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【発明の名称】 挿し穂の培養方法
【発明者】 【氏名】藤田 啓子
【住所又は居所】山口県岩国市飯田町2丁目8番1号 日本製紙株式会社技術研究所内

【氏名】清水 卓也
【住所又は居所】山口県岩国市飯田町2丁目8番1号 日本製紙株式会社技術研究所内

【氏名】村上 邦睦
【住所又は居所】山口県岩国市飯田町2丁目8番1号 日本製紙株式会社技術研究所内

【要約】 【課題】挿し穂からの不定根形成を促進して、難発根性植物に適用した場合にも、その発根率を向上させる、挿し穂の培養方法を提供する。

【解決手段】培地及び/又は培養土を用いて挿し穂を培養するにあたり、挿し穂の培地及び/又は培養土と接する部分の少なくとも一部に負電圧を印加して不定根を形成させる。このため、例えば、電圧印加装置と出力伝達手段を介して接続された鉄や銅、白金、炭素等の導電体からなる負電極を、挿し穂を挿しつけている固体培地に、又は、水や市販の液肥や液体培地で湿潤させた培養土に挿し込んでおき、この負電極から負電圧を印加しつつ、挿し穂を培養する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地及び/又は培養土を用いて挿し穂を培養するにあたり、挿し穂の培地及び/又は培養土と接する部分の少なくとも一部に負電圧を印加して不定根を形成させることを特徴とする、挿し穂の培養方法。
【請求項2】
培地及び/又は培養土と接する部分に、挿し穂の基部が存在することを特徴とする、請求項1又は2に記載の挿し穂の培養方法。
【請求項3】
挿し穂が、培地及び/又は培養土と接する部分に、切断面又は切込み部を有していることを特徴とする、請求項1に記載の挿し穂の培養方法。
【請求項4】
印可する負電圧が400〜12000Vであることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の挿し穂の培養方法。
【請求項5】
挿し穂を培養している培地及び/又は培養土を介して、挿し穂の培地及び/又は培養土と接する部分の少なくとも一部に負電圧を印加することを特徴とする、請求項1、2、3又は4に記載の挿し穂の培養方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、挿し穂を培養して植物個体を得るための方法、特に、挿し穂からの発根率を向上させることのできる挿し穂の培養方法であって、発根が難しい植物を発根させるのに適した方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
植物を産業的に利用する場合において、目的に適った形質を持つ均質な苗を大量に増殖するステップは必ず要求される。これは、育種を行うにしても、植林を行うにしても変わらない。このとき苗の大量増殖手段として有用なのが、伝統的な挿し木法や、近年のバイオテクノロジーの発達により生まれた組織培養法である。これらの方法によれば、単に、苗の大量増殖ができるばかりではなく、同一の遺伝的性質を有する植物個体、即ちクローン苗を大量かつ迅速に増殖することができる。
【0003】
挿し木法においては、増殖しようとする植物個体から枝や、場合によっては芽、葉等を切取って挿し穂とし、これを適当な培養土に挿し付けて発根させ、苗を生産する。一方、組織培養法において木本植物を大量増殖しようとする場合には、多芽体や苗条原基を経由することが多い。具体的には、増殖しようとする植物個体から芽や茎頂点等を切取って培養し、多芽体や苗条原基を発生させた後、これらから伸長してくる不定芽を切取り、この不定芽を挿し穂として適当な支持体に挿し付けて発根させる。つまり、いずれの方法を用いてクローン苗を生産するにしても、最終的には挿し穂からの発根という過程を経ることが多い。
【0004】
しかし、挿し穂の発根性は、植物の種類により大きく異なっている。一般に、木本植物は、草本植物よりも発根性が劣っている。また、同じ木本植物においても、例えば、ヤナギやヒノキ等は挿し穂からの発根が容易であるが、ユーカリやマツでは挿し穂からの発根が極めて難しい。
【0005】
このような難発根性植物の発根性を改良する方法は、そのアプローチを、外的要因に着目するものと内的要因に着目するものとに、大きく分けることができる。この場合において、外的要因に着目したアプローチでは、挿し穂を培養する際の、温度、湿度、酸素、炭酸ガス濃度、光条件、培地等の環境条件を検討することで、発根に最も適する環境条件を見出し、これを実現しようとする。
【0006】
一方、内的要因に着目したアプローチでは、挿し穂自体として高い発根能を有するものを得るべく検討を行う。このような挿し穂を得る方法として、例えば、暗黒状態で挿し穂を萌芽させる(黄化処理)、挿し穂を種々のオーキシンで処理する、挿し穂の葉からの蒸散を抑制する、樹齢の若い親木からの挿し穂を用いる、親木をジベレリン生合成阻害剤(B−ナインやパクロブトラゾール:王子製紙特許 特開2001−231355)で処理する等の方法が、これまでに報告されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−231355(第2頁、特許請求の範囲)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
難発根性植物の発根性を向上させるには、挿し穂の外的要因のみならず、内的要因をも発根に最も適した状態とする必要がある。しかしながら、挿し穂の内的要因に着目した発根性の向上については、まだ十分に検討がなされているとは言えない。
【0009】
本願発明は、かかる問題点を踏まえ、挿し穂の内的要因に着目し、その発根性を向上させるべくなされたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは鋭意研究の結果、挿し穂の発根時に負電圧を印可すると、挿し穂の内的要因にこの負電圧が影響を及ぼして、不定根の形成が促進されることを見出し、本願発明を完成させた。
【0011】
即ち、本願発明は、培地及び/又は培養土を用いて挿し穂を培養するにあたり、挿し穂の培地及び/又は培養土と接する部分の少なくとも一部に負電圧を印加して不定根を形成させることを特徴とする、挿し穂の培養方法に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本願発明において挿し穂として用いることのできる植物の種類に特に制限はない。ユーカリ、マツ、アカシア、ヤマモモ、クヌギ、ブドウ、リンゴ、サクラ、バラ、ツバキ、ウメ等の木本植物の他、キクやカーネーション等の草本植物にも本願発明を適用することができる。もっとも、本願発明は、ユーカリやマツ等の難発根性の植物に適用した場合に、特に大きな効果を発揮する。
【0013】
これらの挿し穂は、温室や屋外に生育している植物個体から得られたものでも、組織培養法により得られたものでもよい。植物個体から挿し穂を得る場合には、枝、茎、芽又は葉を切取り、これらを挿し穂として用いればよい。木本植物の場合は緑枝(当年枝)や熟枝(前年以前に伸びた枝)、草本植物の場合は芽や葉を用いるのが普通である。挿し穂として枝を用いる場合には、その枝についた葉の蒸散作用を抑制して不定根の形成をより促進させるため、葉の一部を切除することも有効である。なお、本願発明において、不定根とは、枝、茎、葉など、通常は根が形成されない部分に形成される根のことをいう。
【0014】
組織培養により挿し穂を得る場合には、多芽体や苗条原基を誘導し、これらの組織から伸長してくる不定芽を、その根元付近から切取って、これを挿し穂として用いればよい。多芽体又は苗条原基は、それぞれの植物において公知の方法を用い、誘導することができる。例えば、前記の木本植物から、多芽体を形成させて本願発明で使用するシュートを取得するには、概ね次のようにして行う。
【0015】
まず、材料とする植物から頂芽、腋芽等の組織を採取し、採取した組織について、有効塩素量0.5〜4%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液又は有効塩素量5〜15%の過酸化水素水溶液に10〜20分間浸漬して表面殺菌を行う。次いで、これを滅菌水で洗浄し、固体培地に挿し付けて芽を開じょさせ、伸長してきたシュートを同じ組成の培地で継代培養することにより、多芽体を形成させる。ユーカリ属やアカシア属の腋芽を用いる場合には、固体培地は、ショ糖1〜5重量%、植物ホルモンとしてベンジルアデニン(以下、BAと略す。)0.02〜1mg/l、ゲランガム0.2〜0.3重量%もしくは寒天0.5〜1重量%を含有するムラシゲスクーグ(以下、MSと略す。)培地又はこのMS培地の硝酸アンモニウム成分と硝酸カリウム成分とを半減させた改変MS培地を用いるのが好ましい。こうして形成された多芽体からは活発に不定芽が分化し、伸長してくるので、本発明においてはこの伸長して来た不定芽を切取って使用すればよい。多芽体自体は、適当に分割して多芽体形成に用いた培地と同一組成の培地で培養することにより維持し、増殖させることができる。
【0016】
本願発明においては、こうして得られた挿し穂を培地や培養土で培養する。このとき用いる培地及び/又は培養土は、それぞれの植物の発根用に適したものを用いるとよい。例えば、培地としては、ムラシゲ・スクーグ(MS)やガンボーグのB5等、植物の組織培養用培地として一般的に良く知られた基本培地又はこれを希釈したものに、必要に応じ、植物ホルモンとして1種類以上のオーキシン類、及び/又は、炭素源としてショ糖5〜30g/lを添加して用いることができる。オーキシン類も特に限定されるものではないが、インドール酪酸(IBA)やナフタレン酢酸(NAA)等が入手も容易であり使いやすい。本願発明において、培地は液体培地であっても固体培地であっても構わない。固体培地として使用する場合には、上記成分に寒天又はゲランガムを更に加え、固化させて使用する。なお、炭素源として、微生物の炭素源でもあるショ糖等を添加した培地を使用する場合には、無菌環境下で挿し穂を培養する。炭素源としてショ糖等の炭水化物を用いる代わりに、炭酸ガスを培養環境中に濃度300〜1500ppm程度付与して培養することもでき、この場合には、挿し穂を無菌環境下で培養する必要がない。
【0017】
培養土としては、赤土(赤玉土)、川砂、山砂、鹿沼土、バーミキュライト、パーライト、ピートモス、水ごけ等、挿し木に用いられる一般的な培養土を使用することができる。その他の発根用資材として、スミザーオアシス社製「オアシス(登録商標)」、日清紡績(株)製「フロリアライト(登録商標)」等も用いることができる。
【0018】
挿し穂から不定根を形成させるにあたっては、通常、上記培地や培養土に挿し穂を挿しつけて培養する。即ち、挿し穂として枝、茎、芽又は不定芽を用いる場合には、もとの個体や組織から切出されたこれらの挿し穂を、上記固体培地、又は、水、市販の液肥若しくは上記液体培地で湿潤させた培養土に挿しつけ、挿し穂として葉を用いる場合には、もとの個体や組織から葉柄をつけて葉を切出し、この葉柄を同様の培地及び/又は培養土に挿しつけて培養すればよい。なお、培養土は、挿し穂の挿しつけ後に水等で湿潤させても構わない。
【0019】
本願発明においては、このようにして培養している挿し穂の、培地及び/又は培養土と接する部分の少なくとも一部に負電圧を印加する。このとき付加する電圧は400〜12000V、印加時間は5分/日〜24時間/日が好ましい。適切な印加強度及び印加時間は植物の種類及び充実度により異なるが、印加強度・印加時間がこの範囲であれば、挿し穂の細胞に過度の負担を与えず、不定根の形成を促進することができる。このための電圧印加装置としては、上記程度の負電圧を付加できる装置であれば、例えば、(株)環境工学研究所の「エレクトロン発芽生長促進装置」や、三和メディカル(株)の高電位治療器「サンメディオンV12000」等、何であれ使用できる。
【0020】
具体的に、挿し穂の、培地及び/又は培養土と接する部分の少なくとも一部に負電圧を印加するには、例えば、電圧印加装置と出力伝達手段を介して接続された鉄や銅、白金、炭素等の導電体からなる負電極を、挿し穂を培養している培地又は培養土に挿し込んでおき、この負電極から負電圧を印加すればよい。固体培地や液体培地はもちろん、水や市販の液肥や液体培地で湿潤させた培養土も導電性を有するので、こうして培地や培養土に負電圧を印加することにより、培養されている挿し穂にも、その培地及び/又は培養土と接する部分の少なくとも一部に、負電圧が印加されることとなる。つまり、この場合、負電圧は、培地及び/又は培養土を介して、挿し穂の培地及び/又は培養土と接する部分の少なくとも一部に印加される。但し、培地等の導電性は、これらが含有している電解質の量等によって異なるので、挿し穂に適切な負電圧が印加されるよう、挿し穂に対する負電極の位置は適宜調整することが好ましい。
【0021】
なお、上記のようにして挿し穂に負電圧を印加する場合には、過電流の発生を防止するため、負電極を挿し込んだ培地又は培養土を、周囲の環境と絶縁しておくことが好ましい。このためには、培地又は培養土を絶縁体からなるポット、ケース等に入れ、この培地等に負電極を挿し込んで挿し穂の培養を行えばよい。また、屋外の圃場等で挿し穂の発根を行う場合には、絶縁体からなるシート等を圃場に敷き詰め、更に、このシート等で圃場の周囲を囲った中に培養土を入れ、この培養土に負電極を差し込んで挿し穂の培養を行えばよい。
【0022】
本願発明において、挿し穂は、その基部を培地及び/又は培養土に挿しつけて培養することが好ましい。植物は、本来的に頂部と基部とを認識し、不定根は、通常、その基部から形成されるため、このようにして挿し穂を挿しつけることにより、形成された不定根はそのまま、必要な栄養素を含有する培地及び/又は培養土中に伸張することができるからである。
【0023】
また、挿し穂が、その培地及び/又は培養土と接する部分に、切断面又は切込み部を有していれば、その挿し穂からの不定根形成は促進される。これは、挿し穂の切込みや切断により、その部位の細胞が傷つけられたことが生理的刺激となって、その近辺の部位からの不定根形成を促進させるためであると考えられる。このため、人為的に、挿し穂の培地等への挿しつけ部に、カッター等で1以上の小さな傷をつけてもよいが、通常、挿し穂は、もとの個体や組織から枝、芽、葉又は不定芽等を切出すことによって得られ、その基部には切断面を有しているので、普通は、単に挿し穂の基部を培地等に挿しつけるだけで、この効果は得ることができる。このとき、挿し穂を斜めに切出せば、細胞の傷害による刺激が大きくなると共に、その切断面と培地及び/又は培養土との接触面積も大きくなるので、不定根の形成は一層促進される。
【0024】
さらに、培養前の挿し穂に対し、予めオーキシン処理行っておくことで、挿し穂からの不定根形成を、促進することもできる。オーキシン処理は、挿し穂を、濃度5〜100ppmのオーキシン溶液に浸漬したり、タルク1gあたり1〜20mgのオーキシンを混合した粉末を挿し穂の切断面に塗すことによって行えばよい。
【0025】
不定根が形成された挿し穂は、これをある程度の期間、そのまま培養を続けて根を充実させた後、発根苗として育苗容器又は苗畑等に移植して育成することにより、植林等の所定の目的に使用可能な苗とすることができる。この間の用土や、苗を育成する際の温度・光強度等の条件は、その植物に適するように適宜設定すればよい。なお、多芽体や苗条原基等、培養組織由来の不定芽を挿し穂とした場合には、通常、育苗容器等への移植の前に、順化の過程を経る必要がある。
【0026】
【作用】
挿し穂を適当な培地及び/又は培養土で培養すると、培地等に接している部分から、培地等の成分が挿し穂に吸収され、不定根が形成される。このとき、挿し穂のこの部分に負電圧が印加されると、細胞内の分子が励起されることにより、代謝が強化され、培地等からの成分吸収が活発になると共に、同化物の蓄積も進むと考えられる。この結果、細胞が活性化し、細胞分裂も促進されるので、不定根形成までの期間が短縮されると共に、不定根形成までの細胞の活力が保持されて、不定根形成が促進される。特に、難発根性植物は、発根に要する期間が長く、不定根が形成されるまでに挿し穂が枯死してしまうことが多いため、かかる負電圧印加の効果は、難発根性植物において非常に有利に作用する。
【0027】
また、培地や培養土に負電圧を印加すると、これらが含有する水のイオン化と水クラスターの低分子化が起こる。従って、培地及び/又は培養土を介して挿し穂に負電圧を印加した場合には、水はもちろん、水に溶解している培地及び/又は培養土の成分が、挿し穂の細胞膜やその細胞内に存在するオルガネラの膜を浸透しやすくなって、養分や植物ホルモン等が細胞に有効に利用されるようになるので、不定根の形成が一層促進される。
【0028】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0029】
[実施例1]
ユーカリプタス・グロブラス(Eucalyptus globulus、以下、単にE.グロブラスと略記する。)の当年生枝より取得した芽から、特開平8−228621に示す方法を用いて多芽体を誘導した。多芽体の誘導を開始してから約1ヵ月後、得られた多芽体から、3.5〜6cmの長さに伸長してきた不定芽を切取り、これを挿し穂として用いた。なお、不定芽についた比較的大きな葉は、半分程度に切断して蒸散作用を抑制すると共に、挿し穂を密植した場合に隣り合った挿し穂の葉と葉が重なり合わないようにした上で、挿し穂として用いた。
【0030】
こうして得られた挿し穂を、出力伝達手段を介して電圧印加装置と接続された銅線が挿し込まれ、IBA50mg/lを添加した2倍希釈MS培地にて湿潤させた、縦1cm×横1cm×深さ3cmのスミザーオアシス社製「オアシス(登録商標)」に一本づつ挿しつけて、上記銅線より、9000Vの負電圧を一日に4時間印加しつつ、光強度50μmol/m/s、明期12時間、温度24℃で培養を行った。このとき、電圧印加装置としては、三和メディカル(株)の「サンメディオンV12000」を用い、負電極である銅線は、挿し穂から約0.5cm離れた位置に、深さ約1.5cmまでオアシスに挿し込んで、負電圧の印加を行った。電圧は、デジタルシンクロスコープTDS724A(SONY Tektronix製)と高電圧プローブHV−P60(岩通計測(株)製)により測定した。また、オアシスは、縦12cm×横12cm×深さ10cmのプラスチックケースに入れ、このプラスチックケースを絶縁シートの上に置いて過電流の発生を防止するようにした。
【0031】
挿しつけから2、3又は4週間後、各50本の挿し穂について、オアシスをメスで展開して不定根形成状況を観察し、目視にて不定根形成が認められたものを計数して、挿し穂50本に対する割合を算出し、この値を発根率とした。
【0032】
こうして算出された発根率を、負電圧の印加を行わなかった他は、上記と全く同様にして培養を行った挿し穂の発根率と共に、表1に示す。
【0033】
【表1】


【0034】
E.グロブラスは、ユーカリ属の中でも、特に難発根性として知られている。しかし、表1より明らかなように、実施例1において、負電圧を印加しつつ挿し穂の培養を行った場合は発根率が74%まで向上し、また、発根に要する期間も短縮され、培養開始から3週間後には発根率70%を示した。一方、負電圧を印加せずに挿し穂の培養を行った場合は、培養開始から4週間を経た後も、発根率は30%であった。
【0035】
[実施例2]
温室で6ヶ月間生育させた、高さ約25cmのE.グロブラスの苗より頂芽を切り取って側芽を伸長させ、1ヵ月後、長さ約3.5〜6cmに伸長した側芽を切り取って、これについた葉を半分程度に切断し、挿し穂として用いた。
【0036】
こうして得られた挿し穂を、出力伝達手段を介して電圧印加装置と接続された白金線が挿し込まれ、IBA50mg/lを添加した2倍希釈MS培地にて湿潤させた、直径7cm、深さ10cmのポット入りパーライトに一本づつ挿しつけて、上記白金線より、6000Vの負電圧を一日に12時間印加しつつ、光強度500μmol/m/s、明期12時間、温度17〜45℃で培養を行った。このとき、負電極である白金線は、挿し穂から約3cm離れた位置に、深さ約4cmまでパーライトに挿し込んで、負電圧の印加を行った。また、パーライトを入れたポットは、絶縁体からなるパット及びマットの上に置いて過電流の発生を防止するようにした。電圧印加装置及び電圧の測定は実施例1と同様の機器を用いて行った。
【0037】
挿しつけから2、3又は4週間後、各50本の挿し穂について、オアシスをメスで展開して不定根形成状況を観察し、目視にて不定根形成が認められたものを計数して、挿し穂50本に対する割合を算出し、この値を発根率とした。
【0038】
こうして算出された発根率を、負電圧の印加を行わなかった他は、上記と全く同様にして培養を行った挿し穂の発根率と共に、表2に示す。
【0039】
【表2】


【0040】
表2より明らかなように、実施例2において、負電圧を印加しつつ挿し穂の培養を行った場合は、E.グロブラスの発根率が80%まで向上し、また、発根に要する期間も短縮され、培養開始から3週間後には発根率75%を示した。一方、負電圧を印加せずに挿し穂の培養を行った場合は、培養開始から4週間を経た後も、発根率はやはり30%であった。
【0041】
【発明の効果】
本願発明によれば、挿し穂からの不定根形成が促進される。
【0042】
従って、本願発明によれば、挿し穂からの発根率が向上し、また、発根に要する期間も短縮される。そして、かかる効果は、挿し穂からの発根が難しいとされている、難発根性植物において、一層発揮される。
【0043】
即ち、本願発明によれば、従来の挿し木法により、又は、組織培養法により、E.グロブラス等、有用な形質を有する難発根性植物のクロ−ン苗の大量増殖が産業的に可能となる。
【出願人】 【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
【住所又は居所】東京都北区王子1丁目4番1号
【出願日】 平成15年6月27日(2003.6.27)
【代理人】 【識別番号】100074572
【弁理士】
【氏名又は名称】河澄 和夫

【識別番号】100126169
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 淳子

【公開番号】 特開2005−13163(P2005−13163A)
【公開日】 平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願番号】 特願2003−185939(P2003−185939)