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【発明の名称】 昆布漁場の造成方法
【発明者】 【氏名】姥澤 糺

【氏名】廣瀬 徳市

【要約】 【課題】沿岸昆布漁業においては、雑海草の繁殖により昆布の根付けが阻害されて生育が著しく悪くなり、昆布の資源が減少している。これに対してさまざまな方法、装置によって雑海草駆除が行われている。しかし、より昆布の根付けができやすい、より高品質の昆布の生育を可能にする昆布漁場の形成の点では充分とは云えない。

【解決手段】昆布が胞子を出す期間に合わせて昆布漁場の雑海藻を駆除し昆布が活着しやすい岩肌にしたのち、海底に胞子が出やすい状態にした昆布を海底に沈設し、沈設されたドロドロにした昆布とその周囲に対して、鉄粉を散布する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昆布が胞子を出す期間に合わせて昆布漁場の造成を所望する海底における雑海藻を駆除して、昆布が活着しやすい岩肌にしたのち、当該海底に胞子が出やすい状態にした昆布を海底に沈設し、沈設されたドロドロにした昆布及びその周囲に対して、鉄粉を散布するよう構成されていることを特徴とする昆布漁場の造成方法。
【請求項2】
下記の各工程から構成されていることを特徴とする昆布漁場の造成方法。
第1工程
昆布が胞子を出す期間に合わせて、昆布漁場の造成を所望する海底(1)における雑海藻を駆除して、昆布が活着しやすい岩肌にする作業を行う。
第2工程
海底(1)の近くで採集した生昆布あるいは2日〜4日位陰干しした昆布をミキサーにかけて得たドロドロにした昆布を、所定量ずつ胞子が出るよう構成された麻袋に入れ密閉して重りをつけたドロドロにした昆布体(2)を用意する。
第3工程
作業台船上に鉄粉(3)を用意する。
第4工程
第1工程を経た海底(1)における所定箇所に、第2工程で用意したドロドロにした昆布体(2)を沈設する。
第5工程
第4工程において沈設されたドロドロにした昆布体(2)及びその周囲に対して、鉄粉(3)を散布する。
【請求項3】
下記の各工程から構成されていることを特徴とする昆布漁場の造成方法。
第1工程
11月〜2月にかけて、昆布漁場の造成を所望する海底(1)における雑海藻を駆除して、昆布が活着しやすい岩肌を露出した状態にする作業を行う。
この場合、海底(1)における海底面には、所定間隔の縦線(1A1)と所定間隔の横線(1A2)を交差させたます目(1A)を形成する。
第2工程
海底(1)の近くで採集した生昆布あるいは2日〜4日位陰干しした昆布をミキサーにかけて得たドロドロにした昆布を、所定量ずつ網目のない麻袋に入れ密閉して重りをつけたのち、当該麻袋に適数カ所小穴を開設したドロドロにした昆布体(2)を用意する。
第3工程
作業台船上に鉄粉(3)を用意する。
この場合、鉄粉としては、純鉄の粉、銅の粉、鋳物の削り粉である。
第4工程
第2工程で用意したドロドロにした昆布体(2)を、第1工程を経た海底(1)におけるます目(1A)における四隅の交点部分(1AK)と中心の交点部分(1AK)に沈設する。
第5工程
第4工程において沈設されたドロドロにした昆布体(2)及びその周囲に対して、鉄粉(3)を散布する。
四隅と中心以外のます目(1A)の交点部分(1AK)の全部あるいは一部にも散布する。
【請求項4】
請求項2あるいは請求項3記載の昆布漁場の造成方法において、第2工程で使用する生昆布あるいは2日〜4日位陰干しした昆布は、昆布漁場の造成を所望する箇所から遠い場所で採取したものであることを特徴とする昆布漁場の造成方法。
【請求項5】
請求項3記載の昆布漁場の造成方法において、第2工程におけるます目(1A)を形成する縦線(1A1)の間隔は約20mで、横線(1A2)の間隔は約20mであることを特徴とする昆布漁場の造成方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な構成を有する昆布漁場の造成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の昆布漁場の造成方法の状態は、下記のような構成となっている。
沿岸昆布漁業においては、雑海草の繁殖により昆布の根付けが阻害され、生育が著しく悪くなり、昆布の資源が減少している。
かかる問題を解決するため、下記の方法により雑海草駆除を行っている。
1.チェーン振り方式のもの。
2.チェーンにキャタピラシュウを組合わせた方式のもの。
3.水中ブルドーザーによる方式のもの。
4.火薬による爆破による方式のもの。
このような方法によっても、充分確実な雑海草駆除が困難であるため、発明者は先に海底岩石を洗耕してこれら雑海草を駆除することのできる雑海草駆除装置を提案した。
(特許文献1ないし特許文献4参照)
【0003】
【特許文献1】特許第1984533号公報
【特許文献2】特許第2009000号公報
【特許文献3】特許第1953001号公報
【特許文献4】特許第3291572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような雑海草駆除装置などで雑海草駆除を行っても、未だ下記のような問題を指摘することができる。
すなわち、より昆布の根付けができやすいと共に、より高品質の昆布の生育を可能にする昆布漁場の形成の点では充分とは云えないと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、昆布が胞子を出す期間に合わせて昆布漁場の造成を所望する海底における雑海藻を駆除して、昆布が活着しやすい岩肌にしたのち、当該海底に胞子が出やすい状態にした昆布を海底に沈設し、沈設されたドロドロにした昆布及びその周囲に対して、鉄粉を散布するよう構成されていることを特徴とするものである。
【0006】
請求項2記載の発明は、下記の各工程から構成されていることを特徴とするものである。
第1工程〜(海底の整備)
昆布が胞子を出す期間に合わせて、昆布漁場の造成を所望する海底1における雑海藻を駆除して、昆布が活着しやすい岩肌にする作業を行う。
第2工程〜(ドロドロにした昆布体の用意)
海底1の近くで採集した生昆布あるいは2日〜4日位陰干しした昆布をミキサーにかけて得たドロドロにした昆布を、所定量ずつ胞子が出るよう構成された麻袋に入れ密閉して重りをつけたドロドロにした昆布体2を用意する。
第3工程〜(鉄粉の用意)
作業台船上に鉄粉3を用意する。
第4工程〜(ドロドロにした昆布体の沈設)
第1工程を経た海底1における所定箇所に、第2工程で用意したドロドロにした昆布体2を沈設する。
第5工程〜(鉄粉の散布)
第4工程において沈設されたドロドロにした昆布体2及びその周囲に対して、鉄粉3を散布する。
【0007】
請求項3記載の発明は、下記の各工程から構成されていることを特徴とするものである。
第1工程〜(海底の整備)
11月〜2月にかけて、昆布漁場の造成を所望する海底1における雑海藻を駆除して、昆布が活着しやすい岩肌を露出した状態にする作業を行う。
この場合、図1を参照して、海底1における海底面には、所定間隔の縦線1A1と所定間隔の横線1A2を交差させたます目1Aを形成する。
第2工程〜(ドロドロにした昆布体の用意)
海底1の近くで採集した生昆布あるいは2日〜4日位陰干しした昆布をミキサーにかけて得たドロドロにした昆布を、所定量ずつ網目のない麻袋に入れ密閉して重りをつけたのち、当該麻袋に適数カ所小穴を開設したドロドロにした昆布体2を用意する。
第3工程〜(鉄粉の用意)
作業台船上に鉄粉3を用意する。
この場合、鉄粉としては、純鉄の粉、銅の粉、鋳物の削り粉である。
第4工程〜(ドロドロにした昆布体の沈設)
第2工程で用意したドロドロにした昆布体2を、第1工程を経た海底1におけるます目1Aにおける四隅の交点部分1AKと中心の交点部分1AKに沈設する。
第5工程〜(鉄粉の散布)
第4工程において沈設されたドロドロにした昆布体2及びその周囲に対して、図3における○印の如く、鉄粉3を散布する。
四隅と中心以外のます目1Aの交点部分1AKの全部あるいは一部にも散布する。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項2あるいは請求項3記載の発明において、第2工程で使用する生昆布あるいは2日〜4日位陰干しした昆布は、昆布漁場の造成を所望する箇所から遠い場所で採取したものであることを特徴とするものである。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項3記載の発明において、第2工程におけるます目1Aを形成する縦線1A1の間隔は約20mで、横線1A2の間隔は約20mであることを特徴とする昆布漁場の造成方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述のように構成されているから、下記のような効果を期待することができる。
1.雑海草を駆除して岩肌をきれいにし、昆布の根付けをすることができるので昆布漁場に付加価値をつけることができる。
2.鉄イオンを供給し高品質の昆布を生育させることができる。
3.近くで生育している昆布の種類より、高値が予想される種類の昆布を根付け移植することができる。
4.近くで採取される昆布以外の種類の昆布を移植することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を実施例にもとづき図面を参照して説明する。
本発明の昆布漁場の造成方法は、下記の各工程から構成されている。
図1〜図3を参照する。
【0012】
第1工程〜(海底の整備)
昆布漁場の造成を所望する海底1における雑海藻(昆布以外のアラメ・ホンダワラ・スガモ等)を駆除して、昆布が活着しやすい岩肌にする作業を行う。
この工事は、11月〜2月にかけての冬期間、昆布が胞子を出す期間に合わせて行う。 すなわち、昆布は11月〜2月の冬期間に胞子を出し、遊走子となって岩肌に着生するので、この期間に海藻、海草を取除き着生しやすいように岩肌を露出した状態にしておくことが必要である。
図1は海底1を示し、海底1における海底面には、一区画について、約20m間隔の縦線1A1と約20m間隔の横線1A2を交差させたます目1Aを形成する。
図中、1AKはます目1Aの交点部分である。
なお、約20m間隔の縦線1A1と約20m間隔の横線1A2でなるます目については、実験では好成績を確認できたが、海底の状況に応じて長くしたり短くしたりして調整することになる。
第2工程〜(ドロドロにした昆布体の用意)
海底1の近くで採集した生昆布あるいは2日〜4日位陰干しした昆布をミキサーにかけて得たドロドロにした昆布を、所定量ずつ網目のない麻袋に入れ密閉して10kg位の石でなる重りをつけたドロドロにした昆布体2を用意する。
そののち、φ9mmの丸鉄筋の先端を尖らせたもので麻袋に小穴を10〜15カ所開設する。
【0013】
A.ドロドロにした昆布について説明する。
すなわち、近くで採取した生昆布あるいは胞子を岩肌に岩着しやすくするため2日〜4日位陰干しした昆布をミキサーにかけ、一見ドロドロの状態になるまで約40秒〜60秒間かけて撹拌して得る。
このように胞子が出やすくしたドロドロにした昆布を5kgずつに分けて麻袋に入れ、先端を尖らせた9mmの丸鉄筋で数カ所の穴を開けてドロドロにした昆布体を得る。
ドロドロにした昆布とは、昆布をミキサーにかけると、昆布そのものに粘り気があるので表面ドロドロ状になるが、中身はドロドロになった昆布と細かく破砕された昆布片の集まりである。
B.第2工程で使用する生昆布あるいは2日〜4日位陰干しした昆布は、昆布漁場の造成を所望する箇所から遠い場所で採取したものを使用することができる。
【0014】
第3工程〜(鉄粉の用意)
作業台船上に鉄粉3を用意する。
A.鉄粉としては、純鉄の粉、銅の粉、鋳物の削り粉(通称〜ダライ粉と称され、成分は炭素2.5〜4.5%、シリコン3%、マンガン1.5%、リン1%、硫黄0.15%)がある。
B.本発明の場合、鋳物の削り粉を用いた。
第4工程〜(ドロドロにした昆布体の沈設)
第1工程を経た海底1における所定箇所に、ドロドロにした昆布体2を沈設する。
図2を参照して、△印の如く第2工程で用意したドロドロにした昆布体2をます目1Aにおける四隅の交点部分1AKと中心の交点部分1AKに沈設する。
この結果、1個5kgのドロドロにした昆布体2を、10000m2 当たり5カ所に沈設する。沈設するドロドロにした昆布体2の総量は25kgである。
第5工程〜(鉄粉の散布)
第4工程において沈設されたドロドロにした昆布体2と、その周囲に対して、図3における○印の如く、鉄粉3を散布する。
四隅と中心以外のます目1Aの交点部分1AKの全部あるいは一部にも散布する。
【実施例1】
【0015】
A.ます目1Aの形成、ドロドロにした昆布体2の沈設や鉄粉3の散布作業は、GPSを使用する。
B.第5工程における鉄粉3の散布方法の詳細は、下記の通りである。
10000m2 当たり25カ所、計5kgの鋳物の削り粉を人手で撒き散らす。
すなわち、図3を参照して、○印を中心にして最初は前向きに一握り約100gの鋳物の削り粉を左方向から右方向にばら蒔く。
次に、同じ箇所で後ろ向きになり、一握り約100gの鋳物の削り粉を左方向から右方向にばら蒔く。すなわち、一カ所当たり2回、約200gを撒き散らす。
この繰り返しで10000m2 当たり25カ所、総量5kgを散布する。
このようにすると、ます目における隣接する交点部分に撒かれた各鉄粉3の外周部分3Aは互いに交差重複する状態になる。
【実施例2】
【0016】
平成10年11月以降、毎年11月から翌年2月までの期間、5ケ年間にわたり、昆布が活着しやすい岩肌を作り、ミキサーで撹拌した昆布片とドロドロ状の昆布の2種類を作り、適当間隔に沈設して昆布の胞子を出やすくし、同時に用意した鉄粉を撒き散らして高濃度の鉄イオンを供給し、高品質な昆布を育成する海岸実験を行った。
この海岸実験では、岩肌を昆布の活着しやすい状況に作った場所(長昆布の漁場)にアツバ昆布の昆布片やドロドロ状にしたものを10000m2 当たり5カ所に沈設し、更に鉄粉を撤き散らした場所と、また同時に岩肌だけを露出させ何も加えず自然にまかせた場所との2漁場を作り様子を見ることにした。
翌年6月に確認したところ、アツバ昆布を移植した漁場にはアツバ昆布が着生し、また、自然にまかせた漁場には長昆布の着生を確認することができた。
また、作業台船と引き船を修理と塗装工事のため上架したところ、両船底に昆布が根を張りまつわり付いている状態を発見した。
2月に工事が終わり、3月に入って約50マイル、時速8ノットで帰港する長旅の間、船体にまつわり付いた昆布が剥がれることなく一緒に船底に付いてきたことが解った。
これは異常なことであるが、鉄イオン濃度を高め昆布に栄養源を与え、更に胞子を散布して、昆布の根付け移植工法を実験している作業内容に関連する一つの現れと理解している。
【0017】
上述のような成績を収めることができたのは、下記の理由1、2、3によるものと考えられる。
理由1
藻類(植物プランクトン)や海藻が生長増殖するためには、いろいろな物質が必要であるが、その中の一つ窒素分は海水の中で、硝酸塩と云う無機の形で溶けている。
これを体内に取り込むには、先に鉄を取り込まなければ還元作用ができない。
また、光合成するこれらの藻類や海藻には、光合成色素が不可欠であり、これらの生合成にも鉄は極めて大きく関与しており、鉄なしではこれらの色素は生合成されない。
理由2
海水中にはOH基と結合した微量の鉄イオンが存在する。
この鉄イオンをプランクトンや海藻は取り込んでいる。
この鉄イオンが海藻などに摂取されると、鉄イオンは粒状鉄と平衡で水に溶解しているので平衡がくずれる。
しかし、ここで鉄粉を加え粒状鉄濃度を高くすると、イオンと粒状鉄は平衡となり短期間で高濃度の鉄イオンを供給できるようになるのである。
理由3
海底に沈んでいる粒状鉄は、多種の元素化合物を吸着させる機能を持っており、水圏(淡水・海水)での鉄には、粒状及び有機物(フルボ酸)と結合したフルボ酸鉄と鉄イオンがある。
フルボ酸鉄は、鉄イオンと同様、水に溶けているので光合成生物の昆布の細胞膜が容易に摂取でき、色素濃度を高め昆布の品質をより一層高めることができる。
さらに、鉄イオンは少なくとも十数メートルの範囲に広がるのである。
このため人為的に鉄粉を供給して昆布の品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1発明にかかる海底の状態の説明図である。
【図2】ドロドロにした昆布体の沈設状態の説明図である。
【図3】鉄粉の散布状態の説明図である。
【符号の説明】
【0019】
1 海底
2 ドロドロにした昆布体
3 鉄粉
【出願人】 【識別番号】503373702
【氏名又は名称】姥澤 糺
【識別番号】503373724
【氏名又は名称】廣瀬 徳市
【出願日】 平成15年10月10日(2003.10.10)
【代理人】 【識別番号】100069176
【弁理士】
【氏名又は名称】川成 靖夫

【公開番号】 特開2005−110637(P2005−110637A)
【公開日】 平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願番号】 特願2003−352295(P2003−352295)