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【発明の名称】 ハタケシメジ株、その栽培方法、及びそれを含む皮膚疾患抑制剤、高血圧症抑制剤
【発明者】 【氏名】江口 文陽

【氏名】松本 哲夫

【氏名】宮澤 紀子

【要約】 【課題】収穫量の増大を可能にするハタケシメジの栽培方法を提供する。

【解決手段】培地基材として、マイタケ菌床栽培の廃床を用いることを特徴とするハタケシメジの栽培方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地基材として、マイタケ菌床栽培の廃床を用いることを特徴とするハタケシメジの栽培方法。
【請求項2】
請求項1に記載の栽培方法において、培地基材としてさらに米糠及び/又はフスマを用いることを特徴とするハタケシメジの栽培方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の栽培方法において、廃床を6ヶ月以上堆積して用いることを特徴とするハタケシメジの栽培方法。
【請求項4】
寄託番号がFERM P−19498であるハタケシメジ株。
【請求項5】
寄託番号がFERM P−19499であるハタケシメジ株。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のハタケシメジ株の乾燥物又は抽出物を含む皮膚疾患抑制剤。
【請求項7】
請求項4又は5に記載のハタケシメジ株の乾燥物又は抽出物を含む高血圧症抑制剤。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はハタケシメジ株、その栽培方法、及びそれを含む皮膚疾患抑制剤、高血圧症抑制剤、特にその収穫量の増大に関する。
【背景技術】
【0002】
キノコは古くからその特有の食感や風味が愛好される一方で、その薬効についても知られており、多くのキノコが和漢薬や民間薬として用いられている。
また近年では、免疫賦活効果、抗アレルギー効果、コレステロール低下効果、抗白髪治療効果等数多くの有効な生理活性が報告されており、食品、医薬品あるいは化粧品素材として幅広く用いられている。そしてハタケシメジについても、いくつかの生理活性が報告されている。
【0003】
ハタケシメジ(Lyphyllum decastes)は、ハラタケ目、キシメジ科、シメジ連、シメジ属のキノコであり、キノコ類の中でもとりわけ美味であることが知られており、その人工栽培法については、これまで多くの試みがなされてきた。
例えばハタケシメジの人工栽培用培地として、オガクズやバーク堆肥等の腐植性基材に、米ヌカ、フスマ等の栄養添加剤を加えた培地に、発生率向上剤としてアルカリ土類金属化合物(特開平5−192035号公報)、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等の有機酸(特開平7−303419号公報)、あるいは浄水ケーキとカニ殻(特開平9−308373号公報)を添加する方法等が提案されている。
【特許文献1】特開平5−192035号公報
【特許文献2】特開平7−303419号公報
【特許文献3】特開平9−308373号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、いずれの方法も育成に長時間を要する、収量が少ない、発生が安定しない等の問題点があり、改良の余地があった。
また、同じ名称のキノコでも、生産方法が異なれば生理活性に違いが出ることが予測されるものの、ハタケシメジの培地と生理活性の関係については、具体的に報告されていなかった。
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、収穫量の増大を可能にするハタケシメジの栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明者らが鋭意検討を行った結果、マイタケ廃床を培地基材として用いることにより、ハタケシメジの子実体の発生が促進されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の第一の主題は、培地基材として、マイタケ菌床栽培の廃床を用いることを特徴とするハタケシメジの栽培方法である。
前記栽培方法において、培地基材としてさらに米糠及び/又はフスマを用いることが好適である。
前記栽培方法において、廃床を6ヶ月以上堆積して用いることが好適である。
【0006】
本発明の第二の主題は、寄託番号がFERM P−19498であるハタケシメジ株、寄託番号がFERM P−19499であるハタケシメジ株である。
本発明の第三の主題は、前記ハタケシメジ株の乾燥物又は抽出物を含む皮膚疾患抑制剤、及び高血圧症抑制剤である。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかるハタケシメジの栽培方法によれば、培地にマイタケ廃床を用いることにより、収穫量を増大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
(1)培地の調整
本発明において培地となる原料は、マイタケ菌床栽培の廃床を用いること以外は、本発明の効果を妨げない限り、その形態、使用態様、調製方法について特に限定されない。通常は、廃床の菌を死滅させて堆肥化して、その後、水分を調節して培養瓶又は培養袋等に充填し、殺菌処理された形態として栽培に使用される。堆肥化する方法については特に限定はなく、例えば、廃床の表面の菌糸体皮膜を除去し、約4ヶ月〜2年間堆積することにより行うことができる。
【0009】
また、培地は、水分が50〜70%となるように調節することが好ましい。かかる範囲とすることにより、ハタケシメジが良好に生育することができる。
また、本発明における栽培方法において、培地には上記廃床と共に、必要に応じて、各種副原料を添加することができる。副原料としては、例えば、米糠及びフスマ等の窒素源や、醸造絞り粕(ビール粕等)等の栄養補助源が挙げられる。副原料の配合量は、上記廃床に対して10〜20質量%であることが好ましい。かかる範囲とすることにより、ハタケシメジが良好に生育することができる。
培地を充填する容器は、本発明の効果を妨げない限り、特に限定されることはなく、適宜の容器に充填すればよい。通常は上方に開口を有する瓶形の容器(培養瓶)や袋状の容器(培養袋)が用いられる。
【0010】
(2)培地の殺菌
用意した培地を、蒸気殺菌等の殺菌手段により殺菌する。殺菌条件は従来どおりであり、ハタケシメジの生育に有害な害虫や微生物を殺菌できる限り、特に限定されないが、例えば120℃で40分間程度とすることができる。
【0011】
(3)種菌の接種
その後、20℃程度まで冷却してから、培地を充填した容器のほぼ中央に適宜の穴を開け、ハタケシメジの種菌を接種する。種菌の接種においては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、通常通りの方法で行うことができる。
穴の深さは特に限定するものではないが、菌回りの促進を考慮すると、容器の底部付近に達するまでの深さにすることが好ましい。
【0012】
(4)培養
種菌の接種後、培養して菌糸を培地内に蔓延させる。培養時の室温は20〜25℃、湿度は60〜100%であることが好ましく、菌糸が十分蔓延するまで培養させることが好ましい。培養期間は60〜70日程度である。
(5)子実体の発生
子実体を発生させるためには、培養時よりも室温を低下させ、室温は10〜20℃、湿度は80〜100%であることが好ましい。
【0013】
本発明においては、培地として重金属混入の懸念がある雑食動物の排泄物や化学肥料を使用しなくても、収量を上げることができる。
また本発明の栽培方法の培地として用いられる廃床は、本発明の栽培方法に用いる前に、既にマイタケ菌床栽培に用いられている。即ち、菌床中に含まれている可能性のある重金属は、菌糸生育中にマイタケ菌体内に吸収されるので、栽培終了後の廃床は、栽培前の菌床と比較して、重金属含有量が低減された状態にある。
このように、本発明の栽培方法においては、培地として、従来は廃棄処分されていた廃床を有効に再利用し、ハタケシメジの収量を上げることができ、しかも有害物の少ないハタケシメジの栽培が可能である。
【0014】
なお、本発明にかかるハタケシメジ株は、平成15年8月26日付で、工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されており、識別のための表示を群馬GLD−17号、群馬GLD−21号という。科学的性質等は以下の通りである。
1.科学的性質…菌の特徴:炭素源と窒素源を含む栄養培地下において、白色のコロニーを形成する。また、光学顕微鏡下において、クランプコネクション(かすがい連結)が観察される。
【0015】
2.分類学上の位置…担子菌
3.培養条件
(1)培地名…SMYA培地(S:サッカロース、M:マルトエキストラクト、Y:イーストエキストラクト、A:寒天)
S,A→市販品 M,Y→ディフコ社製(Difco)
(2)培地の組成…培地1000ml当たり
1% サッカロース 10g
1% マルトエキストラクト 10g
0.4% イーストエキストラクト 4g
2% 寒天 20g
(3)培地のpH…5.0〜7.0(最適pH5.5)
(4)培地の殺菌条件…121℃ 20分
(5)培地温度…22℃
(6)培養期間…14日間
(7)酸素要求性…好気性
【0016】
4.保管条件
凍結法にて保管できる。
(1)凍結条件…−80℃
(2)保護剤…10〜20%グリセリン水溶液(最適は20%)
(3)凍結後の復元率…1年で100%、3年で99%
5.生存試験の条件
(1)微生物の復元…40℃
(2)接種・培養・確認法…培養条件と同一条件による。
【0017】
本発明のハタケシメジ株を使用して、皮膚疾患抑制剤及び高血圧症抑制剤を製造することができる。本発明の皮膚疾患抑制剤及び高血圧症抑制剤は、経口投与して、皮膚疾患及び高血圧症の抑制のために適用する。皮膚疾患抑制剤及び高血圧症抑制剤として用いる際の摂取量としては、症状の程度等により異なり特に限定されないが、成人1日当たりハタケシメジ乾燥粉末に換算して1〜15g、特に6〜9gを摂取すれば十分に効果が期待できる。
【0018】
ハタケシメジは、乾燥粉末の抽出物として摂取することも可能である。抽出液としては、ハタケシメジ子実体乾燥粉末を熱水で抽出したものが好ましい。また、抽出物は、抽出液でもその乾燥物でもよい。
【0019】
本発明の皮膚疾患抑制剤及び高血圧症抑制剤は、通常内服薬として投与される。
内服薬の場合には、常法により散剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、茶剤、懸濁化剤、流エキス剤、液剤、シロップ剤等とすることができる。なお、製剤化の際には、通常の製剤化担体、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤、賦香剤等を必要に応じて用いることができる。また、必要に応じて適当なコーティング剤等で剤皮を施すこともできる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<ハタケシメジの栽培>
(1)供試菌株
ハタケシメジ(群馬GLD−17号及び群馬GLD−21号)
(2)供試培地
培地基材:マイタケ完熟廃床(堆積期間1年)
マイタケ未熟廃床(堆積期間6ヶ月)
広葉樹バーク堆肥
上記の3種類を培地基材として用い、容積比で培地基材:生米糠=5:1の割合で混合し、含水率を61%に調整し培地とした。ナメコ栽培用ポリプロピレン製栽培瓶(口径75mm、容積800ml)に、用意した培地を540±20gずつ充填した。なお、各供試培地数は64本とした。
【0021】
(3)栽培条件
高圧滅菌条件は、培地内温度120℃、40分とした。高圧滅菌後、培地の温度が20℃以下になるまで冷却し、培地中央に直径約2mmの接種孔を底部まで設け、ハタケシメジの種菌15gを接種した。
培養条件は、温度23±1℃/相対湿度65%とし、菌糸が培地内に充分蔓延するまで培養した。なお、培養日数は、種菌接種後60〜70日であった。
発生操作としては、温度18±1℃/相対湿度90%以上を施した。
【0022】
<栽培日数、収量、有効茎数>
各菌株及び各培地基材における栽培日数(日)、及び収量(g)、有効茎数(本)を調べた。なお、栽培日数とは、種菌接種日から子実体が発生日までの日数である。また、有効茎数とは、菌柄の長さが2cm以上の子実体の数である。結果を図1〜3に示す。
栽培日数は、GLD−17号ではマイタケ完熟廃床が91日、広葉樹バーク堆肥が92日であり、GLD−21号ではマイタケ完熟堆肥が94日、広葉樹バーク堆肥が97日であった。よって、広葉樹バーク堆肥と比較して、マイタケ廃床の方が栽培にかかる日数を短縮でき、短期間に効率よくハタケシメジを栽培することができる。
【0023】
子実体平均収量は、GLD−17号ではマイタケ未熟廃床が177.4g、マイタケ完熟廃床が170.4g、広葉樹バーク堆肥が134.7gであり、GLD−21号ではマイタケ未熟廃床が141.8g、マイタケ完熟堆肥が165.4g、広葉樹バーク堆肥が125.2gであった。以上よりマイタケ廃床の場合と広葉樹バーク堆肥の場合とを比較すると、マイタケ廃床の方が、栽培日数が短縮されるのに加えて、明らかに収量が増えることが確認された。
【0024】
さらに有効茎数においても、GLD−17号ではマイタケ未熟廃床が21本、マイタケ完熟廃床が16本、広葉樹バーク堆肥が16本であり、GLD−21号ではマイタケ未熟廃床が15本、マイタケ完熟堆肥が12本、広葉樹バーク堆肥が9本であり、マイタケ廃床、特にマイタケ未熟廃床を基材とした培地において良好な成績が得られた。
よって、栽培日数、収量及び有効茎数から、マイタケ廃床は、従来の培地基材である広葉樹バーク堆肥と比較して、ハタケシメジの栽培に適した培地基材であることが確認された。
【0025】
<成分分析>
子実体形状の良い収穫適期の子実体を採取し、40〜50℃の温度で通風乾燥して各種成分の公定分析法に準拠して分析を実施した。結果を表1〜3に示す。
【表1】


【0026】
【表2】


【0027】
【表3】


【0028】
表1〜3の成分分析の結果から、本発明にかかるマイタケ廃床による栽培方法により、収量及び有効茎数は増えても、従来の培地基材である広葉樹バーク堆肥による栽培方法と比較して、各種成分に有意な違いはなく、良好な子実体が得られることがわかった。
【0029】
<ケモカイン遺伝子発現抑制作用>
近年、種々の炎症性・アレルギー性皮膚疾患の発症に炎症性細胞の遊走・活性化を支配するケモカイン(Chemotactic Cytokine, Chemokine)が強く関与することが明らかにされつつある。ケモカインは分子量8〜10kDaのヘパリン結合性を有する塩基性蛋白の総称であり、生体において炎症に関わる様々な細胞の炎症部位への遊走・活性化に中心的に作用し、炎症の惹起に重要な役割を果たしているものと考えられている。
【0030】
皮膚疾患においては、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎などの炎症部位に好中球や好酸球などの炎症細胞が遊走・活性化し、炎症の発生・増幅に関与していると考えられている。そして、この場合に皮膚の角化細胞、線維芽細胞などの細胞からインターロイキン−8(IL−8, interleukin-8)等のケモカインが産生されることが知られている。また、炎症性異常角化性疾患である乾癬ではその皮膚患部にIL−8が多量に存在していることが知られている。
従って、IL−8等のケモカインの発現を抑制することにより、これらの炎症性あるいはアレルギー性の疾患症状の改善や防止に有効であると考えられる。
そこで、各培地で栽培されたハタケシメジにおけるケモカイン遺伝子発現抑制作用を調べた。
【0031】
(1)ハタケシメジ抽出物の調製
マイタケ未熟廃床又は広葉樹バーク堆肥により栽培された上記のハタケシメジの乾燥子実体を粉砕し、16メッシュのふるいにかけて、原粉末とした。原粉末10gにメタノール80mlを加え、室温で7日間静置後、ろ過し、エバポレーターで濃縮後、残渣を減圧乾燥した。これを適量のDMSOに溶解し、以下の実験に使用した。また、同様にしてシイタケ抽出物も調製した。
【0032】
(2)ケモカイン遺伝子発現抑制作用の測定(図4)
ヒト皮膚線維芽細胞を直径6cmの培養皿で、10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地(ダルベッコ変法イーグル培地)でコンフルエントになるまで培養し、被験培地として実験に供した。
被験培地に被験試料として、ハタケシメジ抽出液、シイタケ抽出液、あるいはハイドロコルチゾン(陽性対照)を添加した。ハタケシメジ抽出物、シイタケ抽出液、ハイドロコルチゾンの終濃度はそれぞれ0.01%(乾燥質量)及び10−7Mとした。
【0033】
さらに、ケモカイン遺伝子発現を促進することが知られている腫瘍壊死因子TNF−α(1ng/ml)を添加し、37℃で6時間培養した。また、被験試料無添加の被験培地にTNF−α無添加・添加の場合についても同様に処理を行った。
次に常法に従って、細胞からRNAを単離し、cDNAを合成したのち、定量的PCR法(TaqMan PCR法)により、IL−8遺伝子の発現量を測定した。内部標準遺伝子としてGAPDH(グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素)遺伝子を用い、得られたデータを補正した。
【0034】
試験例1:被験試料、TNF−α無添加
試験例2:被験試料無添加
試験例3:ハイドロコルチゾン
試験例4:シイタケ抽出物
試験例5:ハタケシメジGLD−17号抽出物(広葉樹バーク堆肥)
試験例6:ハタケシメジGLD−21号抽出物(広葉樹バーク堆肥)
試験例7:ハタケシメジGLD−17号抽出物(マイタケ未熟廃床)
試験例8:ハタケシメジGLD−21号抽出物(マイタケ未熟廃床)
【0035】
なお、ヒト皮膚線維芽細胞は市販品として入手可能であり、例えば倉敷紡績株式会社から入手可能である。また、ヒト線維芽細胞の培養は、動物細胞を培養するための常法に従って行えばよいが、10%ウシ胎児血清を含むDMEM培地が特に好ましい。各試験例におけるIL−8の遺伝子発現量を図5に示す。
【0036】
図5からわかるように、いずれのハタケシメジ抽出物においても、ヒト皮膚繊維芽細胞におけるIL−8の遺伝子発現が抑制され、その抑制効果はハイドロコルチゾンに準ずるものだった。ハイドロコルチゾンはステロイドホルモンであるため、これの使用により、炎症、組織障害、潰瘍形成等の副作用が引き起こされる可能性があるが、本発明のハタケシメジ抽出物であれば、副作用の心配がなく、ケモカイン遺伝子の発現を抑制することができる。また、本発明の栽培方法により、収量及び有効茎数は増えても、従来の培地基材である広葉樹バーク堆肥と同様な、ケモカイン遺伝子発現抑制作用を有する子実体が得られることがわかった。
【0037】
さらに、ハタケシメジGLD−21号抽出物(マイタケ未熟廃床)の終濃度を変化させて、ケモカイン遺伝子発現抑制効果との関係を調べた。
試験例 1 9 10 8 11 12 13
濃度(%) 0 0.0025 0.005 0.01 0.02 0.03 0.04
結果を図6に示す。
濃度0.02%までは、濃度上昇と共に抑制効果が上昇したが、それ以降は濃度上昇と共に抑制効果が低下することがわかった。
【0038】
<血液検査・血圧測定>
(1)抽出液の調製
広葉樹バーク堆肥、マイタケ完熟廃床、マイタケ未熟廃床で栽培された上記のハタケシメジの乾燥子実体を粉砕し、16メッシュのふるいにかけて、原粉末とした。原粉末15gを600mlの熱水(80℃)中で2時間抽出し、熱水抽出液を得た。
【0039】
(2)試験動物の飼育、試料の投与方法
日本チャールスリバー(株)より購入した7週齢、体重約160gの雄性自然発症高血圧ラット(SHR)及び正常血圧のウィスター京都ラット(WKY)を、体重、血圧の平均値がほぼ等しくなるようにSHRラットをA〜G群(1群8頭・7群)に、WKYラットをH〜J群(1群8頭・3群)に分類し、室温22±1℃、湿度60±10%に調節された飼育室において白色蛍光灯下で1日12時間(7時〜19時明期)の光調節を行った環境で飼育した。
【0040】
A群:SHRラット:無投与
B群:SHRラット:広葉樹バーク堆肥、GLD−17号
C群:SHRラット:広葉樹バーク堆肥、GLD−21号
D群:SHRラット:マイタケ完熟廃床、GLD−17号
E群:SHRラット:マイタケ完熟廃床、GLD−17号
F群:SHRラット:マイタケ未熟廃床、GLD−17号
G群:SHRラット:マイタケ未熟廃床、GLD−21号
H群:WKYラット:無投与
I群:WKYラット:広葉樹バーク堆肥、GLD−17号
J群:WKYラット:広葉樹バーク堆肥、GLD−21号
【0041】
抽出液はすべて経口投与で毎日午前10時より施用し、抽出液飲用後は滅菌水を自由摂取させた。投与期間は12週間とした。なお、抽出液投与量は、体重60kgのヒトが熱水抽出液を1日に600ml飲用する方法に準拠し、ラットの体重に換算して決定した。
【0042】
(3)血液検査
実験最終日の前日から全ラットを絶食させ、翌日に深麻酔(ネンブタール,45mg/kg,i.p.)し、左心室から20G採血針で可能な限り採血を行った。
採取した血液は、自動血液分析装置(Auto Lab.)で分析し、得られた成績は、群間比較をWilcoxon U-testで解析し、1%の危険率を持って有意な差があると判定した。
(4)血圧測定
各ラットを38℃の加温器中で数分間加温させ順応した後、非観血式自動血圧測定装置(BP-98A;株ソフトロン製)を用いて、ラットの尾脈波から収縮期血圧を測定した。各ラットの血圧は毎回3回測定した値の平均値を記録した。
【0043】
図9は培地基材の種類と降圧効果との関係を示した図である。
SHRラットの血圧降下作用は、対照群と比較して全ての抽出液投与群において有効性が確認されたが、特にマイタケ廃床で栽培された場合、わずかではあるが効果が高かった。よって本発明の栽培方法により、収量及び有効茎数が増えるのに加えて、従来の培地基材である広葉樹バーク堆肥を用いた時以上の降圧効果を有する子実体が得られることがわかった。
【0044】
図7に中性脂肪値を、図8にβ−リポタンパク値を示す。
中性脂肪の測定は、脂質代謝異常をきたす疾患の診断、予後の判定などの指標として実施されている。また、β-リポタンパクの主な機能はコレステロールを肝臓から各臓器に移送することである。β-リポタンパクの測定は、高リポタンパク血症等、脂質代謝異常の疾患の指標とされている。
【0045】
全ての抽出液投与群において、中性脂肪、β-リポタンパクは、正常血圧モデルのWKYの値に近似する改善効果を認めた。中性脂肪においては、特にマイタケ未熟廃床を用いた時において改善効果が高く、β-リポタンパクにおいては、マイタケ未熟廃床及び完熟廃床を用いた時に改善効果が高かった。よって本発明の栽培方法により、収量及び有効茎数が増えるのに加えて、従来の培地基材である広葉樹バーク堆肥を用いた時と同様あるいはそれ以上の脂質代謝の改善効果を有する子実体が得られることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】培地基材の種類と栽培日数との関係を示した図である。
【図2】培地基材の種類と子実体収量との関係を示した図である。
【図3】培地基材の種類と有効茎数との関係を示した図である。
【図4】本発明におけるケモカイン遺伝子発現抑制作用の試験方法を示した図である。
【図5】培地基材の種類とケモカイン遺伝子発現抑制作用との関係を示した図である。
【図6】ケモカイン遺伝子発現抑制作用の用量依存性を示した図である。
【図7】培地基材の種類と中性脂肪値との関係を示した図である。
【図8】培地基材の種類とβ−リポタンパク値との関係を示した図である。
【図9】培地基材の種類と降圧効果との関係を示した図である。
【出願人】 【識別番号】503327532
【氏名又は名称】高崎健康福祉大学 理事長 須藤 賢一
【識別番号】503330059
【氏名又は名称】群馬県知事 小寺 弘之
【出願日】 平成15年9月8日(2003.9.8)
【代理人】 【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司

【公開番号】 特開2005−80557(P2005−80557A)
【公開日】 平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願番号】 特願2003−315558(P2003−315558)