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【発明の名称】 植物栽培方法及び育苗装置
【発明者】 【氏名】伏原 肇

【要約】 【課題】育苗後に本圃への植付け作業が必要なく、栽培槽を軽量化でき、栽培槽内の根の発育がよく、かつ育苗後の灌水管理が容易で、根菜類の栽培にも適用することが可能な植物栽培技術を提供する。

【解決手段】透根性を有するシートが袋状に形成された栽培用袋2の内底面に吸水材3を敷くとともに、栽培用袋2の内部に培土4を充填して構成された栽培槽1において植物6を育苗し、植物6が所望の大きさまで成長した段階で、栽培槽1を本圃の地面上に載置して、植物6の根を地面内部に伸長させて植物6を栽培する。こおれにより本圃への植付け作業が必要なく、農作業の省力化が図られる。また、栽培槽1の保水容量が大きいので、培土4を減量し、栽培槽1を軽量化できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透根性を有するシートが袋状に形成された栽培用袋の内底面に吸水材を敷くとともに前記栽培用袋の内部に培土を充填して構成された栽培槽において植物を育苗し、
前記植物が所望の大きさまで成長した段階で、前記栽培槽を本圃の地面上に載置して、植物の根を地面内部に伸長させて前記植物を栽培すること
を特徴とする植物栽培方法。
【請求項2】
前記植物を育苗する際には、
緩傾斜がつけられた平板状の容器底面の表面に保水性シートを敷き、前記保水性シートの表面に透水性の遮根シートを敷いて構成された水耕栽培ベッドの、前記遮根シート上に前記栽培槽を載置し、
前記容器底面に養液を流下させることにより、前記保水性シートに養液を浸透させるとともに前記栽培槽に養液を浸透させることで、灌水を行うこと
を特徴とする請求項1記載の植物栽培方法。
【請求項3】
緩傾斜がつけられた平板状の容器底面の表面に保水性シートを敷き、前記保水性シートの表面に透水性の遮根シートを敷いて構成された水耕栽培ベッドと、
前記水耕栽培ベッドの傾斜上方から前記保水性シートに水又は養液を供給する給液機構と、
前記水耕栽培ベッドの傾斜下方から余剰水又は余剰養液を排液する廃液機構と、
を備えていることを特徴とする育苗装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、野菜や花卉類等の植物を栽培するための植物栽培技術に関し、特に、栽培作業を省力化することが可能な植物栽培技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
野菜や花卉類等の植物栽培においては、発芽後の幼植物を育苗した後に本圃に定植して栽培する方法が採られる。育苗は、(1)幼植物を苗床で保護することにより、植付けから収穫までの日数を短縮でき、(2)育苗期間だけ前作の収穫期間を延長させる等、作付け回数を増加させることができる、(3)育苗により軟弱な幼苗期を気象災害や病害虫などから守ることができる、等の利点があるため、植物栽培において広く行われる。
【0003】
しかしながら、育苗を行った後に本圃に定植する栽培方法では、苗の定植作業に労力がかかる。そこで、植物の苗の植え替えを行うことなく、育苗から収穫までを行うことを可能とする栽培技術として、近年、バッグカルチャー方式(非特許文献1参照)等のバッグ式栽培方法が開発されている(例えば、特許文献1〜8参照)。
【0004】
バッグ式栽培方法は、袋状のバッグに培養土を充填してなるバッグ式の栽培槽に野菜や花卉類等の植物の苗を植え、点滴灌水等により植物を栽培する方法である。ここでは、その一例として、特許文献1,2に記載の従来のバッグ式栽培方法について簡単に説明する。
【0005】
図8は従来のバッグ式栽培槽の要部断面図である。
バッグ式栽培槽100は、可撓性を有するプラスチックシートからなるプラスチック袋101の内部に、培土102が充填された構成を有する。プラスチック袋101は、空気や水を通さないような素材が使用されている。栽培槽100において栽培される植物103は、プラスチック袋101の上部に形成された開口部101aを通して、培土102に植栽される。培土102は、植物103の根104に充分な空気を供給するために、捲縮紡績繊維が混合されている。また、プラスチック袋101の下側部には、水抜き用の排水穴101bが形成されている。
【0006】
植物103への灌水は、開口部101aを通して培土102に差し込まれた点滴灌水チューブ105により行われる。点滴灌水チューブ105より送水された水は、培土102に浸透し、根104に供給される。
【0007】
一方、過剰な灌水は、排水穴101bより、プラスチック袋101の外部に排水される。これにより、栽培槽100内の培土102中の酸素が枯渇して植物103が根腐れを起こすことが防止される。
【0008】
上記のようなバッグ式栽培方法では、バッグ式の栽培槽を移動させるだけで、育苗床と本圃の間で植物苗の移動が可能である。従って、苗の植え替えを伴わないために、定植作業が不要となり、省力化が図られるという利点がある。また、バッグ自体の価格が低廉であり、小規模農家においても導入が容易である。
【0009】
【特許文献1】
特開平2−215322号公報
【特許文献2】
米国特許第4918861号公報
【特許文献3】
特開2001−211755号公報
【特許文献4】
米国特許第5193306号公報
【特許文献5】
米国特許第5379547号公報
【特許文献6】
特開平8−322378号公報
【特許文献7】
特開昭59−25622号公報
【特許文献8】
特開2002−306000号公報
【非特許文献1】
社団法人日本施設園芸協会編,「最新 養液栽培の手引き」,株式会社誠文堂新光社,1996年6月15日,見開き4頁
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のバッグ式栽培方法では、バッグという限られた容量の培土で育苗から収穫に至るまで植物の栽培を行う。従って、培土の保水容量や保肥容量が制限される。従って、少量培土で植物の栽培を行うためには、養液の点滴灌水等による細かい灌水管理が必要となる。従って、灌水管理における管理労力が大きくなり、管理コストや設備費が高くなる。一方、保水容量や保肥容量を大きくするために栽培槽を大きくし、培土量を増やした場合、栽培槽が重くなり、運搬を容易に行うことができなくなる。
【0011】
また、栽培する植物の根圏容積が限られることから、植物が大きく成長すると、植物の根にルーピング(根巻き)が生じる場合がある。根巻きが生じた場合、根の発育が悪くなり、根の養分吸収効率が落ちるため、植物の成長が制限される。
【0012】
また、従来のバッグ式栽培方法は、主として、葉茎野菜や花卉類を栽培することを目的としている。しかし、ダイコン、ニンジン等の直根類やジャガイモ、サツマイモ等の芋類のような根菜類は、成長に伴って地下部が肥大し、又は地下茎が広域に渡って広がる。このような根菜類は、上述のようなバッグ式栽培方法では栽培することができない。
【0013】
また、栽培槽には不透水性の袋体を使用することから、栽培される植物の根腐れを防止するために、袋体の側部に排水穴をあけておく必要がある。しかしながら、湿潤な環境で長期間植物を栽培すると、藻が発生し排水穴を塞いで排水が充分にされなくなる状態が生じる。このような場合、植物が根腐れを起こしたり、生育不良を起こす場合がある。
【0014】
そこで、本発明の目的は、育苗後に本圃への植付け作業が必要なく育苗から収穫までを同一の栽培槽内で一貫して行うことが可能であり、栽培槽を軽量化することが可能であり、栽培槽内の根の発育がよく、かつ育苗後の灌水管理が容易で、根菜類の栽培にも適用することが可能な植物栽培技術を提供することにある。また、本発明の目的は、上記植物栽培技術に使用するのに適した育苗装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る植物栽培方法は、透根性を有するシートが袋状に形成された栽培用袋の内底面に吸水材を敷くとともに前記栽培用袋の内部に培土を充填して構成された栽培槽において植物を育苗し、前記植物が所望の大きさまで成長した段階で、前記栽培槽を本圃の地面上に載置して、植物の根を地面内部に伸長させて前記植物を栽培することを特徴とする。
【0016】
このように、栽培用袋の内底面に吸水材を敷くことにより、栽培槽の保水容量を大きくすることができる。そのため、栽培槽内に充填する培土量を減らすことができ、栽培槽を軽量化することができる。育苗期間は、植物の苗が小さいので、栽培に必要な養水分の量も少ない。また、一度灌水を行うと、吸水材が栽培用袋内に水を保持するため、育苗期間は栽培槽に間歇的に給水を行えばよく、灌水管理が容易である。
【0017】
また、栽培用袋は、透根性を有するシートにより構成されているので、育苗期間中に植物苗の根が成長すると、根端は包容材を突き抜けて空中に突出する。空中に突出した根端は、乾燥した環境におかれるため、成長を停止する。そして、成長を停止した根端の基部付近から多数の二次根が補償的に形成される。これにより、植物の根は親根や二次根に多数の分岐を有する形状に成長し、根巻き(ルーピング)を生じることがない。そのため、栽培槽内において植物の根張りがよくなり、植物の成長が促進される。また、親根先端部や二次根先端からは多数の毛根が発生する。そのため、植物の養水分の吸収がよく、植物が活性化され成長が促進される。
【0018】
植物が所望の大きさまで成長した段階で、栽培槽を本圃の地面上に載置して、植物の根を地面内部に伸長させることで、植物を本圃に定植した状態と同様になる。従って、植物の根圏は、本圃の土壌内部に広がるため、植物の根圏における保水容量・保肥容量が更に大きくなる。従って、灌水管理が容易となり、植物の生育も良好となる。
【0019】
このように、栽培槽を本圃の地面上に載置するだけで、植物の苗を本圃に定植したことと同様の状態となるため、育苗後に植物の苗を本圃に植付けする作業が省かれる。従って、農作業の省力化が図られる。
【0020】
また、栽培槽を本圃の地面上に載置した後は、植物は本圃の地面に広く根を張ることが可能となる。従って、成長に伴って地下部が肥大し、又は地下茎が広域に渡って広がる根菜類の栽培にも適用することが可能である。
【0021】
ここで、「透根性」とは、植物の細根がスムーズに通り抜けることができる性質をいい、細根が通り抜けることのできる細孔が多数形成されていることを意味する。具体的には、一般的に、細根の太さは直径0.5〜1.0mm程度なので、包容材が透根性を有するためには、例えば、直径約0.3〜2.0mm程度の穴が多数あいたシート又はネットであれば透根性を有することになる。
【0022】
また、本発明においては、前記栽培用袋内に充填する培土に、高吸水性ポリマーを混合することができる。これにより、培土の保水容量が飛躍的に大きくなり、栽培槽内の水分環境が安定する。従って、植物の苗に加わる水分ストレスが緩和され、苗の成長が促進される。また、灌水管理も容易となる。
【0023】
また、本発明においては、前記植物を育苗する際には、緩傾斜がつけられた平板状の容器底面の表面に保水性シートを敷き、前記保水性シートの表面に透水性の遮根シートを敷いて構成された水耕栽培ベッドの、前記遮根シート上に前記栽培槽を載置し、前記容器底面に養液を流下させることにより、前記保水性シートに養液を浸透させるとともに前記栽培槽に養液を浸透させることで、灌水を行うようにすることができる。
【0024】
このように、水耕栽培ベッドの保水性シートに供給された養液は、保水性シートに浸透し保水される。また、水耕栽培ベッドには緩傾斜がつけられているので、養液は自然流下によって保水性シート全体に均等に供給される。また、余剰な養液は緩斜面下部から回収することができる。そのため、保水性シートには常に適量の養液が保持される。そして、毛管現象によって、水耕栽培ベッドの保水性シートから遮根シートを通して栽培槽内底部の吸水材に養液が浸透し、栽培槽内に養液が供給される。これにより、栽培槽内の水分環境を安定させることができる。従って、植物の苗の生育が良好となる。
【0025】
また、植物の苗の根が成長し、栽培用袋の底部を突き抜けた場合でも、保水性シートの上面に敷かれた遮根シートにより、根は水耕栽培ベッドの保水性シートに入り込むことがない。従って、栽培槽を移動させる際に、根を傷めることがない。
【0026】
本発明に係る育苗装置は、緩傾斜がつけられた平板状の容器底面の表面に保水性シートを敷き、前記保水性シートの表面に透水性の遮根シートを敷いて構成された水耕栽培ベッドと、前記水耕栽培ベッドの傾斜上方から前記保水性シートに水又は養液を供給する給液機構と、前記水耕栽培ベッドの傾斜下方から余剰水又は余剰養液を排液する廃液機構とを備えていることを特徴とする。
【0027】
このように構成された育苗装置において、水耕栽培ベッドの遮根シート上面に、前述のような、栽培槽を載置し、給液機構により保水シートに水又は養液を供給する。水又は養液は保水シートに浸透するとともに、緩斜面を流下して保水シート全体に一様に広がる。また、余剰灌水は、廃液機構によって水耕栽培ベッドの斜面下方から排出される。保水シートに保水された水又は養液は、透水性の遮根シートを通して、毛管現象により栽培槽に吸収され、栽培槽への灌水が行われる。
【0028】
このように、毛管現象を利用した灌水を行うことで、栽培槽が過剰に灌水されることがなく、栽培槽を適度に湿った状態に維持することができる。また、水耕栽培ベッドの保水シートが常に養水分を保持するため、常時安定して毛管現象による栽培槽への灌水が行われる。従って、栽培槽の水分環境が非常に安定し、植物の苗の生育を良好とすることが可能となる。
【0029】
また、保水シートの上面には遮根シートが敷かれているので、植物の根が保水シートに侵入することがない。従って、栽培槽の移動時に、植物の根がちぎれて、根が痛められることを防止できる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施形態で使用される栽培槽の斜視図、図2は図1の栽培槽の要部断面図である。栽培槽1は、透根性を有するシートを袋状に形成した栽培用袋2の内底面に吸水材3を敷くとともに、栽培用袋2の内部に培土4を充填して構成されている。
【0031】
本実施形態においては、栽培用袋2には、透根性シートの一例として、ポリエチレン製のワリフが使用されている。通気性、通水性、耐候性に優れ、高い強度を有するため、栽培用袋2の強度を高くして軽量化を図ることができるからである。また、ワリフは価格も比較的安価であり、消耗品として使用するのに適している。更に、鋏を使って自由に切断し、また熱融着(ヒートシール)により簡単に接着することが可能であるため、加工性にも優れている。
ここで、ワリフとは、タテウエブ(縦方向に延伸、強化された細目状スプリットウエブ)とヨコウエブ(横方向に延伸、強化された細目状スプリットウエブ)を連続的供給し、拡幅積層しながら熱融着して得られるポリオレフィン系樹脂の不織布をいう。ワリフの表面には、直径約0.3〜2.0mm程度の穴が多数形成されており、植物の根の根冠はこの穴を貫通することが可能である。
【0032】
栽培用袋2は、縦40〜60cm、横20〜30cmの長方形のワリフの短辺を二つ折りにして、周囲端部を熱融着して構成される。
【0033】
また、本実施形態においては、吸水材3の一例として、ポリエステルの不織布が使用されている。吸水材3は、縦50〜60cm、横5〜10cmの長方形で、厚さは3〜5cmのものを使用する。ここで、吸水材3としてポリエステル不織布を使用した理由は、加工が容易であると共に、吸水性がよく、安価であり、また、廃棄処理において燃焼しても有害物質を排出することがないからである。
【0034】
培土3には、ピートモスとパーライトを混合したものが使用されている。尚、保水性・保肥性を更に高めるために、高吸水性ポリマーを0.5〜1.0容量%混合してもよい。
【0035】
栽培用袋2の上面には、適当な間隔で開口5が開けられている。この開口5を通して、植物6の苗を培土4に植える。
【0036】
図3は本発明の実施形態に係る育苗装置の模式断面図である。
本実施形態に係る育苗装置10は、プラスチック製の平箱状の容器11の内底面に、保水性シート12が敷かれ、その上面に遮根シート13が敷かれた水耕栽培ベッド14を有する。この水耕栽培ベッド14は、容器11の内底面が緩斜面状となるように傾斜して設けられている。そして、水耕栽培ベッド14の傾斜上方には、保水性シートに水又は養液を供給する給水管15が設けられている。この給水管15の他端は、給液タンク16に接続されており、その中間にはポンプ17が設けられている。給液タンク16に貯留された水又は養液が、ポンプ17によって汲み上げられ、保水性シート12に供給される。これら給液タンク16、給水管15、及びポンプ17により、給液機構が構成されている。
【0037】
水耕栽培ベッド14の傾斜下方には、排水溝18が設けられており、排水溝18は、排水管19により給液タンク16と接続されている。水耕栽培ベッド14から排水溝18に排水された水又は養液は、排水管19を通して給液タンク16に戻される。これら排水溝18及び排水管19により、排液機構が構成されている。
【0038】
給液タンク16内には、タンク内の水位を検出する水位計20が設けられている。そして、水位計20が検出するタンク内の水位が所定の水位以下となったときに、給液タンク16に接続された給水管21より、水又は養液が追加供給される。
【0039】
保水性シート12としては、厚さが3〜5mmのポリエステル不織布が使用されている。
【0040】
次に、以上のような栽培槽1と育苗装置10を使用した植物栽培方法について説明する。まず、栽培槽1の各開口5を通して、培土4に、植物6の苗を植える。そして、この植物6の苗が植えられた栽培槽1を、図2に示すように、水耕栽培ベッド14の遮根シート13の上面に、間隔を開けて並べて載置する。このとき、栽培槽1の長手方向が、水耕栽培ベッド14の傾斜方向と垂直になるように並べる。
【0041】
この状態で、給水管15から水耕栽培ベッド14に水又は養液を供給する。供給された水又は養液は、保水性シート12に浸透する。一方、容器11の底面には緩傾斜がつけられているので、保水性シート12の保水容量を超える水又は養液は、傾斜下方に流下して保水シート全体に広がる。さらに過剰な水又は養液は、斜面下方に設けられた排水溝18に流れ込み、排水管19を通して給液タンク16に戻される。このようにして、保水性シート12には一様に水又は養液が供給され、適度の量の水又は養液が保持される。
【0042】
保水性シート12に保水された水又は養液は、毛管現象により、遮根シート13を通して、栽培槽1の栽培用袋2底面に設けられた吸水材3に吸い上げられる。吸水材3に吸い上げられた水又は養液は、培土4が乾燥してくると、随時、培土4に供給される。従って、培土4は、過剰に灌水されることなく常に湿潤な状態に保持される。そのため、植物6の苗の根は、常に湿潤状態におかれ水分ストレスが小さいので、植物6の生育が良好となる。
【0043】
また、栽培用袋2全体が通気性・透水性を有するために、過剰な水はスムーズに排水される。従って、上記従来技術で説明したバッグ式栽培槽のように、藻の発生によって排水不良を生じるといった心配がない。
【0044】
更に、栽培用袋2の表面は、培土4からしみ出す水によって常に湿潤な状態に保たれる。従って、気温が上昇すると、栽培用袋2の表面の水の蒸発が活発となり、蒸発時の潜熱により培地4の温度を下げる作用がある。従って、夏場に気温が高い時でも、培地4の温度上昇が抑えられ、土壌病害虫の繁殖が抑制される。また、夏場でも培地4が冷涼に保たれるため、植物の根の活性がよく、植物の生育が良好となる。従って、品質のよい苗を生産することができる。
【0045】
また、植物の上部から散水を行うことにより灌水すると、飛散する水によって病害虫の伝染が生じやすいが、本実施形態のように毛管現象を利用して灌水を行うことで、灌水を媒介とした病害虫の伝染は起こりにくい。
【0046】
また、栽培用袋2は透根性素材からなるため、植物6が成長すると、植物6の根は栽培用袋2を突き抜けて栽培用袋2の外に突き出す。図4は栽培用袋2の付近における植物6の根の成長過程を表す図である。
【0047】
図4(a)において、植物6の親根6aの根端6bは、成長するに従って伸長し、栽培用袋2の内面に達する。ここで、栽培用袋2は透根性を有する素材により構成されているため、親根6aの根端6bは、栽培用袋2の網目2aを突き抜けて、栽培用袋2の外部まで伸長する。栽培用袋2の外部に伸長した植物の親根6aの根端6bは、外気により乾燥し、根端6bには乾燥ストレスが加わる。そのため、根端6bは成長を停止する。これにより、植物の親根6aの成長が止まるため、根巻きが生じることがなくなる。
【0048】
次に、根端6bの伸長が停止した場合、親根6aの根端6bの近傍に、二次根形成が始まる。尚、二次根形成は、根端6bの伸長が停止していない場合にも生じるが、その位置は、根端6bから一定の距離離れ、親根6aの繊維束要素が内皮が一定の生育段階に達しなければ、二次根始原体は形成されない。すなわち、基本的に植物は株を安定させるために主根や1次根のような親根6aの伸長が優先的に生るため、二次根形成は遅れる。従って、根端長(根の先端から、最初に出現した二次根の位置までの長さ)は長くなる。しかしながら、乾燥ストレスにより根端6bの伸長が停止した場合、根端6bの近くに二次根6cが補償的に形成される(図4(b)参照)。また、親根6aの伸長が停止した分だけ、二次根形成が促進され、比較的多数の太くて長い二次根6cが形成される。更に、親根6aの根端6b付近や二次根6cには、多数の毛根6d,6d’が顕著に多く形成される。これらの毛根6d,6d’は、培土4内の養水分の吸収機能が高く、植物の養分吸収が良好となる。その結果、植物の成長が良好となる。
【0049】
このように、栽培用袋2として透根性を有するシートを使用することにより、二次根形成が促進されるため、限られた量の培土4の中において、養水分の吸収効率のよい根系が形成される。そして、植物の養水分の吸収機能が向上する結果、植物の成長が良好となる。
【0050】
次に、植物6が所望の大きさまで成長した段階で、図5に示すように、栽培槽1を本圃に運搬し、本圃の畝30上に載置する。前述のように、栽培槽1は小型・軽量であり、縦長の持ち運びやすい大きさ・形状に構成されているので、栽培槽1の運搬は容易である。
【0051】
栽培槽1を本圃の畝30上に載置して灌水を行うと、しばらくすると植物6の根は、図5のように、本圃の地面内部に伸長する。これにより、植物を畝30に定植した状態と同じになる。従って、畑地栽培と同様の灌水を行えばよいため、従来のバッグ式栽培方式に比べて、灌水管理が極めて容易となる。
【0052】
また、植物6の根圏が畝30に広がり、根圏容積が大きくなるために、植物6の生育も良好となる。
【0053】
更に、植物6として根菜類を栽培する場合、子苗の段階では、上述の育苗装置10で環境制御を行いながら栽培し、根が成長してくると本圃に移して、本圃の地面内に根を成長させる。これにより、ダイコン、ニンジン等の直根類、ジャガイモ、サツマイモ等の芋類のように、地下部が肥大したり、広域に渡って成長したりするような根菜類の栽培も可能となる。
【0054】
【実施例】
図6は本発明の実施例に係る育苗装置によりサラダナの苗を育苗している様子を示した図、図7は図6の育苗装置により育苗したサラダナの苗を本圃に定植して栽培した状態を表す図である。栽培実験の結果、市場に出荷するのに十分な大きさのサラダナを栽培できることが確認された。また、図7から分かるように、本圃の畝上に栽培槽を載置して、栽培を継続することにより、サラダナの根は、栽培槽内から栽培圃場の土壌内に成長していっていることがわかる。
【0055】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る植物栽培方法によれば、栽培槽を本圃に載置するだけでよいために、育苗後に本圃への植付け作業が必要なく、育苗から収穫までを同一の栽培槽内で一貫して行うことが可能であり、農作業の省力化が図られる。
【0056】
また、栽培槽の底部に吸水材を敷くことで、栽培槽の保水容量が高められ、培土を減量することができるので、栽培槽を軽量化することが可能となる。従って、栽培槽の運搬作業の省力化が図られる。
【0057】
また、育苗時の栽培槽内の水分環境が安定するため、栽培槽内の根の発育がよく、かつ育苗後の灌水管理が容易である。更に、育苗時に植物の根のルーピングが防止され、側根の発生が促進されるため、栽培槽内の根の養水分の吸収効率が高められる。従って、高品質の苗を育苗することができる。
【0058】
さらに、育苗後は本圃の地中に植物の根圏を形成させるので、根菜類の栽培にも適用することが可能となる。
【0059】
また、本発明に係る育苗装置によれば、毛管現象を利用した灌水を行うことで、栽培槽が過剰に灌水されることがなく、栽培槽を適度に湿った状態に維持することができる。また、水耕栽培ベッドの保水シートが常に養水分を保持するため、常時安定して毛管現象による栽培槽への灌水が行われる。従って、栽培槽の水分環境が非常に安定し、植物の苗の生育を良好とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態で使用される栽培槽の斜視図である。
【図2】図1の栽培槽の要部断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る育苗装置の模式断面図である。
【図4】植物の根系の形成過程を表す図である。
【図5】栽培槽を本圃の畝に載置して植物の栽培を行う状態を表した図である。
【図6】本発明の実施例に係る育苗装置によりサラダナの苗を育苗している様子を示した図である・
【図7】図6の育苗装置により育苗したサラダナの苗を本圃に定植して栽培した状態を表す図である。
【図8】従来のバッグ式栽培槽の要部断面図である。
【符号の説明】
1 栽培槽
2 栽培用袋
3 吸水材
4 培土
5 開口
6 植物
10 育苗装置
11 容器
12 保水性シート
13 遮根シート
14 水耕栽培ベッド
15 給水管
16 給液タンク
17 ポンプ
18 排水溝
19 排水管
20 水位計
21 給水管
30 畝
【出願人】 【識別番号】501223308
【氏名又は名称】株式会社ニューアグリネットワーク
【出願日】 平成15年6月9日(2003.6.9)
【代理人】 【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久

【公開番号】 特開2005−20(P2005−20A)
【公開日】 平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願番号】 特願2003−164428(P2003−164428)