トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業




【発明の名称】 温室およびその温度・湿度調節方法
【発明者】 【氏名】橋本 和仁

【氏名】好川 富郎

【氏名】和田 宏美

【要約】 【課題】エアコンディショナーなどの温度調節装置を用いることなく、温室屋内の温度および/または湿度を、効果的にかつ簡便に調節できる方法を提供する。

【解決手段】親水性メッシュシート、例えば、親水性層として酸化チタンなどの光触媒を含有する層を含んでなる親水性メッシュシートを温室屋内に設置し、親水性メッシュシートの表面に水を流下することにより、温室の温度および/または湿度を調節する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性メッシュシートを屋内に設置した温室。
【請求項2】
該親水性メッシュシートが、メッシュ状シートであるシート状基材、該基材の表面上に形成された柔軟性を有するフッ素樹脂の層、該フッ素樹脂の層の表面上に形成されたポリシロキサン樹脂の層、および該ポリシロキサン樹脂の層の表面上に形成された光触媒含有層を含んでなる親水性メッシュシートである請求項1に記載の温室。
【請求項3】
該光触媒含有層は、さらにカーボンまたは金属元素含有物質を含む請求項1または2に記載の温室。
【請求項4】
該光触媒含有層は、さらにガラスビーズを含む請求項1〜3のいずれかに記載の温室。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の温室において、親水性メッシュシートの表面に水を流下することを特徴とする温室の温度および/または湿度の調節方法。
【請求項6】
水が流下されている親水性メッシュシートの表面に送風することをさらに含む請求項5に記載の温室の温度および/または湿度の調節方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、温室およびその温度・湿度調節方法に関する。より詳しくは、本発明は、親水性メッシュシート、特に、親水性層として光触媒含有層を有する親水性メッシュシートを温室屋内に設置し、親水性メッシュシートに水を流下して蒸発させ、気化熱により周囲温度を低下し、また気化した水蒸気により周囲の湿度を調節できる温室の温度および/または湿度の調節方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
花卉、野菜等の多くは、季節に関係なく、外気の温度に影響されずに育成するために、温度管理された温室で栽培される。例えば、バラは、低い温度の環境で栽培すると、花弁の数が増すことが知られており、とりわけ明け方(午前3〜5時)の温度が花の品質に影響することが知られている。
【0003】
温室内の温度を調節するには、エアコンディショナーにより屋内空気を冷却することが考えられるが、エアコンディショナーの設置および運転には多大な費用とエネルギーが必要であり、環境にやさしい設備とはいえない。
温室を構成するガラスまたは透明膜の外側または内側に遮光膜を設置して、外光を遮断することも考えられるが、屋内に到達する光エネルギーを遮断するだけであって、一旦上昇した屋内温度を下げることはできない。また、遮光膜は黒色であるので、設置条件によっては逆にエネルギーを吸収して温度を上昇させることもある。
【0004】
ところで、光触媒(例えば、酸化チタン)は、種々の分野において使用されており、例えば、外壁、外装、建材、テント、タイル等の防汚、抗菌・脱臭用材料、自動車の防汚コーティング、空気清浄機、脱臭フィルターなどに利用されている。また、冷却・断熱シートとして、メッシュ状のシートが、例えばロールブラインド等に使用されている。そのようなメッシュ状シートを屋根やビルの屋上に敷設し、それに水を流下させてさらに断熱・温度調節効果を向上することも行われている。しかし、従来のメッシュ状シートでは、表面に水が十分に保持されず、断熱・冷却効果は限定的である。
【0005】
そこで、メッシュ状シートの表面を高度に親水化して、水の流下速度を抑えれば、断熱・冷却効果を持続させることができ、温室に適用した場合、温室屋内の温度を調節できることが期待される。しかし、そのような親水性メッシュシートを温室の透明外壁の外側に設置したのでは、外光が遮断されてしまい、植物の生育が阻害され、また、屋内温度を適切な範囲に効果的に制御することは困難である。
【0006】
一方、温室では、屋内温度を調節するばかりでなく、屋内の湿度を調節することも、植物の生育にとって重要である。そのため、スプリンクラー等により温室屋内に散水することが行われているが、散水では、湿度が高くなりすぎる場合があり、温室屋内の湿度を、簡便に調節する方法が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、温室屋内の温度および/または湿度を、効果的にかつ簡便に調節できる方法を提供しようとするものであり、かつそのような温室を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記課題は、親水性メッシュシートを屋内に設置した温室、およびそのような温室において、親水性メッシュシートの表面に水を流下することを特徴とする温室の温度および/または湿度の調節方法により解決される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の温室の構造は、屋内に親水性メッシュシートが設置されている以外、通常の温室と同じであり、外壁をガラス板、透明合成樹脂シート等の透明材料で構成した温室である。
【0010】
親水性メッシュシートの設置位置、設置面積等は、温室の構造、栽培される植物の種類、温室の建設場所、温度および/または湿度の制御範囲等の種々の条件を考慮して適宜選択すればよい。例えば、朝日または夕日の直射を避けたい場合、メッシュシートの面を南北方向に合わせ、すなわちメッシュシートの面が東西方向に向くように設置すればよい。
また、送風機を設置し、親水性メッシュシートに向けて送風すれば、水の気化が促進され、冷却効果がます。また、蒸発した水(水蒸気)が温室屋内に拡散され、屋内全体に湿気が行き渡り、温室屋内の湿度を効果的に制御することができる。さらに、水の流下および/または送風をタイマー、温度センサー、湿度センサー等を用いて制御すれば、温室内の環境を、所定時間に、所望温度および/または所望湿度に制御することができる。
【0011】
本発明で用いる親水性メッシュシートの種類は、表面が親水化されている限り、特に限定されない。
とりわけ好ましい親水性メッシュシートは、メッシュ状シートであるシート状基材、その基材の表面上に形成された柔軟性を有するフッ素樹脂の層、そのフッ素樹脂の層の表面上に形成されたポリシロキサン樹脂の層、およびそのポリシロキサン樹脂の層の表面上に形成された光触媒含有層を含んでなる親水性メッシュシート(以下、「光触媒層含有親水性メッシュシート」という。)である。
【0012】
この光触媒層含有親水性メッシュシートは、新規な親水性メッシュシートであるので、その構成を説明する。
光触媒層含有親水性メッシュシートに用いるメッシュシート状基材は、通常有機または無機繊維から形成される。有機繊維は、天然繊維であっても、合成繊維であってもよいが、耐久性の点から、合成繊維が好ましい。合成繊維は、特に限定されないが、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリアクリルニトリル(アクリル)、ポリウレタン等の繊維を挙げることができ、中でも、ポリエステル繊維の紡績糸又はフィラメント糸が特に好ましい。
無機繊維としては、ガラス繊維が好ましく使用できる。
【0013】
繊維の太さは特に限定されないが、無機繊維においては、一般に、太さ約2〜l0ミクロン、特に9ミクロンのGヤーン、6ミクロンのDEヤーンが好ましい。
繊維の織り方、糸目の間隔等は、用途に応じて、光透過性、強度、意匠性等を考慮して、適宜選択すればよい。織り方は、平織、綾織、朱子織、模紗織、カラミ織などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
光触媒層含有親水性メッシュシートを製造するために、まず、メッシュシート状基材の表面に柔軟性を有するフッ素樹脂(以下「軟質フッ素樹脂」という。)の層を形成する。軟質フッ素樹脂は、好ましくはフッ化ビニリデン(VDF)の共重合体であり、かつ23℃における引張弾性率が3,000kgf/cm以下の樹脂をいう。軟質フッ素樹脂は、例えばセフラルソフト(商標)G150−200としてセントラル硝子株式会社から販売されている。
【0015】
上記のような共重合体としては、VDFとヘキサフルオロプロピレン(HFP)、VDFとクロロトリフルオロエチレン(CTFE)等の二元共重合体、VDFとHFPとテトラフルオロエチレン(TFE)との三元共重合体等、またはこれらの単量体から得られる特定のグラフト共重合体が挙げられる。
【0016】
このグラフト共重合体は、少なくとも一種の含フッ素単量体を含む一種以上の単量体、例えば、VDFとCTFEの混合物と、分子内に二重結合とペルオキシ結合を有する単量体とから、ガラス転移温度が室温以下である含フッ素共重合体を製造することを第一段階とし、第二段階において、第一段階で得られた共重合体に水性乳濁液または分散溶媒中で、融点が130℃以上である結晶性重合体を与える少なくとも一種の含フッ素単量体、例えば、VDFを含む一種以上の単量体を、グラフト共重合させたフッ素樹脂である。
ここで使用する分子内に二重結合とペルオキシ結合を同時に有する単量体としては、t−ブチルペルオキシメタクリレ−ト、t−ブチルペルオキシクロトネート等の不飽和ペルオキシエステル類、およびt−ブチルペルオキシアリルカーボネート、p−メンタンペルオキシアリルカーボネート等の不飽和ペルオキシカーボネート類が例示できる。
【0017】
また本発明で使用する軟質フッ素樹脂は、それと相溶性の良好な他の樹脂とのブレンド物(以下、「ブレンド樹脂」という。)として用いてもよい。
相溶性の良好な他の樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やアクリル樹脂等を挙げることができるが、これに限られない。アクリル樹脂としては、アルキル基の炭素数が8以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等の一種以上の単量体構造単位からなるものが使用される。この際、メッシュシートの柔軟性、耐候性等を維持するためには、これらの樹脂の混合割合は、軟質フッ素樹脂100重量部当たり、0〜100重量部、好ましくは0〜50重量部の範囲とするのがよい。
【0018】
軟質フッ素樹脂層の厚さは特に制限されない。
軟質フッ素樹脂層は、通常、軟質フッ素樹脂を含む溶液にメッシュシート状基材を含浸させ、乾燥して形成する。軟質樹脂層の厚さは、含浸回数を適宜増すことにより、適当な値にすることができる。
【0019】
本発明で用いる光触媒層含有親水性メッシュシートは、上記のような軟質フッ素樹脂の層の上にポリシロキサン樹脂の層を有し、さらに、最外層として光触媒を含む層を有する。
ポリシロキサン樹脂は、既知のものが使用できる。ポリシロキサン樹脂の層は、例えば、ポリシロキサン樹脂の溶液に、軟質フッ素樹脂層を形成したメッシュシート状基材を浸漬し、溶液から基材を取り出した後、加熱して溶媒を除去することにより形成することができる。
このポリシロキサン樹脂層の厚さも特に制限されない。
【0020】
光触媒としては、アナターゼ酸化チタンが好ましく使用される。
光触媒の使用量は、最外層の重合体材料100質量部あたり、通常0.5〜20質量部、好ましくは1〜10質量部である。
最外層は、例えば、酸化チタンを分散させた高分子材料の溶液に、軟質フッ素樹脂層およびポリシロキサン樹脂層を形成したメッシュシート状基材を浸漬し、溶液から基材を取り出した後、加熱して溶媒を除去することにより形成することができる。
この光触媒含有層に使用する高分子材料としては、ポリシロキサン樹脂が好ましい。
【0021】
また、光触媒含有層は、カーボンまたは金属元素含有物質(例えば、鉛、錫、鉄、亜鉛等の酸化物等)を含んでいてよい。これらを用いる場合、それらの使用量は、最外層の重合体100質量部あたり、通常5〜20質量部である。
これらの物質は、太陽光を吸収することができるので、温度上昇抑制・温度低下効果をより高めることができる。
さらに、光触媒含有層は、ガラスビーズを含むこともできる。ガラスビーズを使用する場合、その使用量は、最外層の重合体100質量部あたり、通常1〜15質量部である。
ガラスビーズを混入することにより、水の流下速度がさらに遅くなり、温度上昇抑制・温度低下効果が一層大きくなる。
【0022】
本発明で用いる光触媒層含有親水性メッシュシートは、最外層に光触媒が含まれているため、その表面での水の接触角が非常に小さく、通常10度以下、好ましくは5度以下、特に3度以下である。
本発明で用いる光触媒層含有親水性メッシュシートの親水性は、酸化チタンの光触媒活性により発現し、また軟質フッ素樹脂層を設けることにより、大きな効果が得られる。
本発明で用いる光触媒層含有親水性メッシュシートは、高い親水性を有するので、垂直にしても水の流下速度を低く保つことができるから、温室内に設置した場合、少ない水量で冷却効果を長時間持続させることができ、また、屋内に適度の湿気を供給することができる。
【0023】
【実施例】
参考例(親水性メッシュシートの製造)
ポリエステルフィラメント(T250D×T250D;14×17組)の模紗織り織物(メッシュシート)に、セフラルソフトG150−200(セントラル硝子株式会社製軟質フッ素樹脂)20質量%溶液(溶媒:DMF)100質量部、ルチル型酸化チタン(大日精化工業株式会社製)5重量部およびポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製コロネートHX)2重量部の混合液を含浸させ、150℃で3分間熱処理してフッ素樹脂塗布メッシュシートを得た。このメッシュシートに、ポリシロキサン樹脂溶液(JSR製PIP−10)を浸漬加工し、120℃で3分間熱処理し、さらに、アナタ−ゼ型酸化チタン(光触媒)を含むポリシロキサン樹脂溶液(JSR製PIC−200:ポリシロキサン樹脂溶液に酸化チタンを分散した溶液)を浸漬加工し、l20℃で3分間熱処理して、光触媒を含有する最外層を持つメッシュシートを作成した。
【0024】
実施例1
製造例で得たメッシュシート(長さ3.5m、幅1.8m)5枚を、ガラス製温室(縦35m、横15m、高さ6m)の縦方向中心線に合わせて、ほぼ垂直に設置した。
水をメッシュシート表面に流下させた。流下終了時点から約10秒〜数分後に周囲の温度が約5℃低下した。なお、水の流下前の屋内温度は35℃であった。
【出願人】 【識別番号】000200666
【氏名又は名称】泉株式会社
【識別番号】000157474
【氏名又は名称】丸山工業株式会社
【出願日】 平成15年6月27日(2003.6.27)
【代理人】 【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆

【識別番号】100083356
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 康夫

【公開番号】 特開2005−13132(P2005−13132A)
【公開日】 平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願番号】 特願2003−184260(P2003−184260)