部の植栽基盤の湿比重、M(kg/l)は同植栽基盤の最大保水量、D’(kg/l)は多孔ブロックの湿比重、M’(kg/l)は多孔ブロックの最大保水量、S(kg/m)は植栽部の植物の重量、K(kg/m)はデッキ材の重量、V(kg/m)は植栽部の蒸発散量、を、それぞれ意味する。
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の貯水デッキは、感温吸排水性樹脂を含有した多孔ブロックを貯水部として具備しているため、雨水だけで、特別な装置を必要とすることなく、温度が上昇すると、自動的に植物に水を供給することができる。また、デッキの下部空間を利用するため、簡便、軽量で、植栽部と適切に組み合わせる事により、無灌水緑化が可能となり、人工基盤上を容易に緑化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の貯水デッキは、排水口を具備したデッキ材の下部空間に多孔ブロックを備えたものである。
デッキ材に具備される排水口は、下部空間に備えられた多孔ブロックに雨水を供給できるものをいい、具体的には、デッキ材に円形、矩形、楕円形、溝状等の孔を設けることが好ましい。
また、デッキ材は、その上を歩行できるもので、要求される強度と耐久性を有していれば、特に材質に制限はない。
【0010】
多孔ブロックは感温吸排水性樹脂が含有・分散されたものである。
用いられる感温吸排水性樹脂とは、設定された特定の温度(以下、感温点という。)より低い温度では水を吸収保持し、感温点以上では吸水能力を失い、感温点以下で水を吸収保持している場合は、保持水を外部に排出する樹脂をいい、N−アルキルアクリルアミドを主成分とする共重合体の架橋物等が例示される。樹脂は、N−アルキルアクリルアミドのアルキル基、共重合モノマーの種類、量、により、その感温点をコントロールすることができる。
本発明においては、10〜40℃の間の異なった感温点を持つ樹脂を、適当な比率で混合したもの、あるいは感温点がブロードに設定された昇温に伴い徐々に水を排出する樹脂、を用いることが好ましい。
【0011】
多孔ブロックは、感温吸排水性樹脂が水を吸って膨潤したときに占有できる空間を有する、連続気泡を有する発泡体、繊維状物の成型体、粒状物の接融着物等を例示することができる。
多孔ブロック中の空間容積比は、貯水を目的とするため大きいほど好ましく、具体的には80%以上有するものが望ましい。また、感温吸排水性樹脂の含有・分散量は、該樹脂が吸水して膨潤したとき、ちょうど多孔ブロックの空間を埋める程度の量が好ましい。
多孔ブロックの容積は、1m当たり100〜400L、厚さにして10〜40cm程度が好ましい。10cm未満では貯水効果が少なく、一方、40cmを越えても、日本の降水量からみると無駄が多く、また、重量が大きくなりすぎて使用場所が制約される。
多孔ブロックは、例えば、特開平11−103662号公報等に記載の方法により、容易に製造することができる。
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明について更に詳細に説明する。
図1は、本発明の貯水デッキ1の一実施の形態を示す。
図1では、四隅に支柱4を具備したデッキ材2に、円形の孔3が排水口として設けられており、感温吸排水性樹脂を含有・分散した多孔ブロック5が、デッキ材の下部空間に備えられている。
【0013】
図2は、図1の貯水デッキ1と植栽部6とを組み合わせた人工基盤上の緑化方法の一実施の形態(施行面積の一部)を示す。
図2では、植栽部6は、植生基盤7上に植物8が植栽されている。植生基盤7は、土又はその代替物からなる、植物を植え付ける基材であり、特に屋上等で用いる場合は、軽量のものが好ましい。
【0014】
貯水デッキ1で形成されるデッキ部の形状は任意であり、また、植栽部6との組み合わせも任意であるが、施行面積に対する貯水デッキの割合、植栽部の施行厚(多孔ブロックの厚み)を以下の通り決定することにより、無灌水緑化が実現される。
すなわち、植栽部の植栽基盤の湿比重をD(kg/l)、同植栽基盤の最大保水量をM(kg/l)、多孔ブロックの湿比重をD’(kg/l)、多孔ブロックの最大保水量をM’(kg/l)、植栽部の植物の重量をS(kg/m)、デッキ材の重量をK(kg/m)、植栽部の蒸発散量をV(kg/m)とし、重量制限がW(kg/m)の緑化工事において、N日間の無灌水を実現するためには、下記[3]式、[4]式の連立不等式から、施行面積に対する貯水デッキの割合(x)及び施行厚(a、cm)を求めることができる。
【0015】
【数3】


【0016】
例えば、[3]式及び[4]式から、xあるいはaについて解くと、[1]式及び[2]式が得られる。
【0017】
【数4】


【0018】
具体的には、[1]式あるいは[2]式において、xあるいはaに適当な範囲で任意の数値を代入し、それぞれの範囲を求め、必要に応じてこの操作を繰り返すことにより、目標とするa及びxを容易に決定することができる。
人工基盤上、特に屋上の緑化においては、重量制限(W)を180kg/mとし、無灌水日数(N)として、少なくとも3週間以上、好ましくは30日以上を目標に、a及びxを決定することが望ましい。
【実施例1】
【0019】
貯水デッキとして、デッキ材(支柱を含む)の重量が30kg/mの木製デッキの下部空間に、感温点が15〜35℃の間に分布する感温吸排水性樹脂を分散混合した空孔率95%のウレタンフォーム(興人製:ウォーターバンク、13g/l、湿潤比重1.0、最大保水量0.95kg/l)を備えたものを用い、植生基盤として市販の軽量土(湿潤比重0.8、最大保水量0.3kg/l)を、植物として芝とツツジを組み合わせて植栽した(植物重量10kg/m、植栽部の蒸発散量4kg/m)。
重量制限を180kg/m、30日以上の無灌水期間を目ざし、貯水デッキの割合を30%、植栽部の施行厚(多孔ブロックの厚さ、以下同様)を19cmとした。
上記条件で、5月、透明屋根付きのゲヤ内に10mの面積で施行し、7月20日までは十分に灌水して、同月21日から灌水を止めた。そのまま放置して植物が枯死するまでの日数を調べたところ、33日であった。

【実施例2】
【0020】
実施例1において、市販の軽量土に替えて、市販の軽量土に感温吸排水性樹脂(興人製、サーモゲル)を2.5%添加した土(湿潤比重1.0、最大保水量0.5kg/l)を用い、無灌水期間を35日以上を目ざし植栽部の施行厚を16.0cmとした以外は実施例1と同様に実施した。
その結果、枯死するまでの日数は37日であった。
【実施例3】
【0021】
実施例1において、貯水デッキの割合を40%、植栽部の施行厚を18.0cmにそれぞれ変更した以外は実施例1と同様に実施した。
その結果、枯死するまでの日数は43日であった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の貯水デッキは、簡便、軽量で、基本的に雨水だけを使用する無灌水緑化が可能となるため、人工基盤上の緑化の普及に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態に係る貯水デッキを示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る人工基盤上の緑化方法を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 貯水デッキ
2 デッキ材
3 排水口
4 支柱
5 多孔ブロック
6 植栽部
7 植生基盤
8 植物
9 施行厚
【出願人】 【識別番号】000142252
【氏名又は名称】株式会社興人
【出願日】 平成15年12月26日(2003.12.26)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−185199(P2005−185199A)
【公開日】 平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願番号】 特願2003−431847(P2003−431847)