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【発明の名称】 農作物収穫作業機及び農作物収穫作業方法
【発明者】 【氏名】石田 伊佐男
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【氏名】小田切 元
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【氏名】高木 真吾
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【氏名】岩部 孝章
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【要約】 【課題】生姜等の農作物の収穫作業の省力化を図り、且つ、収穫作業後の品質低下をできるだけ回避し、また、簡易でコンパクトな構成で、機体操縦性が良好な農作物収穫作業機を得る。

【解決手段】歩行操縦型の走行装置1と、作物体Pの茎葉部PLを挟持して引上げ搬送する引上げ搬送装置15とを設け、前記引上げ搬送装置15の後部下側に作物体Pの茎葉部PLを切断する切断装置16を設け、前記引上げ搬送装置15の挟持始端箇所Aから前記切断装置16が茎葉部PLを切断する時点の前記引上げ搬送装置15の挟持箇所Bまでの作物体引上げ高さHを、前記引上げ搬送装置15が作用する前で地中に生育していた作物体Pの最終収穫物Eの最大深さdより小さく設定した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行操縦型の走行装置1と、作物体Pの茎葉部PLを挟持して引上げ搬送する引上げ搬送装置15とを設け、前記引上げ搬送装置15の後部下側に作物体Pの茎葉部PLを切断する切断装置16を設け、前記引上げ搬送装置15の挟持始端箇所Aから前記切断装置16が茎葉部PLを切断する時点の前記引上げ搬送装置15の挟持箇所Bまでの作物体引上げ高さHを、前記引上げ搬送装置15が作用する前で地中に生育していた作物体Pの最終収穫物Eの最大深さdより小さく設定したことを特徴とする農作物収穫作業機。
【請求項2】
前記作物体引上げ高さHを2〜6cmに設定したことを特徴とする請求項1記載の農作物収穫作業機。
【請求項3】
前記歩行操縦型の走行装置1は、左右両側に走行回転体2,2;3,3を備えるとともに後側にエンジン4とミッションケース5と歩行操縦用の操縦ハンドル6を備え、前記引上げ搬送装置15は、作物体Pの茎葉部PLを挟持して引上げ搬送する左右一対の引上げ搬送ベルト14,14を後上がり傾斜姿勢で設けたことを特徴とする請求項1記載の農作物収穫作業機。
【請求項4】
前記引上げ搬送装置15の引上げ搬送ベルト14,14は、機体平面視で左右の走行回転体2,2;3,3の間に配置するとともに、機体側面視で機体前部側から機体前後中間部付近にかけて後上がり傾斜姿勢で配置したことを特徴とする請求項3記載の農作物収穫作業機。
【請求項5】
機体後部にエンジン4を配置し、該エンジン4の前側にミッションケース5を配置し、該ミッションケース5の前部に機体前方へ後上がり姿勢で延びる左右のフレーム19,19を固着し、該フレーム19,19の上側に前記引上げ搬送装置15を配置し、前記ミッションケース5の左右両側部に走行回転体3,3を駆動する動力を伝動する伝動部材を内装しミッションケース5の底部より下側に延設される伝動ケースを介して走行回転体3,3を装着したことを特徴とする請求項3記載の農作物収穫作業機。
【請求項6】
駆動回転される引上げ搬送装置15によって作物体Pの茎葉部PLを挟持して引上げ、地中に生育していた作物体Pの最終収穫物Eの底部が地表面より上方に上昇する前に切断装置16によって茎葉部PLを切断することを特徴とする農作物収穫作業方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、生姜、にんにく、玉ねぎ、人参などの農作物の収穫作業機及び収穫作業方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生姜、にんにく、玉ねぎ、人参などの農作物を収穫する場合、地上にのびる茎葉部をもって上方に引抜いて地中にある最終収穫物を取り上げる。この引抜き作業は重労働である。特に、生姜を引き抜く場合には、30kg程度の引き上げ力を要する。この引抜き作業を機械で行うものとして、従来、下記特許文献1に記載されるような、生姜等の農作物を引抜く農作物収穫作業機がある。この農作物収穫作業機は、左右にそれぞれ複数の車輪を備え後部に歩行操縦用のハンドルを備えた走行装置と、作物体の茎葉部を挟持して引抜き搬送する後上がり傾斜に設けた引抜き搬送装置とを設けた構成となっている。そして、この農作物収穫作業機は、機体前部で圃場に植生する作物体の茎葉部を引抜き搬送装置が挟持し、続いて、後上がりに搬送し、作物体の地中にある球根等を地表面より上方に上昇させて完全に引き抜く。そして、機体後部から引抜き搬送装置が挟持した作物体を圃場に排出していく。従って、当該文献の農作物収穫作業機では、球根等を地表面より上方に上昇させて完全に引き抜き、そして、機体後方に作物体を排出していくために、引抜き搬送装置が前後に長い構成になって、機体がコンパクトでない。また、球根等が地表面上に完全に引き抜かれて地上に露出した状態となるため、収穫作業機による引き抜き作業後、作物体を回収するまでに、球根等の最終収穫物が乾燥等によって品質が低下する場合がある。
【0003】
また、下記特許文献2に記載されるような、生姜等の農作物を引抜く農作物収穫機がある。この農作物収穫機は、左右にそれぞれ3輪づつで全部で6体の車輪を備え後部に歩行操縦用のハンドルを備えた走行装置と、作物体の茎葉部を挟持して引抜き搬送する後上がり傾斜に設けた引抜き搬送装置と、該引抜き搬送装置の挟持始端部上側に作物体の茎葉部を掻き込む掻き込みホイールを上下多数段に設けた掻き込み装置及と、該掻き込み装置で掻き込んだ作物体の茎葉部を切断するカッターを上下複数段に設けた切断装置と、該切断装置で切断された茎葉部を掻き込みホイールとガイド体によって掻き込み装置の一側方に放出する茎葉放出手段を設けた構成となっている。従って、当該文献の農作物収穫作業機は、機体前部で、引抜き搬送装置の挟持始端部上側に、上記構成とした掻き込み装置と切断装置と茎葉放出手段を配置しているので、機体前部が重くなって機体の操縦が軽快に行えない。
【特許文献1】特開平2−131519号公報
【特許文献2】特開2000−333522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、生姜等の農作物の収穫作業の省力化を図り、且つ、収穫作業後の品質低下をできるだけ回避するようにすることであり、また、簡易でコンパクトな構成で、機体操縦性が良好な農作物収穫作業機を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の技術的手段を講じたものである。
即ち、請求項1記載の発明は、歩行操縦型の走行装置1と、作物体Pの茎葉部PLを挟持して引上げ搬送する引上げ搬送装置15とを設け、前記引上げ搬送装置15の後部下側に作物体Pの茎葉部PLを切断する切断装置16を設け、前記引上げ搬送装置15の挟持始端箇所Aから前記切断装置16が茎葉部PLを切断する時点の前記引上げ搬送装置15の挟持箇所Bまでの作物体引上げ高さHを、前記引上げ搬送装置15が作用する前で地中に生育していた作物体Pの最終収穫物Eの最大深さdより小さく設定したことを特徴とする農作物収穫作業機としたものである。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記作物体引上げ高さHを2〜6cmに設定したことを特徴とする請求項1記載の農作物収穫作業機としたものである。
請求項3記載の発明は、前記歩行操縦型の走行装置1は、左右両側に走行回転体2,2;3,3を備えるとともに後側にエンジン4とミッションケース5と歩行操縦用の操縦ハンドル6を備え、前記引上げ搬送装置15は、作物体Pの茎葉部PLを挟持して引上げ搬送する左右一対の引上げ搬送ベルト14,14を後上がり傾斜姿勢で設けたことを特徴とする請求項1記載の農作物収穫作業機としたものである。
【0007】
請求項4記載の発明は、前記引上げ搬送装置15の引上げ搬送ベルト14,14は、機体平面視で左右の走行回転体2,2;3,3の間に配置するとともに、機体側面視で機体前部側から機体前後中間部付近にかけて後上がり傾斜姿勢で配置したことを特徴とする請求項3記載の農作物収穫作業機としたものである。
【0008】
請求項5記載の発明は、機体後部にエンジン4を配置し、該エンジン4の前側にミッションケース5を配置し、該ミッションケース5の前部に機体前方へ後上がり姿勢で延びる左右のフレーム19,19を固着し、該フレーム19,19の上側に前記引上げ搬送装置15を配置し、前記ミッションケース5の左右両側部に走行回転体3,3を駆動する動力を伝動する伝動部材を内装しミッションケース5の底部より下側に延設される伝動ケースを介して走行回転体3,3を装着したことを特徴とする請求項3記載の農作物収穫作業機としたものである。
【0009】
請求項6記載の発明は、駆動回転される引上げ搬送装置15によって作物体Pの茎葉部PLを挟持して引上げ、地中に生育していた作物体Pの最終収穫物Eの底部が地表面より上方に上昇する前に切断装置16によって茎葉部PLを切断することを特徴とする農作物収穫作業方法としたものである。
【0010】
従って、この農作物収穫機は、歩行操縦型の走行装置1によって機体を前進走行させ、引上げ搬送装置15によって作物体Pの茎葉部PLを挟持して引上げ搬送する。設定された引上げ高さは2〜6cmである。このとき土中にある作物体Pの最終収穫物Eも引上げられ、土中に張った根は引きちぎられる。そして、最終収穫物Eの底部が地表面より上方に上昇する前に切断装置16によって茎葉部PLが切断される。このため、最終収穫物Eはその上側に土等が被さった状態のままとなる。切断装置16により切断された後の作物体Pの根本側部分P1は、左右のフレーム19,19及びミッションケース5の下方に形成された空間部Sを通って機体後方に通過していく。このような作業を行った後、圃場に残された作物体Pの根本側部分P1は、作業者によって圃場から引き抜かれて最終収穫物Eが回収されるが、前記作業によって一度引上げられているので、軽い力で容易且つ迅速に取り上げることができ、また、完全に引き抜かれずに最終収穫物Eの上側に土等が被さった状態のままで残されているので、乾燥等による品質低下が生じにくい。一方、切断装置16によって切断されて根本側部分P1から切り離された葉先側部分P2は、引上げ搬送装置15の後端部から排出され、作業者によって機体側方側に放出される。
【発明の効果】
【0011】
本件発明により、生姜等の農作物の収穫作業の省力化が図れ、且つ、収穫作業後の品質低下をできるだけ回避できるものとなる。また、引上げ搬送装置を前後に短くできて、簡易でコンパクトな構成で、機体操縦性が良好な農作物収穫作業機を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明を実施するための最良の形態の一つとして、生姜の作物体引上げ機を図示するとともに、以下に詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の一実施例として、農作物である生姜を圃場から引上げ作業する作物体引上げ機を、以下に詳細に説明する。
この作物体引上げ機は、図に示すように、走行装置1と、作物体Pの引上げ作業を行う作業部Wとを設けたもので、走行装置1は機体を機体前方となる進行方向Dに向って前進走行させ、その走行中に作業部Wが作物体Pの引上げ作業を行っていく。これにより、この作物体引上げ機は、機体進行方向Dにそって列状に並ぶ作物体Pを機械的に且つ連続的に引抜いていくことになる。
【0014】
走行装置1は、左右両側に、走行回転体、即ち、自由回転する前輪2,2と駆動回転する後輪3,3を備え、後側に、エンジン4と、該エンジン4の動力を受けて後輪3,3と作業部Wに動力を変速伝動する変速伝動機構を内装したミッションケース5と、歩行操縦用の操縦ハンドル6を備えた歩行操縦型で四輪構成の走行装置で、これにより機体が自走するよう構成している。左右の前輪2,2及び後輪3,3は、作業時に、圃場に形成された畝Uを跨いで畝両側の谷部分を走行する。後輪3,3は、機体後部に配置されたエンジン4から動力が伝動されて駆動回転する。具体的には、エンジン4の動力が、エンジン4の前側に配置されエンジン4に連結するミッションケース5内の変速伝動機構に伝動し、該変速伝動機構を経てミッションケース5の左右両側部に装着した車輪伝動ケース7,7内の伝動機構に伝動し、該車輪伝動ケース7,7の下部の左右方向外側方に突出する後輪車軸8,8に伝動して該車軸8,8に取り付けている前記後輪3,3が駆動回転する構成としている。
【0015】
また、機体の操縦部として歩行型の操縦ハンドル6をその左右のグリップ部9,9が機体後端上側に位置するように機体後部に設けている。操縦ハンドル6のグリップ部9,9から前側に延びる左右のハンドルフレーム10,10は下方に屈曲してミッションケース5の左右両側部に固着している。また、操縦ハンドル6の近傍には、操縦者の握り操作により操作されるサイドクラッチレバー11,11を左右に設けていて、これにより左右の後輪3,3への伝動を個々に遮断するサイドクラッチを操作することができて機体の旋回が容易に行える。更に、後輪3,3への伝動と作業部Wへの伝動を遮断する主クラッチを操作する主クラッチ操作レバー12と、ミッションケース5内の走行伝動部に設けた走行変速装置を、低速前進伝動状態、高速前進伝動状態、後進伝動状態、前後進中立状態に切り替え操作する変速レバー13も操縦ハンドル6の近傍に配置している。
【0016】
次に、作業部Wについて説明する。
作業部Wには、作物体Pの茎葉部PLを挟持して引上げ搬送する左右一対の引上げ搬送ベルト14,14を緩やかに後上がり傾斜した姿勢に設けた引上げ搬送装置15と、作物体Pの茎葉部PLを切断する切断装置16を設けている。また、引上げ搬送装置15は、機体平面視で左右の走行回転体2,2;3,3の間に配置するとともに、機体側面視で機体前部側から機体前後中間部付近にかけて後上がり傾斜姿勢で配置している。切断装置16は、引上げ搬送装置15の後部下側に配置している。更に、切断装置16により切断されて根本側部分P1から切り離され引上げ搬送装置15の後端部から排出される葉先側部分P2を受ける茎葉受け台17を設け、該茎葉受け台17の下側に、ミッションケース5の前部から機体前方へ後上がり姿勢で延びる左右のフレーム19,19を配置し、該左右のフレーム19,19とミッションケース5の下方に、前記切断装置16により切断されて地面に落下した根本側部分P1を機体後方に通過可能とする空間部Sを有するように構成している。
【0017】
更に具体的な構成を説明する。ミッションケース5の前部に、左右の作業部伝動ケース18,18と、前方に前下がり傾斜で延びる左右2本のフレーム19,19の後端部を固着している。そして、引上げ搬送装置15は、左右一対の上側の駆動プーリー20,20と左右一対の下側の従動プーリー21,21、左右の引上げ搬送ベルト14,14の内側から支持する複数のローラー22,22…を左右に設け、これら左右のプーリー及びローラの周りに、それぞれ引上げ搬送装置15の搬送体となる引上げ搬送ベルト14,14を巻き掛け、左右の引上げ搬送ベルト14,14の外周面は機体の左右中央部において互いに接当する状態となるようにしている。そして、ミッションケース5内の動力が伝動フレーム18,18内の伝動手段を経て、駆動プーリー20,20の駆動側回転軸23,23に伝動して、左右の引上げ搬送ベルト14,14がその左右中央部側で互いに接当する作物体挟持箇所において機体後方側に移動するように周回駆動される構成としている。前記駆動プーリー20,20は、前記左右のフレーム19,19の左右間に配置し前記第一作業部伝動ケース18,18の下部に固着した第二作業部伝動ケース24,24から上方に突出させて支持した駆動側回転軸23,23に一体回転するように取付け、前記従動プーリー21,21は、前記フレーム19,19の前端部に固着した取付け部材から上方に突出させて回転自在に支持した従動側回転軸25,25に一体回転するように取付け、前記複数のローラー22,22…は、前記駆動側回転軸23,23と従動側回転軸25,25とにわたって装着された支持部材26,26に取付けた複数の支持軸に回転自在に取付けている。支持部材26,26は、引上げ搬送ベルト14,14の上側に配置しているので、引上げ搬送ベルト14,14で挟持搬送される作物体Pの茎葉部PLに接触しにくくなっている。このため、作物体Pが生姜である場合に、引上げ搬送装置15が茎葉部PLを挟持搬送しているとき左右横方向に広がるように生育する土中の生姜を割ってしまうことが生じにくくなる。すなわち、地中の生姜が左右に広がって生育していて複数本の茎葉部PLが左右に幅広く並んで生育しているとき、引上げ搬送装置15は左右に林立する複数の茎葉部PLの中間部付近を左右中央側一箇所に集めて挟持することになるが、このとき、複数のローラー22,22…を取り付ける支持部材を引上げ搬送ベルト14,14の下側に配置していて、複数のローラー22,22…を取り付ける支持部材の端部に左右両端側の茎葉部PLが当たると、左右に広がった生姜の左右両端部を左右内側に引っ張る状態となって、これにより左右に広がった生姜を大きく湾曲させて割ってしまうことがある。しかしながら、本例では、複数のローラー22,22…を取り付ける支持部材26,26を引上げ搬送ベルト14,14の上側に配置しているので、このような問題を回避できる。
【0018】
引上げ搬送装置15の挟持始端箇所Aは、左右の引上げ搬送ベルト14,14が左右中央側前部でベルト外周面を互いに接触させ始める個所となり、機体の前進走行中に、この挟持始端部に作物体Pの茎葉部PLが入り込んでくると、左右の引上げ搬送ベルト14,14が作物体Pの茎葉部PLを挟んで後側斜め上方に搬送する。引上げ搬送ベルト14,14の機体後方水平方向への移動速度は、作業時の機体前進速度(走行変速装置VCを低速前進伝動状態としたときの速度)と略同速度になるように設定しているので、機体が前進走行していても、引上げ搬送装置15に挟持搬送される作物体Pは畝Uに対して前後に倒れず略垂直姿勢のままで上方に引上げ作用を受けることになる。引上げ搬送装置15の挟持終端箇所は、引上げ搬送装置15の後端部にあって左右の引上げ搬送ベルト14,14が左右中央側後部でベルト外周面が互いに離れ始める個所となり、左右の引上げ搬送ベルト14,14が挟持搬送した作物体Pの茎葉部PLがこの箇所から排出される。
【0019】
引上げ搬送ベルト14,14の左右一方側を他方側に対して離れる方向に移動可能に構成している。具体的には、左右一方側の引上げ搬送ベルト14を駆動プーリ20の回転軸23を軸に支持部材26の前側を左右方向外側に回動可能に設けている。作業時は引上げ搬送ベルト14,14が互いに接当状態となる位置で固定する固定手段を設け、該固定手段の固定を解除することで左右方向外側への回動が可能となる。これにより、引上げ搬送ベルト14,14の間に過大な量の茎葉部PLが入り込んで過負荷状態となってエンジン4が停止してしまったときなどに、引上げ搬送ベルト14,14の間に詰まった茎葉部PLを容易に取り除くことができる。ところで、図中の15aは、引上げ搬送装置15の上側を覆うカバーである。
【0020】
左右の前輪2,2は、上下調節可能に設けている。左右の前輪2,2を下方に位置調節すると、引上げ搬送装置15の前下がり傾斜が大きくなって、作物体引上げ高さHが増大し、左右の前輪2,2を上方に位置調節すると、引上げ搬送装置15の前下がり傾斜が小さくなって、作物体引上げ高さHが小さくなる。従って、左右の前輪2,2の上下調節機構によって引上げ搬送装置15の作物体引上げ高さHを設定調節可能となっている。具体的には、左右の前輪2,2は、前記フレーム19,19の前端部左右両側部に取り付けた前輪支持軸27,27の左右両端部の前輪支持アーム取付け部28,28に、上下に延びる前輪支持アーム29,29を装着し、その下端部に前輪車軸30,30を設け、これに左右の前輪2,2を回転自在に取り付けている。左右の前輪2,2の上下調節機構は、前輪支持アーム取付け部28,28に対する前輪支持アーム29,29の取付け高さを調節可能とすることで構成している。図例では、取付け穴と取付けピンで構成しているが、他の構成によって実現してもよい。
【0021】
切断装置16は、左右一対の円盤状カッターを左右中央部で一部上下に重なるようにして引上げ搬送装置15の後部下側に設けた構成としている。切断装置16の左右の円盤状カッターは、ミッションケース5内からの動力を第一作業部伝動ケース18及び第二作業部伝動ケース24,24内の伝動手段を介して円盤状カッターの回転軸31,31に伝動して駆動回転している。左右の引上げ搬送ベルト14,14によって挟持搬送される作物体Pの茎葉部PLは、その挟持搬送終端個所Cまで搬送される手前でその挟持搬送通路を遮るように配置された駆動回転する左右の円盤状カッターで切断作用を受けて切断される。左右の円盤状カッターの前側外周が交差する個所に作物体Pの茎葉部PLが搬送されるように設定しているので、ここから切断が開始される。そして、引上げ搬送装置15の挟持始端箇所Aから切断装置16が茎葉部PLを切断する時点の引上げ搬送装置15の挟持箇所Bまでの作物体引上げ高さHを、引上げ搬送装置15が作用する前で地中に生育していた作物体Pの最終収穫物Eの最大深さdより小さくなるように設定している。具体的には、作物体引上げ高さHを2〜6cmに設定する。
【0022】
従って、この農作物収穫機は、歩行操縦型の走行装置1によって機体を前進走行させ、引上げ搬送装置15によって作物体Pの茎葉部PLを挟持して引上げ搬送する。このとき土中にある作物体Pの最終収穫物Eも引上げられ、土中に張った根は引きちぎられる。そして、最終収穫物Eの底部が地表面より上方に上昇する前に切断装置16によって茎葉部PLが切断される。このため、最終収穫物Eはその上側に土等が被さった状態のままとなる。切断装置16により切断された後の作物体Pの根本側部分P1は、左右のフレーム19,19及びミッションケース5の下方に形成された空間部Sを通って機体後方に通過していく。このような作業を行った後、圃場に残された作物体Pの根本側部分P1は、作業者によって圃場から引き抜かれて最終収穫物Eが回収されるが、前記作業によって一度引上げられているので、軽い力で容易且つ迅速に取り上げることができ、また、完全に引き抜かれずに最終収穫物Eの上側に土等が被さった状態のままで残されているので、乾燥等による品質低下が生じにくい。一方、切断装置16によって切断されて根本側部分P1から切り離された葉先側部分P2は、引上げ搬送装置15の後端部から排出され、作業者によって機体側方側に放出される。
【0023】
なお、左右の前輪2,2の各前方には分草体を配置し(図示省略)、左右に広がって前輪2,2の前方に位置する作物体Pの茎葉を掻き分けて、前輪2,2が作物体Pを巻き込んだり踏み付けたりしないようにしている。
【0024】
この農作物収穫作業機は、前記切断装置16により切断されて根本側部分P1から切り離された葉先側部分P2を引上げ搬送装置15の終端個所Cから機体後方に排出する。そして、その排出された葉先側部分P2の茎葉部を受ける茎葉受け台17を設けている。本例において、この茎葉受け台17は、具体的には、引上げ搬送装置15の挟持搬送終端個所Cの下方箇所から機体の左右両外側に向けて広がる板面を有する板体32で形成している。この茎葉受け台17は、引上げ搬送装置15の挟持搬送終端個所Cから放出された葉先側部分P2の茎葉部を下方から支持するように受け、そして、作業者によってその茎葉部を機体側方に引き出されて圃場に(畝両側の谷部に)放出される。従って、切断装置16により切断されて葉先側部分P2から切り離された根本側部分P1は、畝U上のもともと生育していた箇所に残され、一方、葉先側部分P2は、引上げ搬送装置15の挟持搬送終端個所Cまで搬送されて茎葉受け台17に受けられ、その後、作業者によって畝Uの側方箇所に放出されて落下し、根本側部分P1の上に被さってしまうことがない。よって、引上げ作業後に根本側部分P1を収集する際、切断された葉先側部分P2によって根本側部分P1が隠れてしまうことがなく、収集漏れがなく適確に農作物の収集作業が行える。なお、茎葉受け台17の後側に、第一作業部伝動ケース18、ミッションケース5、エンジン4の上側を覆うカバー部33を形成している。
【0025】
また、この農作物収穫作業機は、機体後部にエンジン4を配置し、該エンジン4の前側にミッションケース5を配置し、該ミッションケース5の前部に機体前方へ後上がり姿勢で延びる左右のフレーム19,19を固着し、該フレーム19,19の上側に前記引上げ搬送装置15を配置し、前記ミッションケース5の左右両側部に走行回転体3,3を駆動する動力を伝動する伝動部材を内装しミッションケース5の底部より下側に延設される伝動ケース7,7を介して左右の後輪3,3を装着した構成としている。また、茎葉受け台17は、左右のフレーム19,19の上側に配置している。これにより、畝Uを跨いで走行する機体の左右のフレーム19,19とミッションケース5の下方に、切断装置16により切断され畝Uに残される根本側部分P1を機体後方に通過可能とする空間部Sを機体底部に充分に確保することができる。従って、機体がコンパクトに構成されるものでありながら、畝U上に着地した根本側部分P1を、大きく倒したり引きずったりせずに機体後方に通過させられ、しかも、切断された葉先側部分P2が根本側部分P1の上に落下することも防止される。
【0026】
本例の農作物収穫作業機は、引上げ搬送装置15の挟持始端部に作物体Pの茎葉部PLを掻集める茎葉掻集め装置34を引上げ搬送装置15の前側に設けている。この茎葉掻集め装置34は、左右のフレーム19,19の各前端部に固着した左右の支持部材35,35にそれぞれ取付けた左右の支持フレーム36,36の前部と後部とに、それぞれ前側プーリー37,37と後側プーリー38,38とを軸着し、左右ぞれぞれの前側プーリー37,37と後側プーリー38,38とに、外周側に突出するラグ39a…を多数有する掻集めベルト39,39を巻き掛け、更に、後側プーリー38,38の回転軸は、引上げ搬送装置15の従動プーリー21,21と一体回転する回転軸25,25の上部に自在継ぎ手を介して連結して構成している。この茎葉掻集め装置34は、左右の掻集めベルト39,39の前側が、左右外側に広がり且つ下位に位置するように傾斜した姿勢で配置している。これにより、掻集めベルト39,39は、左右に広がった作物体Pの茎葉部PLを引上げ搬送装置15の挟持始端部に向けて葉を持上げるようにしながら掻集めるように作用する。なお、掻集めベルト39,39の周回速度は、その機体後方の分速度が機体の前進速度と略同じ大きさから若干早い速度になるように設定して、掻集めベルト39,39が作物体Pを前方に押し倒さないようにしている。
【0027】
また、茎葉掻き集め装置34を駆動する後側プーリー38,38は、引上げ搬送装置15の従動プーリー21,21の上側に設けているので、作物体Pが生姜である場合に、引上げ搬送装置15が茎葉部PLを挟持するとき横側にのびて生育する生姜を割ってしまうことが生じにくくなる。すなわち、地中の生姜が左右に広がって生育していて複数本の茎葉部PLが左右に幅広く並んで生育しているとき、引上げ搬送装置15は左右に林立する複数の茎葉部PLの中間部付近を左右中央側一箇所に集めて挟持することになるが、このとき、茎葉掻き集め装置を駆動する後側プーリーが引上げ搬送装置15の従動プーリー21,21の下側に設けられていて該後側プーリーが大きく下方に突出していると、その突出部に左右両端側の茎葉部PLが当たると左右に広がった生姜の左右両端部を左右内側に引っ張る状態となって、これにより左右に広がった生姜を大きく湾曲させて割ってしまうことがあり、或いはまた、後側プーリーの下側突出部との当たり箇所を通過して逆に左右両端側の茎葉部PLが大きくたるみ、このため、左右に広がった生姜の左右端側が引上げ搬送装置15で挟持された茎葉部で引っ張り上げられず、左右中央側箇所だけで引っ張り上げられる状態が生じ、このため左右に広がった生姜が前記とは逆に大きく湾曲して割れてしまうことがある。しかしながら、本例では、茎葉掻き集め装置34を駆動する後側プーリー38,38は、引上げ搬送装置15の従動プーリー21,21の上側に設けているので、このような問題を回避できる。
【0028】
また、本例の農作物収穫作業機は、引上げ搬送装置15の挟持搬送終端個所Cから機体後方に排出される茎葉部PLを機体後方に掻き出す掻き出し装置40を設けている。これにより、引上げ搬送装置15の挟持搬送終端個所Cから機体後方に排出される茎葉部PLを挟持搬送終端個所Cで停滞することがなく、切断された茎葉部PL(葉先側部分PL2)の作業者による放出作業が迅速且つ適確に行なえるようになる。本例では、掻き出し装置40を、左右に設けた回転ドラム41,41で構成している。左右の回転ドラム41,41は、引上げ搬送装置15の駆動プーリー20,20の回転軸23,23の上部に該回転軸23,23と一体回転する延長回転軸42,42に一体回転するように取付けていて、簡略な駆動構成となっている。また、回転ドラム41,41の径は引上げ搬送装置15の駆動プーリー20,20の径より大きく設けているので、引上げ搬送装置15の挟持搬送速度より回転ドラム41,41の周速度が速くなり、これにより、引上げ搬送装置15の挟持搬送終端個所Cから茎葉部PLが多量に排出されても挟持搬送終端個所Cで停滞させることなく良好に掻き出すことができる。更に、ドラム外周面はスポンジ等の弾性材で被っているので、茎葉部PLをスリップなく良好に掻き出すことができる。また、左右の回転ドラム41,41の左右間隔が最も狭くなる個所、或は、互いに接当する個所を、引上げ搬送装置15の挟持搬送終端個所Cより後側に位置するように設けたので、引上げ搬送装置15の挟持搬送終端個所Cから排出された後で左右の回転ドラム41,41が茎葉部PLに対して掻き出し作用するので、茎葉部PLの掻き出しが適確に行える。
【0029】
従って、本願発明の農作物収穫作業機は、歩行操縦型の走行装置1と、作物体Pの茎葉部PLを挟持して引上げ搬送する引上げ搬送装置15とを設け、前記引上げ搬送装置15の後部下側に作物体Pの茎葉部PLを切断する切断装置16を設け、前記引上げ搬送装置15の挟持始端箇所Aから前記切断装置16が茎葉部PLを切断する時点の前記引上げ搬送装置15の挟持箇所Bまでの作物体引上げ高さHを、前記引上げ搬送装置15が作用する前で地中に生育していた作物体Pの最終収穫物Eの最大深さdより小さく設定したものである。また、前記作物体引上げ高さHを2〜6cmに設定したものである。
【0030】
更に、前記歩行操縦型の走行装置1は、左右両側に走行回転体2,2;3,3を備えるとともに後側にエンジン4とミッションケース5と歩行操縦用の操縦ハンドル6を備え、前記引上げ搬送装置15は、作物体Pの茎葉部PLを挟持して引上げ搬送する左右一対の引上げ搬送ベルト14,14を後上がり傾斜姿勢で設けたものである。
【0031】
また、前記引上げ搬送装置15の引上げ搬送ベルト14,14は、機体平面視で左右の走行回転体2,2;3,3の間に配置するとともに、機体側面視で機体前部側から機体前後中間部付近にかけて後上がり傾斜姿勢で配置したものである。
【0032】
そして、また、機体後部にエンジン4を配置し、該エンジン4の前側にミッションケース5を配置し、該ミッションケース5の前部に機体前方へ後上がり姿勢で延びる左右のフレーム19,19を固着し、該フレーム19,19の上側に前記引上げ搬送装置15を配置し、前記ミッションケース5の左右両側部に走行回転体3,3を駆動する動力を伝動する伝動部材を内装しミッションケース5の底部より下側に延設される伝動ケースを介して走行回転体3,3を装着したものである。
【0033】
また、この農作物収穫作業機を用いることで、駆動回転される引上げ搬送装置15によって作物体Pの茎葉部PLを挟持して引上げ、地中に生育していた作物体Pの最終収穫物Eの底部が地表面より上方に上昇する前に切断装置16によって茎葉部PLを切断するという農作物収穫作業方法をとることができる。
【0034】
従って、この農作物収穫機は、歩行操縦型の走行装置1によって機体を前進走行させ、引上げ搬送装置15によって作物体Pの茎葉部PLを挟持して引上げ搬送する。設定された引上げ高さは2〜6cmである。このとき土中にある作物体Pの最終収穫物Eも引上げられ、土中に張った根は引きちぎられる。そして、最終収穫物Eの底部が地表面より上方に上昇する前に切断装置16によって茎葉部PLが切断される。このため、最終収穫物Eはその上側に土等が被さった状態のままとなる。切断装置16により切断された後の作物体Pの根本側部分P1は、左右のフレーム19,19及びミッションケース5の下方に形成された空間部Sを通って機体後方に通過していく。このような作業を行った後、圃場に残された作物体Pの根本側部分P1は、作業者によって圃場から引き抜かれて最終収穫物Eが回収されるが、前記作業によって一度引上げられているので、軽い力で容易且つ迅速に取り上げることができ、また、完全に引き抜かれずに最終収穫物Eの上側に土等が被さった状態のままで残されているので、乾燥等による品質低下が生じにくい。一方、切断装置16によって切断されて根本側部分P1から切り離された葉先側部分P2は、引上げ搬送装置15の後端部から排出され、作業者によって機体側方側に放出される。よって、生姜等の農作物の収穫作業の省力化が図れ、且つ、収穫作業後の品質低下をできるだけ回避できるものとなる。また、引上げ搬送装置を前後に短くできて、簡易でコンパクトな構成で、機体操縦性が良好な農作物収穫作業機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】農作物収穫機の側面図。
【図2】農作物収穫機の平面図。
【図3】農作物収穫機の断面正面図。
【符号の説明】
【0036】
1:走行装置
2,2:前輪(走行回転体)
3,3:後輪(走行回転体)
4:エンジン
5:ミッションケース
6:操縦ハンドル
14,14:引上げ搬送ベルト
15:引上げ搬送装置
16:切断装置
17:茎葉受け台
19,19:フレーム
A:引上げ搬送装置の挟持始端箇所
B:切断装置が茎葉部を切断する時点の引上げ搬送装置の挟持箇所
H:作物体引上げ高さ
S:空間部
P:作物体
PL:作物体の茎葉部
P1:作物体の根本側部分
P2:作物体の葉先側部分
E:最終収穫物
d:収穫作業前に土中にある最終収穫物の最大深さ

【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【住所又は居所】愛媛県松山市馬木町700番地
【出願日】 平成15年9月26日(2003.9.26)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−95093(P2005−95093A)
【公開日】 平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願番号】 特願2003−334652(P2003−334652)