| 【発明の名称】 |
茸類の栽培方法、茸類の栽培システム、生育ラック |
| 【発明者】 |
【氏名】神谷 晋司 【住所又は居所】東京都中央区日本橋一丁目13番1号 TDK株式会社内
【氏名】青山 かおり 【住所又は居所】秋田県由利郡仁賀保町平沢字画書面15 株式会社TDK秋田研究所内
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| 【要約】 |
【課題】雑菌による汚染を抑制し、茸類の栽培の効率化を図るとともに収穫効率を高めることのできる茸類の栽培方法等を提供することを目的とする。
【解決手段】子実体100を生育させる際に菌床10を収める生育ラック20に、カバー30を設けるようにした。また、カバー30の少なくとも一部をガス透過性フィルムで構成することにより、生育ラック20の外部より酸素を導入することができるようにした。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 茸類の菌を植え付けた菌床を載せるとともに、雑菌汚染防止のためのカバーで囲った移動可能な複数のラックを、所定の生育期間の間、栽培室内にて所定の温度・湿度環境下に保持する工程と、 前記ラックを前記栽培室から出す工程と、 を備えることを特徴とする茸類の栽培方法。 【請求項2】 前記栽培室内にて保持される複数の前記ラックの生育期間を、互いにずらすことを特徴とする請求項1に記載の茸類の栽培方法。 【請求項3】 前記カバーの少なくとも一部を、ガス透過性材料で形成することを特徴とする請求項1または2に記載の茸類の栽培方法。 【請求項4】 茸類の菌を植え付けた菌床を、少なくともその一部がガス透過性を有した材料で形成されたカバーで覆う工程と、 前記カバーで覆われた前記菌床を、所定の温度・湿度環境下に保持し、前記菌床から茸類を生育させる工程と、 を備えることを特徴とする茸類の栽培方法。 【請求項5】 前記カバー内の容積に対する前記菌床の体積の占積率を、8%以上とすることを特徴とする請求項4に記載の茸類の栽培方法。 【請求項6】 茸類の菌を植え付けた菌床を複数載せるとともに、雑菌汚染防止のためのカバーで囲われた移動可能なラックと、 前記菌床から茸類を生育させるため、複数の前記ラックを所定期間収容する栽培室と、を備えることを特徴とする茸類の栽培システム。 【請求項7】 前記ラックは、前記栽培室の内外で移動可能であることを特徴とする請求項6に記載の茸類の栽培システム。 【請求項8】 前記栽培室は、生育時期が互いに異なる複数の前記ラックを収容することを特徴とする請求項6または7に記載の茸類の栽培システム。 【請求項9】 前記カバーは、少なくともその一部がガス透過性材料で形成されていることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の茸類の栽培システム。 【請求項10】 前記茸類が万年茸であることを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載の茸類の栽培システム。 【請求項11】 前記栽培室内が、室温5℃以上40℃以下、かつ湿度40%以上85%以下に維持されることを特徴とする請求項6から10のいずれかに記載の茸類の栽培システム。 【請求項12】 茸類を栽培するため、所定の温度・湿度環境に維持される栽培室内で用いられる生育ラックであって、 前記茸類の菌が植え付けられた菌床を保持する菌床保持部と、 前記菌床保持部を囲うよう当該菌床保持部に設けられたカバーと、 前記菌床保持部を前記栽培室の内外で移動可能とする移動機構と、 を備えることを特徴とする生育ラック。 【請求項13】 前記カバーは、少なくともその一部が酸素透過性を有した材料で形成されていることを特徴とする請求項12に記載の生育ラック。 【請求項14】 前記カバーは、前記酸素透過性を有した材料で形成された部分が、二酸化炭素透過性を有することを特徴とする請求項13に記載の生育ラック。 【請求項15】 前記カバーは、水蒸気遮断性を有することを特徴とする請求項13または14に記載の生育ラック。 【請求項16】 前記カバーは、当該カバー内の空間において気流が発生するのを抑止するものであることを特徴とする請求項12から15に記載の生育ラック。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、万年茸をはじめとする茸類の栽培方法、栽培システム、およびそれに用いる生育ラックに関する。 【背景技術】 【0002】 万年茸はサイワイタケとも称される茸類であり、中国名では霊芝(れいし)とも称され、旧来より床飾り等の鑑賞用とされていた。 近年、霊芝の薬効効果が注目され、霊芝は顆粒、錠剤等の形態で健康補助食品として提供されている。 【0003】 万年茸を栽培するには、おが屑や米ぬか、ふすま等を混ぜたもの(これを培地と称する)を培養袋や培養ビン等の栽培容器内に充填した後、この培地に菌を植え付け、これを一定期間培養させる。すると、菌(菌糸)が培養袋内の培地に蔓延し、いわゆる菌床が得られる。この菌床を、所定範囲内の湿度・温度環境に維持することで菌床から万年茸の子実体が生えてくるので、この環境を一定期間維持することで所望の大きさの万年茸を栽培することができる。 ところで、このときの環境に応じ、万年茸を、傘が開いておらず、鹿角状に伸びた状態とすることができる。このような万年茸は、鹿角霊芝と称されている。万年茸菌は、炭酸ガス感受性菌であるため、栽培環境において酸素量が十分であると、万年茸の傘が大きく開き、反対に酸素量が少ないと、鹿角状に延びる傾向がある。 【0004】 万年茸を安定して栽培するには、上記のように栽培環境(温度・湿度)、特に高い湿度を維持するのが非常に重要である。このため、従来より、ビニールハウスや栽培施設等の室内において、空調機や加湿機等で温度・湿度の調整を行うことで、万年茸の栽培を行っている。また、近年では、栽培容器をビニールシート等の気密性シートで覆い、日光や外気から遮断する方法(例えば特許文献1、2、3参照)も提案されている。 【0005】 【特許文献1】特公昭57−39605号公報(特許請求の範囲、第3図) 【特許文献2】特開平11−146728号公報(請求項1、第3頁、図1) 【特許文献3】特開平10−84772号公報(請求項2、第3頁、図1) 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、ビニールハウスや栽培施設等の室内において、空調機や加湿機等で温度・湿度の調整を行うことで万年茸の子実体を生育させる場合、室内の湿度を例えば85%以上といった非常に高い湿度に維持する必要がある。このような環境において、室内への作業者の出入り等によって外部から雑菌等が持ち込まれると、カビが発生しやすい。特に、万年茸の生育に適した温度・湿度環境は、カビ等の雑菌が繁殖しやすい環境であり、またその生育に要する期間も長い部類に入るため、繁殖した雑菌が室内の万年茸に徐々に蔓延しやすく、その結果、収穫量が減ってしまうと言う問題がある。したがって、室内への出入りを最小限に抑えたり、室内への入り口で念入りに作業者の着衣等を除菌や除塵等をする必要が生じ、これらは、作業を阻害したり、作業効率を低下させる要因にもなる。また、除菌や除塵等のための装置を出入り口等に設ければ、その分設備コストが嵩むことになる。 さらに、この万年茸を収穫し、健康補助食品とするためには、カビ等が発生した万年茸を除外する必要があり、これに多大な手間がかかるという問題もある。 【0007】 また、特許文献1に開示された技術では、栽培容器を上方に開口したフードで覆う構成となっているが、これでは、ビニールハウス等の室内と同様、雑菌による汚染・拡散を抑制することは困難であり、程度の違いこそあれ、フードを用いない従来の場合と、同様の問題が残る。 【0008】 特許文献2に開示された技術も、培地に菌を植え付けて培養する過程においては気密性シートおよびキャップで密封状態を保っているものの、気密性シートによる酸素不足が問題となっている。また、子実体の生育過程では、キャップを取外し、その一部が開口した構成となっているため、この場合も、雑菌による汚染・拡散を抑制することは困難であり、上記特許文献1と同様の問題が存在する。 【0009】 特許文献3に開示された技術では、菌床から生えてくる子実体をカバー部材で覆うため、雑菌による汚染・拡散については有効に抑制することができる。しかも、この特許文献3に開示された技術では、子実体をカバー部材で覆っているため、子実体の生育過程で子実体の呼吸により吐き出される水分によって、カバー部材の内部は、子実体の生育に適した湿度環境に維持しやすく、室内の湿度自体は、上記したような場合よりも低く抑えることができ、この点においても、雑菌による汚染・拡散抑制効果がある。 しかしながら、栽培容器の一つ一つにカバー部材を設けなければならないため、その取り付け取り外しに多大な手間が掛かるという問題が生じる。さらに、カバー部材によって密封された空間では、子実体の呼吸によって酸素が消費されるため、徐々に酸素濃度が低下することになる。するとその結果、子実体の生育が阻害されてしまうという問題がある。 【0010】 このように、従来の技術では、雑菌による汚染の抑制が困難であったり、あるいは雑菌による汚染の抑制ができても子実体の生育が酸素不足によって阻害される等しており、効率良く万年茸等の茸類を栽培するのは困難であるのが実状であった。 本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、雑菌による汚染を抑制し、茸類の栽培の効率化を図るとともに収穫効率を高めることのできる茸類の栽培方法、茸類の栽培システム、生育ラックを提供することを目的とする。 また、本発明の他の目的は、雑菌による汚染を抑制し、しかも子実体の生育も阻害することなく、茸類を栽培することのできる茸類の栽培方法、茸類の栽培システム、生育ラックを提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0011】 かかる目的のもと、本発明の茸類の栽培方法は、茸類の菌を植え付けた菌床を載せるとともに、雑菌汚染防止のためのカバーで囲った移動可能な複数のラックを、所定の生育期間の間、栽培室内にて所定の温度・湿度環境下に保持する工程と、ラックを栽培室から出す工程と、を備えることを特徴とする。 このように、ラックを雑菌汚染防止のカバーで囲うことで、他のラックや栽培室内等で発生した雑菌によってラック内の菌床が汚染されたり、逆にそのラック内で発生した雑菌が他のラックの菌床等に拡散してしまうのを防止できる。 また、菌床の生育に伴なって放出される水分(水蒸気)により、カバー内の湿度を高く保つことができる。 【0012】 しかもラックを移動可能とし、栽培室内にこのような複数のラックを保持して茸類を生育させることで、栽培室内にて保持される複数のラックの生育期間を、互いにずらすことができる。つまり、ラック毎に、生育開始時にラックを栽培室に入れるタイミングと、生育終了時にラックを栽培室から出すタイミングを異ならせることができるのである。このような生育態勢を取ると、自ずと栽培室への出入りが増え、雑菌を外部から栽培室内に持ち込む可能性が高まるが、ラックに雑菌汚染防止のカバーにより、これが有効に抑止でき る。さらに、このような栽培方法によれば、生育環境が近いものであれば、種類が異なる茸類であっても、同栽培室内で生育させることができる。 また、ラックに雑菌汚染防止のカバーを用いる場合、カバー内の気密性が高まるため、茸類の生育に伴なう茸類の呼吸により、カバー内の酸素量が減少し、二酸化炭素量が増大するが、カバーの少なくとも一部をガス透過性材料で形成することにより、カバー内に酸素を補給し、二酸化炭素を放出させることができる。これにより、カバー内の酸素量が不足するのを防止できる。 【0013】 本発明は、カバーの少なくとも一部をガス透過性材料で形成するという観点からなすこともできる。この観点からなされた本発明にかかる茸類の栽培方法は、茸類の菌を植え付けた菌床を、少なくともその一部がガス透過性を有した材料で形成されたカバーで覆う工程と、カバーで覆われた菌床を、所定の温度・湿度環境下に保持し、菌床から茸類を生育させる工程と、を備えることを特徴とする。これによって、移動式のラックに限らず、固定式のラックや、菌床の容器そのものを、少なくともその一部がガス透過性材料で形成されたカバーで覆うことで、カバー内の酸素量が不足するのを防止できる。 このとき、菌床の生育に伴なって放出される水分(水蒸気)によりカバー内の湿度が高く保たれるわけであるが、特にカバー外(栽培室)を加湿せずに済むようにするには、カバー内の容積に対する菌床の体積の占積率を、8%以上とするのが好ましい。 【0014】 本発明にかかる茸類の栽培システムは、万年茸等の茸類の菌を植え付けた菌床を複数載せるとともに、雑菌汚染防止のためのカバーで囲われた移動可能なラックと、菌床から茸類を生育させるため、複数のラックを所定期間収容する栽培室と、を備えることを特徴とする。 この場合、ラックは栽培室内で固定式とし、ラックへの菌床のセット、生育完了後の菌床のラックからの取出し等を栽培室内で行うことも可能ではあるが、無用な雑菌汚染を抑制するには、これらの作業は栽培室外で行うのが好ましい。このため、ラックは、栽培室の内外で移動可能であるのが好ましい。 また、栽培室に、生育時期が互いに異なる複数のラックを収容すれば、生育時期をずらし、安定して茸類を生産することができる。 【0015】 加えて、カバーの少なくとも一部をガス透過性材料で形成するのが好ましい。その場合、栽培室内を、室温5℃以上40℃以下、かつ湿度40%以上85%以下に維持するのが好ましい。つまりこの条件では、特に栽培室内を加湿する必要がない。 【0016】 本発明は、茸類を栽培するため、所定の温度・湿度環境に維持される栽培室内で用いられる生育ラックとして捉えることもできる。この生育ラックは、茸類の菌が植え付けられた菌床を保持する菌床保持部と、菌床保持部を囲うよう菌床保持部に設けられたカバーと、菌床保持部を栽培室の内外で移動可能とする移動機構と、を備えることを特徴とすることができる。 このカバーについて、以下のようなことを特徴とすることができる。すなわち、カバーの少なくとも一部を酸素透過性を有した材料で形成することができる。加えて、このカバーは、酸素透過性を有した材料で形成された部分が、二酸化炭素透過性を有しているのが好ましい。さらに、カバーは、水蒸気遮断性を有するのが好ましい。また、カバーは、カバー内の空間において雑菌を伝搬させる気流が発生するのを抑止するものである、という捉え方もできる。 【0017】 なお、本発明において、菌床としては、袋やビンに培地を入れ、茸類の菌を蔓延させたものを用いるのが好適である。これ以外にも、茸類の菌が植え付けられた原木を菌床とすることも可能である。 【0018】 なお、本発明が対象とする茸類としては、万年茸が特に有効であるが、これに限るものではない。本発明が対象とする茸類としては、他に、例えば、シイタケ、ナメコ、ヒラタケ、シメジ、エノキタケ、キクラゲ、マイタケ、スエヒロタケ、チョレイマイタケ、コフキサルノコシカケ、カワラタケ、メシマコブ、アガリクス、ヤマブシタケ、ハナビラタケ等が挙げられる。これらの茸類に対しても本発明を適用することができる。さらに言えば、特にこれらのうち、カビが繁殖しやすい温度領域で生育する茸類、生育期間が長い茸類の生育に対し、本発明を有効に適用できる。 【発明の効果】 【0019】 本発明によれば、ラックを雑菌汚染防止のカバーで囲うことで、他のラックや栽培室内等で発生した雑菌によってラック内の菌床が汚染されたり、逆にそのラック内で発生した雑菌が他のラックの菌床等に拡散してしまうのを防止できる。これにより、茸類の栽培の効率化を図るとともに収穫効率を高めることができる。また、菌床の生育に伴なって放出される水分(水蒸気)により、カバー内の湿度を高く保つことができるので、栽培室の設備コストを抑えることができる。 また、カバーの少なくとも一部をガス透過性材料で形成することにより、カバー内に酸素を補給し、二酸化炭素を放出させることができる。これにより、カバー内の酸素量が不足するのを防止でき、茸類の生育を阻害することなく、効率の良い生育が行える。 加えて、ラックを移動可能とし、栽培室内にこのような複数のラックを保持して茸類を生育させることで、栽培室内にて保持される複数のラックの生育期間を互いにずらすことができ、茸類の生産をシステマティックに安定して行うことが可能となる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0020】 以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。 図1は、本実施の形態における万年茸の子実体を生育させるための菌床10を示すものである。 菌床10は、その一面が開口した袋体11内に、培地12が充填され、この培地12に万年茸の菌が蔓延した状態のものである。 この菌床10を得るには、まず、ブナ、ナラ等の広葉樹のおが屑に、栄養材として、米ぬか、ふすま、コーンブラン(とうもろこしの実の皮等を粉砕したもの)等を所定の配合比で配合し、必要に応じて水を加え、水分率を例えば65%程度に調製し、培地12を準備する。 そして、この培地12を、培養袋に所定量(例えば2kg)充填する。この培養袋には、その開口部近傍に通気フィルタが設けられている。 続いて、培養袋に充填された培地12を、例えば直方体状の所定形状に成形する。そして、この培地12を、高温殺菌装置等において、所定温度(例えば120℃)で所定時間(例えば60分)殺菌した後、所定時間放置して室温まで放冷させる。 【0021】 その後、培養袋の開口部から、培地12上に、万年茸の菌(種菌)を所定量(例えば30g)供給し、いわゆる植菌を行う。続いて、培養袋の開口部を、ヒートシーラーで熱圧着する等して、密閉する。このとき、培養袋の通気フィルタは、密閉部分よりも下方にあり、これによって培地12の呼吸が可能となっている。 植菌を行った培地12は、日光の当たらない室内で、所定温度(例えば28℃)で所定期間(例えば30日間)置かれ、いわゆる培養が行われる。 培養の結果、植菌された万年茸の菌が培地12の全体に蔓延した状態となる。 【0022】 培養期間の終了後、菌が蔓延した状態の培地12が納められた培養袋を、その上部において側面全周にわたってナイフ等で切開する。これにより、上面が開口した袋体11内に、万年茸の菌が蔓延した状態の培地12が充填された、菌床10が得られる。また、切開後、その切開部分より下方に残る培養袋が、前記の袋体11である。 このような菌床10は、所定数が手持ち用のトレー19に載せられて、後述する生育ラック(ラック)20にセットされる。 【0023】 さて、図2は、このような菌床10から万年茸の子実体を生育させる過程で用いる生育ラック20を示すものである。 この生育ラック20は、例えば金属製のパイプ材、アングル材等によって形成することができ、所定本数の支柱21に、複数段(例えば3段)の棚段(菌床保持部)22a、22b、22cと、天板23とが支持されている。最下段の棚段22aの底面には、この生育ラック20を移動可能とするための車輪(移動機構)24が所定数設けられている。 また、生育ラック20には、照明25が備えられている。この照明25は、各段の棚段22a、22b、22cに個別に設けることもできるが、本実施の形態では、棚段22a、22b、22c上の空間を、その中央部において貫通するよう設けられている。このため、上下方向に延在する直管状の照明25が、その上下端部を最下段の棚段22aと天板23の中央部に支持されることで設けられている。 【0024】 図3に示すように、生育ラック20の棚段22a、22b、22c上には、菌床10を載せた手持ち用のトレー19が、所定数セットされる。 菌床10をセットした後、図4に示すように、生育ラック20の周囲全周をカバー30によって覆う。 この状態で、カバー30に覆われた生育ラック20の容積V1に対し、生育ラック20にセットされた全ての菌床10を合わせた体積V2が占める割合(以下、これを占積率Cと称する)は、8%以上とするのが好ましい(C=V2/V1≧8%) 【0025】 カバー30は、最下段の棚段22aの下面を覆う底部30aと、天板23の上面を覆う上面部30bと、そして最下段の棚段22aから天板23にかけて、生育ラック20の側面全周を覆う側面部30cとからなり、これらは互いに隙間の無い状態で密閉状態に形成されている。 このカバー30は、例えば所定幅を有したフィルムを生育ラック20の周囲に巻きつけること等で形成することができる。カバー30を形成するフィルムの材質としては、例えば、ポリブテン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネイト、ポリアミド、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリシロキサン、ポリビニルイミダゾール、シリコーン、シリコーンポリカーボネイト等が挙げられる。このカバー30は、必ずしも透明である必要はないが、成長過程の観察などのために、透明、若しくは半透明であることが望ましい。 【0026】 ここで、カバー30は、少なくともその一部(もちろん全面でも良い)を、酸素・二酸化炭素に対し、所定以上のガス透過率を有したガス透過性フィルムで形成するのが好ましい。このとき、このガス透過性フィルムは、ガスを透過しつつ、水滴や水蒸気を透過しないようなものとするのが特に好ましい。カバー30内外におけるガス透過率(言い換えれば、ガス透過量)を調整するため、ガス透過性フィルムを重ねることも可能である。 また、カバー30の底部30aには、カバー30の内部において、後述する生育過程において生じる水滴を排出するための孔を形成するのが好ましい。このため、カバー30の底部30aを、いわゆる有孔シートによって形成することも可能である。 【0027】 図5および図6に示すように、上記のようにしてカバー30を装着した生育ラック20は、生育ラック20内の菌床10から子実体100を生育させるために、所定期間栽培室40内に置かれる。 栽培室40内は、所定の生育環境を実現するため、所定温度、所定湿度を維持するための空調設備や加湿設備を備えている。万年茸の子実体100を生育させる場合、温度を例 えば10〜35℃、より具体的には例えば27℃、湿度を例えば40%以上、より具体的には例えば50〜70%に維持した栽培室40内に、生育ラック20を約60日間置く。 すると、図7に示すように、生育ラック20内の菌床10から子実体100が生え、最終的に鹿角状に生長する。 このとき、子実体100は、酸素を吸って二酸化炭素を放出して呼吸を行っている。また呼吸とともに、子実体100は水分を放出しているが、この水分により、カバー30によって囲まれた生育ラック20の内部は加湿され、栽培室40内(生育ラック20の外部)よりも高い湿度、例えば70%以上、の状態となる。 また、所定期間の生育中、子実体100は、酸素を吸って二酸化炭素を放出しているが、カバー30の少なくとも一部をガス透過性フィルムで構成することにより、生育ラック20の外部より酸素を導入することができる(生育ラック20内の二酸化炭素も放出できる)。 【0028】 さて、上記したように、複数の菌床10を生育ラック20に収めた状態で、これを栽培室40内に所定期間置くことで、子実体100を生育させるわけであるが、本実施の形態においては、栽培室40内に、生育時期が異なる複数の生育ラック20を置いて、子実体100の生育を行う。 具体例を挙げれば、3日に1台ずつ、車輪24を備えて移動可能な生育ラック20を栽培室40に順次入れていき、栽培室40には、合計20台の生育ラック20を収めるようにする。このようにすれば、所定の生育期間、例えば60日に到達する生育ラック20が、3日に1台ずつ生じるので、これを順次栽培室40から出し、生育した子実体100を収穫すればよい。このように、栽培室40内において、複数ロットの生育を行うことができるのである。 このような場合、1台の生育ラック20が栽培室40に入れられてから生育期間が完了して栽培室40から出されるまでの間に、他の生育ラック20の出し入れのため、作業員の栽培室40への出入りが最低19回あり、外部から雑菌等が持ち込まれる可能性があるわけであるが、生育ラック20にはカバー30が備えられているため、雑菌等による汚染の影響を抑制することができる。また、例え、ある生育ラック20内で汚染(カビの発生等)が生じてしまったとしても、カバー30により、他の生育ラック20への拡散が防止できる。 【0029】 上述したように、子実体100を生育させる際に菌床10を収める生育ラック20に、カバー30を設けるようにした。これにより、生育ラック20間で雑菌等による汚染およびその拡散を有効に抑止することができ、子実体100の収穫効率を高めることができる。 また、このカバー30を設けることで、生育の際に子実体100から放出される水分により、生育ラック20の内部は加湿され、栽培室40内(生育ラック20の外部)よりも高い湿度を維持することができる。したがって、生育ラック20の外部、つまり栽培室40内を特に加湿する必要がなくなる。特に、生育ラック20のカバー30に囲まれた部分の容積に対する菌床10の体積の比率を8%以上とすることで、子実体100から放出される水分によってカバー30内を確実に加湿することができる。これにより、栽培室40の設備コスト、加湿器を稼動させるためのエネルギーコスト等を抑えることができる。また、栽培室40内を高い湿度に維持する必要がなければ、栽培室40内でのカビ等の繁殖を抑制することもできる。 さらに、このカバー30により、生育ラック20内で気流が生じるのを防止でき、通常より二酸化炭素濃度が高くなるため、子実体100の傘が開いてしまうのを抑止し、確実に子実体100を鹿角状とすることができる。しかも、傘が開くことを抑止することで、カビの生えやすい胞子が子実体100からの放出を抑制することもでき、この点においても汚染防止に貢献することができる。 【0030】 また、所定期間の生育中、子実体100は、酸素を吸って二酸化炭素を放出しているが、カバー30の少なくとも一部をガス透過性フィルムで構成することにより、生育ラック20の外部より酸素を導入することができる(生育ラック20内の二酸化炭素も放出できる)。これにより、生育ラック20内の酸素が不足して、子実体100の生育が阻害されることもなく、またガス透過性フィルムの面積を適宜調整することで、過度に二酸化炭素が放出されるのも防止できる。その結果、鹿角状の子実体100を効率良く生育させることができ、その収穫量を増大させることができる。 【0031】 加えて、栽培室40内に、生育時期が異なる複数の生育ラック20を置いて、子実体100の生育を行うようにした。これにより、生育期間が終了した子実体100を定期的に安定して得ることが可能となり、子実体100の生産をシステマティックに行うことが可能となる。しかも、このような方法で生育を行うと、自ずと栽培室40への出入り回数が増え、雑菌を持ち込んでしまう可能性も高まってしまうわけであるが、各生育ラック20に備えたカバー30により、そのような雑菌による汚染およびその拡散を有効に抑止でき、また出入り口に除菌や除塵等のための設備等を大掛かりに設置する必要もなくなる。 【0032】 このようにして、上記実施の形態に示したような構成を採用することで、子実体100の収穫効率を高めたり、従来必要であった余分な手間を省くことができ、作業効率を高めることができる。さらに、栽培室40の設備コスト、エネルギーコストも抑えることが可能となる。 【実施例1】 【0033】 ここで、カバー30に用いたガス透過性フィルムの効果を確認するための実験を行ったので以下にその結果を示す。 (1)培地12の作製 ブナやナラなどの広葉樹の大鋸屑粉に、栄養材として、米ぬか、ふすま、コーンブランなどを添加し、水分率を65%程度に調製した。培地12は、市販の通気フィルタ付きの培養袋に約2kg充填し、120℃で約1時間程度保持して殺菌処理を行い、これを培地12とした。培地12のサイズは、縦130mm、横200mm、高さ120mm、体積0.00312m3の略直方体とした。 【0034】 (2)植菌 殺菌処理後、室温まで放冷した培地12に、万年茸の種菌約30gを接種し、培養袋の開口部をヒートシーラーで熱圧着して密閉した。 (3)培養 約28℃の温度で30日間、万年茸の菌を培養し、培地12全体に万年茸の菌が蔓延し、培地12全体が白色を呈するまで培養を行った。 【0035】 (4)子実体100の生育 培養袋を培地12の上面部分のところで開封して菌床10上部を解放した。 その後、生育ラック20中の菌床10の占有体積比が8%以上となるように、生育ラック20に複数個の菌床10を設置した。生育ラック20は、約1860mm×860mm×1500mm、容積約2.4m3とした。生育ラック20に配置した菌床10に光が行 き渡るよう、棚中央に照明25として、蛍光灯を設置した。 【0036】 <実施例> すべての菌床10の設置後、ガス透過性フィルムからなるカバー30で生育ラック20全体を覆い、ほぼ密閉した。 <比較例> 比較例として、すべての菌床10の設置後、ガス透過性フィルムではない通常のフィル ムからなるカバー30で生育ラック20全体を覆い、ほぼ密閉した。 【0037】 栽培室40において、実施例、比較例とも、カバー30で密閉した生育ラック20の外部を温度約27℃、湿度40%以上に維持し、約60日間かけて、子実体100の生育を行った。生育期間中は生育室(生育ラック20を設置した部屋)の温度を約27℃に維持しただけで、特に加湿は行わなかった。 生育期間の完了後、実施例、比較例で、それぞれ、生育した子実体100を観察して比較した。また、生育ラック20のカバー30内部の酸素濃度、二酸化炭素濃度を測定した。そして、生育した子実体100を収穫し、その収量(棚一段あたりの収量)を計測した。 【0038】 実施例、比較例とも、生育期間中、生育ラック20の内部は湿度70%以上を維持し、子実体100の良好な生育が見られた。生育した子実体100は傘がなく、鹿の角状に分岐した形状となった。胞子の飛散もなく、生育ラック20の内部にカビの発生は見られなかった。 ガス透過性フィルムを使用しなかった比較例では、生育ラック20内部の酸素濃度は10%まで低下し、二酸化炭素濃度は15%以上となった。これに対し、ガス透過性フィルムを使用した実施例では、酸素濃度は15%以上、二酸化炭素濃度は5%以下に保つことができた。また、ガス透過性フィルムの使用によって生育ラック20内部の湿度が大きく低下することも無く、常に70%以上を維持していた。 また、ガス透過性フィルムを使用しなかった比較例では、平均収量が、65g/床であ った。これに対し、ガス透過性フィルムを使用した実施例では、平均収量が90g/床で あった。 【0039】 このように、カバー30を設けることで、鹿角状の万年茸を確実に生育でき、雑菌等による汚染を防止できることが確認できた。 また、ガス透過性フィルムをカバー30に用いることで、酸素濃度の低下、および二酸化炭素濃度の上昇を防止することができ、収量も増大できることが確認できた。 【0040】 なお、上記実施の形態では、カバー30に、所定幅のフィルムを用いる構成としたが、このカバー30を予め生育ラック20に対応した形状を有する袋状、風呂敷状等とすれば、一層作業性を向上させることができる。また、例えば最下段の棚段22a、天板23を、金属、樹脂等、気密性を有した材料からなるパネルで形成すれば、菌床10を生育ラック20に乗せた後には、その周囲側面にのみカバー30としてのフィルムを巻き付けたり貼り付けたりすれば良い。 【0041】 また、生育ラック20において菌床10が置かれる空間を密封できるのであれば、金属、樹脂等、気密性を有した材料からなるパネルで形成したカバー30を、予め生育ラック20に固定しておき、さらに、菌床10を生育ラック20に出し入れするための開閉部をこのカバー30に設けてもよい。もちろん、この場合、カバー30やその開閉部は、パッキン等で気密性を維持する必要がある。このような場合も、子実体100の生育状態が見えるように、カバー30の全面を透明とするか、一部に透明部分(窓)を設けるのが好ましい。さらにこの場合も、所要量のガス透過量を確保するため、カバー30の一部を、ガス透過性を有した材料で形成するのが好ましい。例えば、金属や樹脂からなるカバー30に所定面積の開口部を形成し、この開口部に上記実施の形態でカバー30に用いたガス透過性フィルムを貼り付けておけば良い。このような構成とすれば、菌床10を入れ替えるたびにカバー30を巻き付けなおす必要が無くなり、作業性および作業効率を大幅に向上させることができる。 これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。 【図面の簡単な説明】 【0042】 【図1】本実施の形態における茸類の栽培方法において用いる菌床を示す斜視図である。 【図2】生育ラックを示す斜視図である。 【図3】生育ラックに菌床をセットした状態を示す斜視図である。 【図4】生育ラックにカバーを設けた状態を示す斜視図である。 【図5】栽培室に生育ラックを収めた状態を示す図である。 【図6】栽培室内に複数の生育ラックを配置した状態を示す平面図である。 【図7】子実体が生育した菌床を示す斜視図である。 【符号の説明】 【0043】 10…菌床、11…袋体、12…培地、20…生育ラック(ラック)、22a、22b、22c…棚段(菌床保持部)、24…車輪(移動機構)、25…照明、30…カバー、40…栽培室、100…子実体、C…占積率
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003067 【氏名又は名称】TDK株式会社 【住所又は居所】東京都中央区日本橋1丁目13番1号
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| 【出願日】 |
平成15年9月3日(2003.9.3) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100100077 【弁理士】 【氏名又は名称】大場 充
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| 【公開番号】 |
特開2005−73673(P2005−73673A) |
| 【公開日】 |
平成17年3月24日(2005.3.24) |
| 【出願番号】 |
特願2003−311809(P2003−311809) |
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