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【発明の名称】 給水方法及び人工緑地
【発明者】 【氏名】野田 信也
【住所又は居所】東京都新宿区西新宿2丁目3番1号 旭化成ホームズ株式会社内

【氏名】水出 錠太郎
【住所又は居所】東京都千代田区有楽町1丁目1番2号 旭化成株式会社内

【要約】 【課題】建物のベランダや屋上,屋根を緑地化するに際し、人手を掛けることなく、大半を自然の雨水を利用し、過剰な給水をすることなく土壌を常に湿潤状態に維持する。

【解決手段】建物緑化構造に於いて保水層3と土壌層5とを有して構成された緑地に於ける土壌層5への給水方法であって、土壌層5に吸水シート7で覆った複数の立体構造体としての三角柱6を配置すると共に吸水シート7の端部7aを保水層3の保水中(水面以下)に到達させることで土壌に給水する。人工緑地Aは、水を保持する保水層3と、保水層3の上部に載置された土壌層5と、土壌層5に配置された立体構造体としての三角柱6と、三角柱6を覆い端部7aが保水層3の保水面に到達して配置された吸水シート7とを有して構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物緑化構造に於いて保水層と土壌層とを有して構成された緑地に於ける土壌層への給水方法であって、土壌層に吸水シートで覆った複数の立体構造体を配置すると共に前記吸水シートの一部を保水層の水面以下に到達させることによって、前記吸水シートを介して土壌に給水することを特徴とする給水方法。
【請求項2】
建物緑化構造に於ける人工緑地であって、水を保持する保水層と、前記保水層の上部に敷設された土壌層と、前記土壌層に配置された立体構造体と、前記立体構造体を覆うと共に一部が前記保水層の水面以下に到達して配置された吸水シートと、を有することを特徴とする人工緑地。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ベランダや屋上或いは壁を緑地化する所謂建物緑化構造に於ける土壌に対する給水方法と、この給水方法を採用した人工緑地に関するものであり、特に、保水層と土壌層とを有する人工緑地を構成したとき、この土壌層に対し吸水シートを介して給水することによって該土壌を湿潤な状態に維持し得るようにした給水方法と、この給水方法を実現した人工緑地に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都会に於けるヒートアイランド現象に対応するために、ベランダや屋根或いは壁面を緑化する所謂建物緑化が進められつつある。都市部に於ける屋根といえども、全てが高層ビルのものではなく、全ての屋根の面積に占める戸建て住宅の屋根の面積は圧倒的に多い。従って、これらの戸建て住宅の建物緑化を実現することは、ヒートアイランド現象の緩和に寄与することになる。
【0003】
戸建て住宅の緑化をはかる場合、多くの解決すべき問題がある。その中の一つとして、土壌の湿潤状態の維持という問題がある。即ち、例えば建物に形成される屋上緑地では、建物の許容積載荷重の面から無制限な厚さの土壌層を形成することは出来ず、土壌層の厚さを薄くせざるを得ない。このため、土壌が乾燥し易いという問題があり、土壌の湿潤状態を維持するために如何なる方式で給水するかを解決することが必要となる。
【0004】
上記問題を解決する一技術として、例えば屋上の防水層の上部に植物の毛根の侵出を防止するルートガードを配置し、このルートガード上に雨水や灌水を保持・排水し、保持した水分を植物の根部に供給すると共に土壌を把持するために、保水部と排水部とが一体に形成されたドレイン板を設け、このドレイン板上に植栽層を設けると共に該植栽層とドレイン板を固定手段によって連結し、更に植栽層に植物苗を散布すると共に保護網で保護したものが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
この技術では、ドレイン板に設けた凹部に保水し、供給水量が増えて凹部から溢れたとき、この水を凸部に設けた穴を介して排除することが出来る。従って、常に一定範囲の量の水を保持することが可能であり、且つ建物の屋上や屋根に施工が迅速で、コストの低い庭園を形成することが出来る。
【0006】
また土壌の湿潤状態を維持するための他の技術(第2公知例)として、保水層と土壌層を有して形成された緑地に、毎日一定時刻毎に一定時間散水し得るように構成したものもある。この技術では、予め設定された時刻(季節に応じて設定時刻や設定数を調整する)に一定時間散水するために、散水栓を含むバルブ機構や、このバルブ機構を制御するためにタイマーを含む制御装置が設けられている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−125662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術では、ドレイン板に保水することは出来るものの、保水された水を土壌に対して積極的に給水するという機能はなく、土壌を湿潤化する場合、散水等による給水を行うことが必要となる。即ち、土壌に植え込まれた植物苗の根が伸びてドレイン板に到達すれば、この植物苗が直接吸水することが可能である。しかし、種の栽培や根の短い苗を栽培する際、或いは種からの植栽を楽しむためには、外部から土壌への給水が必須となるという問題がある。
【0009】
また第2公知例では、常に土壌を湿潤化させることが可能であるものの、天候に関わらず予め設定された時刻毎に予め設定された時間の給水を行うため、雨天や曇天の場合には水を過剰に与えることとなり、給水に無駄が生じたり、植物の根腐れを発生させるような虞もあり、環境的にも経済的にも好ましい状況にない。
【0010】
上記の如く特許文献1の技術及び第2公知例の技術では、保水層は水を蓄える機能を有するものの、蓄えられている水を土壌に供給し得るようには構成されておらず、保水された水が土壌層を湿潤状態に維持することはない。このような緑地では、種から植物を栽培したり、根の短い植物の苗を栽培する際には、別途土壌に対する頻度の高い給水が必須となる。
【0011】
本発明の目的は、人手を掛けることなく、大半を自然の雨水を利用し、過剰な給水をすることなく土壌を常に湿潤状態に維持し、積載荷重の軽減をもはかることが出来る給水方法と、人工緑地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係る給水方法は、建物緑化構造に於いて保水層と土壌層とを有して構成された緑地に於ける土壌層への給水方法であって、土壌層に吸水シートで覆った複数の立体構造体を配置すると共に前記吸水シートの一部を保水層の水面以下に到達させることによって、前記吸水シートを介して土壌に給水することを特徴とするものである。
【0013】
また本発明に係る人工緑地は、建物緑化構造に於ける人工緑地であって、水を保持する保水層と、前記保水層の上部に敷設された土壌層と、前記土壌層に配置された立体構造体と、前記立体構造体を覆うと共に一部が前記保水層の水面以下に到達して配置された吸水シートとを有して構成されるものである。
【発明の効果】
【0014】
上記給水方法では、吸水シートで覆った立体構造体を土壌層に配置すると共に吸水シートの一部を保水層の水面以下まで到達させたので、吸水シートの一部は常に水に浸されることとなり、毛細管現象によって保水層の水を吸い上げることが出来る。この水は立体構造体の周囲の土壌に給水されて該土壌を湿潤化することが出来る。特に、立体構造体を土壌層に複数配置することで、該立体構造体を覆う吸水シートによって吸い上げられた水が隣接する立体構造体を覆う吸水シートによって吸い上げられた水とつながり、隣接する立体構造体の間の湿潤境界面を上昇させ、立体構造体を覆う吸水シートの最も高い位置よりも更に高いレベルで湿潤状態を形成し、土壌の湿潤化を実現することが出来る。
【0015】
このため、保水層の水を有効に利用することが可能となり、土壌に対する無駄な給水を減少させて安定した給水を実現出来る。特に、土壌を高い位置まで湿潤化することが可能となるため、従来は困難であった、種からの栽培、根の短い苗の栽培を容易に実現することが出来る。
【0016】
また上記人工緑地では、保水層の上部に載置された土壌層を常に湿潤化することが可能となり、栽培する植物の状態の選択範囲を広くすることが出来、人工緑地の応用を広く延長して利用の自由度を高めることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の給水方法、及びこの給水方法を利用した人工緑地の最良の実施形態について説明する。
【0018】
本発明の給水方法は、ベランダや屋上或いは壁を含む建物の緑化をはかる建物緑化構造に於ける保水層と土壌層とを有する緑地を土壌の湿潤状態を維持し得るように構成したものであり、保水層に保水された水を吸水シートで吸い上げて土壌に給水することで、人手を必要とせずに、常に略同じ程度の位置となる湿潤境界面を形成し得るような給水を行って土壌の湿潤化を実現したものである。
【0019】
また本発明に係る人工緑地は、保水層と土壌層からなり、保水層に保水された水を吸水シートで吸い上げて土壌に給水し得るように構成したものであり、人手を必要とせずに、且つ土壌の乾燥状態に応じて常に給水して土壌の湿潤化をはかることが可能である。
【0020】
本発明に於いて、建物緑化構造は、建物のベランダや屋根を含む屋上、或いは出窓や花台のように、下部構造がコンクリートスラブやコンクリートパネル或いは軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)ようなパネル類、或いは金属板,木造・瓦等によって形成された部位に構成されるものである。本発明の給水方法及び人工緑地は、ベランダや屋上或いは壁の全部の面積を緑化し、或いは一部を緑化する際に採用することが可能である。
【0021】
ベランダや屋上を緑化する場合、これらの床面に保水層や土壌層を含む人工緑地を構成し、この人工緑地に花類,ハーブ類,芝生,被地植物類,低木類を植え込むことでルーフガーデンを構成してベランダや屋上を緑化することが可能である。また壁を緑化する場合、保水層や土壌層を含む人工緑地はベランダの一部や花台、或いは地上からの登攀タイプ,屋根屋上からの垂下タイプで構成され、この人工緑地に蔦類を植え込むと共に建物の壁面に沿って設けた柵に絡ませることで、壁面の緑化をはかることが可能である。
【0022】
本発明の建物緑化構造は保水層と土壌層とを有して構成される。前記保水層は土壌層の下方に形成されており、土壌層に対する散水によって、或いは保水層に直接、給水された水を保持することが可能なように構成されている。
【0023】
保水層の構成としては、予め設定された容量の水を保持し得るものであれば良く、保水層、土壌層、植栽等全てを含む重量が建物の許容積載荷重範囲としなければならない。しかし、土壌に種や苗を植える際に、人が土壌層に入り込んだとき、大きく撓んだり、変形することのないのが好ましい。即ち、種や苗を植える作業をするために人が土壌に入ったときに、重みで変形することがなく、安定した地盤として作用し得ることが好ましい。
【0024】
上記の如き保水層を構成する場合、充分な保水性を有する部材を用いることが好ましい。このような部材として、例えば木製,合成樹脂製或いは金属製の簀の子状の部材(簀の子部材)を利用することが可能であり、また高い硬度を持った合成樹脂繊維からなり、この合成樹脂繊維をへちま状に絡ませて板状に形成することで耐圧縮性を有する部材(へちま板部材)を用いることも可能である。このような構造とすることで、人が土壌の上から作業することが可能となる。
【0025】
簀の子部材を用いた場合、脚部の高さに対応した空間を構成することが可能であり、この空間を保水空間して利用することが可能である。このような簀の子部材では、充分な強度に設計しておくことで、そして土壌に人が入り込んだとしても変形することがなく、土壌層が安定した地面としての感触を発揮することが可能であるはむろん、保水を排出することを防ぐことも可能となる。
【0026】
またへちま板部材を用いた場合、予め上部に載置される土壌層の重量や植え込まれた植物類の重量、更に、土壌に入り込んだ人の重量を支持し得る強度を発揮し得るように設計しておくことで土壌に入り込んだ人の重量によって変形することがなく、且つ繊維間の空間によって保水空間を構成することが可能である。このようなへちま板状部材では、容積の90%以上の保水能力があり、しかも厚さの変化のないものが提供されている。
【0027】
適度な雨天があることで保水層は常に水を保持しているため、保水層を構成する部材は長期間に使用により、水の影響を受けて腐食することのない材料を用いることが好ましい。このような材料としては合成樹脂であることが最も好ましい。
【0028】
保水層の下側の構成は特に限定するものではないが、該保水層の下側にある建物のベランダや屋上に障害を与えるものであってはならない。このため、保水層の下側であって建物の構造体(例えばALCパネル等)との間には、屋上緑地の全重量による建物仕上面への影響を及ぼすことがなく、保水層に蓄えられた水が該構造体に浸入することを防止することが可能で、且つ土壌層に植えられた植物の根が前記構造体に対して損傷を与えることを防止することが可能な建物保護層を設けることが好ましい。
【0029】
上記建物保護層としては、所定の寸法を持った合成樹脂製の皿状部材や、高い防水性を有する防水シートと植物根が通過し得ない防根シートとを組み合わせて形成した保護シート、等を利用することが好ましい。
【0030】
保水層は、目的の人工緑地が必要とする所定日数分の水を蓄えておくことが可能なものであることが好ましい。このため、保水層の厚さ(深さ)は、人工緑地に栽培する植物の種類は、土壌層を構成する土壌の保水性能や土壌層の厚さ、更に、土壌層に対して外部から給水する際の機構、建物の許容積載荷重等の条件を考慮して設計することが好ましい。
【0031】
保水層は水量を無制限に蓄えることが可能なものである必要はなく、個々の保水層に設定された水量を越えたとき、越えた分を排水し得るように構成しておくことが好ましい。即ち、保水層に於ける保水深さを設定しておき、雨天や散水によって供給された水が保水深さを越えたとき、オーバーフロー排水することにより建物の許容積載荷重を超過することがないように、排水口を設けておくことが好ましい。
【0032】
オーバーフローした水を排出する構造は特に限定するものではないが、人工緑地の周囲に滞留して該人工緑地を構成する部材を湿潤する虞のないことが好ましい。即ち、保水層からオーバーフローした水を例えば樋に流し込むことによって速やかに人工緑地から排出することで、建物の屋上や該屋上を構成する構造体に影響を与えることのないように構成することが好ましい。
【0033】
このように、保水層に保水し得る水量を制限することによって建物が負担すべき積載荷重を越えることなく安定した荷重を保持することが可能となり、且つオーバーフローした水を速やかに排出することで、人工緑地を構成する部材や建物に悪影響を与えることがない。
【0034】
保水層の上部には土壌層が配置される。土壌層を構成する土壌の性質は特に限定するものではなく、粒子の細かい庭土や粒子の粗い砂、或いは人工軽量土を利用することが可能である。しかし、建物に対する荷重の負担を軽減するためには人工軽量土を用いることが好ましい。
【0035】
人工軽量土は、例えばALCパネルの製造現場で発生する端材を砕いて形成することが可能であり、広い範囲の粒度を持ち、適度な保水性と排水性及び通気性を有し、且つ比重が小さく極めて軽量化されている。このような人工軽量土であっても、適度な保水性を有することから外部から与えられた養分を保持しておくことが可能である。
【0036】
保水層の上部に配置された土壌層を構成する土壌は、保水層に移動しないことが好ましい。土壌が保水層に移動した場合、保水層に於ける保水可能水量が減少することとなり、効果的な給水を確保し得なくなる虞が生じ、且つ排水性能を低下させることにつながる。
【0037】
このため、保水層と土壌層との間に、土壌の水を透過させるものの土壌を通過させることのない透水層を設けることが好ましい。この透水層は、水を透過させて粒状の土壌の通過を阻止する機能を有するものであれば良く、構造や材質を限定するものではない。このような機能を有するものとしては、樹皮や棕櫚等の植物性の材料や不織布等があり、いずれも用いることが可能である。
【0038】
高い透水性を有するものの土壌を通過させることのない構造を持ち、且つ長期間の使用に伴って水による悪影響を受けることのない材質であることが好ましく、このような性質を持ったものとしては、合成樹脂繊維を用いた不織布であることが好ましい。
【0039】
土壌層は前述したように人工軽量土を用いることが好ましく、1立方メートル当たりの重量が1トン以下になるような軽量土であることが望ましい。特に、ALCを材料とした人工軽量土では、高い保水性と良好な排水性を有しているため、好ましく利用することが可能である。即ち、ALCを材料とした人工軽量土では、該人工軽量土の容積に応じて略一定量の水を蓄えることが可能であり、この量を越えた水を速やかに排水することが可能である。従って、適度な給水を行うことによって、定常的な湿潤状態を維持することが可能となる。
【0040】
土壌層の厚さは限定するものではなく、栽培すべき植物が必要とする土壌厚さに対応させた深さとすることが好ましい。しかし、土壌層を無制限に厚くし得る訳ではなく、建物に設定された許容積載荷重との関連で設定されるべきものである。
【0041】
土壌層に複数配置された立体構造体は、吸水シートで覆われて該吸水シートの姿勢を維持させる機能を有するものである。このため、立体構造体としては、土壌層中に吸水シートの凸条を形成する機能を発揮し得るものであれば良く、形状や寸法を特に限定するものではない。
【0042】
従って、立体構造体としては、例えば三角柱や四角柱等の多角形柱体や、円柱体を用いることが可能である。また土壌層に所定の深さで棒状の部材を配置しておき、この棒状部材に吸水シートを引っ掛けて設置した場合、該棒状部材も立体構造体を構成することとなる。このように、本発明に於ける立体構造体とは、土壌層に吸水シートの凸条を形成し得るものであれば含まれるものである。
【0043】
立体構造体であっても軽量化をはかることが好ましく、長期間の使用に伴って変形がないか、あっても少ないことが好ましく、土壌の有機物,水,肥料等により化学変化を起したり、植物への悪影響を及ぼすものでないものが好ましい。また土壌層中に設置したとき、設置位置を安定して保持し得るものであることが好ましい。このような機能を持った立体構造体としては合成樹脂の発泡体があり、合成樹脂の発泡倍率を適当な倍率に設定して成形したものであることが好ましい。
【0044】
立体構造体の形状は、土壌に栽培する対象に応じて設定することが可能である。例えば、種から栽培するような場合、立体構造体の断面形状を上部に平面を形成し得る四角形や六角形とすることで、上部の平面を床として利用することが可能である。また苗から栽培するような場合、立体構造体の断面形状は何ら限定されるものではない。
【0045】
合成樹脂の発泡体からなる立体構造体を用いた場合、この立体構造体の周囲を吸水シートで覆う作業を容易に行うことが可能であり、吸水シートで覆った立体構造体を土壌層に設置したとき、安定した状態で設置位置を保持することが可能である。このように、立体構造体として合成樹脂の発泡体を用いることで、積載重量の面でも有利となる。
【0046】
立体構造体を土壌層に設置する場合、該立体構造体を必ずしも保水層の上部に載置しておく必要はなく、底部が保水層に入り込んだ状態で設置しても良い。即ち、立体構造体は、全体が土壌層にある必要はなく、一部が保水層に配置されていても良い。特に、底部を保水層の間に並べて配置すると共に頂部を土壌層に配置することで、立体構造体を移動不能に設置することが可能となり、好ましい状態で設置することが可能である。
【0047】
立体構造体を覆う吸水シートは一部が保水層の水面以下(保水中)に到達しており、該保水中に到達した端部から水を吸い上げて土壌に給水する機能を有する。このため、吸水シートとしては前記機能を有するシート状の部材であれば利用することが可能であり、材質を限定するものではない。このような吸水シートとしては、吸水性の高い不織布を用いることが可能であり、長期間の使用に伴って水による悪影響を受けることのない材質、例えば合成樹脂繊維からなる不織布を用いることが好ましい。
【0048】
吸水シートは、必ずしも立体構造体の底部を含む全周を覆う必要はなく、土壌層に位置する面を覆うことで、保水層に蓄えられた水を吸い上げて土壌に給水するという目的を達成することが可能である。従って、土壌層に配置された立体構造体の上部から吸水シートを被せて端部を垂らし、この垂らした端部を保水層の保水中に到達させて水を吸い上げるようにしても良い。特に、吸水シートの一部を保水層の下部(底部)に到達させておくことで、安定した吸水機能を発揮し得るため好ましい。また吸水シートは必ずしも立体構造体を全長にわたって覆う必要はなく、該立体構造体の一部が露出した状態であっても良い。
【0049】
土壌層に配置され吸水シートで覆われた複数の立体構造体の間隔は特に限定するものではない。即ち、隣接する立体構造体の間隔は一義的に設定し得るものではなく、土壌層の厚さや該土壌層の有する保水性能及び排水性能、栽培すべき植物、等の諸条件に応じて適宜設定,設計することが好ましい。また立体構造体の高さも一義的に設定し得るものではなく、土壌層の厚さや該土壌層の有する保水性能及び排水性能、栽培すべき植物、等の諸条件に応じて適宜設定することが好ましい。
【0050】
土壌層に配置される立体構造体の間隔、高さは、全てが一定である必要はなく、栽培すべき植物の種類や配置に応じて適宜設定することが好ましい。即ち、一定の面積に芝生を植えるような場合、この面積に対応する部分には、同じ高さを持った複数の立体構造体を一定の間隔で配置することになる。また芝生とハーブ或いは低木を混栽するような場合には、夫々の植物が栽培されている面に該植物が必要とする水を給水し得るような高さを持った立体構造体を最適な間隔で配置することが好ましい。
【0051】
土壌層の表面にはマルチング材と呼ばれる樹皮や木材チップからなる表層を形成しておくことが好ましい。このような表層を形成しておくことで、土壌層からの過度の水分の蒸発を抑えたり、ホコリが舞うことや土壌の飛散を防止すると共に目的以外の種苗の飛来や生息を防止することが可能となり、且つ土壌層の表面に散水したとき、該土壌層の表面に窪みが形成されてしまうようなことを防止することが可能となる等、多くの必要性を有している。
【実施例1】
【0052】
以下、本発明の実施例について図を用いて説明する。図1は第1実施例に係る給水方法を実現した人工緑地の構成を説明する模式図である。
【0053】
図に於いて、人工緑地Aは、ベランダや屋上の床或いは屋根面を構成するALCパネルや金属板等の屋上構造体1の上部に構成されている。屋上構造体1の上部に構成された人工緑地Aは、屋上構造体1から突出する図示しない境界部材によって周囲が制限されている。この境界部材はコンクリートブロックやレンガ、鋼材或いは防水鋼板、木製の柵或いは合成樹脂製のブロック等を連続させることによって構成されており、人工緑地Aを構成する後述する各層1〜5の外周を規定し、且つ各層1〜5の荷重を保持する機能を有する。
【0054】
屋上構造体1の上面には、建物に対する防水機能と、植物の根が侵入することを防止する防根機能を持った建物保護層2が形成されており、この建物保護層2によって、屋上構造体1の人工緑地Aから排出される水に対する防水性を確保すると共に植物根が屋上構造体1の僅かな隙間に入り込んで建物に対して損傷を与えることがないように構成されている。
【0055】
建物保護層2の上部には保水層3が形成されている。保水層3の厚さは人工緑地Aに於ける保水量を規定するものであり、土壌層5の厚さや該土壌層5を構成する土壌の保水性能等を考慮して設定することが好ましい。本実施例では、保水層3を約4cmの厚さを持った層として構成している。
【0056】
保水層3は高い圧縮強度と耐変形性を持ち且つ空間率の高い板状の部材(へちま板部材)によって排水性能をも有する構造体として構成されている。このようなへちま板部材としては、例えば日本ポリ・プロダクツ株式会社製のCPジオマットがある。このジオマットは、異なる厚さを持った板状部材として用意されており、所望の厚さのジオマットを目的の人工緑地Aの平面寸法に合わせて切断した平板を用いることで、該平板の厚さに対応させた保水層3を構成することが可能である。
【0057】
保水層3の上面には、土壌層5から排出された水を透過させ、且つ土壌を通過させることのない透水層4が形成されている。この透水層4は、不織布からなる透水シートによって構成され、土壌層5に供給された水が該土壌層5から下方に浸透したとき、水のみを保水層3に透過させて土壌の通過を阻止することで、保水層3に於ける保水能力を保持することが可能である。
【0058】
保水層3の高さ方向であって、人工緑地Aを規定する緑化部形成外周部材の所定位置には図示しない排出通路が形成されており、保水層3に於ける最大貯水量を維持し得るように構成されている。排出通路の構成は特に限定するものではないが、該保水層3の外周を規定する境界部材に排出孔を形成しておき、この排出孔の外側に樋状の部材或いはパイプを連結することで構成することが可能である。そして排出通路の端部を建物の樋に連通させておくことで、保水層3に大量の水が給水されたとき、該保水層3の保水能力を越えた水を排出することが可能である。
【0059】
透水層4の透水シートを構成する不織布としては材料を特に指定するものではないが、旭化成株式会社製のコルドン エステルタイプを用いている。そして、このシートを人工緑地Aの平面寸法に合わせて切断し、保水層3を構成するために予め敷き並べたへちま板部材の上面を覆うことで透水層4を構成し、或いは、予め適度な寸法に切断されたへちま板部材の外周に巻き付けておき、このへきま板部材を敷き込むことで、保水層3及び透水層4を形成することが可能である。
【0060】
透水層4の上部に土壌層5が構成されている。この土壌層5を構成する土壌の仕様については特に限定するものではないが、本実施例では、ALCを粉砕して構成した軽量土を用いている。この軽量土を構成する土壌の粒子分布は特に限定するものではなく、植物を栽培するのに必要な粒度を有するものであれば良い。
【0061】
本実施例に於ける土壌層5の深さは、約18cmとなるように設定している。しかし、人工緑地Aとしての土壌層の厚さを18cmに限定するものでないことは当然である。例えば、後述する実験では土壌層5の厚さを約30cmに設定している。
【0062】
土壌層5には立体構造体として、合成樹脂の発泡体からなる複数の三角柱6が配置されており、夫々の三角柱6は吸水シート7によって覆われている。各三角柱6は透水層4の上部に所定の間隔を持って配置されており、土壌に埋設されることで移動不能な状態で保持されている。
【0063】
本実施例に於いて、三角柱6は断面に於ける高さが約10cmに設定された発泡体によって形成されており、この三角柱6を水平方向に約30cm〜約60cmの間隔を持って配置している。
【0064】
三角柱6を覆う吸水シート7は、一部である端部7aが保水層3の保水中に到達して配置されており、これにより、保水層3に蓄えられた水を吸い上げて土壌層5に給水し得るように構成されている。吸水シート7は合成樹脂繊維からなる不織布を用いている。休止シート7として用いる不織布を特に限定するものではないが、本実施例では日本バイリーン株式会社製の品番F−1000を用いている。この不織布は、水を極めて良好な状態で吸い上げることが可能であることを、後述する実験で確認している。
【0065】
上記吸水シート7では、端部7aを保水層3の保水中に到達させておくことで、該保水層3に蓄えられた水を吸い上げることが可能であり、且つ土壌層3に於ける土壌の湿潤状態に応じて自然に土壌層5に給水することが可能である。
【0066】
土壌層5の上面にはマルチング材からなる保護層8が形成されており、土壌層3からの水の蒸発を調整し、或いは土壌層5に散水されたとき、散水のエネルギーによって土壌層5に凹凸が形成されることを防止し得るように構成されている。
【0067】
上記の如く構成された人工緑地Aでは、土壌層3が乾燥した状態にあるとき、保水層3に蓄えられた水は、吸水シート7によって吸い上げられる。吸水シート7によって吸い上げられた水は、土壌層5で該土壌層5を構成する土壌に移行して給水される。個々の三角柱6の周囲の土壌が吸水シート7からの給水を受けることで、隣接する三角柱6を覆う吸水シート7による給水とつながって保水空間(給水の水位、湿潤境界面)が形成される。
【0068】
土壌層7に於ける水位は経時的に上昇し、土壌の保水能力に対して湿潤状態となった水位を維持する。このため、土壌は常に湿潤状態を維持することが可能である。土壌層5に含まれた水が保護層8から蒸発したとき、この蒸発に伴って保水層3に蓄えられた水が吸水シート7によって吸い上げられて土壌層5に補給される。
【0069】
特に、保水層3に保水された水が吸水シート7によって吸い上げられるのに伴って、保水層3に存在する空気が水と共に土壌層5に移動し、該土壌層5に対して新鮮な空気を供給することが可能となる。この場合、保水層3にオーバーフロー用の穴を形成しておくことで、大気を取り込んで土壌に空気を供給することが可能となり好ましい。
【0070】
また雨天時或いは散水時に土壌層5に対して外部から給水,保水され、土壌層5の保水能力を越えた水は土壌層5から透水層4を透過して保水層3に浸入して蓄えられる。雨水や散水等による給水量が多いとき、保水層3の保水能力を越えた水は土壌層5に滞留することなく、オーバーフローして保水層3から速やかに排出される。
【0071】
次に、本発明に係る給水方法について行った実験結果について説明する。図2〜図8により説明する。この実験は、透明なプラスチック容器の内部に人工緑地Aを構成する保水層3,透水層4,土壌層5を構成すると共に、土壌層5に吸水シート7によって覆われた二つの三角柱6a,6bを設置して経時的な土壌の湿潤状態を観察したものである。
【0072】
図2は実験を開始する準備が整った状態であり、土壌層5は乾燥した状態を保持している。尚、図2〜図8に於いて、土壌層5には、高さが約10cmの発泡体からなる三角柱6aと、高さが約6cmの発泡体からなる三角柱6bが、水平方向に約30cm離隔させた状態で配置されている。これらの三角柱6a,6bは、保水層3の上部に設けた透水層4上に配置されると共に深さが約30cmに設定された土壌層5に埋設されている。三角柱6a,6bは、端部7aを保水層3の保水中に到達させた吸水シート7によって覆われた状態で土壌層5に配置されている。
【0073】
図3は実験開始後、1時間が経過したときの状態であり、この時間で既に土壌層5には湿潤化された土壌と乾燥した土壌との間に色の違いが生じており、両土壌の間に湿潤境界線10が明確に現れている。特に、三角柱6a,6bの間は湿潤境界線10のレベルが高くなっており、高い水位を保持し得ることが明らかになっている。尚、この状態で三角柱6a,6bの間に形成された湿潤境界面10は透水層4から約2cm程度となっている。
【0074】
図4は実験開始後、2時間が経過したときの状態であり、三角柱6a,6bの周囲の土壌の湿潤化が促進されると共に、両三角柱6a,6bの間の湿潤境界面10のレベルは約5cmに上昇している。しかし、湿潤境界面10よりも下のレベルの土壌は必ずしも充分に湿潤しているようではなく、部分的に乾燥した状態を保持しているものもある。
【0075】
図5は実験開始後、3時間が経過したときの状態であり、更に三角柱6a,6bの周囲の土壌の湿潤化が促進され、両三角柱6a,6bの間の湿潤境界面10のレベルは約6cmに上昇している。更に、湿潤境界面10よりも下のレベルの土壌の湿潤が促進し、満遍なく湿潤した状態となっている。
【0076】
図6は実験開始後、約1日が経過したときの状態であり、三角柱6a,6bの間の湿潤境界面10のレベルは約9cm程度に上昇している。この状態では、湿潤境界面10の最高水位は三角柱6a,6bの頂部を大きく越えることはない。
【0077】
図7は実験開始後、約8日が経過したときの状態であり、三角柱6a,6bの間の湿潤境界面10のレベルは約12cm〜15cm程度にまで上昇しており、湿潤境界面10の最高水位は三角柱6a,6bの頂部を大きく越えている。この状態では、土壌層5に於ける湿潤境界面10は、三角柱6a,6bに関わらず略水平な線に接近しつつある。
【0078】
図8は実験開始後、約18日が経過したときの状態であり、三角柱6a,6bの間の湿潤境界面10のレベルは約16cm〜19cm程度にまで上昇しており、湿潤境界面10の最高水位は三角柱6a,6bの頂部を大きく越え、土壌層5の深さの1/3〜1/2程度が湿潤状態を維持し、且つ土壌層5に於ける湿潤境界面10は、三角柱6a,6bに関わらず略水平な線に接近している。
【0079】
上記の如き実験の結果、端部7aを保水層3の保水中に到達させた吸水シート7によって覆われた立体構造体となる複数の三角柱6を土壌層5に設置しておくことで、保水層3に蓄えられた水を吸水シート7によって吸い上げて土壌層5に給水することが可能であり、土壌層5に於ける水位は経時的に、且つ三角柱6の高さに関わらず上昇し、該水位よりも下のレベルにある土壌を湿潤化することが可能であるといえる。
【実施例2】
【0080】
次に第2実施例に係る給水方法と人工緑地Bの構成について図9の模式図により説明する。尚、図に於いて、前述の実施例と同一の部分及び同一の機能を有する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0081】
図に於いて、立体構造体は断面形状が四角形の四角柱9として構成されている。この四角柱9は合成樹脂の発泡体によって形成されており、可及的に形状化がはかられている。この四角柱9は、建物保護層2の上部に所定の間隔を持って配置されており、隣接する四角柱9の間に保水層3を構成するへちま板部材、及び透水層4を構成する不織布からなる透水シートを用いた透水層4が設けられている。また透水層4の上部に土壌層5が形成されると共に該土壌層5の上面に保護層8が形成されている。
【0082】
保水層3が四角柱9によって分断されることが好ましいことではなく、該保水層3は人工緑地Bの平面全体にわたって連続した状態で形成されることが必要である。このため、四角柱9は、人工緑地Bの平面寸法や、該人工緑地Bに於ける保水層3の連続性を阻害することのない寸法や配置にしている。
【0083】
四角柱9は、吸水シート7によって底面を除く二面以上が覆われており、該吸水シート7の両端部7aが保水層3の保水中に到達している。そして、この状態の四角柱9が土壌層5に埋設されることによって、四角柱9は保水層3を構成するへちま板部材と土壌とによって移動が拘束されることとなり、外部から間接的な力が作用した場合であっても、位置が移動することがない。
【0084】
また四角柱9の上面が土壌層5に於ける浅い面として形成されるため、この四角柱9の上面に対向する土壌に種を蒔くことで、植物を種から栽培することが可能となる。このため、人工緑地Bでは、栽培し得る植物の種類を増やすことが可能である。また隣接する四角柱9の間隔を小さくすることで、四角柱9の上面以外の面、即ち、四角柱9どうしの間の空間でも植物を種から栽培することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
上記の如き給水方法とこの給水方法を実現した人工緑地は、建物の屋上のみならず、公園等の下側がアスファルトやレンガ或いはコンクリート面からなる小さい空き地にも適用することが可能であり、且つ高層住宅のベランダのような限られた空間に適用して効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】第1実施例に係る給水方法を実現した人工緑地の構成を説明する模式図である。
【図2】給水方法の実験経過を説明する図であり、実験開始準備が整った状態の説明図である。
【図3】実験開始後、1時間が経過したときの状態である。
【図4】実験開始後、2時間が経過したときの状態である。
【図5】実験開始後、3時間が経過したときの状態である。
【図6】実験開始後、約1日が経過したときの状態である。
【図7】実験開始後、約8日が経過したときの状態である。
【図8】実験開始後、約18日が経過したときの状態である。
【図9】第2実施例に係る給水方法を実現した人工緑地の構成を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0087】
A,B 人工緑地
1 屋上構造体
2 建物保護層
3 保水層
4 透水層
5 土壌層
6,6a,6b 三角柱
7 吸水シート
7a 端部
8 保護層
9 四角柱
10 湿潤境界面

【出願人】 【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
【住所又は居所】東京都新宿区西新宿二丁目3番1号
【出願日】 平成15年9月2日(2003.9.2)
【代理人】 【識別番号】100066784
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 周吉

【識別番号】100095315
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕幸

【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介

【公開番号】 特開2005−73641(P2005−73641A)
【公開日】 平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願番号】 特願2003−310198(P2003−310198)