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【発明の名称】 クリップピッチ可変式芝刈機
【発明者】 【氏名】林 昭男
【住所又は居所】愛知県豊川市美幸町1丁目26番地 株式会社共栄社内

【氏名】日比 義寿
【住所又は居所】愛知県豊川市美幸町1丁目26番地 株式会社共栄社内

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に搭載したエンジンの動力を、伝動装置の第1及び第2の各動力伝達経路を経て単一のリールカッター及びドラム車輪にそれぞれ分岐伝達させて芝生を刈り取る構成の芝刈機において、
前記伝動装置の第1及び第2の各動力伝達経路の少なくとも一方に、外部から操作可能な変速機構が組み込まれ、回転するリールカッターのリール刃と、機体のベッドナイフとの協働により芝生の刈り込みを開始してから、次のリール刃による刈り込みが開始される間に機体Fが走行する距離であるクリップピッチを変更して、同一の芝刈機によってクリップピッチの異なる芝生の刈取作業を行えるように構成したことを特徴とするクリップピッチ可変式芝刈機。
【請求項2】
前記伝動装置は、歯車機構で構成され、第1動力伝達経路に組み込まれた変速機構は、歯数の異なる二枚の第1変速歯車が同一軸に一体に取付けられて、リールカッターのカッター軸の端部に軸方向に沿ってスライド可能に嵌め込まれたスライド歯車体と、動力伝達方向に沿って前記リールカッターのカッター軸の直前の中間軸に一体に取付けられて、前記スライド歯車体の各第1変速歯車と組み合わせを変えて噛合可能な歯数の異なる二枚の第2変速歯車と、伝動装置の外部において前記スライド歯車体を軸方向にスライドさせるためのスライド操作部材とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のクリップピッチ可変式芝刈機。
【請求項3】
前記スライド歯車体は、これを構成する二枚の第1変速歯車と、該第1変速歯車と噛合可能な二枚の第2変速歯車とがいずれも噛合しない中立位置を有している構成であることを特徴とする請求項2に記載のクリップピッチ可変式芝刈機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ場のグリーン等の芝生を刈り取るための単一のリールカッターを備えた芝刈機に関し、更に詳しくは「クリップピッチ」を簡単に変更できるクリップピッチ可変式芝刈機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
単一のリールカッターを備えた芝刈機(当業界では「単モア」とも称されている)の一つとして、特許文献1に記載のものが知られている。この自走式芝刈機は、図1ないし図3に示されるように、機体Fに搭載したエンジンEの動力が、クラッチ12及び機体Fの側部に設けられた伝動装置Dを介してリールカッターKとドラム車輪3に分岐して伝達され、ドラム車輪3が芝面に接地して駆動回転されることにより、機体Fが走行速度(V)で前進すると共に、(N)個のリール刃を有するリールカッターKが単位時間当たりの回転数(R)で回転して、リールカッターKのダウンカット方向の回転により芝生が刈り取られる。
【0003】
ここで、(N)個のリール刃を有するリールカッターKが回転数(R)で回転した状態で、機体Fが走行速度(V)で走行して、芝生を刈り取る場合に、クリップピッチ(P)とは、〔P=(C×V)/(R×N)〕で表される。なお、(C)は係数である。即ち、クリップピッチとは、回転するリールカッターのリール刃と、機体Fのベッドナイフとの協働により芝生の刈り込みを開始してから、次のリール刃による刈り込みが開始される間に機体Fが走行する距離を意味し、「刈込頻度」とも称され、ゴルフ場のグリーンを芝刈りするための単一のリールカッターを備えた芝刈機においては、4.0〜8.0mmが一般的な数値である。
【0004】
このため、「クリップピッチ」が短い程、芝生が細かく刈り取られるので、芝生の刈取状態が良好となる(刈り取った芝生の見栄えがよくなる)。近時のゴルフ場のグリーン等の芝刈では、その見栄えを良好にするために、「クリップピッチ」を短くして行うことが多い。このように、「クリップピッチ」が短くなると、芝生の刈取状態は良好となって見栄えがよくなる反面、リールカッターKの磨耗度合は増して、リールカッターKをラッピングする頻度が高まる。
【0005】
一方、ゴルフ場等の芝生の管理の一つとして、芝面に対してほぼ垂直に「タイン」と称される穿孔具を突き刺して通気孔を穿孔して(当業界では、この穿孔作業は「エアレーション」と称されている)、芝生に対する通気性を高めて土壌改良を行って、芝生の生育を良好にすることがある。また、上記「エアーレーション」の後に、「目土」と称される砂を芝生表面に散布して穿孔された通気孔を塞いだり、或いはグリーンにおけるボールの転がりを均一にするために、芝生表面の隙間に前記「目土」を均一に散布して、表面の凹凸をなくすことも行われている。上記「エアレーション」を行うと、穿孔具の抜け出しにより芝生に土壌が付着すると共に、前記「目土」の散布によっても芝生に砂が付着し、芝生に付着した土壌、砂類は、作業後から所定期間内は付着したままとなっている。そして、芝生の刈取作業との関連では、芝生に上記した土壌、砂類が付着している状態で行わざるを得ないことがある。このような状態で、芝刈作業を行うと、通常の状態(芝生に土壌、砂類が付着していない状態)に比較して、リールカッターKの磨耗が著しくなる。
【0006】
このように、芝生の刈取作業においては、芝生の場所によって、短い「クリップピッチ」での刈取りが要求される場合と、そうでない場合とがあるため、ゴルフ場等においては、「クリップピッチ」の異なる複数台の芝刈機を保有して、上記事態に対応していることが多い。なお、「クリップピッチ」の変更は、伝動装置Dが歯車機構の場合には、リールカッターK及びドラム車輪3への二つの動力伝達経路のいずれか一方の噛合歯車の歯数比を変更すれば、対応可能であるが、芝刈機の使用者(ユーザー)が上記歯数比の変更のために噛合歯車を変更するには、伝動装置Dのカバーを取り外して特定の中間軸の歯車を交換する必要があって、使用者が上記変更作業を行うのは、大変であった。
【特許文献1】特公平5−39564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、芝刈作業の目的に応じて、作業者が簡単に「クリップピッチ」を変更可能にして、一台の芝刈機により「クリップピッチ」の異なる芝刈作業を可能にすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するための請求項1の発明は、機体に搭載したエンジンの動力を、伝動装置の第1及び第2の各動力伝達経路を経て単一のリールカッター及びドラム車輪にそれぞれ分岐伝達させて芝生を刈り取る構成の芝刈機において、前記伝動装置の第1及び第2の各動力伝達経路の少なくとも一方に、外部から操作可能な変速機構が組み込まれ、前記変速機構の操作により、回転するリールカッターのリール刃と、機体のベッドナイフとの協働により芝生の刈り込みを開始してから、次のリール刃による刈り込みが開始される間に機体Fが走行する距離であるクリップピッチを変更して、同一の芝刈機によってクリップピッチの異なる芝生の刈取作業を行えるように構成したことを特徴としている。
【0009】
請求項1の発明によれば、伝動装置の第1及び第2の各動力伝達経路の少なくとも一方に、外部から操作可能な変速機構が組み込まれているので、前記変速機構の操作のみによって、クリップピッチを簡単に変更できる。このため、芝生に土壌類が付着していなくて、見栄えよく刈り取りたい場合には、変速機構の操作によりクリップピッチを短くして芝刈作業を行えばよく、芝生に土壌類が付着していて、リールカッターの磨耗が激しいと予測される場合には、変速機構の操作によってクリップピッチを長く設定して、芝刈作業を行えばよい。このため、ユーザーは、一台の芝刈機を保有するのみで、クリップピッチの異なる芝刈作業を行える。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記伝動装置は、歯車機構で構成され、第1動力伝達経路に組み込まれた変速機構は、歯数の異なる二枚の第1変速歯車が同一軸に一体に取付けられて、リールカッターのカッター軸の端部に軸方向に沿ってスライド可能に嵌め込まれたスライド歯車体と、動力伝達方向に沿って前記リールカッターのカッター軸の直前の中間軸に一体に取付けられて、前記スライド歯車体の各第1変速歯車と組み合わせを変えて噛合可能な歯数の異なる二枚の第2変速歯車と、伝動装置の外部において前記スライド歯車体を軸方向にスライドさせるためのスライド操作部材とを備えていることを特徴としている。
【0011】
請求項2の発明によれば、伝動装置の外部においてスライド操作部材の操作のみによって、スライド歯車体の歯数の異なる二枚の第1変速歯車と、動力伝達方向に沿ってリールカッターのカッター軸の直前の中間軸に取付けられた歯数の異なる二枚の第2変速歯車との噛合の組み合わせの変更によって、リールカッターの回転数が変更されるため、クリップピッチ変更の操作が容易となる。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明において、スライド歯車体は、これを構成する二枚の第1変速歯車と、該第1変速歯車と噛合可能な二枚の第2変速歯車とがいずれも噛合しない中立位置を有している構成であることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明によれば、例えば、リールカッターのラッピング時には、前記スライド歯車体を中立位置に配置しておいて、ラッピングマシンによりリールカッターのカッター軸を駆動回転させると、伝動装置を構成する残りの全ての中間軸は停止して、カッター軸のみが駆動回転された状態で、リールカッターのラッピングを行える。よって、伝動装置を構成する歯車が無駄に磨耗しなくなると共に、ラッピングマシンの動力は、リールカッターの回転のみに費やされて、無駄に消費されなくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るクリップピッチ可変式芝刈機によれば、伝動装置の第1及び第2の各動力伝達経路の少なくとも一方に組み込まれて、外部から操作可能な変速機構の操作のみによって、クリップピッチを簡単に変更できるため、芝生に土壌類が付着していなくて、見栄えよく刈り取りたい場合には、変速機構の操作によりクリップピッチを短くして芝刈作業を行えばよく、芝生に土壌類が付着していて、リールカッターの磨耗が激しいと予測されて、リールカッターの激しい磨耗を防止して刈取作業を行う場合には、変速機構の操作によってクリップピッチを長く設定して、芝刈作業を行えばよい。よって、使用者は、一台の芝刈機を保有するのみで、クリップピッチの異なる芝刈作業を行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の最良の実施例を複数挙げて、本発明を更に詳細に説明する。図1は、本発明に係るクリップピッチ可変式芝刈機の主要部を破断した平面図であり、図2は、同じく側面図であり、図3は、同じく模式的中央縦断面図であり、図4は、伝動装置Dの歯車機構を示す側面図であり、図5は、エンジンEからリールカッターKへの動力伝達経路Q1 を示す模式的平面図である。なお、本発明は、伝動装置Dに組み込まれて、外部から操作可能な変速機構Tによって、前記クリップピッチを変更できる構成に特徴を有するので、実施例の説明においても、動力伝達系統を主体にして説明する。
【0016】
図1ないし図5において、機体Fの後部には、ハンドルアーム1を介してハンドル2が設けられ、前記機体Fには、幅方向に偏在してエンジンEが搭載され、機体Fの後部にはドラム車輪3が装着されていると共に、機体Fの前端部には、前ローラー4とサッチングローラー5とが前後方向に沿ってこの順序で配置され、サッチングローラー5とドラム車輪3との間にリールカッターKが配置されている。図3において、前ローラー4は機体Fに対して昇降可能に取付けられて、機体Fに対する前ローラー4の高さによって芝生の刈高が定められる。リールカッターKは、カッターフレーム6に多数枚のリール刃7が螺旋状となって取付けられた構成であって、ダウンカット状に回転するリールカッターKのリール刃7と、機体Fに固定されたベッドナイフ8とによって芝生が刈り取られる。サッチングローラー5は、刈取りの直前において、芝生内に入り込んでいる枯芝類を掻き出すためのローラーである。なお、芝生の刈取作業を行う場合には、図1に示されるように、ドラム軸25の両端部から車輪29を取り外して、ドラム車輪3を接地させる。
【0017】
また、エンジンEの動力は、ハンドル2の手前のクラッチレバー11の操作により断続されるクラッチ12を介してエンジンEの駆動軸13と同軸に配置された伝動軸14に伝達される。機体Fの幅方向におけるエンジンEが偏在して配置されている側の反対の側には、歯車機構から成る伝動装置Dが装着されている。また、伝動軸14におけるクラッチ12と反対側の端部には、入力歯車G0 が取付けられていて、該入力歯車G0 は、伝動装置Dのケース15内に配置されている。即ち、エンジンEの駆動軸13とクラッチ12を介して連結される伝動軸14は、伝動装置Dからみると「入力軸」となっている。伝動装置Dは、「入力軸」である伝動軸14の動力をリールカッターKに伝達する第1動力伝達経路Q1 と、ドラム車輪3に伝達する第2動力伝達経路Q2 との二つの異なる動力伝達経路を有している。
【0018】
図4において、第1動力伝達経路Q1 においては、伝動軸14の一端に取付けられた入力歯車G0 と、第1中間軸S1 の第1歯車G1 とが噛合され、更に第1歯車G1 は、第2中間軸S2 の第2歯車G2 と噛合している。第3中間軸S3 には、歯数の異なる第3及び第4の各歯車G3 ,G4 が一体に取付けられていて、第2歯車G2 は、歯数の少ない方の第3歯車G3 と噛合している。図6に示されるように、リールカッターKのカッター軸16における、伝動装置Dのケース15内に入り込んでいる部分は、スプライン加工が施されたスプライン部16aとなっていて、該スプライン部16aには、前記第3及び第4の各歯車G3 ,G4 に対していずれか一方に噛合するか、或いは全く噛合しない三態様を有するスライド歯車体Aが、カッター軸16の軸方向に沿ってスライド可能に嵌め込まれている。
【0019】
即ち、スライド歯車体Aは、前記第3歯車G3 に噛合する第5歯車G5 と、前記第4歯車G4 に噛合する第6歯車G6 とが、カッター軸16の軸方向に沿って所定間隔をおいて一体に設けられた構成である。第5及び第6の各歯車G5 ,G6 の間隔は、その間に第3及び第4の各歯車G3 ,G4 の双方が同時に噛合されることなく配置される間隔であって、上記配置により、カッター軸16と第3中間軸S3 との間における相互の動力伝達が遮断される。スライド歯車体Aの外端側には、後述のスライド操作体Bの偏心ピン21が挿入係止された状態で、スライド操作体Bを回転させることにより、スライド歯車体Aをカッター軸16の軸方向にスライドさせる環状係止溝17aを備えた係止体17が一体に設けられている。また、図7及び図8に示されるように、伝動装置Dのケース15におけるスライド歯車体Aの係止体17に対応する部分には、筒状案内体18が突出して一体に設けられている。図6ないし図8に示されるように、スライド歯車体Aをカッター軸16の軸方向にスライドさせるスライド操作体Bは、前記筒状案内体18の案内孔18aに挿入される円筒状の操作体本体部19と、該操作体本体部19の挿入側の端面に、該操作体本体部19に対して偏心して設けられた偏心ピン21と、前記筒状案内体18に操作体本体部19を挿入した状態で、該筒状案内体18から突出した部分に半径方向に沿って設けられたハンドル部22とを備えている。よって、筒状案内体18にスライド操作体Bの操作体本体部19を挿入して、その先端の偏心ピン21を、スライド歯車体Aの環状係止溝17aに挿入係止した状態で、スライド操作体Bを回動させると、スライド歯車体Aは、カッター軸16の軸方向にスライドされる。なお、スライド操作体Bの偏心ピン21とハンドル部22とは、円筒状をした操作体本体部19の中心に対してその位置が90°だけずれている。
【0020】
そして、図9に示されるように、スライド歯車体Aをカッター軸16に対して最も端部側にスライドさせると、第3中間軸S3 の第4歯車G4 と、スライド歯車体Aの第6歯車G6 とが噛合して、カッター軸16の回転は増速されて、クリップピッチPの短い「通常仕様」となると共に、図10に示されるように、上記の状態(増速状態)からスライド操作体Bを半回転させると、スライド歯車体Aはカッター軸16に対して最も中心側にスライドされて、第3中間軸S3 の第3歯車G3 と、スライド歯車体Aの第5歯車G5 とが噛合して、カッター軸16は減速されて、クリップピッチPの長い「減速仕様」となる。更に、図9で示される「通常仕様」からスライド操作体Bを90°だけ回動させると、図11に示されるように、第3中間軸S3 の第3及び第4の各歯車G3 ,G4 は、いずれもスライド歯車体Aの第5及び第6歯車G5 ,G6 の間に、いずれの歯車G5 ,G6 とも噛合しない中立状態で配置されて、「中立仕様」となる。
【0021】
このように、伝動装置Dの第1動力伝達経路Q1 に、外部から操作可能な変速機構Tが組み込まれていて、芝刈機の使用者は、伝動装置Dを分解することなく、簡単な外部操作のみによって、前記変速機構Tを操作することによりクリップピッチを変更できて、「通常仕様」と「減速仕様」のいずれか一方を選択できる。本実施例の変速機構Tは、カッター軸16の一端部のスプライン部16aにスライド可能に嵌め込まれたスライド歯車体Aと、動力伝達方向に沿ってカッター軸16の直前の第3中間軸S3 に一体に取付けられた第3及び第4の各歯車G3 ,G4 と、スライド歯車体Aを構成する二枚の歯車G5 ,G6 と前記各歯車G3 ,G4 との噛合の組み合わせを変更するためのスライド操作体Bとで構成される。スライド歯車体Aを構成する二枚の各歯車G5 ,G6 と、第3中間軸S3 に一体に取付けられた各歯車G3 ,G4 は、いずれも変速歯車として機能している。
【0022】
なお、図7及び図8に示されるように、ケース15に一体に設けられた筒状案内体18の露出側の端面には、上記した3つの状態に対応して、90°ずつ位相がずれた位置にハンドル係止溝18bが設けられている。また、スライド操作体Bの操作体本体部19の上端面は、ケース15に対して固定ボルト23により固定された板バネ24により押圧されている。このため、前記板バネ24の復元力に抗して、ハンドル係止溝18bからスライド操作体Bのハンドル部22を脱出させると、スライド操作体Bは回動可能になると共に、前記ハンドル係止溝18bにスライド操作体Bのハンドル部22が係止した状態では、前記板バネ24の作用によって、係止状態が維持される。
【0023】
一方、第2動力伝達経路Q2 は、伝動軸14の動力をドラム車輪3に伝達する経路であって、簡単に説明する。第2動力伝達経路Q2 において、第1中間軸S1 とドラム車輪3のドラム軸25との間には、第4及び第5の各中間軸S4 ,S5 が配置され、第4中間軸S4 には、歯数の大きく異なる二枚の第7及び第8の各歯車G7 ,G8 が一体に取付けられていると共に、第5中間軸S5 には、同じく歯数の大きく異なる二枚の第9及び第10の各歯車G9 ,G10が一体に取付けられている。そして、第1中間軸S1 の第1歯車G1 は、第4中間軸S4 の歯数の大きな方の第7歯車G7 に噛合していると共に、第4中間軸S4 の歯数の小さい方の第8歯車G8 は、第5中間軸S5 の歯数の大きな第9歯車G9 と噛合しているため、第5中間軸S5 の回転は減速される。全く同様にして、第5中間軸S5 の歯数の小さな第10歯車G10は、ドラム軸25に取付けられた第11歯車G11(第10歯車G10よりも歯数は多い)と噛合しているため、ドラム軸25は、第5中間軸S5 に対して減速される。
【0024】
このため、伝動軸14の一端に取付けられた入力歯車G0 の回転は、該入力歯車G0 よりも歯数の遥かに大きい第1歯車G1 との噛合によって減速され、第1動力伝達経路Q1 において第1中間軸S1 の回転が僅かに増速されて、リールカッターKのカッター軸16に伝達されると共に、第1動力伝達経路Q1 において第1中間軸S1 の回転が大きく減速されて、ドラム車輪3のドラム軸25に伝達される。そして、ドラム車輪3が駆動車輪となって機体Fが走行すると共に、リールカッターKがダウンカット方向に回転することにより、機体Fに対する前ローラー4の高さによって定められる刈高で芝生が刈り取られる。なお、図3において、26は、刈り取られた芝生をリールカッターKの回転方向に沿って搬送案内するための搬送案内カバーであり、図1及び図2おいて、27は、前記搬送案内カバー26により案内されて機体Fの前方に飛散された芝生を集草させる集草箱であり、28は、リールカッターKの回転をサッチングローラーに伝達する伝動装置を示す。
【0025】
このように、芝刈機の使用者は、芝生の状態、芝刈の目的等に応じて、変速機構Tのスライド操作体Bを操作するのみで、クリップピッチの短い「通常仕様」と、クリップピッチの長い「減速仕様」のいずれか一方を自在に選択することにより、目的の芝刈作業を行える。また、リールカッターKのラッピング時には、変速機構Tを「中立仕様」とすることにより、カッター軸16と第3中間軸S3 との間において動力伝達を遮断できて、ラッピングマシンの動力がリールカッターKの駆動回転にのみ費やされるため、動力効率が高まると共に、伝動装置D内の中間軸及び歯車が無駄に回転しなくなって、これらの無駄な磨耗も防止できる利点がある。なお、カッター軸16における伝動装置Dのケース15から突出した部分は、上記ラッピング時において、リールカッターKを駆動回転させる駆動源の回転部と連結される連結部16bである。
【0026】
また、前記スライド歯車体Aは、その外端部に、環状係止溝17aを備えた係止体17が一体に設けられた構成であるが、前記「中立仕様」を確保するためには、スライド歯車体Aを構成する第5及び第6の各歯車G5 ,G6 の間隔は、第3中間軸S3 に一体に取付けられた第3及び第4の各歯車G3 ,G4 の幅よりも広くする必要があって、第5及び第6の各歯車G5 ,G6 の間には、カッター軸16の方向に沿って大きな隙間が形成される。このため、図12に示されるように、スライド歯車体Aにおける第5及び第6の各歯車G5 ,G6 の間に環状係止溝31を形成して、前記係止溝31に、スライド操作体Bの偏心ピン21を挿入係止させることも可能である。この構成によって、ケース15におけるカッター軸16の部分の突出厚を小さくできて、芝刈機からみると、その全幅を狭くできる利点がある。
【0027】
なお、伝動装置Dの第1中間軸S1 に取付けられた第1歯車G1 は、スライド操作体28(図2参照)の回動操作によって、第1中間軸S1 の軸方向にスライド可能になっている。芝刈作業時には、上記したように、第1歯車G1 は第2及び第7の各歯車G2 ,G7 と噛合して、リールカッターKとドラム車輪3の双方が駆動回転され、刈取作業現場に対する搬入出時には、第1歯車G1 は、第7歯車G7 に対してのみ噛合して、第2歯車G2 とは噛合せず、ドラム軸25に装着された車輪29(図1参照)の回転により、リールカッターKが停止した状態で機体Fが走行する。更に、格納庫等において、芝刈機を手押しする等の時のために、第1歯車G1 は、第2及び第7の各歯車G2 ,G7 との双方に対して噛合していない状態も選択できる。
【0028】
また、上記実施例は、伝動装置Dが歯車機構で構成されて、リールカッターKのカッター軸16と、動力伝達方向に沿ってその直前の中間軸S3 との間に変速機構Tを組み込んであって、変速機構Tの操作を外部から簡単に行えると共に、動力伝達方向に沿ってリールカッターKの直前の中間軸S3 との間で動力伝達が遮断される構成であるために、リールカッターKのラッピング時において上記した特有の効果が奏される。しかし、本発明は、歯車機構で構成される伝動装置に限られず、鎖歯車と鎖との組み合わせによる鎖歯車機構、或いはプーリーとベルトとの組み合わせによるベルト伝動機構に対しても実施可能である。
【0029】
更に、上記実施例は、エンジンEの動力が伝動装置D内においてリールカッターKに伝達される第1動力伝達経路Q1 に変速機構Tを組み込んだ構成であるが、エンジンEの動力が伝動装置D内においてドラム車輪3に伝達される第2動力伝達経路Q2 に変速機構を組み込むことも理論上は可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るクリップピッチ可変式芝刈機の主要部を破断した平面図である。
【図2】同じく側面図である。
【図3】同じく模式的中央縦断面図である。
【図4】伝動装置Dの歯車機構を示す側面図である。
【図5】エンジンEからリールカッターKへの動力伝達経路Q1 を示す模式的平面図である。
【図6】リールカッターKのカッター軸16の端部が伝動装置Dに入り込んでいる部分の断面図である。
【図7】スライド操作体Bの分解斜視図である。
【図8】伝動装置Dのスライド操作体Bの部分の斜視図である。
【図9】(イ),(ロ)は、それぞれ「通常仕様」における変速機構Tを構成するスライド歯車体A及びスライド操作体Bの正面図である。
【図10】(イ),(ロ)は、それぞれ「減速仕様」における変速機構Tを構成するスライド歯車体A及びスライド操作体Bの正面図である。
【図11】(イ),(ロ)は、それぞれ「中立仕様」における変速機構Tを構成するスライド歯車体A及びスライド操作体Bの正面図である。
【図12】リールカッターKのカッター軸16の端部が伝動装置Dに入り込んでいる部分の別構造の断面図である。
【符号の説明】
【0031】
A:スライド歯車体
B:スライド操作体(スライド操作部材)
D:伝動装置
E:エンジン
F:機体
5 ,G6 :歯車(第1変速歯車)
3 ,G4 :歯車(第2変速歯車)
K:リールカッター
1 :第1動力伝達経路
2 :第2動力伝達経路
P:クリップピッチ
R:リールカッターの回転数
T:変速機構
V:機体の走行速度
3:ドラム車輪
16:カッター軸
16a:カッター軸のスプライン部
【出願人】 【識別番号】591187841
【氏名又は名称】株式会社共栄社
【住所又は居所】愛知県豊川市美幸町1丁目26番地
【出願日】 平成16年4月23日(2004.4.23)
【代理人】 【識別番号】100083655
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 哲寛

【公開番号】 特開2005−304428(P2005−304428A)
【公開日】 平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願番号】 特願2004−128628(P2004−128628)