| 【発明の名称】 |
芝草の育成方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】松原 隆志 【住所又は居所】東京都清瀬市下清戸4丁目640番地 株式会社大林組技術研究所内
【氏名】辻 博和 【住所又は居所】東京都港区港南2丁目15番2号 株式会社大林組東京本社内
|
| 【要約】 |
【課題】種子の追い播き部位における矮化剤の散布を省略する。
【解決手段】植物成長抑制剤により徒長防止処理がなされた芝草2の造成地1における芝草2の欠落部位1aに、追い播き用の芝草種子を播いて欠落部位1aの周縁部と同一植生密度で芝草2を生長させるようにした芝草の造成方法において、追い播き用種子3は、植物成長抑制剤の溶液に予め芝草2の種子を含浸したものである。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 植物成長抑制剤により徒長防止処理が施された芝草造成地における芝草の欠落部位に、追い播き用の芝草種子を播いて欠落部位の周縁部と同一植生密度で芝草を生長させる芝草の造成方法において、 前記追い播き用種子は、植物成長抑制剤の溶液に予め芝草の種子を含浸したものであることを特徴とする芝草の育成方法。 【請求項2】 前記追い播き用種子は、植物成長抑制剤の溶液に予め芝草の種子を含浸し、引き上げ乾燥した種子であることを特徴とする請求項1に記載の芝草の育成方法。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、芝草の育成方法に関する。 【背景技術】 【0002】 芝草の育成方法の一つに、予備育成段階で低照度に保ちつつ芝草の苗床を造成し、この苗床を実際のピッチ、グリーンなどの芝草地に移植することで、従来に比べて、均一に葉が密生し、きめの細かな芝草地を得るものがある。 【0003】 このような低照度下での芝草の成長は徒長を伴うため、一般に、徒長を防止する目的で植物成長抑制剤(矮化剤)を定期的に葉面散布するが、矮化剤は、過度に植物体内に摂取されると矮小化効果が強く発現し、伸長が極度に抑制されてしまうため、適度な濃度と適度な間隔で散布する必要があった。また、芝草を造成しようとする場合には、病害その他の要因で部分的に芝草の生育が後退し、欠落部位が生じるおそれもある。 【0004】 したがって、生育不良となった部位には種子を追い播きし、周囲部位との均一化を図る必要がある。また、追い播きを行った芝草にあっても、その徒長を防止するため、発芽後、1〜2週間程度で成長抑制剤を葉面に散布する必要がある。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、このような従来の方法においては、既存生育部位との境界上で抑制剤が既存生育側に散逸し、この部分が生育不良となるおそれがあり、この場合、均一な植生密度とならず、境界部での均一性を損なう原因となる。 【0006】 また、追い播き部位が広い面積にわたる場合には、抑制剤の散布面積もそれに応じて広くなることから、大きな手数がかかるため、実用上の難があった。 【0007】 本発明は、以上の課題を解決するものであり、その目的は、種子の追い播き部位における植物成長抑制剤の散布を省略し、かつ使用量も必要最小量とした芝草の育成方法を提供するものである。 【課題を解決するための手段】 【0008】 前記目的を達成するため本発明方法は、植物成長抑制剤により徒長防止処理が施された芝草造成地における芝草の欠落部位に、追い播き用の芝草種子を播いて欠落部位の周縁部と同一植生密度で芝草を生長させる芝草の造成方法において、前記追い播き用種子は、植物成長抑制剤の溶液に予め芝草の種子を含浸したものであることを特徴とする。 【0009】 また、本発明方法に用いる追い播き用種子は、植物成長抑制剤の溶液に予め芝草の種子を含浸し、引き上げ後乾燥したものを用いるものである。 【発明の効果】 【0010】 本発明方法においては、発芽時において、すでに植物体内に取り入れられた植物成長抑制剤によりその徒長が抑制されるため、発芽後の抑制剤の葉面散布が不要となり、省力化を図ることができる。また、抑制剤を葉面に散布する方法と比較して調整剤の植物体内への定着率が高くなり、調整剤使用量の削減を図ることができ、さらに葉面散布に伴う周囲への影響も防止できる。 【0011】 また、請求項2に記載の発明では、現場処理でなく、予め別の場所で加工された種子を用いることで施工の簡素化を図ることができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0012】 以下、本発明方法を実施するための最良の形態について説明する。本発明方法の対象となる芝草は、多数の種類があり、主として野芝や高麗芝などに代表される暖地型芝草と寒地型の2種類に大別され、前者は一般的にソッドまたはストロンと称される貼り芝による造成、後者は種子繁殖による造成方法が用いられているが、本発明方法は後者の寒地型芝草に用いて好適である。 【0013】 寒地型芝草の代表例としては、Agrotis属に属するグリーンベントグラス、コロニアルベントグラス、Poa属に属するケンタッキーブルーグラス、ラフブルーグラス、Festuca属に属するファインフェスク、トールフェスク、Lolium属に属するペレニアルライグラス、イタリアンライグラスなどが掲げられる。 【0014】 以上の寒地型芝草は、葉色が鮮緑色〜濃緑色であり、きわめて美しく、耐寒性に富み、冬期であっても緑色を維持できるなどの特徴があり、このためこれら芝草の用途はゴルフ場のグリーン、ティ、フェアウエイ、サッカー場のピッチ、競馬場など、装飾用芝草として賞揚されている。その反面、高温多湿条件下での育成が難しく、また耐病性が低く、管理が難しいなどの欠点をも併せ持つものである。 【0015】 以上の寒地型芝草は、例えば納屋などの低照度下の雰囲気におかれた排水性の良好な芝草造成用の敷地に芝草の種子が適度な分散度合いで播き出され、適度な灌水施肥、刈り込みなどの作業により育成される結果、図1(a)に示すように、芝草造成用敷地1内には芝草2が繁殖する。なお、図は単なるシンボル化した模式的概念を示すものであり、実際には絨毯状の密な芝草地となる。 【0016】 そして、芝草2の発芽後、葉がある程度成長した時点で、徒長を防止するために、植物成長抑制剤(以下矮化剤と称する)がその葉面に散布され、これにより敷地1の表面は密で均一な草丈に成長した芝草2で一面に絨毯状に覆われる。 【0017】 本発明方法に用いられる矮化剤は、低照度下での芝草の無駄な徒長を抑制し、ある程度成長を抑制するために用いられ、その代表例としてはパクロブトラゾール剤(例えば、バウンテイフロアブル(商品名))、フルルプソミドール剤(例えば、グリーンフィールド(商品名))が挙げられる。 【0018】 本発明の施工方法としては、前記矮化剤を水中に溶解した所定濃度の希釈液を葉面散布することで無駄な成長が抑制される。例えば、その希釈倍率は5000〜10000、散布間隔は1回/日または1回/2日、1回当たりの散布量は、0.2〜1リットル/m2程度であり、成長までに定期的に散布することが望ましく、この結果、適切な刈り込み作業により芝草の平均草丈は2〜3cm程度に平均化された草丈で密集状態に造成される。 【0019】 以上のように育成管理を行っていたとしても、芝草地には(b)に示すごとく、例えばスポーツ競技による損傷や、病害、雑草の蔓延による欠落、害虫の食害、散布した調整剤の部分的偏在による過度の矮化現象などによって、島状に欠落部位1aが生ずる場合がある。 【0020】 したがって、このような欠落部位1aが生じた場合には、当該部位1aにはその原因に応じて表土入れ替え、消毒などの適度な処置を施した後、修復用の改質種子3を追い播きする。 【0021】 この改質種子3は、前記と同一の種子1を適度な希釈倍率に希釈した前記と同一の矮化剤溶液中に所定時間(例えば1時間程度)含浸し、その後希釈液中から種子を取り出したものを用いる。 【0022】 矮化剤の希釈倍率は、利用する草種により5000〜10000倍、浸積時間は1〜30分程度が望ましく、種子中に含浸した調整剤は、葉面散布した場合と同様に植物体内に取り入れられ、種子を播き出し、発芽した後は、矮化剤が作用し、徒長を生ずることなく、適宜な成長度合いとなる。なお、乾燥中も浸漬が継続するため、浸漬時間を1分程度の短い時間としても問題はない。 【0023】 したがって、欠落部位1aにおいても、他の一般部位と同様に徒長を伴うことなく芝草2が成長する。また、この成長度合いは播き出し期日の遅延により一般部位よりも草丈は低く、初期状態においては修復部分が目立つが、成長に応じて径日後は欠落部位1aと敷地1の一般部位との境界は目立たなくなり、均一な芝草地が得られるものとなる。 【0024】 なお、欠落部位修復用の改質種子3としては、現場で一般種子を浸漬処理したものをそのまま使用してもよいし、予め浸漬、風乾し、保存したものを用いても効果は同様である。 【0025】 また、本実施形態では育成する芝草としてペレニアルライグラスを用いたが、他の播種栽培型の寒地型芝草、さらには暖地型芝草にも適用できることは勿論である。 【実施例】 【0026】 ==目的== 芝草の種子に以下の(1)〜(3)の試験を行い、芝草地の育成上有効であるか否かを検討した。 (1)芝草種子を植物成長調整剤(矮化剤)に一定時間浸漬・給水させた後に播種した場合、発芽した植物体が矮化効果を示すか否か。矮小化効果を得る上での最適溶液濃度と浸漬、吸水時間を確認する。 (2)現場処理でなく、(1)のごとく処理を行い、乾燥させた種子を播種した場合に矮化効果を示すか否か、及び発芽率低下があるか否か。またこのときの最適な溶液濃度と浸漬、吸水時間を確認する。 (3)実際のピッチに播種した場合を想定し、種子表面に付着した剤が灌漑水によって流亡し、剤の効果が低下しないか否か。またこのときの最適な溶液濃度と浸漬、吸水時間を確認する。 【0027】 ==矮化効果の確認(目的1)== 1)条件及び方法 ・使用した芝種 ペレニアルライグラス:イマジン(品種名) ・矮化剤の種類と濃度 バウンティフロアブルの10000倍、5000倍、1000倍希釈液をシャーレ内の脱脂綿に含浸させて苗床とした。対照としては脱イオン水を使用した。 ・処理条件: (a)直径9cmポリ滅菌シャーレに脱脂綿を敷き、これに所定濃度の矮化剤溶液を含浸させた。 (b)芝草種子を各々200粒程度脱脂綿に播き、軽く押し付けて溶液に浸漬した。 (c)シャーレを25度C、室内光条件(1000 lux程度)におき種子の吸水を開始した。 (d)1)24時間後、2)48時間後に各シャーレから20粒を脱脂綿を入れたシャーレに移し、同じく25度C、1000 luxの条件で発芽育成させた。 (e)矮化剤中で発芽育成したもの、脱イオン水中で発芽育成したものを同時に行った。 【0028】 2)結果 本試験での発芽環境である25度C、密閉条件ではペレニアルライグラスは概ね3日程度で発芽する。したがって、浸漬、吸水時間としては発芽に至らず、かつ発芽に必要な吸水はある程度進行していると思われる24時間及び48時間を採用した。本試験においては、25度C、3000 luxの条件で発芽後、2週間までの初期育成を観察した。 バウンティフロアブル溶液の濃度は1000,5000,10000倍としたが、いずれの濃度においても初期生育では明瞭な矮化作用が認められ、浸漬処理種子を使用することで矮化した芽生えを得ることが明らかになった。しかしなから、24時間処理種子と、48時間処理種子の間で矮化の程度に大きな差異は認められなかった。 各濃度のバウンティフロアブルを含む「培地」に播種し、そのまま生育を続けた種子では、発芽自体には著しい阻害は認められなかったものの、その後は見かけ上、生長が停止した状態となることが認められた。 【0029】 ==乾燥した処理種子の矮小化効果と発芽率(目的2)== 1)条件および方法 ・使用した芝種 ペレニアルライグラス:ディバイン(品種名) ・矮化剤の種類と濃度 バウンティフロアブルを、10000倍、5000倍、1000倍に希釈し、これをシャーレに注いだ。 ・処理条件 (a)直径9cmポリ滅菌シャーレに脱脂綿を敷き、これに所定濃度の矮化剤溶液を注入した。 (b)芝草種子を各々200粒程度シャーレに入れ、溶液に浸漬した。 (c)シャーレを室内環境におき種子の吸水を開始した。 (d)1)1分後、2)10分後、3)30分後に各シャーレの溶液を流し出した。 (e)シャーレ上でそのまま3日間風乾させた後、25粒を脱イオン水を含ませた脱脂綿を入れたシャーレに移し、25度C、3000 luxの条件で発芽・育成した。 (f)同時に無処理(Control)の種子も同条件で播種した。 (g)2週間後発芽率及び草丈の調査を行った。 【0030】 2)結果 ・発芽率調査 発芽率調査を行った結果を図2に示す。図において、無処理の種子の発芽率が100パーセントであるのに対し、処理した種子の発芽率は多少低下することがわかった。但し、購入した種子の保証発芽率は85%以上となっており、処理種子のうち、1000倍、5000倍希釈溶液浸漬のものについてはこれを越えており、10000倍の種子も発芽率が80%を超えており、実用上問題となる程度ではなかった。このように、処理濃度が高いほど発芽率の低下は少なかった。また、浸漬・吸水時間と発芽率との間に相関関係は見られなかった。 【0031】 ・矮化剤溶液濃度と浸漬時間に対する矮化効果 草丈調査を行った結果を図3に示す。前記の実験に比較して、浸漬・吸水時間24時間、48時間から30分以内となったが、十分な矮化効果が認められた。溶液濃度と矮化効果には相関関係が見られた。1000倍では発芽後数mmで生育を停止する個体が見られた。10000倍では葉色が薄く、徒長する傾向が多く見られた。それ故に、ペレニアルライグラスでは実用上5000倍程度が適していると判断された。浸漬・吸水時間と矮化効果との間には、1000倍、5000倍ではその傾向が見られなかったが、10000倍になると、時間が長いほど矮化効果が強くなると考えられた。5000倍を採用した場合には、浸漬・吸水の作業効率を優先して、1分程度で十分と考えられた。 【0032】 ==灌水処理した矮化処理種子の矮化効果と発芽率(目的3)== 1)条件および方法 ・使用した芝種 ペレニアルライグラス:ディバイン(品種名) ・矮化剤の種類と濃度 バウンティフロアブルを、10000倍、5000倍、1000倍に希釈し、これをシャーレに注いだ。 ・処理条件 (a)直径9cmポリ滅菌シャーレに所定濃度の矮化剤溶液を注いだ。 (b)芝草種子を各々200粒程度シャーレに入れて溶液に浸漬した。 (c)シャーレを室内環境におき種子の吸水を開始した。 (d)1)1分後、2)10分後、3)30分後に各シャーレの溶液を流し出した。 (e)3日程度乾燥させた後、25粒を脱イオン水を含ませた脱脂綿を入れたシャーレに移し、25度C、3000 luxの条件で発芽・育成した。 (f)同時に無処理(Control)の種子も同条件で播種した。 (g)半数のシャーレについては、播種後1週間の間、毎日1回灌水処理を行った。具体的には、シャーレ上の種子に洗ビンから脱イオン水を注ぎ、種子が浮く前にこれを停止し、シャーレ内の灌漑水を流し出す作業を3回繰り返した。 (h)2週間後、発芽率および草丈の調査を行った。 【0033】 2)結果 ・発芽率調査 発芽率調査を行った結果を図4に示す。無処理の種子の発芽率が100%であるのに対し、矮化処理種子の発芽率は多少低下することを再確認した。浸漬・吸水時間と発芽率との間に相関関係は認められなかった。また、灌水処理による発芽率の変化は認められなかった。 【0034】 ・灌水処理に対する矮化効果 矮化剤溶液濃度と矮化効果の傾向は、前記実験と同様に正の相関が見られた。灌水処理に対する矮化効果は、前記実験と比較して一定の低下が見られた。前記実験で良好な結果となった5000倍の矮化剤溶液による矮化効果と、1000倍の矮化剤により処理した後に灌水処理した矮化効果が同等であった。 しかし、現場での灌水処理は、処理強度(灌水頻度)が不確定であるため、1000倍の矮化剤で処理された種子に、灌水が多くなされなかった場合、ペレニアルライグラスの実用育成範囲を下回ってしまう危険があるため、5000倍の矮化剤による処理が最も好ましいと判断される。 浸漬・吸水時間と矮化効果との間には、30分の処理を行ったものに関しては、矮化効果が強くなる傾向がみられた。 【図面の簡単な説明】 【0035】 【図1】(a)〜(c)は本発明方法を示す模式的説明図である。 【図2】矮化剤濃度及び浸漬時間と発芽率の関係を示すグラフである。 【図3】矮化剤濃度及び浸漬時間と草丈の関係を示すグラフである。 【図4】矮化剤濃度、浸漬時間及び灌水処理と発芽率の関係を示すグラフである。 【図5】矮化剤濃度、浸漬時間及び灌水処理と草丈の関係を示すグラフである。 【符号の説明】 【0036】 1 芝草造成用敷地 1a 欠落部位 2 芝草 3 改質種子
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000000549 【氏名又は名称】株式会社大林組 【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜東4番33号
|
| 【出願日】 |
平成15年10月8日(2003.10.8) |
| 【代理人】 |
【識別番号】110000176 【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
|
| 【公開番号】 |
特開2005−110589(P2005−110589A) |
| 【公開日】 |
平成17年4月28日(2005.4.28) |
| 【出願番号】 |
特願2003−349796(P2003−349796) |
|