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【発明の名称】 植物育成装置
【発明者】 【氏名】谷 浩路
【住所又は居所】長野県諏訪市大和3丁目3番5号 セイコーエプソン株式会社内

【要約】 【課題】点光源ではなく面光源として機能し、これによって対象となる植物のほぼ全域に光を良好に照射することができ、しかも大きなスペースをとらずに省スペース化も可能となる光照射手段を備えた、植物育成装置を提供する。

【解決手段】光を照射して植物4を育成する植物育成装置1である。光の照射手段として、有機EL装置からなる有機ELパネル2を備えている。有機ELパネル2は、異なる波長域の光を複数発光するものであってもよく、透光性パネルであってもよく、フレキシブル性を有していてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を照射して植物を育成する植物育成装置であって、
光の照射手段として有機EL装置からなる有機ELパネルを備えたことを特徴とする植物育成装置。
【請求項2】
前記有機ELパネルが異なる波長域の光を複数発光するものであることを特徴とする請求項1記載の植物育成装置。
【請求項3】
育成対象となる植物を容器内に有してなり、前記容器の内面に前記有機パネルを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の植物育成装置。
【請求項4】
前記有機ELパネルが、一対の電極とこれらの間に設けられた発光層とを備えてなり、前記一対の電極がいずれも透光性材料からなることにより、透光性パネルとなっていることを特徴とする請求項1記載の植物育成装置。
【請求項5】
前記有機ELパネルが、複数枚重ねられて光の照射手段を構成していることを特徴とする請求項4記載の植物育成装置。
【請求項6】
前記有機ELパネルが、育成対象となる植物を有した容器の仕切りとして用いられていることを特徴とする請求項4記載の植物育成装置。
【請求項7】
前記有機ELパネルが、フレキシブル性を有していることを特徴とする請求項1又は4記載の植物育成装置。
【請求項8】
前記有機ELパネルによって育成対象となる植物を有した容器の少なくとも一部が形成されていることを特徴とする請求項7記載の植物育成装置。


【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、光の照射手段として有機EL装置からなる有機ELパネルを備えた植物育成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の育成においては、光が大きな役割を担っており、特に成長段階に応じて特定の波長の光が必要であることが、各種の研究によって解明されつつある。例えば、光は直接光合成に用いられ、さらに、形態形成や生態生理的反応を介して成長をコントロールする作用も有していると言われている。具体的には、組織の伸長、花芽の形成などの現象が、光の色(波長)に影響を受けることが知られている。
【0003】
植物育成に関しての、光の影響の研究が進むに連れ、植物育成の促進やその安定化などの観点から、自然光(太陽光)以外の人工光を利用して植物の育成を行うことが検討されている。そして、このような人工光を利用する手法として、例えば発光ダイオードやレーザーダイオードを光源として用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−281330号公報
【特許文献2】特開2001−95376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発光ダイオードやレーザーダイオードは基本的に点光源であるため、これから植物に対して光を照射しようとした場合、光があたる箇所がわずかとなり、また葉や枝に隠れてしまって照射がなされない箇所も多くなってしまう。そして、光が良好に照射されないことにより、対象となる植物に対しての十分な育成効果があげられないといった問題が生じてしまう。
このような問題を解消するため、光源(点光源)を多数配置し、育成する植物に対して多数の光源から光を照射するといったことも考えられるが、その場合には、各光源をどのように配置するか、さらには点光源を多数設ける場合のスペースの確保など、新たな課題が多く生じてしまう。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、点光源ではなく面光源として機能し、これによって対象となる植物のほぼ全域に光を良好に照射することができ、しかも大きなスペースをとらずに省スペース化も可能となる光照射手段を備えた、植物育成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため本発明の植物育成装置は、光を照射して植物を育成する植物育成装置であって、光の照射手段として有機EL装置からなる有機ELパネルを備えたことを特徴としている。
この植物育成装置によれば、点光源ではなく面光源である有機ELパネルを光の照射手段としているので、育成する植物に対してそのほぼ全域に光を良好に照射することが可能になる。また、有機ELパネルは一般的に薄厚であることから、大きなスペースを必要とせず、したがって省スペース化が可能となる。
【0007】
また、前記植物育成装置においては、前記有機ELパネルが異なる波長域の光を複数発光するものであるのが好ましい。
このようにすれば、例えば有機ELパネルが発光する複数の光の波長域を、それぞれ植物育成に必要な波長となるように形成しておくことにより、一枚の有機ELパネルから複数の必要波長を照射させることができ、したがって複数の有機ELパネルを用意する場合に比べて省スペース化が可能になる。
【0008】
また、前記植物育成装置においては、育成対象となる植物を容器内に有してなり、前記容器の内面に前記有機パネルを備えているのが好ましい。
このようにすれば、例えば植物を容器ごと移送する際に、移送中においても植物の育成を促すことが可能となる。
【0009】
また、前記植物育成装置においては、前記有機ELパネルが、一対の電極とこれらの間に設けられた発光層とを備えてなり、前記一対の電極がいずれも透光性材料からなることにより、透光性パネルとなっているのが好ましい。
このようにすれば、日照時にはこの有機ELパネルを透過させて自然光(太陽光)を対象となる植物に照射し、夜間や雨天、曇天時等にのみ有機ELパネルから光を照射することにより、省エネルギー化を図ることが可能になる。
【0010】
なお、この植物育成装置においては、前記有機ELパネルが、複数枚重ねられて光の照射手段を構成しているのが好ましい。
このようにすれば、特に発光する光の波長が異なる有機ELパネルを複数枚用意しておくことにより、例えば光の波長を選択的に切り替えて照射することが可能になる。また、これらを同時に照射させることで異なる波長の光の合成光を照射することも可能になる。さらに、複数枚を重ねて配置することで省スペース化を図ることも可能になる
【0011】
また、この植物育成装置においては、前記有機ELパネルが、育成対象となる植物を有した容器の仕切りとして用いられているのが好ましい。
前記有機ELパネルからなる透光性パネルは、一対の電極がいずれも透光性材料からなっていることにより、一対の電極のそれぞれの側に光を出射させることが可能になる。そこで、これを容器の仕切りとすれば、この仕切りで隔てられた両側のそれぞれの植物に対して光を照射することが可能になる。
【0012】
また、前記植物育成装置においては、前記有機ELパネルが、フレキシブル性を有しているのが好ましい。なお、その場合に、前記有機ELパネルによって育成対象となる植物を有した容器の少なくとも一部が形成されているのが好ましい。
前記有機ELパネルがフレキシブル性を有していることにより、育成対象となる植物の形態に応じた種々の形態で使用することが可能になる。例えば、この有機ELパネルによって有底円筒状の容器の側壁、すなわち円筒部を形成することが可能になり、その場合に、容器内で育成する植物に対してこれの全周に光を均一に照射することが可能になる。また、特にこの有機ELパネルが透光性パネルとなっている場合には、容器の側壁を通して中の植物を観賞しあるいはその生育状況を確認することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の植物育成装置を詳しく説明する。
図1は、本発明の植物育成装置の第1の実施形態を示す図であり、図1中符号1は植物育成装置である。この植物育成装置1は、光を照射して花や草等の植物、すなわち観象用や食用の植物を育成するもので、光の照射手段として有機エレクトロルミネッセンスパネル(以下、有機ELパネルと記す)2を備えたものである。図1に示した第1の実施形態では、植木鉢やプランター等からなる容器3内に土や水等の養分供給源(図示せず)が入れられ、この養分供給源に植物4が植えられている。そして、この植物4に対して光を照射する有機ELパネル2と、この有機ELパネル2を支持し、かつこれを容器3に固定する固定具5とから、植物育成装置1が構成されている。
【0014】
このような構成の植物育成装置1において光の照射手段となる有機ELパネル2は、有機エレクトロルミネッセンス装置(以下、有機EL装置と記す)からなるものである。すなわち、この有機EL装置は、図2に示すように、透明基板6上に透明電極7、正孔注入/輸送層8、発光層9、陰極10をこの順に積層して発光素子、すなわち有機EL素子を形成したもので、発光した光を透明基板6側から出射させる、いわゆるボトムエミッション型のものである。
【0015】
透明基板6としては、本実施形態では透明ガラスや石英等が用いられている。ただし、後述するように有機ELパネル2をフレキシブル性のパネル、すなわち可撓性のパネルとする場合には、透明基板6についても、フレキシブル性を有した薄いシート状のもの、具体的には樹脂製のシートやフィルムからなるものが用いられる。
透明電極7は、後述するように発光層9で発光した光を透過させるため、透光性材料、すなわち透明導電材料によって形成されたものである。透明導電材料としてはITOが好適とされるが、これ以外にも、例えば酸化インジウム・酸化亜鉛系アモルファス透明導電膜(Indium Zinc Oxide :IZO/アイ・ゼット・オー)(登録商標))(出光興産社製)等を用いることができる。なお、本実施形態ではITOを用いるものとする。
この透明電極7の膜厚については、特に限定されることなく、例えば50〜200nm程度とされる。また、ITO(透明電極7)の表面にはOプラズマ処理が施されており、これによって電極表面の洗浄、及び仕事関数の調整がなされ、さらに親液性が付与されている。
【0016】
正孔注入/輸送層8は、例えばポリチオフェン誘導体やポリピロール誘導体などにポリスチレンスルフォン酸が添加されてなるものから形成されたものである。すなわち、正孔注入/輸送層8の形成材料として具体的には、3,4−ポリエチレンジオシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルフォン酸(PSS)との分散液、つまり、3,4−ポリエチレンジオシチオフェンとポリスチレンスルフォン酸とを混合し、さらにこれを極性溶媒(分散媒)である水に分散させた分散液が好適に用いられる。
【0017】
なお、極性溶媒(分散媒)としては、前記の水に代えてイソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルブタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)及びその誘導体、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のグリコールエーテル類等を用いることもできる。
また、正孔注入/輸送層8の形成材料についても、前記のものに限定されることなく種々のものが使用可能である。例えば、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体などを、適宜な分散媒、例えば前記のポリスチレンスルフォン酸に分散させたものなどが使用可能である。
【0018】
発光層9は、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料によって形成されている。具体的には、特に高分子材料が好適に用いられ、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素等が用いられる。また、これら高分子材料にルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープして用いることもできる。
なお、本実施形態では、植物育成に有効な波長、すなわち容器3内で育成される植物の生長段階に対応した特定波長域の光を発光する材料が、適宜に選択されて用いられている。例えば、630nm〜670nm程度の波長域の赤色光が有効である場合、その発光材料としては、ペリレン、ローダミン系色素などが好適に用いられる。
【0019】
このような材料を液状化するための溶媒としては、前記正孔注入/輸送層8を再溶解しないよう、該正孔注入/輸送層8に対して不溶な非極性溶媒が用いられる。特に、発光層形成材料を後述するようにスピンコート法やディップ法によって塗布する場合には、前記非極性溶媒として、トルエン、キシレン等が好適に用いられる。また、インクジェット法等の液滴吐出法によって塗布する場合には、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、またはこれらの混合物が用いられる。
【0020】
陰極10としては、発光層9側(下部側)に仕事関数が小さい材料を形成するのが望ましく、例えばCa、Baなどが用いられる。また、上部側には発光層9側よりも仕事関数が高い材料、例えばAlが用いられる。ここで、Alは発光層9からの光を反射する反射層としても機能するものとなる。このような陰極10の膜厚については、100〜1000nmとするのが好ましく、特に200〜500nm程度とするのが好ましい。なお、本実施形態はボトムエミッション型であることから、この陰極50は特に光透過性である必要はない。
【0021】
ただし、後述するように有機ELパネル2を透光性のパネル、すなわち透明パネルとする場合には、この陰極10についても透光性材料、すなわち透明導電材料によって形成する必要がある。その場合に、陰極10としては、電子注入層と導電層との積層構造とするのが好ましい。具体的には、電子注入層としてバソクプロイン(BCP)とセシウムとの共蒸着膜や、光が透過する程度に薄く形成したカルシウムなどの低仕事関数の金属薄膜を用いるのが好ましく、導電層としては、前記のITOやIZOを用いるのが好ましい。
【0022】
また、このようにして透明基板6上に形成された有機EL素子には、その透明電極7と陰極10との間に電圧を印加するための電源11が設けられている。この電源11は、有機ELパネル2に一体に設けられ、あるいは別に設けられて該有機ELパネル2に接続されるもので、透明電極7と陰極10との間に電圧を印加して電流を流すことにより、発光層9で発光をなさせるものである。すなわち、透明電極7と陰極10との間に電圧が印加されると、陽極(透明電極7)側から正孔注入/輸送層8を経て注入された正孔と、陰極10側から注入された電子とが発光層9内で結合することにより、発光するようになっている。なお、有機EL素子は基本的に低消費電力のものであるので、この電源11としては小型のもので十分である。
【0023】
また、このようにして透明基板6上に積層された各層の上には、図示しないものの、これら各層からなる有機EL素子を覆って封止部材が設けられている。この封止部材としては、例えば電気絶縁性を有する板状の封止基板が用いられる。封止基板を用いた場合、この封止基板は前記の有機EL素子を覆った状態で封止樹脂により透明基板6に固定される。封止樹脂としては、例えば熱硬化樹脂や紫外線硬化樹脂が用いられ、特に熱硬化樹脂の一種であるエポキシ樹脂が好適に用いられる。また、封止基板を用いずに封止樹脂のみを用い、有機EL素子を覆ってこれを封止するようにしてもよい。
【0024】
なお、封止基板を用いる場合、特に有機ELパネル2をフレキシブル性のパネル、すなわち可撓性のパネルとする場合には、封止基板についても、フレキシブル性を有した薄いシート状のもの、具体的には樹脂製のシートやフィルムからなるものが用いられる。また、有機ELパネル2を透光性のパネル、すなわち透明パネルとする場合には、封止基板や封止樹脂として、透光性の材料、すなわち透明な材料が用いられる。
【0025】
このような構成からなる有機ELパネル2を製造するには、まず、透明基板6を用意する。続いて、これの上に透明導電膜としてITOを蒸着法あるいはスパッタ法等によって成膜し、これにより透明電極7を形成する。
次に、この透明電極7上にプラズマ処理を施し、透明電極7の表面を洗浄するとともに、これに親液性を付与する。このOプラズマ処理については、例えばプラズマパワー100〜800kW、酸素ガス流量50〜100ml/min、基板搬送速度0.5〜10mm/sec、基板温度70〜90℃の条件で行う。
【0026】
次いで、正孔注入層形成工程によって正孔注入/輸送層8を形成する。この正孔注入層形成工程としては、液相プロセスによって数nm〜数百nmオーダーの薄膜を作製する方法が採用される。液相プロセスとは、成膜したい材料を溶解もしくは分散させることで液状体とし、この液状体をスピンコート法やディップ法、あるいは液滴吐出法(インクジェット法)等により、薄膜を作製する方法である。なお、液滴吐出法は任意の箇所に薄膜をパターニングすることができるのに対し、スピンコート法やディップ法は全面塗布に適していることから、この正孔輸送層形成工程においては、スピンコート法やディップ法によって前記の正孔注入層材料を透明電極7上に塗布するようにする。
【0027】
このようにして正孔注入層材料を透明電極7上に塗布したら、続いて乾燥処理および熱処理を行い、正孔輸送層材料に含まれる分散媒や溶媒を蒸発させることにより、透明電極7上に正孔注入/輸送層8を例えば数nm〜数百nmオーダーの薄膜に形成する。この乾燥処理については、窒素雰囲気中にて室温で圧力を133.3Pa(1Torr)程度とする条件で行うのが好ましい。また、この乾燥処理後の熱処理については、真空中にて200℃で10分間程度とする条件で行うのが好ましい。
なお、この正孔輸送層形成工程以降は、正孔注入/輸送層8および発光層9の酸化を防止すべく、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの不活性ガス雰囲気で行うのが好ましい。
【0028】
次いで、発光層形成工程によって発光層9を形成する。この発光層形成工程では、発光材料として高分子材料を用いているので、成膜法として特にスピンコート法やディップ法等の湿式法を採用することができる。すなわち、発光層形成材料をスピンコート法やディップ法で正孔注入/輸送層8上に塗布し、その後、乾燥処理および熱処理を行うことにより、正孔注入/輸送層8上に発光層9を形成することができる。ここで、特にスピンコート法やディップ法で発光層形成材料を塗布した場合、透明基板6に窒素を吹き付けるか、あるいは透明基板6を回転させて基板表面に気流を生じさせることにより、乾燥処理を行うのが好ましい。
【0029】
このように、先の正孔注入/輸送層8の形成や発光層9の形成を、スピンコート法や液滴吐出法等の低温での処理が可能な湿式法で行うことにより、蒸着法やスパッタ法で行う場合に比べて透明基板6に対しての熱的負荷を小さくすることができる。したがって、透明基板6として前述した樹脂フィルムなどの薄くてフレキシブルなものを支障なく使用することができる。
なお、この発光層形成工程では、正孔注入/輸送層8の再溶解を防止するため、発光層形成材料に用いる溶媒として、前述したように正孔注入/輸送層8に対して不溶な非極性溶媒を用いる。
【0030】
次いで、陰極層形成工程によって陰極10を形成し、有機EL素子を形成する。この陰極層形成工程では、例えば蒸着法やスパッタ法等によってAl等の陰極材料を成膜することにより、陰極10を得る。なお、特に陰極10を透明に形成すべく、前述したようにこれを電子注入層と導電層との積層構造とする場合、これらの成膜方法としては、抵抗加熱蒸着法やスパッタ法など、従来公知の成膜方法を適宜に選択して用いることができる。
その後、封止工程によって有機EL素子の封止を行う。この封止工程では、作製した有機EL素子内部に水や酸素が浸入するのを防ぐため、封止基板と透明基板6とを封止樹脂にて封止する。あるいは、封止基板を用いずに封止樹脂で直接有機EL装置を覆い、これを封止する。なお、この封止工程は、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行うのが好ましい。
【0031】
以上の工程を経て作製された有機ELパネル2は、電源11によって両電極間に電圧を印加することにより、透明電極7側から発光層9の形成材料によって設定した波長域の光を良好に出射させることができる。
また、このような有機ELパネル2は、本実施形態では、図1に示したように固定具5に取り付けられ、支持されたことにより、この固定具5とともに植物育成装置1を構成するものとなっている。
【0032】
そして、この植物育成装置1にあっては、固定具5が容器3に着脱可能となっていることにより、有機ELパネル2も容器3に着脱可能に取り付けられ、これにより容器3内の植物4に対して光を照射できるようになっている。すなわち、例えば太陽光が直接入射しないような屋内や、あるいは夜間等において、植物4の成長を促進したい場合に、電源11を入れて有機ELパネル2を発光させることにより、予め設定された特定波長域の光が植物4に照射し、これによって植物4はその成長が促進され、育成されるようになる。このとき、有機ELパネル2は点光源ではなく面光源であるので、植物4に対してそのほぼ全域に光を良好に照射することができる。また、有機ELパネル2は一般的に薄厚であることから、大きなスペースを必要とせず、したがって省スペース化を図ることができる。
【0033】
なお、前記実施形態では、有機ELパネル2としてその発光層9を単一層で形成し、単一の波長域の光のみを出射するようにしたが、有機ELパネル2として、例えば発光層が配置される部分を複数の領域に分割し、それぞれの領域に異なる発光層形成材料を配置して、互いに異なる波長域の光を発光する複数の発光層を形成するようにしてもよい。
すなわち、例えば各発光層から発光する複数の光の波長域を、それぞれ植物育成に必要な波長となるように形成しておくことにより、一枚の有機ELパネル2から複数の必要波長を照射させることができ、したがって複数の有機ELパネルを用意する場合に比べて省スペース化を図ることができる。
【0034】
また、有機ELパネル2に、光源(光照射手段)として機能する部分とは別に文字等を表示する部分を設けてもよく、あるいは、光源としての有機ELパネル2とは別に、文字等を表示する有機EL装置を設けて植物育成装置1を構成してもよい。このように文字等を表示する部分あるいは有機EL装置を設けることにより、例えば植物4の種類や育成状況などを記録しておき、必要に応じてこれを表示させることができる。
【0035】
図3(a)、(b)は、本発明の植物育成装置の第2の実施形態を示す図であり、図3(a)中の符号20a、図3(a)中の符号20bはそれぞれ植物育成装置である。図3(a)に示した植物育成装置20aは、植物4が植えられているプランター等に対して、ベルトコンベア式に移動するように構成されたもので、多数の有機ELパネル2が連接してなるものである。すなわち、この植物育成装置20aは、連接して形成された多数の有機ELパネル2からなる光照射手段21aと、これら有機パネル2をベルトコンベア式に移動させる駆動手段(図示せず)とを備えて構成されている。
【0036】
一方、図3(b)に示した植物育成装置20bでは、植物4が植えられているプランター等がベルトコンベア式に移動するように構成されており、これに対して連接した多数の有機ELパネル2は、固定された状態で設けられている。すなわち、この植物育成装置20bは、連接して形成された多数の有機ELパネル2からなる光照射手段21bと、植物4が植えられている側、例えばプランターを、ベルトコンベア式に移動させる駆動手段(図示せず)とを備えて構成されている。
【0037】
このような植物育成装置20a、20bにおいて、その光照射手段21a、21bとしては、例えばこれを構成する多数の有機パネル2を、少なくとも2種類以上の特定波長域の光を照射できるように、その発光層9の形成材料を選択しておく。なお、照射する特定波長域については、育成対象となる植物4の成長段階に応じた必要波長域に対応させておく。
そして、発光光の波長域を異ならせた各有機パネル2を、その波長域が植物4の成長段階に対応するように配置しておく。
【0038】
すなわち、図3(a)に示した植物育成装置20aでは、例えば有機パネル2aを、成長段階が初期の植物4aに対して効果的な波長域の光を照射できるようにしておき、有機パネル2bを、成長段階が中期の植物4bに対して効果的な波長域の光を照射できるようにしておき、有機パネル2cを、成長段階が後期の植物4cに対して効果的な波長域の光を照射できるようにしておく。そして、これら有機パネル2a、有機パネル2b、有機パネル2cをこの順に配置した光照射手段21aを、各有機パネル2a、2b、2cがそれぞれに対応する成長段階にある植物4a、4b、4cに対向するように前記駆動手段で移動させ、その状態でこれら植物4a、4b、4cに対してそれぞれの波長域の光を照射させる。そして、一定の時間光を照射し、所定の育成を終了させたら、前記駆動手段によって光照射手段21aを移動させ、各植物4a、4b、4cに対して次の成長段階に対応した波長域の光を照射するようにする。なお、駆動手段による光照射手段21aの移動については、これを停止させて光を照射させ、一定時間経過後に移動させ、所定距離移動させた後再度停止させて光を照射させる、といった動作を繰り返し行ってもよく、また、駆動手段による光照射手段21aの移動を十分にゆっくり行うことで、連続的に行わせるようにしてもよい。
【0039】
一方、図3(b)に示した植物育成装置20bでは、光照射手段21bを光照射手段21aと同様に構成しておき、各有機パネル2a、2b、2cを、それぞれに対応する成長段階にある植物4a、4b、4cに対向させ、その状態でこれら植物4a、4b、4cに対してそれぞれの波長域の光を照射させる。そして、一定の時間光を照射し、所定の育成を終了させたら、前記駆動手段によって植物4側を移動させ、移動させた各植物4a、4b、4cに対して光照射手段21bより次の成長段階に対応した波長域の光を照射するようにする。なお、この植物育成装置20bにあっても、駆動手段による各植物4の移動については、移動と停止を交互に繰り返してもよく、十分ゆっくりな移動を連続的に行うようにしてもよい。
【0040】
このような植物育成装置20a、20bにあっては、各成長段階にある植物4に対して、その成長段階に応じた特定波長域の光を自動的にかつ連続的あるいは断続的に照射することができ、したがってメンテナンスなどが容易であり、また各有機ELパネル2が薄型であるため、省スペース化が可能になる。
【0041】
図4は、本発明の植物育成装置の第3の実施形態を示す図であり、図4中符号30は植物育成装置である。図4に示した植物育成装置30が図1に示した植物育成装置1と主に異なるところは、有機ELパネル2が複数枚重ねられている点と、これら有機ELパネル2が透明パネルとなっている点である。
すなわち、図4に示した植物育成装置30は、複数枚(本実施形態では3枚)の有機ELパネル2と、これら有機ELパネル2を重ねた状態に保持し、かつこれら有機ELパネル2を容器3に固定する固定具31とから構成されている。
【0042】
3枚の有機ELパネル2は、前述したように、特に陰極10や封止基板等についてもこれらが透光性材料によって形成されたことにより、透光性パネル、すなわち透明パネルとなっている。また、これら有機ELパネル2が出射する光の各波長域は、本実施形態では、前記光照射手段21a、21bを構成する各有機ELパネル2a、2b、2cのそれぞれに、対応したものとなっている。すなわち、本実施形態の各有機ELパネル2は、そのうちの一枚が前記有機ELパネル2aと同じ波長域の発光をなし、他の一枚が前記有機ELパネル2bと同じ波長域の発光をなし、残りの一枚が前記有機ELパネル2cと同じ波長域の発光をなすように、その発光層の形成材料が選択されている。
【0043】
このような構成の植物育成装置30にあっては、3枚の有機ELパネル2をそれぞれ透明パネルにしたことから、容器3内の植物4側にある有機ELパネル2から植物4に光を照射できるのはもちろん、その内側にある有機ELパネル2や植物4と反対の側にある有機ELパネル2からも、その前側の有機ELパネル2を透過させて植物4に光を照射することができる。したがって、特に各有機ELパネル2を、その発光光の波長域が互いに異なるように形成しているので、植物4の成長段階に合わせて3枚の中から最適な波長域の光を選択的に切り替えて照射することができる。
【0044】
また、有機ELパネル2を透明パネルにしたことから、日照時にはこの有機ELパネル2を透過させて自然光(太陽光)を植物4に照射し、夜間や雨天、曇天時等にのみ有機ELパネル2から光を照射させることもできる。このようにすることにより、省エネルギー化を図ることができる。ただし、全ての有機ELパネル2を透明にすると、これら有機ELパネル2から照射した光が植物4と反対の側にも出射してしまい、効率が悪くなってしまう。そこで、植物4と反対の側に反射板を着脱可能に設けるか、あるいは、植物4と反対の側の有機ELパネル2を、透明パネルでなく通常のボトムエミッション型のものにしてもよい。
【0045】
また、このような植物育成装置30にあっては、複数枚(3枚)を重ねて配置することにより、省スペース化を図ることもできる。なお、本実施形態では有機ELパネル2を3枚重ねたが、重ねる枚数については、2枚であっても4枚以上であってもよいのはもちろんである。
また、図3(a)、(b)に示した各有機ELパネル2(2a、2b、2c)についても、これらを透明パネルとし、日照時にはこれら有機ELパネル2を透過させて自然光(太陽光)を植物4に照射するように構成することができる。
【0046】
図5は、本発明の植物育成装置の第4の実施形態を示す図であり、図5中符号40は植物育成装置である。図5に示した植物育成装置40は、有底円筒状の容器41内に植物4が植えられたもので、この容器41の開口に蓋42が着脱可能に取り付けられたものである。この植物育成装置40では、容器41の側壁のほぼ全体が、透明パネルであり、かつフレキシブル性が付与された可撓性の有機ELパネル2によって形成されている。すなわち、本実施形態における有機ELパネル2は、前述したようにその透明基板6や封止基板が、樹脂製のシートやフィルムなどのフレキシブル性を有したものからなっており、これによって可撓性の有機ELパネル2となっている。そして、このような構成のもとに、有機ELパネル2は円筒状に曲げられることにより、容器41の側壁を構成するものとなっている。なお、この有機ELパネル2は、透明パネルとなるべく、陰極10や封止基板等が透光性材料によって形成されているのは、前述した場合と同様である。
【0047】
このような植物育成装置40にあっては、特に容器41の側壁全体を有機ELパネル2によって形成したので、植物4に対してその全周からむらなく均一に光を照射することができ、これによって植物4を十分良好に育成することができる。また、特にこの有機ELパネル2が透明パネルとなっているので、容器41の側壁(有機ELパネル2)を通して中の植物4を観賞しあるいはその生育状況を確認することができる。さらに、例えば植物4を容器41ごと、すなわち植物育成装置40ごと、コンテナ等で移送することができ、その場合に、移送中においても植物4の育成を促すことができる。
【0048】
なお、この第4の実施形態においては、例えば容器41の側壁を、透明、半透明または不透明の一般的な樹脂等によって形成しておき、その内面に前記有機ELパネル2を貼設するようにしてもよい。
また、蓋42を有機ELパネル2によって形成し、あるいは蓋42の内面に有機ELパネル2を貼設するようにしてもよく、このように構成すれば、植物4に対してその上方から均一に光を照射することができる。
【0049】
図6は、本発明の植物育成装置の第5の実施形態を示す図であり、図6中符号50は植物育成装置である。図6に示した植物育成装置50は、プランター等の容器51内に植物4が植えられたもので、特に容器51の仕切り52として、前記有機ELパネル2が用いられたものである。仕切り52を構成する有機ELパネル2は、前述した透明パネルからなるものであって、両面発光をなすよう構成されたものである。このような構成のもとに、透明パネルからなる仕切り52は、その両側にある植物4のそれぞれに対して光を照射することができるようになっている。
よって、この植物育成装置50にあっては、光源を容器51の外側に設けることなく、容器51の構成要素である仕切り52によって容器51内の植物4に光を照射することができ、したがって省スペース化を図ることができる。
なお、透明パネルからなる仕切り52の枚数については、一枚であっても複数枚であってもよいのはもちろんであある。
【0050】
図7は、本発明の植物育成装置の第6の実施形態を示す図であり、図7中符号60は植物育成装置である。図7に示した植物育成装置60は、複数段の植物育成棚からなるものである。各植物育成棚61は、支持板(図示せず)と、この支持板の上面側に設けられた土や水等の養分供給源62と、支持板の下面側に貼設された有機ELパネル2とからなるものである。そして、この植物育成装置60では、養分供給源62に植物4を植え、この植物4に対してその上の植物育成棚61に設けられた有機ELパネル2から光を照射するようになっている。
【0051】
このような植物育成装置60にあっては、有機ELパネル2が面状発光体であることから、各植物育成棚61に植えられた植物4をその上から光を均一に照射することができ、また、その厚さが十分に薄いことから、ほとんど余分なスペースを必要とせず、これにより植物育成棚61が大型化してしまうのを抑えることもできる。
なお、前記有機ELパネル2についても、前述した透明パネルとし、両面発光をなさせるように構成してもよい。このように構成すれば、この透明パネル上の養分供給源62にも光を照射して植物4の根の部分にも光を照射することが可能になる。また、特に養分供給源62を水とする水耕栽培に適用すれば、光がこの水(養分供給源62)を透過することにより、植物4に対して上下から光を照射することが可能になる。
【0052】
以上に述べたように本発明の植物育成装置は、光の照射手段として有機ELパネルを備えたものであるから、育成する植物に対してそのほぼ全域に光を良好に照射することができ、したがって設置環境に影響を受けることなく植物を良好に育成することができる。また、有機ELパネルは薄厚であって大きなスペースを必要とせず、したがって省スペース化が可能となることから、都市空間における限られたスペースや、将来的には宇宙基地での植物育成にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の植物育成装置の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】有機ELパネルとなる有機EL装置の概略構成を示す側断面図である。
【図3】(a)、(b)は本発明の植物育成装置の第2の実施形態を示す図である。
【図4】本発明の植物育成装置の第3の実施形態を示す斜視図である。
【図5】本発明の植物育成装置の第4の実施形態を示す斜視図である。
【図6】本発明の植物育成装置の第5の実施形態を示す側面図である。
【図7】本発明の植物育成装置の第6の実施形態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0054】
1、20a、20b、30、40、50、60…植物育成装置、
2(2a、2b、2c)…有機ELパネル、
3、41、51…容器、4(4a、4b、4c)…植物、
21a、21b…光照射手段、42…蓋、52…仕切り
【出願人】 【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
【住所又は居所】東京都新宿区西新宿2丁目4番1号
【出願日】 平成15年9月10日(2003.9.10)
【代理人】 【識別番号】100095728
【弁理士】
【氏名又は名称】上柳 雅誉

【識別番号】100107076
【弁理士】
【氏名又は名称】藤綱 英吉

【識別番号】100107261
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 修

【公開番号】 特開2005−80608(P2005−80608A)
【公開日】 平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願番号】 特願2003−318445(P2003−318445)