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【発明の名称】 生育ラック、茸類の栽培方法
【発明者】 【氏名】神谷 晋司
【住所又は居所】東京都中央区日本橋一丁目13番1号 TDK株式会社内

【氏名】青山 かおり
【住所又は居所】秋田県由利郡仁賀保町平沢字画書面15 株式会社TDK秋田研究所内

【要約】 【課題】子実体の栽培環境をより理想的なものとし、子実体の収穫量を安定かつ十分なものとすることができる生育ラックおよび茸類の栽培方法を提供することを目的とする。

【解決手段】複数の棚段22a、22b、22cを備える生育ラック20に対し、一本の照明25を上下方向に貫通するように設けた。カバー自体に、アルミ蒸着フィルム等の反射部材を貼り付け、照明25の光を反射させ、カバー内の全ての菌床10に対する照度分布の均一化を図ることも有効である。また、棚段22a、22b、22cに対し、照度分布が均一化される照明を設けることで、生育ラック20の棚段22a、22b、22c上にセットされる菌床10に対し、均一な照度分布で光を照射することもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
茸類を栽培するため、所定の温度・湿度環境に維持される栽培室内で用いられる生育ラックであって、
前記茸類の菌が植え付けられた菌床を複数保持する菌床保持部と、
前記菌床保持部に保持された全ての前記菌床に対し、均一な光を照射する照明と、
を備えることを特徴とする生育ラック。
【請求項2】
前記照明は、前記菌床保持部の面積に対し、1%以上の発光面積を有することを特徴とする請求項1に記載の生育ラック。
【請求項3】
前記照明は、前記菌床保持部の上部に設けられ、面状光を発することを特徴とする請求項1または2に記載の生育ラック。
【請求項4】
前記照明として、前記菌床保持部の上部に、点状光源または線状光源が複数設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の生育ラック。
【請求項5】
前記照明の前記点状光源として、LED(Light Emitting Diode)または光ファイバが用いられていることを特徴とする請求項4に記載の生育ラック。
【請求項6】
前記菌床保持部を上下に複数段備え、
前記照明として、一本の線状光源が、複数段の前記菌床保持部を上下に貫通するように設けられ、
前記線状光源の外周側に、当該線状光源からの光を反射する反射部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の生育ラック。
【請求項7】
茸類を栽培するため、所定の温度・湿度環境に維持される栽培室内で用いられる生育ラックであって、
上下に複数段設けられ、それぞれの段において前記茸類の菌が植え付けられた菌床を複数保持する菌床保持部と、
複数段の前記菌床保持部を上下に貫通するように設けられた線状光源と、
を備えることを特徴とする生育ラック。
【請求項8】
複数段の前記菌床保持部を囲うよう当該菌床保持部に設けられたカバーをさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の生育ラック。
【請求項9】
前記カバーの内周面と各段の前記菌床保持部の天井面の少なくとも一方が、前記線状光源からの光を反射する反射面とされていることを特徴とする請求項7または8に記載の生育ラック。
【請求項10】
前記カバーの内周面が、アルミ蒸着フィルムによって形成されていることを特徴とする請求項9に記載の生育ラック。
【請求項11】
前記カバーと前記菌床保持部の少なくとも一方を、前記線状光源からの光を反射する材料からなる板材で形成することを特徴とする請求項9に記載の生育ラック。
【請求項12】
茸類の菌を植え付けた菌床を、所定の生育期間の間、所定の温度・湿度環境下に保持するとともに、前記菌床に対し、10〜10000ルクスの光を照射することを特徴とする茸類の栽培方法。
【請求項13】
前記菌床を生育ラックに複数保持し、
前記生育ラックに保持された複数の前記菌床の全てに対し、1000〜1500ルクスの光を照射することを特徴とする請求項12に記載の茸類の栽培方法。
【請求項14】
前記生育ラックを、雑菌汚染防止のためのカバーで囲うことを特徴とする請求項13に記載の茸類の栽培方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、万年茸をはじめとする茸類の栽培に用いる生育ラック、および茸類の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
万年茸はサイワイタケとも称される茸類であり、中国名では霊芝(れいし)とも称され、旧来より床飾り等の鑑賞用とされていた。
近年、霊芝の薬効効果が注目され、霊芝は顆粒、錠剤等の形態で健康補助食品として提供されている。
【0003】
万年茸を栽培するには、おが屑や米ぬか、ふすま等を混ぜたもの(これを培地と称する)を培養袋に充填した後、この培地に菌を植え付け、これを一定期間培養させる。すると、菌(菌糸)が培養袋内の培地に蔓延し、いわゆる菌床が得られる。この菌床を、所定範囲内の湿度・温度・照度環境に維持することで菌床から万年茸の子実体が生えてくるので、この環境を一定期間維持することで所望の大きさの万年茸を栽培することができる。
【0004】
ここで、子実体の生育過程において、重要な栽培環境の一つである照度に注目すると、特許文献1には、直射日光を避けつつ、自然光を採り入れて栽培する点が開示されている。また、特許文献2には、直射日光を遮断した環境で子実体を生育する点が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特公昭57−39605号公報(第2頁)
【特許文献2】特開平11−146728号公報(第3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
子実体を十分に生育させるには、特許文献1等により、直射日光を遮断しつつも、ある程度明るい環境を維持する必要があるのが既に判っている。しかしながら、自然光を採り入れ、これを光源とした場合、天候や季節等により、その照度が大きく変動するため、子実体の栽培環境を安定させることができず、その結果、子実体の収穫量も不安定なものとなる。
これに対し、屋内で自然光をも遮断した状態とし、人工的な照明によって照度を一定に維持し、子実体の生育を行うことも既に行われている。
しかしながら、茸類の生育を安定して行い、子実体の収穫量を高めるために、理想的な栽培条件が見出されているとは言い切れず、様々な試行錯誤が行われているのが現状である。
【0007】
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、子実体の栽培環境をより理想的なものとし、子実体の収穫量を安定かつ十分なものとすることができる生育ラックおよび茸類の栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
子実体に限らず茸類や植物は、光源に向かって生育するという性質を有することが多い。このため、特に、棚の各段に照明を設置するような場合、生育する子実体から光源までの距離が近接することになる。このような場合において、光源から離れた位置の子実体は、光源に近い位置の子実体の影になり、十分な照度が得られず、その結果、光源に近い位置の子実体に比較し、光源から離れた位置の子実体は生育状況が優れず(子実体が細く、小さくなる)、子実体の生育状況にばらつきが生じるという問題も生じる。
これに対してなされた本発明は、茸類を栽培するため、所定の温度・湿度環境に維持される栽培室内で用いられる生育ラックであって、茸類の菌が植え付けられた菌床を複数保持する菌床保持部と、菌床保持部に保持された全ての菌床に対し、均一な光を照射する照明と、を備えることを特徴とする。均一な光を全ての菌床に照射することで、子実体の生育状況のばらつきを抑えることができる。
【0009】
このように、均一な光を照射する照明では、菌床保持部の面積に対し、1%以上の発光面積を有するようにするのが好ましい。
このような照明としては、面状光を発するものを、菌床保持部の上部に設けることができる。ここで、この照明は、それ自体が面状光を発する構造のいわゆる面状光源を用いることもできるが、点状あるいは線状光源から発した光をレンズやミラー、プリズム等の光学素子を介することで、面状光を照射する構成であってもよい。
また、照明として、菌床保持部の上部に、点状光源または線状光源を複数設けることも有効である。この場合、点状光源としては、LEDまたは光ファイバが、発熱量が少なく、また比較的低コストであることから好適である。
【0010】
また、菌床保持部を上下に複数段備え、照明として、一本の線状光源を、複数段の菌床保持部を上下に貫通するように設け、線状光源の外周側に、線状光源からの光を反射する反射部材を設けてもよい。このように反射部材を設けることで、線状光源からの光を均一化することができる。
【0011】
ところで、面積の限られた屋内で子実体の収穫量を増やそうとした場合、複数段を有した棚に菌床を置き、子実体を生育することが考えられる。しかし、照明は一般に天井に設置されるため、棚の下段に置かれた菌床には、照明の光が届かず、十分な栽培環境が得られない。そこで、図10に示すように、棚1の各段1a、1b、1cの天井部分に照明2を設けることが考えられる。
しかし、棚1の各段1a、1b、1cに照明2を設置するような場合、このような照明2には、コスト面で一般には蛍光灯が用いられる(発熱量の面でも白熱灯等に比較すれば好ましい)が、棚1の各段1a、1b、1cに照明2を設ければ、自ずとコスト上昇を招くという問題も生じる。
さらに、棚1の各段1a、1b、1cに照明2を設けた場合、照明2が発する熱により、重要な栽培環境の一つである温度が上昇し、また湿度の低下を招き、子実体の収穫量に悪影響を及ぼすという問題が生じる。近年では、栽培環境を一定に保ったり、カビ等の発生や蔓延を防止するため、栽培容器をビニールシート等の気密性シートで覆う方法も提案されているが(例えば特許文献1、2参照)、気密性シートで覆った場合には、上記の、照明2が発する熱による温度上昇や湿度低下、特に湿度低下が一層顕著な問題となる。
【0012】
これに対してなされた本発明の生育ラックは、上下に複数段設けられ、それぞれの段において茸類の菌が植え付けられた菌床を複数保持する菌床保持部と、複数段の菌床保持部を上下に貫通するように設けられた線状光源と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、最小限の本数の線状光源で照明を行うことができ、コストを抑制することができる。
このような生育ラックは、複数段の菌床保持部を囲うよう設けられたカバーをさらに備えることもできる。カバーを設けた場合、線状光源を最小限の本数とすることで、発熱量を抑制し、カバー内の湿度低下を抑えることができる。
また、菌床に照射する光を均一化するため、カバーの内周面と各段の菌床保持部の天井面の少なくとも一方を、線状光源からの光を反射する反射面とすることもできる。これには、カバーの内周面を、アルミ蒸着フィルムによって形成してもよいし、カバーと菌床保持部の少なくとも一方を、線状光源からの光を反射する材料、例えばステンレス等からな
る板材で形成することもできる。
【0013】
本発明は、茸類の菌を植え付けた菌床を、所定の生育期間の間、所定の温度・湿度環境下に保持するとともに、菌床に対し、10〜10000ルクスの光を照射することを特徴とする茸類の栽培方法として捉えることもできる。ここで、菌床を生育ラックに複数保持する場合、生育ラックに保持された複数の菌床の全てに対し、1000〜1500ルクスの光を照射するのが良い。
この場合も、生育ラックを、雑菌汚染防止のためのカバーで囲うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、菌床に均一な光を照射することで、子実体の生育状況を均一化し、収量を増大させることができる。
また、本発明によれば、照明の本数を最小限とすることができるので、コスト低減を図るとともに、特に生育ラックにカバーを設けた場合、カバー内の湿度低下を防ぎ、子実体の生育を妨げるのも防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
[第一の実施の形態]
ここでまず、万年茸の栽培方法全般について説明する。
図1は、万年茸の子実体を生育させるための菌床10を示すものである。
菌床10は、その一面が開口した袋体11内に、培地12が充填され、この培地12に万年茸の菌が蔓延した状態のものである。
この菌床10を得るには、まず、ブナ、ナラ等の広葉樹のおが屑に、栄養材として、米ぬか、ふすま、コーンブラン(とうもろこしの実の皮等を粉砕したもの)等を所定の配合比で配合し、必要に応じて水を加え、水分率を例えば65%程度に調製し、培地12を準備する。
そして、この培地12を、培養袋に所定量(例えば2kg)充填する。この培養袋には、その開口部近傍に通気フィルタが設けられている。
続いて、培養袋に充填された培地12を、例えば直方体状の所定形状に成形する。そして、この培地12を、高温殺菌装置等において、所定温度(例えば120℃)で所定時間(例えば60分)殺菌した後、所定時間放置して室温まで放冷させる。
【0016】
その後、培養袋の開口部から、培地12上に、万年茸の菌(種菌)を所定量(例えば30g)供給し、いわゆる植菌を行う。続いて、培養袋の開口部を、ヒートシーラーで熱圧着する等して、密閉する。このとき、培養袋の通気フィルタは、密閉部分よりも下方にあり、これによって培地12の呼吸が可能となっている。
植菌を行った培地12は、日光の当たらない室内で、所定温度(例えば28℃)で所定期間(例えば30日間)置かれ、いわゆる培養が行われる。
培養の結果、植菌された万年茸の菌が培地12の全体に蔓延した状態となる。
【0017】
培養期間の終了後、菌が蔓延した状態の培地12が納められた培養袋を、その上部において側面全周にわたってナイフ等で切開する。これにより、上面が開口した袋体11内に、万年茸の菌が蔓延した状態の培地12が充填された、菌床10が得られる。また、切開後、その切開部分より下方に残る培養袋が、前記の袋体11である。
このような菌床10は、所定数が手持ち用のトレー19に載せられて、後述する生育ラック(ラック)20にセットされ、栽培室40内で、所定期間、所定の栽培環境に維持されることで、菌床10から子実体100を生育することができるようになっている。
【0018】
さて、図2は、このような菌床10から万年茸の子実体100を生育させる過程で用い
る生育ラック20を示すものである。
この生育ラック20は、例えば金属製のパイプ材、アングル材等によって形成することができ、所定本数の支柱21に、複数段(例えば3段)の棚段(菌床保持部)22a、22b、22cと、天板23とが支持されている。最下段の棚段22aの底面には、この生育ラック20を移動可能とするための車輪24が所定数設けられている。
また、生育ラック20には、照明25が備えられている。この照明25は、各段の棚段22a、22b、22cに個別に設けることもできるが、本実施の形態では、棚段22a、22b、22c上の空間を、その中央部において貫通するよう設けられている。このため、上下方向に延在する、蛍光灯からなる直管状の照明25が、その上下端部を最下段の棚段22aと天板23の中央部に支持されることで設けられている。
【0019】
図3に示すように、生育ラック20の棚段22a、22b、22c上には、菌床10を載せた手持ち用のトレー19が、所定数セットされる。
菌床10をセットした後、図4に示すように、生育ラック20の周囲全周をカバー30によって覆う。
この状態で、カバー30に覆われた生育ラック20の容積V1に対し、生育ラック20にセットされた全ての菌床10を合わせた体積V2が占める割合(以下、これを占積率Cと称する)は、8%以上とするのが好ましい(C=V2/V1≧8%)。これは、子実体100の生育時に子実体100から放出される水分によってカバー30内を確実に加湿するためである。
【0020】
カバー30は、最下段の棚段22aの下面を覆う底部30aと、天板23の上面を覆う上面部30bと、そして最下段の棚段22aから天板23にかけて、生育ラック20の側面全周を覆う側面部30cとからなり、これらは互いに隙間の無い状態で密閉状態に形成されている。
このカバー30は、例えば所定幅を有したフィルムを生育ラック20の周囲に巻きつけること等で形成することができる。カバー30を形成するフィルムの材質としては、例えば、ポリブテン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネイト、ポリアミド、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリシロキサン、ポリビニルイミダゾール、シリコーン、シリコーンポリカーボネイト等が挙げられる。このカバー30は、必ずしも透明である必要はないが、成長過程の観察などのために、透明、若しくは半透明であることが望ましい。
【0021】
図5および図6に示すように、上記のようにしてカバー30を装着した生育ラック20は、生育ラック20内の菌床10から子実体100を生育させるために、所定期間栽培室40内に置かれる。
栽培室40内は、所定の生育環境を実現するため、所定温度、所定湿度を維持するための空調設備や加湿設備を備えている。万年茸の子実体100を生育させる場合、温度を例えば20〜35℃、より具体的には例えば27℃、湿度を例えば40%以上、より具体的には例えば50〜70%に維持した栽培室40内に、生育ラック20を約60日間置く。
すると、図7に示すように、生育ラック20内の菌床10から子実体100が生え、最終的に鹿角状に生長する。
このとき、子実体100は、酸素を吸って二酸化炭素を放出して呼吸を行っている。また呼吸とともに、子実体100は水分を放出しているが、この水分により、カバー30によって囲まれた生育ラック20の内部は加湿され、栽培室40内(生育ラック20の外部)よりも高い湿度、例えば70%以上、の状態となる。
【0022】
さて、上記したように、複数の菌床10を生育ラック20に収めた状態で、これを栽培室40内に所定期間置くことで、子実体100を生育させる。生育ラック20にはカバー
30が備えられているため、雑菌等による汚染の影響を抑制することができる。また、例え、ある生育ラック20内で汚染(カビの発生等)が生じてしまったとしても、カバー30により、他の生育ラック20への拡散が防止できる。
【0023】
上述したように、複数の棚段22a、22b、22cを備える生育ラック20に対し、一本の照明25を、これらの棚段22a、22b、22cを上下方向に貫通するように設けた。これにより、棚段22a、22b、22cの各々に照明を設置する場合に比較し、当然のことながら設置本数が少ないので、照明25に要するコストを大幅に低減することができる。
また、カバー30を設けることで、子実体100から放出される水分により、カバー30内を子実体100の生育に適した湿度環境とすることができるが、棚段22a、22b、22cの各々に照明を設置した場合、各段の照明の発熱により、カバー30内が乾燥してしまうおそれがある。これに対し、一本の照明25のみをカバー30内に設けることで、発熱量を減らすことができ、カバー30内の乾燥を抑制することができ、子実体100の生育に適した環境を提供することができる。
【0024】
ここで、照明25により、カバー30内の菌床10に対して照射される光の照度は、10〜10000ルクス、さらに好ましくは、1000〜1500ルクスの範囲内とするのが好ましい。しかも、この範囲内の照度で、カバー30内の全ての菌床10に対し、なるべく均一な照度分布とするのが好ましい。
【0025】
生育ラック20の中央に設けた照明25の場合、照明25に近い中央寄りの菌床10に対し、照明25から離れた菌床10に照射される光の照度が低くなり、図8に示すように、子実体100が照明25に向かって伸び、子実体100の生育状況にばらつきが出る可能性がある。
このため、カバー30自体、あるいはカバー30の内周面に、アルミ蒸着フィルム等の反射部材を貼り付け、照明25の光を反射させ、カバー30内の全ての菌床10に対する照度分布の均一化を図ることも有効である。さらに、棚段22a、22b、22c上の空間に対し、天井面となる上段の棚段22b、22c、天板23の下面にも、同様にアルミ蒸着フィルム等の反射部材を設けても良い。
さらには、カバー30や棚段22a、22b、22c、天板23自体を、反射部材とするため、ステンレス等、照明25の光を反射する材料で形成することでも、同様に、カバー30内の全ての菌床10に対する照度分布の均一化を図ることができる。
【0026】
このようにして、カバー30内の全ての菌床10に対する照度分布の均一化を図ることにより、子実体100の太さ等、生育状況を均一なものとすることができ、その結果、収穫量を増大させることが可能となる。
【0027】
[第二の実施の形態]
次に、本発明にかかる第二の実施の形態について説明する。
ここで、第二の実施の形態では、上記第一の実施の形態で示した照明25に代え、棚段22a、22b、22cのそれぞれに、均一な照度分布の光を照射できる照明(線状光源)50を設ける構成を採用する。なお、それ以外の構成や、子実体100の生育過程等については上記第一の実施の形態と同様であるので、共通する部分については説明を省略する。
図9に示すように、菌床10をセットする生育ラック20には、棚段22a、22b、22c上の空間に対し、天井面となる上段の棚段22b、22c、天板23の下面に、均一な照度分布の光を照射できる照明50を設ける。
【0028】
ここで、照明50は、棚段22a、22b、22c上にセットされる菌床10に対し、
結果的に面状の光を照射できるものであれば良い。このような照明50としては、複数本の蛍光灯を白濁カバー等で覆って照度分布を均一化させたもの、鏡やプリズム等の光学部材を用い、蛍光灯等、線状あるいは点状光源からの光を面状に発光するもの、間接照明等がある。
さらに、そのものが面状をなし、面状光を照射できるものを照明50に用いることができる。このような照明50には、ディスプレイ等に用いられる、EL(Electroluminescence)、プラズマディスプレイ、CRT(Cathode-ray Tube)、液晶パネル、液晶パネルのバックライト等がある。
また、点状、線状の光源であっても、棚段22a、22b、22c上にセットされる菌床10に対し、ほぼ面状となる、均一な照度分布の光を照射できるものも、照明50として用いることができる。このような照明50としては、蛍光灯等の線状光源を複数本並列させたもの、白熱灯やLED(Light Emitting Diode)、光ファイバ等の点状光源を、複数配列させたもの等がある。
なお、これらの照明50は、いずれも、高湿度環境下で使用されるため、各部にパッキンを備える等、防湿対策が採られたものを用いるのが好ましい。
【0029】
このような照明50は、棚段22a、22b、22cのそれぞれの面積に対し、その発光面積が、1%以上となるようにするのが好ましい。
また、照度で言えば、棚段22a、22b、22c上にセットされる全ての菌床10に対し、10〜10000ルクスの照度範囲とするのが好ましく、1000〜1500ルクスの照度範囲とするのがさらに好ましい。
【0030】
なお、前述のごとく、生育ラック20にカバー30を設ける場合、照明50からの発熱が大きければカバー30内の湿度が低下してしまうため、蛍光灯や白熱灯等を設ける場合には、一つ一つの蛍光灯、白熱灯の出力が小さいものとし、全体としての発熱量を抑制するのが好ましい。このような観点からして、LEDや光ファイバは、発熱量が小さく、しかも消費電力も小さいため、これらを採用するのが特に好ましい。
また、EL、プラズマディスプレイ、CRT、液晶パネル、液晶パネルのバックライト等、あるいはLEDや光ファイバの場合、印加する電圧をコントロールすることで照度を容易に調整できる。このため、照度を適切に調整することで、発熱量を抑制することも容易に可能である。
【0031】
上述したような照明50を設けることで、生育ラック20の棚段22a、22b、22c上にセットされる菌床10に対し、均一な照度分布で光を照射することができる。これにより、子実体100の太さ等、生育状況を均一なものとすることができ、その結果、収穫量を増大させることが可能となる。
【実施例1】
【0032】
ここで、面状光を発する照明50の効果を確認するための実験を行ったので以下にその結果を示す。
(1)培地12の作製
ブナやナラなどの広葉樹のおが屑粉に、栄養材として、米ぬか、ふすま、コーンブランなどを添加し、水分率を65%程度に調製した。培地12は、市販の通気フィルタ付きの培養袋に約2kg充填し、120℃で約1時間程度保持して殺菌処理を行い、これを培地12とした。培地12のサイズは、縦130mm、横200mm、高さ120mm、体積0.00312m3の略直方体とした。
【0033】
(2)植菌
殺菌処理後、室温まで放冷した培地12に、万年茸の種菌約30gを接種し、培養袋の開口部をヒートシーラーで熱圧着して密閉した。
(3)培養
約28℃の温度で30日間、万年茸の菌を培養し、培地12全体に万年茸の菌が蔓延し、培地12全体が白色を呈するまで培養を行った。
【0034】
(4)子実体100の生育
培養袋を培地12の上面部分のところで開封して菌床10上部を解放した。
その後、生育ラック20中の菌床10の占有体積比が8%以上となるように、生育ラック20に複数個の菌床10を設置した。生育ラック20は、約1860mm×860mm×1500mm、容積約2.4m3とした。
【0035】
<実施例>
生育ラック20に配置した菌床10に光が行き渡るよう、棚段22a、22b、22c上の空間に対し、天井面となる上段の棚段22b、22c、天板23の下面に、光ファイバーを、1個の菌床10に対し1本設置した。
<比較例>
棚段22a、22b、22c上の空間に対し、天井面となる上段の棚段22b、22c、天板23の下面に、線状光源である蛍光灯を設置した。
【0036】
すべての菌床10の設置後、ガス透過性フィルムからなるカバー30で生育ラック20全体を覆い、ほぼ密閉した。
【0037】
栽培室40において、実施例、比較例とも、カバー30で密閉した生育ラック20の外部を温度約27℃、湿度40%以上に維持し、約60日間かけて、子実体100の生育を行った。生育期間中は生育室(生育ラック20を設置した部屋)の温度を約27℃に維持しただけで、特に加湿は行わなかった。
生育期間の完了後、実施例、比較例で、それぞれ、生育した子実体100を観察して比較した。また、生育した子実体100を収穫し、その収量(棚一段あたりの収量)を計測した。
【0038】
線状光源を用いた比較例では、照明50に近い、棚段22a、22b、22cの中央部の菌床10では、子実体100が、分岐が全く無く、非常に太いものとなった。しかも、照明50から離れた棚段22a、22b、22cの外周部の菌床10では、中央部の大きく成長してしまった子実体100の影となって光が遮断され、非常に細い子実体100となった。これに対し、面状光源を用いた実施例では、全ての子実体100に分岐が確認され、均一に鹿の角状に分岐した形状となった。
また、比較例では、菌床1個あたりの平均収量が、約60g/床であった。これに対し
、実施例では、平均収量が80g/床であった。
【0039】
このように、照度分布が均一化される照明50を用いることで、子実体100の生育状況を均一化することができ、収量も増大できることが確認できた。
【0040】
なお、上記実施の形態では、カバー30に、所定幅のフィルムを用いる構成としたが、このカバー30を予め生育ラック20に対応した形状を有する袋状、風呂敷状等とすれば、一層作業性を向上させることができる。
また、生育ラック20において菌床10が置かれる空間を密封できるのであれば、金属、樹脂等、気密性を有した材料からなるパネルで形成したカバー30を、予め生育ラック20に固定しておき、さらに、菌床10を生育ラック20に出し入れするための開閉部をこのカバー30に設けてもよい。もちろん、この場合、カバー30やその開閉部は、パッキン等で気密性を維持する必要がある。このような場合も、子実体100の生育状態中が見えるように、カバー30の全面を透明とするか、一部に透明部分(窓)を設けるのが好ましい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施の形態における茸類の栽培方法において用いる菌床を示す斜視図である。
【図2】第一の実施の形態における生育ラックを示す斜視図である。
【図3】生育ラックに菌床をセットした状態を示す斜視図である。
【図4】生育ラックにカバーを設けた状態を示す斜視図である。
【図5】栽培室に生育ラックを収めた状態を示す図である。
【図6】栽培室内に複数の生育ラックを配置した状態を示す平面図である。
【図7】子実体が生育した菌床を示す斜視図である。
【図8】子実体が照明に向かって生育している状態を示す図である。
【図9】第二の実施の形態における生育ラックを斜め下方から見た図である。
【図10】従来の生育ラックに設けた照明を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
10…菌床、20…生育ラック(ラック)、22a、22b、22c…棚段(菌床保持部)、25…照明、30…カバー、40…栽培室、50…照明(線状光源)、100…子実体
【出願人】 【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋1丁目13番1号
【出願日】 平成15年9月3日(2003.9.3)
【代理人】 【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充

【公開番号】 特開2005−73674(P2005−73674A)
【公開日】 平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願番号】 特願2003−311810(P2003−311810)