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【発明の名称】 骨炭を含有する保水性組成物、これを利用した植物生育方法
【発明者】 【氏名】高橋 潤一

【氏名】梅津 一孝

【氏名】濱本 修

【氏名】伊達 淑子

【要約】 【課題】窒素、リン、カリウムのバランスが良く、好ましくは植物に吸収されやすい形態でリンを含有する植生基材を提供する。

【解決手段】保水性組成物は、骨炭と、吸水性ポリマーと、を含有し、さらに必要に応じ、有機性廃棄物を含有する。保水性組成物中の吸水性ポリマーの配合割合(ドライベース)は、全量に対し、20〜70重量%、好ましくは30〜60重量%であり、残部は、骨炭(および有機性廃棄物)となる。骨炭としては、例えば家畜屠体由来の有機物を、炭化過程および/または炭化後の冷却過程で酸素濃度を制御しながら製造した骨炭を用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨炭と、吸水性ポリマーと、を含有する保水性組成物。
【請求項2】
骨炭と、吸水性ポリマーと、有機性廃棄物と、を含有する保水性組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記骨炭が、家畜屠体由来の有機物を、炭化過程および/または炭化後の冷却過程で酸素濃度を制御しながら製造した骨炭であることを特徴とする、保水性組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の保水性組成物に、植物種子を混入し、植物を生育させることを特徴とする、植物生育方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物栽培や緑化などに利用可能な保水性組成物に関し、詳細には、骨炭と、吸水性ポリマーを含有する保水性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
植物栽培や緑化などに使用する植生資材として、吸水性ポリマーなどの保水材と、肥料成分等を配合した植生資材が多数提案されている(例えば、特許文献1)。これらの植生資材中には、多くの場合、肥料成分として堆肥などの有機物が使用されている。しかし、堆肥を用いる場合、窒素(N)過多の傾向が強く、逆に、リン(P)については含有量が乏しいため、窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)の各成分のバランスがとれない。カリウムについては、有機物として牛糞尿やそのメタン発酵残渣などを用いる場合には、含有量を増やすことが可能であるが、リンの不足は改善されない。
【0003】
このため、従来の植生資材を肥料として利用する場合、十分でない成分を補うために化学肥料を添加して窒素、リン、カリウムのバランスを調整する必要があった。
【0004】
化学肥料によりリンを補う場合の問題として、化学肥料に含まれるリン酸はカルシウムと結合しやすく、植物に吸収される前にリン酸カルシウムとして土壌に蓄積されてしまう点が挙げられる。また、リン不足を補おうと化学肥料を追肥すると、窒素が過剰になって、土中で酸素と反応し、硝酸や亜硝酸を生成し、地下水汚染の原因となる。
【0005】
【特許文献1】
特開昭59−106625号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、保水材に肥料成分を配合した植生資材においては、植物栄養成分のバランスを確保することが困難であった。また、特にリンについては、植物が利用しやすい形態で配合することが望ましい。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、窒素、リン、カリウムのバランスが良く、好ましくは植物に吸収されやすい形態でリンを含有する植生基材を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、骨炭と、吸水性ポリマーと、を含有する保水性組成物である。骨炭は、家畜屠体由来の骨などを含む有機物を炭化させた炭化物であり、堆肥などの有機物肥料に比べ、リンやカリウムの含有量が多く、植物栄養成分のバランスに優れ、窒素過多やリン欠乏を起し難い。従って、肥料成分として骨炭を配合した保水性組成物を使用することにより、吸水性ポリマーに保持された水分と骨炭の植物栄養成分を利用して植物の生長を促すことができる。
【0009】
また、本発明の第2の態様は、骨炭と、吸水性ポリマーと、有機性廃棄物と、を含有する保水性組成物である。この第2の態様に係る保水性組成物の発明によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、有機性廃棄物を配合したので、骨炭中に含まれるリンが植物に利用されやすい状態となる。これは、骨炭中に存在するリン酸カルシウムに、有機性廃棄物中に含まれる酢酸、プロピオン酸などの有機酸が作用することにより、リンの溶出が容易になるためである。
【0010】
また、本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記骨炭が、家畜屠体由来の有機物を、炭化過程および/または炭化後の冷却過程で酸素濃度を制御しながら製造した骨炭であることを特徴とする、保水性組成物である。炭化過程および/または炭化後の冷却過程で酸素濃度を制御しながら製造した骨炭は、酸素濃度の制御によって、通常の方法(嫌気的条件での炭化)で製造された骨炭に比べてリンの含有量が多く、しかも、骨炭中のリン酸カルシウムの化学量論的な構成が変化しているため、リンとして溶出されやすい状態になっている。また、骨炭の多孔質化が進み表面積が大きくなっている結果、骨炭表面への吸着性によって、他の肥料成分である窒素やカリウムをイオンあるいは化合物の形で比較的強力に吸着させることができる。そのため、骨炭表面のリンと同様にカリウムや窒素なども漸次溶出させることが可能であり、長期にわたり継続的な肥料効果を発揮することが可能になる。従って、本態様の保水性組成物は、第1または第2の態様の作用効果に加え、さらに肥料効果や土壌改良効果が高く、植物の生育に適したものである。
【0011】
また、本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか1つの態様の保水性組成物に、植物種子を混入し、植物を生育させることを特徴とする、植物生育方法である。この第4の態様によれば、前記第1から第3の態様の効果を得ながら、植物を生育させることが可能となる。
【0012】
すなわち、保水性組成物によって水分の蒸散が抑制されるため、そこに混入された植物種子は骨炭中にバランス良く含まれる窒素、リン、カリウムを栄養源として発芽、生長することが可能となる。従って、この植物生育方法を、例えば、乾燥地や栄養分の乏しいやせた土地などにおける植物の生育に適用することによって、作物栽培や緑化を図ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の保水性組成物は、骨炭と、吸水性ポリマーと、を含有し、さらに必要に応じ、有機性廃棄物を含有するものである。
【0014】
<骨炭>
骨炭は、家畜屠体由来の有機物を炭化して得られるもものである。家畜屠体由来の有機物としては、家畜屠体および/またはその加工品が挙げられ、より具体的には牛、羊、山羊、豚、ニワトリ等の家畜の屠体、そこから分離された骨、肉、脂肪、内蔵、血液、脳、眼球、皮、蹄、角などのほか、例えば肉骨粉、肉粉、骨粉、血粉などに代表される家畜屠体の破砕物や、血液などを乾燥した乾燥物も含まれる。骨炭は、上記家畜屠体由来の有機物を常法に従い炭化することにより製造できる。
【0015】
骨炭としては、市販の骨炭を利用することが可能である。また、家畜屠体由来の有機物を、炭化過程および/または炭化後の冷却過程で酸素濃度を制御しながら製造した骨炭を好適に用いることができる。酸素濃度を適度に制御しながら製造した骨炭は、通常の方法(嫌気的条件での炭化)で製造された骨炭に比べてリンの含有量が多く、しかも、骨炭中のリン酸カルシウムの化学量論的な構成が変化しているため、リンとして溶出されやすい状態になっている。また、骨炭の多孔質化が進み、表面積が大きくなっている結果、骨炭表面への吸着性によって、他の肥料成分である窒素やカリウムをイオンあるいは化合物の形で比較的強力に吸着させることができる。そのため、骨炭表面のリンと同様にカリウムや窒素なども漸次溶出させることが可能であり、長期にわたり継続的な肥料効果を発揮させることが可能になる。
【0016】
ここで、骨炭の製造方法の好ましい例を挙げ、その概要を示す。原料となる畜産廃棄物については、その状態に応じて前処理を行う。例えば骨などの大型の有機物や、肉骨粉などの小型の有機物を、例えばスクリューコンベアなどの破砕手段により適切な大きさに破砕した後、炭化炉に投入する。家畜屠体の中でもそのままでは炭化処理しにくい水分含量の高い部位(例えば内臓など)は、炭化に先立ち、必要に応じて破砕処理を行ってスラリー化した後、メタン発酵処理を施すことが好ましい。メタン発酵物は、固形残渣と液分に分別し、炭化炉に投入する。
【0017】
炭化炉の形式としては、例えばロータリーキルン式、スクリューコンベア式、重力落下式、バッチ固定床式などが挙げられる。比較的低温(450〜500℃)で乾燥・炭化を行う場合は、いずれの方式のものでも使用できるが、800℃以上の高温で乾燥・炭化を行う場合、ロータリーキルン方式、スクリューコンベア方式など機械的要素の大きい乾燥・炭化装置では耐熱性の材質を選定することが好ましい。炭化炉の炭化室内には、酸素濃度を検知する手段として酸素センサーや、温度を検知する手段として熱電対等を配備しておく。
【0018】
炭化炉では、炭化室内を例えば450〜900℃まで加熱し、投入した有機物を所定時間加熱して炭化する。炭化は、通常は空気を遮断した状態で行うが、骨炭中のリン含量を高めるため、所定の酸素供給条件を含むように炭化を実施することが好ましい。これにより、還元雰囲気で生じるリンの放散を抑え、骨炭をはじめとする炭化物中に残存させることが可能になる。また、炭化過程で所定の酸素条件を作り出すことによって、骨炭の比表面積を増加させることができる。
【0019】
炭化処理では、酸素センサーによって検知された酸素濃度が設定範囲の上限に近づいた場合あるいは超えた場合には、空気混入比率を低下させ、検知された酸素濃度が設定範囲の下限に近づいた場合あるいは下回った場合には、空気混入比率を増加させるようにする。このようにして、炭化過程で炭化室内の酸化還元状態を所定の時間、所望の状態に制御する。炭化条件の一例として、加熱は、例えば450〜900℃程度(好ましくは500〜850℃)まで昇温した後、この温度に30分〜10時間程度保持することにより行うことができる。
【0020】
前記温度までの昇温過程あるいは昇温後のある時間内において、炭化室内が例えば1〜20体積%程度以下(好ましくは、1〜10体積%程度以下)の酸素濃度となるように制御を行う。酸素を供給する時間は、例えば1分〜1時間程度(好ましくは5分〜30分間程度)とすることができる。酸素供給は、連続的または非連続的(間欠的)に行うことができる。炭化物は、空気中では500℃で着火するため、炭化室内に過剰の空気を入れることは避けるべきである。酸素供給が過剰になると、炭化室内が酸化雰囲気にかたより、炭化物が灰化して歩留りが低下する場合がある。一方、還元状態だけでは、リン等の有用成分が揮散してしまい炭化物中の残存率が低下するとともに、表面積の増大が図れない場合がある。このため、酸素濃度の制御においては、酸素(空気)の導入量や導入タイミング、導入時間等を加熱温度との関係で選定することが好ましい。また、自己燃焼させて表面賦活を図る目的で空気導入を行う場合でも空気量には十分注意して余計な燃焼を避けることが好ましい。ただし、例えばバッチ式の炭化炉において、炭化物が生成した後の冷却過程(非加熱時で、温度が例えば400℃など)で多量の空気を注入することは好ましい表面賦活方法である。
【0021】
以上のことから、酸素濃度を制御する為に空気を混合する割合は、100%空気導入から酸素濃度数十ppmまでの広い範囲から、温度、被炭化物(有機物)、目的(リンの固定、賦活等)、時間などに応じて選択することができる。
【0022】
また、リンは、比較的低い加熱温度(500℃前後)では水素化の速度が大きくならず残留する傾向にあるため、低めの温度で加熱して炭化を進め、最終段階で酸素供給を行って所定の酸化条件に制御することも好ましい。加熱および酸素濃度制御の好ましい例を挙げると、原料となる有機物が家畜屠体由来の肉骨粉等の有機物である場合は、炭化室内を無酸素雰囲気にして500〜800℃以上になるまで昇温し、同温度範囲に1〜8時間程度保持した後、この温度域のまま一時的(例えば5〜30分間程度)に空気を導入して数体積%(例えば5〜10体積%)の酸素濃度とする。以上のようにして、本発明の保水性組成物に配合する上で好ましい性質を持つ骨炭を製造することができる。
【0023】
<吸水性ポリマー>
吸水性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール(PVA)などの吸水能を持つポリマーであれば特に制限なく使用できる。吸水性ポリマーの中でも、土壌に適用して一定期間後に分解する生分解性を持つものが好ましく、例えば、特開2002−167464号公報に記載されたN−ビニルアミド系ポリマーなどを好適に使用できる。
【0024】
<有機性廃棄物>
本発明の保水性組成物には、有機性廃棄物を配合することができる。ここで「有機性廃棄物」とは、例えば、家畜の糞尿や緑濃廃棄物、排水処理汚泥などの廃棄物や、これらをメタン発酵処理または堆肥化した堆肥などを含むものである。ここで緑濃廃棄物としては、家庭の生ごみのほか、産業廃棄物生ごみとして、農水産業廃棄物、食品加工廃棄物等が含まれる。
【0025】
有機性廃棄物を配合することにより、骨炭中に含まれるリンが植物に利用されやすい状態となる。これは、骨炭中に存在するリン酸カルシウムに、有機性廃棄物中に含まれる酢酸、プロピオン酸などの有機酸が作用することにより、リンの溶出が容易になるためである。この目的において、有機性廃棄物としては、メタン発酵残渣(固液分離した固形分)や堆肥などの発酵性有機物が好ましい。また、発酵性有機物を用いる場合は、植物栄養成分以外に、嫌気性および/または好気性の微生物を含有しているため、土壌に適用する段階での初発菌数が高く、早期に周囲の土壌を活性化させる作用が期待できるほか、長期的には、植物の生育が進んだ段階で、N−ビニルアミド系ポリマーなどの生分解性の吸水性ポリマーの微生物による分解を促進する効果も期待できる。
【0026】
また、有機性廃棄物とともに、あるいは有機性廃棄物に代えて、リンの溶出を促すために少量の有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、クエン酸など)を配合することも可能である。
【0027】
<配合>
保水性組成物中の吸水性ポリマーの配合割合(ドライベース)は、全量に対し、20〜70重量%、好ましくは30〜60重量%とすることができる。この場合、残部は、骨炭(および有機性廃棄物)となるが、さらに適宜の任意成分を配合することも可能である。配合可能な任意成分としては、例えば、前記した有機酸類のほか、例えば既知の植物生長調節物質、殺菌剤、殺虫剤、pH調整剤、バインダー成分などを挙げることができる。
【0028】
有機性廃棄物を配合する場合、骨炭と有機性廃棄物の重量比(ドライベース)は、10:1〜1:100の範囲が好ましく、この範囲では、骨炭と有機性廃棄物との混合物からのクエン酸水溶液によるリン溶出量は約50%以上改善され、さらに、同重量比を10:1〜1:10とした場合は、約70%程度改善される。
【0029】
<保水性組成物の製造方法>
本発明の保水性組成物は、上記必須成分や任意成分を混合することにより製造できる。この際、必要に応じて粉砕や、バインダー添加を行い、例えば粒状、ペレット状、団子状等の形状に造粒したり、シート状、ブロック状などに成形することによって、使用目的に応じた植生資材として調製することができる。
【0030】
保水性組成物は、土壌へ適用するまでは乾燥状態で保管することが好ましいが、有機性廃棄物等に由来する少量の水分を含有してもよい。また、乾燥状態の保水性組成物中には、予め植物種子を混入しておくことが可能である。植物の種類は特に制限なく、目的に応じて選択できる。
【0031】
<植物生育方法>
本発明の植物生育方法は、植物種子を混入した保水性組成物からなる植生資材を、土壌に埋設したり、土壌表面に敷設したりすることにより実施される。降雨や給水により、吸水性ポリマーに水分が含浸すると、一定期間水分を保持するため、乾燥地でも長期間に渡り持続的に植物に水分を供給することが可能となる。また、栄養分の乏しいやせた土壌でも、骨炭や有機性廃棄物から栄養分が供給されるため、充分に植生を確立できる。なお、保水性組成物を使用した植物生育方法の他の実施形態として、水耕栽培も可能である。
【0032】
【実施例】
次に、実施例、試験例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって制約されるものではない。
【0033】
比較例1
ポリビニルアルコール(ドライベース)30重量%、濃縮メタン発酵残渣(ドライベース)70重量%の配合で保水性組成物(比較品1)を調製した。
【0034】
実施例1
ポリビニルアルコール(ドライベース)30重量%、濃縮メタン発酵残渣(ドライベース)50重量%、市販骨炭20重量%の配合で保水性組成物(本発明品1)を調製した。
【0035】
比較例2
ポリビニルアルコール(ドライベース)30重量%、濃縮メタン発酵残渣(ドライベース)68重量%、リン酸ソーダ含水塩2重量%の配合で保水性組成物(比較品2)を調製した。
【0036】
実施例2
ポリビニルアルコール(ドライベース)20重量%、濃縮メタン発酵残渣(ドライベース)60重量%、市販骨炭20重量%の配合で保水性組成物(本発明品2)を調製した。
【0037】
試験例
実施例1、2および比較例1、2で調製した保水性組成物に牧草類の種子を混入し、土壌に埋設して発芽試験を実施した。その結果を表1に示した。
【0038】
【表1】


【0039】
表1から、少なくとも吸水性ポリマーと骨炭とを含有する本発明の保水性組成物は、骨炭を含有しない比較品1、骨炭の代わりに化成肥料のリン酸ソーダ塩を含有する比較品2に比べて、植物の生育が良好で、肥料焼けなども観られなかった。
【0040】
この試験では、リンが、リン酸カルシウムとして安定化している市販の骨炭を使用した。この骨炭は、炭素含量10%以下、リン含量10重量%以下、比表面積100m/g未満(実質50〜20m/g程度)であり、クエン酸水溶液による溶出試験におけるリン溶出量は小さく、後述の参考実施例に示す酸素制御によって得られる、炭素含量10%以上、リン15重量%以下、比表面積100m/g以上の骨炭のリンの溶出量と比べると20〜30%以下であることが確認されている。しかし、有機性廃棄物としての濃縮メタン発酵残渣を組み合わせて配合することによって、市販骨炭でもリンの溶出が増加し、表1に示すように植物の生育に適したものとなることが示された。
【0041】
参考実施例
畜産廃棄物として牛の肉骨粉を使用し炭化試験を行った。肉骨粉の主な組成は、表2に示すとおりである。肉骨粉には、肉、骨、皮、毛などが混在しているので、これらが目視で均一に混ざる程度に採取、破砕混合し試験に供した。
【0042】
【表2】


【0043】
上記試料について簡易試験装置による炭化実験を行った。この簡易試験装置は、内径20mmの石英管を管状炉で覆い、石英管内に試料を収容できるように構成されている。また、石英管内には熱電対が配備され、これにより内部の温度を検知できる。石英管内には、気体供給器により純窒素と空気を切り換えて導入できるようにした。
【0044】
酸素濃度を計測するため、管状炉に覆われた石英管内にはジルコニア固体電解質型酸素濃度計を配備した。また、炭化処理中に発生する熱分解生成物を含むガスを洗浄するため、ガス流れ方向の下流側にはキシレンによるトラップ装置を設けた。
【0045】
石英管内に約140mmにわたって試料(肉骨粉)を約20〜35g詰め、管状炉により加熱し炭化させた。炭化条件は表3に示すとおりであり、500〜800℃の炭化処理は窒素気流中で行い、酸化雰囲気にする場合は空気を混入した。空気の混入量は、管状炉内に配備したジルコニア固体電解質型酸素濃度計の出力に基づき調節した。
【0046】
【表3】


【0047】
以上のようにして得られた炭化物に対し、炭化物の活性炭としての吸着特性および土壌改良材としての肥料成分の含有量を把握するため、成分分析を行うとともに、走査電子顕微鏡−電子プローブマイクロアナライザー(SEM−EPMA)によって表面状態および元素分布の確認を行った。
【0048】
また、炭化物をn−ヘキサンで抽出し、そこに含まれる有機物を、GC−MS(ガスクロマトグラフ−質量分析装置;アジレントテクノロジー社6890シリーズGCおよび5973MSD)によって検出した。
【0049】
炭化処理中、熱分解生成物を含む管状炉出口ガスは、トラップ装置によるキシレン洗浄を行った。分解実験後にキシレンの一部を採取し、熱濃硫酸、硝酸によって処理し、濾過後、モリブデン酸アンモニウムを添加してリンの検出を試みた。
【0050】
<結果>
(1)酸化還元条件の検討:
骨炭の成分分析結果を表4に示す。空気を混入した条件1は、同じ温度で空気を混入せずに炭化を行った条件2に比べ、リンの含有量が多いことが判明した。このことから、条件1で製造した骨炭は十分な施肥効果を持つことが示された。
【0051】
【表4】


【0052】
なお、加熱温度を500℃に設定した条件3は最もリンの含有量が多い結果となった。このことより、500℃前後から800℃前後までの温度範囲で炭化することで、リンを豊富に残留させ得ることが明らかとなった。
【0053】
また、酸素を導入して炭化させた条件1は、条件2に比べ、BET比表面積およびヨウ素吸着量が有意に大きく、活性炭に非常に近い吸着性能を持つことが示された。
【0054】
さらに、各条件で製造した骨炭を水蒸気賦活処理した結果を表5に示す。この表5から、酸素導入を行った条件1の骨炭は、水蒸気賦活によって、BET比表面積およびヨウ素吸着量が顕著に増加することが示された。
【0055】
【表5】


【0056】
また、キシレントラップ装置のキシレンを採取してモリブデン酸アンモニウム法によりリンの分析を行った結果、呈色の強さは条件2、条件1、条件3の順であり、条件2のときに最も多くのリンが揮散したことが確認された。
【0057】
なお、炭化物のn−ヘキサン抽出物をGC−MSで計測した結果、残存有機物は検出されなかった。
【0058】
参考実施例2
牛の肉骨粉から骨炭を製造した。すなわち、炭化炉に肉骨粉を投入し、800℃、1時間窒素気流中で加熱し、炭化させた。空気は加熱後、放冷の段階で炭化炉中のガスの約1体積%となるように1時間程度導入した。空気の量は、酸素センサー(ジルコニア固体電解質型酸素濃度計)により測定し、制御した。得られた骨炭については、常法に従い水蒸気賦活を施した。原料となった肉骨粉の成分を表6に、および得られた骨炭(水蒸気賦活後)の成分を表7に示す。
【0059】
【表6】


【0060】
【表7】


【0061】
以上、本発明を種々の実施形態に関して述べたが、本発明は上記実施形態に制約されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、他の実施形態についても適用可能である。
【0062】
【発明の効果】
本発明の保水性組成物は、肥料成分として骨炭を含有するので、リンやカリウムの含有量が多く、植物栄養成分のバランスに優れ、窒素過多やリン欠乏を起し難い。従って、この保水性組成物を使用することにより、吸水性ポリマーに保持された水分と骨炭の植物栄養成分を利用して植物の生長を促すことができる。また、この保水性組成物に、さらに有機性廃棄物を配合することにより、骨炭中に含まれるリンが植物に利用されやすい状態となる。
【0063】
また、本発明の植物生育方法は、保水性組成物によって水分の蒸散が抑制されるため、そこに混入された植物種子は、骨炭中にバランス良く含まれる窒素、リン、カリウムを栄養源として発芽、生長することが可能となる。従って、例えば乾燥地や栄養分の乏しいやせた土地などにおける作物栽培や緑化を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】594092371
【氏名又は名称】高橋 潤一
【識別番号】502240168
【氏名又は名称】梅津 一孝
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】三井造船株式会社
【出願日】 平成15年6月27日(2003.6.27)
【代理人】 【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹

【公開番号】 特開2005−13126(P2005−13126A)
【公開日】 平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願番号】 特願2003−183792(P2003−183792)